説明

コールドスプレー測定装置およびこれを用いる測定方法

【課題】コールドスプレーによる噴射体の物理量の測定を実現する。
【解決手段】コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置10であって、噴射体の温度を検出する熱電対11と、熱電対11を支持するノーズコーン15と、を具備し、ノーズコーン15の頂部15Aの半頂角θ1は、コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数Mによって表したとき、マッハ数Mに対応するマッハ角θ以下の角度となるように形成され、熱電対11は、ノーズコーン15に内設され、ノーズコーン15の頂部15Aに熱電対11が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定する測定装置およびこれを用いる測定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コールドスプレーは、金属部材に皮膜を形成する新しい溶射方法の技術として公知である。コールドスプレーは、固相状態のまま原料粉末の皮膜を形成する方法として注目されている。より詳しくは、コールドスプレーとは、原料粉末の融点又は軟化点よりも低い温度の作動ガスを超音速流とし、作動ガス中に原料粉末を投入してノズルより噴射し、固相状態のまま金属部材に衝突させて皮膜を形成する溶射方法である。言い換えれば、コールドスプレーとは、金属、合金、金属間化合物またはセラミックス等の原料粉末を超音速で金属表面に固相状態で衝突させて皮膜を形成するものである。例えば、特許文献1はコールドスプレーのノズルの構成を開示している。
【0003】
しかし、コールドスプレーが注目されている一方で、コールドスプレーによる噴射体の物理量の測定については実現できていないのが現状である。その原因として、超音速で飛行する微粒子を捉えなければならないこと、通常の溶射(1000℃〜4000℃)よりも温度が低い(600℃)ため溶射の測定技術が適用できないこと、測定環境が超音速場であるため測定装置が衝撃波等の影響を受けること、等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−142669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、コールドスプレーによる噴射体の物理量の測定を実現することである。
【0006】
即ち、請求項1においては、コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、前記コールドスプレーは、材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、前記測定装置は、前記噴射体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段を支持するノーズコーンと、を具備し、前記ノーズコーンは、円錐形状に形成され、前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、前記コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成され、前記温度検出手段は、温度検出部と、前記温度検出部から延出する電線部と、を具備し、前記ノーズコーンに内設され、前記ノーズコーンの頂部に温度検出部が配置されるものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載のコールドスプレー測定装置であって、前記ノーズコーンは、前記円錐形状の側面周囲に複数のスリットが前記頂部に向かって放射状に形成され、前記温度検出手段の前記電線部は、前記スリットに埋設されるものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1または2記載のコールドスプレー測定装置であって、前記ノーズコーンの頂部には、前記コールドスプレーの噴射方向に対して垂直な平面が形成され、前記平面の直径は、前記ノズルの口径以下に形成されるものである。
【0009】
請求項4においては、コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、前記コールドスプレーは、材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、前記コールドスプレー測定装置は、前記噴射体の流速を検出するピトー管と、前記ピトー管を支持するノーズコーンと、を具備し、前記ノーズコーンは、円錐形状に形成され、前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、前記コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成され、前記ピトー管は、その先端部が前記ノーズコーンの先端部から突出するように、前記ノーズコーンの円錐軸に沿って挿設され、前記ピトー管の前記コールドスプレーの噴射方向に対向する側の先端形状は、前記マッハ数に対応するマッハ角以下に形成されるものである。
【0010】
請求項5においては、コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、前記コールドスプレーは、材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、前記コールドスプレー測定装置は、前記噴射体の温度を検出するシース熱電対と、前記シース熱電対を支持するノーズコーンと、を具備し、前記ノーズコーンは、前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下となるように形成され、前記シース熱電対は、その先端部が前記ノーズコーンの先端部から突出するように、前記ノーズコーンの円錐軸に沿って挿設され、前記シース熱電対のコールドスプレーの噴射方向に対向する側の先端形状は、前記マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成されるものである。
【0011】
請求項6においては、請求項1から5のいずれか1項に記載のコールドスプレー測定装置を用いた測定方法であって、前記ノーズコーンの側面には、前記円錐軸を中心とするリングがマーキングされ、前記スプレーガンのノズル近傍には、リング状のレーザを放射するレーザポインタが配置され、前記コールドスプレー測定装置を用いた測定方法は、前記レーザポインタのリング状のレーザを前記ノーズコーンの側面に照射し、前記リング状のレーザと前記ノーズコーンの側面にマーキングされたリングとを一致させ、前記スプレーガンと前記コールドスプレー測定装置とをセンタリングするものである。
【0012】
請求項7においては、請求項1から5のいずれか1項に記載のコールドスプレー測定装置を用いた測定方法であって、前記スプレーガンのノズル近傍には、水平方向と平行な線分のレーザを放射する水平レーザポインタと、鉛直方向と平行な線分のレーザを放射する鉛直レーザポインタと、が配置され、前記コールドスプレー測定装置を用いた測定方法は、前記水平レーザポインタによるレーザと前記鉛直レーザポインタによるレーザとを前記ノーズコーンに照射し、前記水平レーザポインタによるレーザと、前記鉛直レーザポインタによるレーザと、の交点を前記ノーズコーンの頂点に一致させ、前記スプレーガンと前記コールドスプレー測定装置とをセンタリングするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコールドスプレー測定装置およびこれを用いる測定方法によれば、コールドスプレーによる噴射体の物理量の測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るコールドスプレーシステムの構成を示した模式図。
【図2】実施形態1のコールドスプレー測定装置の構成を示す模式図。
【図3】実施形態2のコールドスプレー測定装置の構成を示す模式図。
【図4】実施形態3のコールドスプレー測定装置の構成を示す模式図。
【図5】実施形態4のコールドスプレー測定装置の構成を示す模式図。
【図6】実施形態5のコールドスプレー測定装置の構成を示す模式図。
【図7】測定方法1の構成を示す模式図。
【図8】同じく測定方法1の流れを示すフロー図。
【図9】測定方法2の構成を示す模式図。
【図10】同じく測定方法2の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を用いて、コールドスプレーシステム100について説明する。
コールドスプレーシステム100は、原料粉末としての銅の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスとしての窒素ガスを超音速流とし、銅粉末と共にノズル110から噴射体として噴射し、固相状態のまま金属部材120に衝突させて皮膜を形成する溶射方法である「コールドスプレー」を実現する装置である。コールドスプレーシステム100は、ノズル110と、ガス加熱装置112と、粉末供給装置114と、を具備している。
【0016】
ガス加熱装置112は、ガス導入管117より導入される窒素ガスを銅の融点又は軟化点よりも低い温度まで加熱し、ガス導入管116よりノズル110に供給する装置である。粉末供給装置114は、ホッパー113に貯溜された銅を粉末状に粉砕し、粉末導入管115よりノズル110に供給する装置である。
【0017】
ノズル110は、ガス導入管116より導入される窒素ガスを超音速流とするとともに、粉末導入管115より導入される銅粉末を窒素ガス中に投入することにより、銅粉末を窒素ガスとともに超音速流として噴射して固相状態のまま金属部材120に衝突させるものである。なお、金属部材120には、マスキング治具121・121が設けられ、マスキング治具121・121が設けられた箇所以外の部分、すなわち金属部材120の必要な部分のみに皮膜が形成される。
【0018】
本実施形態のコールドスプレーシステム100では、原料粉末を銅とし、作動ガスを窒素とする構成としたが、これに限定されない。原料粉末をアルミニウムまたはニッケルとし、作動ガスを空気とする構成としても良い。
【0019】
図2を用いて、コールドスプレー測定装置の実施形態1であるコールドスプレー測定装置10について説明する。
なお、図2〜図6では、上述したコールドスプレーシステム100のノズル110の噴射方向Sを矢印Sで示し、コールドスプレー測定装置10が具備するノーズコーン15の円錐軸を軸Pで示している。また、図2(A)は、コールドスプレー測定装置10の全体構成を示している。図2(B)は、ノーズコーン15の頂部15Aを拡大して示しており、コールドスプレーの測定中に銅粉末が頂部15Aに堆積する状態を示している。
【0020】
コールドスプレー測定装置10は、コールドスプレーシステム100によってマッハ数Mの超音速流で噴射される銅粉末の温度を計測する装置である。コールドスプレー測定装置10は、温度検出手段としての熱電対11と、熱電対11を支持するノーズコーン15と、を具備している。
【0021】
ノーズコーン15は、多孔質セラミックを円錐形状に形成して構成されている。また、円錐形状に形成されるノーズコーン15の円錐軸Pは、ノズル110の噴射方向S(図2における矢印S)と同軸上に配置される。さらに、ノーズコーン15は、ノズル110の噴射方向Sに対向して円錐形状の頂部15Aが配置される。特記すべき事項として、ノーズコーン15の半頂角θ1は、後述するマッハコーンのマッハ角θ以下の角度となるように形成されている。ここで、マッハ角θとは、コールドスプレーによって形成される超音速場の音速であるマッハ数Mを用いて、以下の式で表される。
【数1】

【0022】
熱電対11は、先端の温度検出部11Aと、温度検出部11Aから延出する電線部11Bと、を具備している。また、熱電対11は、極細(本実施形態ではφ0.013mm〜0.25mm)の熱電対が採用されている。電線部11Bは、ノーズコーン15の円錐軸Pに挿設されている。温度検出部11Aは、ノーズコーン15の頂部15Aに配置されている。
【0023】
実施形態1のコールドスプレー測定装置10の作用について説明する。
すなわち、コールドスプレー測定装置10では、コールドスプレーによって形成される超音速場に温度検出部11Aが存在している。そのため、コールドスプレーによる超音速場では、飛行中の航空機のように、温度検出部11Aを頂点として後方にマッハ角θの半頂角である円錐形状の衝撃波領域ができる(マッハコーン領域)。また、銅粉末は、ノズル110よってマッハ数Mの超音速流として噴射され、ノーズコーン15の頂部15Aにてノーズコーン15およびマッハコーン領域と同様の円錐形状となって堆積する(図2(B)参照)。
【0024】
実施形態1のコールドスプレー測定装置10の効果について説明する。
コールドスプレー測定装置10は、マッハコーン領域内において、マッハコーン領域よりも小さい円錐形状であるノーズコーン15によって形成されているため、衝撃波が緩和され、超音速場においても安定して熱電対11を支持することができる。また、ノズル110より超音速流として噴射された銅粉末は、ノーズコーン15の頂部15Aにて円錐形状となって堆積するため、最初に堆積した粒子は、超音速場の影響を受けることがない。そのため、温度検出部11Aは、周囲の影響を受けずに、最初に堆積した粒子の温度を計測することができる。
【0025】
つまり、コールドスプレー測定装置10によれば、コールドスプレーシステム100による銅粉末または窒素ガスの温度測定を実現することができる。
【0026】
また、ノーズコーン15は、多孔質セラミックによって形成されているため、低熱伝導率、低熱膨張率、耐熱性および絶縁性を兼ね備えている。そのため、コールドスプレーシステム100における高温のガスや堆積粒子の影響を受けることがない。
【0027】
さらに、熱電対11は、極細の熱電対が採用されているため、応答速度が速く、熱容量の小さい堆積粒子の温度を正確に測定できる。また、熱電対自身の熱容量も小さいため、熱容量の小さい堆積粒子の温度を正確に測定できる。
【0028】
さらに、熱電対11は、ノーズコーン15に内設されているため、コールドスプレーシステム100における高温ガスまたは堆積粒子の影響を受けることがない。
【0029】
図3を用いて、コールドスプレー測定装置の実施形態2であるコールドスプレー測定装置20について説明する。
なお、図3(A)は、コールドスプレー測定装置20の全体構成を示している。図3(B)は、ノーズコーン25の頂部25Aを噴射方向Sから示している。
【0030】
コールドスプレー測定装置20は、コールドスプレーシステム100によってマッハ数Mの超音速流で噴射される銅粉末の温度を計測する装置である。コールドスプレー測定装置20は、温度検出手段としての熱電対21と、熱電対21を支持するノーズコーン25と、を具備している。
【0031】
ノーズコーン25は、以下に説明する構成を除いて、実施形態1のノーズコーン15と同様であるため、重複する構成については説明を省略する。すなわち、ノーズコーン25には、円錐形状の側面周囲に複数のスリット26・27が頂部25Aに向かって放射状に形成されている(図3(B)参照)。各スリット26・26・・・は、それぞれノーズコーン25の側面における底部側端から頂部側端にかけて形成されており、互いに周方向の位相位置をずらして配置されている。同様に、各スリット27・27・・・は、それぞれノーズコーン25の側面における底部側端から頂部側端にかけて形成されており、互いに周方向の位相位置をずらして配置されている。特記すべき事項として、スリット27は、スリット26よりも幅の広いスリットとして円錐形状の側面周囲に形成されている。
【0032】
熱電対21は、以下に説明する構成を除いて、実施形態1の熱電対11と同様の構成であるため、重複する構成については説明を省略する。すなわち、電線部21Bは、スリット26に埋設されている。電線部21Bは、熱電対21に一対備えられており、各電線部21Bがそれぞれ個別のスリット26に埋設されている。温度検出部21Aは、ノーズコーン25の頂部25Aに配置されている。
【0033】
実施形態2のコールドスプレー測定装置20の作用は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0034】
実施形態2のコールドスプレー測定装置20の効果は、以下に説明する効果を除いて、実施形態1の効果と同様であるため、重複する効果については説明を省略する。すなわち、電線部21Bがスリット26に埋設されているため、熱電対21が衝撃波等の外力の影響を受けることがない。また、ノーズコーン15にはスリット26・27を加工するのみの構成であるため、ノーズコーン15が加工しやすくなり、加工コストを抑えることができる。
【0035】
また、ノーズコーン25は絶縁体であるセラミックスにて構成されており、一対の電線部21Bはそれぞれ個別のスリット26に埋設されているため、各電線部21Bを絶縁被覆を施さない素線の仕様に構成した場合でも、各電線部21B同士の絶縁を図ることが可能となる。
【0036】
また、ノーズコーン25には、複数のスリット26・27が形成されているため、例えば埋設した熱電対21が破損しても、破損した熱電対21が埋設されていたスリット26・27とは別のスリット26・27に熱電対21を埋設することで、新たな熱電対21をノーズコーン25に装着することができ、ノーズコーン25を再利用することが可能となる。さらに、スリット26とスリット27とは互いに幅が異なるため、様々な線径の熱電対を埋設することができる。
【0037】
図4を用いて、コールドスプレー測定装置の実施形態3であるコールドスプレー測定装置30について説明する。
なお、図4(A)は、コールドスプレー測定装置30の全体構成を示している。図4(B)は、ノーズコーン35の頂部35Aを拡大して示しており、コールドスプレーの計測中に銅粉末が頂部15Aに堆積する状態を示している。
【0038】
コールドスプレー測定装置30は、コールドスプレーシステム100によってマッハ数Mの超音速流で噴射される銅粉末の温度を計測する装置である。コールドスプレー測定装置30は、温度検出手段としての熱電対31と、熱電対31を支持するノーズコーン35と、を具備している。
【0039】
ノーズコーン35は、以下に説明する構成を除いて、実施形態1のノーズコーン15と同様であるため説明を省略する。すなわち、ノーズコーン35の頂部35Aには、コールドスプレーの噴射方向Sに対して垂直な平面36が形成されている。また、平面36(円錐形状の平面であるため円形状)は、ノズル口径D1よりも大きい直径D2で形成されている。
【0040】
熱電対31は、実施形態1の熱電対11と同様の構成であるため説明を省略する。
【0041】
実施形態3のコールドスプレー測定装置30の作用は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0042】
実施形態3のコールドスプレー測定装置30の効果は、以下に説明する効果を除いて、実施形態1の効果と同様であるため、重複する効果については説明を省略する。すなわち、ノーズコーン35の頂部35Aには平面36が形成されているため、効率良く銅粉末を頂部35Aの平面36に堆積させることができる。特に、平面36の直径D2はノズル口径D1よりも大きく形成されているため、銅粉末の堆積効率を向上する(銅粉末を平面36以外の部分に堆積させない)ことが可能となっている。そのため、銅粉末の堆積粒子の温度を正確に測定できる。
【0043】
図5を用いて、コールドスプレー測定装置の実施形態4であるコールドスプレー測定装置40について説明する。
なお、図5(A)は、コールドスプレー測定装置10の全体構成を示している。図5(B)は、ピトー菅41の頂部45Aを拡大して示している。図5(C)は、図5(A)のCC´断面を示している。また、コールドスプレー測定装置40は、超音速流である窒素ガスの流速を計測するものとする。
【0044】
コールドスプレー測定装置40は、コールドスプレーシステム100によってマッハ数Mの超音速流で噴射される窒素ガスの流速を計測する装置である。コールドスプレー測定装置40は、ピトー菅41と、ピトー菅41を支持するノーズコーン45と、を具備している。
【0045】
ノーズコーン45は、以下に説明する構成を除いて、実施形態1のノーズコーン15と同様であるため、重複する部分については説明を省略する。すなわち、ノーズコーン45は、ベース46に支持されている。ベース46は、三角柱形状に形成されている。ベース46の断面形状(三角形状)のノズル110の噴射方向Sに対向する側の半頂角θ3は、マッハコーンのマッハ角θ以下の角度とされている(図5(C)参照)。
【0046】
ピトー菅41は、L字形状に形成され、先端部41Aと、水平部41Bと、鉛直部41Cと、を具備している。水平部41Bは、ノーズコーン15の円錐軸Pに沿って挿設されている。鉛直部41Cは、ベース46に内設されている。先端部41Aは、水平部41Bのコールドスプレーのノズル110に対向する側であって、ノーズコーン45の頂部45Aに配置されている。つまり、ピトー菅41の先端部41Aは、ノーズコーン45の頂部45Aから先端側へ向かって突出している。特記すべき事項として、先端部41Aの半頂角θ2は、マッハコーンのマッハ角θ以下の角度とされている(図5(B)参照)。
【0047】
実施形態4のコールドスプレー測定装置40の作用について説明する。
すなわち、コールドスプレー測定装置40では、コールドスプレーによって形成される超音速場に先端部41Aが存在している。そのため、飛行中の航空機のように、コールドスプレーによる超音速場における先端部41Aを頂点として後方にマッハ角θの半頂角である円錐形状の衝撃波領域ができる(マッハコーン領域)。
【0048】
実施形態4のコールドスプレー測定装置40の効果について説明する。
コールドスプレー測定装置40は、マッハコーン領域内において、マッハコーン領域よりも小さい円錐形状であるノーズコーン45によって形成されているため、衝撃波が緩和され、超音速場においても安定してピトー菅41を支持することができる。また、ピトー菅41の先端部41Aがマッハ角θ以下の半頂角θ2となるように形成されているため、超音速場においても安定して流速を測定できる。つまり、コールドスプレー測定装置40によれば、コールドスプレーシステム100による窒素ガスの流速測定を実現することができる。
【0049】
図6を用いて、実施形態5であるコールドスプレー測定装置50について説明する。
なお、図6(A)は、コールドスプレー測定装置10の全体構成を示している。図6(B)は、ノーズコーン55の頂部55Aを拡大して示している。
【0050】
コールドスプレー測定装置50は、コールドスプレーシステム100によってマッハ数Mの超音速流で噴射される銅粉末の温度を計測する装置である。コールドスプレー測定装置50は、シース熱電対51と、シース熱電対51を支持するノーズコーン55と、を具備している。
【0051】
ノーズコーン55は、実施形態1のノーズコーン15と同様であるため説明を省略する。
【0052】
シース熱電対51は、先端部51Aと、温度検出部51Bと、電線部51Cと、を具備している。また、シース熱電対51は、極細(本実施形態ではφ0.1mm)のシース熱電対が採用されている。シース熱電対51は、ノーズコーン55の円錐軸Pに沿って挿設されている。先端部51Aは、温度検出部51Bのコールドスプレーのノズル110に対向する側であって、ノーズコーン55の頂部55Aに配置されている。つまり、シース熱電対51の先端部51Aは、ノーズコーン55の頂部55Aから先端側へ向かって突出している。特記すべき事項として、先端部51Aの半頂角θ2は、マッハコーンのマッハ角θ以下の角度とされている。
【0053】
実施形態5のコールドスプレー測定装置50の作用について説明する。
すなわち、コールドスプレー測定装置50では、コールドスプレーによって形成される超音速場に先端部51Aが存在している。そのため、飛行中の航空機のように、コールドスプレーによる超音速場における先端部51Aを頂点として後方にマッハ角θの半頂角である円錐形状の衝撃波領域ができる(マッハコーン領域)。
【0054】
実施形態5のコールドスプレー測定装置50の効果について説明する。
コールドスプレー測定装置50は、マッハコーン領域内において、マッハコーン領域よりも小さい円錐形状であるノーズコーン55によって形成されているため、衝撃波を緩和し、超音速場においても安定してシース熱電対11を支持することができる。また、シース熱電対51の先端部51Aがマッハ角θ以下の半頂角θ2となるように形成されているため、超音速場においても安定して温度を測定できる。つまり、コールドスプレー測定装置50によれば、コールドスプレーシステム100による銅粉末または窒素ガスの温度測定を実現することができる。
【0055】
図7を用いて、実施形態1のコールドスプレー測定装置10による測定方法(以下、測定方法1)の構成について説明する。
測定方法1とは、温度測定を行う際のコールドスプレーによる噴射の前に、コールドスプレー測定装置10のノーズコーン15の円錐軸Pと、ノズル110の軸心と、をセンタリング(中央位置合わせ)する方法である。測定方法1では、実施形態1のコールドスプレー測定装置10による測定方法としたが、これに限定されない。実施形態2〜5のコールドスプレー測定装置20・30・40・50による測定方法とする構成としても良い。
【0056】
ノズル110は、レーザポインタ70と、を具備している。レーザポインタ70は、ノズル110の先端側に設けられている。レーザポインタ70は、リング状レーザRLを噴射方向Sに向けて照射するレーザポインタである。
【0057】
ノーズコーン15は、リング状マーキング18を具備している。リング状マーキング18は、ノーズコーン15の側面周囲に円形状にマーキングされている。リング状マーキング18は、リング状マーキング18を通る面がノーズコーン15の円錐軸Pに対する垂直面となるように配置されている。
【0058】
図8を用いて、測定方法1の流れについて説明する。
なお、以下では、コールドスプレー測定装置10による測定を行う者を測定者として説明する。
【0059】
測定者は、ステップS110において、コールドスプレーシステム100に対して、コールドスプレー測定装置10を設置する。このとき、コールドスプレー測定装置10は、ノズル110に対して、垂直かつ平行に設置されるものとする。次に、測定者は、ステップS120において、コールドスプレー測定装置10のノーズコーン15に向けてレーザポインタ70からリング状レーザRLを照射する。
【0060】
測定者は、ステップS130において、照射されたリング状レーザRLとノーズコーン15の側面周囲にマーキングされるリング状マーキング18とを一致させる。このとき、ノーズコーン15の円錐軸Pとノズル110の軸心とが一致する。次に、測定者は、ステップS140において、ノズル110に対して、コールドスプレー測定装置10の温度検出部11Aの距離を調整する。
【0061】
測定方法1の効果について説明する。
すなわち、測定方法1によれば、簡易な構成で、確実にコールドスプレー測定装置10のノーズコーン15の円錐軸Pと、ノズル110の軸心と、をセンタリングできる。また、リング状レーザRLをリング状マーキング18に一致させる方法なので、測定者は、どの方向からもリング状レーザRLとリング状マーキング18との一致を確認できる。
【0062】
図9を用いて、実施形態1のコールドスプレー測定装置10による別の測定方法(以下、測定方法2)の構成について説明する。
測定方法2とは、温度測定を行う際のコールドスプレーによる噴射の前に、コールドスプレー測定装置10のノーズコーン15の円錐軸Pと、ノズル110の軸心と、をセンタリング(中央位置合わせ)する方法である。測定方法2では、実施形態1のコールドスプレー測定装置10による測定方法としたが、これに限定されない。実施形態2〜5のコールドスプレー測定装置20・30・40・50による測定方法とする構成としても良い。
【0063】
ノズル110は、レーザポインタ80Xと、レーザポインタ80Yと、を具備している。レーザポインタ80Xおよびレーザポインタ80Yは、ノズル110の先端側に設けられている。レーザポインタ80Xは、水平方向に平行な線分の水平レーザLXを噴射方向Sに向けて照射するレーザポインタである。レーザポインタ80Yは、鉛直方向に平行な線分の鉛直レーザLYを噴射方向Sに向けて照射するレーザポインタである。
【0064】
図10を用いて、測定方法2の流れについて説明する。
なお、以下では、コールドスプレー測定装置10によって測定を行う者を測定者として説明する。
【0065】
測定者は、ステップS110において、コールドスプレーシステム100に対して、コールドスプレー測定装置10を設置する。このとき、コールドスプレー測定装置10は、ノズル110に対して、垂直かつ平行に設置されるものとする。次に、測定者は、ステップS120において、コールドスプレー測定装置10のノーズコーン15に向けてレーザポインタ80X・80Yからそれぞれ水平レーザLX・鉛直レーザLYを照射する。
【0066】
測定者は、ステップS130において、照射された水平レーザLXと鉛直レーザLYとの交点LPと、ノーズコーン15の円錐軸Pに配置される熱電対11の温度検出部11Aと、を一致させる(図10の下方に示す図参照)。このとき、ノーズコーン15の円錐軸Pとノズル110の軸心とが一致する。次に、測定者は、ステップS140において、ノズル110に対して、コールドスプレー測定装置10の温度検出部11Aの距離を調整する。
【0067】
測定方法2の効果について説明する。
すなわち、測定方法1によれば、簡易な構成で、確実にコールドスプレー測定装置10のノーズコーン15の円錐軸Pと、ノズル110の軸心と、をセンタリングできる。
【符号の説明】
【0068】
10 コールドスプレー測定装置
11 熱電対(温度検出手段)
11A 先端部
15 マッハコーン
15A 頂部
100 コールドスプレーシステム
110 ノズル
M マッハ数
S 噴射方向
θ マッハ角
θ1 半頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、
前記コールドスプレーは、
材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、
前記測定装置は、
前記噴射体の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段を支持するノーズコーンと、
を具備し、
前記ノーズコーンは、
円錐形状に形成され、
前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、
前記コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、
前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、
前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成され、
前記温度検出手段は、
温度検出部と、
前記温度検出部から延出する電線部と、
を具備し、
前記ノーズコーンに内設され、
前記ノーズコーンの頂部に温度検出部が配置される、
コールドスプレー測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のコールドスプレー測定装置であって、
前記ノーズコーンは、
前記円錐形状の側面周囲に複数のスリットが前記頂部に向かって放射状に形成され、
前記温度検出手段の前記電線部は、
前記スリットに埋設される、
コールドスプレー測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のコールドスプレー測定装置であって、
前記ノーズコーンの頂部には、
前記コールドスプレーの噴射方向に対して垂直な平面が形成され、
前記平面の直径は、
前記ノズルの口径以下に形成される、
コールドスプレー測定装置。
【請求項4】
コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、
前記コールドスプレーは、
材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、
前記コールドスプレー測定装置は、
前記噴射体の流速を検出するピトー管と、
前記ピトー管を支持するノーズコーンと、
を具備し、
前記ノーズコーンは、
円錐形状に形成され、
前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、
前記コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、
前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、
前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成され、
前記ピトー管は、
その先端部が前記ノーズコーンの先端部から突出するように、前記ノーズコーンの円錐軸に沿って挿設され、
前記ピトー管の前記コールドスプレーの噴射方向に対向する側の先端形状は、
前記マッハ数に対応するマッハ角以下に形成される、
コールドスプレー測定装置。
【請求項5】
コールドスプレーによる噴射体の物理量を測定するコールドスプレー測定装置であって、
前記コールドスプレーは、
材料粉末の融点未満又は軟化温度以下の作動ガスを超音速流とし、前記材料粉末と共にスプレーガンのノズルから噴射体として噴射する溶射方法であって、
前記コールドスプレー測定装置は、
前記噴射体の温度を検出するシース熱電対と、
前記シース熱電対を支持するノーズコーンと、
を具備し、
前記ノーズコーンは、
前記コールドスプレーの噴射方向と同軸上に前記円錐形状の円錐軸が配置され、
コールドスプレーの噴射方向に対向して前記円錐形状の頂部が配置され、
前記ノーズコーンの頂部の半頂角は、
前記コールドスプレーによる噴射体の超音速流をマッハ数によって表したとき、該マッハ数に対応するマッハ角以下となるように形成され、
前記シース熱電対は、
その先端部が前記ノーズコーンの先端部から突出するように、前記ノーズコーンの円錐軸に沿って挿設され、
前記シース熱電対のコールドスプレーの噴射方向に対向する側の先端形状は、
前記マッハ数に対応するマッハ角以下の角度となるように形成される、
コールドスプレー測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のコールドスプレー測定装置を用いた測定方法であって、
前記ノーズコーンの側面には、
前記円錐軸を中心とするリングがマーキングされ、
前記スプレーガンのノズル近傍には、
リング状のレーザを放射するレーザポインタが配置され、
前記コールドスプレー測定装置を用いた測定方法は、
前記レーザポインタのリング状のレーザを前記ノーズコーンの側面に照射し、
前記リング状のレーザと前記ノーズコーンの側面にマーキングされたリングとを一致させ、
前記スプレーガンと前記コールドスプレー測定装置とをセンタリングする、
コールドスプレー測定装置を用いた測定方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のコールドスプレー測定装置を用いた測定方法であって、
前記スプレーガンのノズル近傍には、
水平方向と平行な線分のレーザを放射する水平レーザポインタと、
鉛直方向と平行な線分のレーザを放射する鉛直レーザポインタと、
が配置され、
前記コールドスプレー測定装置を用いた測定方法は、
前記水平レーザポインタによるレーザと前記鉛直レーザポインタによるレーザとを前記ノーズコーンに照射し、
前記水平レーザポインタによるレーザと、前記鉛直レーザポインタによるレーザと、の交点を前記ノーズコーンの頂点に一致させ、
前記スプレーガンと前記コールドスプレー測定装置とをセンタリングする、
コールドスプレー測定装置を用いた測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−97347(P2012−97347A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248743(P2010−248743)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】