コンピュータ、車載機、経路通知方法、および経路表示方法
【課題】誘導に従わない車両が存在しても適切な交通の円滑化を可能とする。
【解決手段】取得手段1aは、複数の車両から走行予定経路を取得する。選択手段1cは、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算する。そして選択手段1cは、期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。通知手段1dは、選択した車両に対して、第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する。
【解決手段】取得手段1aは、複数の車両から走行予定経路を取得する。選択手段1cは、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算する。そして選択手段1cは、期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。通知手段1dは、選択した車両に対して、第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動的に経路を案内するためのコンピュータ、車載機、経路通知方法、および経路表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通の円滑化のための一施策として、交通状況に応じて経路を案内する動的経路誘導が提案されている。動的経路誘導方式では、個々の車両に対する通知によって、目的地に至る特定道路に車両が集中しないよう複数の経路に交通量を分配する。これにより、道路ネットワーク全体の交通を円滑化が可能となる。
【0003】
このような交通量の分配を行うために、例えば経路毎の誘導可能車両数を算出し最適な誘導比率を決定する技術がある。また、指示した走行経路に対する忠実度に対応した還元コストを算出し、還元コストに対応するポイントを車両あるいは運転者に付与する技術も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194984号公報
【特許文献2】特開2004−77240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポイントを付与したとしても、誘導に従わない運転手が依然として存在する。従来、誘導経路を通知したにも関わらず誘導経路を走行しない車両があると、意図した通りの交通量の分配が行われず、適切な交通の円滑化が図れなかった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、通知した誘導経路を走行しない車両が存在しても適切な交通の円滑化が可能なコンピュータ、車載機、経路通知方法、および経路表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、取得手段、選択手段、および通知手段を有するコンピュータが提供される。取得手段は、複数の車両から走行予定経路を取得する。選択手段は、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。通知手段は、選択した車両に対して、第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、車両に搭載して使用される車載機において、記憶手段、送信手段、表示手段、および更新手段を有する車載機が提供される。記憶手段は、過去に通知された経路通りに車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する。送信手段は、車両の走行予定経路と遵守度とをコンピュータへ送信する。表示手段は、コンピュータから、走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する。更新手段は、他の経路と、開始点から終端点までの車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する。
【0009】
また、上記コンピュータと同様の処理を実行する経路通知方法が提供される。さらに、上記車載機と同様の処理を実行する経路表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
誘導に従わない車両が存在しても適切な交通の円滑化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係るシステムの機能構成例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。
【図3】センタ装置のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図4】車載機のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図6】経路情報記憶部内のデータ構造例を示す図である。
【図7】遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態における経路誘導のセンタ装置側の処理を示すフローチャートである。
【図9】経路間の目標移動台数決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第1の経路誘導例を示す図である。
【図14】誘導経路表示画面の一例を示す図である。
【図15】誘導対象区間内の期待される通行状況を示す図である。
【図16】第2の経路誘導例を示す図である。
【図17】第3の実施の形態のセンタ装置側の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第3の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】偽推奨経路表示画面の一例を示す図である。
【図21】第4の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図22】ロジットモデルを用いた選択により選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。
【図23】第5の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図24】第6の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図25】第6の実施の形態のセンタ装置の遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数を組み合わせて実施しても構わない。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るシステムの機能構成例を示す図である。第1の実施の形態に係るシステムは、コンピュータ1と車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に搭載して使用される車載機2とを有する。なお、図1では、1台の車両3の車載機2の機能を示しているが、他の車両3a,3b,3c,3d,・・・にも、車載機2と同様の機能を有する車載機が搭載されている。
【0013】
コンピュータ1は、取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dを有する。
取得手段1aは、複数の車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から走行予定経路を取得する。例えば取得手段1aは、光ビーコンや無線基地局を介して車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に搭載された車載機と通信し、車載機から走行予定経路4を取得する。走行予定経路4は、例えば車両が走行する予定の道路の識別情報の配列である。また取得手段1aは、各車両から、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度5を取得することもできる。
【0014】
特定手段1bは、取得した走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する。例えば特定手段1bには、予め誘導対象区間が定められている。誘導対象区間は、開始点Oと終端点Dとの位置座標(例えば緯度と経度)で定義される。特定手段1bは、誘導対象区間の開始点Oから終端点Dに至るまでの複数の経路に関して、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えているか否かを判断する。なお許容量は、例えば渋滞を発生させずに走行可能な、単位時間当たりの最大の車両数である。そして特定手段1bは、誘導対象区間に対応する経路の中から、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する。
【0015】
また特定手段1bは、特定した経路から他の経路へ移動させる車両の台数を示す目標移動台数を算出してもよい。目標移動台数は、例えば、特定された経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数から、その経路の許容量を減算した値を、目標移動台数とする。
【0016】
選択手段1cは、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算する。そして選択手段1cは、期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。なお、第1の経路は、例えば特定手段1bによって特定された経路である。遵守度は、例えば複数の車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から取得できる。また選択手段1cは、経路を通知した車両から、通知後の走行経路を取得し、通知した経路と走行経路とから、その車両の遵守度を計算することもできる。期待値は、例えば、選択した車両の遵守度の合計である。選択手段1cは、例えば、期待値が目標移動台数を超えるまで、遵守度が高い順に1台ずつ車両を選択する。選択手段1cは、例えば、次の1台の車両を選択すると期待値が目標移動台数を超えてしまう場合、車両の選択を終了する。
【0017】
通知手段1dは、選択した車両に対して、特定された経路と同じ開始点Oおよび終端点Dを有する第2の経路(誘導経路6)を通知する。例えば通知手段1dは、特定手段1bによって、単位時間当たりの走行予定の車両台数が許容量に満たないと判定された経路を、誘導経路6とする。誘導経路6は、例えば車両を誘導する道路の識別情報の配列である。
【0018】
車載機2は、記憶手段2a、送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dを有する。
記憶手段2aは、過去に通知された経路通りに車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する。例えば遵守度は、0以上1以下の実数で表される。また記憶手段2aは、例えば走行予定経路を記憶することもできる。走行予定経路は、例えば車両3の目的地に応じてカーナビゲーションシステムが算出した経路である。
【0019】
なお、カーナビゲーションシステムは、車両3に搭載されていてもよいし、カーナビゲーションシステムとして機能するコンピュータに車載機2からアクセスできるようになっていてもよい。コンピュータのカーナビゲーションシステムを利用する場合、例えば車載機2がコンピュータに現在地と目的地とを送信する。するとコンピュータから目的地までの最適な経路情報が送信される。車載機2は、コンピュータから送られた経路情報を、走行予定経路として記憶手段2aに格納する。なお、記憶手段2aは、例えば、車載機2に実装されたフラッシュメモリなどの記録媒体である。
【0020】
送信手段2bは、車両3の走行予定経路4と遵守度5とをコンピュータ1へ送信する。例えば送信手段2bは、コンピュータ1からの要求に応じて、走行予定経路4と遵守度5とを送信する。
【0021】
表示手段2cは、コンピュータ1から、走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点Oおよび終端点Dを有する他の経路(誘導経路6)が通知された場合、通知された誘導経路6を表示する。誘導経路6を表示する表示画面7には、例えば、車両3の走行予定経路から誘導経路6への経路変更を促す情報が表示される。
【0022】
更新手段2dは、誘導経路6と、開始点Oから終端点Dまでの車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する。走行経路は、例えば開始点Oから終端点Dまでに車両が走行した道路の識別情報の配列である。例えば更新手段2dは、車両3が、コンピュータ1から通知された誘導経路6の終端点に達すると、終端点に至るまでの車両の走行経路と、通知された誘導経路6とを比較し、一致度を求める。例えば誘導経路6に含まれる道路の識別情報のうち、走行経路に含まれている割合が、一致度とされる。更新手段2dは、一致度が記憶手段2aに格納された遵守度よりも大きければ、例えば現在の遵守度の値を増加させる。また、更新手段2dは、一致度が記憶手段2aに格納された遵守度よりも小さければ、例えば現在の遵守度の値を減少させる。
【0023】
このようなシステムによれば、通知した誘導経路に従って走行しない車両があっても、渋滞の発生が予測される経路の交通量が許容量を超えるのを抑止できる。例えば図1には、開始点Oから終端点Dまでの区間を誘導対象区間として、車両の誘導を行う場合の例が示されている。誘導対象区間には、経路Aと経路Bとの2つの経路が存在する。このとき、コンピュータ1では、取得手段1aにより、所定期間(例えば10分)内に開始点Oに到達可能な範囲の各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から走行予定経路が取得される。例えば取得手段1aは、各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に対して走行予定経路を要求する。すると各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・の車載機が、走行予定経路をコンピュータ1に送信する。例えば車両3の送信手段2bは、記憶手段2aから走行予定経路を取得し、コンピュータ1に送信する。
【0024】
すると特定手段1bにより、取得した走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路が特定される。図1の例では、経路Aの許容量は10分当たり100台であるのに対し、経路Aを走行予定経路とする車両数は60台である。また経路Bの許容量は10分当たり100台であるのに対し、経路Bを走行予定経路とする車両数は120台である。この場合、特定手段1bにより、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路として、経路Bが特定される。
【0025】
経路Bでは、今後10分間の走行予定車両数が、許容量を20台分超過している。他方、経路Aは、許容量に対する走行予定車両数は、40台分の余裕がある。そこで、特定手段1bにより、経路Bから経路Aへ誘導する車両の目標移動台数が、20台と決定される。
【0026】
目標移動台数が決定されると、選択手段1cにより、誘導経路の通知対象とする車両が選択される。例えば、選択手段1cは、取得手段1aに、経路Bを走行予定経路としている車両からの遵守度の取得を依頼する。すると取得手段1aは、経路Bを走行予定経路としている各車両に対して、遵守度を要求する。車両3の送信手段2bは、記憶手段2aから遵守度を取得し、コンピュータ1に送信する。取得手段1aは、取得した各車両の遵守度を、選択手段1cに渡す。
【0027】
選択手段1cは、遵守度に基づいて車両を選択する。例えば、遵守度が高い順に車両が選択される。このとき、選択手段1cは、例えば、車両を選択するごとに、それまでに選択したすべての車両の遵守度の合計値を計算し、計算結果を期待値とする。選択手段1cは、期待値が目標移動台数に達すると、車両の選択を終了する。図1の例では、期待値が20に達するまで、車両が選択される。
【0028】
車両が選択されると、通知手段1dにより、選択された車両に対して誘導経路6が通知される。図1の例では、経路Aへの経路変更を促す誘導経路6が通知される。
誘導経路6は、車両3の車載機2で受信される。車載機2では、表示手段2cにより、誘導経路6が表示画面7に表示される。その後、車両3が誘導対象区間を走行し、終端点Dに到達すると、更新手段2dにより、遵守度が更新される。例えば、車両3が経路Aを走行した場合、遵守度が増加する。他方、誘導経路6の通知にも関わらず、車両3が経路Bを走行した場合、遵守度が減少する。更新された遵守度は、更新手段2dにより記憶手段2aに格納される。
【0029】
このように、第1の実施の形態では、コンピュータ1により、遵守度により求められた期待値が目標移動台数となるように車両が選択される。そしてコンピュータ1から選択された車両に誘導経路6が通知される。これにより、目標移動台数分の車両について、所定の経路から他の経路へ誘導することができる。その結果、所定の経路を走行する車両数を、適切な数に抑制することができる。すなわち、指示に従わない車両が存在しても、所定の経路を走行する車両数の適切な抑制が可能となる。その結果、交通の円滑化を実現しやすくなる。
【0030】
なお上記の説明では、道路の識別情報の配列で、走行予定経路、誘導経路、および走行経路を示す例を示しているが、その他の方法で走行予定経路、誘導経路、および走行経路を示してもよい。例えば、走行予定経路、誘導経路、および走行経路を、所定間隔での位置情報(緯度、経度)によって示すことも可能である。
【0031】
なおコンピュータ1の取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dは、コンピュータ1のCPU(Central Processing Unit)の演算処理により実現される。取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dが処理する情報は、コンピュータ1のメモリなどの記憶装置に格納される。
【0032】
また車載機2の送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dは、車載機2のCPUの演算処理により実現される。送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dが処理する情報は、車載機2のメモリなどの記憶装置に格納される。記憶手段2aは、車載機2のメモリなどの記憶装置で実現される。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、自動車のカーナビゲーションシステムを用いて、センタ側からの経路案内を行うものである。なお、以下の説明では、車両の経路誘導を行うセンタに配置されたコンピュータをセンタ装置と呼ぶこととする。
【0034】
図2は、第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。第2の実施の形態では、ネットワーク10を介してセンタ装置100と複数の基地局21,22とが接続されている。各車両31〜33は、いずれかの基地局21,22と通信可能な範囲を走行している。基地局21,22は、車両31〜33に搭載されている車載機200,200a,200bと無線による通信を行う。車両31〜33に搭載されている車載機200,200a,200bは、基地局21,22を介して、センタ装置100との間で情報通信を行う。
【0035】
次に、センタ装置100と車載機200とのハードウェア構成について説明する。
図3は、センタ装置のハードウェアの一構成例を示す図である。センタ装置100は、CPU101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器が接続されている。
【0036】
RAM102は、センタ装置100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0037】
バス108に接続されている周辺機器としては、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、および通信インタフェース107がある。
【0038】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、センタ装置100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0039】
グラフィック処理装置104には、モニタ11が接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令に従って、画像をモニタ11の画面に表示させる。モニタ11としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0040】
入力インタフェース105には、キーボード12とマウス13とが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード12やマウス13から送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス13は、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0041】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク14に記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク14は、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク14には、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
【0042】
通信インタフェース107は、ネットワーク10に接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク10を介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行う。
【0043】
なお第1の実施の形態で示したコンピュータ1も、図3のセンタ装置100と同様のハードウェアで実現することができる。すなわち第1の実施の形態におけるコンピュータ1の機能は、CPU101の演算処理によって実現できる。
【0044】
図4は、車載機のハードウェアの一構成例を示す図である。車載機200は、カーナビゲーションシステムとしての機能を有している。車載機200は、制御回路201、ディスプレイユニット202、無線通信回路203、GPS(Global Positioning System)情報受信回路204、アンプ205、スピーカ206、およびHDD207を有している。
【0045】
制御回路201は、車載機200全体を制御する。制御回路201は、CPU201a、RAM201b、およびROM201cを有している。ROM201cは、フラッシュメモリなどの不揮発性の書き換え可能な大容量記憶媒体であり、各種プログラムおよび各種データを格納する。また、RAM201bは、CPU201aが実行するプログラムや、プログラムの実行に利用されるデータを一時的に格納する。CPU201aは、ROM201cから各プログラムおよび各データを読み出すことにより、これらプログラムに従った処理を実行する。
【0046】
ディスプレイユニット202は、制御回路201から送られた画像データを表示する。ディスプレイユニット202は、タッチパネル式ディスプレイ202aや操作ボタン202bを有している。タッチパネル式ディスプレイ202aは、例えば、表面にタッチパネルが設けられた液晶表示装置である。ディスプレイユニット202は、制御回路201から送られた画像データに基づく画像を、タッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。またディスプレイユニット202は、タッチパネル式ディスプレイ202aのタッチパネルが押されると、押された位置を示す情報を制御回路201に対して出力する。さらにディスプレイユニット202は、操作ボタン202bが押されると、押された操作ボタンに対応する信号を制御回路201に送信する。
【0047】
無線通信回路203は、通信アンテナ41に接続されている。無線通信回路203は、制御回路201から出力された情報を、通信アンテナ41を介して基地局21,22に無線通信により送信する。また無線通信回路203は、基地局21,22から車載機200宛に送信された情報を通信アンテナ41を介して受信し、制御回路201に出力する。
【0048】
GPS情報受信回路204は、GPSアンテナ42に接続されている。GPS情報受信回路204は、GPSアンテナ42を介してGPS衛星からの電波の信号を受信する。GPS情報受信回路204は、受信した信号を制御回路201へ出力する。なお、GPSは、地球を周回する多数のGPS衛星のうち少なくとも3つ以上の衛星からの電波に基づいて車両の位置を測位するシステムである。制御回路201は、複数のGPS衛星の電波の信号を解析して、車両31の現在位置を判断する。
【0049】
アンプ205は、スピーカ206に接続されている。アンプ205は、制御回路201から送られる音声信号を増幅してスピーカ206に出力する。
HDD207は、地図データなどの各種データを記憶する。制御回路201は、HDD207に格納された地図データに基づいて、目的地までの経路を判断する。
【0050】
なお第1の実施の形態で示した車載機2も、図4の車載機200と同様のハードウェアで実現することができる。すなわち第1の実施の形態における車載機2の機能は、CPU201aの演算処理によって実現できる。
【0051】
以上のようなハードウェア構成によって、センタ装置100と車載機200に必要な処理機能を実現することができる。
図5は、第2の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置100は、地図データ記憶部110、経路情報記憶部120、遵守度記憶部130、誘導経路決定部140、および車両選択部150を有している。
【0052】
地図データ記憶部110は、車両が通行可能な道路地図を示す地図データを記憶する。例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、地図データ記憶部110として使用される。
【0053】
経路情報記憶部120は、誘導対象区間、その誘導対象区間内の経路、および誘導対象区間を走行する予定の各車両の走行予定経路を記憶する。例えば経路情報記憶部120には、予め誘導対象区間、その誘導対象区間内の経路が設定される。そして予め設定された誘導対象区間の開始点から所定の距離内の車両の走行予定経路が、定期的に経路情報記憶部120に記憶される。また例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、経路情報記憶部120として使用される。
【0054】
遵守度記憶部130は、所定の車両の遵守度を記憶する。例えば、誘導対象区間内で渋滞が予想される経路を走行予定の車両の遵守度が、遵守度記憶部130に記憶される。また例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、遵守度記憶部130として使用される。
【0055】
誘導経路決定部140は、誘導対象区間の経路のうち、渋滞予測経路と誘導経路とを決定する。渋滞予測経路は、渋滞の発生が予想される経路である。誘導経路は、渋滞の発生が予想されていない経路である。例えば誘導経路決定部140は、誘導対象区間付近の車両に搭載された車載機から、走行予定経路を取得する。誘導経路決定部140には、例えば、開始点の位置と終了点の位置とにより誘導対象区間が定義されている。誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点の位置から所定の距離内に設置された基地局を介して、その基地局が通信可能な範囲内の車両の車載機から、走行予定経路を示す経路情報を取得する。誘導経路決定部140は、取得した走行予定経路を経路情報記憶部120に格納する。
【0056】
次に誘導経路決定部140は、取得した走行予定経路に基づいて、所定期間(例えば、現在から10分以内)に誘導対象区間の開始点に到達し、誘導対象区間内のいずれかの経路を走行予定の車両数を判断する。そして誘導経路決定部140は、所定期間内の通過可能な車両数(許容量)を超えた車両が通過予定の経路を、渋滞予測経路に決定する。また、誘導経路決定部140は、所定期間内の通過可能な車両数未満の車両が通過予定の経路を、誘導経路に決定する。
【0057】
誘導経路決定部140は、渋滞予測経路と誘導経路とが決定すると、各経路の誘導後の走行車両数を決定する。例えば、誘導経路決定部140は、走行予定経路とは別の経路に誘導する車両数を最小限に抑制するように、各経路の誘導後の走行車両数を決定する。そして誘導経路決定部140は、各経路の誘導後の走行車両数とするために、渋滞予測経路から誘導系とへ経路変更させる車両の台数(目標移動台数)を決定する。誘導経路決定部140は、渋滞予測経路、誘導経路、および目標移動台数を示す情報を、車両選択部150に通知する。
【0058】
車両選択部150は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。例えば車両選択部150は、誘導に従わない車両が存在することを想定した上で、移動目標台数分の車両が渋滞予測経路から誘導経路へ走行経路を変更するように、誘導する車両を選択する。車両の選択は、各車両の遵守度に基づいて行われる。遵守度は、過去の誘導に対して、各車両がどの程度従ったのかを示す指標である。各車両の遵守度は、車両に搭載された車載機から取得することができる。例えば車両選択部150は、車載機に対して遵守度取得要求を送信する。すると車載機からセンタ装置100へ、その車載機を搭載する車両の遵守度が送信される。車両選択部150は、取得した各車両の遵守度を、遵守度記憶部130に格納する。
【0059】
車両選択部150は、遵守度が「0.5」の車両を誘導した場合、50%の確率で誘導に従うと判断する。すると遵守度が50%の2台の車両を誘導した場合に、1台の車両が誘導経路へ経路を変更するものと期待できる。車両選択部150は、選択した車両の遵守度に基づいて、誘導に従って経路を変更する車両数の期待値を計算し、期待値が移動目標台数に達するまで車両の選択を繰り返す。そして車両選択部150は、選択した車両の車載機に対して、誘導経路への経路変更を促す誘導経路情報を送信する。
【0060】
車載機200は、地図データ記憶部211、遵守度記憶部212、経路案内部220、走行予定経路送信部230、誘導経路取得部240、表示制御部250、走行経路記録部260、経路比較部270、遵守度計算部280、および遵守度送信部290を有している。
【0061】
地図データ記憶部211は、車両が通行可能な道路地図を示す地図データを記憶する。例えば、RAM201bまたはHDD207の記憶領域の一部が、地図データ記憶部211として使用される。
【0062】
遵守度記憶部212は、車載機200を搭載する車両31の現在の遵守度を記憶する。例えば、RAM201bまたはHDD207の記憶領域の一部が、遵守度記憶部212として使用される。遵守度は、誘導対象区間を通過する際に誘導経路情報の通知を受け取り、車両が誘導対象区間を通過した場合に、遵守度計算部280によって更新される。
【0063】
経路案内部220は、カーナビゲーション機能を有し、車両31の運転者に対する経路案内を行う。例えば経路案内部220は、地図データ記憶部211内の地図データに基づき、操作入力により指定された目的地までの効率的な経路を計算する。そして経路案内部220は、計算した経路を走行予定経路として、運転者に案内する。経路案内は、例えば、タッチパネル式ディスプレイ202aへの経路表示や、スピーカ206を介した音声出力によって行われる。
【0064】
走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。例えば走行予定経路送信部230は、センタ装置100からの要求に応じて、その時点での走行予定経路を経路案内部220から取得し、センタ装置100に送信する。
【0065】
誘導経路取得部240は、センタ装置100が車載機200宛に送信した誘導経路情報を取得する。誘導経路取得部240は取得した誘導経路情報を、表示制御部250、走行経路記録部260、および経路比較部270に渡す。
【0066】
表示制御部250は、タッチパネル式ディスプレイ202aへの画像表示を制御する。例えば表示制御部250は、経路案内部220から走行予定経路を取得し、走行予定経路をタッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。また表示制御部250は、誘導経路取得部240から誘導経路情報を取得し、誘導経路への経路変更指示をタッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。
【0067】
走行経路記録部260は、誘導対象区間内における車両31の走行経路を示す走行経路情報をRAM201bなどの記録媒体に記録する。例えば、走行経路記録部260は、GPS情報受信回路204が受信したGPS情報に基づいて、車両の現在位置を計算する。そして走行経路記録部260は、誘導経路情報で示される誘導経路の開始点に車両31が到達すると位置情報のRAM201bへの記録を開始し、誘導経路の終端点に車両31が到達すると位置情報の記録を終了する。走行経路記録部260は、記録した位置情報により車両31の軌跡を生成し、走行経路情報としてRAM201b内に記録する。そして走行経路記録部260は、走行経路情報を経路比較部270に渡す。
【0068】
経路比較部270は、誘導経路取得部240から取得した誘導経路情報と、走行経路記録部260から取得した走行経路情報とを比較する。すなわち、経路比較部270は、誘導経路情報に示される誘導経路と、走行経路情報に示される走行経路との一致する部分と、異なる部分とを判別する。
【0069】
遵守度計算部280は、経路比較部270による比較結果に基づいて、車両31の遵守度を計算する。例えば、遵守度計算部280は、経路比較部270による最新の比較結果に基づいて前回計算した遵守度を更新し、現在の遵守度とする。遵守度計算部280は、計算した遵守度を、遵守度記憶部212に格納する。
【0070】
遵守度送信部290は、遵守度記憶部212に格納されている遵守度を、センタ装置100に送信する。例えば遵守度送信部290は、センタ装置100からの要求に応じて遵守度記憶部212から遵守度を取得する。そして遵守度送信部290は、車両IDと遵守度との組をセンタ装置100に送信する。なお、車両IDは、例えば車載機200のROM201cに予め記録されている。
【0071】
次に、各情報のデータ構造について説明する。なお、地図データ記憶部110,211内の地図データは、既存のカーナビゲーションシステム用の地図データを使用することができるため、具体的なデータ構造の説明は省略する。
【0072】
図6は、経路情報記憶部内のデータ構造例を示す図である。経路情報記憶部120には、誘導対象区間情報121、経路リスト122、および走行予定経路管理テーブル123が格納されている。
【0073】
誘導対象区間情報121には、誘導対象区間の開始点と終端点とが定義されている。図6の例では、開始点と終端点とのそれぞれの緯度と経度とが設定されている。
経路リスト122には、誘導対象区間の開始点から終端点に至ることができる複数の経路が設定されている。経路リスト122には、各経路は、経路名と経路の軌跡を示す経路情報との組を有する。経路情報は、例えば経路上の交差点等の特徴のある地点の位置情報のリストである。
【0074】
走行予定経路管理テーブル123には、車両IDと走行予定経路との欄が設けられている。
車両IDの欄には、車両の識別情報(車両ID)が設定される。車両IDは、例えば、各車両に搭載された車載機に付与されたユニークな情報を用いることができる。
【0075】
走行予定経路の欄には、対応する車両IDで示される車両の、誘導対象区間内での走行予定経路が設定される。図6の例では、誘導対象区間内に「経路A」と「経路B」との2つの経路がある。走行予定経路の欄には、各車両に対して「経路A」と「経路B」とのいずれかの経路が設定されている。
【0076】
なお、走行予定経路管理テーブル123の内容は、所定間隔(例えば10分間隔)で更新される。
図7は、遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。遵守度記憶部130には、遵守度管理テーブル131が格納されている。遵守度管理テーブル131には、車両ID、走行予定経路、遵守度、選択フラグ、および誘導経路の欄が設けられている。
【0077】
車両IDの欄には、遵守度を取得した車両の車両IDが設定される。なお、遵守度は、渋滞が予想される経路を走行予定の車両から取得される。図7には「経路B」において渋滞が予想される場合の例が示されている。
【0078】
走行予定経路の欄には、対応する車両IDで示される車両の走行予定経路が設定される。図7の例では「経路B」を通過する予定の車両から遵守度が取得されているため、すべての車両の走行予定経路は「経路B」となっている。
【0079】
遵守度の欄には、対応する車両IDで示される車両の遵守度が設定される。
選択フラグの欄には、通知対象として選択された車両の車両IDに対応付けて、「選択」を示す情報が設定される。
【0080】
誘導経路の欄には、車両を選択した際の受け入れ可能経路が、選択した車両の誘導経路として設定される。
次に、経路誘導処理の手順について説明する。
【0081】
図8は、第2の実施の形態における経路誘導のセンタ装置側の処理を示すフローチャートである。以下、図8に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS11]誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両から、走行予定経路を取得する。例えば、誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内を管轄する基地局を介して、その基地局から通信可能なすべての車載機に対し、走行予定経路取得要求を送信する。すると、走行予定経路取得要求を受け取った車載機から、走行予定経路が送られてくる。誘導経路決定部140は、取得した各車両の走行予定経路を経路情報記憶部120に格納する。なお、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内の車両台数をN(Nは1以上の整数)とする。
【0082】
[ステップS12]誘導経路決定部140は、各車両の走行予定経路に基づいて、誘導対象区間の開始点と終端点との2地点を結ぶ各経路の走行予定の車両数を算出する。例えば誘導対象区間内に「経路A」と「経路B」とがある場合、誘導経路決定部140は、「経路A」を走行する予定の車両数Na(Naは0以上の整数)と、「経路B」を走行する予定の車両数Nb(Nbは0以上の整数)とを求める。例えば「経路A」を走行する予定の車両数(Na)が100台、「経路B」を走行する予定の車両数(Nb)が200台といった値が算出される。
【0083】
[ステップS13]車両選択部150は、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断する。例えば車両選択部150は、誘導対象区間内の経路数をq(qは、1以上の整数)とする。また車両選択部150は、経路リスト122において上からj番目の経路j(jは、1以上q以下の整数(1≦j≦q))に所定時間(例えば10分)内に流入し、渋滞を発生させずに通過可能な車両数(許容量)をCjとする。さらに車両選択部150は、経路jに所定時間内に流入予定の車両数をNjとする。このとき、以下の式(1)が真か偽かの判定により、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断できる。
【0084】
【数1】
【0085】
式(1)の左辺は、誘導対象区間に所定時間内に流入予定の車両数を表している。式(1)の右辺は、所定時間内に誘導対象区間に流入し、誘導対象区間内のすべての経路で渋滞を発生させずに、誘導対象区間内を通過可能な車両の最大数を表している。式(1)が真であれば、誘導対象区間に所定時間内に流入予定の車両の総数が、誘導対象区間で渋滞を発生させずに通過可能な車両の総数を超えていることとなる。この場合どのように振り分けてもどこかで渋滞が発生するため、車両の振り分けによる渋滞の解消は困難であると判断される。逆に、式(1)が偽であれば、車両の振り分けにより渋滞の解消が可能であると判断される。車両の振り分けによる渋滞の解消は不可能な場合、センタ装置側の処理が終了する。車両の振り分けによる渋滞の解消が可能な場合、車両選択部150は処理をステップS14に進める。
【0086】
[ステップS14]誘導経路決定部140は、経路を誘導する際の渋滞予測経路と受け入れ可能経路とを特定し、これらの経路間の目標移動台数を決定する。渋滞予測経路は、渋滞の発生が予測される経路である。受け入れ可能経路は、渋滞予測経路を走行予定の車両の誘導先の経路として指定可能な経路である。
【0087】
例えば「経路B」が渋滞予測経路、「経路A」が受け入れ可能経路の場合、誘導経路決定部140は、渋滞予測経路を走行予定の車両の削減台数を決定する。例えば「経路B」を走行する予定の車両数(Nb)から、「経路B」を所定時間で走行可能な車両台数NB(NBは0以上の整数)を減算した値が、削減台数とされる。「経路B」を所定時間(10分)で走行可能な車両台数NBが166台(1時間当たり1000台)であれば、削減台数は、「n=Nb−NB=34台」となる。削減台数分の車両を「経路A」が受け入れ可能であれば、削減台数が「経路B」から「経路A」への目標移動台数となる。なお、ステップS14に示す処理の詳細は後述する(図9参照)。
【0088】
[ステップS15]車両選択部150は、1つの渋滞予測経路と1つの受け入れ可能経路との組を選択する。
[ステップS16]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路から選択した受け入れ可能経路への目標移動台数が1以上か否かを判断する。車両選択部150は、目標移動台数が1以上であれば、処理をステップS17に進める。車両選択部150は、目標移動台数が0であれば、処理をステップS18に進める。
【0089】
[ステップS17]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路を走行予定の車両の中から、選択した受け入れ可能経路を誘導経路として通知する対象の車両を選択する。この処理の詳細は後述する(図10参照)。
【0090】
[ステップS18]車両選択部150は、渋滞予測経路と受け入れ可能経路との未選択の組があるか否かを判断する。車両選択部150は、未選択の組があれば、処理をステップS15に進める。車両選択部150は、未選択の組がなければ、処理をステップS19に進める。
【0091】
[ステップS19]車両選択部150は、通知対象として選択された車両に誘導経路を通知する。例えば車両選択部150は、渋滞予測経路である「経路B」を走行予定の車両のうちの選択された車両宛に、受け入れ可能経路である「経路A」の通行を促す情報を送信する。
【0092】
このようにして、選択された車両の誘導が行われる。なお、どの車両が選択されたのかは、遵守度記憶部130内の遵守度管理テーブル131に設定された各車両の選択フラグに基づいて判断できる。
【0093】
次に、経路間の目標移動台数決定処理について詳細に説明する。
図9は、経路間の目標移動台数決定処理の手順を示すフローチャートである。以下、図9の処理をステップ番号に沿って説明する。
【0094】
[ステップS31]車両選択部150は、渋滞予測経路を検出する。例えば車両選択部150は、すべての経路について、「所定時間内に通過予定の車両数(Nj)>通過可能な車両数(Cj)」が真か偽かを判断する。車両選択部150は、経路jについて「Nj>Cj」が真なら番号jを、渋滞予測経路の集合Sに設定する。また車両選択部150は、経路jについて「Nj>Cj」が偽なら番号jを、受け入れ可能経路の集合Tに設定する。集合Sに設定された番号が、渋滞予測経路を表している。
【0095】
[ステップS32]車両選択部150は、集合Sから渋滞予測経路を1つ選択する。例えば車両選択部150は、選択中の経路を示す変数s(sは、1以上の整数)に、集合Sの最初の要素の値を設定する。
【0096】
[ステップS33]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路からの通過予定車両の削減台数を計算する。例えば車両選択部150は、選択した渋滞予測経路(経路s)から他の経路へ移動する車両の台数(削減台数)Msを、「Ms=Ns−Cs」で計算する。すなわち、s番目の経路の通過予定車両数Nsから、s番目の経路の通過可能な車両数Csを減算した値を、削減台数Msとする。
【0097】
[ステップS34]車両選択部150は、集合Tから受け入れ可能経路を1つ選択する。例えば車両選択部150は、選択中の経路を示す変数t(tは、1以上の整数)に、集合Tの最初の要素の値を設定する。
【0098】
[ステップS35]車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路における受け入れ可能台数を計算する。例えば車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路(経路t)が受け入れ可能な車両の台数(受け入れ可能台数Rt)を、「Rt=Ct−Nt」で計算する。すなわち、t番目の経路の通過可能な車両数Ctから、t番目の経路の通過予定車両数Ntを減算した値を、受け入れ可能台数Rtとする。
【0099】
[ステップS36]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路の削減台数分を、選択した受け入れ可能経路で受け入れ可能か否かを判断する。受け入れ可能台数Rtが削減台数Ms以上であれば、受け入れ可能である。例えば車両選択部150は、「Rt≧Ms」の真偽を判断する。「Rt≧Ms」が真であれば、受け入れ可能と判断される。「Rt≧Ms」が偽であれば、受け入れ不可能と判断される。車両選択部150は、受け入れ可能な場合、処理をステップS40に進める。車両選択部150は、受け入れ不可能な場合、処理をステップS37に進める。
【0100】
[ステップS37]ステップS36で受け入れ不可能と判断すると、車両選択部150は、受け入れ可能台数を用いて目標移動台数と削減台数を更新する。具体的には車両選択部150は、経路リスト122におけるs番目の経路からt番目の経路への目標移動台数Ms,tとする。なお、目標移動台数Ms,tの初期値は「0」とする。そして、車両選択部150は、s番目の経路の削減台数Msから、t番目の経路の受け入れ可能台数Rtを減算した値を、s番目の経路のあらたな削減台数Msとする。この処理を式で表すと、以下のようになる。
Ms,t=Rt ・・・(2)
Ms=Ms−Rt ・・・(3)
式(2)、式(3)の”=”の記号は代入演算子であり、右辺の値を、左辺の変数に代入することを意味する。
【0101】
[ステップS38]車両選択部150は、未選択の受け入れ可能経路の1つを選択する。例えば車両選択部150は、集合Tの現在選択している要素の次の要素の値を、選択中の経路を示す変数tに設定する。
【0102】
[ステップS39]車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路における受け入れ可能台数を計算する。車両選択部150は、計算した値を、選択した受け入れ可能経路(経路t)の受け入れ可能台数Rtとする。その後、車両選択部150は、処理をステップS36に進める。
【0103】
[ステップS40]ステップS36で受け入れ可能と判断すると、車両選択部150は、削減台数を用いて目標移動台数と受け入れ可能台数を更新する。具体的には車両選択部150は、s番目の経路の削減台数を、s番目の経路からt番目の経路への目標移動台数Ms,tに加算する。そして、車両選択部150は、t番目の経路の受け入れ可能台数Rtから、s番目の経路の削減台数Msを減算した値を、t番目の経路のあらたな受け入れ可能台数Rtとする。この処理を式で表すと、以下のようになる。
Ms,t=Ms ・・・(4)
Rt=Rt−Ms ・・・(5)
式(4)、式(5)の”=”の記号は代入演算子である。
【0104】
[ステップS41]車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路があるか否かを判断する。例えば車両選択部150は、集合Sの先頭から順に要素を選択している場合、集合Sの次の要素があるか否かにより、未選択の渋滞予想経路があるか否かを判断する。集合Sの次の要素があれば、未選択の渋滞予想経路があると判断され、集合Sの次の要素がなければ、未選択の渋滞予想経路がないと判断される。車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路がある場合、処理をステップS42に進める。車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路がなければ、経路間の目標移動台数決定処理を終了する。
【0105】
[ステップS42]車両選択部150は、未選択の渋滞予測経路の1つを選択する。例えば車両選択部150は、集合Sの現在選択している要素の次の要素の値を、選択中の経路を示す変数sに設定する。
【0106】
[ステップS43]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路の削減台数を計算する。車両選択部150は、計算した値を、選択した渋滞予測経路(経路s)の削減台数Msとする。その後、車両選択部150は、処理をステップS36に進める。
【0107】
このようにして、渋滞が予想される経路それぞれから、他の経路への移動車両数が決定される。
次に、誘導車両選択処理について、詳細に説明する。
【0108】
図10は、第2の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図10に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS51]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。例えば、「経路B」が渋滞予測経路であれば、車両選択部150は、経路情報記憶部120を参照し、走行予定経路が「経路B」となっているすべての車両の車両IDを抽出する。そして、車両選択部150は、抽出した車両IDに対応する車両に搭載された車載機宛に遵守度取得要求を送信する。すると走行予定経路が「経路B」となっているすべての車両の車載機から、対応する車両の遵守度が送り返される。車両選択部150は、取得した各車両の遵守度を、車両IDと走行予定経路とに対応付けて、遵守度管理テーブル131に格納する。
【0109】
[ステップS52]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の高い順にソートする。
[ステップS53]車両選択部150は、変数i=1とする(iは、1以上、渋滞予測経路を通過予定の車両数以下の整数)。渋滞予測経路が「経路B」のみであれば、iは「1≦i≦Nb」の整数である。
【0110】
[ステップS54]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。遵守度Kiは、0以上1以下の実数で表される。車両の遵守度Kiの値が1に近いほど、その車両が誘導に従って走行する可能性が高いことを意味する。
【0111】
[ステップS55]車両選択部150は、ステップS54で取得した遵守度Kiに基づいて、移動台数の期待値Eを更新する。期待値Eは、0以上の実数である。期待値Eは、以下の式(6)で計算される。
【0112】
【数2】
【0113】
式(6)において、mは1以上i以下の整数である。すなわち期待値Eは、1番目からi番目までの車両の遵守度の合計である。
[ステップS56]車両選択部150は、i番目の車両を通知対象として選択する。例えば車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の選択フラグの欄に、「選択」を示す情報を設定する。また車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の誘導経路の欄に、現在選択されている受け入れ可能経路を設定する。
【0114】
[ステップS57]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となった場合(E≧n)、誘導車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満の場合(E<n)、処理をステップS58に進める。
【0115】
[ステップS58]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS59]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、誘導車両選択処理を終了する。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS54に進める。
【0116】
このようにして、期待値Eが目標移動台数となるように、渋滞予測経路を走行予定経路とする車両のうちの一部の車両が、通知対象として選択される。選択された車両は、遵守度記憶部130内で選択フラグで示される。
【0117】
なお、全車両を選択しても期待値Eが目標移動台数nに達しない場合があり得る。例えば、渋滞予測経路を走行予定の大多数の車両の遵守度が、非常に小さい値の場合である。その場合、車両選択部150は、変数iが渋滞予測経路を通過する車両数を超えた時点で通知車両選択処理を終了する。すなわち全車両が選択された時点で、通知車両選択処理が終了する。
【0118】
図11は、選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。図11に示すように遵守度管理テーブル131の各レコードは、遵守度の高い順にソートされている。すなわち、遵守度の高い車両のレコードほど、遵守度管理テーブル131の上位に設定されている。そして、車両の選択は、遵守度管理テーブル131の上位から順に行われている。
【0119】
なお、図11の例では3台の車両のみが選択されているが、期待値Eが目標移動台数nを超えるまで、遵守度管理テーブル131の上位から順に車両が選択される。そして、車両が選択されるごとに、選択された車両の選択フラグが遵守度管理テーブル131に設定される。
【0120】
車両側では、車載機によって誘導された経路が画面表示される。また車載機は、ユーザが誘導された経路に従ったか否かに基づいて、車両の遵守度を更新する。
図12は、第2の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。以下、図12に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の説明では、車両31に搭載された車載機200が処理を実行するものとする。また車載機200が搭載された車両31は、通知対象として選択されたものとする。
【0121】
[ステップS61]走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。例えば走行予定経路送信部230は、センタ装置100から走行予定経路取得要求を受け取ると、経路案内部220から現在の走行予定経路を取得する。そして、走行予定経路送信部230は、取得した走行予定経路をセンタ装置100に送信する。
【0122】
[ステップS62]遵守度送信部290は、車両31の遵守度をセンタ装置100に送信する。例えば遵守度送信部290は、センタ装置100から遵守度取得要求を受け取ると、遵守度記憶部212から車両31の最新の遵守度を取得する。そして、遵守度送信部290は、取得した遵守度をセンタ装置100に送信する。なお、ステップS62以降の処理は、車両31の走行予定経路が、誘導対象区間における渋滞予想経路を含んでいる場合に実行される。
【0123】
[ステップS63]誘導経路取得部240は、センタ装置100から誘導経路を取得する。なお、ステップS63以降の処理は、車両31が、通知対象として選択された場合に実行される。
【0124】
[ステップS64]誘導経路取得部240は、取得した誘導経路を表示制御部250を介して画面に表示する。車両31の運転手は、誘導経路が表示された画面を見て、走行予定経路とは異なる経路への誘導が行われていることを認識できる。
【0125】
[ステップS65]走行経路記録部260は、車両31が誘導経路の開始点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、開始点に到着した場合、処理をステップS66に進める。また走行経路記録部260は、開始点に到着していなければ、ステップS65の処理を繰り返す。
【0126】
[ステップS66]走行経路記録部260は、車両31の走行経路を記録する。
[ステップS67]走行経路記録部260は、車両31が誘導経路の終端点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、終端点に到着した場合、記録した走行経路を経路比較部270に渡し、処理をステップS68に進める。また走行経路記録部260は、終端点に到着していなければ、処理をステップS66に進める。
【0127】
[ステップS68]経路比較部270は、誘導経路と走行経路との一致度pを計算する。例えば誘導経路全体(距離D)に対し、実際の走行経路が重なる部分の距離をdとする。このとき一致度pは、以下の式(7)で求められる。
p=d/D ・・・(7)
ただし、d/D>1のときはp=1とする。これにより、経路の一致度pは、0以上1以下の値となる(0≦p≦1)。
【0128】
[ステップS69]遵守度計算部280は、経路比較部270が算出した一致度pに基づいて遵守度Kを計算する。例えば遵守度計算部280は、前回計算した遵守度Kを用いて、最新の遵守度Kを計算する。その場合、u回目(uは1以上の整数)の遵守度Kuを、以下の式(8)で計算できる。
Ku=(1−α)Ku-1+αp ・・・(8)
ここでKuは、誘導経路のu回目の通知に応じて誘導対象区間を走行した後に算出される遵守度である。ただし、遵守度の初期値K0=0.5とする。Ku-1は、誘導経路のu−1回目の通知に応じて誘導対象区間を走行した後に算出される遵守度である。またαは、履歴の重視度合いを示す重みパラメータである。αは、0以上1以下の任意の値が予め設定される(0≦α≦1)。
【0129】
そして遵守度計算部280は、計算した遵守度を遵守度記憶部212に格納する。
このようにして、誘導経路を受け取った車両31では、誘導経路が表示されると共に、誘導対象区間を通過後に遵守度が更新される。
【0130】
次に、具体的な車両の誘導例について説明する。
図13は、第1の経路誘導例を示す図である。第1の経路誘導例では、開始点Oから終端点Dまでを誘導対象区間として誘導を行うる。開始点Oと終端点Dとを結ぶ経路は、経路Aと経路Bとの2つがある。経路Aと経路Bとは、いずれも途中にボトルネック部分があり、経路の許容量は共に1時間当たり1000台(1000台/h)である。
【0131】
なお、経路Aと経路Bとには、開始点O以外からの車両の流入が発生しないか、車両の流入が発生したとしても全体に対する影響が無視できるほど少量であるものとする。もし経路Aと経路Bとのいずれかの途中に、車両が大量に流入する場所が存在する場合、その場所から終端点Dまでを誘導対象区間として経路誘導を行えばよい。
【0132】
センタ装置100は、10分間隔で経路誘導処理を実行するものとする。この場合、センタ装置100では、今後10分以内に開始点Oに到達可能な車両51〜55,・・・から走行予定経路の経路情報を収集する。図13では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与している。
【0133】
図13の例では、今後10分以内に開始点Oに到達し、最終的に誘導終端点Dを通過する予定の車両が300台あるものとする。そのうち経路Aを走行予定車両数が100台(Na=100)、経路Bを走行予定車両数が200台(Nb=200)であるものとする。また、現時点で経路Aおよび経路Bのいずれにも渋滞はないものとする。
【0134】
このような状況下で、センタ装置100により経路誘導処理が行われる。その場合、まず目標移動台数が計算される。経路Aを走行予定の車両数(100台)を1時間当たりの車両数に換算すると600台となる。また、経路Bを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。すると、経路Bについては、許容量(1000第/h)以上の車両が走行予定となっている。そのため、経路Bにおいて渋滞の発生が予測される。この場合、誘導後に経路Bを走行する車両数を166台(NB=166台)にすれば、経路Bの1時間当たりの走行車両数は約1000台となる。1時間当たり1000台の走行量は、経路Bの許容量以下である。この場合、経路Bを走行する車両数を166台にするには、経路Bを走行予定の車両のうち34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導すればよいことが分かる。
【0135】
34台の車両を経路Bから経路Aに誘導すると、誘導後に経路Aを走行する車両数は134台(NA=134台)となる。この場合、経路Aの1時間当たりの走行車両数は約800台となる。1時間当たり800台の通行量は、経路Aの許容量以下である。
【0136】
よって、目標移動台数nを34台とすることで、どちらの経路でもボトルネックとなる容量以下で車両を通過させることができる。すなわち、渋滞の発生が抑制される。
そこで、目標移動台数が34台(n=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Bを走行予定の200台の車両のうち、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。例えば、すべての車両の遵守度が「1」であれば、34台の車両が通知対象車両として選択されたとき、期待値Eが34となる。またすべての車両の遵守度が「0.5」であれば、68台の車両が通知対象車両として選択されたとき、期待値Eが34となる。そして、選択された車両に対して、経路Aを示す誘導経路が通知される。すると、選択された車両の車載機が有する表示装置の画面に、誘導経路が表示される。
【0137】
図14は、誘導経路表示画面の一例を示す図である。誘導経路表示画面60には、渋滞予測経路と判定された走行予定経路から、誘導経路への誘導を案内するメッセージが表示されている。図14の例では、「渋滞緩和のため経路Bから経路Aに変更してください」と表示されている。また、渋滞予測経路である経路Bが波線で表示され、誘導経路である経路Aが実線で表示されている。これにより、経路Aが強調表示されている。
【0138】
図14に示したような誘導経路表示画面60が、通知対象車両それぞれの車載機で表示される。その結果、各車両の運転手が誘導経路表示画面60を参考にして経路を選択し、誘導対象区間内を運転する。運転手の中には、経路誘導に従って誘導経路を通る者と、経路誘導に逆らって渋滞予測経路を通る者とがいることが予想される。その結果、目標移動台数である34台の車両が、当初の走行予定経路である経路Bを通らずに、経路Aを走行することが期待できる。
【0139】
図15は、誘導対象区間内の期待される通行状況を示す図である。図15では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与し、経路Bから経路Aへ誘導された通知対象車両の上に「B→A」の文字を付与している。
【0140】
経路Aは、元から経路Aを走行予定経路としていた100台の車両が流入する。また、経路Bから経路Aに誘導され、その誘導に従った34台の車両が経路Aに流入する。その結果、経路Aへ、10分間で134台の車両が流入する。他方、経路Bへは、元から経路Bを走行予定経路としていた車両と、経路Bから経路Aに誘導されたがその誘導に従わなかった車両とを併せて、166台の車両が流入する。
【0141】
このようにして、経路Bの渋滞の発生を抑制することができる。
次に、誘導対象区間内に経路が3つあり、そのうちの2つの経路において渋滞が予測された場合の経路誘導例について説明する。
【0142】
図16は、第2の経路誘導例を示す図である。第2の経路誘導例では、地点Oが誘導開始区間の開始点であり、地点Dを誘導開始区間の終端点である。開始点Oと終端点Dとを結ぶ経路は、経路A、経路Bおよび経路Cの3つがある。経路A、経路Bおよび経路Cは、いずれも途中にボトルネック部分があり、許容量は共に1時間当たり1000台(1000台/h)である。
【0143】
センタ装置100は、10分間隔で経路誘導処理を実行するものとする。この場合、センタ装置100では、今後10分以内に開始点Oに到達可能な車両51〜55,・・・から走行経路情報を収集する。図16では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与している。
【0144】
図16の例では、今後10分以内に開始点Oに到達し、最終的に誘導終端点Dを通過する予定の車両が500台あるものとする。そのうち経路Aを走行予定車両数が100台(Na=100)、経路Bを走行予定車両数が200台(Nb=200)、経路Cを走行予定車両数が200台(Nc=200)であるものとする。また、現時点で経路A、経路Bおよび経路Cのいずれにも渋滞はないものとする。
【0145】
このような状況下で、センタ装置100により経路誘導処理が行われる。その場合、まず目標移動台数が計算される。経路Aを走行予定の車両数(100台)を1時間当たりの車両数に換算すると600台となる。また、経路Bを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。同様に経路Cを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。この場合、誘導後に経路Bと経路Cとのそれぞれを走行する車両数を、共に166台(NB=NC=166台)にすれば、経路Bと経路Cとの1時間当たりの走行車両数はそれぞれ約1000台となる。1時間当たり1000台の通行量は、経路Bと経路Cとの許容量以下である。この場合、経路Bを走行予定の車両のうち、34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導し、経路Cを走行予定の車両のうち、34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導すればよいことが分かる。
【0146】
34台の車両を経路Bから経路Aに誘導し、34台の車両を経路Cから経路Aに誘導すると、誘導後に経路Aを走行する車両数を168台(NA=168台)となる。この場合、経路Aの1時間当たりの走行車両数は約1000台となる。1時間当たり1000台の通行量は、経路Aの許容量以下である。
【0147】
よって、経路Bから経路Aへ誘導する目標移動台数nbaを34台とし、経路Cから経路Aへ誘導する目標移動台数ncaを34台とすることで、いずれの経路でもボトルネック容量以下で車両を通過させることができる。すなわち、渋滞の発生が抑制される。
【0148】
そこで、経路Bから経路Aへ誘導する目標移動台数が34台(nba=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Bを走行予定の200台の車両が、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。さらに、経路Cから経路Aへ誘導する目標移動台数が34台(nca=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Cを走行予定の200台の車両が、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。そして、選択された車両に対して、経路Aを示す誘導経路が通知される。
【0149】
このようにして、誘導対象区間内の経路が3以上であっても、適正に車両を誘導し、渋滞の発生を抑制することができる。
なお、第2の実施の形態では、遵守度の高い順に車両を選択している。遵守度の高い車両の運転者は、誘導に従う可能性が高く、経路を気まぐれに選択する可能性が低いものと考えられる。すなわち遵守度の高い車両では、誘導経路を通知したときの、走行経路と誘導経路との一致度のばらつきが少ない。そのため、遵守度の高い順に車両を選択すれば、期待値と実際に誘導に従った車両数との差が小さく抑えられ、各経路に期待通りの車両を通行させることができる。
【0150】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、天邪鬼な運転手を考慮して通知対象車両を選択するものである。第3の実施の形態では、誘導対象区間内の経路は2つであるものとする。この場合に、遵守度の低い運転手(天邪鬼な運転手)は、指示された経路の逆を選択することが期待できる。そこで、第3の実施の形態では、センタ装置は、遵守度の低い車両を優先的に選択し、選択した車両に対して、誘導したい経路の逆の経路(渋滞が予測される経路)を推奨する偽推奨経路を通知する。
【0151】
なお、第3の実施の形態のシステム構成は、図2に示された第2の実施の形態のシステム構成と同様である。また第3の実施の形態のセンタ装置と車載機とは、それぞれ図5に示された第2の実施の形態のセンタ装置100と車載機200と同じ要素を有する。そこで、図5に示した各装置および要素を用いて第3の実施の形態の処理について以下に説明する。また、以下の説明では、誘導対象区間内の2つの経路を「経路A」、「経路B」とする。
【0152】
図17は、第3の実施の形態のセンタ装置側の処理手順を示すフローチャートである。以下、図17に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS71]誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両(台数N:Nは1以上の整数)から、走行予定経路を取得する。この処理の詳細は、図8に示すステップS11と同様である。
【0153】
[ステップS72]誘導経路決定部140は、各車両の走行予定経路に基づいて、所定時間内に誘導対象区間の開始点と終端点との2地点を結ぶ各経路の走行予定の車両数を算出する。この処理の詳細は、図8に示すステップS12と同様である。
【0154】
[ステップS73]車両選択部150は、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断する。車両の振り分けによる渋滞の解消は不可能な場合、センタ装置側の処理が終了する。車両の振り分けによる渋滞の解消が可能な場合、車両選択部150は処理をステップS74に進める。この処理の詳細は、図8に示すステップS13と同様である。
【0155】
[ステップS74]車両選択部150は、渋滞予測経路を検出する。例えば車両選択部150は、「経路A」と「経路B」とのそれぞれについて、「所定時間内に通過予定の車両数>所定時間内に通過可能な車両数」が真か偽かを判断する。車両選択部150は、「所定時間内に通過予定の車両数>所定時間内に通過可能な車両数」が真である経路を渋滞予測経路とし、偽である経路を受け入れ可能経路とする。
【0156】
[ステップS75]車両選択部150は、目標移動台数nを計算する。例えば車両選択部150は、渋滞予測経路の所定時間内に通過予定の車両数から所定時間内に通過可能な車両数を減算した結果を、目標移動台数nとする。
【0157】
[ステップS76]車両選択部150は、渋滞予測経路の通行を推奨する偽推奨経路を通知する対象の車両を選択する。この処理の詳細は後述する(図18参照)。
[ステップS77]車両選択部150は、通知対象として選択された車両に偽推奨経路を通知する。例えば、渋滞予測経路が「経路B」、受け入れ可能経路が「経路A」であれば、車両選択部150は、「経路B」を走行予定の車両のうちの選択された車両宛に、「経路B」の通行を推奨する情報を送信する。
【0158】
次に、誘導車両選択処理について、詳細に説明する。
図18は、第3の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図18に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0159】
[ステップS81]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。この処理の詳細は、図10に示すステップS51と同様である。
【0160】
[ステップS82]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の低い順にソートする。
[ステップS83]車両選択部150は、変数i=1とする(iは、1以上、渋滞予測経路を通過予定の車両数以下の整数)。
【0161】
[ステップS84]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。
[ステップS85]車両選択部150は、ステップS84で取得した遵守度Kiに基づいて、移動台数の期待値Eを更新する。期待値Eは、以下の式(9)で計算される。
【0162】
【数3】
【0163】
式(9)において、mは1以上i以下の整数である。すなわち期待値Eは、1番目からi番目までの車両の遵守度を1から減算した値の合計である。遵守度を1から減算した値(1−Km)は、m番目の車両が偽推奨経路と異なる経路を走行する可能性の高さを示している。すなわち、天邪鬼な運転手が運転する車両に対して渋滞予測経路を偽推奨経路とする案内を行えば、遵守度を1から減算した値の確率で、その車両が誘導経路を走行するものと予想される。
【0164】
[ステップS86]車両選択部150は、i番目の車両を、通知対象として選択する。この処理の詳細は、図10に示すステップS56と同様である。
[ステップS87]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上の場合(E≧n)、誘導車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満の場合(E<n)、処理をステップS88に進める。
【0165】
[ステップS88]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS89]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、誘導車両選択処理を終了する。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS84に進める。
【0166】
このように、第3の実施の形態では、偽推奨経路の通知を受けた車両が偽推奨経路とは別の誘導経路を走行する期待値Eが計算され、その期待値Eが目標移動台数を超えるまで、遵守度の低い順に車両が選択される。選択された車両には、渋滞予測経路の走行を推奨する情報が送信される。
【0167】
なお車両選択部150は、変数iが渋滞予測経路を通過する車両数を超えた場合、その時点で図18に示す通知車両選択処理を終了する。
車両側では、車載機によって推奨された経路が画面表示される。また車載機は、ユーザが誘導された経路に従ったか否かに基づいて、車両の遵守度を更新する。
【0168】
図19は、第3の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。以下、図19に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の説明では、車両31に搭載された車載機200が処理を実行するものとする。また車載機200が搭載された車両31は、通知対象として選択されたものとする。
【0169】
[ステップS91]走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。
[ステップS92]遵守度送信部290は、車両31の遵守度をセンタ装置100に送信する。
【0170】
[ステップS93]誘導経路取得部240は、センタ装置100から偽推奨経路を取得する。
[ステップS94]誘導経路取得部240は、取得した偽推奨経路を、表示制御部250を介して画面に表示する。車両31の運転手は、偽推奨経路が表示された画面を見て、走行予定経路の走行が推奨されていることを認識できる。
【0171】
[ステップS95]走行経路記録部260は、車両31が偽推奨経路の開始点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、開始点に到着した場合、処理をステップS96に進める。また走行経路記録部260は、開始点に到着していなければ、ステップS95の処理を繰り返す。
【0172】
[ステップS96]走行経路記録部260は、車両31の走行経路を記録する。
[ステップS97]走行経路記録部260は、車両31が偽推奨経路の終端点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、終端点に到着した場合、記録した走行経路を経路比較部270に渡し、処理をステップS98に進める。また走行経路記録部260は、終端点に到着していなければ、処理をステップS96に進める。
【0173】
[ステップS98]経路比較部270は、偽推奨経路と走行経路との一致度pを計算する。例えば偽推奨経路全体(距離D)に対し、実際の走行経路が重なる部分の距離をdとする。このとき一致度pは、前述の式(7)で求められる。
【0174】
[ステップS99]遵守度計算部280は、経路比較部270が算出した一致度pに基づいて遵守度Kを計算する。そして遵守度計算部280は、計算した遵守度を遵守度記憶部212に格納する。この処理の詳細は、図12に示すステップS69の処理と同じである。
【0175】
このようにして、偽推奨経路を受け取った車両では、偽推奨経路が表示されると共に、誘導対象区間を通過後に遵守度が更新される。偽推奨経路を受け取った車両が偽推奨経路(渋滞予測経路)を走行した場合、遵守度が上げられる。逆に偽推奨経路を受け取った車両が偽推奨経路以外の経路(例えば受け入れ可能経路)を走行した場合、遵守度が下げられる。
【0176】
図20は、偽推奨経路表示画面の一例を示す図である。偽推奨経路表示画面61には、渋滞予測経路の走行を推奨するメッセージが表示されている。図20の例では、「渋滞緩和のため皆様に経路Bの走行をお勧めしています」と表示されている。また地図上で、渋滞が予測される経路Bを強調表示している。
【0177】
図20に示したような偽推奨経路表示画面61が、通知対象車両それぞれの車載機で表示される。その結果、各車両の運転手が偽推奨経路表示画面61を参考にして経路を選択し、誘導対象区間内を運転する。この際、運転手が天邪鬼であるほど、推奨された経路Bとは別の経路Aを通ることが予想される。その結果、目標移動台数分の車両が、当初の走行予定経路である経路Bを通らずに、経路Aを走行することが期待できる。
【0178】
このようにして、遵守度の低い車両に対しても、各経路が適切な交通量となるように誘導することが可能となる。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態は、同じ車両ばかりが誘導されることを抑止するものである。例えば第2の実施の形態に示したように遵守度が高い車両から順に誘導経路の通知対象として選択すると、遵守度が1に近い車両は、走行予定経路で渋滞が予測されると、常に他の経路へ誘導される。他方、遵守度が低い車両に関しては、走行予定経路で渋滞が予測されても、常に予定通りの経路を走行できる。このような不公平を緩和するため、第4の実施の形態では、センタ装置は、ロジットモデルによって確率的に、誘導経路の通知対象の車両を選択する。
【0179】
例えば、センタ装置は、車両の遵守度に応じたその車両の選択確率を、ロジットモデルによって算出する。選択確率の計算式は、以下の式(10)で表される。
【0180】
【数4】
【0181】
ここでPiは、i番目の車両の選択確率である。Kiは、i番目の車両の遵守度である。nは、選択された渋滞予測経路を通過予定の車両台数である。vは、1以上n以下の整数である。θは、感度パラメータであり、0以上1以下の実数である(0≦θ≦1)。θが0に近いほど各車両の選択確率が同じ値に近づき、1に近いほど各車両の選択確率が遵守度に近づく。
【0182】
このようなロジットモデルを用いることで、遵守度の高い車両ほど高い選択確率を与えることができる。その結果、遵守度が高い車両が選択されやすくなる。ただし、確率的に選択されるので、第2の実施の形態の方式と違い、遵守度が低い車両でも選択される可能性がある。
【0183】
なお、各車両を確率的に選択すると、渋滞予測経路を通過予定のすべての車両に対して選択するか否かの判断を行った後でも、移動台数の期待値が目標移動台数を超えることができない場合があり得る。この場合は、最初の車両から選択処理をやり直すことで、期待値が目標移動台数を超えるまで車両が選択される。ただし、全車両を選択しても期待値が目標移動台数に達しない場合があり得る。このような場合、選択処理を繰り返し実行しても、期待値が目標移動台数に達しない。そこで、例えば最初の車両から選択処理をやり直す繰り返し回数を、所定回数に制限する。
【0184】
第4の実施の形態のシステム構成は、図2に示された第2の実施の形態のシステム構成と同様である。また第4の実施の形態のセンタ装置と車載機とは、それぞれ図5に示された第2の実施の形態のセンタ装置100と車載機200と同じ要素を有する。そこで、図5に示した各装置および要素を用いて第4の実施の形態の処理について以下に説明する。
【0185】
第4の実施の形態における第2の実施の形態との相違点は、通知車両選択処理のみである。
図21は、第4の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図21に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0186】
[ステップS101]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。この処理の詳細は、図10に示したステップS51と同様である。
【0187】
[ステップS102]車両選択部150は、取得した遵守度を用いて、式(10)に示すロジットモデルの分母を計算する。
[ステップS103]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の高い順にソートする。
【0188】
[ステップS104]車両選択部150は、変数i=1に初期化する。なお車両選択部150は、変数iの初期化を行うごとに初期化回数をカウントアップする。
[ステップS105]車両選択部150は、i番目の車両が通知対象として選択済みか否かを判断する。例えば車両選択部150は、遵守度記憶部130内の遵守度管理テーブル131に登録されたi番目のレコードを参照する。車両選択部150は、参照したレコードに選択フラグが設定されていれば、選択済みであると判断する。車両選択部150は、選択済みであれば、処理をステップS111に進める。車両選択部150は、未選択であれば、処理をステップS106に進める。
【0189】
なお、各車両を選択するか否かの判定の1サイクル目では、ステップS105の判定は必ず「NO」となる。iが渋滞予測経路を通過予定の車両数を超え、iが1に戻された後は、既に選択されている車両が存在するため、ステップS105の判定で「YES」となる場合がある。
【0190】
[ステップS106]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。
[ステップS107]車両選択部150は、取得した遵守度に応じた選択確率で、i番目の車両を選択候補にするか否かを判定する。具体的には、車両選択部150は、取得した遵守度に基づいて、式(10)に示したロジットモデルの分子を計算し、計算結果をステップS102で計算した分母の値で除算する。車両選択部150は、除算結果を選択確率piとする。さらに車両選択部150は、0.0〜1.0の小数点第一位までの数値の一様乱数ρを生成する。一様乱数とは、すべての値の出現確率が等しい乱数である。車両選択部150は、生成した一様乱数ρが、計算した選択確率より小さければ(ρ<pi)、i番目の車両を選択候補にすると判定する。車両選択部150は、i番目の車両を選択候補にする場合、処理をステップS108に進める。車両選択部150は、i番目の車両を選択しない場合、処理をステップS111に進める。
【0191】
[ステップS108]車両選択部150は、移動台数の期待値Eを更新する。例えば、車両選択部150は、期待値Eの初期値を0とし、ステップS107において車両が選択候補と判定されるごとに、その車両の遵守度を期待値Eに加算する。
【0192】
[ステップS109]車両選択部150は、i番目の車両を、通知対象として選択する。例えば車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の選択フラグの欄に、「選択」を示す情報を設定する。また車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の誘導経路の欄に、現在選択されている受け入れ可能経路を設定する。
【0193】
[ステップS110]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上の場合(E≧n)、通知車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満であれば(E<n)、処理をステップS111に進める。
【0194】
[ステップS111]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS112]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、処理をステップS113に進める。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS105に進める。
【0195】
[ステップS113]車両選択部150は、ステップS104による変数iの初期化回数が、予め設定された所定回数に達しているか否かを判断する。車両選択部150は、初期化回数が所定回数に達していれば、車両選択処理を終了する。車両選択部150は、初期化回数が所定回数に達していなければ、処理をステップS105に進める。
【0196】
このようにして選択された車両が誘導経路の通知対象となる。第4の実施の形態ではロジットモデルによって確率的に車両を選択するため、遵守度が高い車両が必ず優先的に選択されるとは限らない。
【0197】
図22は、ロジットモデルを用いた選択により選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。図22の例では、上位から2つの車両は選択されているが、3番目の車両は選択されていない。その一方で、4番目の車両は選択されている。
【0198】
このように、ロジットモデルを用いたことで、上位から非連続の車両が選択される。その結果、同じ車両ばかりが選択されることを抑制できる。
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態は、センタ装置側で遵守度を計算するようにしたものである。
【0199】
図23は、第5の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置300は、地図データ記憶部310、経路情報記憶部320、誘導経路決定部330、車両選択部340、および複数の遵守度管理部350,350a,350b,・・・を有している。このうち地図データ記憶部310、経路情報記憶部320、および誘導経路決定部330の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0200】
車両選択部340は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。この際、車両選択部340は、各車両の遵守度を、車両ごとの遵守度管理部350,350a,350b,・・・から取得する点が第2の実施の形態と異なる。各車両の遵守度を用いた車両の選択手順は、第2の実施の形態と同様である。
【0201】
複数の遵守度管理部350,350a,350b,・・・は、それぞれ車両に対応付けられている。例えば遵守度管理部350は、車載機400が搭載された車両に対応付けられている。
【0202】
遵守度管理部350は、走行経路取得部351、経路比較部352、遵守度計算部353、および遵守度記憶部354を有している。
走行経路取得部351は、誘導経路を送信した車両の車載機400から、誘導対象区間内の走行経路を取得する。走行経路取得部351は、取得した走行経路を経路比較部352に渡す。
【0203】
経路比較部352は、誘導経路決定部330から誘導対象区間で車両を誘導する際の誘導経路を取得する。そして経路比較部352は、取得した誘導経路と、車載機400から取得した走行経路とを比較し、一致度を計算する。一致度は、例えば第2の実施の形態と同様に、式(7)によって計算される。
【0204】
遵守度計算部353は、経路比較部352による比較結果に基づいて、遵守度を計算する。遵守度は、例えば第2の実施の形態と同様に、式(8)によって計算される。遵守度計算部353は、計算した遵守度を、遵守度管理部350に対応する車両の車両IDに対応付けて、遵守度記憶部354に格納する。
【0205】
遵守度記憶部354は、対応する車両の車両IDと、その車両の遵守度との組を記憶する。例えば、センタ装置300内のRAMまたはHDDの記憶領域の一部が遵守度記憶部354として使用される。
【0206】
車載機400は、地図データ記憶部410、経路案内部420、走行予定経路送信部430、誘導経路取得部440、表示制御部450、走行経路記録部460、および走行経路送信部470を有する。このうち地図データ記憶部410、経路案内部420、走行予定経路送信部430、誘導経路取得部440、および表示制御部450の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0207】
走行経路記録部460は、誘導対象区間内における車両の走行経路を示す走行経路情報をRAMなどの記録媒体に記録する。そして、走行経路記録部460は、誘導対象区間の終端点に達すると、記録した走行経路情報を走行経路送信部470に渡す。
【0208】
走行経路送信部470は、走行経路記録部460から受け取った走行経路情報をセンタ装置300に送信する。
このようなシステムによれば、誘導経路の通知を受けた車両の車載機400では、誘導経路が画面表示されると共に、誘導対象区間の開始点から終端点までの走行経路が記録される。そして車両が誘導対象区間の終端点に到達すると、走行経路送信部470により、車載機400からセンタ装置300へ走行経路情報が送信される。
【0209】
センタ装置300では、走行経路取得部351により走行経路情報が取得される。取得された走行経路情報は経路比較部352に渡され、誘導経路との一致度が計算される。次に、計算された一致度に基づいて、遵守度計算部353により遵守度が計算され、計算された遵守度が遵守度記憶部354に格納される。このような遵守度の計算および格納処理は、車両に対応する遵守度管理部350,350a,350b,・・・それぞれで実行され、誘導経路を通知したすべての車両の遵守度が計算される。
【0210】
センタ装置300では、車両の遵守度を内部で管理している。そのため、車両選択部340が誘導経路を通知する際の通知対象車両を選択する際には、車両選択部340では、遵守度管理部350,350a,350b,・・・それぞれから遵守度が取得され、車両の選択処理を行われる。
【0211】
このように第5の実施の形態では、車両の遵守度の管理をセンタ装置300で行うようにしている。これにより、車載機400側の負荷の軽減や消費電力の削減が可能となる。
〔第6の実施の形態〕
第6の実施の形態は、運転手ごとの遵守度を計算し、各車両を運転している運転手の遵守度をその時点での車両の遵守度とみなし、誘導経路を通知する車両を選択するものである。
【0212】
図24は、第6の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置500は、地図データ記憶部510、経路情報記憶部520、遵守度記憶部530、誘導経路決定部540、および車両選択部550を有する。このうち地図データ記憶部510、経路情報記憶部520、および誘導経路決定部540の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0213】
遵守度記憶部530は、各車両から取得された運転手ごとの遵守度を記憶する。例えばセンタ装置500のRAMまたはHDDの記憶領域の一部が遵守度記憶部530として使用される。
【0214】
車両選択部550は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。例えば車両選択部550は、誘導に従わない車両が存在することを想定した上で、移動目標台数分の車両が渋滞予測経路から誘導経路へ走行経路を変更するように、誘導する車両を選択する。車両の選択は、各車両を運転している運転手の遵守度に基づいて行われる。遵守度は、過去の誘導に対して、各運転手がどの程度従ったのかを示す指標である。各運転手の遵守度は、その運転手が運転する車両に搭載された車載機から取得することができる。例えば車両選択部550は、車載機に対して遵守度取得要求を送信する。すると車載機600からセンタ装置500へ、その車載機を搭載する車両をその時点で運転している運転手の遵守度が送信される。車両選択部550は、取得した各運転手の遵守度を、遵守度記憶部530に格納する。
【0215】
車両選択部550は、遵守度が「0.5」の運転手が運転する車両を誘導した場合、50%の確率で誘導に従うと判断する。すると遵守度が50%の運転手が運転する2台の車両を誘導した場合に、1台の車両が誘導経路へ経路を変更するものと期待できる。車両選択部550は、選択した車両を運転する運転手の遵守度に基づいて、誘導に従って経路を変更する車両数の期待値を計算し、期待値が移動目標台数に達するまで車両の選択を繰り返す。そして車両選択部550は、選択した車両の車載機に対して、誘導経路への経路変更を促す誘導経路情報を送信する。
【0216】
車載機600は、地図データ記憶部611、遵守度記憶部612、経路案内部620、走行予定経路送信部630、誘導経路取得部640、表示制御部650、走行経路記録部660、経路比較部670、遵守度計算部680、運転手特定部681、および遵守度送信部690を有している。このうち地図データ記憶部611、経路案内部620、走行予定経路送信部630、誘導経路取得部640、表示制御部650、走行経路記録部660、および経路比較部670の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0217】
遵守度記憶部612は、車載機600を搭載する車両を運転したことのある運転手の現在の遵守度を記憶する。例えば、RAMまたはHDDの記憶領域の一部が、遵守度記憶部612として使用される。
【0218】
遵守度計算部680は、経路比較部670による比較結果に基づいて、現在運転している運転手の遵守度を計算する。例えば、遵守度計算部680は、運転手特定部681から、現在運転している運転手の識別子(運転手ID)を取得する。そして遵守度計算部680は、経路比較部670による最新の比較結果に基づいて、現在運転している運転手に対して前回計算した遵守度を更新し、現在運転している運転手の現在の遵守度とする。遵守度計算部680は、計算した遵守度を、遵守度記憶部212に格納する。なお遵守度は、第2の実施の形態に示した式(8)と同様の計算式で計算できる。遵守度計算部680は、計算した遵守度を、運転手IDに対応付けて遵守度記憶部612に格納する。
【0219】
運転手特定部681は、車載機600が搭載されている車両を運転している運転手を特定する。そして運転手特定部681は、特定した運転手を一意に示す運転手IDを、遵守度計算部680と遵守度送信部690とに渡す。
【0220】
例えば運転手特定部681は、運転手が車両を運転する際にキーを鍵穴に差し込むと、キーの識別子(キーID)をキーから読み取る。例えば、キーにRFID(Radio Frequency IDentification)タグが内蔵されている場合が考えられる。この場合、運転手特定部681にRFIDリーダを内蔵しておく。そして運転手特定部681は、鍵穴に差し込まれたキー内のRFIDからキーIDを読み取る。車両を運転する可能性がある運転手が、それぞれ個別のキーを所持していれば、各運転手が所持するキーのキーIDをその運転手の運転手IDとすることができる。
【0221】
また、運転手の運転免許証に、その運転手の運転手IDが書き込まれたRFIDタグが内蔵されている場合も考えられる。この場合、運転手特定部681は、運転手が所持する運転免許証から運転手IDを読み取り、その運転手IDを遵守度計算部680に渡す。このとき、運転手特定部681は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)と連携し、運転手IDの読み取りが完了するまで車両のエンジンまたはモータが始動しないようにすることもできる。
【0222】
遵守度送信部690は、遵守度記憶部612に格納されている運転手の遵守度を、センタ装置500に送信する。例えば遵守度送信部690は、センタ装置500からの要求に応じて、現在車両を運転している運転手の運転手IDに対応する遵守度を遵守度記憶部612から取得する。そして、遵守度送信部690は、運転手ID、車両ID、および遵守度の組をセンタ装置500に送信する。
【0223】
図25は、第6の実施の形態のセンタ装置の遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。遵守度記憶部530には、遵守度管理テーブル531が格納されている。遵守度管理テーブル531には、運転手ID、車両ID、走行予定経路、遵守度、選択フラグ、および誘導経路の欄が設けられている。ここで車両ID以外の欄には、図7に示す第2の実施の形態の遵守度管理テーブル131における同名の欄と同種の情報が設定される。
【0224】
運転手IDの欄には、誘導対象区間を所定時間内に走行予定の車両を運転する運転手の識別子(運転手ID)が設定される。
なお図25の例では、運転手ごとの遵守度であることを示すために遵守度管理テーブル531に運転手IDの欄が設けられているが、センタ装置500側では運転手IDを保持していなくてもよい。すなわち、運転手と遵守度との対応関係は、車載機600において管理していればよい。センタ装置500では、経路誘導実行時点での車両の運転手の遵守度を車載機600から取得することができれば、取得した遵守度に基づいて適切な経路誘導が可能である。
【0225】
このようなシステムによれば、センタ装置500で誘導対象区間内の1つの経路で渋滞の発生が予測されると、車両選択部550により、渋滞予測経路を走行予定の車両を運転している運転手の遵守度に基づいて、誘導経路情報を通知する対象の車両が選択される。そして車両選択部550により、選択された車両に誘導経路情報が送信される。
【0226】
車載機600では、誘導経路情報が通知され誘導対象区間を走行すると、遵守度計算部680によって、そのとき車両を運転している運転手の遵守度が計算され、遵守度記憶部612に格納される。
【0227】
このように運転手の遵守度に基づいて誘導情報の通知対象の車両を選択することで、1台の車両を複数の運転手が共用する場合においても、適切な誘導が可能となる。すなわち、遵守度は、運転手個人の資質に依存する。そのため複数の運転手で共用する車両の場合、運転手が異なれば誘導に従う度合いも異なるものと考えられる。第6の実施の形態のように、車載機600で運転手を特定し、運転手ごとの遵守度を管理するようにしたことで、運転手の遵守度に応じた車両の選択が可能となる。その結果、より正確に、目標移動台数分の車両を、渋滞予測経路から移動経路へ移動させることが可能となる。
【0228】
〔その他の実施の形態〕
上記の実施の形態では、誘導対象区間が1つしか設けられていないが、複数の誘導対象区間を設けることもできる。その場合、誘導対象区間ごとに、個別に車両の誘導が行われる。複数の誘導対象区間を設けた場合、誘導対象区間の重複があってもよい。
【0229】
また、センタ装置と車載機との間の通信は、光ビーコンを介して行うこともできる。光ビーコンは、走行車両の車載機との双方向通信機能と車両感知機能を併せ持つ装置である。光ビーコンは、道路の上方に設置され、下を走行する車両の車載機と、近赤外線を用いて通信を行う。
【0230】
なお、上記の各実施の形態に記載した処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、センタ装置または車載機が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disc)などがある。
【0231】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0232】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0233】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0234】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0235】
以上の実施の形態に開示された技術には、以下の付記に示す技術が含まれる。
(付記1) コンピュータにおいて、
複数の車両から走行予定経路を取得する取得手段と、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する選択手段と、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する通知手段と、
を有するコンピュータ。
【0236】
(付記2) 取得した前記走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する特定手段をさらに有し、
前記選択手段は、特定された前記経路を前記第1の経路とすることを特徴とする付記1記載のコンピュータ。
【0237】
(付記3) 前記特定手段は、前記第1の経路の許容量と、前記第1の経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数との差分を計算し、
前記選択手段は、前記差分を前記所定の値とすることを特徴とする付記2記載のコンピュータ。
【0238】
(付記4) 前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれを、前記遵守度に応じた確率で選択することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【0239】
(付記5) 前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれに対して乱数を生成し、前記遵守度よりも小さな値の乱数が生成された車両を選択することを特徴とする付記4記載のコンピュータ。
【0240】
(付記6) 前記選択手段は、選択した車両の遵守度の合計を前記期待値とすることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載のコンピュータ。
(付記7) 前記選択手段は、前記遵守度が高い車両から順に選択することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【0241】
(付記8) 前記取得手段は、前記第1の経路を走行予定の車両から、該車両の遵守度を取得することを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載のコンピュータ。
(付記9) 前記取得手段は、前記選択された車両から、前記第2の経路の開始点から終端点までの該車両の走行経路を取得し、
車両から取得した前記走行経路と、通知した前記第2の経路との一致度に基づいて、該車両の遵守度を計算する計算手段をさらに有することを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載のコンピュータ。
【0242】
(付記10) 車両に搭載して使用される車載機において、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する記憶手段と、
前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信する送信手段と、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する表示手段と、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する更新手段と、
を有する車載機。
【0243】
(付記11) 前記更新手段は、前記他の経路の開始点から終端点までの前記車両の走行経路と、前記他の経路との一致度に基づいて、前記車両の遵守度を計算することを特徴とする付記10記載の車載機。
【0244】
(付記12) 前記車両を運転している運転手を特定する特定手段をさらに有し、
前記記憶手段は、運転手ごとの遵守度を記憶し、
前記送信手段は、前記特定された運転手の遵守度を前記他のコンピュータに送信する、
ことを特徴とする付記10または11のいずれかに記載の車載機。
【0245】
(付記13) コンピュータが、
複数の車両から走行予定経路を取得し、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択し、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路を通知する、
ことを特徴とする経路通知方法。
【0246】
(付記14) 車両に搭載して使用される車載機による経路表示方法において、
前記車載機が、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶手段から取得し、前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信し、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示し、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する、
ことを特徴とする経路表示方法。
【符号の説明】
【0247】
1 サーバ
1a 取得手段
1b 特定手段
1c 選択手段
1d 通知手段
2 車載機
2a 記憶手段
2b 送信手段
2c 表示手段
2d 更新手段
3,3a,3b,3c,3d,・・・ 車両
4 走行予定経路
5 遵守度
6 誘導経路
7 表示画面
【技術分野】
【0001】
本発明は動的に経路を案内するためのコンピュータ、車載機、経路通知方法、および経路表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通の円滑化のための一施策として、交通状況に応じて経路を案内する動的経路誘導が提案されている。動的経路誘導方式では、個々の車両に対する通知によって、目的地に至る特定道路に車両が集中しないよう複数の経路に交通量を分配する。これにより、道路ネットワーク全体の交通を円滑化が可能となる。
【0003】
このような交通量の分配を行うために、例えば経路毎の誘導可能車両数を算出し最適な誘導比率を決定する技術がある。また、指示した走行経路に対する忠実度に対応した還元コストを算出し、還元コストに対応するポイントを車両あるいは運転者に付与する技術も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194984号公報
【特許文献2】特開2004−77240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポイントを付与したとしても、誘導に従わない運転手が依然として存在する。従来、誘導経路を通知したにも関わらず誘導経路を走行しない車両があると、意図した通りの交通量の分配が行われず、適切な交通の円滑化が図れなかった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、通知した誘導経路を走行しない車両が存在しても適切な交通の円滑化が可能なコンピュータ、車載機、経路通知方法、および経路表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、取得手段、選択手段、および通知手段を有するコンピュータが提供される。取得手段は、複数の車両から走行予定経路を取得する。選択手段は、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。通知手段は、選択した車両に対して、第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、車両に搭載して使用される車載機において、記憶手段、送信手段、表示手段、および更新手段を有する車載機が提供される。記憶手段は、過去に通知された経路通りに車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する。送信手段は、車両の走行予定経路と遵守度とをコンピュータへ送信する。表示手段は、コンピュータから、走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する。更新手段は、他の経路と、開始点から終端点までの車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する。
【0009】
また、上記コンピュータと同様の処理を実行する経路通知方法が提供される。さらに、上記車載機と同様の処理を実行する経路表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
誘導に従わない車両が存在しても適切な交通の円滑化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係るシステムの機能構成例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。
【図3】センタ装置のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図4】車載機のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図6】経路情報記憶部内のデータ構造例を示す図である。
【図7】遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態における経路誘導のセンタ装置側の処理を示すフローチャートである。
【図9】経路間の目標移動台数決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第1の経路誘導例を示す図である。
【図14】誘導経路表示画面の一例を示す図である。
【図15】誘導対象区間内の期待される通行状況を示す図である。
【図16】第2の経路誘導例を示す図である。
【図17】第3の実施の形態のセンタ装置側の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第3の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】偽推奨経路表示画面の一例を示す図である。
【図21】第4の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図22】ロジットモデルを用いた選択により選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。
【図23】第5の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図24】第6の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。
【図25】第6の実施の形態のセンタ装置の遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数を組み合わせて実施しても構わない。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るシステムの機能構成例を示す図である。第1の実施の形態に係るシステムは、コンピュータ1と車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に搭載して使用される車載機2とを有する。なお、図1では、1台の車両3の車載機2の機能を示しているが、他の車両3a,3b,3c,3d,・・・にも、車載機2と同様の機能を有する車載機が搭載されている。
【0013】
コンピュータ1は、取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dを有する。
取得手段1aは、複数の車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から走行予定経路を取得する。例えば取得手段1aは、光ビーコンや無線基地局を介して車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に搭載された車載機と通信し、車載機から走行予定経路4を取得する。走行予定経路4は、例えば車両が走行する予定の道路の識別情報の配列である。また取得手段1aは、各車両から、過去に通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度5を取得することもできる。
【0014】
特定手段1bは、取得した走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する。例えば特定手段1bには、予め誘導対象区間が定められている。誘導対象区間は、開始点Oと終端点Dとの位置座標(例えば緯度と経度)で定義される。特定手段1bは、誘導対象区間の開始点Oから終端点Dに至るまでの複数の経路に関して、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えているか否かを判断する。なお許容量は、例えば渋滞を発生させずに走行可能な、単位時間当たりの最大の車両数である。そして特定手段1bは、誘導対象区間に対応する経路の中から、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する。
【0015】
また特定手段1bは、特定した経路から他の経路へ移動させる車両の台数を示す目標移動台数を算出してもよい。目標移動台数は、例えば、特定された経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数から、その経路の許容量を減算した値を、目標移動台数とする。
【0016】
選択手段1cは、第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算する。そして選択手段1cは、期待値が所定の値に近づくように、第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する。なお、第1の経路は、例えば特定手段1bによって特定された経路である。遵守度は、例えば複数の車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から取得できる。また選択手段1cは、経路を通知した車両から、通知後の走行経路を取得し、通知した経路と走行経路とから、その車両の遵守度を計算することもできる。期待値は、例えば、選択した車両の遵守度の合計である。選択手段1cは、例えば、期待値が目標移動台数を超えるまで、遵守度が高い順に1台ずつ車両を選択する。選択手段1cは、例えば、次の1台の車両を選択すると期待値が目標移動台数を超えてしまう場合、車両の選択を終了する。
【0017】
通知手段1dは、選択した車両に対して、特定された経路と同じ開始点Oおよび終端点Dを有する第2の経路(誘導経路6)を通知する。例えば通知手段1dは、特定手段1bによって、単位時間当たりの走行予定の車両台数が許容量に満たないと判定された経路を、誘導経路6とする。誘導経路6は、例えば車両を誘導する道路の識別情報の配列である。
【0018】
車載機2は、記憶手段2a、送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dを有する。
記憶手段2aは、過去に通知された経路通りに車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する。例えば遵守度は、0以上1以下の実数で表される。また記憶手段2aは、例えば走行予定経路を記憶することもできる。走行予定経路は、例えば車両3の目的地に応じてカーナビゲーションシステムが算出した経路である。
【0019】
なお、カーナビゲーションシステムは、車両3に搭載されていてもよいし、カーナビゲーションシステムとして機能するコンピュータに車載機2からアクセスできるようになっていてもよい。コンピュータのカーナビゲーションシステムを利用する場合、例えば車載機2がコンピュータに現在地と目的地とを送信する。するとコンピュータから目的地までの最適な経路情報が送信される。車載機2は、コンピュータから送られた経路情報を、走行予定経路として記憶手段2aに格納する。なお、記憶手段2aは、例えば、車載機2に実装されたフラッシュメモリなどの記録媒体である。
【0020】
送信手段2bは、車両3の走行予定経路4と遵守度5とをコンピュータ1へ送信する。例えば送信手段2bは、コンピュータ1からの要求に応じて、走行予定経路4と遵守度5とを送信する。
【0021】
表示手段2cは、コンピュータ1から、走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点Oおよび終端点Dを有する他の経路(誘導経路6)が通知された場合、通知された誘導経路6を表示する。誘導経路6を表示する表示画面7には、例えば、車両3の走行予定経路から誘導経路6への経路変更を促す情報が表示される。
【0022】
更新手段2dは、誘導経路6と、開始点Oから終端点Dまでの車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する。走行経路は、例えば開始点Oから終端点Dまでに車両が走行した道路の識別情報の配列である。例えば更新手段2dは、車両3が、コンピュータ1から通知された誘導経路6の終端点に達すると、終端点に至るまでの車両の走行経路と、通知された誘導経路6とを比較し、一致度を求める。例えば誘導経路6に含まれる道路の識別情報のうち、走行経路に含まれている割合が、一致度とされる。更新手段2dは、一致度が記憶手段2aに格納された遵守度よりも大きければ、例えば現在の遵守度の値を増加させる。また、更新手段2dは、一致度が記憶手段2aに格納された遵守度よりも小さければ、例えば現在の遵守度の値を減少させる。
【0023】
このようなシステムによれば、通知した誘導経路に従って走行しない車両があっても、渋滞の発生が予測される経路の交通量が許容量を超えるのを抑止できる。例えば図1には、開始点Oから終端点Dまでの区間を誘導対象区間として、車両の誘導を行う場合の例が示されている。誘導対象区間には、経路Aと経路Bとの2つの経路が存在する。このとき、コンピュータ1では、取得手段1aにより、所定期間(例えば10分)内に開始点Oに到達可能な範囲の各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・から走行予定経路が取得される。例えば取得手段1aは、各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・に対して走行予定経路を要求する。すると各車両3,3a,3b,3c,3d,・・・の車載機が、走行予定経路をコンピュータ1に送信する。例えば車両3の送信手段2bは、記憶手段2aから走行予定経路を取得し、コンピュータ1に送信する。
【0024】
すると特定手段1bにより、取得した走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路が特定される。図1の例では、経路Aの許容量は10分当たり100台であるのに対し、経路Aを走行予定経路とする車両数は60台である。また経路Bの許容量は10分当たり100台であるのに対し、経路Bを走行予定経路とする車両数は120台である。この場合、特定手段1bにより、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路として、経路Bが特定される。
【0025】
経路Bでは、今後10分間の走行予定車両数が、許容量を20台分超過している。他方、経路Aは、許容量に対する走行予定車両数は、40台分の余裕がある。そこで、特定手段1bにより、経路Bから経路Aへ誘導する車両の目標移動台数が、20台と決定される。
【0026】
目標移動台数が決定されると、選択手段1cにより、誘導経路の通知対象とする車両が選択される。例えば、選択手段1cは、取得手段1aに、経路Bを走行予定経路としている車両からの遵守度の取得を依頼する。すると取得手段1aは、経路Bを走行予定経路としている各車両に対して、遵守度を要求する。車両3の送信手段2bは、記憶手段2aから遵守度を取得し、コンピュータ1に送信する。取得手段1aは、取得した各車両の遵守度を、選択手段1cに渡す。
【0027】
選択手段1cは、遵守度に基づいて車両を選択する。例えば、遵守度が高い順に車両が選択される。このとき、選択手段1cは、例えば、車両を選択するごとに、それまでに選択したすべての車両の遵守度の合計値を計算し、計算結果を期待値とする。選択手段1cは、期待値が目標移動台数に達すると、車両の選択を終了する。図1の例では、期待値が20に達するまで、車両が選択される。
【0028】
車両が選択されると、通知手段1dにより、選択された車両に対して誘導経路6が通知される。図1の例では、経路Aへの経路変更を促す誘導経路6が通知される。
誘導経路6は、車両3の車載機2で受信される。車載機2では、表示手段2cにより、誘導経路6が表示画面7に表示される。その後、車両3が誘導対象区間を走行し、終端点Dに到達すると、更新手段2dにより、遵守度が更新される。例えば、車両3が経路Aを走行した場合、遵守度が増加する。他方、誘導経路6の通知にも関わらず、車両3が経路Bを走行した場合、遵守度が減少する。更新された遵守度は、更新手段2dにより記憶手段2aに格納される。
【0029】
このように、第1の実施の形態では、コンピュータ1により、遵守度により求められた期待値が目標移動台数となるように車両が選択される。そしてコンピュータ1から選択された車両に誘導経路6が通知される。これにより、目標移動台数分の車両について、所定の経路から他の経路へ誘導することができる。その結果、所定の経路を走行する車両数を、適切な数に抑制することができる。すなわち、指示に従わない車両が存在しても、所定の経路を走行する車両数の適切な抑制が可能となる。その結果、交通の円滑化を実現しやすくなる。
【0030】
なお上記の説明では、道路の識別情報の配列で、走行予定経路、誘導経路、および走行経路を示す例を示しているが、その他の方法で走行予定経路、誘導経路、および走行経路を示してもよい。例えば、走行予定経路、誘導経路、および走行経路を、所定間隔での位置情報(緯度、経度)によって示すことも可能である。
【0031】
なおコンピュータ1の取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dは、コンピュータ1のCPU(Central Processing Unit)の演算処理により実現される。取得手段1a、特定手段1b、選択手段1c、および通知手段1dが処理する情報は、コンピュータ1のメモリなどの記憶装置に格納される。
【0032】
また車載機2の送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dは、車載機2のCPUの演算処理により実現される。送信手段2b、表示手段2c、および更新手段2dが処理する情報は、車載機2のメモリなどの記憶装置に格納される。記憶手段2aは、車載機2のメモリなどの記憶装置で実現される。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、自動車のカーナビゲーションシステムを用いて、センタ側からの経路案内を行うものである。なお、以下の説明では、車両の経路誘導を行うセンタに配置されたコンピュータをセンタ装置と呼ぶこととする。
【0034】
図2は、第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。第2の実施の形態では、ネットワーク10を介してセンタ装置100と複数の基地局21,22とが接続されている。各車両31〜33は、いずれかの基地局21,22と通信可能な範囲を走行している。基地局21,22は、車両31〜33に搭載されている車載機200,200a,200bと無線による通信を行う。車両31〜33に搭載されている車載機200,200a,200bは、基地局21,22を介して、センタ装置100との間で情報通信を行う。
【0035】
次に、センタ装置100と車載機200とのハードウェア構成について説明する。
図3は、センタ装置のハードウェアの一構成例を示す図である。センタ装置100は、CPU101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器が接続されている。
【0036】
RAM102は、センタ装置100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0037】
バス108に接続されている周辺機器としては、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、および通信インタフェース107がある。
【0038】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、センタ装置100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0039】
グラフィック処理装置104には、モニタ11が接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令に従って、画像をモニタ11の画面に表示させる。モニタ11としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0040】
入力インタフェース105には、キーボード12とマウス13とが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード12やマウス13から送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス13は、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0041】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク14に記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク14は、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク14には、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
【0042】
通信インタフェース107は、ネットワーク10に接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク10を介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行う。
【0043】
なお第1の実施の形態で示したコンピュータ1も、図3のセンタ装置100と同様のハードウェアで実現することができる。すなわち第1の実施の形態におけるコンピュータ1の機能は、CPU101の演算処理によって実現できる。
【0044】
図4は、車載機のハードウェアの一構成例を示す図である。車載機200は、カーナビゲーションシステムとしての機能を有している。車載機200は、制御回路201、ディスプレイユニット202、無線通信回路203、GPS(Global Positioning System)情報受信回路204、アンプ205、スピーカ206、およびHDD207を有している。
【0045】
制御回路201は、車載機200全体を制御する。制御回路201は、CPU201a、RAM201b、およびROM201cを有している。ROM201cは、フラッシュメモリなどの不揮発性の書き換え可能な大容量記憶媒体であり、各種プログラムおよび各種データを格納する。また、RAM201bは、CPU201aが実行するプログラムや、プログラムの実行に利用されるデータを一時的に格納する。CPU201aは、ROM201cから各プログラムおよび各データを読み出すことにより、これらプログラムに従った処理を実行する。
【0046】
ディスプレイユニット202は、制御回路201から送られた画像データを表示する。ディスプレイユニット202は、タッチパネル式ディスプレイ202aや操作ボタン202bを有している。タッチパネル式ディスプレイ202aは、例えば、表面にタッチパネルが設けられた液晶表示装置である。ディスプレイユニット202は、制御回路201から送られた画像データに基づく画像を、タッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。またディスプレイユニット202は、タッチパネル式ディスプレイ202aのタッチパネルが押されると、押された位置を示す情報を制御回路201に対して出力する。さらにディスプレイユニット202は、操作ボタン202bが押されると、押された操作ボタンに対応する信号を制御回路201に送信する。
【0047】
無線通信回路203は、通信アンテナ41に接続されている。無線通信回路203は、制御回路201から出力された情報を、通信アンテナ41を介して基地局21,22に無線通信により送信する。また無線通信回路203は、基地局21,22から車載機200宛に送信された情報を通信アンテナ41を介して受信し、制御回路201に出力する。
【0048】
GPS情報受信回路204は、GPSアンテナ42に接続されている。GPS情報受信回路204は、GPSアンテナ42を介してGPS衛星からの電波の信号を受信する。GPS情報受信回路204は、受信した信号を制御回路201へ出力する。なお、GPSは、地球を周回する多数のGPS衛星のうち少なくとも3つ以上の衛星からの電波に基づいて車両の位置を測位するシステムである。制御回路201は、複数のGPS衛星の電波の信号を解析して、車両31の現在位置を判断する。
【0049】
アンプ205は、スピーカ206に接続されている。アンプ205は、制御回路201から送られる音声信号を増幅してスピーカ206に出力する。
HDD207は、地図データなどの各種データを記憶する。制御回路201は、HDD207に格納された地図データに基づいて、目的地までの経路を判断する。
【0050】
なお第1の実施の形態で示した車載機2も、図4の車載機200と同様のハードウェアで実現することができる。すなわち第1の実施の形態における車載機2の機能は、CPU201aの演算処理によって実現できる。
【0051】
以上のようなハードウェア構成によって、センタ装置100と車載機200に必要な処理機能を実現することができる。
図5は、第2の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置100は、地図データ記憶部110、経路情報記憶部120、遵守度記憶部130、誘導経路決定部140、および車両選択部150を有している。
【0052】
地図データ記憶部110は、車両が通行可能な道路地図を示す地図データを記憶する。例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、地図データ記憶部110として使用される。
【0053】
経路情報記憶部120は、誘導対象区間、その誘導対象区間内の経路、および誘導対象区間を走行する予定の各車両の走行予定経路を記憶する。例えば経路情報記憶部120には、予め誘導対象区間、その誘導対象区間内の経路が設定される。そして予め設定された誘導対象区間の開始点から所定の距離内の車両の走行予定経路が、定期的に経路情報記憶部120に記憶される。また例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、経路情報記憶部120として使用される。
【0054】
遵守度記憶部130は、所定の車両の遵守度を記憶する。例えば、誘導対象区間内で渋滞が予想される経路を走行予定の車両の遵守度が、遵守度記憶部130に記憶される。また例えば、RAM102またはHDD103の記憶領域の一部が、遵守度記憶部130として使用される。
【0055】
誘導経路決定部140は、誘導対象区間の経路のうち、渋滞予測経路と誘導経路とを決定する。渋滞予測経路は、渋滞の発生が予想される経路である。誘導経路は、渋滞の発生が予想されていない経路である。例えば誘導経路決定部140は、誘導対象区間付近の車両に搭載された車載機から、走行予定経路を取得する。誘導経路決定部140には、例えば、開始点の位置と終了点の位置とにより誘導対象区間が定義されている。誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点の位置から所定の距離内に設置された基地局を介して、その基地局が通信可能な範囲内の車両の車載機から、走行予定経路を示す経路情報を取得する。誘導経路決定部140は、取得した走行予定経路を経路情報記憶部120に格納する。
【0056】
次に誘導経路決定部140は、取得した走行予定経路に基づいて、所定期間(例えば、現在から10分以内)に誘導対象区間の開始点に到達し、誘導対象区間内のいずれかの経路を走行予定の車両数を判断する。そして誘導経路決定部140は、所定期間内の通過可能な車両数(許容量)を超えた車両が通過予定の経路を、渋滞予測経路に決定する。また、誘導経路決定部140は、所定期間内の通過可能な車両数未満の車両が通過予定の経路を、誘導経路に決定する。
【0057】
誘導経路決定部140は、渋滞予測経路と誘導経路とが決定すると、各経路の誘導後の走行車両数を決定する。例えば、誘導経路決定部140は、走行予定経路とは別の経路に誘導する車両数を最小限に抑制するように、各経路の誘導後の走行車両数を決定する。そして誘導経路決定部140は、各経路の誘導後の走行車両数とするために、渋滞予測経路から誘導系とへ経路変更させる車両の台数(目標移動台数)を決定する。誘導経路決定部140は、渋滞予測経路、誘導経路、および目標移動台数を示す情報を、車両選択部150に通知する。
【0058】
車両選択部150は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。例えば車両選択部150は、誘導に従わない車両が存在することを想定した上で、移動目標台数分の車両が渋滞予測経路から誘導経路へ走行経路を変更するように、誘導する車両を選択する。車両の選択は、各車両の遵守度に基づいて行われる。遵守度は、過去の誘導に対して、各車両がどの程度従ったのかを示す指標である。各車両の遵守度は、車両に搭載された車載機から取得することができる。例えば車両選択部150は、車載機に対して遵守度取得要求を送信する。すると車載機からセンタ装置100へ、その車載機を搭載する車両の遵守度が送信される。車両選択部150は、取得した各車両の遵守度を、遵守度記憶部130に格納する。
【0059】
車両選択部150は、遵守度が「0.5」の車両を誘導した場合、50%の確率で誘導に従うと判断する。すると遵守度が50%の2台の車両を誘導した場合に、1台の車両が誘導経路へ経路を変更するものと期待できる。車両選択部150は、選択した車両の遵守度に基づいて、誘導に従って経路を変更する車両数の期待値を計算し、期待値が移動目標台数に達するまで車両の選択を繰り返す。そして車両選択部150は、選択した車両の車載機に対して、誘導経路への経路変更を促す誘導経路情報を送信する。
【0060】
車載機200は、地図データ記憶部211、遵守度記憶部212、経路案内部220、走行予定経路送信部230、誘導経路取得部240、表示制御部250、走行経路記録部260、経路比較部270、遵守度計算部280、および遵守度送信部290を有している。
【0061】
地図データ記憶部211は、車両が通行可能な道路地図を示す地図データを記憶する。例えば、RAM201bまたはHDD207の記憶領域の一部が、地図データ記憶部211として使用される。
【0062】
遵守度記憶部212は、車載機200を搭載する車両31の現在の遵守度を記憶する。例えば、RAM201bまたはHDD207の記憶領域の一部が、遵守度記憶部212として使用される。遵守度は、誘導対象区間を通過する際に誘導経路情報の通知を受け取り、車両が誘導対象区間を通過した場合に、遵守度計算部280によって更新される。
【0063】
経路案内部220は、カーナビゲーション機能を有し、車両31の運転者に対する経路案内を行う。例えば経路案内部220は、地図データ記憶部211内の地図データに基づき、操作入力により指定された目的地までの効率的な経路を計算する。そして経路案内部220は、計算した経路を走行予定経路として、運転者に案内する。経路案内は、例えば、タッチパネル式ディスプレイ202aへの経路表示や、スピーカ206を介した音声出力によって行われる。
【0064】
走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。例えば走行予定経路送信部230は、センタ装置100からの要求に応じて、その時点での走行予定経路を経路案内部220から取得し、センタ装置100に送信する。
【0065】
誘導経路取得部240は、センタ装置100が車載機200宛に送信した誘導経路情報を取得する。誘導経路取得部240は取得した誘導経路情報を、表示制御部250、走行経路記録部260、および経路比較部270に渡す。
【0066】
表示制御部250は、タッチパネル式ディスプレイ202aへの画像表示を制御する。例えば表示制御部250は、経路案内部220から走行予定経路を取得し、走行予定経路をタッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。また表示制御部250は、誘導経路取得部240から誘導経路情報を取得し、誘導経路への経路変更指示をタッチパネル式ディスプレイ202aに表示する。
【0067】
走行経路記録部260は、誘導対象区間内における車両31の走行経路を示す走行経路情報をRAM201bなどの記録媒体に記録する。例えば、走行経路記録部260は、GPS情報受信回路204が受信したGPS情報に基づいて、車両の現在位置を計算する。そして走行経路記録部260は、誘導経路情報で示される誘導経路の開始点に車両31が到達すると位置情報のRAM201bへの記録を開始し、誘導経路の終端点に車両31が到達すると位置情報の記録を終了する。走行経路記録部260は、記録した位置情報により車両31の軌跡を生成し、走行経路情報としてRAM201b内に記録する。そして走行経路記録部260は、走行経路情報を経路比較部270に渡す。
【0068】
経路比較部270は、誘導経路取得部240から取得した誘導経路情報と、走行経路記録部260から取得した走行経路情報とを比較する。すなわち、経路比較部270は、誘導経路情報に示される誘導経路と、走行経路情報に示される走行経路との一致する部分と、異なる部分とを判別する。
【0069】
遵守度計算部280は、経路比較部270による比較結果に基づいて、車両31の遵守度を計算する。例えば、遵守度計算部280は、経路比較部270による最新の比較結果に基づいて前回計算した遵守度を更新し、現在の遵守度とする。遵守度計算部280は、計算した遵守度を、遵守度記憶部212に格納する。
【0070】
遵守度送信部290は、遵守度記憶部212に格納されている遵守度を、センタ装置100に送信する。例えば遵守度送信部290は、センタ装置100からの要求に応じて遵守度記憶部212から遵守度を取得する。そして遵守度送信部290は、車両IDと遵守度との組をセンタ装置100に送信する。なお、車両IDは、例えば車載機200のROM201cに予め記録されている。
【0071】
次に、各情報のデータ構造について説明する。なお、地図データ記憶部110,211内の地図データは、既存のカーナビゲーションシステム用の地図データを使用することができるため、具体的なデータ構造の説明は省略する。
【0072】
図6は、経路情報記憶部内のデータ構造例を示す図である。経路情報記憶部120には、誘導対象区間情報121、経路リスト122、および走行予定経路管理テーブル123が格納されている。
【0073】
誘導対象区間情報121には、誘導対象区間の開始点と終端点とが定義されている。図6の例では、開始点と終端点とのそれぞれの緯度と経度とが設定されている。
経路リスト122には、誘導対象区間の開始点から終端点に至ることができる複数の経路が設定されている。経路リスト122には、各経路は、経路名と経路の軌跡を示す経路情報との組を有する。経路情報は、例えば経路上の交差点等の特徴のある地点の位置情報のリストである。
【0074】
走行予定経路管理テーブル123には、車両IDと走行予定経路との欄が設けられている。
車両IDの欄には、車両の識別情報(車両ID)が設定される。車両IDは、例えば、各車両に搭載された車載機に付与されたユニークな情報を用いることができる。
【0075】
走行予定経路の欄には、対応する車両IDで示される車両の、誘導対象区間内での走行予定経路が設定される。図6の例では、誘導対象区間内に「経路A」と「経路B」との2つの経路がある。走行予定経路の欄には、各車両に対して「経路A」と「経路B」とのいずれかの経路が設定されている。
【0076】
なお、走行予定経路管理テーブル123の内容は、所定間隔(例えば10分間隔)で更新される。
図7は、遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。遵守度記憶部130には、遵守度管理テーブル131が格納されている。遵守度管理テーブル131には、車両ID、走行予定経路、遵守度、選択フラグ、および誘導経路の欄が設けられている。
【0077】
車両IDの欄には、遵守度を取得した車両の車両IDが設定される。なお、遵守度は、渋滞が予想される経路を走行予定の車両から取得される。図7には「経路B」において渋滞が予想される場合の例が示されている。
【0078】
走行予定経路の欄には、対応する車両IDで示される車両の走行予定経路が設定される。図7の例では「経路B」を通過する予定の車両から遵守度が取得されているため、すべての車両の走行予定経路は「経路B」となっている。
【0079】
遵守度の欄には、対応する車両IDで示される車両の遵守度が設定される。
選択フラグの欄には、通知対象として選択された車両の車両IDに対応付けて、「選択」を示す情報が設定される。
【0080】
誘導経路の欄には、車両を選択した際の受け入れ可能経路が、選択した車両の誘導経路として設定される。
次に、経路誘導処理の手順について説明する。
【0081】
図8は、第2の実施の形態における経路誘導のセンタ装置側の処理を示すフローチャートである。以下、図8に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS11]誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両から、走行予定経路を取得する。例えば、誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内を管轄する基地局を介して、その基地局から通信可能なすべての車載機に対し、走行予定経路取得要求を送信する。すると、走行予定経路取得要求を受け取った車載機から、走行予定経路が送られてくる。誘導経路決定部140は、取得した各車両の走行予定経路を経路情報記憶部120に格納する。なお、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内の車両台数をN(Nは1以上の整数)とする。
【0082】
[ステップS12]誘導経路決定部140は、各車両の走行予定経路に基づいて、誘導対象区間の開始点と終端点との2地点を結ぶ各経路の走行予定の車両数を算出する。例えば誘導対象区間内に「経路A」と「経路B」とがある場合、誘導経路決定部140は、「経路A」を走行する予定の車両数Na(Naは0以上の整数)と、「経路B」を走行する予定の車両数Nb(Nbは0以上の整数)とを求める。例えば「経路A」を走行する予定の車両数(Na)が100台、「経路B」を走行する予定の車両数(Nb)が200台といった値が算出される。
【0083】
[ステップS13]車両選択部150は、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断する。例えば車両選択部150は、誘導対象区間内の経路数をq(qは、1以上の整数)とする。また車両選択部150は、経路リスト122において上からj番目の経路j(jは、1以上q以下の整数(1≦j≦q))に所定時間(例えば10分)内に流入し、渋滞を発生させずに通過可能な車両数(許容量)をCjとする。さらに車両選択部150は、経路jに所定時間内に流入予定の車両数をNjとする。このとき、以下の式(1)が真か偽かの判定により、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断できる。
【0084】
【数1】
【0085】
式(1)の左辺は、誘導対象区間に所定時間内に流入予定の車両数を表している。式(1)の右辺は、所定時間内に誘導対象区間に流入し、誘導対象区間内のすべての経路で渋滞を発生させずに、誘導対象区間内を通過可能な車両の最大数を表している。式(1)が真であれば、誘導対象区間に所定時間内に流入予定の車両の総数が、誘導対象区間で渋滞を発生させずに通過可能な車両の総数を超えていることとなる。この場合どのように振り分けてもどこかで渋滞が発生するため、車両の振り分けによる渋滞の解消は困難であると判断される。逆に、式(1)が偽であれば、車両の振り分けにより渋滞の解消が可能であると判断される。車両の振り分けによる渋滞の解消は不可能な場合、センタ装置側の処理が終了する。車両の振り分けによる渋滞の解消が可能な場合、車両選択部150は処理をステップS14に進める。
【0086】
[ステップS14]誘導経路決定部140は、経路を誘導する際の渋滞予測経路と受け入れ可能経路とを特定し、これらの経路間の目標移動台数を決定する。渋滞予測経路は、渋滞の発生が予測される経路である。受け入れ可能経路は、渋滞予測経路を走行予定の車両の誘導先の経路として指定可能な経路である。
【0087】
例えば「経路B」が渋滞予測経路、「経路A」が受け入れ可能経路の場合、誘導経路決定部140は、渋滞予測経路を走行予定の車両の削減台数を決定する。例えば「経路B」を走行する予定の車両数(Nb)から、「経路B」を所定時間で走行可能な車両台数NB(NBは0以上の整数)を減算した値が、削減台数とされる。「経路B」を所定時間(10分)で走行可能な車両台数NBが166台(1時間当たり1000台)であれば、削減台数は、「n=Nb−NB=34台」となる。削減台数分の車両を「経路A」が受け入れ可能であれば、削減台数が「経路B」から「経路A」への目標移動台数となる。なお、ステップS14に示す処理の詳細は後述する(図9参照)。
【0088】
[ステップS15]車両選択部150は、1つの渋滞予測経路と1つの受け入れ可能経路との組を選択する。
[ステップS16]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路から選択した受け入れ可能経路への目標移動台数が1以上か否かを判断する。車両選択部150は、目標移動台数が1以上であれば、処理をステップS17に進める。車両選択部150は、目標移動台数が0であれば、処理をステップS18に進める。
【0089】
[ステップS17]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路を走行予定の車両の中から、選択した受け入れ可能経路を誘導経路として通知する対象の車両を選択する。この処理の詳細は後述する(図10参照)。
【0090】
[ステップS18]車両選択部150は、渋滞予測経路と受け入れ可能経路との未選択の組があるか否かを判断する。車両選択部150は、未選択の組があれば、処理をステップS15に進める。車両選択部150は、未選択の組がなければ、処理をステップS19に進める。
【0091】
[ステップS19]車両選択部150は、通知対象として選択された車両に誘導経路を通知する。例えば車両選択部150は、渋滞予測経路である「経路B」を走行予定の車両のうちの選択された車両宛に、受け入れ可能経路である「経路A」の通行を促す情報を送信する。
【0092】
このようにして、選択された車両の誘導が行われる。なお、どの車両が選択されたのかは、遵守度記憶部130内の遵守度管理テーブル131に設定された各車両の選択フラグに基づいて判断できる。
【0093】
次に、経路間の目標移動台数決定処理について詳細に説明する。
図9は、経路間の目標移動台数決定処理の手順を示すフローチャートである。以下、図9の処理をステップ番号に沿って説明する。
【0094】
[ステップS31]車両選択部150は、渋滞予測経路を検出する。例えば車両選択部150は、すべての経路について、「所定時間内に通過予定の車両数(Nj)>通過可能な車両数(Cj)」が真か偽かを判断する。車両選択部150は、経路jについて「Nj>Cj」が真なら番号jを、渋滞予測経路の集合Sに設定する。また車両選択部150は、経路jについて「Nj>Cj」が偽なら番号jを、受け入れ可能経路の集合Tに設定する。集合Sに設定された番号が、渋滞予測経路を表している。
【0095】
[ステップS32]車両選択部150は、集合Sから渋滞予測経路を1つ選択する。例えば車両選択部150は、選択中の経路を示す変数s(sは、1以上の整数)に、集合Sの最初の要素の値を設定する。
【0096】
[ステップS33]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路からの通過予定車両の削減台数を計算する。例えば車両選択部150は、選択した渋滞予測経路(経路s)から他の経路へ移動する車両の台数(削減台数)Msを、「Ms=Ns−Cs」で計算する。すなわち、s番目の経路の通過予定車両数Nsから、s番目の経路の通過可能な車両数Csを減算した値を、削減台数Msとする。
【0097】
[ステップS34]車両選択部150は、集合Tから受け入れ可能経路を1つ選択する。例えば車両選択部150は、選択中の経路を示す変数t(tは、1以上の整数)に、集合Tの最初の要素の値を設定する。
【0098】
[ステップS35]車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路における受け入れ可能台数を計算する。例えば車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路(経路t)が受け入れ可能な車両の台数(受け入れ可能台数Rt)を、「Rt=Ct−Nt」で計算する。すなわち、t番目の経路の通過可能な車両数Ctから、t番目の経路の通過予定車両数Ntを減算した値を、受け入れ可能台数Rtとする。
【0099】
[ステップS36]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路の削減台数分を、選択した受け入れ可能経路で受け入れ可能か否かを判断する。受け入れ可能台数Rtが削減台数Ms以上であれば、受け入れ可能である。例えば車両選択部150は、「Rt≧Ms」の真偽を判断する。「Rt≧Ms」が真であれば、受け入れ可能と判断される。「Rt≧Ms」が偽であれば、受け入れ不可能と判断される。車両選択部150は、受け入れ可能な場合、処理をステップS40に進める。車両選択部150は、受け入れ不可能な場合、処理をステップS37に進める。
【0100】
[ステップS37]ステップS36で受け入れ不可能と判断すると、車両選択部150は、受け入れ可能台数を用いて目標移動台数と削減台数を更新する。具体的には車両選択部150は、経路リスト122におけるs番目の経路からt番目の経路への目標移動台数Ms,tとする。なお、目標移動台数Ms,tの初期値は「0」とする。そして、車両選択部150は、s番目の経路の削減台数Msから、t番目の経路の受け入れ可能台数Rtを減算した値を、s番目の経路のあらたな削減台数Msとする。この処理を式で表すと、以下のようになる。
Ms,t=Rt ・・・(2)
Ms=Ms−Rt ・・・(3)
式(2)、式(3)の”=”の記号は代入演算子であり、右辺の値を、左辺の変数に代入することを意味する。
【0101】
[ステップS38]車両選択部150は、未選択の受け入れ可能経路の1つを選択する。例えば車両選択部150は、集合Tの現在選択している要素の次の要素の値を、選択中の経路を示す変数tに設定する。
【0102】
[ステップS39]車両選択部150は、選択した受け入れ可能経路における受け入れ可能台数を計算する。車両選択部150は、計算した値を、選択した受け入れ可能経路(経路t)の受け入れ可能台数Rtとする。その後、車両選択部150は、処理をステップS36に進める。
【0103】
[ステップS40]ステップS36で受け入れ可能と判断すると、車両選択部150は、削減台数を用いて目標移動台数と受け入れ可能台数を更新する。具体的には車両選択部150は、s番目の経路の削減台数を、s番目の経路からt番目の経路への目標移動台数Ms,tに加算する。そして、車両選択部150は、t番目の経路の受け入れ可能台数Rtから、s番目の経路の削減台数Msを減算した値を、t番目の経路のあらたな受け入れ可能台数Rtとする。この処理を式で表すと、以下のようになる。
Ms,t=Ms ・・・(4)
Rt=Rt−Ms ・・・(5)
式(4)、式(5)の”=”の記号は代入演算子である。
【0104】
[ステップS41]車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路があるか否かを判断する。例えば車両選択部150は、集合Sの先頭から順に要素を選択している場合、集合Sの次の要素があるか否かにより、未選択の渋滞予想経路があるか否かを判断する。集合Sの次の要素があれば、未選択の渋滞予想経路があると判断され、集合Sの次の要素がなければ、未選択の渋滞予想経路がないと判断される。車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路がある場合、処理をステップS42に進める。車両選択部150は、未選択の渋滞予想経路がなければ、経路間の目標移動台数決定処理を終了する。
【0105】
[ステップS42]車両選択部150は、未選択の渋滞予測経路の1つを選択する。例えば車両選択部150は、集合Sの現在選択している要素の次の要素の値を、選択中の経路を示す変数sに設定する。
【0106】
[ステップS43]車両選択部150は、選択した渋滞予測経路の削減台数を計算する。車両選択部150は、計算した値を、選択した渋滞予測経路(経路s)の削減台数Msとする。その後、車両選択部150は、処理をステップS36に進める。
【0107】
このようにして、渋滞が予想される経路それぞれから、他の経路への移動車両数が決定される。
次に、誘導車両選択処理について、詳細に説明する。
【0108】
図10は、第2の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図10に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS51]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。例えば、「経路B」が渋滞予測経路であれば、車両選択部150は、経路情報記憶部120を参照し、走行予定経路が「経路B」となっているすべての車両の車両IDを抽出する。そして、車両選択部150は、抽出した車両IDに対応する車両に搭載された車載機宛に遵守度取得要求を送信する。すると走行予定経路が「経路B」となっているすべての車両の車載機から、対応する車両の遵守度が送り返される。車両選択部150は、取得した各車両の遵守度を、車両IDと走行予定経路とに対応付けて、遵守度管理テーブル131に格納する。
【0109】
[ステップS52]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の高い順にソートする。
[ステップS53]車両選択部150は、変数i=1とする(iは、1以上、渋滞予測経路を通過予定の車両数以下の整数)。渋滞予測経路が「経路B」のみであれば、iは「1≦i≦Nb」の整数である。
【0110】
[ステップS54]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。遵守度Kiは、0以上1以下の実数で表される。車両の遵守度Kiの値が1に近いほど、その車両が誘導に従って走行する可能性が高いことを意味する。
【0111】
[ステップS55]車両選択部150は、ステップS54で取得した遵守度Kiに基づいて、移動台数の期待値Eを更新する。期待値Eは、0以上の実数である。期待値Eは、以下の式(6)で計算される。
【0112】
【数2】
【0113】
式(6)において、mは1以上i以下の整数である。すなわち期待値Eは、1番目からi番目までの車両の遵守度の合計である。
[ステップS56]車両選択部150は、i番目の車両を通知対象として選択する。例えば車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の選択フラグの欄に、「選択」を示す情報を設定する。また車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の誘導経路の欄に、現在選択されている受け入れ可能経路を設定する。
【0114】
[ステップS57]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となった場合(E≧n)、誘導車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満の場合(E<n)、処理をステップS58に進める。
【0115】
[ステップS58]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS59]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、誘導車両選択処理を終了する。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS54に進める。
【0116】
このようにして、期待値Eが目標移動台数となるように、渋滞予測経路を走行予定経路とする車両のうちの一部の車両が、通知対象として選択される。選択された車両は、遵守度記憶部130内で選択フラグで示される。
【0117】
なお、全車両を選択しても期待値Eが目標移動台数nに達しない場合があり得る。例えば、渋滞予測経路を走行予定の大多数の車両の遵守度が、非常に小さい値の場合である。その場合、車両選択部150は、変数iが渋滞予測経路を通過する車両数を超えた時点で通知車両選択処理を終了する。すなわち全車両が選択された時点で、通知車両選択処理が終了する。
【0118】
図11は、選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。図11に示すように遵守度管理テーブル131の各レコードは、遵守度の高い順にソートされている。すなわち、遵守度の高い車両のレコードほど、遵守度管理テーブル131の上位に設定されている。そして、車両の選択は、遵守度管理テーブル131の上位から順に行われている。
【0119】
なお、図11の例では3台の車両のみが選択されているが、期待値Eが目標移動台数nを超えるまで、遵守度管理テーブル131の上位から順に車両が選択される。そして、車両が選択されるごとに、選択された車両の選択フラグが遵守度管理テーブル131に設定される。
【0120】
車両側では、車載機によって誘導された経路が画面表示される。また車載機は、ユーザが誘導された経路に従ったか否かに基づいて、車両の遵守度を更新する。
図12は、第2の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。以下、図12に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の説明では、車両31に搭載された車載機200が処理を実行するものとする。また車載機200が搭載された車両31は、通知対象として選択されたものとする。
【0121】
[ステップS61]走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。例えば走行予定経路送信部230は、センタ装置100から走行予定経路取得要求を受け取ると、経路案内部220から現在の走行予定経路を取得する。そして、走行予定経路送信部230は、取得した走行予定経路をセンタ装置100に送信する。
【0122】
[ステップS62]遵守度送信部290は、車両31の遵守度をセンタ装置100に送信する。例えば遵守度送信部290は、センタ装置100から遵守度取得要求を受け取ると、遵守度記憶部212から車両31の最新の遵守度を取得する。そして、遵守度送信部290は、取得した遵守度をセンタ装置100に送信する。なお、ステップS62以降の処理は、車両31の走行予定経路が、誘導対象区間における渋滞予想経路を含んでいる場合に実行される。
【0123】
[ステップS63]誘導経路取得部240は、センタ装置100から誘導経路を取得する。なお、ステップS63以降の処理は、車両31が、通知対象として選択された場合に実行される。
【0124】
[ステップS64]誘導経路取得部240は、取得した誘導経路を表示制御部250を介して画面に表示する。車両31の運転手は、誘導経路が表示された画面を見て、走行予定経路とは異なる経路への誘導が行われていることを認識できる。
【0125】
[ステップS65]走行経路記録部260は、車両31が誘導経路の開始点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、開始点に到着した場合、処理をステップS66に進める。また走行経路記録部260は、開始点に到着していなければ、ステップS65の処理を繰り返す。
【0126】
[ステップS66]走行経路記録部260は、車両31の走行経路を記録する。
[ステップS67]走行経路記録部260は、車両31が誘導経路の終端点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、終端点に到着した場合、記録した走行経路を経路比較部270に渡し、処理をステップS68に進める。また走行経路記録部260は、終端点に到着していなければ、処理をステップS66に進める。
【0127】
[ステップS68]経路比較部270は、誘導経路と走行経路との一致度pを計算する。例えば誘導経路全体(距離D)に対し、実際の走行経路が重なる部分の距離をdとする。このとき一致度pは、以下の式(7)で求められる。
p=d/D ・・・(7)
ただし、d/D>1のときはp=1とする。これにより、経路の一致度pは、0以上1以下の値となる(0≦p≦1)。
【0128】
[ステップS69]遵守度計算部280は、経路比較部270が算出した一致度pに基づいて遵守度Kを計算する。例えば遵守度計算部280は、前回計算した遵守度Kを用いて、最新の遵守度Kを計算する。その場合、u回目(uは1以上の整数)の遵守度Kuを、以下の式(8)で計算できる。
Ku=(1−α)Ku-1+αp ・・・(8)
ここでKuは、誘導経路のu回目の通知に応じて誘導対象区間を走行した後に算出される遵守度である。ただし、遵守度の初期値K0=0.5とする。Ku-1は、誘導経路のu−1回目の通知に応じて誘導対象区間を走行した後に算出される遵守度である。またαは、履歴の重視度合いを示す重みパラメータである。αは、0以上1以下の任意の値が予め設定される(0≦α≦1)。
【0129】
そして遵守度計算部280は、計算した遵守度を遵守度記憶部212に格納する。
このようにして、誘導経路を受け取った車両31では、誘導経路が表示されると共に、誘導対象区間を通過後に遵守度が更新される。
【0130】
次に、具体的な車両の誘導例について説明する。
図13は、第1の経路誘導例を示す図である。第1の経路誘導例では、開始点Oから終端点Dまでを誘導対象区間として誘導を行うる。開始点Oと終端点Dとを結ぶ経路は、経路Aと経路Bとの2つがある。経路Aと経路Bとは、いずれも途中にボトルネック部分があり、経路の許容量は共に1時間当たり1000台(1000台/h)である。
【0131】
なお、経路Aと経路Bとには、開始点O以外からの車両の流入が発生しないか、車両の流入が発生したとしても全体に対する影響が無視できるほど少量であるものとする。もし経路Aと経路Bとのいずれかの途中に、車両が大量に流入する場所が存在する場合、その場所から終端点Dまでを誘導対象区間として経路誘導を行えばよい。
【0132】
センタ装置100は、10分間隔で経路誘導処理を実行するものとする。この場合、センタ装置100では、今後10分以内に開始点Oに到達可能な車両51〜55,・・・から走行予定経路の経路情報を収集する。図13では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与している。
【0133】
図13の例では、今後10分以内に開始点Oに到達し、最終的に誘導終端点Dを通過する予定の車両が300台あるものとする。そのうち経路Aを走行予定車両数が100台(Na=100)、経路Bを走行予定車両数が200台(Nb=200)であるものとする。また、現時点で経路Aおよび経路Bのいずれにも渋滞はないものとする。
【0134】
このような状況下で、センタ装置100により経路誘導処理が行われる。その場合、まず目標移動台数が計算される。経路Aを走行予定の車両数(100台)を1時間当たりの車両数に換算すると600台となる。また、経路Bを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。すると、経路Bについては、許容量(1000第/h)以上の車両が走行予定となっている。そのため、経路Bにおいて渋滞の発生が予測される。この場合、誘導後に経路Bを走行する車両数を166台(NB=166台)にすれば、経路Bの1時間当たりの走行車両数は約1000台となる。1時間当たり1000台の走行量は、経路Bの許容量以下である。この場合、経路Bを走行する車両数を166台にするには、経路Bを走行予定の車両のうち34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導すればよいことが分かる。
【0135】
34台の車両を経路Bから経路Aに誘導すると、誘導後に経路Aを走行する車両数は134台(NA=134台)となる。この場合、経路Aの1時間当たりの走行車両数は約800台となる。1時間当たり800台の通行量は、経路Aの許容量以下である。
【0136】
よって、目標移動台数nを34台とすることで、どちらの経路でもボトルネックとなる容量以下で車両を通過させることができる。すなわち、渋滞の発生が抑制される。
そこで、目標移動台数が34台(n=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Bを走行予定の200台の車両のうち、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。例えば、すべての車両の遵守度が「1」であれば、34台の車両が通知対象車両として選択されたとき、期待値Eが34となる。またすべての車両の遵守度が「0.5」であれば、68台の車両が通知対象車両として選択されたとき、期待値Eが34となる。そして、選択された車両に対して、経路Aを示す誘導経路が通知される。すると、選択された車両の車載機が有する表示装置の画面に、誘導経路が表示される。
【0137】
図14は、誘導経路表示画面の一例を示す図である。誘導経路表示画面60には、渋滞予測経路と判定された走行予定経路から、誘導経路への誘導を案内するメッセージが表示されている。図14の例では、「渋滞緩和のため経路Bから経路Aに変更してください」と表示されている。また、渋滞予測経路である経路Bが波線で表示され、誘導経路である経路Aが実線で表示されている。これにより、経路Aが強調表示されている。
【0138】
図14に示したような誘導経路表示画面60が、通知対象車両それぞれの車載機で表示される。その結果、各車両の運転手が誘導経路表示画面60を参考にして経路を選択し、誘導対象区間内を運転する。運転手の中には、経路誘導に従って誘導経路を通る者と、経路誘導に逆らって渋滞予測経路を通る者とがいることが予想される。その結果、目標移動台数である34台の車両が、当初の走行予定経路である経路Bを通らずに、経路Aを走行することが期待できる。
【0139】
図15は、誘導対象区間内の期待される通行状況を示す図である。図15では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与し、経路Bから経路Aへ誘導された通知対象車両の上に「B→A」の文字を付与している。
【0140】
経路Aは、元から経路Aを走行予定経路としていた100台の車両が流入する。また、経路Bから経路Aに誘導され、その誘導に従った34台の車両が経路Aに流入する。その結果、経路Aへ、10分間で134台の車両が流入する。他方、経路Bへは、元から経路Bを走行予定経路としていた車両と、経路Bから経路Aに誘導されたがその誘導に従わなかった車両とを併せて、166台の車両が流入する。
【0141】
このようにして、経路Bの渋滞の発生を抑制することができる。
次に、誘導対象区間内に経路が3つあり、そのうちの2つの経路において渋滞が予測された場合の経路誘導例について説明する。
【0142】
図16は、第2の経路誘導例を示す図である。第2の経路誘導例では、地点Oが誘導開始区間の開始点であり、地点Dを誘導開始区間の終端点である。開始点Oと終端点Dとを結ぶ経路は、経路A、経路Bおよび経路Cの3つがある。経路A、経路Bおよび経路Cは、いずれも途中にボトルネック部分があり、許容量は共に1時間当たり1000台(1000台/h)である。
【0143】
センタ装置100は、10分間隔で経路誘導処理を実行するものとする。この場合、センタ装置100では、今後10分以内に開始点Oに到達可能な車両51〜55,・・・から走行経路情報を収集する。図16では、走行予定経路が経路Aの車両の上に「A」の文字を付与し、走行予定経路が経路Bの車両の上に「B」の文字を付与している。
【0144】
図16の例では、今後10分以内に開始点Oに到達し、最終的に誘導終端点Dを通過する予定の車両が500台あるものとする。そのうち経路Aを走行予定車両数が100台(Na=100)、経路Bを走行予定車両数が200台(Nb=200)、経路Cを走行予定車両数が200台(Nc=200)であるものとする。また、現時点で経路A、経路Bおよび経路Cのいずれにも渋滞はないものとする。
【0145】
このような状況下で、センタ装置100により経路誘導処理が行われる。その場合、まず目標移動台数が計算される。経路Aを走行予定の車両数(100台)を1時間当たりの車両数に換算すると600台となる。また、経路Bを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。同様に経路Cを走行予定の車両数(200台)を1時間当たりの車両数に換算すると1200台となる。この場合、誘導後に経路Bと経路Cとのそれぞれを走行する車両数を、共に166台(NB=NC=166台)にすれば、経路Bと経路Cとの1時間当たりの走行車両数はそれぞれ約1000台となる。1時間当たり1000台の通行量は、経路Bと経路Cとの許容量以下である。この場合、経路Bを走行予定の車両のうち、34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導し、経路Cを走行予定の車両のうち、34台(200台−166台)の車両が経路Aを走行するように誘導すればよいことが分かる。
【0146】
34台の車両を経路Bから経路Aに誘導し、34台の車両を経路Cから経路Aに誘導すると、誘導後に経路Aを走行する車両数を168台(NA=168台)となる。この場合、経路Aの1時間当たりの走行車両数は約1000台となる。1時間当たり1000台の通行量は、経路Aの許容量以下である。
【0147】
よって、経路Bから経路Aへ誘導する目標移動台数nbaを34台とし、経路Cから経路Aへ誘導する目標移動台数ncaを34台とすることで、いずれの経路でもボトルネック容量以下で車両を通過させることができる。すなわち、渋滞の発生が抑制される。
【0148】
そこで、経路Bから経路Aへ誘導する目標移動台数が34台(nba=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Bを走行予定の200台の車両が、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。さらに、経路Cから経路Aへ誘導する目標移動台数が34台(nca=34)に決定され、期待値Eが34に達するまで、経路Cを走行予定の200台の車両が、遵守度の高い車両から順に通知対象車両として選択される。そして、選択された車両に対して、経路Aを示す誘導経路が通知される。
【0149】
このようにして、誘導対象区間内の経路が3以上であっても、適正に車両を誘導し、渋滞の発生を抑制することができる。
なお、第2の実施の形態では、遵守度の高い順に車両を選択している。遵守度の高い車両の運転者は、誘導に従う可能性が高く、経路を気まぐれに選択する可能性が低いものと考えられる。すなわち遵守度の高い車両では、誘導経路を通知したときの、走行経路と誘導経路との一致度のばらつきが少ない。そのため、遵守度の高い順に車両を選択すれば、期待値と実際に誘導に従った車両数との差が小さく抑えられ、各経路に期待通りの車両を通行させることができる。
【0150】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、天邪鬼な運転手を考慮して通知対象車両を選択するものである。第3の実施の形態では、誘導対象区間内の経路は2つであるものとする。この場合に、遵守度の低い運転手(天邪鬼な運転手)は、指示された経路の逆を選択することが期待できる。そこで、第3の実施の形態では、センタ装置は、遵守度の低い車両を優先的に選択し、選択した車両に対して、誘導したい経路の逆の経路(渋滞が予測される経路)を推奨する偽推奨経路を通知する。
【0151】
なお、第3の実施の形態のシステム構成は、図2に示された第2の実施の形態のシステム構成と同様である。また第3の実施の形態のセンタ装置と車載機とは、それぞれ図5に示された第2の実施の形態のセンタ装置100と車載機200と同じ要素を有する。そこで、図5に示した各装置および要素を用いて第3の実施の形態の処理について以下に説明する。また、以下の説明では、誘導対象区間内の2つの経路を「経路A」、「経路B」とする。
【0152】
図17は、第3の実施の形態のセンタ装置側の処理手順を示すフローチャートである。以下、図17に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS71]誘導経路決定部140は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両(台数N:Nは1以上の整数)から、走行予定経路を取得する。この処理の詳細は、図8に示すステップS11と同様である。
【0153】
[ステップS72]誘導経路決定部140は、各車両の走行予定経路に基づいて、所定時間内に誘導対象区間の開始点と終端点との2地点を結ぶ各経路の走行予定の車両数を算出する。この処理の詳細は、図8に示すステップS12と同様である。
【0154】
[ステップS73]車両選択部150は、振り分けにより渋滞の解消が可能か否かを判断する。車両の振り分けによる渋滞の解消は不可能な場合、センタ装置側の処理が終了する。車両の振り分けによる渋滞の解消が可能な場合、車両選択部150は処理をステップS74に進める。この処理の詳細は、図8に示すステップS13と同様である。
【0155】
[ステップS74]車両選択部150は、渋滞予測経路を検出する。例えば車両選択部150は、「経路A」と「経路B」とのそれぞれについて、「所定時間内に通過予定の車両数>所定時間内に通過可能な車両数」が真か偽かを判断する。車両選択部150は、「所定時間内に通過予定の車両数>所定時間内に通過可能な車両数」が真である経路を渋滞予測経路とし、偽である経路を受け入れ可能経路とする。
【0156】
[ステップS75]車両選択部150は、目標移動台数nを計算する。例えば車両選択部150は、渋滞予測経路の所定時間内に通過予定の車両数から所定時間内に通過可能な車両数を減算した結果を、目標移動台数nとする。
【0157】
[ステップS76]車両選択部150は、渋滞予測経路の通行を推奨する偽推奨経路を通知する対象の車両を選択する。この処理の詳細は後述する(図18参照)。
[ステップS77]車両選択部150は、通知対象として選択された車両に偽推奨経路を通知する。例えば、渋滞予測経路が「経路B」、受け入れ可能経路が「経路A」であれば、車両選択部150は、「経路B」を走行予定の車両のうちの選択された車両宛に、「経路B」の通行を推奨する情報を送信する。
【0158】
次に、誘導車両選択処理について、詳細に説明する。
図18は、第3の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図18に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0159】
[ステップS81]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。この処理の詳細は、図10に示すステップS51と同様である。
【0160】
[ステップS82]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の低い順にソートする。
[ステップS83]車両選択部150は、変数i=1とする(iは、1以上、渋滞予測経路を通過予定の車両数以下の整数)。
【0161】
[ステップS84]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。
[ステップS85]車両選択部150は、ステップS84で取得した遵守度Kiに基づいて、移動台数の期待値Eを更新する。期待値Eは、以下の式(9)で計算される。
【0162】
【数3】
【0163】
式(9)において、mは1以上i以下の整数である。すなわち期待値Eは、1番目からi番目までの車両の遵守度を1から減算した値の合計である。遵守度を1から減算した値(1−Km)は、m番目の車両が偽推奨経路と異なる経路を走行する可能性の高さを示している。すなわち、天邪鬼な運転手が運転する車両に対して渋滞予測経路を偽推奨経路とする案内を行えば、遵守度を1から減算した値の確率で、その車両が誘導経路を走行するものと予想される。
【0164】
[ステップS86]車両選択部150は、i番目の車両を、通知対象として選択する。この処理の詳細は、図10に示すステップS56と同様である。
[ステップS87]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上の場合(E≧n)、誘導車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満の場合(E<n)、処理をステップS88に進める。
【0165】
[ステップS88]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS89]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、誘導車両選択処理を終了する。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS84に進める。
【0166】
このように、第3の実施の形態では、偽推奨経路の通知を受けた車両が偽推奨経路とは別の誘導経路を走行する期待値Eが計算され、その期待値Eが目標移動台数を超えるまで、遵守度の低い順に車両が選択される。選択された車両には、渋滞予測経路の走行を推奨する情報が送信される。
【0167】
なお車両選択部150は、変数iが渋滞予測経路を通過する車両数を超えた場合、その時点で図18に示す通知車両選択処理を終了する。
車両側では、車載機によって推奨された経路が画面表示される。また車載機は、ユーザが誘導された経路に従ったか否かに基づいて、車両の遵守度を更新する。
【0168】
図19は、第3の実施の形態における車両側の車載機で実行される処理の手順を示すフローチャートである。以下、図19に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の説明では、車両31に搭載された車載機200が処理を実行するものとする。また車載機200が搭載された車両31は、通知対象として選択されたものとする。
【0169】
[ステップS91]走行予定経路送信部230は、走行予定経路をセンタ装置100に送信する。
[ステップS92]遵守度送信部290は、車両31の遵守度をセンタ装置100に送信する。
【0170】
[ステップS93]誘導経路取得部240は、センタ装置100から偽推奨経路を取得する。
[ステップS94]誘導経路取得部240は、取得した偽推奨経路を、表示制御部250を介して画面に表示する。車両31の運転手は、偽推奨経路が表示された画面を見て、走行予定経路の走行が推奨されていることを認識できる。
【0171】
[ステップS95]走行経路記録部260は、車両31が偽推奨経路の開始点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、開始点に到着した場合、処理をステップS96に進める。また走行経路記録部260は、開始点に到着していなければ、ステップS95の処理を繰り返す。
【0172】
[ステップS96]走行経路記録部260は、車両31の走行経路を記録する。
[ステップS97]走行経路記録部260は、車両31が偽推奨経路の終端点に到着したか否かを判断する。走行経路記録部260は、終端点に到着した場合、記録した走行経路を経路比較部270に渡し、処理をステップS98に進める。また走行経路記録部260は、終端点に到着していなければ、処理をステップS96に進める。
【0173】
[ステップS98]経路比較部270は、偽推奨経路と走行経路との一致度pを計算する。例えば偽推奨経路全体(距離D)に対し、実際の走行経路が重なる部分の距離をdとする。このとき一致度pは、前述の式(7)で求められる。
【0174】
[ステップS99]遵守度計算部280は、経路比較部270が算出した一致度pに基づいて遵守度Kを計算する。そして遵守度計算部280は、計算した遵守度を遵守度記憶部212に格納する。この処理の詳細は、図12に示すステップS69の処理と同じである。
【0175】
このようにして、偽推奨経路を受け取った車両では、偽推奨経路が表示されると共に、誘導対象区間を通過後に遵守度が更新される。偽推奨経路を受け取った車両が偽推奨経路(渋滞予測経路)を走行した場合、遵守度が上げられる。逆に偽推奨経路を受け取った車両が偽推奨経路以外の経路(例えば受け入れ可能経路)を走行した場合、遵守度が下げられる。
【0176】
図20は、偽推奨経路表示画面の一例を示す図である。偽推奨経路表示画面61には、渋滞予測経路の走行を推奨するメッセージが表示されている。図20の例では、「渋滞緩和のため皆様に経路Bの走行をお勧めしています」と表示されている。また地図上で、渋滞が予測される経路Bを強調表示している。
【0177】
図20に示したような偽推奨経路表示画面61が、通知対象車両それぞれの車載機で表示される。その結果、各車両の運転手が偽推奨経路表示画面61を参考にして経路を選択し、誘導対象区間内を運転する。この際、運転手が天邪鬼であるほど、推奨された経路Bとは別の経路Aを通ることが予想される。その結果、目標移動台数分の車両が、当初の走行予定経路である経路Bを通らずに、経路Aを走行することが期待できる。
【0178】
このようにして、遵守度の低い車両に対しても、各経路が適切な交通量となるように誘導することが可能となる。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態は、同じ車両ばかりが誘導されることを抑止するものである。例えば第2の実施の形態に示したように遵守度が高い車両から順に誘導経路の通知対象として選択すると、遵守度が1に近い車両は、走行予定経路で渋滞が予測されると、常に他の経路へ誘導される。他方、遵守度が低い車両に関しては、走行予定経路で渋滞が予測されても、常に予定通りの経路を走行できる。このような不公平を緩和するため、第4の実施の形態では、センタ装置は、ロジットモデルによって確率的に、誘導経路の通知対象の車両を選択する。
【0179】
例えば、センタ装置は、車両の遵守度に応じたその車両の選択確率を、ロジットモデルによって算出する。選択確率の計算式は、以下の式(10)で表される。
【0180】
【数4】
【0181】
ここでPiは、i番目の車両の選択確率である。Kiは、i番目の車両の遵守度である。nは、選択された渋滞予測経路を通過予定の車両台数である。vは、1以上n以下の整数である。θは、感度パラメータであり、0以上1以下の実数である(0≦θ≦1)。θが0に近いほど各車両の選択確率が同じ値に近づき、1に近いほど各車両の選択確率が遵守度に近づく。
【0182】
このようなロジットモデルを用いることで、遵守度の高い車両ほど高い選択確率を与えることができる。その結果、遵守度が高い車両が選択されやすくなる。ただし、確率的に選択されるので、第2の実施の形態の方式と違い、遵守度が低い車両でも選択される可能性がある。
【0183】
なお、各車両を確率的に選択すると、渋滞予測経路を通過予定のすべての車両に対して選択するか否かの判断を行った後でも、移動台数の期待値が目標移動台数を超えることができない場合があり得る。この場合は、最初の車両から選択処理をやり直すことで、期待値が目標移動台数を超えるまで車両が選択される。ただし、全車両を選択しても期待値が目標移動台数に達しない場合があり得る。このような場合、選択処理を繰り返し実行しても、期待値が目標移動台数に達しない。そこで、例えば最初の車両から選択処理をやり直す繰り返し回数を、所定回数に制限する。
【0184】
第4の実施の形態のシステム構成は、図2に示された第2の実施の形態のシステム構成と同様である。また第4の実施の形態のセンタ装置と車載機とは、それぞれ図5に示された第2の実施の形態のセンタ装置100と車載機200と同じ要素を有する。そこで、図5に示した各装置および要素を用いて第4の実施の形態の処理について以下に説明する。
【0185】
第4の実施の形態における第2の実施の形態との相違点は、通知車両選択処理のみである。
図21は、第4の実施の形態における通知車両選択処理の手順を示すフローチャートである。以下、図21に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0186】
[ステップS101]車両選択部150は、誘導対象区間の開始点から所定の範囲内のすべての車両のうち、渋滞予測経路を走行予定の車両の遵守度を取得する。この処理の詳細は、図10に示したステップS51と同様である。
【0187】
[ステップS102]車両選択部150は、取得した遵守度を用いて、式(10)に示すロジットモデルの分母を計算する。
[ステップS103]車両選択部150は、遵守度管理テーブル131内の車両を遵守度の高い順にソートする。
【0188】
[ステップS104]車両選択部150は、変数i=1に初期化する。なお車両選択部150は、変数iの初期化を行うごとに初期化回数をカウントアップする。
[ステップS105]車両選択部150は、i番目の車両が通知対象として選択済みか否かを判断する。例えば車両選択部150は、遵守度記憶部130内の遵守度管理テーブル131に登録されたi番目のレコードを参照する。車両選択部150は、参照したレコードに選択フラグが設定されていれば、選択済みであると判断する。車両選択部150は、選択済みであれば、処理をステップS111に進める。車両選択部150は、未選択であれば、処理をステップS106に進める。
【0189】
なお、各車両を選択するか否かの判定の1サイクル目では、ステップS105の判定は必ず「NO」となる。iが渋滞予測経路を通過予定の車両数を超え、iが1に戻された後は、既に選択されている車両が存在するため、ステップS105の判定で「YES」となる場合がある。
【0190】
[ステップS106]車両選択部150は、i番目の車両の遵守度Kiを遵守度記憶部130から取得する。
[ステップS107]車両選択部150は、取得した遵守度に応じた選択確率で、i番目の車両を選択候補にするか否かを判定する。具体的には、車両選択部150は、取得した遵守度に基づいて、式(10)に示したロジットモデルの分子を計算し、計算結果をステップS102で計算した分母の値で除算する。車両選択部150は、除算結果を選択確率piとする。さらに車両選択部150は、0.0〜1.0の小数点第一位までの数値の一様乱数ρを生成する。一様乱数とは、すべての値の出現確率が等しい乱数である。車両選択部150は、生成した一様乱数ρが、計算した選択確率より小さければ(ρ<pi)、i番目の車両を選択候補にすると判定する。車両選択部150は、i番目の車両を選択候補にする場合、処理をステップS108に進める。車両選択部150は、i番目の車両を選択しない場合、処理をステップS111に進める。
【0191】
[ステップS108]車両選択部150は、移動台数の期待値Eを更新する。例えば、車両選択部150は、期待値Eの初期値を0とし、ステップS107において車両が選択候補と判定されるごとに、その車両の遵守度を期待値Eに加算する。
【0192】
[ステップS109]車両選択部150は、i番目の車両を、通知対象として選択する。例えば車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の選択フラグの欄に、「選択」を示す情報を設定する。また車両選択部150は、遵守度管理テーブル131のi番目の車両の誘導経路の欄に、現在選択されている受け入れ可能経路を設定する。
【0193】
[ステップS110]車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上となったか否かを判断する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数n以上の場合(E≧n)、通知車両選択処理を終了する。車両選択部150は、期待値Eが目標移動台数未満であれば(E<n)、処理をステップS111に進める。
【0194】
[ステップS111]車両選択部150は、変数iに1を加算する。
[ステップS112]車両選択部150は、変数iが、渋滞予測経路を通過予定の車両台数を超えたか否かを判断する。車両選択部150は、変数iが車両台数を超えた場合、処理をステップS113に進める。また車両選択部150は、変数iが車両台数を超えていなければ、処理をステップS105に進める。
【0195】
[ステップS113]車両選択部150は、ステップS104による変数iの初期化回数が、予め設定された所定回数に達しているか否かを判断する。車両選択部150は、初期化回数が所定回数に達していれば、車両選択処理を終了する。車両選択部150は、初期化回数が所定回数に達していなければ、処理をステップS105に進める。
【0196】
このようにして選択された車両が誘導経路の通知対象となる。第4の実施の形態ではロジットモデルによって確率的に車両を選択するため、遵守度が高い車両が必ず優先的に選択されるとは限らない。
【0197】
図22は、ロジットモデルを用いた選択により選択フラグが設定された遵守度記憶部の例を示す図である。図22の例では、上位から2つの車両は選択されているが、3番目の車両は選択されていない。その一方で、4番目の車両は選択されている。
【0198】
このように、ロジットモデルを用いたことで、上位から非連続の車両が選択される。その結果、同じ車両ばかりが選択されることを抑制できる。
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態は、センタ装置側で遵守度を計算するようにしたものである。
【0199】
図23は、第5の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置300は、地図データ記憶部310、経路情報記憶部320、誘導経路決定部330、車両選択部340、および複数の遵守度管理部350,350a,350b,・・・を有している。このうち地図データ記憶部310、経路情報記憶部320、および誘導経路決定部330の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0200】
車両選択部340は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。この際、車両選択部340は、各車両の遵守度を、車両ごとの遵守度管理部350,350a,350b,・・・から取得する点が第2の実施の形態と異なる。各車両の遵守度を用いた車両の選択手順は、第2の実施の形態と同様である。
【0201】
複数の遵守度管理部350,350a,350b,・・・は、それぞれ車両に対応付けられている。例えば遵守度管理部350は、車載機400が搭載された車両に対応付けられている。
【0202】
遵守度管理部350は、走行経路取得部351、経路比較部352、遵守度計算部353、および遵守度記憶部354を有している。
走行経路取得部351は、誘導経路を送信した車両の車載機400から、誘導対象区間内の走行経路を取得する。走行経路取得部351は、取得した走行経路を経路比較部352に渡す。
【0203】
経路比較部352は、誘導経路決定部330から誘導対象区間で車両を誘導する際の誘導経路を取得する。そして経路比較部352は、取得した誘導経路と、車載機400から取得した走行経路とを比較し、一致度を計算する。一致度は、例えば第2の実施の形態と同様に、式(7)によって計算される。
【0204】
遵守度計算部353は、経路比較部352による比較結果に基づいて、遵守度を計算する。遵守度は、例えば第2の実施の形態と同様に、式(8)によって計算される。遵守度計算部353は、計算した遵守度を、遵守度管理部350に対応する車両の車両IDに対応付けて、遵守度記憶部354に格納する。
【0205】
遵守度記憶部354は、対応する車両の車両IDと、その車両の遵守度との組を記憶する。例えば、センタ装置300内のRAMまたはHDDの記憶領域の一部が遵守度記憶部354として使用される。
【0206】
車載機400は、地図データ記憶部410、経路案内部420、走行予定経路送信部430、誘導経路取得部440、表示制御部450、走行経路記録部460、および走行経路送信部470を有する。このうち地図データ記憶部410、経路案内部420、走行予定経路送信部430、誘導経路取得部440、および表示制御部450の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0207】
走行経路記録部460は、誘導対象区間内における車両の走行経路を示す走行経路情報をRAMなどの記録媒体に記録する。そして、走行経路記録部460は、誘導対象区間の終端点に達すると、記録した走行経路情報を走行経路送信部470に渡す。
【0208】
走行経路送信部470は、走行経路記録部460から受け取った走行経路情報をセンタ装置300に送信する。
このようなシステムによれば、誘導経路の通知を受けた車両の車載機400では、誘導経路が画面表示されると共に、誘導対象区間の開始点から終端点までの走行経路が記録される。そして車両が誘導対象区間の終端点に到達すると、走行経路送信部470により、車載機400からセンタ装置300へ走行経路情報が送信される。
【0209】
センタ装置300では、走行経路取得部351により走行経路情報が取得される。取得された走行経路情報は経路比較部352に渡され、誘導経路との一致度が計算される。次に、計算された一致度に基づいて、遵守度計算部353により遵守度が計算され、計算された遵守度が遵守度記憶部354に格納される。このような遵守度の計算および格納処理は、車両に対応する遵守度管理部350,350a,350b,・・・それぞれで実行され、誘導経路を通知したすべての車両の遵守度が計算される。
【0210】
センタ装置300では、車両の遵守度を内部で管理している。そのため、車両選択部340が誘導経路を通知する際の通知対象車両を選択する際には、車両選択部340では、遵守度管理部350,350a,350b,・・・それぞれから遵守度が取得され、車両の選択処理を行われる。
【0211】
このように第5の実施の形態では、車両の遵守度の管理をセンタ装置300で行うようにしている。これにより、車載機400側の負荷の軽減や消費電力の削減が可能となる。
〔第6の実施の形態〕
第6の実施の形態は、運転手ごとの遵守度を計算し、各車両を運転している運転手の遵守度をその時点での車両の遵守度とみなし、誘導経路を通知する車両を選択するものである。
【0212】
図24は、第6の実施の形態のセンタ装置と車載機との機能を示すブロック図である。センタ装置500は、地図データ記憶部510、経路情報記憶部520、遵守度記憶部530、誘導経路決定部540、および車両選択部550を有する。このうち地図データ記憶部510、経路情報記憶部520、および誘導経路決定部540の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0213】
遵守度記憶部530は、各車両から取得された運転手ごとの遵守度を記憶する。例えばセンタ装置500のRAMまたはHDDの記憶領域の一部が遵守度記憶部530として使用される。
【0214】
車両選択部550は、渋滞予測経路から誘導経路へ誘導する車両を選択する。例えば車両選択部550は、誘導に従わない車両が存在することを想定した上で、移動目標台数分の車両が渋滞予測経路から誘導経路へ走行経路を変更するように、誘導する車両を選択する。車両の選択は、各車両を運転している運転手の遵守度に基づいて行われる。遵守度は、過去の誘導に対して、各運転手がどの程度従ったのかを示す指標である。各運転手の遵守度は、その運転手が運転する車両に搭載された車載機から取得することができる。例えば車両選択部550は、車載機に対して遵守度取得要求を送信する。すると車載機600からセンタ装置500へ、その車載機を搭載する車両をその時点で運転している運転手の遵守度が送信される。車両選択部550は、取得した各運転手の遵守度を、遵守度記憶部530に格納する。
【0215】
車両選択部550は、遵守度が「0.5」の運転手が運転する車両を誘導した場合、50%の確率で誘導に従うと判断する。すると遵守度が50%の運転手が運転する2台の車両を誘導した場合に、1台の車両が誘導経路へ経路を変更するものと期待できる。車両選択部550は、選択した車両を運転する運転手の遵守度に基づいて、誘導に従って経路を変更する車両数の期待値を計算し、期待値が移動目標台数に達するまで車両の選択を繰り返す。そして車両選択部550は、選択した車両の車載機に対して、誘導経路への経路変更を促す誘導経路情報を送信する。
【0216】
車載機600は、地図データ記憶部611、遵守度記憶部612、経路案内部620、走行予定経路送信部630、誘導経路取得部640、表示制御部650、走行経路記録部660、経路比較部670、遵守度計算部680、運転手特定部681、および遵守度送信部690を有している。このうち地図データ記憶部611、経路案内部620、走行予定経路送信部630、誘導経路取得部640、表示制御部650、走行経路記録部660、および経路比較部670の機能は、図5に示した第2の実施の形態の同名の要素と同じである。
【0217】
遵守度記憶部612は、車載機600を搭載する車両を運転したことのある運転手の現在の遵守度を記憶する。例えば、RAMまたはHDDの記憶領域の一部が、遵守度記憶部612として使用される。
【0218】
遵守度計算部680は、経路比較部670による比較結果に基づいて、現在運転している運転手の遵守度を計算する。例えば、遵守度計算部680は、運転手特定部681から、現在運転している運転手の識別子(運転手ID)を取得する。そして遵守度計算部680は、経路比較部670による最新の比較結果に基づいて、現在運転している運転手に対して前回計算した遵守度を更新し、現在運転している運転手の現在の遵守度とする。遵守度計算部680は、計算した遵守度を、遵守度記憶部212に格納する。なお遵守度は、第2の実施の形態に示した式(8)と同様の計算式で計算できる。遵守度計算部680は、計算した遵守度を、運転手IDに対応付けて遵守度記憶部612に格納する。
【0219】
運転手特定部681は、車載機600が搭載されている車両を運転している運転手を特定する。そして運転手特定部681は、特定した運転手を一意に示す運転手IDを、遵守度計算部680と遵守度送信部690とに渡す。
【0220】
例えば運転手特定部681は、運転手が車両を運転する際にキーを鍵穴に差し込むと、キーの識別子(キーID)をキーから読み取る。例えば、キーにRFID(Radio Frequency IDentification)タグが内蔵されている場合が考えられる。この場合、運転手特定部681にRFIDリーダを内蔵しておく。そして運転手特定部681は、鍵穴に差し込まれたキー内のRFIDからキーIDを読み取る。車両を運転する可能性がある運転手が、それぞれ個別のキーを所持していれば、各運転手が所持するキーのキーIDをその運転手の運転手IDとすることができる。
【0221】
また、運転手の運転免許証に、その運転手の運転手IDが書き込まれたRFIDタグが内蔵されている場合も考えられる。この場合、運転手特定部681は、運転手が所持する運転免許証から運転手IDを読み取り、その運転手IDを遵守度計算部680に渡す。このとき、運転手特定部681は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)と連携し、運転手IDの読み取りが完了するまで車両のエンジンまたはモータが始動しないようにすることもできる。
【0222】
遵守度送信部690は、遵守度記憶部612に格納されている運転手の遵守度を、センタ装置500に送信する。例えば遵守度送信部690は、センタ装置500からの要求に応じて、現在車両を運転している運転手の運転手IDに対応する遵守度を遵守度記憶部612から取得する。そして、遵守度送信部690は、運転手ID、車両ID、および遵守度の組をセンタ装置500に送信する。
【0223】
図25は、第6の実施の形態のセンタ装置の遵守度記憶部のデータ構造例を示す図である。遵守度記憶部530には、遵守度管理テーブル531が格納されている。遵守度管理テーブル531には、運転手ID、車両ID、走行予定経路、遵守度、選択フラグ、および誘導経路の欄が設けられている。ここで車両ID以外の欄には、図7に示す第2の実施の形態の遵守度管理テーブル131における同名の欄と同種の情報が設定される。
【0224】
運転手IDの欄には、誘導対象区間を所定時間内に走行予定の車両を運転する運転手の識別子(運転手ID)が設定される。
なお図25の例では、運転手ごとの遵守度であることを示すために遵守度管理テーブル531に運転手IDの欄が設けられているが、センタ装置500側では運転手IDを保持していなくてもよい。すなわち、運転手と遵守度との対応関係は、車載機600において管理していればよい。センタ装置500では、経路誘導実行時点での車両の運転手の遵守度を車載機600から取得することができれば、取得した遵守度に基づいて適切な経路誘導が可能である。
【0225】
このようなシステムによれば、センタ装置500で誘導対象区間内の1つの経路で渋滞の発生が予測されると、車両選択部550により、渋滞予測経路を走行予定の車両を運転している運転手の遵守度に基づいて、誘導経路情報を通知する対象の車両が選択される。そして車両選択部550により、選択された車両に誘導経路情報が送信される。
【0226】
車載機600では、誘導経路情報が通知され誘導対象区間を走行すると、遵守度計算部680によって、そのとき車両を運転している運転手の遵守度が計算され、遵守度記憶部612に格納される。
【0227】
このように運転手の遵守度に基づいて誘導情報の通知対象の車両を選択することで、1台の車両を複数の運転手が共用する場合においても、適切な誘導が可能となる。すなわち、遵守度は、運転手個人の資質に依存する。そのため複数の運転手で共用する車両の場合、運転手が異なれば誘導に従う度合いも異なるものと考えられる。第6の実施の形態のように、車載機600で運転手を特定し、運転手ごとの遵守度を管理するようにしたことで、運転手の遵守度に応じた車両の選択が可能となる。その結果、より正確に、目標移動台数分の車両を、渋滞予測経路から移動経路へ移動させることが可能となる。
【0228】
〔その他の実施の形態〕
上記の実施の形態では、誘導対象区間が1つしか設けられていないが、複数の誘導対象区間を設けることもできる。その場合、誘導対象区間ごとに、個別に車両の誘導が行われる。複数の誘導対象区間を設けた場合、誘導対象区間の重複があってもよい。
【0229】
また、センタ装置と車載機との間の通信は、光ビーコンを介して行うこともできる。光ビーコンは、走行車両の車載機との双方向通信機能と車両感知機能を併せ持つ装置である。光ビーコンは、道路の上方に設置され、下を走行する車両の車載機と、近赤外線を用いて通信を行う。
【0230】
なお、上記の各実施の形態に記載した処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、センタ装置または車載機が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disc)などがある。
【0231】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0232】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0233】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0234】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0235】
以上の実施の形態に開示された技術には、以下の付記に示す技術が含まれる。
(付記1) コンピュータにおいて、
複数の車両から走行予定経路を取得する取得手段と、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する選択手段と、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する通知手段と、
を有するコンピュータ。
【0236】
(付記2) 取得した前記走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する特定手段をさらに有し、
前記選択手段は、特定された前記経路を前記第1の経路とすることを特徴とする付記1記載のコンピュータ。
【0237】
(付記3) 前記特定手段は、前記第1の経路の許容量と、前記第1の経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数との差分を計算し、
前記選択手段は、前記差分を前記所定の値とすることを特徴とする付記2記載のコンピュータ。
【0238】
(付記4) 前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれを、前記遵守度に応じた確率で選択することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【0239】
(付記5) 前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれに対して乱数を生成し、前記遵守度よりも小さな値の乱数が生成された車両を選択することを特徴とする付記4記載のコンピュータ。
【0240】
(付記6) 前記選択手段は、選択した車両の遵守度の合計を前記期待値とすることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載のコンピュータ。
(付記7) 前記選択手段は、前記遵守度が高い車両から順に選択することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【0241】
(付記8) 前記取得手段は、前記第1の経路を走行予定の車両から、該車両の遵守度を取得することを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載のコンピュータ。
(付記9) 前記取得手段は、前記選択された車両から、前記第2の経路の開始点から終端点までの該車両の走行経路を取得し、
車両から取得した前記走行経路と、通知した前記第2の経路との一致度に基づいて、該車両の遵守度を計算する計算手段をさらに有することを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載のコンピュータ。
【0242】
(付記10) 車両に搭載して使用される車載機において、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する記憶手段と、
前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信する送信手段と、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する表示手段と、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する更新手段と、
を有する車載機。
【0243】
(付記11) 前記更新手段は、前記他の経路の開始点から終端点までの前記車両の走行経路と、前記他の経路との一致度に基づいて、前記車両の遵守度を計算することを特徴とする付記10記載の車載機。
【0244】
(付記12) 前記車両を運転している運転手を特定する特定手段をさらに有し、
前記記憶手段は、運転手ごとの遵守度を記憶し、
前記送信手段は、前記特定された運転手の遵守度を前記他のコンピュータに送信する、
ことを特徴とする付記10または11のいずれかに記載の車載機。
【0245】
(付記13) コンピュータが、
複数の車両から走行予定経路を取得し、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択し、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路を通知する、
ことを特徴とする経路通知方法。
【0246】
(付記14) 車両に搭載して使用される車載機による経路表示方法において、
前記車載機が、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶手段から取得し、前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信し、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示し、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する、
ことを特徴とする経路表示方法。
【符号の説明】
【0247】
1 サーバ
1a 取得手段
1b 特定手段
1c 選択手段
1d 通知手段
2 車載機
2a 記憶手段
2b 送信手段
2c 表示手段
2d 更新手段
3,3a,3b,3c,3d,・・・ 車両
4 走行予定経路
5 遵守度
6 誘導経路
7 表示画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにおいて、
複数の車両から走行予定経路を取得する取得手段と、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する選択手段と、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する通知手段と、
を有するコンピュータ。
【請求項2】
取得した前記走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する特定手段をさらに有し、
前記選択手段は、特定された前記経路を前記第1の経路とすることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記特定手段は、前記第1の経路の許容量と、前記第1の経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数との差分を計算し、
前記選択手段は、前記差分を前記所定の値とすることを特徴とする請求項2記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれを、前記遵守度に応じた確率で選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記選択手段は、前記遵守度が高い車両から順に選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【請求項6】
車両に搭載して使用される車載機において、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する記憶手段と、
前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータからへ送信する送信手段と、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する表示手段と、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する更新手段と、
を有する車載機。
【請求項7】
前記更新手段は、前記他の経路の開始点から終端点までの前記車両の走行経路と、前記他の経路との一致度に基づいて、前記車両の遵守度を計算することを特徴とする請求項6に記載の車載機。
【請求項8】
コンピュータが、
複数の車両から走行予定経路を取得し、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択し、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する、
ことを特徴とする経路通知方法。
【請求項9】
車両に搭載して使用される車載機による経路表示方法において、
前記車載機が、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶手段から取得し、前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信し、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示し、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する、
ことを特徴とする経路表示方法。
【請求項1】
コンピュータにおいて、
複数の車両から走行予定経路を取得する取得手段と、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択する選択手段と、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する通知手段と、
を有するコンピュータ。
【請求項2】
取得した前記走行予定経路に基づいて、走行する予定の単位時間当たりの車両数が許容量を超えている経路を特定する特定手段をさらに有し、
前記選択手段は、特定された前記経路を前記第1の経路とすることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記特定手段は、前記第1の経路の許容量と、前記第1の経路を走行する予定の単位時間当たりの車両数との差分を計算し、
前記選択手段は、前記差分を前記所定の値とすることを特徴とする請求項2記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記選択手段は、前記第1の経路を走行予定の車両それぞれを、前記遵守度に応じた確率で選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記選択手段は、前記遵守度が高い車両から順に選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンピュータ。
【請求項6】
車両に搭載して使用される車載機において、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶する記憶手段と、
前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータからへ送信する送信手段と、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示する表示手段と、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する更新手段と、
を有する車載機。
【請求項7】
前記更新手段は、前記他の経路の開始点から終端点までの前記車両の走行経路と、前記他の経路との一致度に基づいて、前記車両の遵守度を計算することを特徴とする請求項6に記載の車載機。
【請求項8】
コンピュータが、
複数の車両から走行予定経路を取得し、
第1の経路を走行予定経路とする車両それぞれに関する、過去に前記コンピュータから通知した経路通りに走行した割合を示す遵守度に基づいて、選択した車両に経路を通知することで前記第1の経路以外の経路を走行させることができる車両数の期待値を計算し、該期待値が所定の値に近づくように、前記第1の経路を走行予定経路とする車両のうちの少なくとも一部の車両を選択し、
前記選択した車両に対して、前記第1の経路と同じ開始点および終端点を有する第2の経路を通知する、
ことを特徴とする経路通知方法。
【請求項9】
車両に搭載して使用される車載機による経路表示方法において、
前記車載機が、
過去に他のコンピュータから通知された経路通りに前記車両が走行した割合を示す遵守度を記憶手段から取得し、前記車両の走行予定経路と遵守度とを前記他のコンピュータへ送信し、
前記他のコンピュータから、前記走行予定経路中の少なくとも一部の経路と同じ開始点および終端点を有する他の経路が通知された場合、通知された該他の経路を表示し、
前記他の経路と、前記開始点から前記終端点までの前記車両の走行経路との一致度に基づいて遵守度を更新する、
ことを特徴とする経路表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−73981(P2012−73981A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220305(P2010−220305)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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