説明

コンポジットセラミック誘電体層、その製造方法およびそれを用いたセラミック電子部品

【課題】諸特性のフレキシブルな微調整が可能でしかもその安定性に優れたコンポジットセラミック誘電体層、その製造方法およびそれを用いたセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体を含み、2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体は、均一に分散しているコンポジットセラミック誘電体層13であることを特徴とし、そのコンポジットセラミック誘電体層13を積層体11として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電極が卑金属からなり、JIS規格SL特性を満足し、高周波電流が流れるためQ値(誘電体損失係数の逆数)が高く且つ低自己発熱が要求されるスイッチング電源のトランジスタスナバ−回路、液晶ディスプレイパネル(LCD)を構成しているバックライトのインバータ電源回路、および低歪み率が要求される通信用デジタルモデムの対サ−ジ回路等に中高圧用として広く適用される積層セラミックコンデンサに代表されるセラミック電子部品およびそれを構成するコンポジットセラミック誘電体層、その製造方法およびそれを用いたセラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信用モデム、LCDおよびスイッチング電源等のPC周辺機器および電子通信機器の軽薄短小化に伴いそれに使用される重要な受動部品の1つであるセラミックコンデンサも従来の円板型から積層型への移行が急速に進み、スイッチング電源回路やモデム回路の小型化、樹脂モールド化、およびLCDの薄型化に寄与している。また、信用調査機関のデータによると西暦2010年にはセラミックコンデンサの積層化率は95%を超えることが確実であり、低定格電圧品のみならず中高圧品、さらには安全規格品の領域にまで積層化が波及するのは時間の問題である。
【0003】
例えば、100KHz程度の高周波電流が流れるスイッチング電源のトランジスタスナバ−回路には定格電圧が2〜3KVDCで静電容量が数10pFのJIS規格SL特性を満足する中高圧用積層セラミックコンデンサが使用されており、回路の小型化に寄与している。また、LCDの薄型化に伴いバックライトのインバータ電源回路には、従来の円板型に代わって、定格電圧が3KVDCで静電容量が数10〜100pFのJIS規格SL特性を満足する中高圧用積層セラミックコンデンサが適用されつつある。
【0004】
上記中高圧用積層セラミックコンデンサの構造は、セラミック誘電体層と内部電極層が交互に複数積層されて静電容量を取得する有効層が形成され、その有効層の上下に全体の寸法調整と内部気密封止のためにセラミック誘電体層のみからなる無効層が形成されている。そして、内部電極層の電気的接続は、それらの終端部分が露出した両端面に外部電極を設けることによって行い、これら外部電極表面には半田付け実装を容易に且つ支障なく行える様に、Ni鍍金の上にSn鍍金又はCu鍍金が層状に施された構造となっている。
【0005】
従来より、この様な用途のJIS規格SL特性を満足する中高圧用積層セラミックコンデンサは、低損失であると同時に高周波電流により異常発熱しないことが求められていた。さらに、電子機器の多品種化に伴い静電容量等の諸特性に関してセットメーカの要望が多種多様化してきており、それに対応するための特性微調整技術、特性安定化技術の確立が急務であった。
【0006】
従来のセラミック誘電体層に関する知見としては、主成分であるSrTiO3−CaTiO3系に数種類の添加物を加えたものが主流であり、例えば特開平7−211140号公報には、主成分であるSrTiO3−CaTiO3−MgTiO3系に添加物としてZrO2、Nb25、Ta25、V25等を加えた組成物が開示されている。そして、本組成物をセラミック誘電体層に適用することにより、所望の諸特性が得られることが記載されている。
【0007】
しかしながら上記知見は、複数のセラミック誘電体層の間に設けられる内部電極としてPd系貴金属の使用を前提としたものであり、特に高積層数高静電容量の品種において原材料コストの面で問題があった。これを解決する方法として、Pd系の貴金属に代わりコストの安いNiあるいはNiを主成分とする合金を使用することが公知であり、中高圧用積層セラミックコンデンサに占める卑金属内部電極品の割合は増加傾向にある。
【0008】
Niは卑金属であるので、従来の貴金属の積層セラミックコンデンサの様に酸素雰囲気中で焼成することは不可能で、低酸素分圧雰囲気中においてNiが酸化されないように焼成しなければならない。セラミックコンデンサ用として公知であるABO3の一般式で表現されるペロブスカイト酸化物は、1000℃以上の高温においてNiの酸化還元平衡酸素分圧以下の雰囲気に晒されると還元され、絶縁抵抗値が低下したり、電界を印加した状態での信頼性試験、いわゆる負荷寿命での不良率が増大し、コンデンサ用誘電体としての機能を果たさなくなる。
【0009】
この課題に対して、これらペロブスカイト酸化物が、AサイトとBサイトに存在するイオンの化学量論比を変化させたり、あるいは格子中にドナ−となって固溶しうる、例えば遷移金属イオン等を添加したりすることによって、前述のような熱処理を行っても還元されにくくなる性質を利用して、ペロブスカイト酸化物と微量の添加物から構成される多くの耐還元性誘電体組成物に関する知見が考案され、開示されている。例えば、特開2002−80278号公報には主成分のSrTiO3−CaTiO3系に対して、添加物としてV25およびMnCO3、焼結助剤としてSiO2−CaO系化合物を各々含有した耐還元性誘電体組成物によるセラミック誘電体層が開示されている。これにより、歪み率が小さく、DCバイアス特性に優れ、しかも安価なNi系の内部電極を使用した大容量の積層セラミックコンデンサが主として50VDCの低定格電圧品を中心に商品化されている。また、特開2007−261913号公報には主成分を構成するBaTiO3、SrTiO3およびCaTiO3がそれぞれ互いに固溶していない組成物によるセラミック誘電体層が開示されている。これにより、還元雰囲気焼成が可能となり、高誘電率でしかも良好な容量温度特性が得られている。
【特許文献1】特開平7−211140号公報
【特許文献2】特開2002−080278号公報
【特許文献3】特開2007−261913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来の耐還元性誘電体組成物によるセラミック誘電体層は、単一の固溶体相により主成分が形成されるため、静電容量等の諸特性の微調整、および特性の安定性確保が難しく、セットメ−カによる性能の多種多様な要望に対して、迅速でフレキシブルな対応が不可能であった。それに加えて、従来の単一固溶体相により形成されるセラミック誘電体層は、ペロブスカイト酸化物の固溶体に対する微量添加物の均一な分散性や反応性を考慮して設計されたものであるとは言い難く、工程上制御しえない要因によって製品の特性、品質が変動し、歩留まりの低下や信頼性不良を引き起こしていた。例えば、従来のプロセスである仮焼混合法により作製した耐還元性誘電体組成物によるセラミック誘電体層は微量添加物の中でも特にSiO2−CaO系やSiO2−CaO−BaO系等の焼結助剤成分を均一に分散させた微構造を形成させることが難しく、焼結助剤成分が不均一に分散した単一固溶体相よりなる微構造であった。すなわち、焼成時の反応過程で局部的な異常反応を起こし、結晶粒子径のばらつきが大きくなりしかもポア−が多い不均質な微細構造となり、静電容量や誘電体損失のばらつきが生じ、絶縁破壊電圧が低く、また超加速寿命試験(HALT)における故障時間の分布が広く、平均故障時間が短く、特性の安定性確保が困難であるという問題点を有していた。
【0011】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するために、諸特性のフレキシブルな微調整が可能でしかもその安定性に優れたコンポジットセラミック誘電体層、その製造方法およびそれを用いたセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明のコンポジットセラミック誘電体層は、モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体を含み、前記2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体は、均一に分散していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の様に本発明によれば、諸特性のフレキシブルな微調整が可能でしかもその安定性に優れたコンポジットセラミック誘電体層、その製造方法およびそれを用いたセラミック電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のコンポジットセラミック誘電体層は、モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体を含み、前記2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体は、均一に分散していることにより、諸特性のフレキシブルな微調整が可能でしかもその安定性に優れたセラミック電子部品を提供することができる。
【0015】
また、本発明のコンポジットセラミック誘電体層の製造法は、CaおよびBaのうち少なくとも一種以上の酢酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノ−ル溶液を撹拌混合しながらアンモニア水を滴下して(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される成分を含むコロイド状懸濁液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液をモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaY)mTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末、および微量の添加物と共に混合して原料粉末を作製する工程とを順次行うことにより製造した。
【0016】
これにより、モル比mおよびYが異なる2種類以上の固溶体粒子の周囲が、Ca、BaおよびSiを含有する焼結助剤成分により均一にコ−ティングされるため、焼結助剤成分が均一に分散された非常に緻密な組織を有するコンポジットセラミック誘電体層をえることができる。そして、中高圧用として良好な電気特性と耐久信頼性を有するNi内部電極積層セラミックコンデンサを実現することができる。
【0017】
また、コンポジットセラミック誘電体層により、中高圧用としてそれぞれの特徴を生かして、ユーザの要望に応じた諸特性の微調整と回路設計が可能なチップ型、モールド型およびリード型のNi内部電極積層セラミックコンデンサに代表されるセラミック電子部品を実現することができる。
【0018】
また、コロイド状懸濁液に含まれる(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される成分量および前記添加物の種類とその添加量を、前記固溶体粉末の合計100モルに対して規定することにより、優れた諸特性と耐久信頼性および安定性を有するセラミック電子部品を実現することが可能なコンポジットセラミック誘電体層が得られる。
【0019】
また、本発明のセラミック電子部品は第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金よりなる内部電極層を設けた有効層および第2の複数のセラミック誘電体層よりなる無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極と、前記外部電極にそれぞれ接続された端子とを備え、前記基体および外部電極が樹脂により埋め込まれたモールド型のセラミック電子部品であり、前記セラミック誘電体層を前記コンポジットセラミック誘電体層で構成することにより、諸特性が所望の製品規格値を全て満足し、且つ諸特性の微調整が可能で、しかもその安定性に優れた中高圧用積層セラミックコンデンサに代表されるセラミック電子部品が得られる。
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明のセラミック電子部品の1つであるチップ型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図である。これによると、コンポジットセラミック誘電体層13とNiを含む内部電極層12a,12b,12cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてコンポジットセラミック誘電体層13が積層されて積層体11が形成されており、該積層体11の両端部に前記内部電極層12b,12cと電気的に接合されたNi質下層外部電極14が設けられ、その上にAg質上層外部電極15が設けられた構成である。
【0021】
また、図2は、本発明のセラミック電子部品の1つであるモ−ルド型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図である。これによると、コンポジットセラミック誘電体層23とNiを含む内部電極層22a,22b,22cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてコンポジットセラミック誘電体層23が積層されて積層体21が形成されており、該積層体21の両端部に内部電極層22b,22cと電気的に接合されたNi質下層外部電極24が設けられ、その上にAg質上層外部電極25が設けられた構成である。そして、熱硬化性樹脂26に埋込まれた積層体21の両端部から導電性の端子27が引出され、該端子27を介して回路基板に表面実装できるように構成されている。
【0022】
さらに、図3は、本発明のセラミック電子部品の1つであるリ−ド型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図である。これによると、コンポジットセラミック誘電体層33とNiを含む内部電極層32a,32b,32cとを交互に積層して形成された静電容量取得層となる有効層の上下に無効層としてコンポジットセラミック誘電体層33が積層されて積層体31が形成されており、該積層体31の両端部に前記内部電極層32b,32cと電気的に接合されたNi質下層外部電極34が設けられ、その上にAg質上層外部電極35が設けられた構成である。そして、外装材36に被覆された積層体31の両端部から導電性のリード線37が引出され、該リード線37を介して回路基板に半田付けできるように構成されている。前記、3種類の構造を有する中高圧用積層セラミックコンデンサは、それぞれの特徴を生かしてセットメ−カの要望に応じた使い分けが可能であるが、特にモ−ルド型およびリード型中高圧用積層セラミックコンデンサは、異常電圧による沿面放電の心配がなく、さらに回路基板には各々の積層体の両端部から引出された端子およびリード線が半田付けされるため、回路基板にたわみが発生したとしても積層体本体には機械的応力が一切印加されないため、回路設計上優位性の極めて高いものである。
【0023】
そして、前記各々の型の中高圧用積層セラミックコンデンサのコンポジットセラミック誘電体層は、CaおよびBaのうち少なくとも一種以上の酢酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノ−ル溶液を撹拌混合しながらアンモニア水を滴下して(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される成分を含むコロイド状懸濁液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液をモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaY)mTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末、および微量の添加物と共に混合して原料粉末を作製する工程とを順次行うことにより製造したものであり、好ましくは前記コロイド状懸濁液に含まれる(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される成分は、前記モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、0.5〜6.0モルの範囲内であり、前記添加物は前記モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、各々Mn34が0.05〜0.8モルの範囲内、V25が0.02〜0.4モルの範囲内およびY23が0.01〜0.3モルの範囲内である。
【0024】
本発明の実施において使用するモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末は、平均粒子径と粒子径分布の幅が小さいものが好ましい。また、反応性についてはそれが小さい方がSL特性の発現が容易であるので、結晶化度の高い粉末を使用するのが好ましい。このような主成分の粉末を製造する工程において混入する不純物としては、ストロンチウム、カルシウム以外のアルカリ土類金属や鉄、珪素およびアルミニウム等があるが、これらの不純物は数千ppmのオ−ダで含有されていても特に支障はない。このモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末は、JIS規格SL特性(−1000〜350ppm/℃)を満足させ、且つ他の諸特性を微調整する上において最も重要なものである。これらの固溶体はSrTiO3−CaTiO3の各粉末、若しくはSrCO3−CaCO3−TiO2の各粉末から固相反応により合成される。具体的には、1100〜1300℃の仮焼温度で合成され、粉砕工程等を経由して本発明のセラミック電子部品である中高圧用積層セラミックコンデンサを製造するために4.0〜7.0m2/gのBET値を有する粉末に調整される。
【0025】
主成分の粉末を混合するコロイド状懸濁液の出発材料であるCaおよびBaの酢酸塩およびSiのアルコキシドは一般的市販品が使え、これらに含有される不純物は似通った化学的性質を有する金属であるため、前述の主成分と同様に数千ppmのオ−ダで含有されていても特に支障はない。また、アルコキシドを溶解させるエタノ−ルも一般的な市販品が使用できる。
【0026】
これら酢酸塩やアルコキシドは水−エタノ−ル溶液中で水和したイオンとして存在して、後のアンモニア水の滴下によって微細な水酸化物をコロイド状懸濁液の形で生成するものである。これを主成分となるモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末と混合した際、均一な状態で分散されることが望ましいため、アンモニア水の濃度は1モル/リットル以下、工程の設備的、時間的余裕がある場合にはより低濃度にするのが望ましい。アンモニア水の濃度が1モル/リットルを超えて高濃度になると、前述の水酸化物が偏って生成し組成的に不均一な状態で主成分の粉末と混合される。従って、均一なコンポジットセラミック誘電体層を形成することが困難となり、本発明の意図するところとは全く異なった結果となる。
【0027】
主成分である(Sr1-YCaYmTiO2+mにおいて、Yは、0.2≦Y≦0.5の範囲である。Yが0.2未満では10〜100℃の温度範囲で相転移を起こさないために静電容量の温度変化率が大きくなり、JIS規格SL特性(−1000〜350ppm/℃)から逸脱し、またYが0.5を超えると誘電率が著しく低下する。さらに、mは、0.994≦m≦1.006の範囲である。mが0.944未満ではコンポジットセラミック誘電体層において粒成長が助長されると同時に耐還元性が損なわれるため、Q値の低下および絶縁破壊電圧の劣化が生じる。また、mが1.006を超えるとコンポジットセラミック誘電体層が難焼結となり、緻密な焼結体をえるのに高い焼結温度を有する。
【0028】
本発明の実施において適用する主成分は、モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末であり、モル比mおよびYは前記の領域内で任意に選択することができる。
【0029】
モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して添加される各添加物の量は、中高圧用積層セラミックコンデンサの製品特性である誘電率、Q値、静電容量の温度変化率、絶縁抵抗、絶縁破壊電圧、高温負荷寿命、自己発熱および焼成温度における耐還元性の観点から限定される。
【0030】
モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、Mn34が0.8モルを超えると静電容量の温度変化率が大きくなり、JIS規格SL特性から逸脱し、また0.05モル未満になると耐還元性が損なわれ、Q値が低下し、絶縁抵抗および絶縁破壊電圧が劣化する。モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、V25が0.4モルを超えると耐還元性が損なわれ容易に還元され、絶縁抵抗および絶縁破壊電圧が劣化し、また0.02モル未満になると高温負荷寿命が短くなる。モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、Y23が0.3モルを超えると絶縁破壊電圧が劣化し、また0.3モル未満になると高温負荷寿命が短くなる。
【0031】
さらに、モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される焼結助剤成分が6.0モルを超えると誘電率が低下すると共に高温負荷寿命が劣化し、また0.5モル未満になると焼結助剤成分としての効果が得られず焼成による緻密化が不完全となり同時にQ値が低下し、自己発熱が増大する。
【0032】
次に、本発明のセラミック電子部品の1つである中高圧用積層セラミックコンデンサの詳細な製造方法について説明する。
【0033】
主成分であるモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、添加物であるMn34、V25、Y23の各々の所定量を組成表に基づいて電子天秤で秤量し、5mmφのZrO2質ボールが350g入った内容積が600CCのポリエチレン製ポットミル中に投入する。次に、前記固溶体の粉末の合計100モルに対して、Ba、Caの酢酸塩およびTEOS(テトラエトキシシラン)の所定量を同じく組成表に基づいて電子天秤で秤量した後、酢酸塩は100CCの純水に、またTEOSは150CCのエタノールに別々に溶解させる。そして、酢酸塩水溶液をエタノール溶液中に投入して、プロペラ攪拌機で攪拌を続けながら1規定のアンモニア水を所定量滴下して、(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される焼結助剤成分を含むコロイド状懸濁液を得た。
【0034】
次に、該コロイド状懸濁液を上記ポットミル中に投入し100rpmの回転速度で20時間混合した。混合物は150メッシュのシルクスクリーンで濾過して、テフロン(登録商標)シートを敷いたステンレスバット中に投入し、そして防爆型乾燥機を使用して120℃の温度で乾燥した。乾燥した塊状物はアルミナ乳鉢中で解砕した後、32メッシュのナイロン篩を通過してアルミナ製坩堝に入れて400℃/2時間の条件で熱処理してスラリー用粉末とした。
【0035】
次に、スラリー用粉末を所定量の溶剤および可塑剤と共に混合することにより湿潤した。湿潤後、ポリビニルブチラール樹脂よりなるビヒクルを混合してシート成形用スラリーを作製した。
【0036】
次に、該スラリーを150メッシュのシルクスクリーンで濾過した後、成膜してセラミック生シートを得た。そして、該セラミック生シートと、Niペーストより作製した内部電極シートを用いて転写工法により所定の積層仕様に基ずいて積層した後、切断してグリーンチップを得た。
【0037】
次に、得られたグリーンチップを面取りした後、その両端面に下層外部電極となるNiペーストを塗布し乾燥した後、脱脂した。そして、回転式雰囲気炉により還元雰囲気焼成を実施した。焼成は、グリーンガス、CO2およびN2により調整したNiの平衡酸素分圧よりも2桁程度低い酸素分圧雰囲気中で1250℃の温度で2時間保持した。この時点で、Ni内部電極により挟まれたコンポジットセラミック誘電体層が形成される。そして、焼成したチップの両端面に上層外部電極となるAgペ−ストを塗布して大気中で焼き付けた後、Ni鍍金およびその上にSn鍍金を施すことにより図1に示した様な、本発明のセラミック電子部品の1つであるチップ型中高圧用積層セラミックコンデンサをえることができる。
【0038】
また、前記チップ型中高圧用積層セラミックコンデンサ素子の両端面に導電性の金属端子を半田付けした後、該素子および金属端子の主要な部分を熱硬化性樹脂で埋め込むことにより図2に示した様な、本発明のセラミック電子部品の1つであるモ−ルド型中高圧用積層セラミックコンデンサをえることができる。
【0039】
さらに、前記チップ型中高圧用積層セラミックコンデンサ素子の両端面に導電性のリ−ド線を半田付けした後、該素子およびリ−ド線の主要な部分を外装材で被覆することにより図3に示した様な、本発明のセラミック電子部品の1つであるリ−ド型中高圧用積層セラミックコンデンサをえることができる。
【0040】
この様にして得られたセラミック電子部品の1つである中高圧用積層セラミックコンデンサは、そのセラミック誘電体層がコンポジットセラミック誘電体層より構成されており、しかもその微細構造が非常に均一で緻密な組織を有しているため、Q値が高く、静電容量温度変化率がJIS規格SL特性を満足し、高周波電流下において自己発熱が小さく、中高圧用として耐久信頼性に優れており、LCDを構成しているバックライトのインバータ電源回路等の主として高周波高パルスが印加される回路に適用される。また、モル比mおよびYの比率を、規定した領域内で変化させた複数の固溶体を使用することにより、セットメ−カの要望に対応した諸特性のフレキシブルな調整が可能となる。そして、本発明の中高圧用積層セラミックコンデンサは、その形状がチップ型、モ−ルド型およびリ−ド型としてそれぞれの構造上の特徴を生かしてセットメ−カの要望に応じた使い分けが可能である。
【実施例】
【0041】
次に本発明の具体例を説明する。
【0042】
(実施例1)
実施例1においては、主成分の組成を固定した上で添加物と焼結助剤のモル数を変動させて諸特性を評価した結果について述べる。
【0043】
実験の手順は(表1)に示した組成表に従って、主成分であるモル比mおよびYが異なる2種類の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末の合計100モルに対して、添加物であるMn34、V25およびY23の各々の所定量を電子天秤で秤量した配合物と、CaおよびSiよりなる焼結助剤成分を含むコロイド状懸濁液をポットミルで混合して各々の出発原料粉末を作製した。なお、本実施例における、焼結助剤成分の組成はCaSiO3である。
【0044】
【表1】

【0045】
次に、作製した粉末によりコンポジットセラミック誘電体層を構成して、テストサンプルとして図1に示したような形状が3216サイズのNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサを試作して総合評価するものである。
【0046】
なお、テストサンプルであるNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサの製造方法は、前記実施の形態において示した一連の手順と同じである。
【0047】
以下に、試作したNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサの評価項目および評価方法について説明する。
【0048】
靜電容量(Cap)とQ値はYHP製LCRメータ4284Aを使用して1V/1MHzの信号電圧下で測定した。誘電率は測定した靜電容量(Cap)値と試作したNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサのセラミック誘電体層の厚みおよび対向電極面積より算出した。絶縁抵抗値(IR)はアドバンテスト社製絶縁抵抗計R8340Aを使用して500VDCを1分間印加して測定した。絶縁破壊電圧(BDV)は菊水電子製耐圧計を使用してシリコ−ン油中で直流破壊電圧を測定した。靜電容量の温度変化率(Cap−TC)は恒温槽にYHP製LCRメータ4284Aを接続して0〜+125℃の範囲内で測定した。自己発熱は高周波電源を使用してコイルのインダクタンスLとコンデンサの静電容量Capによる共振回路を応用して200KHzの周波数で共振させながら徐々に昇圧して2KVの電圧で測定した。また、信頼性評価の一環として、125℃の温度で1.5KVDCの電圧を印加して高温負荷試験を実施した。
【0049】
靜電容量とQ値は各々20個測定に供し、絶縁抵抗値と絶縁破壊電圧は各々10個、靜電容量の温度変化率と自己発熱は各々2個測定し、平均値を算出した。また、高温負荷試験は、各組成物により試作したテストサンプルを各々20個ずつ専用の基板に半田付け実装した後、前記条件下で実施し、1000時間に至るまでに3個以上破壊したものをNGとした。
【0050】
これら一連の測定結果を(表2)に示した。ここで、(表2)のRunNo.は(表1)のRunNo.に対応している。また、(表2)中のRunNo.に※印を記したものは、評価項目の内少なくとも1つについて良好な結果が得られなかったテストサンプルであり、本発明範囲外のコンポジットセラミック誘電体層により構成したセラミック電子部品である。
【0051】
【表2】

【0052】
各々50モルの(Sr1-0.367Ca0.3671.003TiO3.003および(Sr1-0.452Ca0.4520.995TiO2.995の主成分粉末の合計100モルに対してMn34が0.8モルを超えると静電容量の温度変化率曲線において転移点が消滅し、JIS規格SL特性から逸脱した。また0.05モル未満になると耐還元性が損なわれ、Q値が低下し、絶縁抵抗および絶縁破壊電圧が劣化し、自己発熱が増大し、高温負荷寿命が悪化した。前記、主成分粉末の合計100モルに対してV25が0.4モルを超えると耐還元性に問題が生じ、絶縁抵抗および絶縁破壊電圧が劣化し、自己発熱が増大し、高温負荷寿命が悪化した。また0.02モル未満になると高温負荷寿命が著しく悪化した。前記、主成分粉末の合計100モルに対してY23が0.3モルを超えると絶縁破壊電圧が劣化し、また0.01モル未満になると高温負荷寿命が悪化した。
【0053】
さらに、前記、主成分粉末の合計100モルに対してCaSiO3で表される焼結助剤成分が6.0モルを超えると誘電率が低下し、高温負荷寿命が悪化した。また0.5モル未満になると焼結助剤成分としての効果が得られず、Q値が低下し、自己発熱が増大した。
【0054】
これに対して、本発明範囲内のコンポジットセラミック誘電体層により構成したNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサは、良好な焼結性と耐還元性とを有し、静電容量の温度変化率がJIS規格SL特性を満足すると同時に中高圧用としての用途に適した電気特性を有し、高周波電流下における自己発熱が小さく、耐久信頼性に優れたものであった。
【0055】
以上の様に、本発明のコンポジットセラミック誘電体層により、高Q値、低発熱の中高圧用チップ型積層セラミックコンデンサに代表されるセラミック電子部品を実現することが可能となる。これは、LCDを構成しているバックライトのインバータ電源等の高周波高パルスが印加される回路に適用されるものである。
【0056】
(実施例2)
実施例2においては、2種類の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体の主成分粉末の合計100モルに対する添加物と焼結助剤のモル数を固定させた上で、前記2種類の主成分粉末の比率、およびモル比m、Yを各々変動させて諸特性を評価した結果について述べる。
【0057】
実験の手順は(表3)に示した組成表に基づいて、実施例1と同様の手順で実施して、各々の出発原料粉末を作製した。すなわち、主成分粉末の合計100モルに対して、添加物であるMn34、V25およびY23、そして、焼結助剤成分であるCaSiO3を固定して実施した。
【0058】
【表3】

【0059】
次に、実施例1と同様に、作製した粉末によりコンポジットセラミック誘電体層を構成して、テストサンプルとして図1に示したような形状が3216サイズのNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサを試作して総合評価するものである。
【0060】
なお、テストサンプルであるNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサの製造方法は、前記実施の形態において示した一連の手順と同じである。
【0061】
試作したNi内部電極チップ型積層セラミックコンデンサの評価項目および評価方法については、実施例1と同様である。
【0062】
(表4)に一連の測定結果を示した。ここで、(表4)のRunNo.は(表3)のRunNo.に対応している。また、(表4)中のRunNo.に※印を記したものは、評価項目の内少なくとも1つについて良好な結果が得られなかったテストサンプルであり、本発明範囲外のコンポジットセラミック誘電体層により構成したセラミック電子部品である。
【0063】
【表4】

【0064】
(表3)および(表4)より明らかな様に、2種類の主成分のうちいずれかの(Sr1-YCaY)mTiO2+mにおいて、モル比Yが0.2未満では+125℃における静電容量の温度変化率が大きくなりJIS規格SL特性を満足せず、さらにQ値が低下し、高温負荷寿命が悪化した。またYが0.5を超えると誘電率が著しく低下した。さらに、2種類の主成分のうちいずれかの(Sr1-YCaYmTiO2+mにおいて、モル比mが0.944未満ではセラミック誘電体層において粒成長が著しくなり同時に耐還元性が損なわれるため、Q値が低下して、さらに絶縁破壊電圧が劣化した。また、mが1.006を超えると焼結性が乏しくなるため、緻密質なセラミック誘電体層が形成されにくくなり、誘電率が低下して、さらにQ値も低下した。
【0065】
そして、RunNo.18,19の結果より、主成分を1種類の固溶体のみとした場合、評価した諸特性の中で著しい劣化を示した特性が発生した。それに加えて、諸特性のフレキシブルな微調整が困難であることが判明した。
【0066】
(実施例3)
実施例1で検討したRunNo.3の出発原料粉末によるコンポジットセラミック誘電体層で構成されたチップ型のNi内部電極中高圧用積層セラミックコンデンサを試作して評価した。
【0067】
試作したNi内部電極中高圧用積層セラミックコンデンサは図1に示した様な構造を有しており、有効層数が20層で、静電容量値が100PF±5.0%という規格値を満足し、Q値が730と高く、絶縁破壊電圧が8〜9KVDCで非常に高レベルの電気特性を有していた。また、静電容量の温度変化率は20℃基準を基準にして、+125℃での静電容量変化率が−11.4%程度でありJIS規格SL特性を満足していた。さらに、室温での自己発熱は200KHzの周波数で共振させながら徐々に昇圧して2KVの電圧で測定したところ3〜4℃と小さく、また+125℃の温度で定格電圧の2倍である6KVDCを1000時間印加したが、絶縁劣化の進行による絶縁破壊等の発生はなく、耐久信頼性に優れたものであった。
【0068】
次に、前記チップ型のNi内部電極中高圧用積層セラミックコンデンサの両端部に金属端子を半田付けした後、該積層セラミックコンデンサ本体および前記金属端子の主要な部分をエポキシ系の熱硬化性樹脂に埋め込むことにより図2に示した様なモ−ルド型のNi内部電極中高圧用積層セラミックコンデンサを完成させた。該モ−ルド型の積層セラミックコンデンサは、前記チップ型の積層セラミックコンデンサと同様に非常に優れた電気特性を有し、所定の製品規格値を満足していることはいうまでもないが、モ−ルド型に特有の高圧パルス印加時の沿面リ−クの心配がなく、また基板に実装された状態でのたわみ強度に優れ、より高度な耐久信頼性を有しているものである。該モ−ルド型の積層セラミックコンデンサを+125℃の恒温槽にセットして4KVで100KHzの高周波電圧を1000時間印加したが、焼損や絶縁破壊等の発生はなかった。ものである。
【0069】
以上の様に、本発明のセラミック電子部品はその誘電体層が主成分となる複数の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体により構成されたコンポジット誘電体層であるため、高Q値、低発熱および高絶縁破壊電圧が要求されているインバータ電源回路等に十分適用できるものである。また、上記複数の固溶体の比率、およびモル比Y、mを制御することにより、諸特性の微調整が可能となり、ユーザの多様な要望に迅速に対応できるセラミック電子部品を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のコンポジットセラミック誘電体層は、諸特性のフレキシブルな微調整が可能でしかもその安定性に優れたものであるため、このコンポジットセラミック誘電体層を用いた電子部品等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】チップ型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図
【図2】モ−ルド型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図
【図3】リ−ド型中高圧用積層セラミックコンデンサの側断面図
【符号の説明】
【0072】
11,21,31 積層体
12a,22a,32a 内部電極層
12b,22b,32b 内部電極層
12c,22c,32c 内部電極層
13,23,33 コンポジットセラミック誘電体層
14,24,34 Ni質下層外部電極
15,25,35 Ag質上層外部電極
26 熱硬化性樹脂
27 端子
36 外装材
37 リード線
38 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体を含み、前記2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体は、均一に分散していることを特徴とするコンポジットセラミック誘電体層。
【請求項2】
CaおよびBaのうち少なくとも一種以上の酢酸塩水溶液とSiの金属アルコキシドエタノ−ル溶液を撹拌混合しながらアンモニア水を滴下して(Ca1-XBaX)SiO3(但し、0≦X≦1)の一般式で表される成分を含むコロイド状懸濁液を作製する工程と、該コロイド状懸濁液をモル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m(但し、0.2≦Y≦0.5かつ0.994≦m≦1.006)系固溶体の粉末、および微量の添加物と共に混合して原料粉末を作製する工程とを順次行うことにより製造したことを特徴とするコンポジットセラミック誘電体層の製造方法。
【請求項3】
前記コロイド状懸濁液に含まれる(Ca1-XBaX)SiO3の一般式で表される成分は、前記モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体の粉末の合計100モルに対して、0.5〜6.0モルの範囲内であることを特徴とする請求項2記載のコンポジットセラミック誘電体層の製造方法。
【請求項4】
前記添加物は、前記モル比mおよびYが異なる2種類以上の(Sr1-YCaYmTiO2+m系固溶体の粉末の合計100モルに対して、Mn34が0.05〜0.8モルの範囲内、V25が0.02〜0.4モルの範囲内、およびY23が0.01〜0.3モルの範囲内であることを特徴とする請求項2記載のコンポジットセラミック誘電体層の製造方法。
【請求項5】
第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金よりなる内部電極層を設けた有効層および第2の複数のセラミック誘電体層よりなる無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極とを備えたチップ型のセラミック電子部品であり、前記セラミック誘電体層を請求項1記載のコンポジットセラミック誘電体層で構成したことを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項6】
第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金よりなる内部電極層を設けた有効層および第2の複数のセラミック誘電体層よりなる無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極と、前記外部電極にそれぞれ接続された端子とを備え、前記基体および外部電極が樹脂により埋め込まれたモールド型のセラミック電子部品であり、前記セラミック誘電体層を請求項1記載のコンポジットセラミック誘電体層で構成したことを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項7】
第1の複数のセラミック誘電体層の間にNi或いはNiを主成分とする合金よりなる内部電極層を設けた有効層および第2の複数のセラミック誘電体層よりなる無効層を有した基体と、前記基体の両端部から側部に至るように設けられ、前記内部電極層と電気的に接合された一対の外部電極と、前記外部電極にそれぞれ接続されたリード線とを備え、前記基体および外部電極が樹脂により被覆されたリード型のセラミック電子部品であり、前記セラミック誘電体層を請求項1記載のコンポジットセラミック誘電体層で構成したことを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項8】
前記外部電極は上層、下層の二層構造であり、下層は前記基体の端面のみに設けたことを特徴とする請求項5〜7いずれか1に記載のセラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−137822(P2009−137822A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319176(P2007−319176)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】