説明

コンデンサとその製造方法

【課題】コンデンサ本体の積層構造が露出している端面に金属膜が密着しているコンデンサの量産効率を高める。
【解決手段】コンデンサ本体2の端面6に連なる側面を側面保護シート4で覆う。その際に、側面保護シート4が端面6の周囲を一巡しているとともに、端面6より突出している部分4eが形成されるようにする。次に、複数個のコンデンサ本体2を、側面同士が密着する関係で一列に並置する。次に、少なくとも側面同士が密着していない範囲の側面から突出している側面保護シートの突出部4c1,4d1の端縁4fの近傍をマスク10で覆い、その状態で端面6に金属を吹付ける。隣接するコンデンサ本体の端面6に形成される金属膜8は側面保護シートの突出部4eで分離され、コンデンサ本体2同士を容易に分離することができる。側面保護シートの突出部4eによって、端面6に吹付ける金属が露出している側面に到達して付着することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、シートを積層して構成したコンデンサと、その製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、正極層と絶縁層と負極層と絶縁層を重ねた構造を備えている単位シートを何重にも巻くことによって、単位シートを積層したコンデンサを製造する技術が開示されている。特許文献2に、正極層と絶縁層と負極層と絶縁層を重ねた構造を備えている単位シートの複数枚を積層してコンデンサを製造する技術が開示されている。
【0003】
積層構造を持つコンデンサの場合、積層構造が露出している端面に、金属膜を形成して外部電極とする。積層構造が露出している端面に金属膜を形成すると、その金属膜と積層構造の内部に取り込まれている導電シートが導通し、外部電極と内部電極が導通している構造が得られる。
【0004】
特許文献1の技術では、積層構造が露出している端面に金属を溶射して金属膜を形成する。特許文献2の技術では、積層構造が露出している端面に金属粒子を含むペーストを吹付けて金属膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−354317号公報
【特許文献2】特開平10−149942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属を端面に吹付けて金属膜を形成する場合、吹付けた金属の一部が端面に連なる側面に到達して側面に付着することがある。側面にまで金属が付着していると、コンデンサの使用時に不測の事態が生じかねないことから、それを防止する必要がある。
特許文献2の技術では、コンデンサの端面の近傍のみが突出するマスクを用い、コンデンサの側面に金属が到達しないようにしている。しかしながら、端面の近傍に位置する範囲では、側面がマスクから突出しており、その部分には金属が付着してしまう。
【0007】
コンデンサ本体の端面に金属を吹付けて金属膜を形成する場合、複数のコンデンサ本体を並置しておいて吹付け処理を実施することで、生産効率が増大する。その場合、複数個のコンデンサ本体の側面同士を密着させて並置しておけば、密着している側面に金属が付着することを防止できる。しかしながら、端面に形成される金属膜が複数のコンデンサに亘って連続してしまい、その後に個々のコンデンサに分離するのが面倒となる。
【0008】
本明細書では、コンデンサ本体の端面に金属を吹付けて金属膜を形成する際に、吹付けた金属が側面に付着することがない製造方法と、それに適したコンデンサを開示する。
また、その技術を発展させ、複数個のコンデンサ本体の側面同士を密着させて並置しておいて金属を吹付ける際に、端面に形成される金属膜が複数のコンデンサに亘って連続してしまうことがない製造方法と、それに適したコンデンサをも開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、コンデンサの製造方法を開示する。その製造方法では、シートを積層したコンデンサ本体の積層構造が露出している端面に金属膜が密着しているコンデンサを製造する。その製造方法は、コンデンサ本体の端面(積層構造が露出している)に連なる側面を側面保護シートで覆う工程と、吹付け装置と端面の間にマスクを配置する工程と、吹付け装置からマスク越しに前記端面に金属を吹付ける工程を備えている。上記において、側面保護シートは、側面に沿って端面の周囲を一巡しているとともに、端面よりも突出している突出部を備えている。また、マスクを配置する際には、マスクが側面保護シートの突出部の端縁に接する位置関係とする。
【0010】
積層してコンデンサ本体を構成するシートは、1枚のシートであってもよいし、複数枚のシートを重ねたシート群であってもよい。1枚のシートに、正極層と絶縁層と負極層と絶縁層を重ねた構造が形成されていれば、それを単位にして積層する。あるいは、正極シートと絶縁シートと負極シートと絶縁シートを重ねたシート群を単位としてもよい。あるいは、正極層と絶縁層が形成されているシートと、負極層と絶縁層が形成されているシートを重ねたシート群を単位としてもよい。
また積層する際に、複数枚の単位を用意しておいて積層してもよいし、長尺のシートを巻物状に巻いて積層してもよい。
端面に金属を吹付ける方法には特に限定されない。端面に金属を溶射してもよいし、金属粒子を含むペースト等を吹付けてもよい。
【0011】
上記の製造方法によると、コンデンサ本体の側面からの延長上に側面保護シートが突出しており、その突出部が端面の周囲を一巡している。突出部が端面の周囲を所定の高さで一巡しているために、マスクを経て端面に向けて吹付けた金属が、端面から漏れでて側面保護シートの外面に付着することを防止する。また、側面保護シートの端縁に接する位置にマスクを配置しておくので、側面保護シートの外側に金属が吹付けられるのを防止し、側面保護シートの外面に金属が付着するのを防止する。
後記するように、別の方法で側面保護シートの外側に金属が付着するのを防止することができる。別の方法で側面保護シートの外側に金属が付着するのを防止できる部分では、マスクを配置しなくてもよい。上記の方法において、側面保護シートの突出部の端縁に接する位置にマスクを配置するという場合、端縁の全部をマスクで覆う必要はなく、他の方法では側面保護シートの外側に金属が付着するのを防止できない範囲をマスクで覆えばよい。
【0012】
コンデンサ本体を端面の側から観察した場合、陸上競技場のトラック形状(長尺シートを巻いた場合)、あるいは長方形(複数枚を積層した場合)が観察されることが多い。すなわち、コンデンサ本体が、一対の平行側面(トラック形状の場合には、直線部分に相当する範囲の側面)と、一対の平行側面同士をつなぐ一対の対向側面(トラック形状の場合には、曲線部分に相当する範囲の側面)を備えていることが多い。
この場合、マスクを配置する工程に先立って、複数個のコンデンサ本体を並置する工程を実施することができる。この場合、隣接するコンデンサ本体の側面を覆う側面保護シートの平行側面同士が密着する関係で並置する。トラック形状の場合には、隣接するコンデンサ本体の直線部同士が密着する関係で並置する。長方形の場合には、隣接するコンデンサ本体の長辺(あるいは短片でもよい)同士が密着する関係で配置する。
その場合、平行側面同士は密着するのに対し、平行側面同士をつなぐ対向側面の側には隣接するコンデンサ本体が並置されておらず、その外面が露出していることになる。密着する平行側面には、外側に金属が漏れ出るのを防止する必要がなく、マスクを配置する必要がない。露出している対向側面には、金属が到達するのを防止する必要がある。一対の対向側面から突出する突出部さえマスクで覆っておけば、側面保護シートの外面に金属が付着するのを防止することができる。
【0013】
上記の製造方法で製造したコンデンサは、上記したコンデンサ本体と側面保護シートと金属膜を備えている。少なくとも一部において側面保護シートと金属膜は離反している。側面保護シートは、コンデンサ本体の側面と金属膜の側面を保護する機能を果たすことから、コンデンサの一部とする。側面保護シートを剥がす必要はない。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示するコンデンサとその製造方法によると、コンデンサ本体の端面に金属膜を形成する際に、金属が側面に付着しないようにできる。側面に付着した金属を後で除去する必要がなくなる。
また、コンデンサ本体を並置しておいて端面に金属膜を形成する際には、端面に形成される金属膜が複数のコンデンサ本体に亘って伸びることがなく、個々のコンデンサに分離しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は実施例のコンデンサの製造段階を示す斜視図であり、(b)は製造されたコンデンサを示す斜視図であり、(c)はコンデンサ本体の端面を示す図である。
【図2】金属を端面に吹付ける段階を示す図である。
【図3】(a)は製造したコンデンサを平行側面の側から見た様子を示し、(b)は対向側面の側から見た様子を示す。
【図4】第2実施例のコンデンサの製造段階を示す斜視図。
【図5】従来の製造方法の課題を模式的に示す。
【図6】(a)は従来の製造段階を示し、(b)は従来の製造方法の課題を模式的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
下記に示す実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)コンデンサ本体は、長尺シートを巻いて製造したものである。
(特徴2)金属を端面に溶射してメタリコン膜(金属膜)を形成する。
(特徴3)上下に対向する端面のうちの一方の端面に正極となるメタリコン膜(金属膜)を形成し、他方の端面に負極となるメタリコン膜(金属膜)を形成する。
【実施例】
【0017】
図1において、参照番号2はコンデンサ本体、4は側面保護シート、10はマスク、矢印はコンデンサ本体2の端面6に向けて吹付ける金属、8は金属膜(メタリコン膜)を示している。
コンデンサ本体2は、正極層と絶縁層が形成されている長尺シートと、負極層と絶縁層が形成されている長尺シートを重ねた長尺シートを巻物状に巻いたものであり、(c)に示すように、端面6を観察すると、正極層と絶縁層と負極層と絶縁層を重ねた状態を単位とし、その単位が積層されている構造7が観測される。(a)(b)の状態において、上側の端面6では、絶縁層で形成される端面よりも正極層が上方に突出しており、負極層は積層体の内部に留まっている。上側の端面6に金属膜8を形成すると、その金属膜8は正極層には導通し、負極層とは絶縁される。下側の端面6では、絶縁層で形成される端面よりも負極層が下方に突出しており、正極層は積層体の内部に留まっている。下側の端面6に金属膜8を形成すると、その金属膜8は負極層には導通し、正極層とは絶縁される。(c)に示すように、コンデンサ本体2の端面6は、陸上競技のトラック形状をしており、平行に伸びる一対の直線部と、一対の直線部をつなげる一対の半円弧部を備えている。本明細書では、一対の直線部から伸びる側面を一対の平行側面2a,2bといい、半円弧部から伸びる側面を一対の対向側面2c,2dという。複数個のコンデンサ本体2を並置する際に(a)に示すように、隣接する一方のコンデンサ本体2の平行側面2aと他方のコンデンサ本体2の平行側面2bを密着させる位置関係で並置すると、コンデンサ本体2の平行側面2a,2bは、隣接するコンデンサ本体2の平行側面2b,2aで覆われ、平行側面2a,2bは露出されない。(a)に示すように、一対の対向側面2c,2dは露出する。
本実施例では、正極層と絶縁層が形成されている長尺シートと、負極層と絶縁層が形成されている長尺シートを重ねたものを単位にして積層構造を得ているが、1枚のシートに正極層と絶縁層と負極層と絶縁層を重ねた構造が形成されている単一シートを単位として巻いてもよいし、正極シートと絶縁シートと負極シートと絶縁シートを重ねたものを単位として巻いてもよい。コンデンサ本体の側面は、巻物状に巻かれた長尺シートの最外面である。
【0018】
図5は、コンデンサ本体2を上記位置関係に並置して端面6に金属を吹付けて金属膜を形成した場合を示し、端面に形成される金属膜18aが複数個のコンデンサ本体2に亘ってつながってしまう。製造後に個々のコンデンサに分離する作業が面倒なものとなる。また端面に連なる側面にまで金属が付着してしまう。図5は模式図であり、側面に付着して形成される金属膜18bは誇張して図示されている。
【0019】
図6(a)は、コンデンサ本体2の間に分離シート24を配置して並置した場合を示している。分離シート24を配置すると、端面に形成される金属膜18aが複数個のコンデンサ本体2に亘ってつながってしまうことは防止できるが、金属が側面に付着することは防止できない。また、b−b位置で切断した場合の形状を示す(b)のように、分離シート24に沿って金属膜が厚く成長し、金属膜18cにバリ18dが形成されてしまう。
【0020】
本実施例では、コンデンサ本体2の側面を側面保護シート4で覆う。そのときに、図1(a),(b)に示すように、側面保護シート4が端面6から所定の距離eだけ突出するようにする。すなわち、側面保護シート4の突出部4eが、端面6の周囲を所定の高さeで一巡する関係とする。図1(a),(b)には示されていないが、下側の端面6でも同様の関係とする。
【0021】
コンデンサ本体2の側面を側面保護シート4で覆ってから、(a)に示す位置関係で並置する。すなわち、隣接する一方のコンデンサ本体2を覆う側面保護シートの平行側面4aと他方のコンデンサ本体2を覆う側面保護シートの平行側面4bを密着させる位置関係で並置する。その後に、側面保護シート4の突出部4eの端縁4f上にマスク10を配置する。マスク10は、側面が露出している範囲の上方に配置する。すなわち、対向側面4c,4dから伸びている突出部4c1,4d1の端縁4fをマスク10で覆う。マスク10で覆うために、矢印で示すように端面6にマスク10越しに金属を吹付ければ、対向側面4c,4dの外面に金属が付着することはない。平行側面4a,4bは、隣接するコンデンサ本体2の側面を覆っている側面保護シートの平行側面4b,4aに密着していることから金属が付着することがなく、マスク10で覆う必要はない。平行側面4a,4bから伸びている突出部4a1,4b1の端縁4fは、マスク10で覆う必要がない。
【0022】
図2は、金属の溶射装置12と端面6の間にマスク10を配置し、マスク10越しに端面6に向けて溶射装置12から金属滴14を溶射している状態を示す。溶射装置12を矢印16に示すように、端面6に沿って移動させることによって、端面6のほぼ全域に金属膜8を形成する。図2は、図1のII―II断面に対応する。対向側面4c,4dから伸びている突出部4c,4dの端縁をマスク10で覆うために、対向側面4c,4dの側面に金属が付着しないことが理解できる。図1(b)に示すように、金属膜8と、側面保護シート4の対向側面4c,4dの間では、金属膜8が形成されず、コンデンサ本体2の端面6が露出している。金属膜8と側面保護シート4の対向側面4c,4dは離反している。
【0023】
上下の端面6に金属膜8を形成することでコンデンサ1が完成する。一方の金属膜8は正電極となり、他方の金属膜8が負電極となる。図1(b)は、完成したコンデンサ1の斜視図を示している。図3(a)と図3(b)は、完成したコンデンサ1の断面形状を示している。側面保護シート4は、完成したコンデンサの一部であり、製造後に除去する必要はない。
【0024】
図1の(a)では、複数個のコンデンサ本体2の端面6に一度に金属膜8を形成する。図4は、一度に一個のコンデンサ本体2に金属膜8形成する場合を示している。この場合は、側面保護シート4の平行側面4a,4bまで露出する。そこで、対向側面4c,4dから伸びている突出部4c1,4d1の端縁4fのみならず、平行側面4a,4bから伸びている突出部4a1,4b1の端縁4fをもマスク20で保護する。端面6よりも小さな開口22を有するマスク20を使えば、コンデンサ本体2の端面6に金属膜8を形成する際に、金属が側面保護膜4の外面あるいはコンデンサ本体2の側面に金属が付着しないようにすることができる。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
1:コンデンサ
2:コンデンサ本体
2a,2b:平行側面
2c,2d:対向側面
4:側面保護シート
4a,4b:平行側面
4c,5d:対向側面
4e(4a1,4b1,4c1,4d1):突出部
4f:端縁
6:端面
7:積層構造
8:金属膜(メタリコン膜)
10:マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積層したコンデンサ本体の、積層構造が露出している端面に、金属膜が密着しているコンデンサを製造する方法であり、
前記コンデンサ本体の前記端面に連なる側面を側面保護シートで覆う工程と、
吹付け装置と前記端面の間にマスクを配置する工程と、
前記吹付け装置から前記マスク越しに前記端面に金属を吹付ける工程を備えており、
前記側面保護シートは、前記側面に沿って前記端面の周囲を一巡しているとともに、前記端面よりも突出している突出部を備えており、
前記マスクを、前記側面保護シートの前記突出部の端縁に接する位置に配置する
ことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記側面保護シートは、一対の平行側面と、一対の平行側面同士をつなぐ一対の対向側面を備えており、
前記マスクを配置する工程に先立って、複数個の前記コンデンサ本体を、前記側面保護シートの前記平行側面同士が密着する関係で並置する工程を備えており、
前記マスクが、少なくとも前記一対の対向側面から突出する前記突出部の端縁を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項3】
シートが積層されており、その積層構造が露出している端面と、その端面に連なる側面を備えているコンデンサ本体と、
前記側面を覆っており、前記端面の周囲を一巡しているとともに、前記端面よりも突出している突出部を備えている側面保護シートと、
前記端面に密着している金属膜を備えており、
少なくとも一部において前記側面保護シートと前記金属膜が離反していることを特徴とするコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−115092(P2013−115092A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257363(P2011−257363)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】