説明

ゴム成型用金型装置及びゴム成型方法

【課題】ゴム成型品の成型において、ゴムの充填不足による成型不良品の発生を効果的に低減できる金型装置を提供する。
【解決手段】金型内部のキャビティに臨んで出没動作する内圧補助部材4を金型に装備する。キャビティに未加硫のゴムが充填された後、この内圧補助部材4を突出方向に動作させてキャビティ内のゴムに内圧を付加することにより、ゴムの充填不足があってもそれを補うことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成型品の成型に用いる金型装置及びこの金型装置を用いたゴム成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、図1に従来一般のゴム成型用金型装置の構成を示す。ここで例示するものは、ゴム成型品としてオイルシールを成型するための金型装置である。
【0003】
この金型装置は上型1と下型2及び中型3で構成され、これらの型の間に形成されるキャビティ(成型空間)にゴムを充填してオイルシール6を成型するものである。
オイルシール6は、金具7とゴム8の部分からなり、ゴム8の部分の内側に主リップ9及びダストリップ10が形成されている。このオイルシール6の成型では、金型が開いた状態で、先ず金型内部に金具7をセットし、それからゴム生地を装填した後、金型を閉じるコンプレッション成型により、金具7とゴム8が一体化したオイルシール6を成型するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭62−50710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年このようなゴム成型品の成型においては、材料費の抑制を目的として、ゴムの量を限界まで絞る傾向にある。そのため、公差によって理想のゴム充填量に達しない場合には、充填不足による成型不良品が発生するおそれがあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、ゴムの充填不足による成型不良品の発生を効果的に低減できる金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明は、ゴム成型品の成型に用いる金型装置において、金型内部のキャビティに臨んで出没動作する内圧補助部材を備え、キャビティに未加硫のゴムが充填された後、上記内圧補助部材を突出方向に動作させることにより、キャビティ内のゴムに内圧を付加するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、内圧補助部材によってキャビティ内のゴムに内圧を付加するようにしたことにより、ゴムの充填不足があってもそれを補うことができるので、充填不足による成型不良品の発生を確実に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図2は本発明によるゴム成型用金型装置の実施例として、前述した図1の従来例と同様にオイルシールのコンプレッション成型に用いる金型装置を示し、この構成において図1の従来例と対応する部分には同一符号を付してある。
【0008】
即ち本例に示す金型装置は、上型1と下型2及び中型3を有して構成され、これらの型の間に形成されるキャビティにゴムを充填してオイルシール6を成型するものであることは図1の従来例と同様である。
【0009】
そして、特にこの金型装置においては、ゴムの充填不足による成型不良の問題を解消するための手段として、内圧補助部材4が装備されている。この内圧補助部材4はピン状を成し、その先端部が金型内部のキャビティに臨んで出没動作するように組み込まれている。5はこの内圧補助部材4を動作させるための駆動手段であり、この駆動手段としては電磁駆動機構や油圧またはエアシリンダ機構など、種々の動作機構を採用することができる。
【0010】
ここで内圧補助部材4は成型品の重要機能部分に対応して配置され、即ち本例ではオイルシール6の重要機能部分である主リップ9の近傍に突出するように内圧補助部材4を下型2に組み込んである。この場合、内圧補助部材4は、オイルシールの周方向に所定間隔で複数配置されるものとする。
【0011】
以上の如き内圧補助部材4を備えた本例の金型装置においては、金型内のキャビティにゴムが充填される前の状態では、内圧補助部材4はキャビティに対し引込んだ状態にある。
【0012】
そしてこの金型装置では、キャビティに未加硫のゴム生地が充填された後、駆動手段5を作動させることにより、図2に示す如く内圧補助部材4をキャビティ内に突出させ、この内圧補助部材4の突出状態を保ちながらキャビティ内のゴムを加熱加硫してオイルシール6を成型する。
【0013】
このように本例の金型装置では、キャビティにゴムが充填された後に内圧補助部材4を突出させることにより、キャビティ内のゴムに内圧が付加される状態となるので、ゴムの充填不足があってもそれを補うことができ、これによって充分なゴム密度を有するオイルシール6が成型される。
【0014】
ここで特に本例の金型装置では、オイルシール6の重要機能部分である主リップ9の近傍に突出するように内圧補助部材4を配置してあるので、この主リップ9の部分でのゴム密度を充分に確保することができ、オイルシールとしての信頼性が向上する。
【0015】
図3は本発明によるゴム成型用金型装置の他の実施例として、パッキンを成型するための金型装置を示す。即ちこの金型装置は、上型1と下型2とで構成され、その間に形成されるキャビティにゴムを充填してパッキン11を成型するものである。
【0016】
そしてこのパッキン成型用の金型装置においても前述したオイルシール成型用の金型装置と同様に、金型内部のキャビティに臨んで出没動作する内圧補助部材4及びこの内圧補助部材4を動作させるための駆動手段5が備えられており、キャビティに未加硫のゴムが充填された後、内圧補助部材4をキャビティ内に突出させることによってキャビティ内のゴムに内圧を付加し、充分なゴム密度を確保するようにしている。
【0017】
以上の如く本発明による金型装置においては、内圧補助部材4によってキャビティ内のゴムに内圧を付加するようにしたことにより、充分なゴム密度を確保できるので、不良品の発生を確実に低減させることができる。また、これによってゴムの使用量を限界まで抑えることが可能となる。
【0018】
さらにこの金型装置の応用例として、ゴムの充填量を検知する手段を設け、ゴムの充填不足が検知された場合にはその不足量に応じた突出量で内圧補助部材4が動作される構成としてもよい。
【0019】
またこの構成では、内圧補助部材4を利用してゴム充填不足を検知することも可能である。即ちこの場合、キャビティにゴムが充填された状態で内圧補助部材4に設定荷重を加えてこれをゴムに押し当てるようにし、ここで予め設定された閾値をもってゴム充填不足の判定を行うようにする。これにより、発見されにくい微量のゴム不足による不良を発生時点で検知することができる。
【0020】
なお、本発明はコンプレッション成型の他に、トランスファー成型やインジェクション成型においても適用が可能である。また本発明はオイルシールやパッキンの成型に限ることなく、他にも種々のゴム成型品の成型に幅広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来例の金型装置の半部断面図である。
【図2】本発明の実施例としてオイルシール成型用の金型装置の半部断面図である。
【図3】同、パッキン成型用の金型装置の半部断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…上型
2…下型
3…中型
4…内圧補助部材
6…オイルシール(ゴム成型品)
11…パッキン(ゴム成型品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成型品の成型に用いる金型装置であって、
金型内部のキャビティに臨んで出没動作する内圧補助部材を備え、上記キャビティに未加硫のゴムが充填された後、上記内圧補助部材を突出方向に動作させることにより、上記キャビティ内のゴムに内圧を付加するようにしたゴム成型用金型装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金型装置を用いたゴム成型方法であって、
上記キャビティに未加硫のゴムを充填する工程と、上記内圧補助部材を突出方向に動作させて上記キャビティ内のゴムに内圧を付加する工程と、上記キャビティ内のゴムを加熱加硫する工程と、を有してなるゴム成型方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−154513(P2009−154513A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341918(P2007−341918)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】