説明

コーティング布帛

【課題】 意匠性を有すると共に通気性、防撥水性なども併せ持つ、衣料用途に適した布帛を提供することを課題とする。
【解決手段】 布帛の片面に高発泡層がパターン状に設けられ、さらに該高発泡層表面に保護層が積層貼合されていることを特徴とするコーティング布帛。本発明には、前記布帛が防撥水性織物であること、並びに防撥水性織物がポリエステルフィラメント糸を用いてなり、カバーファクターが1500〜2500であることが好ましい態様として含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カジュアル用途、スポーツ用途、アウトドア用途などに好適なコーティング布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体感を有する樹脂層をパターン状に形成することで、装飾性や意匠性を有するシートや布帛などが提案されている。
【0003】
そのような特性を付与するための手段として、熱膨張性マイクロカプセルが使用されている。熱膨張性マイクロカプセルは、加工安定性や安全性などの点で優れている。
【0004】
例えば、特許文献1には、裏打材上に熱可塑性樹脂発泡層を挟んで印刷シートを接着してなり、印刷シートがプラスチックの基材シートの下面に硬化樹脂インキの盛り上げ印刷層を形成したものであり、樹脂発泡層は盛り上げ印刷に同調して、盛り上げ印刷層の有る部分は発泡が抑制された部分であり、無い部分は高度に発泡した部分であって、発泡の強弱により表面を凹凸にした内装建材用化粧シ−トが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む膨張層、金属層、プライマー層から構成される装飾シートが開示されている。このシートにおいては、熱膨張性マイクロカプセルをパターン状に分布させることで、膨張層が凹凸感に富むものとなる。つまり、熱膨張性マイクロカプセルを加熱・発泡することにより、マイクロカプセルを有する領域と有しない領域と間で凹凸感が発現し、メタリック調の立体感を有するシートが得られるのである。
【特許文献1】特開平5−200927号公報
【特許文献2】特開2000−33660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、何れも衣料用途へ適用することができず、しかも、通気性や防水性といった着用快適性にかかる特性を具現させることができない。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みて行われたものであり、意匠性を有すると共に通気性、防撥水性なども併せ持つ、衣料用途に適した布帛を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、布帛上に高発泡層をパターン状に設け、その高発泡層を覆うような形態で保護層を積層すれば、凹凸感に富んだ意匠性を有し、同時に通気性なども具備する、衣料用途に好適なコーティング布帛が得られること知見し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、布帛の片面に高発泡層がパターン状に設けられ、さらに該高発泡層表面に保護層が積層貼合されていることを特徴とするコーティング布帛を要旨とするものである。そして、本発明には、前記布帛が防撥水性織物であること、並びに防撥水性織物がポリエステルフィラメント糸を用いてなり、カバーファクターが1500〜2500であることが好ましい態様として含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング布帛は、高発泡層がパターン状に設けられているので、意匠性に優れている。そして、その高発泡層を覆うような形態で保護層が積層されているので、繰り返し使用による高発泡層の損傷を抑制することができる。また、本発明のコーティング布帛は、布帛表面の一部のみをコーティングしたものであるから、通気性などに優れている。
【0011】
本発明では、コーティング基布として用いる布帛が防撥水性織物であることが好ましく、さらに、防撥水性織物として特定の織物を採用すれば、コーティング布帛の防水性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明における布帛としては、一般的に織物、編物、不織布など、衣料に用いうるものが採用できる。そして、布帛を構成する繊維としては、任意のものが使用でき、例えば、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系合成繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系合成繊維、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維の他、トリアセテートなどの半合成繊維やナイロン6/綿、ポリエチレンテレフタレート/綿などの混合繊維などが採用できる。
【0014】
本発明のコーティング布帛には、布帛の片面に高発泡層がパターン状に設けられている。高発泡層は、基本的に合成樹脂と熱膨張性マイクロカプセルとで形成される。合成樹脂としては、衣料用途に適した風合いを具現できるものであれば特に限定されないが、100%モジュラスとして0.5〜20MPa、好ましくは1〜10MPaの樹脂膜形成能を有するものを採用することが好ましい。具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを単独で又は混合して用いるのがよい。中でも、ポリウレタンを単独で用いることが特に好ましい。
【0015】
一方、熱膨張性マイクロカプセルは、従来公知の任意のものが使用しうる。具体的には、その粒子径が5〜50μm程度のものであり、外殻が塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどの重合物からなる熱可塑性樹脂で形成され、この外殻内部にイソブタン、イソペンタン、n?ペンタンなどの低沸点炭化水素が内包されてなる熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。このような熱膨張性マイクロカプセルは、80〜200℃程度の加熱下で、約20〜70倍体積膨張するものである。
【0016】
そして、高発泡層中における熱膨張性マイクロカプセルの含有割合としては、1〜40質量%が好ましく、3〜20質量%が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの含有割合が1質量%未満になると高発泡層の立体感が乏しくなる傾向にあり、一方、40質量%を超えると、合成樹脂によって熱膨張性マイクロカプセルを保持し難くなり、また、高発泡層が脆くなって耐久性が低下しやすい傾向にあり、好ましくない。
【0017】
なお、上記高発泡層中にそれぞれ、高発泡層の意匠性を向上させる観点から充填剤、顔料、パール顔料などの化粧剤を、高発泡層の強度を向上させる観点からイソシアネート樹脂、エポキシ樹脂などの架橋剤を、高発泡層の機能性を向上させる観点から、消臭剤、抗菌剤、防炎剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0018】
本発明では、布帛の片面に高発泡層がパターン状に設けられているが、この「パターン状に設けられる」とは、高発泡層が全体として一定の模様を呈するように積層されるという意味であり、その模様は任意でよい。具体的には、ドット状、格子状、線状、斜線型、市松模様、ピラミッド型、亀甲柄、特定の商標柄などの均一性のある柄、又はランダム状の柄などの見映えのある模様が採用できる。
【0019】
布帛表面に占める高発泡層の面積比率としては、2〜70%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がより好ましい。面積比率が2%未満になると、柄として細線柄を採用してもコーティング布帛が意匠性を発揮し難い傾向にあり、一方、70%を超えると、コーティング布帛の通気性が低下し、かつ風合いが硬化する傾向にあり、好ましくない。
【0020】
また、高発泡層の厚みとしては、5〜100μmの範囲が好ましく、10〜80μmの範囲がより好ましく、20〜50μmの範囲が特に好ましい。厚みが5μm未満になると、コーティング布帛の凹凸感が低減し、意匠性に乏しくなる傾向にあり、一方、100μmを超えると、コーティング布帛の質量が増加する傾向にあるだけでなく、風合いが硬化し、摩耗や洗濯などにより高発泡層が容易に脱落する傾向にあり、好ましくない。
【0021】
本発明のコーティング布帛においては、高発泡層表面に保護層が積層貼合されている。ただし、保護層は布帛の片面全体に設けられるのではなく、パターン状の高発泡層の箇所のみに設けられる。つまり、高発泡層のパターン状の模様と同調させて、保護層を形成するのである。保護層は高発泡層を被覆することにより、高発泡層を外力から守るものであるから、保護層の模様は高発泡層と同一であり、大きさは高発泡層と比べ同一かわずかに大きい。
【0022】
また、保護層としては、基本的に高発泡層を構成している合成樹脂と同一の合成樹脂を採用して層を形成することが好ましい。したがって、保護層においてもポリウレタンを単独で用いることが好ましいのである。なお、保護層中に、必要に応じて、充填剤、顔料、パール顔料などの化粧剤、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂などの架橋剤、又は滑剤、耐摩耗剤、消臭・抗菌剤、防炎剤などの添加剤を適宜含有させてもよい。
【0023】
保護層の厚みとしては、1〜50μmの範囲が好ましく、3〜30μmの範囲がより好ましく、5〜20μmの範囲が特に好ましい。厚みが1μm未満になると、保護層として高発泡層を保護し難い傾向にあり、一方、50μmを超えると、コーティング布帛の風合いが硬くなる傾向にあり、好ましくない。
【0024】
本発明のコーティング布帛は、以上のように高発泡層がパターン状に設けられているので、意匠性に優れている。したがって、高発泡層ではない単なる合成樹脂層がパターン状に設けられているだけでは意匠性は発揮されないし、高発泡層が布帛の片面全体に設けられていても同じく意匠性は発揮されない。そして、その高発泡層を覆うような形態で保護層が積層されているので、繰り返し使用による高発泡層の損傷を抑制することができる。また、本発明のコーティング布帛は、布帛表面の一部のみをコーティングしたものであるから、通気性などに優れている。
【0025】
本発明のコーティング布帛は、ブルゾン、コートなどのカジュアル用途、スキーウエア、スノーボードウエアなどのスポーツ用途、登山衣、サイクリング衣などのアウトドア用途に好適であるが、これら用途においては、着衣快適性の観点から雨水の浸入を防ぐ機能(防撥水性)を具備することが好ましい。
【0026】
そこで、本発明においては、コーティング基布として用いる布帛として防撥水性織物を採用することが好ましい。防撥水性織物とは、防水性及び撥水性を具備する織物をいい、具体的には、防水性としてJIS L1092(低水圧法)による耐水圧が2kpa以上であり、かつ撥水性としてJIS L1092(スプレー法)による撥水度が4級以上である織物を指す。
【0027】
また、防水性をより高めたい場合は、例えば、コーティング基布として用いる布帛として、ポリエステルフィラメント糸を用いてなり、カバーファクターが好ましくは1500〜2500で、より好ましくは1800〜2300である防撥水性織物を採用すればよい。
【0028】
ここでカバーファクターとは、織物を構成する糸条の太さと織物密度とによって定められる織物構造の粗密を表す係数である。カバーファクターが1500未満になると、糸条間の空隙が大きくなる傾向にあり、後述の目潰し加工を実施しても良好な防水性を具現し難い傾向にあり、一方、2500を超えると、糸条の構成や織物組織をどのように工夫しても、コーティング布帛の風合いが硬くなる傾向にあると共に通気度も低下する傾向にあり、好ましくない。
【0029】
次に、本発明のコーティング布帛を製造する方法について説明する。
まず、コーティング基布として用いる布帛を準備する。布帛としては、特に限定されるものでないが、織編物が好ましい。また、布帛を構成する糸条としては、ポリアミド系又はポリエステル系合成繊維からなるフィラメント糸が好ましい。この場合、単糸繊度としては0.1〜3.0dtexの範囲が、トータル繊度としては30〜170dtexの範囲が好ましい。単糸繊度が0.1dtex未満又はトータル繊度が30dtex未満になると、コーティング布帛の強度や堅牢度が低下する傾向にあり、一方、単糸繊度が3.0dtexを超える又はトータル繊度が170dtexを超えると、緻密構造が得られ難く、その結果、防撥水性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0030】
布帛として織物を採用する場合は、前述のように防撥水性織物を採用するのが好ましいが、この防撥水性織物は、布帛を撥水加工することにより得ることができる。撥水加工に用いる撥水剤としては、パラフィン系撥水剤、ポリシロキサン系撥水剤、フッ素系撥水剤など公知のものが使用しうる。処理方法としては、一般的なパディング法、スプレー法などが採用できる。特に良好な防水性を必要とする場合は、フッ素系撥水剤を使用し、例えば、AG−7000(旭硝子株式会社製、フッ素系撥水剤エマルジョン)を8%含む水分散液でパディング(絞り率50%)した後、130〜180℃で30〜300秒間熱処理すればよい。また、耐久性をも必要とする場合は、メラミン系樹脂、イソシアネート樹脂、グリオキザール系樹脂などの架橋剤を併用することが好ましい。
【0031】
また、布帛として編物を採用する場合は、ハイゲージトリコット、ハイゲージトリコットサテンなどの緻密構造編物が好ましい。
【0032】
コーティング基布として用いる布帛は、このように緻密構造を有するものが好ましいが、布帛の緻密構造をより促進させるには、布帛を目潰し加工すればよい。目潰し加工は、通常、カレンダー加工機などを用いて行い、加工条件としては、布帛の形態にもよるが、温度として130〜190℃が、圧力として0.1〜10Mpaが好ましい。
【0033】
布帛を準備した後は、当該布帛上に高発泡層と保護層とを形成しうる合成樹脂層を順次パターン状に設ける。一例として、グラビアロールやスクリーンメッシュなどを用いるコーティング手段の後、乾燥することで、各層にかかる合成樹脂層を順次形成することができる。このとき、高発泡層がなす模様の精度と両層がなす同調の度合いとを高める観点から、両層にかかる合成樹脂溶液の粘度調整を適切に行うことが好ましい。つまり、高発泡層にかかる合成樹脂溶液は、比較的高い粘度に設定することで精度のよい模様を布帛上に反映でき、一方、保護層にかかる合成樹脂溶液は、比較的低い粘度に設定することで、高発泡層にかかる合成樹脂層を十分に被覆することができるのである。また、理由は定かではないが、両層にかかるコーティングを連続的に速やかに行うと、高発泡層がなす模様の精度が高まる傾向にある。
【0034】
それぞれの合成樹脂層を形成した後は、乾燥機又はヒートセッター機などを用いて、80〜200℃で10〜300秒間加熱する。これにより、高発泡層にかかる合成樹脂層中に含まれる熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることができると共に、保護層にかかる合成樹脂層も架橋させることができる。以上のようにして本発明のコーティング布帛を得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、実施例、比較例及び参考例におけるコーティング布帛の性能の測定、評価は、次の方法で行った。
(1)耐水圧
JIS L1092記載の低水圧法で評価した。
(2)撥水度
JIS L1092記載のスプレー法で評価した。
(3)意匠性;
目視にて、立体感および視認性を下記の4段階で評価した。
◎・・・品位並びに立体感・視認性が良好
○・・・品位並びに立体感・視認性がほぼ良好
△・・・品位並びに立体感・視認性がやや不良
×・・・品位並びに立体感・視認性が不良
(4)洗濯耐久性
洗濯20回(JIS L0217 103法)後のコーティング布帛について、上記(1)〜(3)を評価した。
(5)通気度
JIS L−1096記載のフラジール法で評価した。
(6)風合い
ハンドリング(手触り)にて、下記の4段階で評価した。
◎・・・非常に柔らかい
○・・・やや柔らかい
△・・・やや硬い
×・・・硬い
【0036】
(実施例1)
ナイロンマルチフィラメント78dtex68fの単糸を経糸に、双糸を緯糸に用いて、経糸密度150本/2.54cm、緯糸密度70本/2.54cmの2/2綾組織織物を製織し、精練、染色(日本化薬株式会社製、「Kayanol Cyanine Green G(商品名)」を1%omf使用)し、コーティング基布たる布帛を得た。
【0037】
そして、布帛表面に、大きさ5mm四方の市松模様が塗布できるように設計された、ポリエステル17dtexモノフィラメント製のスクリーンメッシュを用いて、下記処方1に示す組成のポリウレタン樹脂溶液(固形分濃度33%、粘度6000mPa・s/25℃)をコーティングした。その後、100℃で2分間乾燥して、厚みが約30μmであり大きさが5mm四方の市松模様を有する合成樹脂層を形成した。なお、該合成樹脂層中において、熱膨張性マイクロカプセルは未だ膨張していない状態であった。
【0038】
<処方1>
スーパーフレックスE−4000 80質量部
(第一工業製薬株式会社製、樹脂固形分40%の非反応型水溶性ポリウレタン樹脂)
マイクロスフェアーH750 2質量部
(大日精化工業株式会社製、粒子径が約25μm、適正発泡温度帯が150〜170℃の熱膨張性マイクロカプセル)
M2005A 4質量部
(第一工業製薬株式会社製、増粘剤)
水 10質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
【0039】
次に、上記スクリーンメッシュを用いて、下記処方2に示す組成のポリウレタン樹脂溶液(固形分濃度14%、粘度2000mPa・s/25℃)により市松模様を有する上記合成樹脂層が完全に覆われるようにコーティングした。その後、100℃で2分間乾燥し、厚みが約10μmで、多少バラツキはあるものの大きさが5.0〜5.5mm四方の市松模様を有する合成樹脂層(保護層にかかる合成樹脂層)を形成した。
【0040】
<処方2>
エラストロンTP?20 50質量部
(第一工業製薬株式会社製、樹脂固形分25%の熱反応型水溶性ポリウレタン樹脂)
エラストロン CAT?21 5質量部
(第一工業製薬株式会社製、エラストロン樹脂用触媒)
水 50質量部
そして、170℃で1分間加熱して、高発泡層にかかる合成樹脂層中の熱膨張性マイクロカプセルを膨張させると共に保護層にかかる合成樹脂層を架橋させた。以上のようにして本発明のコーティング布帛を得た。
【0041】
(実施例2)
ナイロンマルチフィラメント78dtex68fの単糸を経緯糸に用いて、まず、経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平織物を製織し、精練、染色(日本化薬株式会社製、「Kayanol Blue NR(商品名)」を1%omf使用)した。そして、エマルジョンタイプのフッ素系撥水剤としてアサヒガードAG−7000(旭硝子株式会社製)を8%含む水分散液でパディング(絞り率50%)し、乾燥後、170℃で1分間熱処理した。その後、カレンダー加工機を用いて、温度150℃、圧力300kpaの条件で当該布帛を目潰し加工することにより、コーティング基布たる布帛を得た。
【0042】
次に、この布帛を用いて、実施例1と同様にコーティング(ただし、目潰し面にコーティングする)、乾燥、加熱し、本発明のコーティング布帛を得た。
【0043】
(実施例3)
経緯糸にポリエステルウルトラマルチフィラメント94dtex170fを用いて、経糸密度125本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平織物(カバーファクター:2133)を製織し、精練、染色(三井BASF染料株式会社製、「Miketon Polyester Navy Blue 3GS(商品名)」を2%omf使用)した。そして、エマルジョンタイプのフッ素系撥水剤としてアサヒガードAG−7000(旭硝子株式会社製)を8%含む水分散液でパディング(絞り率50%)し、乾燥後、170℃で1分間熱処理することにより、コーティング基布たる布帛を得た。
【0044】
次に、この布帛を用いて、実施例1と同様にコーティング、乾燥、加熱し、本発明のコーティング布帛を得た。
【0045】
(比較例1)
処方1中のマイクロスフェアーH750を省く以外は、実施例1と同一の方法で、コーティング布帛を得た。
【0046】
(比較例2)
保護層にかかる合成樹脂溶液のコーティングにおいて、スクリーンメッシュを用いて市松模様状に当該樹脂溶液をコーティングする代わりに、ナイフコーターを用いて布帛の片面全体に当該樹脂溶液をコーティングする(塗布量70g/m)以外は、実施例2と同一の方法で、コーティング布帛を得た。
【0047】
(参考例1)
経糸密度を75本/2.54cmとし、緯糸密度を70本/2.54cmとする(カバーファクター:1406)以外は、実施例3と同一の方法で、本発明のコーティング布帛を得た。
【0048】
(参考例2)
経糸密度を145本/2.54cmとし、緯糸密度を125本/2.54cmとする(カバーファクター:2618)以外は、実施例3と同一の方法で、本発明のコーティング布帛を得た。
【0049】
以上のコーティング布帛について、性能の測定、評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より明らかなように、実施例1〜3にかかるコーティング布帛は、意匠性及び通気性に優れていた。これに対し、比較例1にかかるコーティング布帛は、高発泡層を形成しえなかったので、意匠性に劣る結果となった。そして、比較例2にかかるコーティング布帛は、保護層が布帛の片面全体に形成されているため、意匠性に劣ると共に通気性がほとんど認められない状態となった。
【0052】
また、参考例1にかかるコーティング布帛は、コーティング基布として用いる布帛が緻密でないため、防水性に劣る結果となった。そして、参考例2にかかるコーティング布帛は、コーティング基布として用いる布帛が緻密すぎるため、通気性及び風合いに劣る結果となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の片面に高発泡層がパターン状に設けられ、さらに該高発泡層表面に保護層が積層貼合されていることを特徴とするコーティング布帛。
【請求項2】
布帛が防撥水性織物であることを特徴とする請求項1記載のコーティング布帛。
【請求項3】
防撥水性織物がポリエステルフィラメント糸を用いてなり、カバーファクターが1500〜2500であることを特徴とする請求項2記載のコーティング布帛。


【公開番号】特開2008−238461(P2008−238461A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79233(P2007−79233)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】