コレステリック多層
本発明は、少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)が重ねて配置されているCLCPの多層であって、たとえばその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチを急激に変化させる機械的に唯一の的な固体を形成するために、ポリマー網状構造の中で前記少なくとも二つの層が化学的に層間架橋していることを特徴とする、前記多層を開示する。対応する顔料、コーティング組成物並びに、セキュリティ及び装飾印刷及びコーティング用途におけるその使用も同様に開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に機密文書印刷用インキ用のコーティング組成物用のための特別な顔料の分野に関する。本発明は、高度なスペクトル反射変動、著しい反射色及び角度依存性の色変化(angle-dependent colour variation)を可能にする、新型コレステリック液晶ポリマー層及びそれから得られた顔料を扱う。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶ポリマー(CLCP)から製造したフィルム及び顔料は公知である。米国特許第5,211,877号(Andrejewskiら);同第5,362,315号(Muller-Reesら);及び同第6,423,246号(Kaschら)を参照されたい。これらの特許ではそのような材料を製造するための組成物及び方法を開示する。
【0003】
コレステリック液晶ポリマーは、螺旋状に配置された分子のスタックの形状の分子秩序(molecular order)を示す。この秩序は、液晶材料のなかの至る所にある周期的な屈折率変調に起因し、これが所定の波長の光の選択的透過/反射(干渉フィルター効果)をもたらす。CLCP内の螺旋分子配置の特定の状態によって、分子螺旋の回転方向に依存して、反射光を左円偏光または右円偏光させる。
【0004】
CLCPによって反射された波長範囲は、その周期的屈折率変調の幾何学、即ち当業者には公知のように分子の螺旋のピッチによって決定される。所定のコレステリック液晶前駆体材料に関しては、前記ピッチは、一連の選択可能な因子、中でも温度、並びに溶媒及び所定のキラリティー誘導性添加剤の定量的存在に依存する;従って最大反射波長は、選択した製造プロセスによって決定することができる。材料のピッチは最終的に、得られたコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の色が外部因子にもはや依存しないように、架橋(重合)反応によって凍結させる(freeze)ことができる。
【0005】
この目的を達成するために、好適な光開始剤の存在下、UV照射の作用下で架橋反応を受け得るアクリレート及び/またはメタクリレート残基などの反応性基を含むように、モノメリックまたはオリゴメリックのコレステリック液晶材料を製造する。従って好適な配向済みCLCP前駆体のピッチを凍結させるのは、UV-光に暴露(UV-硬化)によって簡単に実施することができる。
【0006】
所定の反射色に加えて、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)は、多少はっきりした視角依存性の色変化(viewing-angle dependent colour variation)(カラーシフト:colour shift)も示す。CLCPで製造したフィルム及び顔料は、この理由により、有価証券及び同定確認書類上のセキュリティエレメント(security element)として使用される。というのも前記カラーシフト効果は、コピー機で複製できないからである。CLCP材料の反射バンドは比較的狭く、その角度依存性は、以下の式:
【0007】
【数1】
【0008】
{式中、λrefl.は最大反射波長であり;nは材料の平均屈折率(1.5のオーダー)であり;pは分子螺旋のピッチであり;及びαは視角である(Eberleら、Liq.Cryst.1989年、第5巻、第3号、907〜916頁)}によって与えられる。この式から、視角が大きくなるにつれて、反射波長は短波長へシフトすると推測される。
【0009】
多くの種々の反射色は、製造条件を好適に選択することによって、同じ所定のCLCP前駆体材料で実現可能である。さらに、反射の扱い易さ(左または右)も同様に、材料の製造時にキラリティー誘導性添加剤(chirality inducing additive)を好適に選択することによって選択することができる。しかしながら、セキュリティ印刷用の顔料の分野では、物理的に実現可能な特徴の数が多いと、もっと多くの様々な機密文書用途を提供するという観点で好都合と考えられる。
【0010】
実現可能な様々な光学的応答、即ち「色」及び「カラー-シフト」の数は、様々な光学的応答をもつ様々なCLCP顔料タイプを同じインキ内で互いに組み合わせると、実質的に増やすことができる。そのような場合におけるセキュリティエレメントの製造は、所定の機密文書の用途を提供するために好適な割合で混合する、二種以上の様々な顔料の利用可能性に依存する。
【0011】
基本の光学応答をもつ2、3種のモジュラー顔料(modular pigment)の混合物を含むインキを製造すること(即ち、アルファベット文字を組み合わせること)の方が、光学的に基本の応答を組み合わせてより複雑な応答にする単一種類の顔料を製造すること(即ち所定の言葉を見つけること)よりもずっと簡単なので、様々な光学的応答を同じ物理的顔料に組み合わせることができれば、CLCP材料のセキュリティレベルはさらに高められると予測された。その一方で、基本的な顔料が利用可能であれば、前者(数種のモジュラー顔料の混合物を含むインキ)は本質的にどの印刷屋でも本質的に実施することができるが、後者(単一の顔料)は、顔料製造設備でのみ実施することができるので、顔料供給チェーンを完璧に制御することができる。
【0012】
積層された単層(laminated monolayer)から構成されたコレステリックポリマー多層(multilayer)はPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号(Dobrusskinら)により記載されていた。この文書は、第一の種類の整列キラル液晶ポリマー(CLCP)薄層と、第二の種類の整列キラル液晶ポリマー(CLCP)薄層とを含む着色材料であって、それぞれの薄層は、所定の角度で見たときに、それぞれの波長帯の光で反射し、且つ室温で固体である、前記着色材料を開示する。
【0013】
PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の着色材料を製造するために、第一の層L1のCLCP前駆体を光開始剤と混合し、第一の温度T1で、柔軟なキャリヤシートS上に塗布すると、CLCP前駆体が整列して第一の色を形成する。次いでこの層を前記第一の温度T1でUV-照射に暴露することによって、CLCP前駆体を架橋させる。第二の層L2は同様にして製造し、第二の温度T2で前記第一の層L1の上に塗布すると、CLCP前駆体が整列して第二の色を形成し、この層を前記第二の温度T2でUV-照射に暴露することによって、CLCP前駆体を架橋させる。赤外線から赤にシフトする第一の層と、青から紫外線にシフトする第二の層を使用する態様が開示され、直角からグレージング視野(grazing view)に進むと、その色が青から赤にシフトするデバイスが得られる。
【0014】
しかしながらPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の二重層材料(double-layer material)には、顔料に粉砕できないという重大な欠点がある。CLCP顔料の製造は、キャリヤシートから重合化コレステリック層の分離、続いて当業者に公知の方法を使用して、インキ及びコーティング組成物中で使用するのに好適な顔料サイズまでそれを粉砕することを含む。PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の二重層材料は粉砕プロセスに耐えられないので、全プロセスを通して単一の固体層(solid layer)として挙動するのではなく、キャリヤシートから分離する際に、またはジェットミル中で少なくとも高エネルギー導入の影響下で個々の層に分解(剥離)する。従って、PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号に開示のプロセス及び材料を使用しては、コレステリック多層から特定の光学特性をもつ顔料は製造できない。
【0015】
米国特許第2005/266158号では、光学フィルムまたは反射偏光子などの液晶の物体(body)について記載する。顔料はこの参照文献中で検討されていない。前記光学フィルムは、コーティングを溶媒−蒸発−及びUV−硬化段階の順にかけることによって、基材上の単一コーティングから物理的に生じた最高3層の種々の光学層を含むように製造される。溶媒を蒸発させる必要性があるので、この米国特許第2005/266158号のプロセスは、健康、安全性及び環境への懸念により、工業的な製造にはあまり適していない。
【0016】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、且つ特定の、今まで利用可能でなかった光学特性をもつ顔料を提供することである。
【発明の概要】
【0017】
上記目的は、本発明に従って、少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマーが重ねて配置されているコレステリック液晶ポリマーの多層であって、たとえばその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化している機械的に唯一の固体(mechanically unique solid body)を形成するために、ポリマー網状構造の中で前記少なくとも二つの層が化学的に層間架橋していることを特徴とする、前記多層により解決した。
【0018】
本発明に従って、そのような多層積層体(stack)はその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、それによって、好都合な点、従来利用可能でなかった光学特性をもつ顔料の製造が可能になることが知見された。
【0019】
本発明に従って、新規コレステリック多層材料、並びにそれから製造した顔料を提供し、前記材料は従来利用可能でなかった光学特性、たとえば高輝度及び視角依存性の色変化(viewing-angle dependent colour change)(カラーフリップ効果:colour-flip effect)、並びに特定の反射特性、たとえば直角から斜位の視野にいく際に短波長から長波長への色変化、または視角の変化に応じて色空間における極度に長い移動(long travel)を示すことができる。本発明に従って、前記光学特性は非常に精密に調整することができる。
【0020】
本発明に従って、上記CLCP多層顔料は、多層材料の製造の間に特定のプロセス条件を選択することによって得ることができ、機械的層間剥離に対する耐性を提供できることが知見された。
【0021】
個々の層から製造された複合体顔料の機械的層間剥離を防ぐために、前記それぞれの層の間に十分量の化学的架橋(層間架橋)を提供することが必須要件と判明した。従来法の材料、たとえばPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号に従って製造したものは、前記材料のそれぞれの層の反応性官能基が完全に架橋してから、次の層をその上に堆積しているので、十分な層間架橋が得られない。従って、前記WO95/08786号の材料では、層間接着は、化学結合によるのではなく、機械的及びファンデルワールス力によってのみ提供される。
【0022】
異なる光学特性は、最大反射の波長及び/または円偏光(circular polarization)状態であるのが好ましい。しかしながら、多層のCLCP層の一つに染料、顔料若しくは発光化合物を添加することによって得られるような光吸収または発光特性も含む。
【0023】
さらに多層は、磁性材料、ラジオ周波共鳴粒子(radio-frequency resonant particle)または法的マーカーなどの非光学特性をもつ添加剤も含むことができる。
【0024】
本発明の第一の態様に従って、層間架橋は、以下に概説されるように、交互硬化(staggered curing)(重合)によって実施される:
第一の層L1は、当業者に公知のように柔軟なキャリヤホイル上に適用するが、適用したフィルムは部分的にのみ硬化される。通常、この層はCLCP材料のピッチを凍結するのに十分に硬化されるが、その上部に適用される第二の層L2と続いて架橋するのに十分なもともと存在する反応性基をまだ僅かに保持する。前記部分的な硬化は、計量された低線量UV照射及び/または、好ましくは層L1の前駆体組成物中に必要量未満の光開始剤を使用することによって実施することができる。
【0025】
二度目のパス(pass)では、第二の層L2を層L1の上部に適用し、アセンブリ全体をここで完全に硬化させる。完全な硬化は、徹底的なUV照射、好ましくは層L2の前駆体組成物中に必要量よりも多い光開始剤を使用することと組み合わせて、実施することができる。
【0026】
必要により、第一の、部分的に硬化させた型のコーティングの追加の層(L1a、L1b、L1c、・・・)を堆積させるために、任意選択のパスを層L2の適用前に挿入することができる。
【0027】
本プロセスで得られた製品は、一つの固体ポリマー層(唯一の固体:unique solid body)として機械的に挙動し、これは(図6の好ましい態様に関してより詳細に以下に概説されるように)組み立てられるそれぞれの層の全ての組み合わさった反射特性を光学的に示す。
【0028】
さらに得られた製品は、異なる光学特性をもつ個々の層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化するということを特徴とする。この急激な変化は、本発明に従う製品の際立った特徴であり、(図3の好ましい態様に関してより詳細に以下に概説されるように)多層を横切る(across)コレステリック液晶ピッチの漸進的変化(evolution)で見られる。コレステリック材料の光学的干渉特性(反射波長)に関与する前記ピッチは、本発明の製品の層の接合部分で急激に変化する。たとえば、図3の好ましい態様では、層の左の部分では約200ナノメートルの第一のピッチであり、層の右側では約130ナノメートルの第二のピッチである。この第一のピッチから第二のピッチへの変化は、1ピッチの高さ未満で起きるので、中間のピッチは全く観察されない。
【0029】
従って、本発明に従って、「コレステリック液晶ピッチの急激な変化」なる用語は、前記界面の第一の光学層の至る所で一定のコレステリック液晶ピッチの第一の値から、前記界面の第二の光学層の至る所で一定のコレステリック液晶ピッチの第二の値への本発明の物体の個々の光学層の間の界面のコレステリック液晶ピッチの変化として定義され、前記変化は1ピッチ高さ未満以内で起きるので、中間のピッチは全く観察されない。
【0030】
光学層の至る所でのコレステリックピッチの不変性は、たとえば、p=a*n+bに従ってピッチ数nに対してピッチ高さpの線形回帰における傾きの欠如から統計的に決定することができる。もし実験的に決定された傾き(a)がその標準偏差シグマ(a)の3倍よりも高かったら、それ(傾き)はゼロではない、即ちピッチは一定ではないことは99.7%確かである。そうでない場合には、ピッチは一定と推測することができる。
【0031】
光学層境界における液晶ピッチのこの急激な段階的な変化(stepwise change)は、本発明の製品で得られる特別なプロセスの結果であり、溶媒蒸発及びUV-硬化段階の順序にコーティングを暴露することによって、基材上の単一コーティングから物理的に生成した最高三つの種々の光学層を含むように製造されている、米国特許第US2005/0266158A1号の製品とは対照的である。特筆すべきことに、前記プロセスは急激なピッチ変化を生成することができない。どちらかというと、走査電子顕微鏡写真で容易に視覚化される液晶ポリマー層を横切る多少緩やかなピッチ変化(gradual pitch variation)は得られる。
【0032】
製造の結果として、本発明の製品のコレステリックテクスチャーは、第一の光学層の厚さ全体の至る所で、第一の反射波長に相当する(統計変動内での)一定の第一のピッチ値、続いて第二の光学層などの厚さ全体の至る所で、第二の反射波長に相当する(統計変動内での)一定の第二のピッチ値を有する。ここにはコレステリックピッチ値のはっきりした段階型レベル(step-type level)があり、米国特許第2005/0266158A1号に従った製品のようになだらかな変動(gliding variation)は全くない。
【0033】
本発明において、(単数または複数の)第一の重合段階は、続く重合段階の間に隣の層との架橋反応を受け得る、十分な反応性基を残すように実施される。その結果、全く相境界が存在しない、完全に架橋したポリマーフィルムとなる。
【0034】
本発明の二重−または多層−構造体を完全に実現する別の方法では、対応するコレステリック液晶前駆体組成物の逐次コーティングを、柔軟なキャリヤホイル上に単一パスで適用する。この組成物は、インラインコーティング工程によって溶融状態でキャリヤに適用され、適所で液晶混合物を凍結し、且つその上部に適用される、次のコーティング層と混合しないようにそれぞれ適用されたコーティングは直ちに冷却される。複合コーティング(composite coating)全体の配向及び硬化(重合)は、最終硬化工程で一度に実施する(結合硬化:joint curing)。個々の層の厚さは、第一の態様の通りであり、以下、詳細に記載されよう。
【0035】
交互及び結合硬化の所定の態様の変形では、コーティングは有機溶媒または溶媒混合物中のCLCPモノマー前駆体材料の溶液を使用して実施し(湿潤コーティング)、それによって毎回のコーティング操作の後で、溶媒を蒸発(乾燥)させる。
【0036】
所定の態様の別の変形では、耐熱性材料(たとえばスチール、アルミニウムなど)の連続ベルトをコーティング用のキャリヤとして使用する。これによって、最高400℃の温度でその液晶相をもつCLCP前駆体の加工が可能になる。
【0037】
所定の態様のいずれかにおける堆積したCLCP前駆体は、硬化段階の間に空気中の酸素を排除するために、PETまたは任意の他の好適な材料のカバーホイルによって保護することができる。このカバーホイルは、硬化で使用するUV-照射を吸収しないような、十分に薄く且つ好適な材料でなければならない。
【0038】
ポリマーの硬化は、不活性条件下(即ち、窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの不活性気体下)で実施することができる;これは、酸化反応を防止するために、電子ビーム硬化の場合には特に必要である。不活性条件の場合には、酸素を排除するためにカバーホイルはもはや必要ではない。
【0039】
従って、上記CLCP多層を製造するための本発明のプロセスは、柔軟なキャリヤ基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の少なくとも二つのコーティング層を逐次堆積させ、続いてアセンブリ全体を完全に硬化して、コレステリック液晶ポリマーの少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチの急激な変化を有する、機械的に唯一の固体を形成するために、コーティング内の至る所で架橋可能な基の全てを実質的に架橋させることを含む。別のプロセスは、第一の変形に従って、堆積後にそれぞれのCLCPコーティング層を配向させ、部分的に硬化させて、機械的に唯一の固体を形成するために、隣接するコーティング層と化学的架橋に十分であり、且つコレステリック液晶ポリマーの少なくとも二層の間の界面でコレステリック液晶ピッチの急激な変化を有する層内に所定量の架橋可能な基を残すという点で異なっている。また、第二の変形に従って、堆積後にそれぞれのCLCPコーティング層を凍結または蒸発-乾燥する。第二の変形に従って、CLCPコーティング層の配向は、全てのコーティング層の堆積後、アセンブリ全体を完全に硬化する段階の前に、アセンブリ全体を調質することによって実施する。
【0040】
種々の色及びカラーシフトに加えて、ヒトの裸眼では見ることができず、且つ適切な装置を利用してのみ明示することができる、様々な他の光学特性を本発明のCLCP材料で製造することができる。
【0041】
狭帯域スペクトル反射は、高度に規則性のピッチをもつCLCP材料に固有な特徴であり、従来、より鮮明な反射色、そしてより魅力的な顔料を得るために、CLCP顔料のスペクトル反射帯域幅を広げるために多大な努力が費やされてきた。CLCP材料のスペクトル反射帯域は、製造プロセスの間の好適な操作によって、ランダムまたは漸進的なピッチ変化(progressive pitch variation)を導入することによって拡大することができる。これは、本発明の教示によって初めて可能になったことであった。
【0042】
本発明のプロセス及び材料により、所定のCLCPのスペクトル反射プロフィールをより正確に製造することが可能になる。というのも、前記プロフィールは、予定波長においてそれぞれその特徴的な狭帯域反射プロフィールをもつ好適な数の層を重ね合わせることによって正確に構成することができるからである。これにより、目に見える外観として表れないが、分光計または特定の光学フィルター装置を利用して明示することができる、目に見えない、狭帯域スペクトル特徴をもつ顔料で符号化(coding)することができる。
【0043】
CLCPの反射光は円偏光されているという事実は、さらにセキュリティエレメントとして使用することができる。特筆すべきことに、この円偏光の方向(sense)は、製造プロセスによって決定される。円偏光の扱いやすさは、本発明の多層CLCPのそれぞれの層に対して個別に選択することができ、この偏光の扱い易さ(handiness)は、対応する偏光フィルターを使用して証明できる。従って、多層CLCPのどの層にも、個々に狭帯域反射色及び個々の偏光取り扱い易さ(handiness)を与えることが可能である。
【0044】
本発明の多層ホイルは、多くの種類のセキュリティ及び装飾用途で使用することができる。好ましくはセキュリティスレッド(security thread)、またはホログラムやKinegram(登録商標)に似たホイルセキュリティエレメントの形態で、紙幣、証明書または他の有価証券若しくは同定確認用書類用のラミネートとして使用するのが好ましい。
【0045】
より好ましくは、本発明の多層ホイルは、インキ及びコーティング組成物、全ての種類のセキュリティ及び装飾用コーティング用途、たとえば有価証券及び同定確認用書類用セキュリティインキ、芸術及び商業印刷用途用インキ、装飾コーティング用塗料、並びに全ての種類の化粧品(マニキュア、メーキャップなど)で使用するために顔料に混ぜ合わせる。これに加えて、本顔料は全ての種類のプラスチック製品の素材(mass)に配合することができる。
詳細な説明
本発明の多層スタックは、当業者に通常公知のCLCP組成物から製造する。
【0046】
本発明のCLCPの好ましい組成物は、以下のものを含む(全固体含有量に対して重量%(wt%)):
A)平均一般式(1):
Y1−A1−M1−A2−Y2(1)
{式中、Y1、Y2は、同一または異なり、且つアクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシ、ビニルエーテル若しくはビニル残基などの架橋可能な基を表す;
A1、A2は、一般式CnH2nの同一または異なる残基であり、ここでnは0〜20の整数であり、且つ一つまたは数個のメチレン基は酸素原子により置き換わっていてもよい;
M1は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−X3−R4−を有し、
ここでR1〜R4は、-O-、-COO、-COHN-、-CO-、-S-、-C≡C-、-CH=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、及びC-C結合からなる群から選択される同一または異なる二価の残基であり;ここでR2−X2−R3またはR2−X2またはR2−X2−R3-X3はC-C結合であってもよい;
X1〜X3は、1,4-フェニレン;1,4-シクロへキシレン;アリール核に6〜10個の原子と、O、N及びSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子とを持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するヘテロアリーレン;3〜10個の原子を持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するシクロアルキレンからなる群から選択される同一または異なる残基であり;
ここでB1〜B3は、水素、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル並びに、エーテル酸素、チオエーテル、硫黄またはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつアルキル-、アルコキシ-またはアルキルチオ-残基からなる群から選択される同一または異なる置換基である}の少なくとも一つまたは数種の三次元的に架橋可能な化合物20〜99.5重量%、好ましくは60〜99重量%;
B)平均一般式(2):
V1−A1−W1−Z−W2−A2−V2(2)
{式中、V1、V2は、同一または異なり、且つ以下のもの:アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ビニル、イソシアネート、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル、並びにエーテル酸素、チオエーテル、硫黄若しくはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつ、アルキル-、アルコキシ-若しくはアルキルチオ-残基、またはコレステロール残基の残基を表す;
A1、A2は、上記の通りであり;
W1、W2は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−を有し、
ここでR1、R2、R3は、上記定義の通りであり、且つここでR2またはR2−X2またはX1−R2−X2−R3はC-C結合であってもよい;
X1、X2は、上記の通りであり;
Zは、ジアンヒドロヘキサイト(dianhydrohexite)類(たとえばイソソルビドまたはイソマンニド)、ヘキソース類、ペントース類、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール類、並びにV1またはV2がコレステロール残基であるときC-C結合からなる群から選択される二価のキラル残基である}の少なくとも一つのキラル化合物0.5〜80重量%、好ましくは3〜40重量%。
【0047】
これらの組成物は、当業界で既に公知であり、且つ欧州特許第EP1 149 823号または同第1 046 692号などにその製造法と共に記載されている
本発明に従って、特に好ましい液晶(LC)混合物は、以下の成分をベースとする。
【0048】
成分A)として:ネマチックの主たる成分ヒドロキノン-ビス-[4-(4-アクリロイルブトキシ)-ベンゾエート]、(Broer、D.J.、Mol、G.N.、Challa、G.;Makromol.Chem.1991年、192巻、59頁に従って得た)。
【0049】
成分B)として:以下のキラル成分の一つ:
a)DiABIm(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド、欧州特許第EP1 149 823号、実施例13に従って得た)
【0050】
【化1】
【0051】
b)AnABIs(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド、欧州特許第EP1 046 692号、実施例3に従って得た)
【0052】
【化2】
【0053】
c)DiABIs(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ(acryloloxy))-ベンゾイル]-イソソルビド、欧州特許第EP1 046 692号、実施例4に従って得た)
【0054】
【化3】
【0055】
さらに好ましい成分Bは、メタクリル酸コレステロールエステル(De Visserら、J.Polym.Sci.、A1(9)、1893頁(1971年)に従って得た)である。
【0056】
CLCPの円偏光の方向は、上記光学活性成分B)、特にジアンヒドロヘキサイト(たとえばイソソルビドまたはイソマンニドのような)、ヘキソース、ペントース、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール、並びにV1、V2がコレステロール残基であるときC-C結合から選択される二価キラル残基Zを好適に選択することによって選択することができる。たとえばイソソルビド誘導体を使用すると、全く右円偏光反射となり、コレステロール-含有誘導体またはイソマンニドを使用すると、全く左円偏光反射となる。
【0057】
本発明に従った好ましい二価残基は、以下のものである:
a)イソソルビド:
【0058】
【化4】
【0059】
b)イソマンニド:
【0060】
【化5】
【0061】
種々の実現可能な組成物は、CLCPの最大反射の色(即ち、コレステリックピッチ)を設定することができるその濃度によって、成分B)中の異なる内容物により本質的に互いに識別される。
【0062】
成分B)の内容物を変動させることによって、重合に必要な光開始剤の最適濃度も同様に変動する。有用な濃度は、低UV線量の第一の照射段階では0.00%〜5%、好ましくは0.25%〜2%であり、高UV線量の第二の照射段階では0.5%〜7%、好ましくは1%〜4%である。
【0063】
それぞれの層の光開始剤の濃度範囲、並びに硬化剤のそれぞれの量(UV-照射、電子ビームなど)は、本明細書中に開示された値から多少差があるかもしれない。しかしながら、当業者は、続く硬化段階または最終硬化段階で必要な層間架橋反応を受け得る、それぞれの層の中の十分量の未反応(活発な)基を提供するために本発明の一般原則を遵守するだろう。工業的な観点から、UV-照射による硬化は、最も実用的な選択肢であるということが判明した。
【0064】
少なくとも一つの光学活性が異なるCLCPの少なくとも二層が重ねて配置される、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を製造するプロセスは、
a)柔軟な基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる(deposit);
b)前記CLCPコーティングを配向させる;
c)層の中にかなりの量の架橋可能な基を残すように、段階a)の配向層を部分的に硬化させる;
d)場合により段階a)〜c)を選択された回数繰り返して、先のコーティングの上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させ、配向させ、及び部分的に硬化させる;
e)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
f)前記CLCPコーティングを配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させるように、アセンブリ全体を完全に硬化させる;
各段階を含み、前記コレステリック液晶ポリマー(LCP)は、その内部構造に悪影響を与えることなく、即ち剥離することなく、顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する、機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造内で互いに化学的に架橋することを特徴とする。
【0065】
少なくとも一つの光学活性が異なるCLCPの少なくとも二層が重ねて配置される、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を製造する別のプロセスは、
a)柔軟な基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる(deposit);
b)前記CLCPコーティングを凍結または蒸発乾燥させる;
c)先のコーティング上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させるために、段階a)及びb)を場合により選択された回数繰り返す;
d)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
e)前記CLCPコーティングを凍結または乾燥する;
f)アセンブリ全体を調質して、堆積CLCP層を配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させるように、アセンブリ全体を完全に硬化させる;
各段階を含み、前記コレステリック液晶ポリマー(LCP)は、その内部構造に悪影響を与えることなく、即ち剥離することなく、顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する、機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造内で互いに化学的に架橋することを特徴とする。
【0066】
本明細書において、特にコーティングは溶融状態または溶液から適用することができる。硬化は、UV-照射、好ましくはUV/A照射によって実施することができる。UV照射線量は、第一の層に関しては低く、最終層に関しては高く選択することができる。光開始剤の量は、第一の層に関しては少なく、最終層に関しては多く選択することができる。硬化は、電子ビーム照射によって実施することもできる。
【0067】
本明細書の文脈において、ポリマー前駆体の硬化は、UV-照射によって実施するのが好ましいが、当業者に公知の他の硬化プロセス、たとえば電子ビーム硬化、超音波硬化なども所定の用途でUV-照射と好都合に置き換えられるかもしれない。典型的なUV線量は0.07〜0.5J/cm2である(Eltosch、ハンブルグ、ドイツの放射計UV-Powerpukで測定)。
【0068】
第一の態様に従って及び、ドクターブレードコーティングまたはローラーコーティングなどの当業者に公知のコーティングプロセスを使用して、PETフィルムまたは連続のゴム、プラスチック若しくは金属ベルトなどの柔軟なキャリヤをコレステリック前駆体混合物の第一の層でコーティングし、調整(set up)して所定の第一の光学特性、好ましくは反射色(スペクトル反射最大)を与える。コレステリック前駆体混合物は、(0〜0.5%、好ましくは0〜0.25%の範囲の)少量の光開始剤を含む。続く重合は、低線量のUV-照射(0.03〜0.3J/cm2、好ましくは0.05〜0.15J/cm2)を使用して実施し、まだ反応性(活発な)基を含むが、安定な色特性(凍結されたピッチ:frozen pitch)をもつポリマーのコレステリックフィルムを与える。第一のコーティングの平均厚さは0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0069】
必要により、それぞれ選択された光学特性をもつ、第一の層と同じ型の追加の中間層を、このようにして得られ、硬化させたコーティングの上部に適用することができる。それぞれの中間層に関しては、光開始剤の量と硬化UV-照射線量は、第一の層に関して示したように、低く保持する。これらのコーティングの平均厚さは0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0070】
最終段階では、所定の光学特性、好ましくは反射色、をもたらすように調質され、そのスペクトル反射最大が第一のコーティングの波長と好ましくは10〜80nm、好ましくは30〜50nm異なるコレステリックモノマー前駆体混合物の最終層を(単数または複数の)既に堆積されたコーティングの上に適用する。最終コーティングは豊富な量の光開始剤(0.2〜3%、好ましくは1.75%の範囲)を含み、重合は、比較的高い線量のUV-照射(0.1〜0.5J/cm2)を使用して実施する。最終コーティングの平均厚さは、0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0071】
得られたCLCPフィルムは剥離に対して完全に耐性であり、単一層のように機械的に挙動する。即ち、顔料を製造するための続く脱着(detachment)及び粉砕プロセスの間に、第一の層と第二の層との分離は全く観察されなかった。これは、複合フィルムの厚さの至る所で相の境界の兆候が全く見られない、走査電子顕微鏡写真により確認される。第一の層から第二の層への遷移は、コレステリック構造の変動する、僅かに見えるピッチによって推測されるのみである。
【0072】
第二の態様では、柔軟なキャリヤ、たとえばPETホイル(または他の好適なキャリヤ)を続いて、第一のコーティング工程A(ドクターブレード、スプレー、またはローラーコーターであってもよい)によって第一の溶融物の第一の層をキャリヤに適用した方法で、別の液晶溶融物でコーティングする。このコーティングは熱的にクエンチ(即ち、液晶相の固化またはガラス転移点未満に急速に冷却)し、光学特性、好ましくは第一のコーティングの反射最大から少なくとも20nm波長が異なるのが好ましい反射最大を示すように調整された第二のコーティングを、同じパスで、即ち第二のコーティング工程B(ドクターブレード、スプレーまたはローラーコーターであってもよい)により、先に適用した層を架橋することなく、第一のコーティングの上部に適用する。第二の層は、上記のように熱的にクエンチされ、必要により、同じパスでさらにコーティング工程C、Dなどにより、さらなるコーティングを適用することができる。
【0073】
このようにして得られた多層コーティングは最終的に同じパスの間に第二のPETホイル(または他の好適なカバーホイル)で覆い、液晶状態に戻しつつ、既に適用したコーティング層の全てがその特徴的な、前もってプログラムされたピッチをとる、使用した材料に依存して30℃〜140℃の間、より好ましくは90℃〜120℃の間で選択されたTの調質領域(tempering zone)を通す。次いでコーティング全体を、好適な量のUV-照射(または電子ビーム照射、または当業者に公知の他の硬化プロセス)を適用することによって、一度で完全に架橋(重合)させる。
【0074】
PET基材ホイルと似た前記PETカバーホイルは、酸素感受性のUV-重合反応の間に空気中の酸素の影響を抑制するために使用する。このカバーホイルは、最終CLCP層の適用直後で、且つUV-重合工程の前にCLCPコーティングの上部に適用する。
【0075】
カバーホイルを使用する目的はふたつある。ひとつはこのカバーボイルは重合を阻害する酸素を排除し易くするという点であり、二つめは、コーティングを均質化且つ正しい位置に置くという機能がある点である。
【0076】
重合したCLCPフィルムをキャリヤとカバーホイルから、当業者に公知のように剥離、擦過、ブラシがけ、または他の操作によって外す。得られた粗いCLCPフレークを、ハンマー-、衝撃-、ボール-、またはジェットミルを使用する粉砕などの公知の粉砕操作を使用して顔料にワークアップ(work up)し、選別及び篩い分けなどの公知の分離方法により分類して、5〜5000マイクロメートルの適用に指定された範囲のd50-値をもつ指定粒子サイズの顔料を得る。
【0077】
この態様の変形では、反射波長などの様々な光学特性をもたらすように調整された、CLCPモノマー前駆体材料の溶液を、当業者に公知のコーティングプロセス(たとえばローラーコーティング、ドクターブレードコーティング、カーテンコーティングなど)を使用して、柔軟なPETキャリヤフィルム(または他の好適なキャリヤ)上にコーティングし、それぞれのコーティング工程後に溶媒を蒸発させる。最終的に得られた「サンドイッチ」を第二のPETホイル(または他の好適なカバーホイル)で覆い、先に適用したコーティング層の全てがその指定の、既にプログラムされたピッチをとる調質領域で液晶状態に戻す。次いでコーティング全体を好適量のUV-照射(または電子ビーム照射、並びに当業者に公知の他の硬化プロセス)を適用することによって、一度に完全に架橋(重合)させる。
【0078】
さらに別の態様では、耐熱性材料(たとえばスチール、アルミニウムなど)の連続ベルトを、反射波長、偏光などの光学的に異なる特性をもたらすように調整された、CLCP前駆体の溶融物または溶液で複数回コーティングする。このコーティングは上記のように処理する。
【0079】
耐熱性キャリヤベルトを使用すると、最高400℃の温度でその液晶範囲を有する液晶ポリマー前駆体を処理することができる。同様に架橋反応は、UV-照射または電子ビーム照射などの当業者に公知の方法に従って実施する。高温では、反応性官能基または生成物の酸化変質を防ぐために不活性条件(酸素を排除する)を選択しなければならない。窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの不活性ガスを使用して、酸素濃度を5ppmから1%、好ましくは10〜100ppmの範囲に低下させる。
【0080】
硬化段階で不活性条件を使用すると、酸素感受性材料の場合でさえも、カバーホイル(第二のPETホイル)は酸素を排除するのにもはや必要ではない。
【0081】
キャリヤベルトの場合、基材からCLCP層の剥離は、高圧エアジェット、固体CO2ジェット、ブラシ掛けプロセスなどを使用しても実施することができる。
【0082】
本発明のCLCP多層は、本発明に従ったプロセスを使用して顔料に作成するのが最も好ましい。この目的のために、剥離装置または剥離ナイフなどの好適な装置を使用して、多層をキャリヤから取り外して、粗いCLCPフレークとする。これらのフレークは、粉砕または切断工具などの好適な工具を使用してさらにCLCP顔料に粉砕する。このCLCP顔料は最終的に、選別または篩い分け操作により分類する。
【0083】
本発明に従って製造した顔料フレークは、0.1〜50マイクロメートルの範囲の厚さ及び10〜1000マイクロメートルの範囲の直径を有する。それぞれの用途の具体的な要件に従って、これらの範囲内で狭いサブレンジが選択される。0.5〜6マイクロメートルの範囲のフレーク厚さと、1〜200マイクロメートルの範囲のフレーク直径をもつ顔料が最も好ましい。
【0084】
本発明に従って得られた顔料粒子は機械的に単一固体として挙動するが、光学的には構成されている個々の層の組み合わさった特性(combined properties)を示す。かくして、本発明のプロセスを使用して、従来法に従っては製造できない反射及び/または他の光学特性をもつCLCP顔料を製造することが可能である。
【0085】
特筆すべきは、独特のカラーシフト、たとえば緑から赤-スミレ色への色の変化を作ることができるのに対し、慣用のCLCPではせいぜい緑から青に色の移動(colour travel)を示すことができるだけであるという点である。
【0086】
同様に、異なる反射波長をもつ個々の層が異なる方向の円偏光の光を反射するCLCP多層を製造することができる。得られたフィルム、並びにそれから製造した顔料は、裸眼で第一の色を示し、それぞれ左-または右-円偏光フィルターを通して見たときに、別の第二及び第三の色を示す。
【0087】
本発明に従って製造した製品は、光学層接合部分を横切るコレステリック液晶ピッチのその急激な変わり目で、走査電子顕微鏡下で認識できる(たとえば、以下に記載する図3に従った態様を参照)。注目すべきことに、前記ピッチはコレステリック材料の光学干渉特性(反射波長)に関与する。図3を参照して、層の左の部分では約200ナノメートルピッチ高の第一のピッチと、層の右の部分では約130ナノメートルピッチ高の第二のピッチがある。
【0088】
このようにして得られたCLCP顔料は、印刷用インキ、並びにラッカー及びプラスチック材料の原液着色(練り込み着色:mass-colouring)で使用される。特に、本発明に従った顔料は、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、宝くじ及び乗車券、製品セキュリティラベルなどの光学セキュリティマーキング印刷用の印刷用インキに配合することができる。前記光学セキュリティマーキングは、視角を変えることによって可視光をシフトする効果(visible colour shifting effect)とは別に、対応する装置を使用して明示することができる、目に見えない円偏光効果も示すという好都合な点をもつ。
【0089】
セキュリティエレメントの特別な態様では、CLCP多層の第一の層は第一の色、たとえば左-円偏光の緑を反射し、CLCP多層の第二の層は第二の色、たとえば右-円偏光の赤を反射する。セキュリティエレメントによって示された第一の可視光が裸眼には示され、これは緑と赤の両方の反射から構成される。得られた外観は黄色である。しかしながら左-円偏光フィルター下で見ると、同じセキュリティエレメントは緑のように見えて、右-円偏光フィルター下で見ると、対応して赤に見える。
【0090】
本発明の顔料は、好ましくはシルクスクリーン、フレキソ及びグラビア印刷プロセス用の印刷インキに使用される。しかしながら、オフセット、銅板インタリオ及びタンポグラフィック(tampographic)印刷プロセスも同様に考えられる。
【0091】
印刷用インキでの使用に加えて、本発明の顔料は、工業的及び自動車コーティング用のラッカー、並びに化粧品用及びプラスチック業界のプラスチック及びマスターバッチの原液着色用での用途も見つけることができる。
【0092】
本発明に従ったコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層は、機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、または化粧品における用途で使用することができる。
【0093】
本発明に従ったフレーク顔料は、機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、またはインモールド(in-mold)用途、または化粧品における用途で使用することができる。
【0094】
本発明は、本明細書中に開示したフレーク顔料を含む任意の物体も請求する。特筆すべきは、このフレーク顔料は、印刷用インキ及びコーティング組成物で使用することができ、機密文書、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、アクセスカード、乗車券または製品セキュリティラベルなどの保護に関して使用することができる。
【0095】
本発明の多層コレステリック液晶ポリマー(CLCP)及びそれから製造した顔料はさらに、以下の非限定的なリストに従って、広範な技術的用途で使用することができる:自動車用塗料、OEM及び補修塗料(refinish);浸漬コーティング(たとえばキャンドル用);バッチまたはコンパウンディングによるプラスチックの着色;インモールド用途(PCフィルム上の印刷、これは三次元プラスチック部品の表面につける);化粧品用途、たとえばマニキュア、アイシャドウ、ローション、マスカラ、メーキャップ、クリーム、パウダー、ジェル(gel)、ヘアジェルなど;パウダーコーティング;工業的コーティング-水-及び溶媒によって運ばれる(borne);プラスチック及び金属用コーティング;ジェルコート(gel coat)(たとえばボート及びヨット用);印刷用インキ(スクリーンインキ、フレキソ、グラビア、インタリオ);包装;セキュリティ用途、たとえばセキュリティスレッド、マーキング、製品セキュリティラベル、シール、ホットスタンプ機能など;紙幣、商品券(voucher)、ID書類、証明書、(輸送機関)チケット上のセキュリティ機能;消費家電製品用の塗料及びコーティング;スポーツ機材用の塗料及びコーティング;家具用の塗料及びコーティング;ガラス塗料;建築用塗料;ルアーフィッシング;製品識別用機能;エーロゾル塗料(日曜大工);交通標識;宣伝;機械で読み取り可能な機密機能(色+偏光);娯楽装置;ビニール、人工皮革(シート);デカール;航空機コーティング。
【0096】
本発明を、非限定的な態様及び図面を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0097】
実施例1〜15で使用した出発材料
実施例1〜15の顔料の合成において、以下の出発物質を使用した。実施例セクションの最後の表1において、どの成分をどの実施例で使用したか太字の数字で示す。
【0098】
i)ネマチックの第一成分(上記式中の成分A):
ヒドロキノン-ビス-[4-(4-アクリロイルブトキシ)-ベンゾエート]、(1)(Broer、D.J.、Mol,G.N.、Challa,G.;Makromol.Chem.1991年、195号、59頁に従って得た)。
【0099】
ii)キラル成分(上記式中の成分B):
AnABIs、(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド、(2)(欧州特許第EP1 046 692号、実施例3に従って得た)。
DiABIs、(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ)-ベンゾイル]-イソソルビド、(3)(欧州特許第EP1 046 692号、実施例4に従って得た)、
DiABIm、(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド、(4)欧州特許第EP1 149 823号、実施例13に従って得た)、または
メタクリル酸コレステロールエステル、(5)(De Visserら、J.Polym.Sci.,A(19)、1893頁(1971年)に従って得た)。
【0100】
iii)重合安定剤2,6-ジ-t-ブチル-4-(ジメチルアミノメチル)-フェノール(6)(Ethanox(登録商標))703、Ethyl Corp.,Baton Rouge,LA 70801)。
【0101】
iv)光開始剤(7)Irgacure(登録商標)819(Ciba Specialty Chemicals GmbH,Lampertsheim)。
実施例1〜15の顔料の一般的な合成
ネマチックの主成分1とそれぞれキラル化合物2、3、4または5と、約300ppmの安定剤6を(主成分100部に対して)実施例で与えられた重量比に従って、加熱可能な容器中で一緒に混合し、透明な液体が生成するまで融解した。この融解物をスターラーで均質化し、最後に光開始剤7を攪拌下で添加した。実施例で与えられた重量比に従って最終成分として光開始剤7を別に攪拌すると、混合物の早過ぎる熱誘導された架橋を防ぐように機能する。このようにして得られた組成物を、基材上に生成させるコレステリック層用の材料として使用した。
【0102】
それぞれの実施例で使用した化合物の量を表1に記載する。
【0103】
上記のようにして製造したLC-混合物は、以下の表1に示された層厚さで予め調質された柔軟なポリエチレン-テレフタレート(PET)キャリヤ基材上にローラーコーターを使用して、概説したプロセスに従ってコーティングした。
【0104】
通常、上記で概説したように、基材上の二段階コーティングプロセスでは、第一のコレステリック層をPET基板上に直接適用し、これに続いて第二のコレステリック層を前記第一の層上に適用した。所定の拡散時間、即ち、調質装置(tempering unit)中で二層パケットの滞留時間後、コーティング全体をUV-重合させた。
【0105】
全て適用した層の厚さは、コーティングした領域毎にLC-混合物の使用量をベースとしてそれぞれ制御した。コーティング終了後、層厚は、層厚測定装置Supramess(Maher GmbH、D-3703 Gottingen)を利用してクロスチェックした。最大反射波長は、UV/VIS分光計(Model Lambda 19、Perkin Elmer、Ueberlingen、ドイツ)を利用してそれぞれの層の透過スペクトルから得た。得られた値を以下の表1にまとめる。
【0106】
酸素感受性のUV-重合反応の間の空気中の酸素の影響を抑えるために、PETカバーホイル、PET基材ホイルを使用した。このカバーホイルは、最終CLCP層の適用直後と、UV-重合段階前に、CLCP-コーティング上部に適用した。
【0107】
それぞれの層を適用した後、CLCP-コーティングし、PETホイルで覆った基材は調質/配向トンネルを通過し、ここで基材は90℃〜125℃の範囲、通常約110℃の温度に暴露した。このトンネル長さは一定なので、液晶コーティングの配向時間は、通過時間により決定される。トンネルの終端部では、配向済み液晶相は水銀UVランプにより重合した(UV/A 0.07〜0.5J/cm2の範囲の線量)。
【0108】
第一層は、低い線量のUV照射と低い濃度の光開始剤を使用することにより、完全には架橋しなかった。カバーホイルを取り外し、PETホイル基材上の固化した第一のコーティングを、前記第一の層とは少なくとも20nm反射波長が異なるLC-混合物の第二の層でコーティングした。
【0109】
第二のコーティング操作と対応するカバーホイルの適用後、コーティング全体(即ち得られた多層)を0.07〜0.5J/cm2範囲のUV/AのUV線量を使用して、第二の重合にかけた。
【0110】
この後、得られた基材、CLCP-二重層とカバーホイルの「サンドイッチ」を分離し、ナイフを使用してPETホイル(基材及び/またはカバーホイル)からCLCP-二重層をはぎ取った。粗いフレーク状で存在するはぎ取ったCLCP-材料を(Hokosawa-Alpine Augsburg、ドイツの)エアジェットミルで粉砕して顔料を作り、続いて選別/ふるい分けして、粒径d50が18〜35マイクロメートルのCLCP-顔料を製造した。粒径は、Sympatec GmbH、Clausthal-Zellerfeldの粒径アナライザーHELOS(水中で分散測定)で測定した。図1、2及び3は得られた顔料の電子顕微鏡写真を示す。
【0111】
本発明に従った二層CLCPフィルムの破断端部の走査電子顕微鏡写真(図2)は、a)(破砕角点:fracture kinkとして見えるであろう)機械的な相境界は二つの相の間に全く見えず、且つb)異なる光学的特性を持つ二つの相が存在することを示す。注目すべきは、コレステリック構造体の螺旋ピッチがフィルム厚にわたって細かいストライドとして電子顕微鏡写真で見えるということである。フィルムの中間には(螺旋ピッチの変化に相当する)ストライド密度の急激な変化がはっきりと見られる(図3:画像左部分の約200ナノメートル対右部分の約130ナノメートル)。本発明の材料は、異なる特性の光学層の界面で螺旋ピッチが急激に変化することを特徴とする。ピッチは第一の値から第二の値へ一回のピッチ高で変化するので、中間のピッチ領域は全く観察されない。
【0112】
コレステリックテクスチャーに従って、電子顕微鏡的に目に見えるストライドは、それに沿ってフレークが裂けるかもしれない層があるという意味で、機械的な層構造(mechanical layer structure)ではないが、実際には、本発明の材料ではそのような開裂は全く観察されなかった。観察されたストライドは規則正しいコレステリック材料の示差電子帯電効果(differential electronic charging effect)によるものであり、これは、SEM写真を撮る際に所定の実験条件を使用して形成することができる。
【0113】
比較のために従来法(PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号)のプロセスに従って製造した多層顔料は、図4及び5に示されているように、異なる副層の間にはっきりと明確な機械的相境界を示し、これらの事前に設定された破砕帯(fracture zone)で個々の薄層に分解する傾向がある。
【0114】
図6は、その反射最大が異なる二つの個々のCLCP層の反射スペクトル(a,b)と、(a)と(b)の両方の反射最大を示す、本発明に従った対応する二重CLCPの反射スペクトル(c)とを示す。
【0115】
本発明のプロセスに従って製造した製品と、従来法(米国特許第US2005/0266158A1、Pokornyら)のプロセスに従って製造した製品との間の差を明示するため、比較のために、コレステリック多層をCLC-ポリマー、CLC-モノマーと溶媒を含む厚い、単一液層(liquid layer)を適用することによって、Pokornyらに従って製造した。このようにして適用した層は、順にi)第一の部分的な蒸発-乾燥、ii)第一の部分的なUV-硬化、iii)第二の完全な蒸発乾燥、及びiv)第二の完全なUV-硬化に暴露した。
【0116】
図7は、得られた8マイクロメートル厚さのCLCP層の断面の電子顕微鏡写真である。コレステリック液晶ピッチに急激な変化はないが、底部から上部へピッチが徐々に増加し、続いてそれよりは急ではあるが、まだピッチが徐々に減少している。このコレステリックピッチは、層を横切って滑らかに発展し、目だった段差は全くない。
【0117】
図8は、Pokornyらによって報告されたスペクトル(米国特許第2005/0266158A1号の図16、17)に似ている、得られた透過スペクトルを示す。これは三つの異なる光学層の存在を示す。
【0118】
観察された違いを示すために、多層を横切った個々のピッチ高を従来法(図7)及び本発明(図3)に関して、SEM画像で測定した。
【0119】
図9aはPokornyらに従って製造した多層を横切るピッチ高の漸増と漸落(gradual increase and decrease)を示し、図9bは、本発明に従って製造した多層を横切るピッチ高の急激な減少を示す。前記第一の層から第二の層へのピッチの変化は実質的に一つのピッチ高内で起きているので、中間のピッチ高の領域は全く観察されない。
【0120】
熱力学的観点から、表面での蒸発が関与すると、Pokornyらのプロセスで使用されているような部分的な蒸発プロセスの条件はコレステリック層を横切って均質ではないので、ピッチ高を徐々に変化させるはずである。本発明に従ったプロセスでは、揮発性成分の蒸発は含まれず、所定の特性の層をそれぞれの層の上部に適用するので、層境界で特性が急激に変化する。
【0121】
【表1】
【0122】
キラル化合物の数字は、テキスト中に示した数字を指す。
【0123】
UV/A照射の必要な線量は、所定の実施例に関しては0.3J/cm2のオーダーであり、UV出力の表示100%に相当した。表の中の低いパーセンテージ値は、対応して低いUV/A線量を指す。
【0124】
本発明に従った顔料を含むラッカーの製造
上記に概説したようにして得られたCLCP-顔料を透明なコーティング組成物(たとえば、Tinted Clear Additive Deltron 941、PPG Industries、UK-.Suffolk、IP14 2AD)中に重量比3%で攪拌した。
【0125】
本発明の顔料を使用する紙基板上のコーティング効果
先の実施例に従ったコーティング組成物を(Erichsen、D-58675 Hemer)のフィルムコーターを使用して黒い、きらきら光る紙支持体上に適用し、180マイクロメートルのギャップ高と10mm/秒のコーティング速度を使用した。室温で10分の乾燥時間後、コーティング済み基材を80℃で1時間乾燥した。乾燥したラッカーの反射スペクトルは、Minolta(D-22923 Ahrensburg)の比色計CM508/dで測定し、最大反射の対応する波長を表中に記載する。
【0126】
実施例15の態様の偏光効果
実施例15の顔料を使用して上記のようにして得られたコーティングの効果は、左または右円偏光フィルター(たとえばSchneider-Kreuznach、Bad Kreuznach、ドイツ)下で視覚的に観察した。左円偏光フィルター下では、直角視野(orthogonal view)で赤色が観察され、右円偏光フィルター下では、直角視野で青色が観察された。円偏光フィルターの非存在下では、直角視野で青-スミレ色が観察され、これは視角の斜度(obliqueness)を大きくすると徐々に赤に変化した。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、顔料粒子の典型的な物理的寸法について注釈を含む、本発明の二層顔料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、本発明の二層顔料の典型的な破砕帯の走査電子顕微鏡写真を示す。厚さの値について注釈がつけられている。層の境界では全く剥離は見られない。
【図3】a)二つの相の間では全く相境界が見えない(破砕不規則性として目立たせている)、及びb)異なる光学特性をもつ二つの相が存在するという事実を示している、本発明の二層顔料分子端部の走査電子顕微鏡写真を示す。コレステリック構造の螺旋ピッチは、フレークの厚さを横切って細かいストライド(stride)のように見える。フレークの中央には、(螺旋ピッチの変化に相当する;画像の左部分の約200ナノメートル対右部分の約130ナノメートル)ストライド密度のはっきりした目に見える急激な変化がある。
【図4】図4は、従来(Dobrusskinら、PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号)のプロセスに従って製造した多層顔料フレークの走査電子顕微鏡写真である;この材料は、様々な副層(sub-layer)の間にはっきりと明確な機械的相境界を示し、破砕帯のその個々の薄層に分解する傾向がある。
【図5】図5は、図4の従来法の顔料フレークの破砕帯に近寄った走査電子顕微鏡写真を示す;個々の副層境界のはっきりとした断裂が観察され、このことは、機械的応力(顔料製造、インキへの配合、印刷)下でフレークが容易に個々の薄層に崩壊することを示している。
【図6】図6は、表1の実施例11と似た、本発明に従った二層CLCPの反射スペクトルを示す。(a)適用及び部分UV-硬化後の第一の層;反射最大は約700nm波長;(b)適用及び部分UV-硬化後の第二の層;反射最大は約560nm波長;(c)第一の上部の第二の層、完全UV-硬化後;反射最大は約550nmと725nm波長。
【図7】図7は、粒子を横切って徐々にピッチが変動するのを示す、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した三層顔料粒子の端部の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、三つの異なる光学層の存在(対応する反射スペクトルは、曲線の反転(inversion)から推測することができる)を示す、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した三層顔料分子の透過スペクトルを示す。
【図9】図9は、顔料粒子の端部を横切るピッチ高さの漸進的変化を示す;a)は、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した顔料であり;b)は、本発明に従って製造した顔料である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に機密文書印刷用インキ用のコーティング組成物用のための特別な顔料の分野に関する。本発明は、高度なスペクトル反射変動、著しい反射色及び角度依存性の色変化(angle-dependent colour variation)を可能にする、新型コレステリック液晶ポリマー層及びそれから得られた顔料を扱う。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶ポリマー(CLCP)から製造したフィルム及び顔料は公知である。米国特許第5,211,877号(Andrejewskiら);同第5,362,315号(Muller-Reesら);及び同第6,423,246号(Kaschら)を参照されたい。これらの特許ではそのような材料を製造するための組成物及び方法を開示する。
【0003】
コレステリック液晶ポリマーは、螺旋状に配置された分子のスタックの形状の分子秩序(molecular order)を示す。この秩序は、液晶材料のなかの至る所にある周期的な屈折率変調に起因し、これが所定の波長の光の選択的透過/反射(干渉フィルター効果)をもたらす。CLCP内の螺旋分子配置の特定の状態によって、分子螺旋の回転方向に依存して、反射光を左円偏光または右円偏光させる。
【0004】
CLCPによって反射された波長範囲は、その周期的屈折率変調の幾何学、即ち当業者には公知のように分子の螺旋のピッチによって決定される。所定のコレステリック液晶前駆体材料に関しては、前記ピッチは、一連の選択可能な因子、中でも温度、並びに溶媒及び所定のキラリティー誘導性添加剤の定量的存在に依存する;従って最大反射波長は、選択した製造プロセスによって決定することができる。材料のピッチは最終的に、得られたコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の色が外部因子にもはや依存しないように、架橋(重合)反応によって凍結させる(freeze)ことができる。
【0005】
この目的を達成するために、好適な光開始剤の存在下、UV照射の作用下で架橋反応を受け得るアクリレート及び/またはメタクリレート残基などの反応性基を含むように、モノメリックまたはオリゴメリックのコレステリック液晶材料を製造する。従って好適な配向済みCLCP前駆体のピッチを凍結させるのは、UV-光に暴露(UV-硬化)によって簡単に実施することができる。
【0006】
所定の反射色に加えて、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)は、多少はっきりした視角依存性の色変化(viewing-angle dependent colour variation)(カラーシフト:colour shift)も示す。CLCPで製造したフィルム及び顔料は、この理由により、有価証券及び同定確認書類上のセキュリティエレメント(security element)として使用される。というのも前記カラーシフト効果は、コピー機で複製できないからである。CLCP材料の反射バンドは比較的狭く、その角度依存性は、以下の式:
【0007】
【数1】
【0008】
{式中、λrefl.は最大反射波長であり;nは材料の平均屈折率(1.5のオーダー)であり;pは分子螺旋のピッチであり;及びαは視角である(Eberleら、Liq.Cryst.1989年、第5巻、第3号、907〜916頁)}によって与えられる。この式から、視角が大きくなるにつれて、反射波長は短波長へシフトすると推測される。
【0009】
多くの種々の反射色は、製造条件を好適に選択することによって、同じ所定のCLCP前駆体材料で実現可能である。さらに、反射の扱い易さ(左または右)も同様に、材料の製造時にキラリティー誘導性添加剤(chirality inducing additive)を好適に選択することによって選択することができる。しかしながら、セキュリティ印刷用の顔料の分野では、物理的に実現可能な特徴の数が多いと、もっと多くの様々な機密文書用途を提供するという観点で好都合と考えられる。
【0010】
実現可能な様々な光学的応答、即ち「色」及び「カラー-シフト」の数は、様々な光学的応答をもつ様々なCLCP顔料タイプを同じインキ内で互いに組み合わせると、実質的に増やすことができる。そのような場合におけるセキュリティエレメントの製造は、所定の機密文書の用途を提供するために好適な割合で混合する、二種以上の様々な顔料の利用可能性に依存する。
【0011】
基本の光学応答をもつ2、3種のモジュラー顔料(modular pigment)の混合物を含むインキを製造すること(即ち、アルファベット文字を組み合わせること)の方が、光学的に基本の応答を組み合わせてより複雑な応答にする単一種類の顔料を製造すること(即ち所定の言葉を見つけること)よりもずっと簡単なので、様々な光学的応答を同じ物理的顔料に組み合わせることができれば、CLCP材料のセキュリティレベルはさらに高められると予測された。その一方で、基本的な顔料が利用可能であれば、前者(数種のモジュラー顔料の混合物を含むインキ)は本質的にどの印刷屋でも本質的に実施することができるが、後者(単一の顔料)は、顔料製造設備でのみ実施することができるので、顔料供給チェーンを完璧に制御することができる。
【0012】
積層された単層(laminated monolayer)から構成されたコレステリックポリマー多層(multilayer)はPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号(Dobrusskinら)により記載されていた。この文書は、第一の種類の整列キラル液晶ポリマー(CLCP)薄層と、第二の種類の整列キラル液晶ポリマー(CLCP)薄層とを含む着色材料であって、それぞれの薄層は、所定の角度で見たときに、それぞれの波長帯の光で反射し、且つ室温で固体である、前記着色材料を開示する。
【0013】
PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の着色材料を製造するために、第一の層L1のCLCP前駆体を光開始剤と混合し、第一の温度T1で、柔軟なキャリヤシートS上に塗布すると、CLCP前駆体が整列して第一の色を形成する。次いでこの層を前記第一の温度T1でUV-照射に暴露することによって、CLCP前駆体を架橋させる。第二の層L2は同様にして製造し、第二の温度T2で前記第一の層L1の上に塗布すると、CLCP前駆体が整列して第二の色を形成し、この層を前記第二の温度T2でUV-照射に暴露することによって、CLCP前駆体を架橋させる。赤外線から赤にシフトする第一の層と、青から紫外線にシフトする第二の層を使用する態様が開示され、直角からグレージング視野(grazing view)に進むと、その色が青から赤にシフトするデバイスが得られる。
【0014】
しかしながらPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の二重層材料(double-layer material)には、顔料に粉砕できないという重大な欠点がある。CLCP顔料の製造は、キャリヤシートから重合化コレステリック層の分離、続いて当業者に公知の方法を使用して、インキ及びコーティング組成物中で使用するのに好適な顔料サイズまでそれを粉砕することを含む。PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号の二重層材料は粉砕プロセスに耐えられないので、全プロセスを通して単一の固体層(solid layer)として挙動するのではなく、キャリヤシートから分離する際に、またはジェットミル中で少なくとも高エネルギー導入の影響下で個々の層に分解(剥離)する。従って、PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号に開示のプロセス及び材料を使用しては、コレステリック多層から特定の光学特性をもつ顔料は製造できない。
【0015】
米国特許第2005/266158号では、光学フィルムまたは反射偏光子などの液晶の物体(body)について記載する。顔料はこの参照文献中で検討されていない。前記光学フィルムは、コーティングを溶媒−蒸発−及びUV−硬化段階の順にかけることによって、基材上の単一コーティングから物理的に生じた最高3層の種々の光学層を含むように製造される。溶媒を蒸発させる必要性があるので、この米国特許第2005/266158号のプロセスは、健康、安全性及び環境への懸念により、工業的な製造にはあまり適していない。
【0016】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、且つ特定の、今まで利用可能でなかった光学特性をもつ顔料を提供することである。
【発明の概要】
【0017】
上記目的は、本発明に従って、少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマーが重ねて配置されているコレステリック液晶ポリマーの多層であって、たとえばその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化している機械的に唯一の固体(mechanically unique solid body)を形成するために、ポリマー網状構造の中で前記少なくとも二つの層が化学的に層間架橋していることを特徴とする、前記多層により解決した。
【0018】
本発明に従って、そのような多層積層体(stack)はその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、それによって、好都合な点、従来利用可能でなかった光学特性をもつ顔料の製造が可能になることが知見された。
【0019】
本発明に従って、新規コレステリック多層材料、並びにそれから製造した顔料を提供し、前記材料は従来利用可能でなかった光学特性、たとえば高輝度及び視角依存性の色変化(viewing-angle dependent colour change)(カラーフリップ効果:colour-flip effect)、並びに特定の反射特性、たとえば直角から斜位の視野にいく際に短波長から長波長への色変化、または視角の変化に応じて色空間における極度に長い移動(long travel)を示すことができる。本発明に従って、前記光学特性は非常に精密に調整することができる。
【0020】
本発明に従って、上記CLCP多層顔料は、多層材料の製造の間に特定のプロセス条件を選択することによって得ることができ、機械的層間剥離に対する耐性を提供できることが知見された。
【0021】
個々の層から製造された複合体顔料の機械的層間剥離を防ぐために、前記それぞれの層の間に十分量の化学的架橋(層間架橋)を提供することが必須要件と判明した。従来法の材料、たとえばPCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号に従って製造したものは、前記材料のそれぞれの層の反応性官能基が完全に架橋してから、次の層をその上に堆積しているので、十分な層間架橋が得られない。従って、前記WO95/08786号の材料では、層間接着は、化学結合によるのではなく、機械的及びファンデルワールス力によってのみ提供される。
【0022】
異なる光学特性は、最大反射の波長及び/または円偏光(circular polarization)状態であるのが好ましい。しかしながら、多層のCLCP層の一つに染料、顔料若しくは発光化合物を添加することによって得られるような光吸収または発光特性も含む。
【0023】
さらに多層は、磁性材料、ラジオ周波共鳴粒子(radio-frequency resonant particle)または法的マーカーなどの非光学特性をもつ添加剤も含むことができる。
【0024】
本発明の第一の態様に従って、層間架橋は、以下に概説されるように、交互硬化(staggered curing)(重合)によって実施される:
第一の層L1は、当業者に公知のように柔軟なキャリヤホイル上に適用するが、適用したフィルムは部分的にのみ硬化される。通常、この層はCLCP材料のピッチを凍結するのに十分に硬化されるが、その上部に適用される第二の層L2と続いて架橋するのに十分なもともと存在する反応性基をまだ僅かに保持する。前記部分的な硬化は、計量された低線量UV照射及び/または、好ましくは層L1の前駆体組成物中に必要量未満の光開始剤を使用することによって実施することができる。
【0025】
二度目のパス(pass)では、第二の層L2を層L1の上部に適用し、アセンブリ全体をここで完全に硬化させる。完全な硬化は、徹底的なUV照射、好ましくは層L2の前駆体組成物中に必要量よりも多い光開始剤を使用することと組み合わせて、実施することができる。
【0026】
必要により、第一の、部分的に硬化させた型のコーティングの追加の層(L1a、L1b、L1c、・・・)を堆積させるために、任意選択のパスを層L2の適用前に挿入することができる。
【0027】
本プロセスで得られた製品は、一つの固体ポリマー層(唯一の固体:unique solid body)として機械的に挙動し、これは(図6の好ましい態様に関してより詳細に以下に概説されるように)組み立てられるそれぞれの層の全ての組み合わさった反射特性を光学的に示す。
【0028】
さらに得られた製品は、異なる光学特性をもつ個々の層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化するということを特徴とする。この急激な変化は、本発明に従う製品の際立った特徴であり、(図3の好ましい態様に関してより詳細に以下に概説されるように)多層を横切る(across)コレステリック液晶ピッチの漸進的変化(evolution)で見られる。コレステリック材料の光学的干渉特性(反射波長)に関与する前記ピッチは、本発明の製品の層の接合部分で急激に変化する。たとえば、図3の好ましい態様では、層の左の部分では約200ナノメートルの第一のピッチであり、層の右側では約130ナノメートルの第二のピッチである。この第一のピッチから第二のピッチへの変化は、1ピッチの高さ未満で起きるので、中間のピッチは全く観察されない。
【0029】
従って、本発明に従って、「コレステリック液晶ピッチの急激な変化」なる用語は、前記界面の第一の光学層の至る所で一定のコレステリック液晶ピッチの第一の値から、前記界面の第二の光学層の至る所で一定のコレステリック液晶ピッチの第二の値への本発明の物体の個々の光学層の間の界面のコレステリック液晶ピッチの変化として定義され、前記変化は1ピッチ高さ未満以内で起きるので、中間のピッチは全く観察されない。
【0030】
光学層の至る所でのコレステリックピッチの不変性は、たとえば、p=a*n+bに従ってピッチ数nに対してピッチ高さpの線形回帰における傾きの欠如から統計的に決定することができる。もし実験的に決定された傾き(a)がその標準偏差シグマ(a)の3倍よりも高かったら、それ(傾き)はゼロではない、即ちピッチは一定ではないことは99.7%確かである。そうでない場合には、ピッチは一定と推測することができる。
【0031】
光学層境界における液晶ピッチのこの急激な段階的な変化(stepwise change)は、本発明の製品で得られる特別なプロセスの結果であり、溶媒蒸発及びUV-硬化段階の順序にコーティングを暴露することによって、基材上の単一コーティングから物理的に生成した最高三つの種々の光学層を含むように製造されている、米国特許第US2005/0266158A1号の製品とは対照的である。特筆すべきことに、前記プロセスは急激なピッチ変化を生成することができない。どちらかというと、走査電子顕微鏡写真で容易に視覚化される液晶ポリマー層を横切る多少緩やかなピッチ変化(gradual pitch variation)は得られる。
【0032】
製造の結果として、本発明の製品のコレステリックテクスチャーは、第一の光学層の厚さ全体の至る所で、第一の反射波長に相当する(統計変動内での)一定の第一のピッチ値、続いて第二の光学層などの厚さ全体の至る所で、第二の反射波長に相当する(統計変動内での)一定の第二のピッチ値を有する。ここにはコレステリックピッチ値のはっきりした段階型レベル(step-type level)があり、米国特許第2005/0266158A1号に従った製品のようになだらかな変動(gliding variation)は全くない。
【0033】
本発明において、(単数または複数の)第一の重合段階は、続く重合段階の間に隣の層との架橋反応を受け得る、十分な反応性基を残すように実施される。その結果、全く相境界が存在しない、完全に架橋したポリマーフィルムとなる。
【0034】
本発明の二重−または多層−構造体を完全に実現する別の方法では、対応するコレステリック液晶前駆体組成物の逐次コーティングを、柔軟なキャリヤホイル上に単一パスで適用する。この組成物は、インラインコーティング工程によって溶融状態でキャリヤに適用され、適所で液晶混合物を凍結し、且つその上部に適用される、次のコーティング層と混合しないようにそれぞれ適用されたコーティングは直ちに冷却される。複合コーティング(composite coating)全体の配向及び硬化(重合)は、最終硬化工程で一度に実施する(結合硬化:joint curing)。個々の層の厚さは、第一の態様の通りであり、以下、詳細に記載されよう。
【0035】
交互及び結合硬化の所定の態様の変形では、コーティングは有機溶媒または溶媒混合物中のCLCPモノマー前駆体材料の溶液を使用して実施し(湿潤コーティング)、それによって毎回のコーティング操作の後で、溶媒を蒸発(乾燥)させる。
【0036】
所定の態様の別の変形では、耐熱性材料(たとえばスチール、アルミニウムなど)の連続ベルトをコーティング用のキャリヤとして使用する。これによって、最高400℃の温度でその液晶相をもつCLCP前駆体の加工が可能になる。
【0037】
所定の態様のいずれかにおける堆積したCLCP前駆体は、硬化段階の間に空気中の酸素を排除するために、PETまたは任意の他の好適な材料のカバーホイルによって保護することができる。このカバーホイルは、硬化で使用するUV-照射を吸収しないような、十分に薄く且つ好適な材料でなければならない。
【0038】
ポリマーの硬化は、不活性条件下(即ち、窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの不活性気体下)で実施することができる;これは、酸化反応を防止するために、電子ビーム硬化の場合には特に必要である。不活性条件の場合には、酸素を排除するためにカバーホイルはもはや必要ではない。
【0039】
従って、上記CLCP多層を製造するための本発明のプロセスは、柔軟なキャリヤ基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の少なくとも二つのコーティング層を逐次堆積させ、続いてアセンブリ全体を完全に硬化して、コレステリック液晶ポリマーの少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチの急激な変化を有する、機械的に唯一の固体を形成するために、コーティング内の至る所で架橋可能な基の全てを実質的に架橋させることを含む。別のプロセスは、第一の変形に従って、堆積後にそれぞれのCLCPコーティング層を配向させ、部分的に硬化させて、機械的に唯一の固体を形成するために、隣接するコーティング層と化学的架橋に十分であり、且つコレステリック液晶ポリマーの少なくとも二層の間の界面でコレステリック液晶ピッチの急激な変化を有する層内に所定量の架橋可能な基を残すという点で異なっている。また、第二の変形に従って、堆積後にそれぞれのCLCPコーティング層を凍結または蒸発-乾燥する。第二の変形に従って、CLCPコーティング層の配向は、全てのコーティング層の堆積後、アセンブリ全体を完全に硬化する段階の前に、アセンブリ全体を調質することによって実施する。
【0040】
種々の色及びカラーシフトに加えて、ヒトの裸眼では見ることができず、且つ適切な装置を利用してのみ明示することができる、様々な他の光学特性を本発明のCLCP材料で製造することができる。
【0041】
狭帯域スペクトル反射は、高度に規則性のピッチをもつCLCP材料に固有な特徴であり、従来、より鮮明な反射色、そしてより魅力的な顔料を得るために、CLCP顔料のスペクトル反射帯域幅を広げるために多大な努力が費やされてきた。CLCP材料のスペクトル反射帯域は、製造プロセスの間の好適な操作によって、ランダムまたは漸進的なピッチ変化(progressive pitch variation)を導入することによって拡大することができる。これは、本発明の教示によって初めて可能になったことであった。
【0042】
本発明のプロセス及び材料により、所定のCLCPのスペクトル反射プロフィールをより正確に製造することが可能になる。というのも、前記プロフィールは、予定波長においてそれぞれその特徴的な狭帯域反射プロフィールをもつ好適な数の層を重ね合わせることによって正確に構成することができるからである。これにより、目に見える外観として表れないが、分光計または特定の光学フィルター装置を利用して明示することができる、目に見えない、狭帯域スペクトル特徴をもつ顔料で符号化(coding)することができる。
【0043】
CLCPの反射光は円偏光されているという事実は、さらにセキュリティエレメントとして使用することができる。特筆すべきことに、この円偏光の方向(sense)は、製造プロセスによって決定される。円偏光の扱いやすさは、本発明の多層CLCPのそれぞれの層に対して個別に選択することができ、この偏光の扱い易さ(handiness)は、対応する偏光フィルターを使用して証明できる。従って、多層CLCPのどの層にも、個々に狭帯域反射色及び個々の偏光取り扱い易さ(handiness)を与えることが可能である。
【0044】
本発明の多層ホイルは、多くの種類のセキュリティ及び装飾用途で使用することができる。好ましくはセキュリティスレッド(security thread)、またはホログラムやKinegram(登録商標)に似たホイルセキュリティエレメントの形態で、紙幣、証明書または他の有価証券若しくは同定確認用書類用のラミネートとして使用するのが好ましい。
【0045】
より好ましくは、本発明の多層ホイルは、インキ及びコーティング組成物、全ての種類のセキュリティ及び装飾用コーティング用途、たとえば有価証券及び同定確認用書類用セキュリティインキ、芸術及び商業印刷用途用インキ、装飾コーティング用塗料、並びに全ての種類の化粧品(マニキュア、メーキャップなど)で使用するために顔料に混ぜ合わせる。これに加えて、本顔料は全ての種類のプラスチック製品の素材(mass)に配合することができる。
詳細な説明
本発明の多層スタックは、当業者に通常公知のCLCP組成物から製造する。
【0046】
本発明のCLCPの好ましい組成物は、以下のものを含む(全固体含有量に対して重量%(wt%)):
A)平均一般式(1):
Y1−A1−M1−A2−Y2(1)
{式中、Y1、Y2は、同一または異なり、且つアクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシ、ビニルエーテル若しくはビニル残基などの架橋可能な基を表す;
A1、A2は、一般式CnH2nの同一または異なる残基であり、ここでnは0〜20の整数であり、且つ一つまたは数個のメチレン基は酸素原子により置き換わっていてもよい;
M1は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−X3−R4−を有し、
ここでR1〜R4は、-O-、-COO、-COHN-、-CO-、-S-、-C≡C-、-CH=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、及びC-C結合からなる群から選択される同一または異なる二価の残基であり;ここでR2−X2−R3またはR2−X2またはR2−X2−R3-X3はC-C結合であってもよい;
X1〜X3は、1,4-フェニレン;1,4-シクロへキシレン;アリール核に6〜10個の原子と、O、N及びSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子とを持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するヘテロアリーレン;3〜10個の原子を持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するシクロアルキレンからなる群から選択される同一または異なる残基であり;
ここでB1〜B3は、水素、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル並びに、エーテル酸素、チオエーテル、硫黄またはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつアルキル-、アルコキシ-またはアルキルチオ-残基からなる群から選択される同一または異なる置換基である}の少なくとも一つまたは数種の三次元的に架橋可能な化合物20〜99.5重量%、好ましくは60〜99重量%;
B)平均一般式(2):
V1−A1−W1−Z−W2−A2−V2(2)
{式中、V1、V2は、同一または異なり、且つ以下のもの:アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ビニル、イソシアネート、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル、並びにエーテル酸素、チオエーテル、硫黄若しくはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつ、アルキル-、アルコキシ-若しくはアルキルチオ-残基、またはコレステロール残基の残基を表す;
A1、A2は、上記の通りであり;
W1、W2は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−を有し、
ここでR1、R2、R3は、上記定義の通りであり、且つここでR2またはR2−X2またはX1−R2−X2−R3はC-C結合であってもよい;
X1、X2は、上記の通りであり;
Zは、ジアンヒドロヘキサイト(dianhydrohexite)類(たとえばイソソルビドまたはイソマンニド)、ヘキソース類、ペントース類、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール類、並びにV1またはV2がコレステロール残基であるときC-C結合からなる群から選択される二価のキラル残基である}の少なくとも一つのキラル化合物0.5〜80重量%、好ましくは3〜40重量%。
【0047】
これらの組成物は、当業界で既に公知であり、且つ欧州特許第EP1 149 823号または同第1 046 692号などにその製造法と共に記載されている
本発明に従って、特に好ましい液晶(LC)混合物は、以下の成分をベースとする。
【0048】
成分A)として:ネマチックの主たる成分ヒドロキノン-ビス-[4-(4-アクリロイルブトキシ)-ベンゾエート]、(Broer、D.J.、Mol、G.N.、Challa、G.;Makromol.Chem.1991年、192巻、59頁に従って得た)。
【0049】
成分B)として:以下のキラル成分の一つ:
a)DiABIm(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド、欧州特許第EP1 149 823号、実施例13に従って得た)
【0050】
【化1】
【0051】
b)AnABIs(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド、欧州特許第EP1 046 692号、実施例3に従って得た)
【0052】
【化2】
【0053】
c)DiABIs(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ(acryloloxy))-ベンゾイル]-イソソルビド、欧州特許第EP1 046 692号、実施例4に従って得た)
【0054】
【化3】
【0055】
さらに好ましい成分Bは、メタクリル酸コレステロールエステル(De Visserら、J.Polym.Sci.、A1(9)、1893頁(1971年)に従って得た)である。
【0056】
CLCPの円偏光の方向は、上記光学活性成分B)、特にジアンヒドロヘキサイト(たとえばイソソルビドまたはイソマンニドのような)、ヘキソース、ペントース、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール、並びにV1、V2がコレステロール残基であるときC-C結合から選択される二価キラル残基Zを好適に選択することによって選択することができる。たとえばイソソルビド誘導体を使用すると、全く右円偏光反射となり、コレステロール-含有誘導体またはイソマンニドを使用すると、全く左円偏光反射となる。
【0057】
本発明に従った好ましい二価残基は、以下のものである:
a)イソソルビド:
【0058】
【化4】
【0059】
b)イソマンニド:
【0060】
【化5】
【0061】
種々の実現可能な組成物は、CLCPの最大反射の色(即ち、コレステリックピッチ)を設定することができるその濃度によって、成分B)中の異なる内容物により本質的に互いに識別される。
【0062】
成分B)の内容物を変動させることによって、重合に必要な光開始剤の最適濃度も同様に変動する。有用な濃度は、低UV線量の第一の照射段階では0.00%〜5%、好ましくは0.25%〜2%であり、高UV線量の第二の照射段階では0.5%〜7%、好ましくは1%〜4%である。
【0063】
それぞれの層の光開始剤の濃度範囲、並びに硬化剤のそれぞれの量(UV-照射、電子ビームなど)は、本明細書中に開示された値から多少差があるかもしれない。しかしながら、当業者は、続く硬化段階または最終硬化段階で必要な層間架橋反応を受け得る、それぞれの層の中の十分量の未反応(活発な)基を提供するために本発明の一般原則を遵守するだろう。工業的な観点から、UV-照射による硬化は、最も実用的な選択肢であるということが判明した。
【0064】
少なくとも一つの光学活性が異なるCLCPの少なくとも二層が重ねて配置される、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を製造するプロセスは、
a)柔軟な基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる(deposit);
b)前記CLCPコーティングを配向させる;
c)層の中にかなりの量の架橋可能な基を残すように、段階a)の配向層を部分的に硬化させる;
d)場合により段階a)〜c)を選択された回数繰り返して、先のコーティングの上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させ、配向させ、及び部分的に硬化させる;
e)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
f)前記CLCPコーティングを配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させるように、アセンブリ全体を完全に硬化させる;
各段階を含み、前記コレステリック液晶ポリマー(LCP)は、その内部構造に悪影響を与えることなく、即ち剥離することなく、顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する、機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造内で互いに化学的に架橋することを特徴とする。
【0065】
少なくとも一つの光学活性が異なるCLCPの少なくとも二層が重ねて配置される、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を製造する別のプロセスは、
a)柔軟な基材上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる(deposit);
b)前記CLCPコーティングを凍結または蒸発乾燥させる;
c)先のコーティング上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させるために、段階a)及びb)を場合により選択された回数繰り返す;
d)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
e)前記CLCPコーティングを凍結または乾燥する;
f)アセンブリ全体を調質して、堆積CLCP層を配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させるように、アセンブリ全体を完全に硬化させる;
各段階を含み、前記コレステリック液晶ポリマー(LCP)は、その内部構造に悪影響を与えることなく、即ち剥離することなく、顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する、機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造内で互いに化学的に架橋することを特徴とする。
【0066】
本明細書において、特にコーティングは溶融状態または溶液から適用することができる。硬化は、UV-照射、好ましくはUV/A照射によって実施することができる。UV照射線量は、第一の層に関しては低く、最終層に関しては高く選択することができる。光開始剤の量は、第一の層に関しては少なく、最終層に関しては多く選択することができる。硬化は、電子ビーム照射によって実施することもできる。
【0067】
本明細書の文脈において、ポリマー前駆体の硬化は、UV-照射によって実施するのが好ましいが、当業者に公知の他の硬化プロセス、たとえば電子ビーム硬化、超音波硬化なども所定の用途でUV-照射と好都合に置き換えられるかもしれない。典型的なUV線量は0.07〜0.5J/cm2である(Eltosch、ハンブルグ、ドイツの放射計UV-Powerpukで測定)。
【0068】
第一の態様に従って及び、ドクターブレードコーティングまたはローラーコーティングなどの当業者に公知のコーティングプロセスを使用して、PETフィルムまたは連続のゴム、プラスチック若しくは金属ベルトなどの柔軟なキャリヤをコレステリック前駆体混合物の第一の層でコーティングし、調整(set up)して所定の第一の光学特性、好ましくは反射色(スペクトル反射最大)を与える。コレステリック前駆体混合物は、(0〜0.5%、好ましくは0〜0.25%の範囲の)少量の光開始剤を含む。続く重合は、低線量のUV-照射(0.03〜0.3J/cm2、好ましくは0.05〜0.15J/cm2)を使用して実施し、まだ反応性(活発な)基を含むが、安定な色特性(凍結されたピッチ:frozen pitch)をもつポリマーのコレステリックフィルムを与える。第一のコーティングの平均厚さは0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0069】
必要により、それぞれ選択された光学特性をもつ、第一の層と同じ型の追加の中間層を、このようにして得られ、硬化させたコーティングの上部に適用することができる。それぞれの中間層に関しては、光開始剤の量と硬化UV-照射線量は、第一の層に関して示したように、低く保持する。これらのコーティングの平均厚さは0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0070】
最終段階では、所定の光学特性、好ましくは反射色、をもたらすように調質され、そのスペクトル反射最大が第一のコーティングの波長と好ましくは10〜80nm、好ましくは30〜50nm異なるコレステリックモノマー前駆体混合物の最終層を(単数または複数の)既に堆積されたコーティングの上に適用する。最終コーティングは豊富な量の光開始剤(0.2〜3%、好ましくは1.75%の範囲)を含み、重合は、比較的高い線量のUV-照射(0.1〜0.5J/cm2)を使用して実施する。最終コーティングの平均厚さは、0.5〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルである。
【0071】
得られたCLCPフィルムは剥離に対して完全に耐性であり、単一層のように機械的に挙動する。即ち、顔料を製造するための続く脱着(detachment)及び粉砕プロセスの間に、第一の層と第二の層との分離は全く観察されなかった。これは、複合フィルムの厚さの至る所で相の境界の兆候が全く見られない、走査電子顕微鏡写真により確認される。第一の層から第二の層への遷移は、コレステリック構造の変動する、僅かに見えるピッチによって推測されるのみである。
【0072】
第二の態様では、柔軟なキャリヤ、たとえばPETホイル(または他の好適なキャリヤ)を続いて、第一のコーティング工程A(ドクターブレード、スプレー、またはローラーコーターであってもよい)によって第一の溶融物の第一の層をキャリヤに適用した方法で、別の液晶溶融物でコーティングする。このコーティングは熱的にクエンチ(即ち、液晶相の固化またはガラス転移点未満に急速に冷却)し、光学特性、好ましくは第一のコーティングの反射最大から少なくとも20nm波長が異なるのが好ましい反射最大を示すように調整された第二のコーティングを、同じパスで、即ち第二のコーティング工程B(ドクターブレード、スプレーまたはローラーコーターであってもよい)により、先に適用した層を架橋することなく、第一のコーティングの上部に適用する。第二の層は、上記のように熱的にクエンチされ、必要により、同じパスでさらにコーティング工程C、Dなどにより、さらなるコーティングを適用することができる。
【0073】
このようにして得られた多層コーティングは最終的に同じパスの間に第二のPETホイル(または他の好適なカバーホイル)で覆い、液晶状態に戻しつつ、既に適用したコーティング層の全てがその特徴的な、前もってプログラムされたピッチをとる、使用した材料に依存して30℃〜140℃の間、より好ましくは90℃〜120℃の間で選択されたTの調質領域(tempering zone)を通す。次いでコーティング全体を、好適な量のUV-照射(または電子ビーム照射、または当業者に公知の他の硬化プロセス)を適用することによって、一度で完全に架橋(重合)させる。
【0074】
PET基材ホイルと似た前記PETカバーホイルは、酸素感受性のUV-重合反応の間に空気中の酸素の影響を抑制するために使用する。このカバーホイルは、最終CLCP層の適用直後で、且つUV-重合工程の前にCLCPコーティングの上部に適用する。
【0075】
カバーホイルを使用する目的はふたつある。ひとつはこのカバーボイルは重合を阻害する酸素を排除し易くするという点であり、二つめは、コーティングを均質化且つ正しい位置に置くという機能がある点である。
【0076】
重合したCLCPフィルムをキャリヤとカバーホイルから、当業者に公知のように剥離、擦過、ブラシがけ、または他の操作によって外す。得られた粗いCLCPフレークを、ハンマー-、衝撃-、ボール-、またはジェットミルを使用する粉砕などの公知の粉砕操作を使用して顔料にワークアップ(work up)し、選別及び篩い分けなどの公知の分離方法により分類して、5〜5000マイクロメートルの適用に指定された範囲のd50-値をもつ指定粒子サイズの顔料を得る。
【0077】
この態様の変形では、反射波長などの様々な光学特性をもたらすように調整された、CLCPモノマー前駆体材料の溶液を、当業者に公知のコーティングプロセス(たとえばローラーコーティング、ドクターブレードコーティング、カーテンコーティングなど)を使用して、柔軟なPETキャリヤフィルム(または他の好適なキャリヤ)上にコーティングし、それぞれのコーティング工程後に溶媒を蒸発させる。最終的に得られた「サンドイッチ」を第二のPETホイル(または他の好適なカバーホイル)で覆い、先に適用したコーティング層の全てがその指定の、既にプログラムされたピッチをとる調質領域で液晶状態に戻す。次いでコーティング全体を好適量のUV-照射(または電子ビーム照射、並びに当業者に公知の他の硬化プロセス)を適用することによって、一度に完全に架橋(重合)させる。
【0078】
さらに別の態様では、耐熱性材料(たとえばスチール、アルミニウムなど)の連続ベルトを、反射波長、偏光などの光学的に異なる特性をもたらすように調整された、CLCP前駆体の溶融物または溶液で複数回コーティングする。このコーティングは上記のように処理する。
【0079】
耐熱性キャリヤベルトを使用すると、最高400℃の温度でその液晶範囲を有する液晶ポリマー前駆体を処理することができる。同様に架橋反応は、UV-照射または電子ビーム照射などの当業者に公知の方法に従って実施する。高温では、反応性官能基または生成物の酸化変質を防ぐために不活性条件(酸素を排除する)を選択しなければならない。窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの不活性ガスを使用して、酸素濃度を5ppmから1%、好ましくは10〜100ppmの範囲に低下させる。
【0080】
硬化段階で不活性条件を使用すると、酸素感受性材料の場合でさえも、カバーホイル(第二のPETホイル)は酸素を排除するのにもはや必要ではない。
【0081】
キャリヤベルトの場合、基材からCLCP層の剥離は、高圧エアジェット、固体CO2ジェット、ブラシ掛けプロセスなどを使用しても実施することができる。
【0082】
本発明のCLCP多層は、本発明に従ったプロセスを使用して顔料に作成するのが最も好ましい。この目的のために、剥離装置または剥離ナイフなどの好適な装置を使用して、多層をキャリヤから取り外して、粗いCLCPフレークとする。これらのフレークは、粉砕または切断工具などの好適な工具を使用してさらにCLCP顔料に粉砕する。このCLCP顔料は最終的に、選別または篩い分け操作により分類する。
【0083】
本発明に従って製造した顔料フレークは、0.1〜50マイクロメートルの範囲の厚さ及び10〜1000マイクロメートルの範囲の直径を有する。それぞれの用途の具体的な要件に従って、これらの範囲内で狭いサブレンジが選択される。0.5〜6マイクロメートルの範囲のフレーク厚さと、1〜200マイクロメートルの範囲のフレーク直径をもつ顔料が最も好ましい。
【0084】
本発明に従って得られた顔料粒子は機械的に単一固体として挙動するが、光学的には構成されている個々の層の組み合わさった特性(combined properties)を示す。かくして、本発明のプロセスを使用して、従来法に従っては製造できない反射及び/または他の光学特性をもつCLCP顔料を製造することが可能である。
【0085】
特筆すべきは、独特のカラーシフト、たとえば緑から赤-スミレ色への色の変化を作ることができるのに対し、慣用のCLCPではせいぜい緑から青に色の移動(colour travel)を示すことができるだけであるという点である。
【0086】
同様に、異なる反射波長をもつ個々の層が異なる方向の円偏光の光を反射するCLCP多層を製造することができる。得られたフィルム、並びにそれから製造した顔料は、裸眼で第一の色を示し、それぞれ左-または右-円偏光フィルターを通して見たときに、別の第二及び第三の色を示す。
【0087】
本発明に従って製造した製品は、光学層接合部分を横切るコレステリック液晶ピッチのその急激な変わり目で、走査電子顕微鏡下で認識できる(たとえば、以下に記載する図3に従った態様を参照)。注目すべきことに、前記ピッチはコレステリック材料の光学干渉特性(反射波長)に関与する。図3を参照して、層の左の部分では約200ナノメートルピッチ高の第一のピッチと、層の右の部分では約130ナノメートルピッチ高の第二のピッチがある。
【0088】
このようにして得られたCLCP顔料は、印刷用インキ、並びにラッカー及びプラスチック材料の原液着色(練り込み着色:mass-colouring)で使用される。特に、本発明に従った顔料は、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、宝くじ及び乗車券、製品セキュリティラベルなどの光学セキュリティマーキング印刷用の印刷用インキに配合することができる。前記光学セキュリティマーキングは、視角を変えることによって可視光をシフトする効果(visible colour shifting effect)とは別に、対応する装置を使用して明示することができる、目に見えない円偏光効果も示すという好都合な点をもつ。
【0089】
セキュリティエレメントの特別な態様では、CLCP多層の第一の層は第一の色、たとえば左-円偏光の緑を反射し、CLCP多層の第二の層は第二の色、たとえば右-円偏光の赤を反射する。セキュリティエレメントによって示された第一の可視光が裸眼には示され、これは緑と赤の両方の反射から構成される。得られた外観は黄色である。しかしながら左-円偏光フィルター下で見ると、同じセキュリティエレメントは緑のように見えて、右-円偏光フィルター下で見ると、対応して赤に見える。
【0090】
本発明の顔料は、好ましくはシルクスクリーン、フレキソ及びグラビア印刷プロセス用の印刷インキに使用される。しかしながら、オフセット、銅板インタリオ及びタンポグラフィック(tampographic)印刷プロセスも同様に考えられる。
【0091】
印刷用インキでの使用に加えて、本発明の顔料は、工業的及び自動車コーティング用のラッカー、並びに化粧品用及びプラスチック業界のプラスチック及びマスターバッチの原液着色用での用途も見つけることができる。
【0092】
本発明に従ったコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層は、機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、または化粧品における用途で使用することができる。
【0093】
本発明に従ったフレーク顔料は、機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、またはインモールド(in-mold)用途、または化粧品における用途で使用することができる。
【0094】
本発明は、本明細書中に開示したフレーク顔料を含む任意の物体も請求する。特筆すべきは、このフレーク顔料は、印刷用インキ及びコーティング組成物で使用することができ、機密文書、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、アクセスカード、乗車券または製品セキュリティラベルなどの保護に関して使用することができる。
【0095】
本発明の多層コレステリック液晶ポリマー(CLCP)及びそれから製造した顔料はさらに、以下の非限定的なリストに従って、広範な技術的用途で使用することができる:自動車用塗料、OEM及び補修塗料(refinish);浸漬コーティング(たとえばキャンドル用);バッチまたはコンパウンディングによるプラスチックの着色;インモールド用途(PCフィルム上の印刷、これは三次元プラスチック部品の表面につける);化粧品用途、たとえばマニキュア、アイシャドウ、ローション、マスカラ、メーキャップ、クリーム、パウダー、ジェル(gel)、ヘアジェルなど;パウダーコーティング;工業的コーティング-水-及び溶媒によって運ばれる(borne);プラスチック及び金属用コーティング;ジェルコート(gel coat)(たとえばボート及びヨット用);印刷用インキ(スクリーンインキ、フレキソ、グラビア、インタリオ);包装;セキュリティ用途、たとえばセキュリティスレッド、マーキング、製品セキュリティラベル、シール、ホットスタンプ機能など;紙幣、商品券(voucher)、ID書類、証明書、(輸送機関)チケット上のセキュリティ機能;消費家電製品用の塗料及びコーティング;スポーツ機材用の塗料及びコーティング;家具用の塗料及びコーティング;ガラス塗料;建築用塗料;ルアーフィッシング;製品識別用機能;エーロゾル塗料(日曜大工);交通標識;宣伝;機械で読み取り可能な機密機能(色+偏光);娯楽装置;ビニール、人工皮革(シート);デカール;航空機コーティング。
【0096】
本発明を、非限定的な態様及び図面を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0097】
実施例1〜15で使用した出発材料
実施例1〜15の顔料の合成において、以下の出発物質を使用した。実施例セクションの最後の表1において、どの成分をどの実施例で使用したか太字の数字で示す。
【0098】
i)ネマチックの第一成分(上記式中の成分A):
ヒドロキノン-ビス-[4-(4-アクリロイルブトキシ)-ベンゾエート]、(1)(Broer、D.J.、Mol,G.N.、Challa,G.;Makromol.Chem.1991年、195号、59頁に従って得た)。
【0099】
ii)キラル成分(上記式中の成分B):
AnABIs、(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド、(2)(欧州特許第EP1 046 692号、実施例3に従って得た)。
DiABIs、(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ)-ベンゾイル]-イソソルビド、(3)(欧州特許第EP1 046 692号、実施例4に従って得た)、
DiABIm、(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド、(4)欧州特許第EP1 149 823号、実施例13に従って得た)、または
メタクリル酸コレステロールエステル、(5)(De Visserら、J.Polym.Sci.,A(19)、1893頁(1971年)に従って得た)。
【0100】
iii)重合安定剤2,6-ジ-t-ブチル-4-(ジメチルアミノメチル)-フェノール(6)(Ethanox(登録商標))703、Ethyl Corp.,Baton Rouge,LA 70801)。
【0101】
iv)光開始剤(7)Irgacure(登録商標)819(Ciba Specialty Chemicals GmbH,Lampertsheim)。
実施例1〜15の顔料の一般的な合成
ネマチックの主成分1とそれぞれキラル化合物2、3、4または5と、約300ppmの安定剤6を(主成分100部に対して)実施例で与えられた重量比に従って、加熱可能な容器中で一緒に混合し、透明な液体が生成するまで融解した。この融解物をスターラーで均質化し、最後に光開始剤7を攪拌下で添加した。実施例で与えられた重量比に従って最終成分として光開始剤7を別に攪拌すると、混合物の早過ぎる熱誘導された架橋を防ぐように機能する。このようにして得られた組成物を、基材上に生成させるコレステリック層用の材料として使用した。
【0102】
それぞれの実施例で使用した化合物の量を表1に記載する。
【0103】
上記のようにして製造したLC-混合物は、以下の表1に示された層厚さで予め調質された柔軟なポリエチレン-テレフタレート(PET)キャリヤ基材上にローラーコーターを使用して、概説したプロセスに従ってコーティングした。
【0104】
通常、上記で概説したように、基材上の二段階コーティングプロセスでは、第一のコレステリック層をPET基板上に直接適用し、これに続いて第二のコレステリック層を前記第一の層上に適用した。所定の拡散時間、即ち、調質装置(tempering unit)中で二層パケットの滞留時間後、コーティング全体をUV-重合させた。
【0105】
全て適用した層の厚さは、コーティングした領域毎にLC-混合物の使用量をベースとしてそれぞれ制御した。コーティング終了後、層厚は、層厚測定装置Supramess(Maher GmbH、D-3703 Gottingen)を利用してクロスチェックした。最大反射波長は、UV/VIS分光計(Model Lambda 19、Perkin Elmer、Ueberlingen、ドイツ)を利用してそれぞれの層の透過スペクトルから得た。得られた値を以下の表1にまとめる。
【0106】
酸素感受性のUV-重合反応の間の空気中の酸素の影響を抑えるために、PETカバーホイル、PET基材ホイルを使用した。このカバーホイルは、最終CLCP層の適用直後と、UV-重合段階前に、CLCP-コーティング上部に適用した。
【0107】
それぞれの層を適用した後、CLCP-コーティングし、PETホイルで覆った基材は調質/配向トンネルを通過し、ここで基材は90℃〜125℃の範囲、通常約110℃の温度に暴露した。このトンネル長さは一定なので、液晶コーティングの配向時間は、通過時間により決定される。トンネルの終端部では、配向済み液晶相は水銀UVランプにより重合した(UV/A 0.07〜0.5J/cm2の範囲の線量)。
【0108】
第一層は、低い線量のUV照射と低い濃度の光開始剤を使用することにより、完全には架橋しなかった。カバーホイルを取り外し、PETホイル基材上の固化した第一のコーティングを、前記第一の層とは少なくとも20nm反射波長が異なるLC-混合物の第二の層でコーティングした。
【0109】
第二のコーティング操作と対応するカバーホイルの適用後、コーティング全体(即ち得られた多層)を0.07〜0.5J/cm2範囲のUV/AのUV線量を使用して、第二の重合にかけた。
【0110】
この後、得られた基材、CLCP-二重層とカバーホイルの「サンドイッチ」を分離し、ナイフを使用してPETホイル(基材及び/またはカバーホイル)からCLCP-二重層をはぎ取った。粗いフレーク状で存在するはぎ取ったCLCP-材料を(Hokosawa-Alpine Augsburg、ドイツの)エアジェットミルで粉砕して顔料を作り、続いて選別/ふるい分けして、粒径d50が18〜35マイクロメートルのCLCP-顔料を製造した。粒径は、Sympatec GmbH、Clausthal-Zellerfeldの粒径アナライザーHELOS(水中で分散測定)で測定した。図1、2及び3は得られた顔料の電子顕微鏡写真を示す。
【0111】
本発明に従った二層CLCPフィルムの破断端部の走査電子顕微鏡写真(図2)は、a)(破砕角点:fracture kinkとして見えるであろう)機械的な相境界は二つの相の間に全く見えず、且つb)異なる光学的特性を持つ二つの相が存在することを示す。注目すべきは、コレステリック構造体の螺旋ピッチがフィルム厚にわたって細かいストライドとして電子顕微鏡写真で見えるということである。フィルムの中間には(螺旋ピッチの変化に相当する)ストライド密度の急激な変化がはっきりと見られる(図3:画像左部分の約200ナノメートル対右部分の約130ナノメートル)。本発明の材料は、異なる特性の光学層の界面で螺旋ピッチが急激に変化することを特徴とする。ピッチは第一の値から第二の値へ一回のピッチ高で変化するので、中間のピッチ領域は全く観察されない。
【0112】
コレステリックテクスチャーに従って、電子顕微鏡的に目に見えるストライドは、それに沿ってフレークが裂けるかもしれない層があるという意味で、機械的な層構造(mechanical layer structure)ではないが、実際には、本発明の材料ではそのような開裂は全く観察されなかった。観察されたストライドは規則正しいコレステリック材料の示差電子帯電効果(differential electronic charging effect)によるものであり、これは、SEM写真を撮る際に所定の実験条件を使用して形成することができる。
【0113】
比較のために従来法(PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号)のプロセスに従って製造した多層顔料は、図4及び5に示されているように、異なる副層の間にはっきりと明確な機械的相境界を示し、これらの事前に設定された破砕帯(fracture zone)で個々の薄層に分解する傾向がある。
【0114】
図6は、その反射最大が異なる二つの個々のCLCP層の反射スペクトル(a,b)と、(a)と(b)の両方の反射最大を示す、本発明に従った対応する二重CLCPの反射スペクトル(c)とを示す。
【0115】
本発明のプロセスに従って製造した製品と、従来法(米国特許第US2005/0266158A1、Pokornyら)のプロセスに従って製造した製品との間の差を明示するため、比較のために、コレステリック多層をCLC-ポリマー、CLC-モノマーと溶媒を含む厚い、単一液層(liquid layer)を適用することによって、Pokornyらに従って製造した。このようにして適用した層は、順にi)第一の部分的な蒸発-乾燥、ii)第一の部分的なUV-硬化、iii)第二の完全な蒸発乾燥、及びiv)第二の完全なUV-硬化に暴露した。
【0116】
図7は、得られた8マイクロメートル厚さのCLCP層の断面の電子顕微鏡写真である。コレステリック液晶ピッチに急激な変化はないが、底部から上部へピッチが徐々に増加し、続いてそれよりは急ではあるが、まだピッチが徐々に減少している。このコレステリックピッチは、層を横切って滑らかに発展し、目だった段差は全くない。
【0117】
図8は、Pokornyらによって報告されたスペクトル(米国特許第2005/0266158A1号の図16、17)に似ている、得られた透過スペクトルを示す。これは三つの異なる光学層の存在を示す。
【0118】
観察された違いを示すために、多層を横切った個々のピッチ高を従来法(図7)及び本発明(図3)に関して、SEM画像で測定した。
【0119】
図9aはPokornyらに従って製造した多層を横切るピッチ高の漸増と漸落(gradual increase and decrease)を示し、図9bは、本発明に従って製造した多層を横切るピッチ高の急激な減少を示す。前記第一の層から第二の層へのピッチの変化は実質的に一つのピッチ高内で起きているので、中間のピッチ高の領域は全く観察されない。
【0120】
熱力学的観点から、表面での蒸発が関与すると、Pokornyらのプロセスで使用されているような部分的な蒸発プロセスの条件はコレステリック層を横切って均質ではないので、ピッチ高を徐々に変化させるはずである。本発明に従ったプロセスでは、揮発性成分の蒸発は含まれず、所定の特性の層をそれぞれの層の上部に適用するので、層境界で特性が急激に変化する。
【0121】
【表1】
【0122】
キラル化合物の数字は、テキスト中に示した数字を指す。
【0123】
UV/A照射の必要な線量は、所定の実施例に関しては0.3J/cm2のオーダーであり、UV出力の表示100%に相当した。表の中の低いパーセンテージ値は、対応して低いUV/A線量を指す。
【0124】
本発明に従った顔料を含むラッカーの製造
上記に概説したようにして得られたCLCP-顔料を透明なコーティング組成物(たとえば、Tinted Clear Additive Deltron 941、PPG Industries、UK-.Suffolk、IP14 2AD)中に重量比3%で攪拌した。
【0125】
本発明の顔料を使用する紙基板上のコーティング効果
先の実施例に従ったコーティング組成物を(Erichsen、D-58675 Hemer)のフィルムコーターを使用して黒い、きらきら光る紙支持体上に適用し、180マイクロメートルのギャップ高と10mm/秒のコーティング速度を使用した。室温で10分の乾燥時間後、コーティング済み基材を80℃で1時間乾燥した。乾燥したラッカーの反射スペクトルは、Minolta(D-22923 Ahrensburg)の比色計CM508/dで測定し、最大反射の対応する波長を表中に記載する。
【0126】
実施例15の態様の偏光効果
実施例15の顔料を使用して上記のようにして得られたコーティングの効果は、左または右円偏光フィルター(たとえばSchneider-Kreuznach、Bad Kreuznach、ドイツ)下で視覚的に観察した。左円偏光フィルター下では、直角視野(orthogonal view)で赤色が観察され、右円偏光フィルター下では、直角視野で青色が観察された。円偏光フィルターの非存在下では、直角視野で青-スミレ色が観察され、これは視角の斜度(obliqueness)を大きくすると徐々に赤に変化した。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、顔料粒子の典型的な物理的寸法について注釈を含む、本発明の二層顔料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、本発明の二層顔料の典型的な破砕帯の走査電子顕微鏡写真を示す。厚さの値について注釈がつけられている。層の境界では全く剥離は見られない。
【図3】a)二つの相の間では全く相境界が見えない(破砕不規則性として目立たせている)、及びb)異なる光学特性をもつ二つの相が存在するという事実を示している、本発明の二層顔料分子端部の走査電子顕微鏡写真を示す。コレステリック構造の螺旋ピッチは、フレークの厚さを横切って細かいストライド(stride)のように見える。フレークの中央には、(螺旋ピッチの変化に相当する;画像の左部分の約200ナノメートル対右部分の約130ナノメートル)ストライド密度のはっきりした目に見える急激な変化がある。
【図4】図4は、従来(Dobrusskinら、PCT国際特許出願国際公開第WO95/08786号)のプロセスに従って製造した多層顔料フレークの走査電子顕微鏡写真である;この材料は、様々な副層(sub-layer)の間にはっきりと明確な機械的相境界を示し、破砕帯のその個々の薄層に分解する傾向がある。
【図5】図5は、図4の従来法の顔料フレークの破砕帯に近寄った走査電子顕微鏡写真を示す;個々の副層境界のはっきりとした断裂が観察され、このことは、機械的応力(顔料製造、インキへの配合、印刷)下でフレークが容易に個々の薄層に崩壊することを示している。
【図6】図6は、表1の実施例11と似た、本発明に従った二層CLCPの反射スペクトルを示す。(a)適用及び部分UV-硬化後の第一の層;反射最大は約700nm波長;(b)適用及び部分UV-硬化後の第二の層;反射最大は約560nm波長;(c)第一の上部の第二の層、完全UV-硬化後;反射最大は約550nmと725nm波長。
【図7】図7は、粒子を横切って徐々にピッチが変動するのを示す、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した三層顔料粒子の端部の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、三つの異なる光学層の存在(対応する反射スペクトルは、曲線の反転(inversion)から推測することができる)を示す、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した三層顔料分子の透過スペクトルを示す。
【図9】図9は、顔料粒子の端部を横切るピッチ高さの漸進的変化を示す;a)は、従来のプロセス(米国特許第2005/0266158A1号)に従って製造した顔料であり;b)は、本発明に従って製造した顔料である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)が重ねて配置されているCLCPの多層の製造プロセスであって、
a)柔軟な支持体上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる;
b)前記CLCPコーティングを配向させる;
c)ポリマー網状構造を通じて隣接するコーティング層と化学的に層間架橋させるために層の中に所定量の架橋可能な基を残すように、段階a)の配向層を部分的に硬化させる;
d)場合により段階a)〜c)を選択された回数繰り返して、先のコーティングの上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させ、配向させ、及び部分的に硬化させる;
e)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
f)前記CLCPコーティングを配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させ、且つその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得る機械的に唯一の固体を形成するようにアセンブリ全体を完全に硬化させる、各段階を含む前記プロセス。
【請求項2】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のCLCPが重ねて配置されているコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層の製造プロセスであって、
a)柔軟な支持体上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる;
b)前記CLCPコーティングを凍結または蒸発乾燥させる;
c)先のコーティング上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させるために、段階a)及びb)を場合により選択された回数繰り返す;
d)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
e)前記CLCPコーティングを凍結または乾燥する;
f)アセンブリ全体を調質して、堆積CLCP層を配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させ、且つ前記内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得る機械的に唯一の固体を形成するようにアセンブリ全体を完全に硬化させる、各段階を含む前記プロセス。
【請求項3】
前記コーティング層を溶融状態から適用する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティング層を溶液から適用する、請求項1〜3の一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記硬化はUV−照射、好ましくはUV/A照射によって実施する、請求項1〜4の一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記UV照射量は前記第一の層に関してはより低く、最終層に関してはより高く選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記CLPC前駆体材料中に含まれる光開始剤の量は、前記第一の層ではより低く、最終層ではより高く選択される、請求項1〜6の一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記硬化は電子ビーム照射によって実施する、請求項1〜7の一項に記載のプロセス。
【請求項9】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)が重ねて配置されている、特に請求項1〜8の一項のプロセスにより得ることができるCLCPの多層であって、たとえばその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造を通して化学的に層間架橋されることを特徴とする、前記多層。
【請求項10】
請求項9に記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層であって、前記CLCPは成分A)とB)とを含み、ここで
A)は平均一般式(1):
Y1−A1−M1−A2−Y2(1)
{式中、Y1、Y2は、同一または異なり、且つアクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシ、ビニルエーテル若しくはビニル残基などの架橋可能な基を表す;
A1、A2は、一般式CnH2nの同一または異なる残基であり、ここでnは0〜20の整数であり、且つ一つまたは数個のメチレン基は酸素原子により置き換わっていてもよい;
M1は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−X3−R4−を有し、
ここでR1〜R4は、-O-、-COO-、-COHN-、-CO-、-S-、-C≡C-、-CH=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、及びC-C結合からなる群から選択される同一または異なる二価の残基であり;ここでR2−X2−R3またはR2−X2またはR2−X2−R3-X3はC-C結合であってもよい;
X1〜X3は、1,4-フェニレン;1,4-シクロへキシレン;アリール核に6〜10個の原子と、O、N及びSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子とを持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するヘテロアリーレン;3〜10個の炭素原子を持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するシクロアルキレンからなる群から選択される同一または異なる残基であり;
ここでB1〜B3は、水素、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル及び、エーテル酸素、チオエーテル、硫黄またはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつアルキル-、アルコキシ-またはアルキルチオ-残基からなる群から選択される同一または異なる置換基である}の少なくとも一つまたは数種の三次元的に架橋可能な化合物20〜99.5重量%、好ましくは60〜99重量%であり;
B)は、平均一般式(2):
V1−A1−W1−Z−W2−A2−V2(2)
{式中、V1、V2は、同一または異なり、且つ以下の残基:アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ビニル、イソシアネート、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル、並びにエーテル酸素、チオエーテル、硫黄若しくはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつ、アルキル-、アルコキシ-若しくはアルキルチオ-残基、またはコレステロール残基を表す;
A1、A2は、上記の通りであり;
W1、W2は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−を有し、
ここでR1〜R3は、上記定義の通りであり、且つここでR2またはR2−X2またはX1−R2−X2−R3はC-C結合であってもよい;
X1、X2は、上記の通りであり;
Zは、ジアンヒドロヘキサイト(dianhydrohexite)類(たとえばイソソルビド(iso-sorbide)またはイソマンニド(iso-mannide)、ヘキソース類、ペントース類、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール類、並びにV1またはV2がコレステロール残基であるときC-C結合からなる群から選択される二価のキラル残基である}の少なくとも一つのキラル化合物0.5〜80重量%、好ましくは3〜40重量%である、前記多層。
【請求項11】
前記成分B)がAnABIs-(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド)、DiABIs(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ(acryloloxy))-ベンゾイル]-イソソルビド)、またはDiABIm(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド)からなる群から選択される、請求項10に記載の多層。
【請求項12】
前記の異なる光学特性が、最大反射の波長、反射光の円偏光状態、光学吸収特性、たとえば多層のCLCP層の一つに少なくとも一種の染料または顔料を混合することによって得られるものなど、または発光特性、たとえば多層のCLCP層の一つに少なくとも一種の発光化合物を混合することによって得られるものなどからなる群から選択される、請求項9〜11の一項に記載の多層。
【請求項13】
前記多層が、ヒトの裸眼では気づかれない、狭帯域スペクトル特徴をもつ、請求項9〜12の一項に記載の多層。
【請求項14】
磁性粒子、ラジオ周波共鳴粒子及び法的マーカーからなる群から選択される非光学特性をもつ添加剤をさらに含む、請求項9〜13の一項に記載の多層。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を粉砕することによって得ることができる、印刷またはコーティング用途用のフレーク顔料。
【請求項16】
前記顔料サイズの中央値d50が5〜5000マイクロメートル、好ましくは5〜100マイクロメートル、最も好ましくは10〜50マイクロメートルである、請求項15に記載のフレーク顔料。
【請求項17】
請求項15または16に記載のフレーク顔料を製造するための請求項9〜14の一項に記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層の使用。
【請求項18】
機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、インモールド(in-mold)用途用、または化粧品用途の請求項15または16の一項に記載のフレーク顔料の使用。
【請求項19】
請求項15または16の一項に記載のフレーク顔料を含む、物体または印刷用インキまたはコーティング組成物。
【請求項20】
機密文書、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、アクセスカード、乗車券または製品セキュリティラベルなどの保護のための請求項19に記載の印刷用インキまたはコーティング組成物の使用。
【請求項1】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)が重ねて配置されているCLCPの多層の製造プロセスであって、
a)柔軟な支持体上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる;
b)前記CLCPコーティングを配向させる;
c)ポリマー網状構造を通じて隣接するコーティング層と化学的に層間架橋させるために層の中に所定量の架橋可能な基を残すように、段階a)の配向層を部分的に硬化させる;
d)場合により段階a)〜c)を選択された回数繰り返して、先のコーティングの上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させ、配向させ、及び部分的に硬化させる;
e)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
f)前記CLCPコーティングを配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させ、且つその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得る機械的に唯一の固体を形成するようにアセンブリ全体を完全に硬化させる、各段階を含む前記プロセス。
【請求項2】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のCLCPが重ねて配置されているコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層の製造プロセスであって、
a)柔軟な支持体上に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の第一のコーティング層L1を堆積させる;
b)前記CLCPコーティングを凍結または蒸発乾燥させる;
c)先のコーティング上部に架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の追加の層L2・・Ln-1を堆積させるために、段階a)及びb)を場合により選択された回数繰り返す;
d)先のコーティングの上部に、架橋可能な基を含むCLCPモノマー前駆体材料の最終コーティング層Lnを堆積させる;
e)前記CLCPコーティングを凍結または乾燥する;
f)アセンブリ全体を調質して、堆積CLCP層を配向させる;
g)前記コーティング内の架橋可能な基を全て本質的に架橋させ、且つ前記内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得る機械的に唯一の固体を形成するようにアセンブリ全体を完全に硬化させる、各段階を含む前記プロセス。
【請求項3】
前記コーティング層を溶融状態から適用する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティング層を溶液から適用する、請求項1〜3の一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記硬化はUV−照射、好ましくはUV/A照射によって実施する、請求項1〜4の一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記UV照射量は前記第一の層に関してはより低く、最終層に関してはより高く選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記CLPC前駆体材料中に含まれる光開始剤の量は、前記第一の層ではより低く、最終層ではより高く選択される、請求項1〜6の一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記硬化は電子ビーム照射によって実施する、請求項1〜7の一項に記載のプロセス。
【請求項9】
少なくとも一つの光学特性が異なっている少なくとも二層のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)が重ねて配置されている、特に請求項1〜8の一項のプロセスにより得ることができるCLCPの多層であって、たとえばその内部構造に悪影響を与えることなく顔料に粉砕し得、且つコレステリック液晶ポリマーの前記少なくとも二つの層の間の界面でコレステリック液晶ピッチが急激に変化する機械的に唯一の固体を形成するように、前記少なくとも二つの層はポリマー網状構造を通して化学的に層間架橋されることを特徴とする、前記多層。
【請求項10】
請求項9に記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層であって、前記CLCPは成分A)とB)とを含み、ここで
A)は平均一般式(1):
Y1−A1−M1−A2−Y2(1)
{式中、Y1、Y2は、同一または異なり、且つアクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシ、ビニルエーテル若しくはビニル残基などの架橋可能な基を表す;
A1、A2は、一般式CnH2nの同一または異なる残基であり、ここでnは0〜20の整数であり、且つ一つまたは数個のメチレン基は酸素原子により置き換わっていてもよい;
M1は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−X3−R4−を有し、
ここでR1〜R4は、-O-、-COO-、-COHN-、-CO-、-S-、-C≡C-、-CH=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、及びC-C結合からなる群から選択される同一または異なる二価の残基であり;ここでR2−X2−R3またはR2−X2またはR2−X2−R3-X3はC-C結合であってもよい;
X1〜X3は、1,4-フェニレン;1,4-シクロへキシレン;アリール核に6〜10個の原子と、O、N及びSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子とを持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するヘテロアリーレン;3〜10個の炭素原子を持ち、且つ置換基B1、B2及び/またはB3を保持するシクロアルキレンからなる群から選択される同一または異なる残基であり;
ここでB1〜B3は、水素、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル及び、エーテル酸素、チオエーテル、硫黄またはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつアルキル-、アルコキシ-またはアルキルチオ-残基からなる群から選択される同一または異なる置換基である}の少なくとも一つまたは数種の三次元的に架橋可能な化合物20〜99.5重量%、好ましくは60〜99重量%であり;
B)は、平均一般式(2):
V1−A1−W1−Z−W2−A2−V2(2)
{式中、V1、V2は、同一または異なり、且つ以下の残基:アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、ビニル、イソシアネート、C1-C20-アルキル、C1-C20-アルコキシ、C1-C20-アルキルチオ、C1-C20-アルキルカルボニル、C1-C20-アルコキシカルボニル、C1-C20-アルキルチオカルボニル、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、ホルミル、アセチル、並びにエーテル酸素、チオエーテル、硫黄若しくはエステル基によって中断された鎖をもつ1〜20個の炭素原子をもつ、アルキル-、アルコキシ-若しくはアルキルチオ-残基、またはコレステロール残基を表す;
A1、A2は、上記の通りであり;
W1、W2は、一般式:−R1−X1−R2−X2−R3−を有し、
ここでR1〜R3は、上記定義の通りであり、且つここでR2またはR2−X2またはX1−R2−X2−R3はC-C結合であってもよい;
X1、X2は、上記の通りであり;
Zは、ジアンヒドロヘキサイト(dianhydrohexite)類(たとえばイソソルビド(iso-sorbide)またはイソマンニド(iso-mannide)、ヘキソース類、ペントース類、ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、酒石酸の誘導体、及び光学活性グリコール類、並びにV1またはV2がコレステロール残基であるときC-C結合からなる群から選択される二価のキラル残基である}の少なくとも一つのキラル化合物0.5〜80重量%、好ましくは3〜40重量%である、前記多層。
【請求項11】
前記成分B)がAnABIs-(2-[4-(アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-5-(4-メトキシベンゾイル)-イソソルビド)、DiABIs(ジ-2,5-[4-(アクリロールオキシ(acryloloxy))-ベンゾイル]-イソソルビド)、またはDiABIm(ジ-2,5-[(4’-アクリロイルオキシ)-ベンゾイル]-イソマンニド)からなる群から選択される、請求項10に記載の多層。
【請求項12】
前記の異なる光学特性が、最大反射の波長、反射光の円偏光状態、光学吸収特性、たとえば多層のCLCP層の一つに少なくとも一種の染料または顔料を混合することによって得られるものなど、または発光特性、たとえば多層のCLCP層の一つに少なくとも一種の発光化合物を混合することによって得られるものなどからなる群から選択される、請求項9〜11の一項に記載の多層。
【請求項13】
前記多層が、ヒトの裸眼では気づかれない、狭帯域スペクトル特徴をもつ、請求項9〜12の一項に記載の多層。
【請求項14】
磁性粒子、ラジオ周波共鳴粒子及び法的マーカーからなる群から選択される非光学特性をもつ添加剤をさらに含む、請求項9〜13の一項に記載の多層。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層を粉砕することによって得ることができる、印刷またはコーティング用途用のフレーク顔料。
【請求項16】
前記顔料サイズの中央値d50が5〜5000マイクロメートル、好ましくは5〜100マイクロメートル、最も好ましくは10〜50マイクロメートルである、請求項15に記載のフレーク顔料。
【請求項17】
請求項15または16に記載のフレーク顔料を製造するための請求項9〜14の一項に記載のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)の多層の使用。
【請求項18】
機密文書の分野、グラフィック業界、コーティング組成物、インモールド(in-mold)用途用、または化粧品用途の請求項15または16の一項に記載のフレーク顔料の使用。
【請求項19】
請求項15または16の一項に記載のフレーク顔料を含む、物体または印刷用インキまたはコーティング組成物。
【請求項20】
機密文書、たとえば紙幣、有価証券、同定確認書類、タックスバンデロール、アクセスカード、乗車券または製品セキュリティラベルなどの保護のための請求項19に記載の印刷用インキまたはコーティング組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2009−541047(P2009−541047A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517183(P2009−517183)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056394
【国際公開番号】WO2008/000755
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056394
【国際公開番号】WO2008/000755
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】
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