説明

コンクリートの乾式吹き付けシステムおよびコンクリートの乾式吹き付け工法

【課題】ベースコンクリートの表面水率を画一的に定めることができ、供給される水の供給水量を規則的に決めることができるコンクリートの乾式吹き付けシステムを提供する。
【解決手段】乾式吹き付けシステムでは、輝度測定装置11がベースコンクリートの第1輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で複数回測定しつつ、測定したそれら第1輝度を制御装置12に出力する。制御装置12は、それら第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入してベースコンクリートの表面水率を算出するとともに供給水量を算出し、算出した供給水量を水自動供給装置18に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントと骨材とを混合した混合物を吹き付けノズルに搬送し、吹き付けノズルの近傍から水を供給しつつ混合物を吹き付け面に吹き付けるコンクリートの乾式吹き付けシステムおよびコンクリートの乾式吹き付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや大空洞構造物の覆工、法面や斜面、壁面の風化や剥離、剥落の防止に乾式吹き付け工法が利用されている。乾式吹き付け工法は、セメントと骨材とを空練りミキサで混合してベースコンクリート(混合物)を作り、エアーコンプレッサーからの圧送空気を利用してそのベースコンクリートをマテリアルホースから吹き付けノズルに圧送するとともに、吹き付けノズルの近傍に延びるマテリアルホースに所定量の急結剤と水とを注入し、急結剤と水とを含むベースコンクリートを吹き付けノズルから吹き付け面に吹き付ける。乾式吹き付け工法の一例として、セメントとリバウンドコンクリートを含む骨材と急結剤とを混合したベースコンクリートをマテリアルホースに送り込み、吹き付けノズルの近傍に延びるマテリアルホースに所定量の水を注入し、吹き付けノズルから湿潤状態のベースコンクリートを吹き付ける技術が開示されている(特許文献1参照)。ここで、リバウンドコンクリートとは、吹き付け中に吹き付け面から跳ね返り、吹き付け面に施工されないコンクリートである。
【特許文献1】特開2002−128556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乾式吹き付け工法は、広い範囲に薄く施工することができ、斜面や上面に型枠を設置せずに施工することができるとともに、複雑な形状の吹き付け面に対しても施工することができるという利点を有する反面、骨材に含まれる含水量を考慮しつつ、マテリアルホースに供給される水の供給水量を現場における作業者が経験と感覚とを頼りに決めなければならず、作業者の能力によって施工精度にばらつきが生じるという欠点がある。前記公報に開示の乾式吹き付け工法は、吹き付け面に吹き付けるベースコンクリートにリバウンドコンクリートを含む骨材を使用するから、リバウンドコンクリートの再利用を図ることができる。しかし、リバウンドコンクリートを含む骨材の含水量を画一的に定めることができず、マテリアルホースに供給される水の供給水量の決定を作業者の経験と感覚とに頼らざるを得ない問題を解決することはできない。
【0004】
本発明の目的は、セメントと骨材とを混合した混合物の表面水率を画一的に定めることができ、供給される水の供給水量を作業者の経験と感覚とに頼ることなく規則的に決めることができるコンクリートの乾式吹き付けシステムおよびコンクリートの乾式吹き付け工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、セメントと骨材とを混合した混合物を吹き付けノズルに搬送し、吹き付けノズルの近傍から水を供給しつつ混合物を吹き付け面に吹き付けるコンクリートの乾式吹き付けシステムである。
【0006】
前記第1の前提における本発明の第1の特徴は、コンクリートの乾式吹き付けシステムが、吹き付けノズルに搬送される混合物の第1輝度を測定する輝度測定装置と、あらかじめ測定された試作混合物の複数の第2輝度とそれら第2輝度に対応する該試作混合物の複数の表面水率との相関関係から表面水率算出式を決定し、輝度測定装置が測定した混合物の第1輝度を表面水率算出式に代入して該混合物の表面水率を算出する制御装置とを備え、制御装置が、算出した混合物の表面水率を表示することにある。
【0007】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、輝度測定装置が、混合物の第1輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で複数回測定しつつ、測定したそれら第1輝度を制御装置に出力し、制御装置が、それら第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入して混合物の表面水率を算出する。
【0008】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、コンクリートの乾式吹き付けシステムでは、第1輝度の測定時間を1〜15分の範囲で設定可能、かつ、第1輝度の測定間隔を2〜10秒の範囲で設定可能であり、制御装置が測定時間内に測定されたそれら第1輝度の第1集団に基づいて輝度平均値と標準偏差とを求める。
【0009】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、コンクリートの乾式吹き付けシステムでは、第1輝度の第2集団を抽出するときの信頼度を68.26〜99.73%の範囲で設定可能である。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、コンクリートの乾式吹き付けシステムが、制御装置から出力された供給水量の水を吹き付けノズルの近傍に自動的に供給する水自動供給装置を含み、制御装置が、表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から骨材の含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から含水量を減じて供給水量を算出し、算出した供給水量を水自動供給装置に出力する。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、輝度測定装置が、一方向へ連続して移動する混合物を部分的に覆って暗所を作る被覆部材と、暗所を移動する混合物に光を照射する光源と、光源から照射された光によって照らされた混合物の第1輝度を測定する輝度計とから形成されている。
【0012】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、セメントと骨材とを混合した混合物を吹き付けノズルに搬送し、吹き付けノズルの近傍から水を供給しつつ混合物を吹き付け面に吹き付けるコンクリートの乾式吹き付け工法である。
【0013】
前記第2の前提における本発明の第2の特徴は、コンクリートの乾式吹き付け工法が、吹き付けノズルに搬送される混合物の第1輝度を測定する輝度測定工程と、あらかじめ測定された試作混合物の複数の第2輝度とそれら第2輝度に対応する該試作混合物の複数の表面水率との相関関係から表面水率算出式を決定し、輝度測定工程において測定された混合物の第1輝度を表面水率算出式に代入して該混合物の表面水率を算出する表面水率算出工程と、算出した混合物の表面水率を表示する表面水率表示工程とを有することにある。
【0014】
前記第2の特徴を有する本発明の一例として、輝度測定工程では、混合物の第1輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で複数回測定しつつ、測定したそれら第1輝度を制御装置に出力し、表面水率算出工程では、それら第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入して混合物の表面水率を算出する。
【0015】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、コンクリートの乾式吹き付け工法が、吹き付けノズルの近傍に水を自動的に供給する水自動供給工程を含み、表面水率算出工程では、表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から骨材に含まれる含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から含水量を減じて供給水量を算出し、水自動供給工程では、表面水率算出工程において算出された供給水量の水を供給する。
【0016】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、輝度測定工程では、一方向へ連続して移動する混合物を部分的に覆って暗所を作り、暗所を移動する混合物に光を照射しつつ、照射された光によって照らされた混合物の第1輝度を測定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるコンクリートの乾式吹き付けシステムによれば、測定された混合物の第1輝度を表面水率算出式に代入してその混合物の表面水率を算出するから、混合物の表面水率を画一的に求めることができ、さらに、算出した表面水率を表示するから、作業者が表示された表面水率に基づいて供給する水の供給水量を規則的に決定することができる。この乾式吹き付けシステムは、現場における作業者が経験と感覚とを頼りに水の供給水量を決める必要はなく、作業者の能力の高低にかかわらず、乾式吹き付けの施工性や品質を向上させることができ、あわせて施工精度の均一化を図ることができる。
【0018】
第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入して混合物の表面水率を算出するコンクリートの乾式吹き付けシステムは、確率分布における信頼度を採用し、信頼度の範囲内に存する第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入するから、変動が少ない安定した表面水率を求めることができる。この乾式吹き付けシステムは、作業者の経験と感覚とに頼ることなく混合物の安定した表面水率を画一的に求めることができ、作業者の能力の高低にかかわらず、乾式吹き付けの施工性や品質を向上させることができ、あわせて施工精度の均一化を図ることができる。
【0019】
第1輝度の測定時間を1〜15分の範囲で設定可能、かつ、第1輝度の測定間隔を2〜10秒の範囲で設定可能であり、測定時間内に測定されたそれら第1輝度の第1集団に基づいて輝度平均値と標準偏差とを求めるコンクリートの乾式吹き付けシステムは、混合物の吹き付け時間や混合物の単位時間当たりの吹き付け量にあわせて第1輝度の測定時間や測定間隔を前記範囲で調節することができ、混合物毎における最適な測定時間と測定間隔とを設定することができるから、変動が少ない安定した表面水率を求めることができ、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができる。
【0020】
第1輝度の第2集団を抽出するときの信頼度を68.26〜99.73%の範囲で設定可能なコンクリートの乾式吹き付けシステムは、混合物の構成材の混合比率や骨材の含水量にあわせて信頼度を決定することができ、高い信頼度に基づいて混合物の表面水率を求めることができるから、変動が少ない安定した表面水率を求めることができ、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができる。
【0021】
表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から骨材の含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から含水量を減じて供給水量を算出し、算出した供給水量の水を吹き付けノズルの近傍に自動的に供給するコンクリートの乾式吹き付けシステムは、供給水量の水が自動的に供給されるから、混合物の表面水率から作業者が供給する水の供給水量を推測する必要はなく、作業者が水の供給水量を手作業で調節する必要もない。この乾式吹き付けシステムは、骨材の含水量を考慮した水の供給水量を高い精度で画一的に算出することができ、算出した供給水量の水を作業者の作業を伴うことなく自動的に供給することができるから、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができる。
【0022】
輝度測定装置が暗所を作る被覆部材と暗所を移動する混合物に光を照射する光源と光源から照射された光によって照らされた混合物の第1輝度を測定する輝度計とから形成されたコンクリートの乾式吹き付けシステムは、輝度の測定時に混合物を暗所に位置させることで、混合物に余計な光が照射されることを防ぎ、さらに、暗所に位置する混合物に所定の光源から光を照射することで、混合物に一定の光のみを照射するから、混合物の第1輝度の測定を常時一定の条件下で行うことができる。この乾式吹き付けシステムは、混合物の第1輝度を一定条件下で正確に測定することができ、その第1輝度に基づいて混合物の表面水率を画一的に求めることができるから、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができるとともに、施工精度の均一化を確実に図ることができる。
【0023】
本発明にかかるコンクリートの乾式吹き付け工法によれば、測定された混合物の第1輝度を表面水率算出式に代入してその混合物の表面水率を算出するから、混合物の表面水率を画一的に求めることができ、さらに、算出した表面水率を表示するから、作業者が表示された表面水率に基づいて供給する水の供給水量を規則的に決定することができる。この乾式吹き付け工法は、現場における作業者が経験と感覚とを頼りに水の供給水量を決める必要はなく、作業者の能力の高低にかかわらず、乾式吹き付けの施工性や品質を向上させることができ、あわせて施工精度の均一化を図ることができる。
【0024】
第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入して混合物の表面水率を算出するコンクリートの乾式吹き付け工法は、確率分布における信頼度を採用し、信頼度の範囲内に存する第2集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入するから、変動が少ない安定した表面水率を求めることができる。この乾式吹き付け工法は、作業者の経験と感覚とに頼ることなく混合物の安定した表面水率を画一的に求めることができ、作業者の能力の高低にかかわらず、乾式吹き付けの施工性や品質を向上させることができ、あわせて施工精度の均一化を図ることができる。
【0025】
表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から骨材の含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から含水量を減じて供給水量を算出し、算出した供給水量の水を吹き付けノズルの近傍に自動的に供給するコンクリートの乾式吹き付け工法は、供給水量の水が自動的に供給されるから、混合物の表面水率から作業者が供給する水の供給水量を推測する必要はなく、作業者が水の供給水量を手作業で調節する必要もない。この乾式吹き付け工法は、骨材の含水量を考慮した水の供給水量を高い精度で画一的に算出することができ、算出した供給水量の水を作業者の作業を伴うことなく自動的に供給することができるから、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができる。
【0026】
輝度測定工程において一方向へ連続して移動する混合物を部分的に覆って暗所を作り、暗所を移動する混合物に光を照射しつつ、照射された光によって照らされた混合物の第1輝度を測定するコンクリートの乾式吹き付け工法は、輝度測定工程において混合物を暗所に位置させることで、混合物に余計な光が照射されることを防ぎ、さらに、暗所に位置する混合物に光を照射することで、混合物に一定の光のみを照射するから、混合物の第1輝度の測定を常時一定の条件下で行うことができる。この乾式吹き付け工法は、混合物の第1輝度を一定条件下で正確に測定することができ、その第1輝度に基づいて混合物の表面水率を画一的に求めることができるから、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができるとともに、施工精度の均一化を確実に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付の図面を参照し、本発明に係るコンクリートの乾式吹き付けシステムおよびコンクリートの乾式吹き付け工法の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す乾式吹き付けシステムの構成図であり、図2は、一例として示す輝度測定装置11の斜視図である。図3は、試作ベースコンクリートの輝度と表面水率との相関関係の一例を示す図である。図1では、輝度測定装置11を形成するユニット23の図示を省略している。図2では、上下方向を矢印A、横方向を矢印Bで示し、前後方向を矢印Cで示す。乾式吹き付けシステムは、ベースコンクリート10(ドライミックス混合物)の輝度を測定する輝度測定装置11と、制御装置12と、ベースコンクリート10をマテリアルホース13に供給するコンクリート搬送装置14と、マテリアルホース13の後端部15からコンクリート圧送空気を給気するエアーコンプレッサー16と、マテリアルホース13に向かって急結剤を供給する急結剤供給装置17(二点鎖線内)と、マテリアルホース13に向かって水を自動的に供給する水自動供給装置18(一点鎖線内)と、マテリアルホース13の先端部19に取り付けられた吹き付けノズル20とから形成されている。輝度測定装置11、制御装置12、コンクリート搬送装置14、エアーコンプレッサー16、急結剤供給装置17、水自動供給装置18には、配線(図示せず)を介して所定の電力が供給されている。
【0028】
ベースコンクリート10は、セメントと骨材とを空練りミキサ(図示せず)で混練することで作られている。ベースコンクリート10は、空練りミキサからベルトコンベア21に移り、図1,2に矢印L1で示すように、ベルトコンベア21上を一方向へ移動してコンクリート搬送装置14に進入する。使用するセメントの種類について特に限定はなく、プレミックスセメント,ポルトランドセメント,高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメント等のうちのいずれか、または、それらを所定の割合で混合したセメントを使用することができる。それらセメントは、乾燥状態にある。骨材には、粗骨材および細骨材が使用されている。粗骨材には、砂利、砕石、砕砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、人工軽量骨材のうちのいずれか、または、それらを所定の割合で混合した骨材を使用することができる。細骨材には、砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、人工軽量骨材のうちのいずれか、または、それらを所定の割合で混合した骨材を使用することができる。粗骨材や細骨材には、所定量の水分が含まれている。
【0029】
輝度測定装置11は、ベルトコンベア21の略中間に設置されている。輝度測定装置11は、図2に示すように、ベルトコンベア21上を移動するベースコンクリート10を部分的に覆って暗所22を作るユニット23(被覆部材)と、暗所22を移動するベースコンクリート10に光を照射するLED24(光源)と、LED24から照射された光によって照らされたベースコンクリート10の輝度を測定する輝度計25とから形成されている。LED24と輝度計25とは、インターフェイス26(有線または無線)を介して制御装置12に接続されている。ユニット23は、ベルトコンベア21の上方に位置する前後方向へ長い直方体である。ユニット23は、頂壁27と、頂壁27から下方へ延びる4つの側壁28とから形成されている。それら側壁28が交差する角部29には、下方へ延びる4本の脚30が取り付けられている。側壁28には、暗所22を覗くための開閉可能な窓31が作られている。各壁27,28や脚30は、金属やプラスチックから作られている。各壁27,28は、外部から入射する光を遮断する。
【0030】
LED24は、ユニット23の頂壁27に固定手段(図示せず)を介して固定されている。LED24の光照射部31は、頂壁27の略中央に作られた開口32から下方へ向かい、ベルトコンベア21に対向している。光照射部31からの光は、暗所22を移動するベースコンクリート10の上方から照射され、暗所22に位置するベースコンクリート10の略全域に満遍なく照射される。なお、LED24の他に、白熱電球や蛍光灯等の他の光源を使用することもできる。輝度計25は、ユニット23の頂壁27に固定手段(図示せず)を介して固定されている。輝度計25の輝度受光部33は、頂壁27の開口32から下方へ向かい、ベルトコンベア21に対向している。輝度計25は、暗所22に位置するベースコンクリート10の略全域の輝度を測定し得るようにその取り付けた高さや取り付け位置が決定されている。
【0031】
輝度測定装置11は、暗所22に位置するベースコンクリート10の輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で時系列に複数回測定し(輝度測定工程)、測定したそれら輝度を制御装置12に順次出力する。輝度測定装置11における輝度の測定時間や測定間隔は、制御装置12によって設定される。輝度の測定時間は、1〜15分の範囲で設定することができ、輝度の測定間隔は、2〜10秒の範囲で設定することができる。このシステムでは、ベースコンクリート10の吹き付け時間やベースコンクリート10の単位時間当たりの吹き付け量等にあわせて輝度の測定時間や測定間隔を前記範囲で調節することができ、ベースコンクリート10毎における最適な測定時間と測定間隔とを設定することができる。
【0032】
制御装置12は、中央処理部(CPUまたはMPU)と大容量ハードディスク(メモリ)とを有するコンピュータであり、キーボード34およびディスプレイ35が装備されている。制御装置12のハードディスクには、各種の手段を制御装置12に実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。制御装置12の中央処理部は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリからアプリケーションプログラムを起動し、起動したアプリケーションプログラムに従って、以下の各手段を実行する。
【0033】
制御装置12の中央処理部は、あらかじめ測定された試作ベースコンクリート(試作ドライミックス混合物)(図示せず)の複数の輝度(第2輝度)とそれら輝度に対応する試作ベースコンクリートの複数の表面水率との相関関係を特定する相関関係特定手段を実行し、特定した相関関係をハードディスクに格納する相関関係記憶手段を実行する。中央処理部は、格納した相関関係から試作ベースコンクリートの表面水率算出式を決定する算出式決定手段を実行し、決定した表面水率算出式をハードディスクに格納する算出式記憶手段を実行する。中央処理部は、輝度測定装置11から出力されたベースコンクリート10の補正輝度平均値を表面水率算出式に代入し、そのベースコンクリート10の表面水率を算出する表面水率算出手段(表面水率算出工程)を実行し、算出したベースコンクリート10の表面水率をディスプレイ35に表示する表面水率表示手段(表面水率表示工程)を実行する。中央処理部は、表面水率算出式に基づいて算出したベースコンクリート10の表面水率からそのベースコンクリート10に含まれる骨材の含水量を算出する含水量算出手段を実行し、あらかじめ設定された設定水量から含水量を減じ、供給する水の供給水量を算出する供給水量算出手段を実行する。さらに、算出した水の供給水量を水自動供給装置18に出力する供給水量出力手段を実行し、水の供給水量をディスプレイ35に表示する供給水量表示手段を実行する。
【0034】
試作ベースコンクリートの輝度と表面水率との相関関係を特定する一例や特定した相関関係から表面水率算出式を決定する一例は、以下のとおりである。たとえば、乾燥状態にある普通ポルトランドセメントを用意するとともに、平均粒径が所定範囲にあり、含水量があらかじめ決まっている砂利(粗骨材)や砂(細骨材)を容易する。普通ポルトランドセメントと砂利と砂とをミキサで混合して試作ベースコンクリートを作る。骨材の水分が分散することで試作ベースコンクリートには所定量の水分が含まれる。この手順を繰り返し、それぞれ表面水率の異なる複数の試作ベースコンクリートを作る。それら試作ベースコンクリートを用意した後、各試作ベースコンクリートの輝度(第2輝度)を測定するとともに、各試作ベースコンクリートの表面水率を測定し、測定したそれら輝度や表面水率をキーボード34を介して制御装置12に入力する。制御装置12の中央処理部は、縦軸に輝度、横軸に表面水率を表した輝度−表面水率相関関係表(図3参照)に、入力された輝度(%)と表面水率(%)との交点(図3の黒点)を表示し、輝度と表面水率との相関関係を特定する(相関関係特定手段)。次に、それら交点どうしを結んで所定の傾きを有する線分を引き、その線分の関数(y=−ax+b)を表面水率算出式とする(算出式決定手段)。中央処理部は、特定した輝度−表面水率相関関係表をハードディスクに格納し(相関関係記憶手段)、決定した表面水率算出式をハードディスクに格納する(算出式記憶手段)。図3から明らかなように、輝度が低下するにつれて表面水率が増加する。
【0035】
制御装置12の中央処理部は、輝度測定装置11から出力されたベースコンクリート10の輝度(第1輝度)を確率分布における所定の信頼度に基づいて補正し、補正した輝度の補正輝度平均値を表面水率算出式に代入する。具体的には、以下のとおりである。中央処理部は、輝度測定装置11から出力された複数の輝度(第1集団)を積算して輝度第1積算値を算出し、輝度第1積算値を測定回数で除して輝度平均値を算出するとともに、標準偏差を算出する。次に、輝度測定装置11から出力された複数の輝度(第1集団)の中から、輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度の範囲内(信頼区間内)に存する複数の輝度(第2集団)を抽出し、信頼度の範囲内に存する複数の輝度を積算して輝度第2積算値を算出し、輝度第2積算値を測定回数(信頼度の範囲外の輝度の測定回数を除く)で除して補正輝度平均値を算出する。中央処理部は、設定された測定時間毎に補正輝度平均値を順次算出し、それら補正輝度平均値を表面水率算出式に代入して移動するベースコンクリート10の表面水率を順次算出するとともに(表面水率算出手段)、ベースコンクリート10に含まれる骨材の含水量を順次算出し(含水量算出手段)、供給する水の供給水量を順次算出する(供給水量算出手段)。中央処理部は、供給水量を水自動供給装置18に順次出力し(供給水量出力手段)、表面水率と供給水量とをディスプレイ35に順次表示する(表面水率表示手段、供給水量表示手段)。
【0036】
システムでは、制御装置12が補正輝度平均値を算出する際の信頼度をμ(平均値)±1σ(標準偏差の1倍)、μ(平均値)±2σ(標準偏差の2倍)、μ(平均値)±3σ(標準偏差の3倍)のいずれかに設定することができる。μ±1σでは、信頼度が68.26%であり、μ±2σでは、信頼度が95.44%である。μ±3σでは、信頼度が99.73%である。システムは、ベースコンクリート10の構成材の混合比率やベースコンクリート10に含まれる骨材の含水量にあわせて信頼度を決定することができ、高い信頼度に基づいてベースコンクリート10の表面水率を求めることができる。
【0037】
コンクリート搬送装置14は、ベルトコンベア21によって運ばれたベースコンクリート10を受け取るホッパー36と、ベースコンクリート10をコンクリートホース37に向かって圧送するコンクリートポンプ(図示せず)とから形成されている。コンクリートホース37は、Y字管38を介してマテリアルホース13に連結されている。エアーコンプレッサー16は、エアーホース39を介してコンクリート圧送空気をマテリアルホース13に送る。エアーホース39は、Y字管38を介してマテリアルホース13に連結されている。エアーホース39には、流量調節バルブ40と流量計41とが取り付けられている。エアーホース39内を流れるコンクリート圧送空気の量は、バルブ40によって調節されている。
【0038】
急結剤供給装置17は、粉体急結剤を圧送空気によって強制的に搬送するエアーコンプレッサー42と、設定量の急結剤を供給する急結剤供給ユニット43とから形成されている。コンプレッサー42は、急結剤供給ホース44を介して供給ユニット43に連結されている。供給ホース44は、Y字管45を介してマテリアルホース13の中間部46につながっている。供給ホース44には、スラリー化ノズル47が取り付けられている。供給ユニット43に収容された急結剤は、エアーコンプレッサー42から給気される急結剤圧送空気によってマテリアルホース13に向かって供給される。供給ユニット43は、エアーコンプレッサー42から給気される圧送空気の流量や圧力を制御することで、供給する急結剤の量を調節している。
【0039】
水自動供給装置18は、水を収容するタンク48と、タンク48内の水をスラリー化ノズル47に向かって強制的に供給するポンプ49と、水の流量を計測する流量計50と、ポンプ49の出力を制御して水の流量を調節する制御盤51とから形成されている。制御盤51は、インターフェイス52を介して制御装置12に接続されている。タンク48とポンプ49とは、ウォータホース53を介して互いに連結されている。ウォータホース53は、スラリー化ノズル47につながっている。流量計50は、ポンプ49の下流側に延びるウォータホース53に取り付けられている。水自動供給装置13は、制御装置12から出力された供給水量(単位時間当たりのノズル20からの吐出量(リットル/分))の水を自動的に供給する(水自動供給工程)。なお、作業者が制御盤51の水量調節部(図示せず)を手動で操作することにより、単位時間当たりの水の供給水量を自由に変えることもできる。
【0040】
このコンクリートの乾式吹き付けシステムは、圧送空気を利用してベースコンクリート10をマテリアルホース13から吹き付けノズル20に搬送するとともに、吹き付けノズル20の近傍に延びるマテリアルホース13にスラリー急結剤を注入し、スラリー急結剤を含むベースコンクリート10をノズル20から吹き付け面に吹き付ける。このシステムでは、スラリー化ノズル47を用いて粉体急結剤に水を連続的に混入させ、粉体急結剤をスラリー化し、スラリー化したスラリー急結剤をベースコンクリート10に混入させている。スラリー急結剤を使用することによってベースコンクリート10との混合性が向上し、吹き付け時における粉塵の発生を防ぐことができる。粉体急結剤には、カルシウムアルミネート系、カルシウムサルフォアルミネート系、カルシウムナトリウムアルミネート系、アルミン系を使用することができる。水には、上水道水、地下水、河川水、湖沼水等を使用することができる。
【0041】
図4は、輝度の測定時間と測定間隔との一例を示す図であり、図5は、制御装置12によって行われる表面水率および供給水量の算出の一例を示すフローチャートである。図4では、時間の経過を矢印L2で示す。図4では、制御装置12が算出した表面水率と供給水量とがディスプレイ35に表示されている。システムを起動させる前段階として、制御装置12のハードディスクに格納された相関関係の特定に用いた試作ベースコンクリートの材料と同一の材料を用意する。たとえば、相関関係の特定に用いられた試作ベースコンクリートが普通ポルトランドセメントと平均粒径が所定範囲にある砂利(粗骨材)と砂(細骨材)とから作られている場合、それらと同一の普通ポルトランドセメントと砂利と砂とを用意する。また、試作ベースコンクリートがフライアッシュセメントと平均粒径が所定範囲にある砕石(粗骨材)と高炉スラグ骨材(細骨材)とから作られている場合、それらと同一のフライアッシュセメントと砕石と高炉スラグ骨材とを用意する。
【0042】
次に、システムを起動させて制御装置12に各種条件を入力する。条件には、輝度の測定時間や測定間隔、信頼度、粉体急結剤の供給量、エアーコンプレッサー16,42の出力、ポンプ49の出力等がある。図4,5では、輝度の測定時間の一測定単位を3分とし、測定間隔を5秒としている。したがって、輝度測定装置11は、5秒毎にベースコンクリート10の輝度を測定する。ただし、測定時間や測定間隔はそれらに限定されず、上述したように、測定時間を1〜15分の範囲で設定することができ、測定間隔を2〜10秒の範囲で設定することができる。信頼度は、μ(平均値)±1σ(標準偏差の1倍)に設定されているものとする。ただし、信頼度はそれに限定されず、上述したように、信頼度をμ(平均値)±2σ(標準偏差の2倍)とμ(平均値)±3σ(標準偏差の3倍)とのいずれかに設定することもできる。
【0043】
システムが起動すると、輝度測定装置11のLED24が点灯して暗所22を照らし、輝度計25が暗所22を移動するベースコンクリート10の輝度を測定可能となる。作業者は、試作ベースコンクリートと同一のセメントと骨材とを空練りミキサに投入する。たとえば、普通ポルトランドセメントと砂利と砂とをミキサに投入する。または、フライアッシュセメントと砕石と高炉スラグ骨材とをミキサに投入する。ミキサでは、それら材料が混練されてベースコンクリート10となる。ベースコンクリート10には、骨材に含まれる水分が分散する。ゆえに、ベースコンクリート10には、所定量の水分が含まれる。ベースコンクリート10は、ミキサからベルトコンベア21上に移動する。輝度測定装置11は、暗所22を移動するベースコンクリート10の輝度を5秒毎に測定する(S−1)。輝度測定装置11は、測定した輝度を順次制御装置12に出力する。
【0044】
制御装置12では、3分間を一測定単位としてカウントするとともに、6分間を信頼度確定単位としてカウントする。制御装置12の中央処理部は、輝度測定装置11で測定された輝度を6分間で一区切りとし、6分間の測定回数72回の輝度データ72個(第1集団)を積算して輝度第1積算値を算出し、輝度第1積算値を72で除して輝度平均値を算出するとともに、標準偏差を算出する。次に、中央処理部は、輝度データ72個(第1集団)のうち、輝度平均値と標準偏差とから定まる信頼度(μ±1σ)の範囲外(信頼区間外)の不採用データを特定する(S−2)。ここで、不採用データは、輝度平均値からマイナス側にαだけ移動した点からさらにマイナス側に存在するデータ(−α未満)、輝度平均値からプラス側にαだけ移動した点からさらにプラス側に存在するデータ(+α超過)である。
【0045】
制御装置12の中央処理部は、輝度データ72個(第1集団)のうち、後半分の36個の輝度データから不採用データを除外し(S−3)。信頼度の範囲内に存する残余の輝度データ(第2集団)を抽出する。中央処理部は、残余の輝度データを積算して輝度第2積算値を算出し、輝度第2積算値を36から不採用データの測定回数を引いた値で除して補正輝度平均値を算出する(S−4)。中央処理部は、補正輝度平均値を表面水率算出式に代入し、ベースコンクリート10の表面水率を算出し(S−5)、算出した表面水率をディスプレイ35に表示する(S−6)。具体的には、表面水率算出式が(y)=−1.5004(x)+14.599であり、補正輝度平均値(x)が6.39(%)である場合、表面水率(y)=−1.5004×6.39+14.599=5.0(%)となり、表面水率5.0(%)をディスプレイ35に表示する。
【0046】
次に、制御装置12の中央処理部は、表面水率算出式に基づいて算出した表面水率からベースコンクリート10に含まれる骨材の含水量を算出し、あらかじめ設定された設定水量からその含水量を減じて供給水量を算出し(S−7)、算出した供給水量をディスプレイ35に表示するとともに、供給水量を水自動供給装置18に出力する(S−8)。具体的には、毎分当たりの供給水量を(a)、毎分当たりの設定水量を(b)、含水量を(c)、ベースコンクリート10に含まれる骨材の重量を(d)、表面水率を(y)とすると、供給水量(a)=設定水量(b)−含水量(b)、含水量(b)=骨材の重量(d)×表面水率(y)によって算出する。毎分当たりの設定水量(b)が20(リットル/分)、骨材の重量(d)が100(kg/分)、表面水率が(y)5.0(%)である場合、含水量(b)=100×0.05=5(リットル/分)、供給水量(a)=20−5=15(リットル/分)となり、供給水量15(リットル/分)をディスプレイ35に表示するとともに、水自動供給装置18に出力する。
【0047】
作業者はシステムの継続稼動または停止を選択する(S−9)。作業者がシステムの停止を選択すると、システムの稼動が停止する。作業者がシステムの継続稼動を選択すると、制御装置12の中央処理部は、ステップ2(S−2)に戻り、ステップ2以降の処理を繰り返す。中央処理部は、図4に示すように、移動平均により、表面水率や供給水量を順次算出する。具体的には、測定回数72回のうち、前半分の36回を除外し、後半分の36回にさらに3分間測定した36回を加えて測定回数72回とし、その72回の輝度データを採用しつつ、加えた36回の輝度データから補正輝度平均値を算出し、補正輝度平均値からベースコンクリート10の表面水率を算出するとともに、骨材の含水量を算出し、供給する水の供給水量を算出する。中央処理部は、移動平均によって順次算出した表面水率および供給水量をディスプレイ35に表示するとともに、順次算出した供給水量を水自動供給装置18に出力する。水自動供給装置18では、制御装置12から出力された供給水量(リットル/分)にしたがって、制御盤51がポンプ49の出力を調節し、供給水量の水を自動的に供給する供給水量(リットル/分)の水をスラリー化ノズル47に供給する。
【0048】
この乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、測定されたベースコンクリート10の補正輝度平均値を表面水率算出式に代入してそのベースコンクリート10の表面水率を算出し、さらに、表面水率を用いて供給する水の供給水量を算出するから、ベースコンクリート10の表面水率や水の供給水量を画一的に求めることができる。乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、算出した供給水量を水自動供給装置18に出力し、供給水量の水が装置18から自動的に供給されるから、作業者が経験と感覚とを頼りに水の供給水量を決める必要はなく、さらに、作業者がベースコンクリート10の表面水率に基づいて供給する水の供給水量を手作業で調整する必要はない。乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、ベースコンクリート10に含まれる骨材の含水量を考慮した水の供給水量を高い精度で画一的に算出することができ、算出した供給水量の水を作業者の作業を伴うことなく自動的に供給することができるから、作業者の能力の高低にかかわらず、乾式吹き付けの施工性や品質を確実に向上させることができ、あわせて施工精度の均一化を図ることができる。
【0049】
乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、測定した輝度(第1輝度)の集団(第1集団)から輝度平均値と標準偏差とを求め、第1集団の中から信頼度の範囲内に存する集団(第2集団)を抽出し、その集団から求めた補正輝度平均値を表面水率算出式に代入してベースコンクリート10の表面水率を算出するから、変動が少ない安定した表面水率を求めることができる。乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、輝度測定装置11が暗所22を作るユニット23と暗所22を移動するベースコンクリート10に光を照射するLED24とLED24から照射された光によって照らされたベースコンクリート10の輝度を測定する輝度計25とから形成されているから、輝度の測定時にベースコンクリート10を暗所22に位置させることで、ベースコンクリート10に余計な光が照射されることを防ぐことができる。乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法は、暗所22に位置するベースコンクリート10にLED24から光を照射することで、ベースコンクリート10に一定の光のみを照射するから、ベースコンクリート10の輝度の測定を常時一定の条件下で行うことができ、ベースコンクリート10の輝度を一定条件下で正確に測定することができる。
【0050】
乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法では、供給水量を水自動供給装置18に出力し、制御盤51がポンプ49の出力を調節して供給水量の水を自動的に供給するが、供給装置18のポンプ49出力や弁機構(図示せず)を作業者が手作業で調節して供給水量の水を供給するようにしてもよい。この場合、制御装置12が算出した供給水量は供給装置18に出力されず、ディスプレイ35に供給水量が表示され、作業者が表示された供給水量を目視しながら、供給装置18から供給する水の分量を調整する。また、乾式吹き付けシステムおよび乾式吹き付け工法では、補正輝度平均値を表面水率算出式に代入してそのベースコンクリート10の表面水率を算出しているが、測定装置11が測定したベースコンクリート10の輝度(第1輝度)の平均値を表面水率算出式に代入してそのベースコンクリート10の表面水率を算出してもよく、測定装置11が測定したベースコンクリート10の輝度(第1輝度)を直接表面水率算出式に代入してそのベースコンクリート10の表面水率を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】一例として示す乾式吹き付けシステムの構成図。
【図2】一例として示す輝度測定装置の斜視図。
【図3】試作ベースコンクリートの輝度と表面水率との相関関係の一例を示す図。
【図4】輝度の測定時間と測定間隔との一例を示す図。
【図5】制御装置によって行われる表面水率および供給水量の算出の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
10 ベースコンクリート(混合物)
11 輝度測定装置
12 制御装置
17 急結剤供給装置
18 水自動供給装置
20 吹き付けノズル
21 ベルトコンベア
22 暗所
23 ユニット(被覆部材)
24 LED(光源)
25 輝度計
35 ディスプレイ
51 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと骨材とを混合した混合物を吹き付けノズルに搬送し、前記吹き付けノズルの近傍から水を供給しつつ前記混合物を吹き付け面に吹き付けるコンクリートの乾式吹き付けシステムにおいて、
前記乾式吹き付けシステムが、前記吹き付けノズルに搬送される混合物の第1輝度を測定する輝度測定装置と、あらかじめ測定された試作混合物の複数の第2輝度とそれら第2輝度に対応する該試作混合物の複数の表面水率との相関関係から表面水率算出式を決定し、前記輝度測定装置が測定した混合物の第1輝度を前記表面水率算出式に代入して該混合物の表面水率を算出する制御装置とを備え、前記制御装置が、算出した前記混合物の表面水率を表示することを特徴とする前記乾式吹き付けシステム。
【請求項2】
前記輝度測定装置が、前記混合物の第1輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で複数回測定しつつ、測定したそれら第1輝度を前記制御装置に出力し、前記制御装置が、それら第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、前記第1集団の中から前記輝度平均値と前記標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、前記第2集団から求めた補正輝度平均値を前記表面水率算出式に代入して前記混合物の表面水率を算出する請求項1記載のコンクリートの乾式吹き付けシステム。
【請求項3】
前記システムでは、前記第1輝度の測定時間を1〜15分の範囲で設定可能、かつ、前記第1輝度の測定間隔を2〜10秒の範囲で設定可能であり、前記制御装置が前記測定時間内に測定されたそれら第1輝度の第1集団に基づいて前記輝度平均値と前記標準偏差とを求める請求項2記載のコンクリートの乾式吹き付けシステム。
【請求項4】
前記システムでは、前記第1輝度の第2集団を抽出するときの信頼度を68.26〜99.73%の範囲で設定可能である請求項2または請求項3に記載のコンクリートの乾式吹き付けシステム。
【請求項5】
前記乾式吹き付けシステムが、前記制御装置から出力された供給水量の水を前記吹き付けノズルの近傍に自動的に供給する水自動供給装置を含み、前記制御装置が、前記表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から前記骨材の含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から前記含水量を減じて前記供給水量を算出し、算出した前記供給水量を前記水自動供給装置に出力する請求項1ないし請求項4いずれかに記載のコンクリートの乾式吹き付けシステム。
【請求項6】
前記輝度測定装置が、一方向へ連続して移動する前記混合物を部分的に覆って暗所を作る被覆部材と、前記暗所を移動する混合物に光を照射する光源と、前記光源から照射された光によって照らされた混合物の前記第1輝度を測定する輝度計とから形成されている請求項1ないし請求項5いずれかに記載のコンクリートの乾式吹き付けシステム。
【請求項7】
セメントと骨材とを混合した混合物を吹き付けノズルに搬送し、前記吹き付けノズルの近傍から水を供給しつつ前記混合物を吹き付け面に吹き付けるコンクリートの乾式吹き付け工法において、
前記乾式吹き付け工法が、前記吹き付けノズルに搬送される混合物の第1輝度を測定する輝度測定工程と、あらかじめ測定された試作混合物の複数の第2輝度とそれら第2輝度に対応する該試作混合物の複数の表面水率との相関関係から表面水率算出式を決定し、前記輝度測定工程において測定された混合物の第1輝度を前記表面水率算出式に代入して該混合物の表面水率を算出する表面水率算出工程と、算出した前記混合物の表面水率を表示する表面水率表示工程とを有することを特徴とする前記乾式吹き付け工法。
【請求項8】
前記輝度測定工程では、前記混合物の第1輝度を所定の測定時間内に所定の間隔で複数回測定しつつ、測定したそれら第1輝度を前記制御装置に出力し、前記表面水率算出工程では、それら第1輝度の第1集団から輝度平均値と標準偏差とを求め、前記第1集団の中から前記輝度平均値と前記標準偏差とから定まる信頼度の範囲内に存する第2集団を抽出し、前記第2集団から求めた補正輝度平均値を前記表面水率算出式に代入して前記混合物の表面水率を算出する請求項7記載のコンクリートの乾式吹き付け工法。
【請求項9】
前記乾式吹き付け工法が、前記吹き付けノズルの近傍に水を自動的に供給する水自動供給工程を含み、前記表面水率算出工程では、前記表面水率算出式に基づいて算出した表面水率から前記骨材に含まれる含水量を算出しつつ、あらかじめ設定された設定水量から前記含水量を減じて前記供給水量を算出し、前記水自動供給工程では、前記表面水率算出工程において算出された前記供給水量の水を供給する請求項7または請求項8に記載のコンクリートの乾式吹き付け工法。
【請求項10】
前記輝度測定工程では、一方向へ連続して移動する前記混合物を部分的に覆って暗所を作り、前記暗所を移動する混合物に光を照射しつつ、照射された光によって照らされた混合物の前記第1輝度を測定する請求項7ないし請求項9いずれかに記載のコンクリートの乾式吹き付け工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−215033(P2008−215033A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57334(P2007−57334)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】