説明

コンタクトレンズを形成するための熱硬化方法および熱硬化システム

【課題】多数のコンタクトレンズを迅速に製造できると同時に、既存の方法およびシステムに付随する問題を低減できる、ヒドロゲルコンタクトレンズ特にシリコーンヒドロゲルレンズを含むコンタクトレンズを製造する新規なシステムおよび方法を提供することにある。
【解決手段】複数の硬化ゾーンと、複数の硬化ゾーンの間でコンタクトレンズモールド組立体を移動させるモールド前進システムと、化学的に実質的に不活性な環境(この環境内で、コンタクトレンズプリカーサー材料が、硬化ゾーン内に置かれたコンタクトレンズモールド組立体内で重合される)を作る硬化ゾーン内のコントロールされた雰囲気とを有している。コンタクトレンズを製造する方法は、レンズ硬化システム内のコンタクトレンズモールド組立体内でコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させる段階を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年5月18日付米国仮特許出願第60/939,037号(名称「コンタクトレンズを形成するための熱硬化方法および熱硬化システム(THERMAL CURING METHODS AND SYSTEMS FOR FORMING CONTACT LENSES)」)の正規出願である。尚、この米国仮特許出願の内容は特に本願に援用する。
【0002】
本発明は、コンタクトレンズを形成するための熱硬化方法および熱硬化システムに関し、より詳しくは、不活性雰囲気中でコンタクトレンズを形成するための熱硬化方法および熱硬化システムに関する。更に詳しくは、本発明は、これらの方法およびシステムを用いて、ヒドロゲルコンタクトレンズ、より詳しくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する技術に関するが、これらの材料に限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
ポリマーコンタクトレンズの製造において、重合性レンズプリカーサー組成物が重合されてコンタクトレンズ製品が形成され、該コンタクトレンズ製品が更に加工されて水和コンタクトレンズが形成される。ヒドロゲルコンタクトレンズおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのようなレンズは、この方法により、種々の材料から作られている。従来のヒドロゲルコンタクトレンズとして、例えば、ポリマコン(polymacon)、テトラフィルコン(tetrafilcon)、オキュフィルコン(ocufilcon)、バイフィルコン(vifilcon)、エタフィルコン(etafilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、アルファフィルコン(alphaphilcon)、ネルフィルコン(nelfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)またはバサーフィルコン(vasurfilcon)等の米国制式名称(US Adopted Name:USAN)をもつ材料から作られたコンタクトレンズがある。しばしば、従来のヒドロゲルコンタクトレンズは、2−ヒドロキシヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸
(MA)、メチルメタクリル酸(MMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびこれらの組合せ等からなる親水性モノマーを含有するレンズプリカーサー組成物の重合製品である。プリカーサー組成物はまた、しばしば、1以上の触媒および架橋剤を含有している。
【0004】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーン成分を含む重合コンタクトレンズである。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、他のレンズ形成材料に加えて、シリコーン含有モノマー、オリゴマー、マクロマー、ポリマー等を含有するレンズプリカーサー組成物を重合することにより形成できる。一般的に入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの例として、バラフィルコンA(PUREVISION、Bausch & Lomb社)、ロトラフィルコンA(NIGHT & DAY、CIBA Vision社)、ロトラフィルコンB(O2OPTIX、CIBA Vision社)、ガリフィルコンA(ACUVUE ADVANCE、Vistakon社)、セノフィルコンA(ACUVUE OASYS、Vistakon社)およびコムフィルコンA(BIOFINITY、Cooper Vision社)のUSANをもつ材料から形成されるコンタクトレンズがある。
【0005】
レンズプリカーサー組成物の重合または硬化は、レンズプリカーサー組成物を含むコンタクトレンズモールド組立体を、例えば硬化オーブン内で紫外線または熱に曝すことにより行われる。プリカーサー組成物を重合するのに使用される放射線の種類は、しばしば、化学式に基いて定まる。反応性酸素がプリカーサー組成物の重合に影響を与えないようにするため化学的に不活性の硬化方法が望まれるときは、コンタクトレンズのモールド組立体は、化学的に不活性の雰囲気条件下(例えば窒素ブランケットの条件下)で処理されおよび/または重合性組成物を受入れる。
【0006】
コンタクトレンズモールド組立体内でのレンズプリカーサー組成物の熱硬化は、原則として通常の雰囲気すなわち化学的に不活性な雰囲気内で行われる。なぜならば、重合性レンズプリカーサー組成物は化学的に不活性な雰囲気中に計量分配(dispensed)されるが、実際には、通常の雰囲気中で作られる多くのコンタクトレンズは、種々の欠陥(多くの欠陥は、重合中に作られる揮発性物質から引起こされる問題から生じる)のため排除されるからである。
【0007】
ヒドロゲルコンタクトレンズの熱硬化方法では、レンズプリカーサー組成物が重合されるときに該組成物から放出される揮発性物質は、特に調整の観点から重大な問題となる。硬化の揮発性副生物は硬化オーブン内に蓄積し、手作業による掃除(手作業による掃除は、掃除を行うのにオーブンの使用を停止させる必要があるため、通常は実用的でない)によるか、スクラビングフィルタを用いて除去しなければならない。例えば、硬化プロセスから生じる揮発性副生物をスクラビングするのに、活性炭フィルタがしばしば使用されている。しかしながら、コンタクトレンズの製造は非常にクリーンな環境を必要としかつ活性炭フィルタは通常クリーンではないので、活性炭フィルタは種々の問題を引起こす。発生した水分を除去するには、標準凝縮フィルタが使用される。
【0008】
熱硬化プロセスには、硬化中に、バッチ形式の硬化チャンバまたは硬化ゾーンの温度を数回変えることを含めることができる。例えば、オーブンの硬化チャンバは、一定第一温度X°にA分間維持され、次にY°に加熱されかつこの温度にB分間維持され、次に、X°に冷却されかつA分間この温度に維持される。種々の硬化温度および硬化時間は、コンタクトレンズの製造に使用される化学式に関連している。従って、上記実際値は、便宜上の目的の変数により示される。他の硬化プロファイルも可能である。
【0009】
商業的スケールのコンタクトレンズ製造には、毎日、非常に多く(一般に、数十万個とはいかなくても数万個)のコンタクトレンズを製造できることが必要になる。バッチオーブンを使用する場合、このような個数を達成するには、上記形式の幾つかのバッチオーブンを並列的に作動される。しかしながら、各バッチオーブンは、僅かに異なる熱的性能となり易い。また、不活性環境はバッチオーブン硬化プロセスの制御が困難であり、これも異なるオーブン性能をもたらすことになる。これらの異なる性能は、コンタクトレンズを排除する原因となる欠陥を有する少量のコンタクトレンズを最小にすべく製造プロセスを制御することを困難にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多数のコンタクトレンズを迅速に製造できると同時に、既存の方法およびシステムに付随する問題を低減できる、ヒドロゲルコンタクトレンズ特にシリコーンヒドロゲルレンズを含むコンタクトレンズを製造する新規なシステムおよび方法が要望されている。例えば、化学的に不活性で不揮発性物質が存在しない雰囲気中で、特性の高い均一性をもつ多数のコンタクトレンズを迅速に製造できる新規なシステムおよび方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方法およびシステムは、熱放射線を使用してコンタクトレンズモールド組立体内のレンズプリカーサー材料を重合し、コントロールされた雰囲気環境を用いて重合成形されたコンタクトレンズ製品を形成する。本明細書で使用するコンタクトレンズモールド組立体とは、コンタクトレンズを製造するキャストモールディング法に精通した当業者ならば理解されようが、前面モールドすなわち雌型モールドと、後面モールドすなわち雄型モールドとの組立体であって、互いに接触してコンタクトレンズ形のキャビティを形成する組立体をいう。コントロールされた雰囲気環境が用意され、該雰囲気環境内で、組立てられたコンタクトレンズモールド組立体が重合に要する放射線量に曝されて、一定量のコンタクトレンズプリカーサー組成物が硬化され、重合されたコンタクトレンズ製品を形成する。コンタクトレンズ硬化オーブン内のコントロールされた雰囲気環境は、硬化オーブンすなわちオーブンの硬化ゾーン内に存在する水分量を制御できる。硬化オーブンすなわちオーブンの硬化ゾーン内に存在する酸素等の反応性薬品群の量、または硬化オーブンすなわちオーブンの硬化ゾーン内の温度またはこれらの組合せも制御できる。水分含有量酸素レベルおよび温度は、オーブン内で作られるコンタクトレンズの試験運転に基いて経験的に決定される。
【0012】
或る実施形態では、本発明の方法およびシステムは、硬化オーブンすなわちオーブンの硬化ゾーン内の残留酸素レベルを制御することによりコンタクトレンズモールド組立体内のコンタクトレンズを熱的に硬化でき、このため、このようなコントロールを行わないで熱硬化オーブン内で作られる実質的に同一のコンタクトレンズと比較して、コンタクトレンズ製品の品質を改善できる。
【0013】
本発明の方法およびシステムの他の実施形態では、第一圧力の硬化雰囲気を有する少なくとも1つの硬化ゾーンを備えた硬化オーブンが用意され、硬化システムの一領域は、硬化雰囲気の第一圧力より大きい第二圧力を有している。第二圧力を有するこの領域は、硬化オーブンを包囲する外壁との間に設けられ、外壁と硬化オーブンとの間のチャンバであると考えることができる。高い第二圧力は、オーブンの硬化ゾーン内にコントロールされた雰囲気環境を作る上で有効である。
【0014】
本発明の方法およびシステムの更に別の実施形態では、コンタクトレンズは、複数の硬化ゾーンを有するオーブン内で硬化され、複数の硬化ゾーンのうちの第一ゾーンは第一温度に維持されかつ第二ゾーンは、第一温度とは異なる第二温度に同時に維持される。
コンタクトレンズ硬化システムの一実施形態では、モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させてコンタクトレンズを形成するオーブンを説明する。オーブンすなわちコンタクトレンズ硬化オーブンは不活性ガス源を有し、該ガス源は硬化中にオーブン内に不活性雰囲気を形成すべく機能できる。オーブンはまた、複数のゾーンと、モールドを複数のゾーン間で移動させるコンタクトレンズモールド前進システムとを有している。
【0015】
本明細書で使用されるコンタクトレンズモールド前進システムとは、1つ以上のモールドキャリヤと相互作用して、モールドキャリヤをオーブン内の異なる位置に移動させるための硬化オーブンのコンポーネントをいう。或る実施形態では、モールド前進システムは、インデックス(割出し)システムであると理解できる。インデックスシステムはまた、モールド内で形成されるコンタクトレンズの製品仕様等の情報の追跡を維持できる。例えば或る実施形態では、コンピュータシステムは、インデックスシステムまたはコンタクトレンズモールド前進システムに関連させることができ、またコンピュータシステムには、製造されるコンタクトレンズの特定バッチに関連するデータを追跡するソフトウェアを設けることができる。本願で説明するように、本発明のコンタクトレンズモールド前進システムは、モールドキャリヤと物理的に接触しかつオーブン内でモールドキャリヤを移動させる力を付与する部分を有している。
【0016】
オーブンは、複数のゾーンのうちの第一ゾーンを第一温度に、複数のゾーンのうちの第二ゾーンを、第一温度とは異なる第二温度に同時に維持すべく作動できる。
オーブンは、製造に使用されるとき、重合可能なレンズプリカーサー材料を、熱を用いて硬化させかつ重合させるように構成されている。レンズプリカーサー材料の熱硬化は、不活性雰囲気(例えば、化学的に不活性な雰囲気または無酸素雰囲気、例えば窒素雰囲気)中で行われる。レンズのバッチがオーブンの唯一のチャンバ内に置かれ、硬化されかつ取出され、次に他のバッチが1つのチャンバ内に置かれ、硬化されかつ取出され、これが順繰りに行われる構成の単一チャンバオーブンすなわち単一ゾーンバッチオーブンとは異なり、本発明のオーブンは、化学的に不活性の雰囲気中でコンタクトレンズをより「連続的」に加工できるという点で優れている。
【0017】
オーブンの各ゾーンは異なるオーブンチャンバにすることができ、チャンバは、モールドをこれらのチャンバ間で移動できるように互いに充分に連通している。異なるオーブンチャンバは別々のオーブンで構成でき、このため、オーブン全体すなわち硬化システムは「スーパー」オーブン、および別々のオーブンは「サブ」オーブンであるとして理解できるであろう。ゾーンには、例えば、ゾーンを形成する可動壁または着脱可能壁(単一または複数)を使用して、オーブンチャンバ内に形成できる。壁は、隣接ゾーン間の熱流を制限する。ゾーンは、少なくとも一部が静止壁(すなわち、オーブンの作動中は静止状態に留まるように構成されているが、例えばオーブンのメインテナンス時には取外しまたは移動させることもできる)により形成される。ゾーンの壁は、移動可能壁と静止壁とにより協働的に形成できる。
【0018】
複数のゾーンは互いにガス連通できるため、不活性雰囲気は、複数のゾーンの全体に亘って延びている単一の不活性雰囲気である。かくして、オーブンは、複数の温度ゾーンが同時的に維持される1つの不活性環境を形成できる。オーブン内の不活性環境は、例えば硬化プロセス中に、オーブンを包囲する大気環境から分離されており、オーブンの内部雰囲気と外部環境との間に制御不能なガス流は存在しない。
【0019】
本発明の硬化システムまたはオーブンには、1つ以上の揮発物処理コンポーネンヅを設けることができる。例えば、硬化システムは、1つ以上の硬化オーブンおよび1つ以上の揮発物処理コンポーネンツを備えていると理解されたい。揮発物処理コンポーネンツは、硬化オーブンに連通していて、硬化プロセスで作られた揮発物を受入れる。或いは、揮発物処理コンポーネンツは、硬化オーブンのコンポーネンツで構成できる。揮発物処理コンポーネンツの例として、1つ以上の蒸気凝縮器、1つ以上の有機フィルタ、1つ以上の酸素スキャベンジャおよびこれらの組合せがある。処理コンポーネンツは、硬化プロセスから生じる揮発性副生物からなる一定体積のガスを受入れて、該ガスを処理しかつ好ましくはガスから揮発性副生物を実質的に除去する。処理コンポーネント(単一または複数)はまた、ガス中に存在する水蒸気も除去できる。例えば、処理コンポーネンツは、ガスを含有する揮発性副生物を処理でき、このため、ガス中に存在する揮発性副生物の量は100ppmより少なくなる。かくして、処理コンポーネンツは、ガス浄化システムまたはガスリサイクルシステムのコンポーネンツであると理解できるであろう。
【0020】
或る実施形態では、蒸気凝縮器は、当業者ならば理解されようが、コールドトラップである。かくして、蒸気凝縮器は、処理されるガスから水を除去するのに有効である。
本発明の硬化システムまたは硬化オーブンの或る実施形態は、不活性雰囲気から揮発物をスクラビングしまたは除去するスクラバを有している。スクラバには、雰囲気から揮発物を充分に除去する1つ以上のコンポーネンツを設けることができる。例えば、或る実施形態では、オーブンすなわち硬化システムには、1つ以上の有機フィルタ、1つ以上の酸素スキャベンジャまたはこれらの組合せを備えたスクラバを設けることができる。オーブンまたはシステムには、1つ以上のチャコールフィルタまたは活性炭フィルタおよび1つ以上の銅ベース触媒またはこれらの組合せを備えたスクラバを設けることができる。オーブンまたはシステムのスクラバには、少なくとも1つのチャコールフィルタおよび少なくとも1つの銅ベース触媒を設けることができる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、本願に開示するように、硬化システムは、硬化オーブンと、該硬化オーブンからのガスを含有する揮発性副生物を受入れるべく硬化オーブンに流体連通しているコールドトラップと、該コールドトラップを通過したガスを受入れるべくコールドトラップに流体連通しかつ揮発性副生物を実質的に含まないガスを硬化オーブンに戻すべく硬化オーブンに流体連通しているスクラバとを有している。或る実施形態では、本発明のシステムは、2つ以上のオーブンと、コールドトラップと、スクラバと、これらの組合せとを有している。
【0022】
オーブンの硬化ゾーン内の雰囲気ガスは揮発物を含有でき、この雰囲気ガスを、揮発物を含有する蒸気を凝縮させるコールドトラップに導くことができることは理解されよう。コールドトラップを通るガスは、次に、スクラバのフィルタに通され、有機揮発物が存在しないか実質的に存在しない濾過ガスを作る。濾過ガスは銅触媒に曝されて、酸素のような反応性成分を除去する。オーブンのスクラバコンポーネンツにはまた、溶剤レベルをモニタリングして、溶剤が完全に除去されていない場合には表示を行う1つ以上の溶剤センサを設けることができる。システムには、過剰のコンポーネンツおよびセンサを設けることができる。本発明のオーブンの或る実施形態では、スクラバには、活性炭フィルタに加えてまたは活性炭フィルタに代えて、再使用可能な有機フィルタを設けることができる。例えば、スクラバのフィルタコンポーネンツには、銅触媒ベース材料等で形成された篩(シーブ)のような1つ以上の分子篩を設けることができる。他の分子篩には、珪酸アルミニウムミネラル、粘土、多孔質ガラス、微孔性チャコール、ゼオライト、活性炭または小さい分子が通過できる他の合成配合物等の材料を含めることができる。スクラバのコンポーネンツまたはスクラバ全体は、Mbraun USA社(14 Marin Way、Stratham、NH 03885)のような提供業者から入手できる。
【0023】
本発明のオーブンすなわちコンタクトレンズ硬化システムの実施形態のスクラバコンポーネントおよび蒸気凝縮器コンポーネントは、オーブンの一体コンポーネントとして構成するか、オーブンとは別体として構成することもできる。スクラバおよび蒸気凝縮器は、オーブンとスクラバとの間に揮発物含有ガスおよび揮発物を含有しないガスを導くことができる1本以上の導管等を介してオーブンの内部にガス連通することができる。導管材料の例として、スチールパイプおよび他の金属のパイプ等がある。一例として、硬化オーブンは、導管を介して蒸気凝縮器にガス連通させることができ、スクラバは、蒸気凝縮器とスクラバとの間の導管を介してオーブンにガス連通させることができる。
【0024】
オーブンの幾つかの実施形態では、硬化ゾーンが2つのみ、3つのみのものもあれば、4つ以上の硬化ゾーンのものもある。或る実施形態では、2つのゾーンの各々を3回使用することにより、または3つのゾーンの各々を2回使用することにより6ゾーンのオーブンを構成できる。2ゾーン実施形態では、オーブンのモールド前進システムは、コンタクトレンズモールドを第一ゾーンから第二ゾーンに移動させ、次に第一ゾーンに戻すように構成されている。
【0025】
オーブンは、複数のゾーンのうちの少なくとも1つのゾーンを2つ以上の異なる温度に維持し、かつ当該ゾーンの温度がこれらの温度間で変化するように作動させることができる。当該ゾーンは、第一ゾーンまたは第二ゾーンで構成できる。
3つ以上のゾーンを備えた実施形態では、オーブンのモールド前進システムは、コンタクトレンズモールドを、第一ゾーンから第二ゾーンに移動させ、次に、3ゾーン実施形態での第三ゾーンのような他のゾーン(単一または複数)に移動させるように構成できる。
【0026】
オーブンには、入口チャンバすなわち第一ゾーンの前の第一前置チャンバを設けることができる。モールド前進システムは、モールドを入口チャンバから第一ゾーン内に移動させるように構成できる。入口チャンバは、化学的に不活性のガスで充満させ、不活性雰囲気を形成するように構成できる。入口チャンバは、実質的に室温より高く加熱されないように構成される。オーブンには、モールドを入口チャンバ内に置くように構成された自動配置装置を設けることができる。或る実施形態では、自動配置装置は、オートメーション工場で一般的なロボットまたはピックアップ/置き装置であると理解されよう。また、自動配置装置は、レンズモールドの1バッチを第一場所からピックアップして、異なる第二場所に置く機械であると理解できるであろう。
【0027】
入口チャンバおよび出口チャンバは、モールドがオーブンを通るように、異なるチャンバにすることができる。或いは、入口チャンバおよび出口チャンバを同一チャンバとして、モールドが同じチャンバを通ってオーブンに出入りするように構成できる。
自動化された機械を入口チャンバおよび出口チャンバに用いることにより、オーブンの完全自動化作動が可能になる。また、手動形装置に比べ、より大容量のオーブン環境を不活性ガスで充満させることができる。
【0028】
モールドは、搬送ユニットすなわちキャリヤ上に支持される。図示の実施形態を含む本発明の搬送ユニットの実施形態はトレーであることが理解されよう。搬送ユニットは、単一トレーまたは複数のトレーと呼ぶことができる。また、搬送ユニットは、各トレーが隣接トレーに接触している複数のトレーのスタックであるといえる。
【0029】
本発明の方法およびシステムの重要で好ましい(但し本質的ではない)特徴は、ゾーンの温度を一定に維持し、かつゾーン間のトレースタック(単一または複数)の移動を妨げる虞れのある大きいガードを用いることなくゾーン間の温度差を維持するという要望に対処できることである。スタックの全体に均一な温度分布を得ることが望ましいため、モールドの高密度スタッキング特に問題である。この問題は、搬送ユニットにバッフルを用いることにより対処できる。これに代えまたはこれに加えて、搬送ユニットの周囲の空気流および搬送ユニットを通る空気流が熱の均一分布を補助するように、オーブンおよび/または搬送ユニットを配置することにより対処できる。
【0030】
一例として、搬送ユニットは、トレースタックまたは搬送ユニットを形成すべく一体連結された複数(例えば2つ以上)のトレーで構成できる。トレーは、種々の機構を用いてトレースタックを形成すべく一体連結できる。各トレーは2つの対向端部を有している。1つのトレーの2つの対向端部すなわち第一および第二対向端部は、中実ブロックのようなブロック構造を有し、該ブロック構造は、他のトレーに設けられたブロック構造と協働して、2つの対向トレースタックの側壁すなわち搬送ユニットの側壁を形成する。2つの隣接トレーは、凹部と係合できる位置決めピンを用いて一体連結できる。或る実施形態では、ピンおよび凹部はブロック構造内に配置される。他の実施形態では、ピンおよび凹部はトレーのコンポーネンツで構成され、トレー間の空気流に影響を与えることを更に補助する。トレースタックの側壁は、異なる温度が使用されるときに、オーブンの異なる温度ゾーン間に断熱ゾーンすなわちバリヤを形成する。空気流は、側壁間すなわちブロック構造間のトレー間に導かれ、搬送ユニット全体に亘り実質的に均一な温度を与える。例えば、ブロック構造は、個々の隣接トレーの間隔を隔てることを可能にして、2つのトレー間に空気流チャネルが形成されるように一体連結することを可能にする。空気流は、モニタリングして、所望のままに制御できる。空気流は、ファン、ブロワ等の空気流発生装置により調節すなわち制御される。
【0031】
かくして、少なくとも1つのユニットに、ゾーン壁の少なくとも一部を形成するように構成されたバッフルを設けることにより、ユニットがゾーンの1つの中にあるときにゾーン壁が隣接ゾーン内への熱流を制限すべく機能できることは理解されよう。ユニットにはトレーを設けることができる。各搬送ユニットにはバッフル部分を設けて、1つの搬送ユニットのバッフル部分が他の搬送ユニットの対応バッフル部分と協働してゾーン壁の少なくとも一部を形成するように構成できる。かくして、トレーのスタックが1つのゾーン内にあるときに、協働バッフルにより形成されるゾーン壁は、隣接ゾーン内への熱流を制限すべく機能する。各トレーは実質的に平らなシートであり、かつバッフルは該シートに対して実質的に垂直で実質的に平らな側壁(ブロックまたはシート)である。搬送ユニットの少なくとも幾つかは、垂直に重ねる(スタック)ことができる。側壁部分を含む各トレーは、金属材料等の非反応性材料で形成される。或る実施形態では、トレーはステンレス鋼である。
【0032】
本発明の方法およびシステムの本質的ではないが重要な特徴は、モールドを移動させる加熱ゾーン内の化学的に敏感すなわち劣化し易い機構すなわちモールドを収容する搬送ユニットを設けなくて済むことである。これは、ゾーン内に従来のコンベアベルト等の移動装置を設ける必要を回避るので好ましいことである。なぜならば、硬化プロセス中に発生する揮発性副生物がこのような機構の品質を低下させかつ腐蝕をもたらすからである。かくして、本発明のモールド前進システムは、揮発性副生物により引起こされる劣化に耐え得るものである。図示の実施形態を含む幾つかの実施形態では、モールド前進システムは、オーブンを通って延びているシャフトと、1つ以上のトレースタック係合装置とを有している。係合装置は、該係合装置がトレースタックの一部に接触して、トレースタックを、係合装置が連結されたシャフトの長手方向に平行に移動させるように移動できる。本発明のモールド前進システムの他の実施形態は、硬化プロセスから発生する揮発性副生物による劣化に耐え得るコンベアベルトを使用できる。
【0033】
図示の実施形態を含む幾つかの実施形態では、トレースタックは互いに独立しており、一体連結されてはいない。例えば、搬送ユニットは、機械的コンポーネンツを用いてオーブンを通って独立的に移動する。本明細書で説明するように、オーブンを通して搬送ユニットを移動させる1つの方法は、単一のトレースタックと係合して、トレースタックを一ゾーンから他のゾーンへと移動させる爪ユニットまたは同様な係合装置を使用する方法である。しかしながら、他の実施形態では、トレースタックを一体に連結させることができる。例えば、複数の搬送ユニットに、複数の搬送ユニットのうちの少なくとも2つを一体連結して前記ユニットの列を形成するカップリングを設けることができ、これにより、連結されたユニットのいずれかを移動させることにより、モールド前進システムが連結された全てのユニットを移動させるべく作動できる。
【0034】
本発明のシステムは、水和コンタクトレンズを作るべく更に加工される重合コンタクトレンズ製品の製造に有効である。搬送ユニット上または搬送ユニット内に設けられたモールド内に供給される重合可能なレンズプリカーサー組成物は、HEMA、NVP、PVP、MA、MMA等を含有する材料等のヒドロゲルコンタクトレンズ形成材料である。或いは、搬送ユニット上または搬送ユニット内に設けられたモールド内に供給される重合可能なレンズプリカーサー組成物は、ロトラフィルコン、バラフィルコン、ガリフィルコンおよびセノフィルコン等のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成材料で形成できる。モールド内には、他のシリコーンヒドロゲルレンズ形成材料を供給できる。例えば、モールドは、フルオロ含有ジメタクリロイル、シリコーンマクロマー、ヒドロフィリックビニル含有モノマー、アクリルモノマー架橋体およびアクリレート機能性エチレンオキシドオリゴマーおよびポリアルキレンオキシドシリコーン抽出性組成物を含むレンズ形成材料で形成できる。
【0035】
コンタクトレンズ硬化方法の一態様では、モールド内でコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させることによりコンタクトレンズを形成する方法が提供される。本発明の方法は、オーブン内に不活性雰囲気を用意する段階と、オーブン内でモールドを加熱する段階と、モールドを複数の異なる各温度に維持する段階とを有する。この方法は更に、オーブンの第一ゾーン内でモールドを第一温度に維持する段階と、モールドをオーブンの第一ゾーンから第二ゾーンに移動させる段階と、モールドを第二ゾーン内で第二設定温度に維持する段階とを有している。
【0036】
本発明の方法には、第一ゾーンの温度を、第一温度および第二温度とは異なる第三温度に変える段階と、モールドを第一ゾーンに戻す段階と、モールドを第一ゾーン内で第三温度に維持する段階を設けることができる。
本発明の方法には、第二ゾーンの温度を、第一温度、第二温度および第三温度とは異なる第四温度に変える段階と、モールドを第二ゾーンに戻す段階と、モールドを第二ゾーン内で第四温度に維持する段階を設けることができる。
【0037】
本発明の方法には、モールドを第三ゾーンに移動させる段階と、モールドを第三ゾーン内で、第一温度および第二温度とは異なる温度に維持する段階とを設けることができる。
本発明の方法には、モールドを1つ以上の他のゾーンに移動させる段階と、モールドを他のゾーン内で他の温度(この温度は、モールドが以前に維持されていた温度とは異なる温度にすることができる)に維持する段階とを設けることができる。
本発明の方法には、モールドを、モールドが以前に置かれていた任意のゾーンに戻す段階と、モールドを、当該ゾーン内で或る温度(この温度は、モールドが以前に維持されていた温度とは異なる温度にすることができる)に維持する段階とを設けることができる。
【0038】
本質的ではないが重要で好ましい特徴により、非常に多量の不活性ガス(例えば窒素)を使用することなく、不活性雰囲気を不活性に維持する要望に対処できる。本発明の方法には、モールドを、第一ゾーンに移動させる前に入口チャンバ内に置く段階を設けることができる。本発明の方法には、モールドを、オーブンの最終ゾーンから出口チャンバ内に移動させる段階を設けることができる。本発明の方法には、入口チャンバおよび/または出口チャンバから空気を吸引して、該空気を不活性ガスに置換することができる。「前置チャンバ(antechamber)」をこの態様で使用することにより、オーブン内に不活性雰囲気を迅速に確立できる。
【0039】
不活性雰囲気は、きれいで均質であることが望まれる。本発明の方法には、硬化オーブン内の雰囲気を濾過またはスクラビングする段階を設けることができる。不活性雰囲気には、加熱中に、100ppmより少ない酸素を含有させることができる。或る実施形態では、加熱中に、不活性雰囲気中に、80ppmより少ない酸素、または60ppmまたは40ppmより少ない酸素を含有させることができる。
加熱は、不活性雰囲気を浄化しかつ加熱ゾーン内に戻して、「閉」システム内で行われる。本発明の方法には、オーブン内から(例えば、オーブン内のゾーンの1つから、入口チャンバから、および/または出口チャンバから)ガスを吸引し、この吸引ガスを浄化またはスクラビングして浄化された不活性ガスを作る段階と、次に、この浄化された不活性ガスをオーブン内に再導入する段階を設けることができる。
【0040】
本発明の方法には、プリカーサー組成物内の揮発性成分から作られた揮発性雰囲気および/または蒸気を連続的にまたは実質的に連続的にベンチングまたは抽出する段階を設けることができる。
本発明の方法には、熱硬化処理から蓄積した残留物質を除去する段階を設けることができる。
硬化プロセスにより作られる揮発物を含有するガス、例えば、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)またはメチルメタクリレート(MMA)を含有する反応混合物の副生物並びに水を含むガスは、有機揮発性物質を除去しかつ濾過されたガスを作るべく、蒸気凝縮器またはコールドトラップ、有機フィルタまたは有機トラップに通される。濾過されたガスは、化学的に不活性なガスを作るため、銅ベース触媒等の酸素スキャベンジャに曝すことができる。かくして、本発明の方法には、本明細書で説明するように、コンタクトレンズ硬化プロセスから作られたガスを含有する揮発性副生物を、ガス浄化システムまたはガス再循環システムに通す段階を設けることができる。
【0041】
本発明の方法には、オーブンをバランスのとれた態様で作動させる段階、すなわちモールドを同じ速度でゾーン内に入れかつゾーンから取出す段階を設けることができる。本明細書で説明するように、これは、本発明のオーブンのモールド前進システムにより達成できる。
【0042】
加熱ゾーン内の温度は、各ゾーン内の温度が一定に維持されるようにモニタリングされかつ制御される。例えば、温度は、±5〜10%だけ変えることができる。例えば、硬化温度が約50℃から約80℃であるときは、温度変化は約±4℃となる。レンズプリカーサー組成物を硬化させるのに使用される温度は、重合されるレンズフォーミュレーションに基いて変えることができる。例えば、温度は、約30℃から約135℃まで変えることができる。或る実施形態では、1つ以上の加熱ゾーン内の温度は、約50℃から約130℃である。他の実施形態では、1つ以上の加熱ゾーンの温度は、約80℃から約135℃である。或る実施形態では、オーブンの1つ以上の加熱ゾーン内の温度は、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃である。他の例では、第一加熱ゾーンの温度は55±4℃、第二ゾーンの温度は80±4℃、および第三ゾーンの温度は80±4℃に維持できる。また、コンタクトレンズモールドを収容しておらず、代わりに1つ以上の温度センサ(温度センサのアレーを含む)を収容しているトレースタックについて試験運転を行ない、温度がトレースタックの全体に亘って均一に分布されていることを確保することができる。
【0043】
或る方法では、コンタクトレンズモールドを冷却できる。例えば、コンタクトレンズモールド組立体および該組立体内に収容されたレンズ材料を、オーブンの硬化ゾーン内で冷却できる。コンタクトレンズモールド組立体およびレンズ材料の冷却は、オーブン内の温度を低下させるか、オーブンの硬化ゾーンの温度を低下させることにより行われる。例えば、重合コンタクトレンズ製品を形成すべく、重合可能なレンズプリカーサー材料が熱に曝された後に、重合されたレンズ製品の温度を、室温または室温より僅かに高い温度(例えば、15℃より僅かに高い温度から25℃)まで、クーラントを供給しない方法(すなわち、受動冷却状態)に比べてより迅速に低下させるため、オーブン内またはコンタクトレンズモールド組立体の周囲にクーラントが供給される。レンズモールドおよび重合レンズ製品の重合後に、これらを能動的に冷却することにより、重合されたレンズ製品の発熱反応効果を低下させることができる。かくして、本発明の方法には、モールド組立体およびレンズ製品を冷却する段階を設けて、モールド組立体が硬化システムから取出されるときにモールド組立体およびレンズ製品が実質的に室温となるように構成できる。冷却は、オーブン内またはモールド組立体の近くに冷却ガスを供給しまたは冷却オーブンの一部を通して冷却液を導くことにより行うことができ、これにより、モールド組立体およびレンズ製品が能動的に冷却される。
【0044】
他の態様では、本発明は、本願に開示するようなオーブンを備えた自動コンタクトレンズ製造システムを提供する。
本発明の他の態様では、コンタクトレンズモールド組立体内に設けられたコンタクトレンズプリカーサー材料から重合コンタクトレンズを作るべく、硬化プロセス中にオーブン内に不活性雰囲気を供給する不活性ガス源を備えたオーブンを有するコンタクトレンズ硬化システムが提供される。オーブンは、複数の硬化ゾーンと、不活性雰囲気が第一圧力で供給される複数のゾーン間でコンタクトレンズモールド組立体を移動させるモールド前進システムと、不活性雰囲気の第一圧力より高い第二圧力の第二雰囲気を有する、オーブンを包囲するチャンバとを有している。
【0045】
本発明の更に別の態様では、複数の硬化ゾーンを備えたオーブンを有するコンタクトレンズ硬化システムが提供される。複数のゾーン間でコンタクトレンズモールド組立体を移動させるモールド前進システム、および硬化ゾーン内に置かれたコンタクトレンズモールド組立体内でコンタクトレンズプリカーサー材料が重合される化学的に実質的に不活性の雰囲気を形成する硬化ゾーン内の調節された雰囲気も提供される。
本発明の方法に関連して説明した本発明の態様は、本発明のオーブンに等しく適用でき、この逆についても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、添付図面を参照して、図示の或る実施形態を例示のみを目的として詳細に説明する。
コンタクトレンズ硬化オーブン10が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの硬化プロセスに使用される(図1)。コンタクトレンズ硬化オーブン10は、ローディングステーション15と、第一アクセスドア20と、入口チャンバ30と、第一加熱ゾーン40と、第二加熱ゾーン50と、第三加熱ゾーン60と、出口チャンバ70と、第二アクセスドア80と、アンローディングステーション90とを有している。この例では、各ゾーンは、別々のゾーンとして使用できる2つのユニットで形成されている。例えば、第一加熱ゾーン40は、第一オーブンチャンバ42および第二オーブンチャンバ47から形成されている(図1(e))。各オーブンチャンバ42、47は、コンタクトレンズモールド組立体の1つのスタック100を保持しており、従って、各ゾーン40、50、60は、一度に2つのスタックを保持する。
【0047】
入口チャンバ30および出口チャンバ70に隣接して、それぞれ、第一自動配置装置(図示せず)および第二自動配置装置(図示せず)が設けられている。第一自動配置装置は、トレースタック100を入口チャンバ30内にローディングするように構成されている。第二自動配置装置は、出口チャンバ70からトレースタック100をアンローディングするように構成されている。トレースタック100は、第二自動配置装置により、出口チャンバ70から、コンベアシステム(図示せず)に沿って、排除ステーションまたは種々のビンまたはコンテナに移動される。モールド組立体内の硬化レンズは、異なるチャネルまたは経路に導かれ、かつ各チャネルは異なるコンテナ(各コンテナは異なる形式のレンズ用のものである)に導かれる。重合レンズは、形式に従って分類され、次に、これらのチャネルに沿って適当なコンテナに導かれる。
【0048】
第一加熱ゾーン40と、第二加熱ゾーン50とは、孔120を備えた第一壁110により分離されている(図1(e))。第二加熱ゾーン50と、第三加熱ゾーン60とは、孔140を備えた第二壁130により分離されている。一実施形態では、各加熱ゾーン内に複数の加熱要素(図示せず)が配置されている。これらの加熱要素は、本願で説明する時間およびサイクルでレンズプリカーサー組成物を硬化させるのに必要な熱を供給する。加熱要素は、硬化オーブンの内部壁面に取付けることができ、一実施形態では、互いに間隔を隔てた形態で取付けられている。加熱要素は誘導ヒータ形式にすることができ、かつコントローラ(図示せず)により調整される。このコントローラはまた、更に後述するように、レンズプリカーサー組成物を硬化オーブンを通して搬送するレンズスタックの移動も制御する。
【0049】
トレースタック100が入口チャンバ30内に配置されると、第一アクセスドア20が閉じられ、かつバリヤ150が入口チャンバ30と第一加熱ゾーン40との間の孔155を閉じ、オーブン10を包囲する大気が加熱ゾーン40、50、60に流入することを防止すべく機能する(図2(a))。入口チャンバ30から大気が抽出され、不活性窒素雰囲気と置換される。次にバリヤ150が除去され(図2(b))、加熱ゾーン40、50、60内の不活性雰囲気を変えることなく、トレースタック100がこれらのチャンバ40、50、60に入る。
【0050】
レンズプリカーサー組成物を含むコンタクトレンズモールド組立体160(図3(a)および(b))がトレー170上に配置され、かつトレーが、トレースタック100を形成するように互いに上下にスタックされる。通常使用時には、複数のこのようなトレースタック100が、連続プロセスでオーブン10を通して送られる。
この例では、10個のトレー170が存在し、各トレー170が、16×16配列で256個のコンタクトレンズモールド組立体160を保持している。トレー170は、フラットベース180と、トレー170の第一端部でベース180に実質的に垂直に配置された第一バッフルと、トレー170の反対側端部でベース180に実質的に垂直に配置された実質的に同一の第二バッフル(図示せず)とを有している。トレーの第一バッフル190および第二バッフルは、2つ以上のトレーが互いに上下に垂直に重ねられてスタック100を形成できるように構成されている。レンズは、トレースタック100内でのレンズ位置の如何にかかわらず、同じ硬化プロセスに曝され、これにより、バッフル190、200を備えていないトレー170の側面が開放されるようにするのが重要である。空気流は、加熱ゾーン40、50、60を横切って、従ってトレーの開放側面を通ってかつモールド組立体160をを横切って空気を吹出すファン(図示せず)により、加熱ゾーン40、50、60の全体に亘って制御される。このようにして、トレースタック100の全体に亘って均一な温度分布が確保される。
【0051】
入口チャンバ30、加熱ゾーン40、50、60および出口チャンバ70は、これらの間の孔155、120、140、165を介して互いに連続連通している。これらの孔155、120、140、165は、トレースタック100がこれらの孔を介して壁状バリヤを形成するバッフルと正確に嵌合し、かつスタック100が静止しているときにバッフルが座合する孔をほぼ完全に閉じるように位置決めされかつサイズを有している。
【0052】
各加熱ゾーン40、50、60は独立的に作動し、各オーブンチャンバ42、47は、専用の加熱要素、空気再循環ファン、温度測定装置および空気流測定装置を有している。しかしながら、加熱ゾーン40、50、60は互いにガス連通しており、オーブン100を通ってトレースタック100が移動することは、加熱ゾーン40、50、60間に一定の空気シールが全く存在せず、オーブン100の全体に亘って単一の不活性環境が存在することを意味している。第一加熱ゾーン40は、壁110により第二加熱ゾーン50から部分的に分離され、第二加熱ゾーン50は、壁130により第三加熱ゾーン60から部分的に分離されている。
【0053】
壁110、130は、加熱ゾーン40、50、60を互いに完全に閉じることはない。それどころか、各壁110、130の孔120、140は、トレースタック100がこれらの孔120、140を通って正確に嵌合できるように位置決めされかつサイズを有している。トレースタック100が加熱ゾーン40の第二オーブンチャンバ47内にあるとき、その前面は壁110の孔120と整合して位置決めされ、かつトレースタック100を形成するトレー170上に含まれるバッフル200は、第一加熱ゾーン40と第二加熱ゾーン50との間の更なるバリヤとして機能する。トレースタック100が壁110の孔120を通って第二加熱ゾーン50の第一オーブンチャンバ内に導かれると、トレースタック100を形成するバッフル190を含む後縁部は、第一加熱ゾーン40と第二加熱ゾーン50との間の更なるバリヤとして機能する。このようにして、トレースタック100が孔120、140の一方側から他方側に通るとき、トレースタック100は、1つの加熱ゾーン40、50、60を他の加熱ゾーンから分離するバリヤを形成し、これらのゾーン40、50、60の温度差を実質的に一定に維持することができる。これらの孔120、140を使用しかつオーブン10を通って移動するトレースタック100により熱伝達を阻止することは、トレースタック100が、いかなるドアまたはバリヤを開くこともなく3つの加熱ゾーン40、50、60を通って移動できることを意味する。
【0054】
各スタック100の最下方のトレー210は、この両側に2つの「ハンドル」状装置220を有し、これらの「ハンドル」220は、最下方トレー210の両側から延びている。
トレースタック100が入口チャンバ30内にローディングされると、トレースタック100はモールド前進システム230(図5(a))と係合する。モールド前進システム230は、トレースタック100を、入口チャンバ30から、第一加熱ゾーン40、第二加熱ゾーン50および第三加熱ゾーン60を通して出口チャンバ70へと搬送する。スタック100は、各加熱ゾーン30、40、50に2回停止しかつ各オーブンチャンバ42、47に1回停止する。
【0055】
モールド前進システム210(図5(a))は、トレースタック100をオーブン10を通して一度に1ステップだけ移動させるプシュ/プルコントロールロッド240を有している。トレースタック100は、該トレースタック100の移動毎の間に、少なくとも幾つかのトレースタック100上のバッフル190(バッフル190は、壁110、130の孔内に位置している)により形成される境界が常に存在するように移動される。
【0056】
より詳しくは、トレースタック100は、個々の加熱ゾーン40、50、60を通って延びている2本の側方サイドレール250に沿って支持されかつ移動される。図示の実施形態では、サイドレール250(図5(a))は隣接する2つのゾーン40、50;50、60の間に終端しており、このため、隣接する2つの加熱ゾーン40、50;50、60のサイドレール端部の間にはギャップ255(図5(b))が存在する。コントロールロッドすなわち前進シャフト240は、1つの加熱ゾーン40、50、60の間に配置されており、かつサイドレール250に平行な長さを有している。図示の実施形態では、前進シャフト240は、オーブン10の加熱ゾーン40、50、60の全てを通って延びている(他の実施形態では、各加熱ゾーンにそれ自体の前進シャフトを設け、個々の前進シャフトを整合させて、トレースタックを加熱ゾーンを通して適正に移動できるように構成できる)。
【0057】
前進シャフト240には、各加熱ゾーン40、50、60において爪ユニット260が設けられている。爪ユニット260は、前進シャフト240の中心軸線の回りで回転できるように、前進シャフト240に対して回転可能に連結されている。爪ユニット260は回転して、トレースタック100と係合しかつ係合離脱することができる。爪ユニット260は、加熱ゾーン40、50、60の一端から他端まで、前進シャフト240の長さに沿って移動できる。爪ユニット260はまた、トレースタック係合部材であることが理解されよう。或る実施形態では、爪ユニット260は、前進シャフトを回転させることにより、前進シャフト240の長手方向軸線に対して回転する。換言すれば、爪ユニット260は前進シャフト240に固定されている。他の実施形態では、爪ユニット260は、前進シャフト240を回転させることなく回転されるように構成できる。
【0058】
一例として、爪ユニット260は、加熱ゾーン40内では前進シャフト240の一端近くに配置されている。爪ユニット260は、トレースタック100の最下方トレー210のハンドル220と係合すべく回転される。爪ユニット260は、回転されてハンドル220に隣接し(図6(a))、かつハンドル220に当接するように移動されてハンドル220と係合する(この例では、爪ユニット260およびハンドル220は互いに連結されていないが、互いに丁度接触している)。シャフト240が移動すると、爪260がハンドル220の側面に当接し、トレースタック100の全体を移動させる(図6(b))。
【0059】
爪ユニット260は、慣用のサーボドライブ270を用いて、前進シャフト240の長さに沿って移動される。トレースタック100と係合している間、爪ユニット260は、加熱ゾーン40、50、60内でハンドル220従ってトレースタック100を押しおよび/または引っ張ることにより、トレースタック100他の隣接加熱ゾーン40、50、60に向けて移動させる。より詳しくは、爪ユニット260は、トレースタック100を、第一加熱ゾーン40内の第一位置に移動させる。トレースタック100は、所定長さの時間、熱に曝される。所定長さの時間の経過後に、爪ユニット260は、トレースタック100を次の加熱ゾーン50に移動させる。爪ユニット260は、次に、元の位置まで戻されて、第二のトレースタック100と係合する。
【0060】
ファスナ オーブン10を通る単一トレースタック100の進行を以下に説明する(オーブン10を作動させる一例示方法が図10(a)に要約されており、実際には、一般に、更に後述するように他の段階が含まれる)。コンタクトレンズを形成するこの例示方法では、オーブン10が用意され(段階1010)、オーブン10自体には不活性雰囲気が設けられる(段階1012)。コンタクトレンズプリカーサー材料がモールド組立体内に装入される(段階1014)。オーブン10内のモールド組立体160を加熱することにより、コンタクトレンズプリカーサー材料が硬化される(段階1016)。加熱段階は、図10(b)により詳細に示されている。モールド組立体160は、オーブン10の第一ゾーン40内で第一温度に維持される(段階1020)。モールド組立体160が、オーブン10の第一ゾーン40から第二ゾーン50に移動される(段階1022)。モールド組立体160は、第一温度とは異なる第二温度で第二ゾーン50内に維持される(1024)。
【0061】
オーブン10を作動させるより複雑な方法について、以下により詳細に説明する。トレースタック10は、周囲の「第二スキン」(後述)内のアクセスドア(図示せず)を通って製造ラインに入る。第一自動配置装置が、トレースタック100を、入口チャンバ30の前の領域内に移動させる。前述のように、他の実施形態だ配置装置が、トレースタック100を入口チャンバ30内にローディングする。次に、入口チャンバ30が外部環境からシールされ、バリヤ150も下降されて、第一加熱ゾーン40から入口チャンバ30を分離する。次に、入口チャンバ30から通常の大気が真空引きされ、窒素ガス源からの不活性窒素雰囲気に置換される。この実施形態では、不活性窒素雰囲気は、100ppmより少量の酸素を含有している(他の実施形態では。不活性ガス源は、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンまたは他の貴ガス(但し、これらに限定されない)を含むガスのような他の任意の不活性ガスが使用される)。
【0062】
この例では、第一加熱ゾーン40は55℃に維持され、第二加熱ゾーン50は80℃に、かつ第三加熱ゾーン60は80℃に維持される(後述の2ゾーンオーブンの例では、第一加熱ゾーンは50℃、第二加熱ゾーンは80℃の温度に維持される)。
トレースタック100は、前進システム230により、加熱ゾーン40、50、60を通して実質的に一定速度で駆動される。従って、特定温度でレンズが硬化される時間は、レンズが通って移動される加熱ゾーン40、50、60の長さに基いて定めることができる。トレースタック100が加熱ゾーン40、50、60内に留まる時間は、レンズのフォーミュレーション(lens formulation)およびサンプルの流れ(sample runs)に基いて予め定められる。トレースタック100が単一の加熱ゾーン40、50、60内に留まるのに適した時間の例として、約15分から約120分、およびこの時間の複数倍の時間にすることができる。トレースタック100が単一の加熱ゾーン40、50、60内に留まる所定時間は、30分または30分の複数倍に定めることができる。例えば、トレースタック100は、第一加熱ゾーン40内に30分間、第二加熱ゾーン50内に30分間、および第三加熱ゾーン60内に30分間留めることができる(2ゾーンの実施形態を用いるプロセスの例では、トレースタックは、例えば、第一加熱ゾーンに30分間、第二加熱ゾーンに60分間留めることができる)。
【0063】
また、トレースタック100が1つのゾーン40、50から他のゾーン50、60に搬送されるときに、実硬化サイクル間に短い時間が存在する。この短い時間は、トレースタック搬送時間であると理解されたい。トレースタック搬送時間は、硬化時間の約1%から約10%である。例えば、搬送時間は、約1〜5%、または1〜2%に定めることができる。他の例として、30分の加熱ゾーン硬化時間の場合には、第一加熱ゾーン40と第二加熱ゾーン50との間の搬送時間を約30秒にすることができる。しかしながら、他の実施形態では、搬送時間を約15秒間から約2分間の間で変えることができる。
【0064】
トレースタック100は、入口チャンバ30から第一加熱ゾーン40内に移動される。トレースタック100は、これが、硬化プロセスの第一加熱段階を受け終わるまで第一加熱ゾーン40内に留まる。トレースタック100は、次に、壁110の孔120を通って第二加熱ゾーン50内に移動され、硬化プロセスの第二段階を受け終わるまでここに留まる。次にトレースタック100は、第二加熱ゾーン50および壁130の孔140を通って第三加熱ゾーン50内に移動され、硬化プロセスの第三段階を受け終わるまでここに留まる。最後にトレースタック100は、第三加熱ゾーン50を通り、最終孔を通って出口チャンバ70内に入る。
【0065】
トレースタック100がひとたび出口チャンバ70に到達すると、第三加熱ゾーン60と出口チャンバ70との間のバリヤが下降され、第三加熱ゾーン60に通常の大気が入らないように保護する。第二実施形態に関連して後述するように、硬化プロセス中に放出された揮発物を含む不活性雰囲気が出口チャンバから吸引されるので、この雰囲気が通常の大気内に放出されることはない。次に、第三自動配置装置(図示せず)が、出口チャンバ70からトレースタック100を取出して、アンローディングステーション(図示せず)に移動させる。アンローディングステーションでは、硬化されたレンズが形式毎に分けられ、チャネル(図示せず)に沿って、コンベアシステムに隣接する関連バッグまたはコンテナへと移動される。
【0066】
上記製造プロセスは、コントロールユニット(図示せず)により制御される。製造プロセスがひとたび開始されたならば、製造プロセスは全自動で行われる。コントロールユニットはまた、このプロセスにより硬化されるレンズを追跡する複数のセンサに接続されている。トレースタック100は、ロットの開始、ロットの終了、存在部分、排除部分および時間、および日付スタンプを識別する情報を有している。トレースタック100およびセンサに記憶された情報は、例えば、トレー170上にエッチングされたバーコードまたは関連センサに接続されたRFIDタグで構成できる。これらのセンサにより集められた情報は、アンローディングステーションに導かれ、ここで、形式に従って如何に製品を袋詰めしまたは類別するかを決定する。コントロールユニットはまた、レンズの排除をモニタリングする。レンズは、通過時間、オーブン10の全体に亘って最適であると測定されていない温度および空気流条件により排除される。この情報は、レンズの各ロットに関するデータテーブルに記憶される。排除されたレンズは排除ビン内に入れられる。コントロールユニットはまた、加熱ゾーン40、50、60の温度、オーブン10内の雰囲気中に存在する揮発物および酸素の量、および硬化プロセスのタイミングをモニタリングする。何らかの理由によりこれらの値が或る所定範囲から外れると、重大な欠陥が存在することを示すアラームが発せられる。
【0067】
上記説明は、それぞれの単一トレースタック100からのプロセスをたどったものである。しかしながら、オーブン10は、使用時に、加熱ゾーン40、50、60を通って移動される複数のトレースタックに適合する。複数のトレースタック100は、これらが、異なる加熱ゾーン40、50、60を分離した状態に維持するようにモールド前進システム230上に配置される。これは、前述のように、複数のトレースタック100が壁110、130の孔120、140を通るときにバリヤ効果を与えるバッフル190によるものである。
【0068】
当業者ならば、第一の例示実施形態は、例えばオーブン10に更に多くの加熱ゾーンを導入することにより必要になる硬化プロセスにも適合できるであろうことは理解されよう。この実施形態の変更形態では、4つ、5つ、6つまたはこれより多くの加熱ゾーンを設けることができる。
【0069】
オーブン310(図7(a))は、本の第二実施形態の一例である。オーブン310は、アクセスドア320と、入口チャンバ330と、第一加熱ゾーン340と、第二加熱ゾーン350とを有している(第一実施形態とは異なり、この実施形態では、各加熱ゾーンが、1つのスタックを保持するサイズを有する単一のオーブンチャンバから作られていることに留意されたい)。
【0070】
自動配置装置(図示せず)が、トレースタック100を入口チャンバ330内にローディングする。第一加熱ゾーン340と第二加熱ゾーン350とは、壁410により部分的に分離される(図7(e))。壁410は孔455を有し、該孔455は、トレースタック100が孔455をぴったりと通るように(好ましくは、トレースタックと孔との間に充分なクリアランスが得られる正確な態様で)位置決めされかつサイズが定められている。
【0071】
第一実施形態と同様に、入口チャンバ330は、通常の大気を真空引きし、この大気を100ppmより少量の酸素を含有する窒素雰囲気に置換することにより、トレースタック100の周囲に不活性窒素雰囲気を作るべく機能する。トレースタック100は、次に、第一加熱ゾーン340内に移動される。第一実施形態の構成と同様に、トレースタック100は、壁410の孔455を有効に塞ぎ、かつ第一加熱ゾーン340と第二加熱ゾーン350との間の大きな熱伝達を充分に防止するバッフルを有している。第一加熱ゾーン340は55℃の温度にあり、トレースタック100は、第二加熱ゾーン350に移動される前に第一加熱ゾーン340内に30分間保持される。第二加熱ゾーン350は80℃の温度にあり、トレースタック100はここに30分間保持される。トレースタック100が第二加熱ゾーン350内に保持されているとき、第一加熱ゾーン340の温度が80℃に変化される。トレースタック100がひとたび第二加熱ゾーン350内に30分間滞在したならば、トレースタック100は、今や80℃の温度になっている第一加熱ゾーン340内に戻され、ここに更に30分間保持される。この硬化プロセスの終時に、トレースタック100は、入口チャンバ330内に戻される。ここで、不活性窒素雰囲気(この雰囲気は、今や、硬化プロセスで創出された幾分かの不純物を含有している)が抽出され、通常の大気に置換される。入口チャンバ330から除去された不活性窒素雰囲気は、濾過/スクラビングプロセスに通され、硬化プロセス中に放出された不純物が除去される。自動配置装置は、次に、入口チャンバ330からトレースタック100をアンローディングして、これをアンローディングステーション(図示せず)に移動する。アンローディングステーションは、第一実施形態について説明したのと同様に構成されている。
【0072】
硬化プロセスは、コンタクトレンズ製品が形成されるときに不活性雰囲気中に放出される揮発物を生じる。これらの揮発物が大量に発生すると、硬化プロセスを劣悪化し、レンズ内に不純物を発生させ、かつ加熱ゾーン40、50、60、340、350および入口チャンバ30、330および出口チャンバ70の内部を汚損する。また、これらの揮発物は、これらが引起こす環境上、健康上および安全上の問題から、大気中に入る前に除去する必要がある。最も効率的な方法は、揮発物を含有する不活性雰囲気を出口チャンバ70(または、第二実施形態の場合には第二加熱ゾーン350の下流側の包囲スペース)から吸引し、かつクリーンな窒素ガスを入口チャンバ30、330内に再循環させる前にスクラビング/濾過プロセスを用いることによりこれらの揮発物を除去することである。かくして、システムは、ガス浄化システムまたはガスリサイクルシステムを有している。これはまた、多量の不活性かつクリーンな窒素ガスを供給しなければならないコストを低減できる点で優れている。硬化プロセスにより創出される揮発物の量が多い場合には、オーブン10、310内の全ての異なるゾーン30、40、50、330、340からガスを取出し、該ガスを連続的にスクラビングおよび濾過するリサイクル装置を使用できる。
【0073】
第一および第二実施形態の両方に使用されている例示のスクラビング/濾過プロセスは、オーブン10または310から或る距離を隔てて配置されかつガスを搬送するパイピング540、550を介して連結されたユニット490により行われる。このプロセスは、便宜上第二実施形態(図8)に関連して説明する。
【0074】
「コールドトラップ」すなわち蒸気凝縮器510は、スクラビングシステム500とは別体である。ガス浄化システム(図8)は、(i)コールドトラップ510と、(ii)ユニット500内のスクラバシステムとを有している。スクラバシステムは、(i)活性炭フィルタ520と、(ii)銅触媒530とを有している。活性炭フィルタ520および銅触媒装置520は、スクラバシステムのハウジング(ユニット490)内に収容されている。導管550はコールドトラップ510をスクラバシステム490に連結し、他の導管540はスクラバシステム490を硬化オーブン10、310に戻るように連結している。
【0075】
オーブン10、310は、両スキン間が僅かに過大圧力になっているダブルスキン形であるのが有利である。このように構成することにより、オーブンの内側スキンが破壊されるようなことがあっても、硬化プロセスで不活性雰囲気中に放出される揮発物は外部環境中に全く放出されず、環境上、健康上および安全上の危険を引起こすこともない。
かくして、他の例示実施形態(図9)では、オーブンシステム600は、オーブン610を包囲する外側安全包囲体590(すなわち「第二スキン」)と、オーブンに関連する自動配置装置612、613と、排除ステーション614と、コンベアシステム615(該コンベアシステムはコンテナを有し、該コンテナ内には硬化したレンズがチャネル616に沿って搬入される)とを有している。安全包囲体590とオーブンの外壁690との間のスペースには、窒素のような化学的に不活性のガスを充填できる。この付加されたガスバリヤは、酸素等の汚染物質が外部空気から加熱ゾーン640、650、660に流入することを防止し、かつ加熱ゾーンから外部大気中に揮発成分が不意に排出されることを低減させる。殆どの状況において、安全包囲体590とオーブン610との間のスペースには純粋窒素が充填されスクラビングを受けることはない。
【0076】
ここで図11を参照すると、ここには、本発明の特徴に従って構成された強制通風ヒータ(forced draft heater:FDH)システム700が斜視断面図で示されている。一実施形態では、強制通風ヒータシステム700は、硬化オーブン10、310、600上に取付けられるように構成されており、更に後述するように、トレースタック100のレンズプリカーサー材料の重合を行なわせる熱の供給および空気またはガスの通風を行う。FDHシステム700は、一般に、ハウジング構造702を有し、該ハウジング構造702は、放出ダクト706およびリターンダクト708を備え、これらは集合して加熱ゾーン710を形成する。硬化オーブン上に取付けるとき、加熱ゾーン710は、更に後述するように、硬化オーブンのそれぞれの加熱ゾーンうえにぴったり嵌合できるサイズを有している。より好ましくは、加熱ゾーン710は、硬化オーブン上にぴったり嵌合し、FDHシステム700と硬化オーブンとの間の界面は、1つの取付けフランジと他の取付けフランジまたは取付けセクションとを固定すべく、ねじ、ボルトおよび/またはリベット等で一体に緊締する。ヘッダ704には、ファンまたはインペラ(図示せず)およびディフューザ714を収容するためのファンハウジング712が設けられている。ファンは、遠心プラグファン形式または他の同様に機能するファンを使用できる。ファンハウジング712の上流側には、硬化オーブンを通して内部雰囲気を循環させるべく、循環される入口ガスがファンを通るように導くための入口リデューサ716が配置されている。ファンにはシャフト(図示せず)が連結されており、該シャフトには、ファンを回転させるモータ726が連結されている。モータは、確立された電気工学的実務に従ってサイズが定められかつ選択される。一実施形態では、モータは、350CFMより高い定格、例えば750CFMおよび1000CFMより高い定格のファンを駆動サイズを有している。前述のように、不活性ガスを浄化するように雰囲気を浄化すべく、揮発物潜在不活性雰囲気をスクラバ/濾過ユニットに送るのに再循環ライン724を使用できる。ひとたび浄化またはスクラビングされたならば、ガスは、直接硬化オーブンまたはヘッダ704に取付けられたリターンノズルまたはリターンダクトを介して、硬化オーブンに戻すことができる。任意であるが(但し、好ましくはないが)、リターンノズルは、放出ダクト706に組込むこともできる。
【0077】
複数の加熱ロッドまたは加熱要素720からなる一群の加熱要素718が、ヘッダ704の集合端に取付けられている。好ましいシステムでは、一群の加熱要素718は、個々の加熱要素720のタイミングおよび作動を制御するコントローラ(図示せず)に接続されている。例えば、コントローラは、加熱要素720のスイッチ・オンおよびスイッチ・オフ時点およびスイッチ・オンサイクルおよび/またはスイッチ・オフサイクルの長さを制御できる。一実施形態では、コントローラは、リターンダクト708、放出ダクト706、ヘッダ704、硬化オーブン10、310またはこれらの組合せに取付けられた1つ以上の熱電対(図示せず)からのフィードバックに基いて、加熱要素を制御する。好ましい実施形態では、加熱要素720は、レンズスタック100が硬化オーブン内に置かれて硬化される場合のような遷移期間中(この期間中には、作動温度が一時的に低下することがある)に作動するように構成されている。かくして、一群のヒータ718は、アフターヒータまたは2次ヒータとして区別される。
【0078】
ディフューザ714の直ぐ下の放出ダクト706の対流ゾーン728には、複数の1次加熱要素(図示せず)が配置されている。3つの加熱要素が、互いに間隔を隔ててかつヘッダ704の長さ方向に一致するように長手方向に整合して組込まれている。或いは、加熱要素は、更に後述するように、対応する垂直加熱ゾーンにオーバーラップするように整合される。加熱要素は、6kW以上の全定格または結合定格、例えば8kW、10kWまたはこれ以上の定格にして、連続的または間欠的に作動するか、種々の硬化オーブンのゾーン内の温度を所望の設定温度に維持するように作動するのが好ましい。かくして、例えば、FDHシステム700が硬化オーブン10の第一加熱ゾーン40(図1(a))上に取付けられた場合には、加熱要素は、硬化オーブンの第一加熱ゾーン40を第一設定温度に維持する温度で作動するように構成される。加熱要素はまた、例えば第一加熱ゾーンを30分間50℃に維持し、次に第一加熱ゾーンを15分間80℃に維持すべく温度上昇させるような硬化サイクルに基いて、調整することができる。図1の硬化オーブンに関連して前述したように、FDHシステムに使用する硬化オーブン内に付加加熱要素を組込むことができるが、好ましい実施形態では、FDHシステムが組込まれるときは硬化オーブン内に加熱要素は全く組込まれない。
【0079】
放出ダクト706を通るガス流または空気流を調節するため、ルーバまたはダンパ730のような複数の圧力誘起装置が、セクション化された放出ダクトゾーン732の直ぐ上に配置された対流ゾーン728内で、1次加熱要素の直ぐ下流側に取付けられている。一実施形態では、個々の各ルーバはゲートを有し、該ゲートは、カム、ギヤセット、リンケージシステムまたは当業界で知られている他の手段によりコントロールノブ734に連結されたロッドまたはシャフトに連結されている。他の実施形態では、9個より少数(または多数)のゾーンが放出ダクト706に組込まれ、これと同数のルーバおよびコントロールノブを備えている。好ましい実施形態では、各圧力誘起装置は、一方の格子が他方の格子上でスライドして開口を形成するように構成された2つの矩形格子に似ている。各装置の格子開口は、第一スキンの外側に取付けられたねじノブにより調節できる。また、円形開口、正方形開口または楕円形開口等の複数の開口を備えた孔穿き板747(図11)が放出ダクト706と硬化オーブンとの間の界面で、9個のゾーンの出口に組込まれている。孔穿き板は、ダクトを通るガス流を制限し、放出ダクト内に圧力(この圧力により、トレースタック100を横切ってダクトを通るガスの分散が高められる)を発生させるように構成されている。穿けられた各孔のサイズは、約0.5インチから約2インチであり、より好ましくは約0.75インチである。或いは、孔穿き板は、無孔面に比べ、約25%から約60%の開口領域を有するように構成できる。
【0080】
図12は、本発明の特徴に従って設けられた強制通風硬化オーブンシステム736を示す斜視断面図であり、該強制通風硬化オーブンシステム736は、硬化オーブン738と複数のFDHシステム700とを有している。硬化オーブン738は図1〜図5に関連して示したオーブン10と同様であり、この特定実施形態は6つの加熱ゾーンを有し、各加熱ゾーンにはFDHシステム700が設けられている。明瞭に示すように、各FDHシステム700は、異なる断面の流れゾーン732となるようにセクション化された放出ダクト706を有している。また、図11に示すように、放出ダクト706内に3つの異なる垂直ゾーンを形成すべく、2つの垂直パネル740が組込まれている。また、3つの水平ゾーンを形成すべく、3つの湾曲パネル742が組込まれている。これらの組合せにより、各FDHシステムの放出ダクト706に9個の個別流れゾーン744が形成される。明瞭であろうが、ガス流は、本発明において考えられたゾーンの個数を増大または減少させることにより種々に調節できる。
【0081】
かくして、本発明の態様は、放出ダクト内の複数のゾーンを通るガス流を誘起すべく、調節可能な複数の圧力誘起装置を用いて、硬化オーブンを通るガス流を調節するシステムを含むものである。このシステムは、放出ダクトを通る流れを調節して、ガスがダクトから出て、硬化オーブンを通ってリターンダクト708に戻るときに、異なる流れ調節を行って、硬化オーブンの異なる内部セクションの流れ特性および温度特性を変えることができる。有利なことは、加熱された不活性ガスがレンズスタック100を横切って調整され、これによりレンズスタックを横切る所望の熱分布および流れ分布が得られ、所望の硬化効果を達成できることである。一実施形態では、放出ダクト706、硬化オーブンおよび/またはリターンダクト708内に熱電対が取付けられ、種々のゾーンに温度フィードバックを行い、流れの調節が行われる。この実施形態はまた、少なくとも一部は種々の熱電対から受けたフィードバックに基いて圧力誘起装置730を回転させるのに、サーボモータ等の制御可能なモータを用いることにより自動化できる。当業者ならば理解されようが、コントローラは、少なくとも一部は、熱電対から受けた信号に基いて圧力誘起装置を調整するのに使用される。
【0082】
再び図11を参照すると、一実施形態では、リターンダクト708は、放出ダクト706と同様に、複数のゾーンにセクション化されている。他の実施形態では、リターンダクトは、9個のゾーンより少数のゾーン(例えば、1〜8個のゾーン)または9個より多くのゾーンを有している。任意であるが、リターンダクトには、1つ以上の圧力誘起装置730を設けることができ、これは、圧力誘起装置を調節するコントロールノブと同数である。図示の実施形態では、9個の流れゾーンと同数の9個の圧力誘起装置730が設けられている。また、硬化オーブン内部の圧力上昇を可能にするため、リターンダクト708の入口に孔穿き板(孔穿き板747と同様なもの)を組込むことができる。
【0083】
図13は、図12の硬化オーブンシステム736を示す部分斜視図である。一実施形態では、FDHシステム700に複数のハッチすなわちドア746が設けられている。例えば、ハッチは、各FDHシステムのヘッダ704、放出ダクト706および/またはリターンダクト708に組込むことができる。ヘッダは、メインテナンス、検査、アップグレード、補修等のため、FDHシステムの内部にアクセスすることを可能にする。更に別の実施形態では、耐熱強化ガラスのような透明検査窓を設けることもできる。他の実施形態では、視界を向上させるため、オーブン内部を照明する検査ライトが設けられる。
【0084】
再び図12を参照すると、図示の実施形態では、FDHシステム700および硬化オーブン738の種々のゾーン上には第二スキン層741が設けられている(第二スキン層741の外側頂面上に取付けられたモータ726を除く)。第二スキンとモータの各シャフトとの間の表面をシールするのに、ドライガスシール、機械式シールまたは他のシーリング手段を使用できる。第二スキン層741は強制通風硬化オーブンシステム736の二重壁包囲体として機能する。第二スキン層は、前述のように、硬化オーブンからの好ましくないガス漏洩(このガス漏洩は、好ましくない揮発物(VOC)を含むことがある)を閉じ込めるように構成されている。第二スキン層741と、FDHシステムおよび硬化オーブンの内壁層との間のスペースは、窒素その他の不活性ガス等のガスブランケットにより加圧することができる。任意であるが、包囲スペース内にVOCモニタすなわちセンサを配置しておき、生じ得るガス漏れを使用者に知らせるように構成できる。1つの特定実施形態では、第二スキン層741は2つの軸線方向端部を有し、これらの端部は、一端が、硬化オーブンの第一加熱ゾーンに終端し、かつ他端が、硬化オーブンの最後の加熱ゾーンに終端している。図12に示すように、第二スキン層の一方の軸線方向端部743は、検査のためのアクセスドアまたはハッチ746を有し、該ハッチは、図13に関連して説明したように、システムに設けられた多くのハッチの1つで構成できる。
【0085】
図14は、本発明の特徴に従って構成された他の強制通風硬化オーブン750を示す概略断面(端面)図である。図示の実施形態では、コンタクトレンズモールドのトレースタック100は、レンズプリカーサー材料を重合させるため、硬化オーブン752内に配置される。図1の硬化オーブン10と同様に、この硬化オーブン752も駆動システムを有し、該駆動システム上でトレースタック100が硬化オーブンの長手方向に沿って移動される。また、V形オーブンフロア754が設けられており、トレースタックの最下方トレーとオーブンフロアとの間に付加クリアランスを得ている。このV形オーブンフロアは、前述の全ての硬化オーブンに設けることもできる。付加スペースは、硬化オーブンの下方セクションを通る流れの循環を可能にする。
【0086】
システムを通る流れおよび熱を循環させるため、FDHシステム756が設けられている。図示の実施形態では、FDHシステム756は、ヘッダ758および2つの放出ダクト760、762を有しており、両放出ダクトが硬化オーブン752の側方開口764に連結されている。両放出ダクト760、762の各々には、硬化オーブン750を通る循環ガスの背圧従って流れ特性を調整するためのコントロールダンパ766が設けられている。コントロールダンパ766は、該ダンパを制御するためのコントローラに連結されている。ダンパは、例えば、両ダクトを通るガス流を制御すべく、全開位置と、全閉位置と、これらの両位置の間の減衰位置とを占めることができる。より好ましくは、ダンパは、コントローラへの温度フィードバックに基いて調整される。
【0087】
複数の個々の加熱要素720からなる2群のヒータ718の各々がヘッダ758内に設けられている。図示のように、2群のヒータ718は、循環ファンまたはブロワ770に向けて下流側排出を行う排出ダクト768の両側に配置されている。ファンまたはブロワ770は、硬化オーブンの頂壁772の上方に直接取付けられ、かつモータ726により回転されるカップリング774により回転される。一実施形態では、更に後述するように、リターンダクト762には、カップリング774およびガスリターンライン778が設けられている。
【0088】
ファン770は上向きファンまたはプラグファンで構成でき、入口780から吸引しかつ出口768から放出する。放出された流れは、次にヘッダの構造により偏向され、次に2群のヒータ718を横切って流れ、最終的に2つの放出ダクト760、762内に流入する。ガスはヒータ720を横切って流れるので、ガスが加熱され、これにより熱がトレースタック100を横切って供給され、トレースタック内にローディングされているレンズプリカーサー材料が硬化される。熱は、本願で説明した他のオーブンに関連して述べたように調整できる。
【0089】
ファスナ システム750から揮発性ガスを吸引するベントライン782が設けられている。前述のように、除去されたガスは、硬化プロセス中に放出された好ましくない揮発物を除去すべくスクラビングされおよび/または濾過される。スクラビングされおよび/または濾過されたガスは、リターンライン778を介してシステムに戻すことができる。これに代えまたはこれに加えて、新鮮なガスすなわち新しい不活性ガスを、リターンライン778を介してシステムにブレンドすなわち添加できる。ガス流が、真空引きされて新しい不活性ガスに置換される場合には、ガスの熱価が無駄にされず、従って補充されたガスを加熱するのに小さいBTUで済む。かくして、本発明の態様には、レンズプリカーサー材料を重合させる加熱不活性ガスを再循環させる方法を含むものである。
【0090】
以上、本発明を特定実施形態に関連して説明したが、当業者ならば、本発明は、本願に特に示したものに限定されず多くの異なる変更を加え得ることが理解されよう。或る変更については上述したが、更なる変更について以下の例を説明する。
図1に関連して説明した本発明のシステムの一実施形態は、任意数の付加加熱ゾーンを設けることにより、種々の硬化プロセスに適合させることができる。
【0091】
図7に関連して説明した他の実施形態は、必要な硬化プロセスに応じて適合させることができる。例えば、トレースタック100は、所望ならば各段階の温度および継続時間を変えて、任意回数だけ第一加熱ゾーン340と第二加熱ゾーン350との間に通すことができる。
【0092】
上記説明において、特徴または要素は、既知の、明らかなまたは予見できる均等物であると説明したが、このような均等物はあたかも個々に説明したように組込まれている。本発明の真の範囲を決定するには特許請求の範囲の記載を参照すべきであり、真の範囲にはこのような均等物が包含されると解釈すべきである。また、本明細書を読む者は、好ましいもの、有利なもの、便利なもの等と説明された本発明の特徴は任意のものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきである。
【0093】
本明細書の開示は或る特定実施形態に関連して行ったが、これらの実施形態は例示のためのものであって、限定するためのものではないと理解すべきである。本願に説明した任意の特徴またはこれらの組合せは本発明の範囲内に包含され、このような組合せに包含される特徴は相互矛盾することはない。また、任意の特徴または特徴の組合せは、本願に開示された任意の実施形態から排除されるものではない。上記詳細な説明の意図するところは、例示の実施形態を説明することにあるが、本明細書および特許請求の範囲に記載された実施形態のあらゆる変更および均等物をカバーするものであると解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1(a)】コンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す斜視図である。
【図1(b)】コンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す平面図である。
【図1(c)】コンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す正面図である。
【図1(d)】コンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す端面図である。
【図1(e)】コンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す断面図(正面図に平行な断面図)である。
【図2(a)】前チャンバと加熱ゾーンとの間に配置された可動側壁を示す概略図であり、側壁が閉位置にあるところを示ものである。
【図2(b)】前チャンバと加熱ゾーンとの間に配置された可動側壁を示す概略図であり、側壁が開位置にあり、側壁の一部が上方に移動されていて、トレースタックが通る孔が形成されているところを示すものである。
【図3(a)】コンタクトレンズモールドを含むトレースタックの斜視図であり、トレースタックがオーブンの外部にあるところを示すものである。
【図3(b)】コンタクトレンズモールドを含むトレースタックの斜視図であり、トレースタックがオーブンの内部にあるところを示すものである。
【図4】図3のスタックの底トレーを示す概略図である。
【図5(a)】トレースタックを、図1のオーブンを通して移動させるモールド前進システムの斜視図であり、駆動機構およびシャフトを示すものである。
【図5(b)】トレースタックを、図1のオーブンを通して移動させるモールド前進システムの斜視図であり、シャフトに取付けられた爪を備えたシャフトをより詳細に示すものである。
【図5(c)】トレースタックを、図1のオーブンを通して移動させるモールド前進システムの斜視図であり、オーブン全体に亘って延びているシャフトを示すものである。
【図6】図5のシャフトおよび爪と、図4のトレーとの協働を示す概略側面図である。
【図7(a)】他のコンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す斜視図である。
【図7(b)】他のコンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す平面図である。
【図7(c)】他のコンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す正面図である。
【図7(d)】他のコンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す端面図である。
【図7(e)】他のコンタクトレンズ硬化オーブンの一例を示す断面図(正面図に平行な断面図)である。
【図8】図7のオーブンの概略図であり、オーブン内の不活性雰囲気を処理する処理システムをより詳細に示すものである。
【図9】気密「スキン」内に包囲されたコンタクトレンズ硬化オーブンを示す平面図である。
【図10(a)】本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ硬化方法の段階を示すフローチャートである。
【図10(b)】加熱段階のサブ段階を示すフローチャートである。
【図11】本発明の特徴に従って設けられた強制通風ヒータシステムを示す斜視断面図である。
【図12】硬化オーブン上に取付けられた強制通風ヒータシステムの一バンクを示す斜視断面図である。
【図13】図12のシステムを示す斜視図である。
【図14】本発明の特徴に従って設けられた他の強制通風ヒータシステムを示す概略端面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 コンタクトレンズ硬化オーブン
15 ローディングステーション
20 第一アクセスドア
30 入口チャンバ
40 第一加熱ゾーン
50 第二加熱ゾーン
60 第三加熱ゾーン
70 出口チャンバ
80 第二アクセスドア
90 アンローディングステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させてコンタクトレンズを形成するオーブンにおいて、該オーブンが、
硬化中にオーブン内に不活性雰囲気を作る作用をする不活性ガス源と、
複数のゾーンと、
複数のゾーンの間でモールドを移動させるモールド前進システムとを有し、
オーブンが、複数のゾーンのうちの第一ゾーンを第一温度に、かつ複数のゾーンのうちの第二ゾーンを異なる第二温度に同時に維持すべく作動することを特徴とするオーブン。
【請求項2】
各ゾーンが異なるオーブンチャンバにより形成され、該チャンバは、モールドがチャンバ間を移動できるように、互いに充分に連通していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項3】
複数のゾーンを備えた前記オーブンが、複数のサブオーブンからなるスーパーオーブンの形態をなしており、各サブオーブンが前記複数のゾーンの少なくとも1つを形成していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項4】
可動壁が、前記複数のゾーンのうちの2つのゾーン間の境界の少なくとも一部を形成していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項5】
静止壁が、前記複数のゾーンのうちの2つのゾーン間の境界の少なくとも一部を形成していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項6】
複数のゾーンが互いにガス連通しており、これにより、不活性雰囲気が複数のゾーンの全体に亘って延びている単一の不活性雰囲気となっていることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項7】
不活性雰囲気から揮発物をスクラビングするスクラバを有していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項8】
入口チャンバを有し、前記モールド前進システムが、モールドを入口チャンバから複数のゾーンのうちの1つのゾーン内に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項9】
モールドを入口チャンバ内に置くように構成された自動配置装置を有していることを特徴とする請求項8記載のオーブン。
【請求項10】
出口チャンバを有し、前記モールド前進システムが、モールドを、複数のゾーンのうちの1つのチャンバから出口チャンバ内に移動するように構成されていることを特徴とする請求項9記載のオーブン。
【請求項11】
モールドを出口チャンバから取出すように構成された自動配置装置を有していることを特徴とする請求項10記載のオーブン。
【請求項12】
前記入口チャンバおよび出口チャンバが同じチャンバであることを特徴とする請求項10記載のオーブン。
【請求項13】
モールドを支持するための複数の搬送ユニットを有していることを特徴とする請求項1記載のオーブン。
【請求項14】
少なくとも1つの前記搬送ユニットが、ゾーン壁の少なくとも一部を形成するように構成されたバッフル部分を有し、これにより、搬送ユニットが1つのゾーン内にあるときに、ゾーン壁は隣接ゾーン内への熱流を制限するように作用することを特徴とする請求項13記載のオーブン。
【請求項15】
各搬送ユニットがバッフル部分を有し、1つの搬送ユニットのバッフル部分が、他の搬送ユニットの対応バッフル部分と協働してゾーン壁の少なくとも一部を形成することを特徴とする請求項14記載のオーブン。
【請求項16】
少なくとも幾つかの搬送ユニットが垂直に重ねられていることを特徴とする請求項13記載のオーブン。
【請求項17】
複数の搬送ユニットのうちの少なくとも2つが、2つの搬送ユニットを一体連結して搬送ユニットの列の少なくとも一部を形成するカップリングを備えていることを特徴とする請求項13記載のオーブン。
【請求項18】
モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させることによりコンタクトレンズを形成する方法において、
モールド内にコンタクトレンズプリカーサー材料を用意する段階と、
オーブンを用意する段階と、
オーブン内に不活性雰囲気を用意する段階と、
モールドをオーブンの第一ゾーン内で第一温度に維持し、
モールドをオーブンの第一ゾーンから第二ゾーンに移動させ、
第二ゾーン内のモールドを、第一温度とは異なる第二温度に維持することにより、オーブン内でモールドを加熱し、モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させる段階とを有することを特徴とする方法。
【請求項19】
第一ゾーンの温度を、前記第一温度および第二温度とは異なる第三温度に変える段階と、モールドを第一ゾーン内に戻す段階と、モールドを第一ゾーン内で第三温度に維持する段階とを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
第二ゾーンの温度を、前記第一温度、第二温度および第三温度とは異なる第四温度に変える段階と、モールドを第二ゾーン内に移動させる段階と、モールドを第二ゾーン内で第四温度に維持する段階とを有することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
モールドを第三ゾーン内に移動させる段階と、モールドを第三ゾーン内で、第一温度および第二温度とは異なる温度に維持する段階とを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
モールドが第一ゾーン内に移動する前にモールドを入口チャンバ内に置く段階を有し、入口チャンバは実質的に大気温度に維持されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項23】
モールドを、オーブンの最終ゾーンから出口チャンバ内に移動させる段階を有し、出口チャンバは実質的に大気温度に維持されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項24】
入口チャンバおよび/または出口チャンバを不活性ガスで充満させる段階を有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項25】
入口チャンバおよび/または出口チャンバから空気を吸引して、空気を不活性ガスに置換する段階を有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項26】
オーブンの内部からガスを吸引する段階と、
吸引されたガスを浄化して、浄化された不活性ガスを作る段階と、
次に、浄化された不活性ガスをオーブン内に再導入して戻す段階とを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項27】
熱硬化処理から蓄積した残留物質を除去する段階を有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項28】
モールドを前記ゾーン内に置くことおよびモールドを前記ゾーンから取出すことが同じ速度で行われるように、オーブンをバランスのとれたベースで作動させる段階と、
第一ゾーン内のモールドを第一温度に、かつ第二ゾーン内のモールドを第二温度に同時に維持する段階とを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項29】
モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させることによりコンタクトレンズを形成する方法において、
第一モールドスタックのモールド内に一定量のコンタクトレンズプリカーサー材料を用意する段階と、
オーブンを用意する段階と、
オーブン内に不活性雰囲気を用意する段階と、
ファンを回転して、加熱要素上にガス流を放出させ、
ガス流を放出ダクトに導きかつオーブンに通し、
ガス流をリターンダクトを通してファンの入口端に導くことにより、オーブン内でモールドを加熱し、モールド内のコンタクトレンズプリカーサー材料を硬化させる段階とを有することを特徴とする方法。
【請求項30】
第二ファンを回転して、ガス流を第二加熱要素上に放出する段階を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
オーブン内の第一加熱ゾーン内に第一温度を維持する段階を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項32】
開口を調節して、放出ダクト内のガス流を制限する段階を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項33】
オーブンを通してモールドを移動させる段階を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項34】
オーブンを通して第二モールドスタックのモールドを移動させる段階を更に有することを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
オーブン内の第二加熱ゾーン内に第二温度を維持する段階を更に有することを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項36】
リターンダクトの下流側に位置する第二加熱要素を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項37】
ガス流を制限する孔穿き板を更に有することを特徴とする請求項29記載の方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図7(e)】
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【公開番号】特開2009−6711(P2009−6711A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−155968(P2008−155968)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(507207753)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (14)
【Fターム(参考)】