説明

コーティング液

【課題】プラスチックフィルム基材表面に蒸着された無機酸化物からなる透明蒸着層面に塗布することにより、蒸着層面に耐酸性が付与された蒸着フィルムが得られ、該蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料をボイルやレトルト処理しても、該包装材料中に包装された酸性系の内容物による包装材料のガスバリヤー性の劣化やラミネート強度低下が防止できるコーティング液を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が2,000〜10,000、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が5〜50mgKOH/gであるポリエステル樹脂をコーティング液全量中に5質量%〜90質量%を占める量で含有されていることを特徴とするコーティング液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルムの蒸着面のコーティング液に関し、詳しくは、無機酸化物からなる透明蒸着層を有する蒸着フィルムの蒸着面に耐酸性を付与し、該蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料をボイルやレトルト処理しても、該包装材料中に包装された酸性系の内容物による包装材料のガスバリヤー性の劣化やラミネート強度低下が防止できるコーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミナや酸化珪素などの無機酸化物をポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムに蒸着した蒸着フィルムは、ガスバリヤー性(ガス遮断性)などが優れていることから、各種包装材料に使用されている。
【0003】
上記の蒸着フィルムは、蒸着層に印刷を施す際に、印刷工程でその蒸着層面が接触する印刷機上の金属ロールとの擦れによって蒸着層に傷がつき易い。また、該蒸着面に印刷されるベタ印刷に使用されるインキの種類によっては蒸着面にクラッキングが発生して、蒸着層が破壊され、バリヤー性が劣化する。このために、蒸着面は各種コーティング液を塗布することによって保護されている。
【0004】
上記のコーティング液としては、インキの粘度調整や色濃度調整に使用されるメジウムなどのインキワニス、あるいは、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂などを有機溶剤に溶解して調製したコーティング液が使用されている。しかしながら、従来の上記のコーティング液が塗布された蒸着フィルムは、ガスバリヤー性が十分ではなく、また、他のプラスチックフィルムとドライラミネート系の接着剤を介してラミネート加工する際にも十分な接着強度が得られない。
【0005】
とくに、上記の従来のコーティング液が塗布された蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料を製袋した食品用包材では、該包材に内容物として、食酢などの酸性の内容物を入れ、それらをボイルしたり、あるいはレトルト処理すると、処理後、内容物の酸性成分によって上記の蒸着フィルムの蒸着層面が侵され、包装材料のバリヤー性が著しく劣化する。また、上記の積層体における蒸着フィルムと他のプラスチックフィルム間のラミネート強度が低下する。このために、酸性の強い食品のボイルやレトルト処理には不向きであった。
【0006】
上記のような問題を解決するために、蒸着用のコーティング液(特許文献1)が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示のコーティング液は、ウレタンポリマーを主体としたコーティング液であり、該コーティング液は、プラスチックフィルムの蒸着面に塗布・乾燥して形成された塗膜のガラス転移温度が低く、該塗膜が形成された蒸着フィルムを連続して生産した巻取物は、保管条件によっては蒸着フィルムにブロッキングが発生する危険性がある。また、食品用包材に使用した場合には、酸性の内容物に対する耐酸性が十分でないために、バリヤー性の劣化防止およびラミネート強度の劣化防止の効果が十分得られない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−288408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、プラスチックフィルム基材表面に蒸着された無機酸化物からなる透明蒸着層面に塗布することにより、蒸着層面に耐酸性が付与された蒸着フィルムが得られ、該蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料をボイルやレトルト処理しても、該包装材料中に包装された酸性系の内容物による包装材料のガスバリヤー性の劣化やラミネート強度低下が防止できるコーティング液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、重量平均分子量が2,000〜10,000、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が5〜50mgKOH/gであるポリエステル樹脂をコーティング液全量中に5質量%〜90質量%を占める量で含有されていることを特徴とするコーティング液を提供する。
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記のコーティング液を、各種プラスチックフィルムに蒸着された無機酸化物からなる透明蒸着面に塗布することにより、蒸着層面に耐酸性を付与し、とくに、上記のコーティング液が塗布された蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料では、該包装材料に食酢などの酸性の強い内容物を入れ、それらをボイルしたり、あるいはレトルト処理した場合、処理後、内容物の酸性成分によって上記の蒸着フィルムが侵されず、蒸着フィルムのバリヤー性の劣化防止や、また、上記の積層体における蒸着フィルムと他のプラスチックフィルム間のラミネート強度低下防止などが優れていることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記の特定の成分を含有したコーティング液を、各種プラスチックフィルム基材表面に蒸着された無機酸化物からなる透明蒸着層面に塗布することにより、蒸着層面に優れた耐酸性が付与された蒸着フィルムが得られ、また、該蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料をボイルやレトルト処理しても、該包装材料中に包装された強い酸性系の内容物によりガスバリヤー性の劣化やラミネート強度低下が防止できる包装材料が得られるコーティング液が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明を特徴づけるポリエステル樹脂は、重量平均分子量が2,000〜10,000で、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が5〜50mgKOH/gを有するポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である。該ポリエステル樹脂は、コーティング液全量中に5質量%〜90質量%を占める量で含有されている。
【0013】
上記のポリエステル樹脂の重量平均分子量は2,000〜10,000、好ましくは5,000〜9,000である。重量平均分子量が上記の上限を超えると、得られるコーティング液を塗布した蒸着フィルムを用いた積層体に十分なラミネート強度が得られない。また、蒸着層に対する耐酸性はそれ以上の効果を発揮しない。一方、重量平均分子量が上記下限未満であると、得られるコーティング液の塗膜が硬く、脆くなり、マイクロクラックが発生しやすくなるために、前記の蒸着フィルムを用いた包装材料では、蒸着層の耐酸性が弱く、該包装材料に食酢などの酸性の内容物を入れ、それらをボイルしたり、あるいはレトルト処理した場合、処理後、内容物の酸性成分によって上記の蒸着フィルムの蒸着面が侵され、蒸着フィルムのバリヤー性の劣化防止が低下する。また、積層体における蒸着フィルムと他のプラスチックフィルムとのラミネート強度も低下する。
【0014】
また、上記のポリエステル樹脂のガラス転移温度は50℃以上、好ましくは50℃〜100℃、とくに好ましくは60℃〜85℃である。上記のガラス転移温度が低過ぎると、得られるコーティング液を塗布した塗膜がブロッキングしやすくなる。
【0015】
また、上記のポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g〜50mgKOH/g、好ましくは10mgKOH/g〜40mgKOH/gである。酸価が高すぎても、蒸着面に形成されるコーティング液の塗膜の蒸着層に対する密着性およびインキの転移性がさらに向上はしない。一方、酸価が上記下限未満であると、得られる塗膜の蒸着層に対する密着性およびインキの転移性が低下する。
【0016】
本発明を特徴づけるポリエステル樹脂は、前記の各々の性能を有しており、該樹脂は、単体でも、混合してもまたその他の樹脂成分と併用して使用することができる。該ポリエステル樹脂は、コーティング液全量中に5質量%〜90質量%、好ましくは10質量%〜30質量%を占める量で含有されている。ポリエステル樹脂の含有量が少な過ぎると、得られるコーティング液が塗布された蒸着層面の耐酸性の付与能力を低下させ、該蒸着フィルムを用いた包装材料に内容物を入れ、それらをボイルしたり、あるいはレトルト処理した場合、処理後、内容物の酸性成分によって上記の蒸着フィルムの蒸着面が侵され、蒸着フィルムのバリヤー性の劣化防止が低下する。また、積層体における蒸着フィルムと他のプラスチックフィルムとのラミネート強度も低下する。
【0017】
前記のポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとを公知の方法で前記の各々のポリエステル樹脂の重量平均分子量、酸価、ガラス転移温度の物性値が得られるように適宜に共重合させたものであり、分子末端に水酸基を有するヒドロキシルポリエステル系樹脂あるいは分子末端にカルボキシル基を有するカルボキシルポリエステル系樹脂など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
上記の多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ピメリン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,2−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−または2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
また、上記の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−または1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの脂肪族ジオール;1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール;1,2−、1,3−、または1,4−キシリレングリコールなどの芳香環含有ジオールなどのジオールおよびそれらの混合物、その他、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールなどのポリオール化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明のコーティング液は、該コーティング液が塗布された蒸着フィルムの印刷適性およびコーティング塗膜に柔軟性を付与するために、さらに重量平均分子量が10,000〜30,000、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が0〜35mgKOH/gであるポリウレタン系樹脂をコーティング液全量中に0.1質量%〜90質量%を占める量で含有することができる。
【0021】
上記のポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は10,000〜30,000、好ましくは10,000〜25,000である。重量平均分子量が上記上限を超えると、溶媒に対する溶解性が低下し、コーティング性が低下する。一方、重量平均分子量が上記下限未満であると、コーティング塗膜が硬く脆くなる。
【0022】
また、上記のポリウレタン系樹脂の酸価は0mgKOH/g〜35mgKOH/g、好ましくは10mgKOH/g〜25mgKOH/gである。上記の酸価が高すぎても、蒸着面に形成されるコーティング液の塗膜の蒸着層に対する密着性およびインキの転移性がさらに向上はしない。
【0023】
また、上記のポリウレタン系樹脂のガラス転移温度は50℃以上、好ましくは50℃〜90℃、とくに好ましくは60〜85℃である。上記のガラス転移温度が高過ぎると、得られる塗膜の屈曲性が低下し、一方、ガラス転移温度が低過ぎると、形成された塗膜がブロッキングしやすくなる。
【0024】
上記のポリウレタン系樹脂はコーティング液全量中に0.1質量%〜90質量%、好ましくは5質量%〜10質量%含有することができる。上記の樹脂の含有量が多過ぎると、ガスバリヤー性の劣化が上昇する傾向となる。
【0025】
上記のポリウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリマーポリオールとを溶液重合などの公知の方法で反応させ、必要に応じて鎖伸長剤または反応停止剤を使用することによって得られる樹脂である。上記のポリイソシアネート化合物は、従来のポリウレタン樹脂の合成に使用されるものであればよく、例えば、1,2−プロピレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなど、好ましくは脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
上記のポリイソシアネート化合物と反応させるポリマーポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。上記のポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸と多価アルコールとの反応で得られるポリエステルポリオールやラクトン環の開環重合で得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0027】
上記の多価カルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの脂肪族、脂環族および芳香族の多価カルボン酸が挙げられる。
【0028】
また、上記の多価カルボン酸と反応する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族、脂環族および芳香族などの多価アルコールが挙げられる。
【0029】
また、ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのオキシラン化合物をエチレングリコール、1,2−プロパンジオールなどの多価アルコールを重合開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記のポリエーテルポリオールと二塩基酸、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸などを反応させることによって得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0030】
上記のポリウレタン系樹脂は、必要に応じて適度の分子量やガラス転移温度に調整するために、合成中にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオールなどのアルコール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどのアミン類などの公知の鎖伸長剤および低級アルコール系、アミン系などの公知の鎖伸長停止剤を適宜添加して調整することができる。
【0031】
また、本発明のコーティング液は、該コーティング液が塗布された蒸着フィルムのボイルやレトルト処理時の蒸着面に対する接着強度、蒸着面の保護性の強度、ガスバリヤー性の劣化防止および接着剤を介して他のプラスチックフィルムと貼り合わせた接着強度などの性能を向上するために、シランカップリング剤およびイソシアネート系の硬化剤から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
【0032】
上記のシランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤、例えば、ウレイド系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤およびその他、本発明の目的を妨げない範囲のシランカップリング剤が使用することができる。
【0033】
上記のシランカップリング剤としては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルジメトキシメチルシランなどのウレイド系シランカップリング剤;γ−グリシドキシトリメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのその他のシランカップリング剤が挙げられる。
【0034】
上記のイソシアネート系硬化剤としては、脂肪族、脂環族および芳香族のジイソシアネート化合物、3価以上のポリイソシアネート化合物、それらの二量体や三量体およびイソシアネート化合物の過剰量と例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、モノエタノールアミンなどの低分子活性化合物やポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールポリアミドなどの高分子活性水素化合物との反応物で末端にイソシアネート基を含有するものなど、低分子および高分子のイソシアネート化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、3,3,3−トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、3,3,3−トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。上記のイソシアネート系硬化剤の一例としては、三井武田ケミカル(株)からタケネートD−110Nの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0035】
上記のシランカップリング剤およびイソシアネート系硬化剤から選ばれる少なくとも1種を配合する場合は、その配合量は、得られるコーティング液に対して1質量%〜10質量%である。上記の配合量が、多過ぎると得られる塗膜がブロッキングし易く、また上記の上限を超えて配合してもそれ以上の塗膜の性能向上効果が得られない。一方、上記の配合量が、少な過ぎると蒸着面に対する得られる塗膜の密着性向上などの効果が得られない。とくに、イソシアネート系硬化剤の配合割合が多過ぎると、塗膜が脆くなりやすくなる。
【0036】
本発明のコーティング液は、必要に応じて本発明の目的を妨げない範囲において、前記のポリエステル樹脂およびポリウレタン系樹脂と相溶性のあるその他のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、硝化綿などの樹脂類、紫外線防止剤、消泡剤、分散剤などの添加剤を添加して使用することができる。
【0037】
本発明のコーティング液は、前記の成分をエチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、ノルマルプロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、二塩基酸エステルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、トルエン、キシレン、ソルベッソなどの芳香族系炭化水素類、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類およびそれらの混合溶剤などの有機溶媒に均一に分散した溶液として得られる。上記のコーティング液は、使用の際に、前記したシランカップリング剤およびイソシアネート系硬化剤から選ばれる一種を該コーティング液中に均一に分散した状態で使用するのが好ましい。
【0038】
本発明のコーティング液の塗布に使用される蒸着フィルム原反は、包装材料に使用される各種プラスチックフィルム基材表面に酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化スズなどの無機酸化物単体およびそれらの混合物を、公知の真空蒸着法、プラズマ気相成長法、イオンプレーティング法などの方法によって、上記の基材上に4μm〜350μm、好ましくは8〜160μmの単層あるいは多層の蒸着層、好ましくはそれらの透明蒸着層を形成したものである。上記の蒸着層の厚みは、とくに限定されるものではないが、ガスバリヤー性を有する範囲である。
【0039】
上記の各種プラスチックフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはこれらの積層フィルムなどが挙げられる。上記のプラスチックフィルムは、延伸または末延伸フィルムで、必要に応じて帯電処理、紫外線防止処理および該基材の表面をコロナ処理あるいはプラズマ処理したものなども使用することができる。
【0040】
また、本発明の蒸着フィルムは、上記の蒸着フィルム原反の蒸着面に、本発明のコーティング液を前記の有機溶媒にて適宜に希釈して、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、スプレイコート法、カーテンフローコート法、エアナイフコート法などの公知の方法で、0.2g/m2〜1.0g/m2(乾燥厚み)に塗布し、乾燥することにより塗膜を形成して得られる。該塗膜の厚みは、特に限定されるものではないが、酸素などのガスバリヤー性の劣化防止ができ、他のフィルムと接着剤を介してラミネートする際に適度のラミネート強度が得られる範囲である。また、上記の塗膜の乾燥条件は、上記のプラスチックフィルム基材および蒸着層が劣化しない範囲であればよく、好ましくは乾燥雰囲気温度が60℃〜100℃である。
【0041】
また、上記の蒸着フィルムは、蒸着されていない前記の各種プラスチックフィルムと各種の接着剤を介して積層することによって積層体を形成し、蒸着層面に耐酸性が付与され、ボイルやレトルト処理における酸素バリヤー性などのバリヤー性劣化およびラミネート強度低下の防止を有する包装材料などとして利用することができる。上記の積層体は、例えば、本発明のコーティング液が塗布された蒸着フィルムの塗膜面にポリウレタン系のラミネートインキを使用してグラビア印刷を行い、次に、印刷面あるいは無地面に通常のドライラミネート系接着剤を塗布し、接着剤塗布面に他のプラスチックフィルムをラミネート加工して積層体を形成する。また、上記の印刷面にポリオレフィン系のポリマーを押出し加工あるいは共押出し加工などの押出し積層加工して積層体を形成する。
【実施例】
【0042】
次に本発明のコーティング液G1〜G3と比較例に使用するコーティング液H1〜H2を挙げ、さらにこれらのコーティング液を用いた本発明の蒸着フィルムJ1〜J3と比較例の蒸着フィルムK1〜K2およびこれらの蒸着フィルムを使用した実施例の積層体L1〜L3と比較例の積層体M1〜M2を挙げ本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」および「%」とあるのは質量基準である。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1](コーティング液G1の調製)
下記の成分を均一に有機溶媒中に混合分散してコーティング液G1を調製した。
・ポリエステル樹脂(重量平均分子量7,000、
ガラス転移温度80℃、酸価21mgKOH/g、
[ユニチカ(株)製、ポリエステル樹脂P−1])
20部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 37部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2部
・シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン) 1部
【0044】
[実施例2](コーティング液G2の調製)
下記の成分を均一に有機溶媒中に混合分散してコーティング液G2を調製した。
・ポリエステル樹脂(重量平均分子量6,800、
ガラス転移温度82℃、酸価23mgKOH/g、
[ユニチカ(株)製、ポリエステル樹脂P−2])
14部
・ポリウレタン系樹脂(重量平均分子量18,000、
ガラス転移温度79℃、酸価24mgKOH/g、[
東洋紡績(株)製、ポリウレタン樹脂、30%溶液])
20部
・メチルエチルケトン 26部
・トルエン 33部
・イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル(株)
製、タケネートD−110N) 5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2部
【0045】
[実施例3](コーティング液G3の調製)
下記の成分を均一に有機溶媒中に混合分散してコーティング液G3を調製した。
・ポリエステル樹脂(重量平均分子量7,700、
ガラス転移温度81℃、酸価17mgKOH/g
[ユニチカ(株)製、ポリエステル樹脂P−3])
14部
・ポリウレタン系樹脂(重量平均分子量18,000、
ガラス転移温度79℃、酸価24mgKOH/g、[東
洋紡績(株)製、ポリウレタン樹脂、30%溶液])
20部
・イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル(株)
製、タケネートD−110N) 5部
・シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン) 1部
・メチルエチルケトン 26部
・トルエン 32部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2部
【0046】
[比較例1](コーティング液H1の調製)
下記の成分を均一に有機溶媒中に混合分散してコーティング液H1を調製した。
・ポリエステル樹脂(重量平均分子量20,000、
ガラス転移温度75℃、酸価4mgKOH/g、
[ユニチカ(株)製、エリーテルUE−3600])
20部
・イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル(株)
製、タケネートD−110N) 5部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 33部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2部
【0047】
[比較例2](コーティング液H2の調製)
下記の成分を均一に有機溶媒中に混合分散してコーティング液H2を調製した。
・ポリエステル樹脂(重量平均分子量18,000、
ガラス転移温度72℃、酸価2mgKOH/g、
[東洋紡績(株)製、バイロン280]) 20部
・イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル(株)
製、タケネートD−110N) 5部
・シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン) 1部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 32部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2部
【0048】
[実施例4〜6]
(蒸着フィルムJ1〜J3の調製および積層体L1〜L3の調製)
上記で得られた各々のコーティング液G1〜G3を前記の有機溶媒にて適宜に希釈して、酸化アルミニウム(アルミナ)を蒸着した12μmポリエステルフィルムの透明蒸着面にグラビアコーターにて0.5g/m2(乾燥膜厚)に塗布し、70〜80℃の乾燥条件にて乾燥し、蒸着フィルムJ1〜J3を調製した。次に、該蒸着フィルムの塗膜面にポリウレタン系インキにてグラビア印刷を行い、印刷面にポリウレタン系のドライラミネート接着剤(三井武田ケミカル(株)製、A−515)を3.0g/m2(乾燥膜厚)にグラビアコーターにて塗布し、60μmの末延伸ポリプロピレンフィルム(東レ合成フィルム(株)製、ZK−93)を貼り合わせ、積層体L1〜L3を調製した。
【0049】
[比較例3〜4]
(蒸着フィルムK1〜K2の調製および積層体M1〜M2の調製)
実施例の蒸着フィルムJ1の調製において、コーティング液G1をコーティング液H1〜H2に置き換える以外は蒸着フィルムJ1の調製と同様にして比較例の蒸着フィルムK1〜K2を調製した。次に実施例の積層体L1の調製において、蒸着フィルムJ1を蒸着フィルムK1〜K2に置き換える以外は積層体L1の調製と同様にして、比較例の積層体M1〜M2を調製した。
【0050】
[比較例5]
(積層体M3の調製)
実施例の積層体L1の調製において、アルミナを蒸着した透明蒸着原反表面にコーティング液を塗布しない以外は、該積層体の調製と同様にして比較例の積層体M3を調製した。
【0051】
前記の実施例および比較例の蒸着フィルムおよび積層体を使用して、耐酸性、ガスバリヤー性およびラミネート強度に関して下記の測定方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
(耐酸性)
前記の積層体を製袋して、該袋に(株)ミツカン製の穀物酢を入れ、98℃の熱水にて30分間ボイルし、ボイル後、外観の状態を下記の評価基準により評価した。
◎:外観にラミネート浮きが認められない。
×:外観にラミネート浮きが認められる。
【0053】
(ガスバリヤー性)
上記の各々の積層体を使用して製袋し、該袋に(株)ミツカン製の穀物酢を入れ98℃の熱水にて30分間ボイル処理した物、および121℃にて30分間レトルト処理した物の各々の試料を作製し、処理後の各々の試料の該積層体の酸素バリヤーを測定しガスバリヤー性を評価した。なお、酸素バリヤーは、モコン社製のガスバリア測定装置を使用して25℃の条件下にて測定した。
【0054】
(ラミネート強度)
上記の各々の積層体を使用して東洋精機(株)製のストログラフ測定機を使用して、前記の蒸着フィルムと該蒸着フィルムに積層された他のプラスチックフィルムを剥離し、蒸着層(蒸着面上のコーティング塗膜)に対する他のプラスチックフィルムのラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0055】

【0056】
上記の評価結果から、本発明のコーティング液は無機酸化物からなる蒸着面に対して耐酸性を付与しており、該コーティング液が塗布された蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料は、酸性系の内容物を入れボイルやレトルト処理してもそのガスバリヤー性の劣化およびラミネート強度低下の防止が優れていることが実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のコーティング液は、無機酸化物からなる蒸着原反にコーティングすることにより、耐酸性が付与された蒸着フィルムが提供され、また、該蒸着フィルムを用いた積層体からなる包装材料は、酸性系の内容物を包装しても、ボイルやレトルト処理してもそのガスバリヤー性の劣化やラミネート強度低下の防止が優れた包装材料が提供される蒸着用コーティング液として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が2,000〜10,000、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が5〜50mgKOH/gであるポリエステル樹脂をコーティング液全量中に5質量%〜90質量%を占める量で含有されていることを特徴とするコーティング液。
【請求項2】
前記のコーティング液が、さらに重量平均分子量が10,000〜30,000、ガラス転移温度が50℃以上および酸価が0〜35mgKOH/gであるポリウレタン系樹脂をコーティング液全量中に0.1質量%〜90質量%を占める量で含有されている請求項1に記載のコーティング液。
【請求項3】
前記のコーティング液が、シランカップリング剤およびイソシアネート系硬化剤から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載のコーティング液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング液を蒸着面に塗布してなることを特徴とする蒸着フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸着フィルムを積層してなることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2006−273982(P2006−273982A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93864(P2005−93864)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】