説明

コルテキソロンの17α−モノエステルおよび/またはその9,11−デヒドロ誘導体を得るための酵素的方法

本発明は、酵素的アルコーリシス反応を含む、対応する17α,21−ジエステルから出発するコルテキソロンの17α−モノエステルおよび/またはその9,11−デヒドロ誘導体を得るための、酵素的プロセスに関する。さらに本発明は、コルテキソロン17α−プロピオネートおよび9,11−デヒドロ−コルテキソロン17α−ブタノエートの結晶形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
C−17α位のヒドロキシル基が短鎖脂肪族または芳香族の酸でエステル化されているコルテキソロン誘導体と、それに対応する9,11−デヒドロ誘導体は、抗アンドロゲン性効果を有することが知られている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、動物の「in vitro」および「in vivo」の両方で実証された高い抗アンドロゲン性生物活性に関し、コルテキソロン17α−プロピオネートおよび9,11−デヒドロ−コルテキソロン−17−α−ブタノエートについて記述している。
【0003】
上述の誘導体を得るための方法は、非特許文献1および特許文献2に記載されており、酸触媒(例えば、PTSA.H2O)の存在下、シクロヘキサンやDMFなどの非プロトン性溶媒の混合物として市場で入手可能なオルトエステルを使用した、中間体オルトエステルでのコルテキソロンの形質転換または9,11−デヒドロコルテキソロンの形質転換を示している。このように得られた中間体オルトエステルは、そのままで、または不純物を溶解することが可能な溶媒、好ましくはアルコールに懸濁することにより精製して、使用することができる。その後に実施される、好ましくは酢酸緩衝液中でpH4〜5に緩衝された含水アルコール溶液中での加水分解は、所望のモノエステルを提供する。
【0004】
そのような合成を、以下のダイアグラム1に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
しかし、このように得られたモノエステルは、反応条件において不安定であり、その結果、取扱いおよび単離が難しかった(例えば、非特許文献2参照)。この不安定性は、とりわけ、17位から21位にエステル化アシル基が移行する二次反応に起因する。
【0007】
このように、生物学的試験へと進めることができるよう化学的に純粋な上述のモノエステルを得るには、合成の終わりに、一般にカラムクロマトグラフィを用いて行われる精製プロセスを使用する必要があることが知られている。
【0008】
さらに、特許文献2は、塩基性環境でのジエステルの加水分解が、初期の未反応生成物と平行して17α,21−ジオールと17−および21−モノエステルとの混合物が形成されることによって、どのように都合よくないのか記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1421099号明細書
【特許文献2】米国特許第3152154号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gardi et al. Gazz. Chim. It. 63, 43 1, 1963
【非特許文献2】R.Gardi et al Tetrahedron Letters, 448, 1961
【非特許文献3】B.Turner, Journal of American Chemical Society, 75, 3489, 1953
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
驚くべきことに、生体触媒としてカンジダ(Candida)からのリパーゼを使用したアルコーリシス反応は、コルテキソロンの17αモノエステルまたはその9,11−デヒドロ誘導体の調製中に有用に利用できることが発見されている。
【0012】
事実、コルテキソロンの17,21−ジエステルまたはその9,11−デヒドロ誘導体のそのような酵素的アルコーリシスは、以下のダイアグラム2に示されるように、21位で選択的に生じ、17位でそれに対応するモノエステルに移動することが発見されている。
【0013】
【化2】

【0014】
本発明によれば、アルコーリシス条件での特殊な酵素反応の化学選択性は、文献に既に示されている方法に対し、17α−モノエステルをより高い収率の工業的レベルで調製することに関し、新たな展望を開く。
【0015】
本発明の反応の基質として提供されるジエステルは、従来技術により調製することができ、例えば、直鎖状カルボン酸を用いての、その無水物およびPTSA一水和物の存在下でのコルチコステロイドのエステル化をもたらす非特許文献3に記述されている技術に従って、調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IのDRXを示す図である。
【図2】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IのDSCを示す図である。
【図3】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IのIRを示す図である。
【図4】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIのDRXを示す図である。
【図5】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIのDSCを示す図である。
【図6】コルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIのIRを示す図である。
【図7】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDRXを示す図である。
【図8】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDSCを示す図である。
【図9】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのIRを示す図である。
【図10】アセトン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDRXを示す図である。
【図11】アセトン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDSCを示す図である。
【図12】アセトン/n−ヘキサンから得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのIRを示す図である。
【図13】エタノール/水から得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDRXを示す図である。
【図14】エタノール/水から得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのDSCを示す図である。
【図15】エタノール/水から得られたコルテキソロン17α−プロピオネートの結晶形態IIIのIRを示す図である。
【図16】tert−ブチルメチルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDRXを示す図である。
【図17】tert−ブチルメチルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDSCを示す図である。
【図18】tert−ブチルメチルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのIRを示す図である。
【図19】ジイソプロピルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDRXを示す図である。
【図20】ジイソプロピルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDSCを示す図である。
【図21】ジイソプロピルエーテルから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのIRを示す図である。
【図22】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDRXを示す図である。
【図23】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDSCを示す図である。
【図24】ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのIRを示す図である。
【図25】アセトン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDRXを示す図である。
【図26】アセトン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのDSCを示す図である。
【図27】アセトン/n−ヘキサンから得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの結晶形態IのIRを示す図である。
【図28】プロピレングリコール/水から得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの溶媒和物の結晶形態IVのDRXを示す図である。
【図29】プロピレングリコール/水から得られた9−デヒドロコルテキソロン17α−ブチレートの溶媒和物の結晶形態IVのIRを示す図である。
【図30】製剤(クリーム)中でのコルテキソロン17α−プロピオネートのDRXを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって本発明の目的は、式Iの、コルテキソロンの17αモノエステルとその9,11−デヒドロ誘導体とを調製するための方法であって
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは、1から10個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状の脂肪族または芳香族鎖である。)、
式IIの化合物
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Rは、上記にて示されたものと同じ意味を有する。)
と、
式IIIの化合物
R’OH (III)
(式中、R’は1から10個の炭素原子を含有する直鎖であり、好ましくはC1〜C8アルキルである。)
とを、カンジダからのリパーゼの存在下で反応させることを特徴とする方法である。
本発明によれば、Rは、好ましくはC1〜C4アルキルであり、さらにより好ましくは、CH3、CH3CH2、CH3(CH22、またはCH3(CH23の中から選択される。
【0022】
上述の式IおよびIIにおける9、11位での破線の記号は、以下に記述される式に示されるように、二重結合を存在しても(9,11−デヒドロ誘導体)またはそのような位置に存在しなくてもよいことを意味する。
【0023】
【化5】

【0024】
本発明の方法を触媒するのに使用されるカンジダからのリパーゼは、好ましくは、カンジダシリンドラセア(Candida cylindracea)(CCL)からのリパーゼと、B型カンジダアンタークチカ(Candida antarctica)(CALB)からのリパーゼとの間で選択される。
【0025】
カンジダからのリパーゼ、特にカンジダシリンドラセアおよびカンジダアンタークチカからのリパーゼは、ほとんど不活性であることが証明されているブタ膵リパーゼ(PPL)およびシュードモナスフルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(PFL)とは対照的に、21位のエステル官能基を選択的に加水分解可能であることが証明されている。
【0026】
初期の基質に対して計算された前記酵素の量は、使用される酵素のタイプに応じて変えてもよい。特に前記酵素は、好ましくは、100から1000000U/mmolの範囲の量で;より好ましくは、CCLの場合は1000から1000000U/mmolの範囲、CALBの場合は100から100000の量で使用される。さらにより好ましくは、前記酵素は、CCLの場合に約60000U/mmolの量で、CALBの場合に約5000U/mmolの量で存在する。
【0027】
さらに、経済的/工業的な観点から、触媒活性を失うことなくそのような酵素を数サイクルにわたって再利用する可能性が、明らかにされた。
【0028】
式IIの初期ジエステルの濃度は、好ましくは約0.01から0.15モルの範囲内であり、より好ましくは約0.025モルである。
【0029】
本発明の方法は、好ましくは有機溶媒、より好ましくは非プロトン性有機溶媒の存在下で行われる。
【0030】
次いで前記溶媒は、好ましくはトルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、および/またはクロロホルムの中から選択される。
【0031】
本発明によるR’OHアルコールは、好ましくはメタノール、エタノール、ブタノール、および/またはオクタノールから選択される。
【0032】
前記アルコールは、好ましくは、初期基質1モル当たり約0.5から約50モルの範囲の量で、より好ましくは基質1モル当たり5モルの量で存在する。
【0033】
本発明による方法は、好ましくは、式IIの初期ジエステルが溶解するまで、常に攪拌した状態で行われる。その後、使用された酵素を、濾過、好ましくはセライトでの濾過により除去し、低圧下での溶媒蒸発によって式Iのモノエステルが得られる。
【0034】
式IIの化合物がコルテキソロンの17α,21−ジエステルである場合、この方法の反応時間は、通常20から150時間の範囲内であり、好ましくは24から72時間の範囲内であり、反応温度は、好ましくは約10から48℃の範囲内であり、より好ましくは20から32℃の範囲内である。
【0035】
以下の表1は、本発明による、反応条件および酵素的アルコーリシスの結果についてまとめたものである。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明による酵素的方法は、コルテキソロンの17α−21−ジエステルまたは9,11−デヒドロ−コルテキソロンを変換する場合だけでなくその他の場合にも有用であることが証明され;特に、9,11−デヒドロコルテキソロンの17α−ブタノエートは、好ましくはCCL酵素とメタノールをアシル基のアクセプターアルコールとして使用して、対応するジブタノエートから出発することにより得られた。
【0038】
初期9,11−デヒドロ誘導体の濃度は、好ましくは0.01から0.15モルの範囲内であり、より好ましくは0.025モルである。
【0039】
この場合、反応時間は、好ましくは45から55時間の範囲内であり、好ましくは53時間である。
【0040】
またこの場合、反応温度は、好ましくは10から48℃の範囲内であり、より好ましくは20から32℃の範囲内である。
【0041】
以下の表2は、9,11−デヒドロコルテキソロンの17α,21−ジブタノエートの酵素的アルコーリシスの反応条件と、これに関連したそれぞれのモノエステルの最終的な収率とを示す。
【0042】
【表2】

【0043】
さらに、本発明による方法は、有機溶媒、水、緩衝水溶液、および/またはこれらの混合物から結晶化する最終ステップを、任意選択で含んでもよい。
【0044】
前記結晶化ステップの有機溶媒は、好ましくは、ジイソプロピルエーテル、terブチルメチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、ヘキサン、アセトン、エタノール、水、またはこれらの任意の割合の混合物の中から選択される。
【0045】
このように本発明のその他の目的は、結晶形態の、コルテキソロンの17α−モノエステルおよびそれに対応する9,11−デヒドロ誘導体である。
【0046】
詳細には、本発明の目的は、結晶形態の、コルテキソロン17α−プロピオネートおよび9,11−コルテキソロン−17α−ブタノエートである。
【0047】
17α−プロピオネートの結晶形態Iは、好ましくはtert−ブチルメチルエーテルからの結晶化によって得られる。前記溶媒中の17α−プロピオネートの濃度は、tert−ブチルメチルエーテル9〜11ml中、0.9から1.1gの範囲内であり、好ましくは10ml中1gである。前記結晶形態Iは、約133から135℃の範囲内の融点、および/または図1に示されるDRX、および/または図2に示されるDSC、および/または図3に示されるIRを特徴とする。
【0048】
17α−プロピオネートの結晶形態IIは、好ましくはジイソプロピルエーテルからの結晶化によって得られる。前記溶媒中の濃度は、好ましくは、ジイソプロピルエーテル54〜66ml中、0.9から1.1gの範囲内である。
【0049】
前記結晶形態IIは、約114から116℃の範囲内の融点、および/または図4に示されるDRX、および/または図5に示されるDSC、および/または図6に示されるIRを特徴とする。
【0050】
17α−プロピオネートの結晶形態IIIは、好ましくは約1/30の比のジクロロメタン/n−ヘキサン、好ましくは約1/8の比のアセトン/n−ヘキサン、または好ましくは約1/2の比のエタノール/水の混合物からの結晶化によって得られることが好ましい。
【0051】
前記結晶形態IIIの融点は、決定することができなかった。
【0052】
ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られた結晶形態IIIは、図7に示されるDRXおよび/または図8に示されるDSCおよび/または図9に示されるIRを有する。
【0053】
アセトン/n−ヘキサンから得られた結晶形態IIIは、図10に示されるDRXおよび/または図11に示されるDSCおよび/または図12に示されるIRを有する。
【0054】
エタノール/水から得られた結晶形態IIIは、図13に示されるDRXおよび/または図14に示されるDSCおよび/または図15に示されるIRを有する。
【0055】
9,11−デヒドロ−17α−コルテキソロンの結晶形態Iは、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーエル、好ましくは1/15の比のジクロロメタン/n−ヘキサン混合物、または好ましくは1/5の比のアセトン/n−ヘキサン混合物から得られることが好ましい。
【0056】
tert−ブチルメチルエーテルから得られた結晶形態Iは、図16に示されるDRXおよび/または図17に示されるDSCおよび/または図18に示されるIRを有する。
【0057】
ジイソプロピルエーテルから得られた結晶形態Iは、図19に示されるDRXおよび/または図20に示されるDSCおよび/または図21に示されるIRを有する。
【0058】
ジクロロメタン/n−ヘキサンから得られた結晶形態Iは、図22に示されるDRXおよび/または図23に示されるDSCおよび/または図24に示されるIRを有する。
【0059】
アセトン/n−ヘキサンから得られた結晶形態Iは、図25に示されるDRXおよび/または図26に示されるDSCおよび/または図27に示されるIRを有する。
【0060】
形態IIIの17α−プロピオネートに関するDRXダイアグラムおよび形態Iの9,11−デヒドロ誘導体に関するDRXダイアグラムで観察可能な相違は、これらの相違が結晶の配向度の低下という現象に起因するという点から、関連はないと考えられる。
【0061】
同様に、IRおよびDSCで観察される相違は、これらの相違がサンプル調製のときおよび/または分析を行うときのばらつきに起因するという点から、関連はないと考えられる。
【0062】
表3は、いくつかの同定パラメータ、および上述の結晶形態を得るための条件を示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
結晶化水分子の存在を特徴とし、かつ溶媒和物形態IVと定義された、17α−プロピオネートの擬似多型結晶形態の存在が、決定された。
【0066】
17α−プロピオネートの溶媒和物結晶形態IVは、一般に1/2から2/1の範囲内にある比の有機/水溶媒混合物から、好ましくは1/1の比にあるプロピレングリコール/水から、または1/1の比にあるポリエチレングリコール/水からの結晶化によって得られることが好ましい。
【0067】
プロピレングリコール/水 1/1から得られた溶媒和物結晶形態IVは、図28に示されるDRXおよび/または図29に示されるIRを有する。
【0068】
溶媒和物形態の17α−プロピオネートの結晶化は、最終的な医薬品形態の配合プロセス中に行ってもよく、この場合、医薬品形態の製造プロセスは、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、または短鎖脂肪族アルコールなどの有機溶媒に活性成分を溶解し、その後、活性成分の溶解に使用された有機溶媒に対して1/3から3/1の比で、水を添加するものである。
【0069】
さらに本発明の目的は、少なくとも1種の生理学的に許容される賦形剤と共に上述の結晶形態の少なくとも1種を含有する医薬組成物である。
【0070】
本発明の組成物は、固体、半固体、ペースト状、または液体形態のものにすることができ、好ましくは、どちらもすぐに使用することができまたは使用前に元に戻すことができる、錠剤、カプセル、粉末、ペレット、懸濁液、エマルジョン、溶液、クリーム、ゲル、軟膏、ローション、またはペーストの中から選択される。
【0071】
最後に本発明の目的は、泌尿生殖器系、内分泌系、皮膚、および/または皮膚付属器に影響を及ぼす病状を治療する医薬品を調製するための、上述の結晶形態および/または溶媒和物の少なくとも1種の、好ましくは人間のための使用である。
【0072】
具体的には本発明の目的は、泌尿生殖器系、内分泌系、皮膚、および/または皮膚付属器に影響を及ぼす病状を治療する医薬品を調製するための、溶液および結晶分散体状態にある、なお後者の場合は有機溶媒または有機溶媒の混合物中に結晶活性成分を含有する溶液に、水または水溶液を添加して同活性成分を沈殿させることによって、おそらくは即座に得られる状態にある、溶媒和物形態I、II、III、またはIVの中から選択された結晶形態、好ましくは溶媒和物形態IV中に、0.1から2重量%の範囲内、好ましくは0.2から1%の範囲内でコルテキソロン−17α−プロピオネートを含有する、例えばクリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、または分散体などの、局所施用のための液体または半液体製剤の使用である。
【0073】
さらに本発明の目的は、泌尿生殖器系、内分泌系、皮膚、および/または皮膚付属器に影響を及ぼす病状を治療するための、溶媒和物形態IまたはIVの中から選択された結晶形態にある、全製剤が200mgの最終重量を有する場合には前記全製剤に対して4から65重量%の範囲内、好ましくは5から50%の範囲内、または前記全製剤が500mgの最終重量を有する場合には1から25重量%の範囲内、好ましくは2から20%の範囲内の投薬量で9,11−デヒドロ−コルテキソロン−17α−ブタノエートを含有する、例えば錠剤、カプセル、顆粒、または粉末などの経口または全身投与のための液体または固体製剤の使用である。
【0074】
本発明による前記病状は、好ましくは、にきび、脂漏性皮膚炎、男性ホルモン性脱毛症、多毛症、良性前立腺過形成、前立腺癌の諸形態、男性避妊、多嚢胞性卵巣症候群、攻撃的または異常な性行動の制御、および性的早熟症候群の中から選択される。
【0075】
以下の実施例は、本発明をいかなる方法によっても制限することなく、本発明の理解を高めるために含まれる。
【実施例1】
【0076】
コルテキソロン17α,21−ジプロピオネートのCCLによるアルコーリシス
ブタノール(0.4g、5.45mmol)およびCCL(17.4g、3.86U/mg、FLUKA)を、コルテキソロン−17α,21−ジプロピオネート(0.5g、1.09mmol)をトルエン(50ml)に溶かした溶液に添加する。混合物を攪拌しながら30℃に維持し、その後、初期材料が溶解するまで(24時間)反応をTLC(トルエン/酢酸エチル 6/4)中で進行させる。セライト層を使用した濾過を用いて、酵素を除去する。低圧下で蒸発させた後、コルテキソロン17α−プロピオネート(0.437、99%)を回収する。ジイソプロピルエーテルからの結晶化により、HPLCで純度>99%の生成物が得られる。
【0077】
1H-NMR (500MHz, CDCl3) 関連シグナルδ(ppm) 5.78 (br s, 1H, H-4)、4.32 (dd, 1H, H-21)、4.25 (dd, 1H, H-21)、1.22 (s, 3H, CH3-19)、1.17 (t, 3H, CH3)、0.72 (s, 3H, CH3-18)。P.f. 114℃
【実施例2】
【0078】
実施例1に記述される方法により、コルテキソロン−17α−ブタノエートを調製する。
【0079】
1H-NMR 関連シグナルδ(ppm) 5.78 (br s, 1H, H-4)、4.32 (dd, 1H, H-21)、4.26 (dd, 1H, H-21)、1.23 (s, 3H, CH3-19)、0.97 (t, 3H, CH3)、0.73 (s, 3H, CH3-18)。P.F. 134〜136℃
【実施例3】
【0080】
実施例に記述される方法により、コルテキソロン−17α−バレレートを調製する。
【0081】
1H-NMR 関連シグナルδ(ppm) 5.77 (br s, 1H, H-4)、4.32 (dd, 1H, H-21)、4.26 (dd, 1H, H-21)、1.22 (s, 3H, CH3-19)、0.95 (t, 3H, CH3)、0.72 (s, 3H, CH3-18)。P.f. 114℃ (ジイソプロピルエーテル)。
【実施例4】
【0082】
実施例に記述される方法により、9,11−デヒドロ−コルテキソロン−17α−ブタノエートを調製する。
【0083】
1H-NMR 関連シグナルδ(ppm) 5.77 (br s, 1H, H-4)、5.54 (m, 1H, H-9)、4.29 (dd, 1H, H-21)、4.24 (dd, 1H, H-21)、1.32 (s, 3H, CH3-19)、0.94 (t, 3H, CH3)、0.68 (s, 3H, CH3-18)。P.f. 135〜136℃ (アセトン/ヘキサン)。
【実施例5】
【0084】
コルテキソロン−17α−,21−ジプロピオネートのCALBによるアルコーリシス
コルテキソロン,17α,2−ジプロピオネート(0.5g、1.09mmol)をアセトニトリル(40ml)に溶解し、CALB(2.3g、2.5U/mg Fluka)およびオクタノール(0.875ml)を添加する。混合物を攪拌しながら30℃に、76時間維持する。濾紙を使用した濾過を用いて酵素を除去する。溶媒が蒸発したら、固体(0.4758)を回収するが、この固体は、分析1H−NMRにより、91%のコルテキソロン−17α−プロピオネートで構成されたと見なされるものである。
【実施例6】
【0085】
結晶化
溶媒(t−ブチルメチルエーテルまたはジイソプロピルエーテル)を、表3に示される比によりサンプルに添加する。混合物を、攪拌しながらサンプルが完全に溶解するまで、溶媒の沸騰温度に加熱する。室温に冷却し、攪拌しながら6時間、この温度のままにする。ブフナー漏斗を使用して濾過し、低圧下で得られた固体を室温で15時間維持し、次いで40℃で5時間維持する。
【実施例7】
【0086】
沈殿
サンプルを、表3に示される比に従って、適切な溶媒(ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル、またはエタノール)に溶解し、次いで溶媒、ヘキサン、または水を、表3に示される比に従って添加し、混合物を、攪拌しながら室温で維持する。ブフナー漏斗を使用した濾過によって沈殿物を回収し、実施例6の場合と同様に乾燥する。
【実施例8】
【0087】
画定された結晶形態で医薬品を含有する医薬品形態を得る。
【0088】
2%のセチルアルコール、16%のモノステアリン酸グリセリル、10%のワセリン油、13%のプロピレングリコール、10%の低重合度のポリエチレングリコール、1.5%のポリソルベート80、および47.5%の精製水を含有する液状クリームを調製する。結晶形態IIIのコルテキソロン17α−プロピオネート1gを、このクリーム100gに添加し、混合物に均質性が得られるまで、混合物をタービン攪拌器によって均質化する。製剤ビヒクルに溶解した活性成分の画分と、結晶形態IIIの結晶として存在する溶解していない活性成分の画分とを含有するクリームが得られる。この調製物は、Franzセルでの皮膚浸透試験用の製剤ビヒクルとして使用するのに適しており、0.04から0.03cm/時の範囲内の浸透係数が、この調製物に関して観察される。
【実施例9】
【0089】
生薬配合手順中に溶媒を代え、溶媒和物形態IVの医薬品を含有する医薬品形態を得る。
【0090】
結晶形態IIIのコルテキソロン17α−プロピオネート100gを、室温で攪拌しながらプロピレングリコール2500gに溶解する。これとは別に、約70℃まで温度を上昇させるターボ乳化器(turboemulsifier)を使用することによって、セチルアルコール250g、モノステアリン酸グリセリル1500g、液体パラフィン1000g、混合トコフェロール5g、ポリソルベート80 100g、および水4650gを含むエマルジョンを調製する。エマルジョンを約30℃まで冷却した後、攪拌しながらかつ陰圧下で、コルテキソロン17α−プロピオネートのプロピレングリコール溶液を添加する。エマルジョン化したクリームを、冷却剤を循環させることによって温度が確実に低く保持した状態で、均質性が得られるまで攪拌しながら維持する。
【0091】
クリームは、活性成分が主に水性の製剤に添加されたときに、その活性成分を含有するグリコール溶液から活性成分そのものの沈殿によって形成された、溶媒和物結晶形態IVの活性成分で構成される、分散した結晶画分を含有する。クリーム中に存在する結晶形態のDRXスペクトルを、図30に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物を調製するための方法であって
【化1】

(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状の脂肪族または芳香族鎖である。)、
式IIの化合物
【化2】

(式中、Rは、上記にて示されたものと同じ意味を有する。)
と、
式IIIの化合物
R’OH (III)
(式中、R’は1〜10個の炭素原子を含有する直鎖状脂肪族鎖である。)
とを、カンジダ(Candida)からのリパーゼの存在下で反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
RがC1〜C4アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、CH3、CH3CH2、CH3(CH22、またはCH3(CH23の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R’が、1〜8個の炭素原子を含有する脂肪族鎖であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
好ましくは非プロトン性である、有機溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、および/またはクロロホルムの中から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記式IIの化合物が、約0.01から0.15モルの範囲内の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式IIの化合物が、0.025モルの量で存在することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIIの化合物が、メタノール、エタノール、ブタノール、および/またはオクタノールの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記式IIIの化合物が、初期基質のモル当たり、約0.5から約50モルまでの様々な量で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記式IIIの化合物が、基質のモル当たり、5モルの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
カンジダからの前記リパーゼが、CCLとCALBとから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
カンジダからの前記リパーゼが、約100から1000000U/mmolまでの様々な量で存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
カンジダからの前記リパーゼが、CCLの場合は約1000から1000000U/mmolに及ぶ量で存在し、CALBの場合は約100から100000U/mmolに及ぶことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機溶媒から結晶化するさらなるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化溶媒が、ジイソプロピルエーテル、terブチルメチルエーテル、ジクロロメタン、ヘキサン、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水、またはこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
反応温度が10から48℃の範囲内、好ましくは20から32℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
図1に示されるDRX、および/または図2に示されるDSC、および/または図3に示されるIRを特徴とする結晶形態Iのコルテキソロン−17α−プロピオネート。
【請求項19】
図4に示されるDRX、および/または図5に示されるDSC、および/または図6に示されるIRを特徴とする結晶形態IIのコルテキソロン−17α−プロピオネート。
【請求項20】
図7、10、または13に示されるDRX、および/または図8、11、または14に示されるDSC、および/または図9、12、または15に示されるIRを特徴とする結晶形態IIIのコルテキソロン−17α−プロピオネート。
【請求項21】
図28に示されるDRX、および/または図29に示されるIRを特徴とする結晶溶媒和物形態IVのコルテキソロン−17α−プロピオネート。
【請求項22】
図16、19、22、または25に示されるDRX、および/または図17、20、23、または26に示されるDSC、および/または図18、21、24、または27に示されるIRを特徴とする結晶形態Iの9,11−デヒドロ−コルテキソロン−17α−ブタノエート。
【請求項23】
請求項18から22に記載の結晶形態の少なくとも1種を、少なくとも1種の生理学的に許容される賦形剤と共に含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
固体、半固体、ペースト状、または液体形態にあることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
錠剤、カプセル、粉末、ペレット、懸濁液、エマルジョン、溶液、クリーム、ゲル、軟膏、ローション、またはペーストの形をとることを特徴とする請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
泌尿生殖器系、内分泌系、皮膚、および/または皮膚付属器に影響を及ぼす病状を治療するためであることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項27】
にきび、脂漏性皮膚炎、男性ホルモン性脱毛症、多毛症、良性前立腺過形成、前立腺癌の諸形態、男性避妊、多嚢胞性卵巣症候群、性的早熟症候群、および攻撃的または異常な性行動の制御を治療するためであることを特徴とする請求項26に記載の結晶形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−535173(P2010−535173A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518628(P2010−518628)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059702
【国際公開番号】WO2009/019138
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(504043808)コスモ・ソチエタ・ペル・アチオニ (1)
【Fターム(参考)】