説明

コンビネーションスイッチ

【課題】無接点で、保守維持が容易なコンビネーションスイッチを提供することにある。
【解決手段】第1レバーコンビネーションスイッチ1は、回動孔1Aを中心に回動するレバー1Bの先端内部にフォトセンサ1Cを設けて構成される。レバー1Bは、ボールストッパ13aを設けて、バネ13bおよびボール13cを介してストッパ62の穴部62a〜62eに嵌合することで、段階的に回動する。フォトセンサ1Cは、円筒状の空間の一端にLED10と、他端にフォトダイオード11とを設置し、LED10とフォトダイオード11との間に波長フィルタ12を設置する。LED10は、白色光を放射し、フォトダイオード11は、LED10が放射する光を受光してその強度に比例した電気信号を出力する。波長フィルタ12は、5つのフィルタ12a〜12eから構成され、それぞれ互いに異なる中心波長の光を透過するバンドパスフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビネーションスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、無接点でスイッチ切り替えができるコンビネーションスイッチが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1のコンビネーションスイッチは、自動車のステアリングコラムに装備され、レバーの回動に基づいて作動するコンビネーションスイッチであって、レバーの先端部に配設されてレバーの回動に基づき回動する遮蔽板と、遮蔽板によって光の入射が遮られるフォトセンサとを有する。遮蔽板は、レバーの位置に対応して、光の入射を遮る面積を変化させる。一方、フォトセンサは、入射する光の強度に基づいて外部に制御信号を出力する。フォトセンサの出力する制御信号を利用することで、無接点でスイッチ切り替えが可能となり、接点不良等による不具合を回避できる。
【特許文献1】特開平8−273492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のコンビネーションスイッチによると、遮蔽板がフォトセンサを遮る面積に段階を設けるためには複雑な機構が必要となり、遮蔽板の機械的な位置ずれが生じて、正確なスイッチングができなくなるおそれがあり、保守維持が難しいという問題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、無接点で、保守維持が容易なコンビネーションスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、レバー内部に設けられたフォトセンサと、それぞれ異なる波長領域をフィルタリングする複数のフィルタを有し、前記レバーの回動位置に基づいて前記複数のフィルタから選択されて、前記フォトセンサの光をフィルタリングする波長フィルタとを有することを特徴とするコンビネーションスイッチを提供する。
【0007】
上記した構成によれば、フォトセンサの光を波長フィルタでフィルタリングし、透過した光の強度を検出しているため、フィルタを変更することで検出する光の強度を変化させることができ、比較的単純な構成で正確なスイッチングが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無接点のコンビネーションスイッチを保守維持容易に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明のコンビネーションスイッチの実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。
【0010】
〔実施の形態〕
(コンビネーションスイッチの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るコンビネーションスイッチを示す概略斜視図である。
【0011】
コンビネーションスイッチCは、自動車のハンドル7付近の、カバー6内に設置される。コンビネーションスイッチCは、PCB(Print Circuit Board)3上に設けられる、ワイパーやワイパーウォッシャーノズル等の動作をスイッチ制御する第1レバーコンビネーションスイッチ1、またはウインカーやライトの点灯をスイッチ制御する第2レバーコンビネーションスイッチである。PCB3は、ハンドル7の操舵角を検出するハンドル角センサ4と、ハンドル7のコネクタ7aと接続されるコネクタ5と、後述するECU(Electronic Control Unit)に接続するためのコネクタ8とを有する。
【0012】
第1レバーコンビネーションスイッチと第2レバーコンビネーションスイッチとは、スイッチ制御する対象が異なるが、構成は同一であるので、以下においては代表して、第1レバーコンビネーションスイッチについて説明する。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態に係る第1レバーコンビネーションスイッチを示す概略図である。
【0014】
第1レバーコンビネーションスイッチ1は、回動孔1Aを中心に回動するレバー1Bの先端内部にフォトセンサ1Cを設けて構成される。レバー1Bは、カバー6から突出する回動軸ピン60を回動孔1Aに挿入することで回動可能とし、レバー1Bを挟んで回動軸ピン60と逆側にボールストッパ13aを設けて、バネ13bおよびボール13cを介してストッパ62の穴部62a〜62eに嵌合することで、段階的に回動可能とする。
【0015】
フォトセンサ1Cは、円筒状の空間の一端にLED10と、他端にフォトダイオード11とを設置し、LED10とフォトダイオード11との間に波長フィルタ12を設置する。LED10は、後述するスペクトル分布を有する白色光を放射し、フォトダイオード11は、LED10が放射する光を受光してその強度に比例した電気信号を出力する。LED10、およびフォトダイオード11は、図示しない配線によってPCB3に電気的に接続され、PCB3とコネクタ8とを介して、後述するECU15に電気的に接続されて制御される。
【0016】
波長フィルタ12は、5つのフィルタ12a〜12eから構成され、フィルタ12a〜12eは、それぞれ互いに異なる中心波長の光を透過するバンドパスフィルタである。透過する波長領域については後述する。また、波長フィルタ12は、取付孔120aおよび120bを有し、それぞれカバー6から突出するフィルタ取付部61aおよびフィルタ取付部61bに固定される。フィルタ12a〜12eは、プラスティック、またはガラスで形成する。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係る第1レバーコンビネーションスイッチの構成を示す一部断面図である。
【0018】
フォトセンサ1Cは、円柱を構成するレバー先端の中間位置にスリット14を設け、スリット14に波長フィルタ12を配置する。スリット14は、光漏れがないようにラバーブーツ等で覆うものとする。また、カバー6で第1レバーコンビネーションスイッチ1を密閉して覆っても良い。
【0019】
フォトセンサ1Cは、ボールストッパ13aがストッパ62の穴部62aに嵌合している場合、位置aに位置するため、LED10の放射する光はフィルタ12aを透過してフォトダイオード11へと入射する。また、ボールストッパ13aがストッパ62の穴部62eに嵌合している場合、位置eに位置するため、LED10の放射する光はフィルタ12eを透過してフォトダイオード11へと入射する。
【0020】
図4(a)および(b)は、本発明の実施の形態に係るフォトセンサの構成を示す回路図およびブロック図である。
【0021】
図4(a)に示すように、フォトセンサ1Cは、直列に接続されたLED10および抵抗10aと、直列に接続されたフォトダイオード11および抵抗11aとを並列に接続して直流電源から電力を供給する。LED10は、一定の強度で白色光を放射し続け、フォトダイオード11は、LED10から放射された光を受光して、その強度に基づいて電流を通過させる。出力11bは、抵抗11aに加わる電圧を出力することで、フォトダイオード11を流れる電流量に比例した値を外部に出力する。
【0022】
図4(b)に示すように、フォトセンサ1Cは、出力11bの出力電圧をECU15に入力する。なお、フォトダイオード11は、受光感度特性を有し、受光する光の波長によって受光感度が変化するが、全波長領域において受光感度が一定とみなせるようにECU15において感度補正するものとする。
【0023】
ECU15は、入力された電圧値と、ECU15内部に設けられた図示しない記憶部に格納された操作信号テーブル15Aとを比較し、操作信号テーブル15Aに従って操作信号を出力する。操作信号は、例えばワイパー駆動系16に出力され、ワイパー駆動系16は、入力された操作信号に従ってワイパーの駆動、ワイパーウォッシャーノズルの噴射等の動作を行う。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態に係るLEDの発光特性を示すグラフ図である。
【0025】
LED10は、例えば、白色光であって、図5に示すようなスペクトル分布特性を有する。本実施の形態において使用する波長領域は、550〜650nmであり、波長に比例して光の強度が減少する。波長領域110a〜110eは、それぞれフィルタ12a〜12eの透過波長領域と対応しており、用いるフィルタによってフォトダイオード11に入射する光の強度を変えることができる。
【0026】
例えば、フォトセンサ1Cが位置aにある場合は、LED10の放射する光はフィルタ12aを透過するため、560nmに中心波長を有し、半値幅約10nmの光がフォトダイオード11に入射する。そのため、フォトダイオード11は、相対放射強度が約0.55の光を受光する。
【0027】
また、フォトセンサ1Cが位置eにある場合は、LED10の放射する光はフィルタ12eを透過するため、640nmに中心波長を有し、半値幅約10nmの光がフォトダイオード11に入射する。そのため、フォトダイオード11は、相対放射強度が約0.175の光を受光する。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態に係る操作信号テーブルの例を示す表である。
【0029】
操作信号テーブル15Aは、フォトセンサ1Cの位置、つまりフォトダイオード11の相対出力に対応して、ワイパー動作を定義している。例えば、フォトセンサ1Cが位置aにある場合、LED10から放射されてフィルタ12aを透過する光の相対出力が0.55となり、フォトダイオード11が受光して出力する相対出力も同様に0.55となるため、ECU15は、操作信号テーブル15Aを参照し、ワイパー駆動系16に対してワイパー動作「停止」の操作信号を出力する。
【0030】
フォトセンサ1Cが位置cにある場合、LED10から放射されてフィルタ12cを透過する光の相対出力が0.4となり、フォトダイオード11が受光して出力する相対出力も同様に0.4となるため、ECU15は、操作信号テーブル15Aを参照し、ワイパー駆動系16に対してワイパーが1秒間隔で動作する操作信号を出力する。
【0031】
フォトセンサ1Cが位置eにある場合、LED10から放射されてフィルタ12eを透過する光の相対出力が0.175となり、フォトダイオード11が受光して出力する相対出力も同様に0.175となるため、ECU15は、操作信号テーブル15Aを参照し、ワイパー駆動系16に対してワイパーが倍速で動作する操作信号を出力する。
【0032】
(動作)
以下に、本発明の実施の形態におけるコンビネーションスイッチの動作を各図を参照しつつ説明する。
【0033】
運転手がレバー1Bを操作することにより、レバー支点1Aを中心にフォトセンサ1Cが回動する。レバー1Bは、ボールストッパ13aにバネ13bを介して取り付けられたボール13cが、穴部62a〜62eに嵌合することで、段階的に回動する。フォトセンサ1Cは、穴部62a〜62eの位置に対応して、波長フィルタの各フィルタ12a〜12eの位置にスリット14が段階的に停止する。
【0034】
LED10は、白色光を放射し、放射された光は波長フィルタ12のフィルタ12a〜12eのうちのいずれかのフィルタを透過して、透過する際にフィルタリングされる。フィルタリングされた光は、フォトダイオード11に入射し、フォトダイオード11は、入射強度に比例した電圧信号電気信号として出力し、出力された電圧信号はECU15に入力される。
【0035】
ECU15は、フォトダイオード11から入力された電圧信号を、フォトダイオード11の受光感度特性に基づいて、フォトダイオード11の受光感度が一定となるように補正する。また、LED10の相対放射強度とフォトダイオード11の相対出力が同値となるように規格化する。
【0036】
ECU15は、フォトダイオード11の相対出力と操作信号テーブル15Aとを比較して、ワイパー駆動系16に操作信号を出力する。ワイパー駆動系16は、入力された操作信号に基づいて動作する。
【0037】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、LED10が放射した白色光を波長フィルタ12でフィルタリングし、透過した光の強度をフォトダイオード11によって検出しているため、フィルタを変更することでフォトダイオードに入射する光の強度を変化させることができ、比較的単純な構成で正確なスイッチングが可能となる。また、LED10とフォトダイオード11とをフォトセンサ1Cとして一体化して回動可能としたため、LED10とフォトダイオード11とが位置ずれしづらい。
【0038】
なお、波長フィルタ12は、バンドパスフィルターの他、ハイパスフィルタを用いても良い。また、プラスティック、ガラスの他、フィルム製のフィルタを用いて、スリット14を狭くすることでフォトセンサ1Cの精度を向上することができる。
【0039】
なお、波長フィルタ12を用いる代わりに、光の強度を変化させるフィルタを用いてフォトダイオード11に入射する光の強度を変化させてもよい。
【0040】
なお、レバー1Bの回動方向は一方向に限らず、二方向の回動を組み合わせて操作するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンビネーションスイッチを示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る第1レバーコンビネーションスイッチを示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第1レバーコンビネーションスイッチの構成を示す一部断面図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明の実施の形態に係るフォトセンサの構成を示す回路図およびブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るLEDの発光特性を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る操作信号テーブルの例を示す表である。
【符号の説明】
【0042】
1…第1レバーコンビネーションスイッチ、1A…回動孔(レバー支点)、1B…レバー、1C…フォトセンサ、2…第2レバーコンビネーションスイッチ、3…PCB、4…ハンドル角センサ、5…コネクタ、6…カバー、7…ハンドル、7a…コネクタ、8…コネクタ、10…LED、10a…抵抗、11…フォトダイオード、11a…抵抗、11b…出力、12…波長フィルタ、12a〜12e…フィルタ、13a…ボールストッパ、13b…バネ、13c…ボール、14…スリット、15…ECU、15A…操作信号テーブル、16…ワイパー駆動系、60…回動軸ピン、61a…フィルタ取付部、61b…フィルタ取付部、62…ストッパ、62a〜62e…穴部、120a…取付孔、120b…取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバー内部に設けられたフォトセンサと、
それぞれ異なる波長領域をフィルタリングする複数のフィルタを有し、前記レバーの回動位置に基づいて前記複数のフィルタから選択されて、前記フォトセンサの光をフィルタリングする波長フィルタとを有することを特徴とするコンビネーションスイッチ。
【請求項2】
前記フォトセンサは、波長スペクトルを有する白色光を放射するLEDと、前記LEDが放射した光を受光するフォトトランジスタとを有することを特徴とする請求項1に記載のコンビネーションスイッチ。
【請求項3】
前記フォトセンサは、前記選択されたフィルタを透過した光の強度と、前記波長スペクトルとを比較して、前記選択されたフィルタを特定することを特徴とする請求項2に記載のコンビネーションスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−48776(P2009−48776A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210729(P2007−210729)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】