説明

ゴム材料成型体、その集合物、及びそれらを用いたゴム製品

【課題】混練装置への負荷を軽減し、混練装置への過負荷に起因する故障を低減し得るゴム材料成型体を提供すること。
【解決手段】複数のロータを有する密閉型混練装置内で混練してゴム組成物を得るために用いられるゴム材料成型体であって、少なくともジエン系ゴム成分と充填材成分とからなり、且つその形状が下記式(1)、(2)及び(3)を満足することを特徴とするゴム材料成型体、その集合物、及びそれらを用いたゴム製品である。
0.05Dm ≦ Gb ≦ 2Dm ・・・(1)
0.15Wm ≦ Wb ≦ 0.95Wm ・・・(2)
1.5Rm ≦ Lb ≦ 32Rm ・・・(3)
[式(1)中、Gbはゴム材料成型体の厚さであり、Dmは混練装置のロータの回転軸を含む平面上におけるロータの回転軸に垂直なロータ間空隙距離の最大値である。式(2)中、Wbはゴム材料成型体の幅であり、Wmは混練装置のロータ回転軸に平行な混練室の幅である。式(3)中、Lbはゴム材料成型体の長さであり、Rmは混練装置の最大ロータ回転半径である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品製造業に用いられる、ゴム材料成型体、その集合物、及びそれらを用いたゴム製品、特にタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品製造分野においては、種々のゴム材料が主要な原材料として用いられている。これらのゴム材料として、天然ゴム又は合成ゴムの原料ゴム以外に原料ゴムと充填材等とを混合したマスターバッチ等のゴム−充填材複合体等が用いられている。
これらの原料ゴムやマスターバッチは、通常、密閉型混練装置内で他のゴム用配合材料と混練されて、各種ゴム製品に用いられるゴム組成物が製造される。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、ゴム材料と他のゴム用配合材料とを密閉型混練装置内で混練してゴム組成物を製造する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1〜3には、ゴム材料、特に高粘度のゴム材料の形状を工夫することにより、混練装置への負荷を軽減することについての考慮はなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−185948
【特許文献2】特開2005−199503
【特許文献3】特開2006−116400
【特許文献4】特開2006−348237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、混練装置への負荷を軽減し、混練装置への過負荷に起因する故障を低減し得るゴム材料成型体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム材料、特に高粘度のゴム材料を密閉型混練装置のロータ形状及び混練室内形状に合わせたゴム材料成型体とすることにより、混練装置への負荷を軽減し、混練装置への過負荷に起因する故障を低減し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]複数のロータを有する密閉型混練装置内で混練してゴム組成物を得るために用いられるゴム材料成型体であって、少なくともジエン系ゴム成分と充填材成分とからなり、且つその形状が下記式(1)、(2)及び(3)を満足することを特徴とするゴム材料成型体、
0.05Dm ≦ Gb ≦ 2Dm ・・・(1)
0.15Wm ≦ Wb ≦ 0.95Wm ・・・(2)
1.5Rm ≦ Lb ≦ 32Rm ・・・(3)
[式(1)中、Gbはゴム材料成型体の厚さであり、Dmは混練装置のロータの回転軸を含む平面上におけるロータの回転軸に垂直なロータ間空隙距離の最大値である。式(2)中、Wbはゴム材料成型体の幅であり、Wmは混練装置のロータ回転軸に平行な混練室の幅である。式(3)中、Lbはゴム材料成型体の長さであり、Rmは混練装置の最大ロータ回転半径である。]
[2]かさ比重Dvが0.42以上である上記[1]に記載のゴム材料成型体、
[3]130℃におけるムーニー粘度ML1+4 が85以上であるか又は130℃におけるムーニー粘度MS1+4 が68以上である上記[1]又は[2]に記載のゴム材料成型体、
[4]前記ジエン系ゴム成分が天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムであり、且つ前記充填材成分がカーボンブラック、シリカ及び下記一般式(4)で表わされる無機充填材からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム材料成型体、
mM1・xSiOy・zH2O ・・・(4)
[式中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、該金属の酸化物又は水酸化物、該酸化物又は該水酸化物の水和物、及び該金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。但し、上記式(4)において、x、zがともに0である場合には、該無機充填材はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。]
[5]ゴムラテックスと充填材スラリーとを混合凝固してなるウエットマスターバッチを脱水し乾燥した後、押出加工及び/又はロール加工により成形してなる上記[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム材料成型体、
[6]質量が40kg以下である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム材料成型体、
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム材料成型体を複数個集合してなるゴム材料成型体集合物、
[8]かさ比重Dvが0.42以上である上記[1]〜[7]のいずれかに記載のゴム材料成型体集合物、
[9]質量が40kg以下である上記[7]又は[8]に記載のゴム材料成型体集合物、
[10]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム材料成型体とゴム用配合材料とを上記密閉型混練装置内で混練してなるゴム組成物、
[11]上記[10]に記載のゴム組成物を用いてなるゴム製品、及び
[12]上記[10]に記載のゴム組成物を用いてなるタイヤ
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、高粘度のゴム材料であっても混練装置への負荷を軽減し、混練装置への過負荷に起因する故障を低減し得るゴム材料成型体を提供することができる。さらに、成型体及び/又は成型体集合物にすることにより、見掛け比重を高くできるため、積載量が高くなり輸送効率が良好となる。また、保管時の変形量が小さく、形状が整うため、使用時にハンドリングし易くなる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のゴム材料成型体のGb、Wb及びLbの寸法表示方法を示す模式図である。
【図2】本発明において使用される密閉型混練装置及びその装置内での混練状態の一例を示す概略図である。
【図3】本発明において使用される1つの羽根を有するロータを2つ備えた1翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図である。
【図4】本発明において使用される2つの羽根を有するロータを2つ備えた2翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図である。
【図5】本発明において使用される3つの羽根を有するロータを2つ備えた3翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図である。
【図6】本発明のゴム材料成型体集合物の1例を示す模式図である。
【図7】本発明のゴム材料成型体集合物の他の1例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴム材料成型体は、複数のロータを有する密閉型混練装置内で混練してゴム組成物を得るために用いられるゴム材料成型体であって、少なくともジエン系ゴム成分と充填材成分とからなり、且つその形状が下記式(1)、(2)及び(3)を満足することを特徴とする。
0.05Dm ≦ Gb ≦ 2Dm ・・・(1)
0.15Wm ≦ Wb ≦ 0.95Wm ・・・(2)
1.5Rm ≦ Lb ≦ 32Rm ・・・(3)
式(1)中、Gbはゴム材料成型体の厚さであり、Dmは混練装置のロータの回転軸を含む平面上におけるロータの回転軸に垂直なロータ間空隙距離の最大値である。式(2)中、Wbはゴム材料成型体の幅であり、Wmは混練装置のロータ回転軸に平行な混練室の幅である。式(3)中、Lbはゴム材料成型体の長さであり、Rmは混練装置の最大ロータ回転半径である。
【0011】
本発明のゴム材料成型体は、上記式(1)、(2)及び(3)を満足する限りにおいてその形状は限定されない。例えば、ベール状、シート状、ひも状等が挙げられる。ベール状は通常、直方体又は正方体が好ましく、シート状は長尺体であっても良い。また、ひも状は、断面が正方形、長方形、円形、多角形、楕円形等いずれでも良いが、かさ比重を高める観点から断面は正方形又は長方形が好ましい。
また、本発明のゴム材料成型体の質量は、40kg以下であることが好ましい。人力による持ち運びが可能であり、且つ梱包に関わるコスト減や引き続くゴム材料成型体を用いた混練の精度向上を図ることができるからである。この観点から0.006〜36kgであることがより好ましい。
【0012】
以下、図面に基いて、上記式(1)、(2)及び(3)に記載されたGb、Wb、Lb、Dm、Wm及びRmを説明する。
図1は、本発明のゴム材料成型体のGb、Wb及びLbの寸法表示方法を示す模式図である。図1はあくまで、寸法表示方法を示す模式図であって、本発明のゴム材料成型体の形状そのものを限定的に示すものではない。
【0013】
次に、混練装置のDm、Wm及びRmを説明する前提として、密閉型混練装置の概略を説明する。密閉型混練装置としては、2軸混練押出機等の多軸混練押出機及び単軸混練押出機等の連続式密閉型混練機とインターナル型ミキサー、バンバリー型ミキサ−等のバッチ式密閉型混練機とがある。バッチ式密閉型混練機としては、接線式と噛合式とがある。接線式とは、ロータ同士が噛み合わない方式であり、ロータチップ先端(羽根の先端)とケーシング(混練室内の壁面)との間のせん断により混練作用を奏する方式である。一方、噛合式は、ロータ同士が噛み合う方式であり、2本のロータ間での破砕、混練作用を奏する方式である。また、ロータ形状としては、1つの羽根を有するロータを2つ備えた1翼型、2つの羽根を有するロータを2つ備えた2翼型、3つの羽根を有するロータを2つ備えた3翼型等がある。
図2は、本発明において使用される密閉型混練装置及びその装置内での混練状態の一例を示す概略図である。
【0014】
図2に示す密閉型混練装置は、接線式1翼型のバッチ式密閉型混練機であって、「ニーダー」と称されるものである。この密閉型混練装置20は、混練機21と動力部31、油圧シリンダー34及びガイドロット35とから構成されている。この混練機21は混練機本体22とフローティングウェイト32との組合せにより構成されている。混練機本体22は、断面半円状に形成された円筒面を2個合体した形の混練室(混練チャンバ)23を形成している。該混練室23の上方には、円筒面に形成された開口部24が設けられている。
なお、上記のニーダーとしては、バンバリー型や加圧ニーダーが一般的に用いられている。
【0015】
上記混練室23の半円形円筒面の中心軸には、一対のロータ25aと25bとが設けられ、第1のロータ25aは回転軸26aを、第2のロータ25bは回転軸26bを有している。第1のロータ25aと第2のロータ25bには各々第1の羽根27aと第2の羽根27aとが設けられている。一対のローター25a及び25bは、動力部31によって第1と第2の回転軸26a及び26bを軸として、両者間に向かって互いに回転し、互いの第1の羽根27aと第2の羽根27bによって、ゴム材料成型体とゴム用配合材料とをせん断を掛けながら混練し、ゴム組成物10を製造する様に構成されている。
フローティングウェイト32は、混練機本体22の開口部24内側に嵌合する外周面33が設けられていると共に、油圧シリンダー34及びガイドロット35からの圧力によりゴム材料成型体とゴム用配合材料が混合し易い様に押え込み圧接している。
【0016】
図3は、本発明において使用される1つの羽根を有するロータを2つ備えた1翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図である。Dは混練機21のロータ25a及び25bの回転軸26a及び26bを含む平面上におけるロータの回転軸26a及び26bに垂直なロータ間空隙距離であり、Dmは、Dの最大値である。Wmは混練装置のロータ回転軸に平行な混練室23の幅である(即ち、混練室内の幅である)。また、Rmは混練装置20の最大ロータ回転半径である。
図4は、本発明において使用される2つの羽根を有するロータを2つ備えた2翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図であり、図5は、本発明において使用される3つの羽根を有するロータを2つ備えた3翼型の密閉型混練装置におけるD、Wm及びRmを示す概略図である。2翼型及び3翼型の場合も同様にして、D、Wm及びRmが示される。
以上、接線式の場合について述べたが、噛合式も同様にして、D、Dm、Wm及びRmを特定できる。また、2軸混練押出機、単軸混練押出機等の連続式密閉型混練機の場合も同様にして、D、Dm、Wm及びRmを特定できる。なお、単軸混練押出機の場合のDは、単軸混練押出機のロータの回転軸を含む平面上におけるロータの回転軸に垂直な、ロータと単軸混練押出機の内壁との間の空隙距離をいい、Dmはその最大値である。
【0017】
本発明のゴム材料成型体のかさ比重Dvは、0.42以上であることが好ましい。かさ比重Dvが0.42以上であれば、ゴム材料成型体の形状を保つことができると共に梱包に関わる工数やコストを削減できるからである。この観点から、0.45以上がより好ましい。
【0018】
本発明において、ゴム材料成型体が、130℃におけるムーニー粘度ML1+4 が85〜140であるか又は130℃におけるムーニー粘度MS1+4 が68〜112であれば、本発明のゴム材料成型体を用いることによる密閉型混練装置への負荷を軽減する効果が高まり、好ましい。130℃におけるムーニー粘度ML1+4 が90〜130であるか又は130℃におけるムーニー粘度MS1+4 が72〜104であれば、本発明のゴム材料成型体を用いることによる密閉型混練装置への負荷を軽減する効果がさらに高まり好ましい。
【0019】
本発明のゴム材料成型体は、少なくともジエン系ゴム成分と充填材成分とからなる。
ジエン系ゴム成分としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムが好適に用いられる。
充填材成分としては、カーボンブラック、シリカ及びシリカ以外の無機充填材からなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に挙げられる。
本発明のゴム材料成型体は、必要に応じ、加硫剤や加硫促進剤以外のゴム用配合材料、例えば、プロセス油等の軟化剤;石油樹脂、天然樹脂等の樹脂類;老化防止剤やワックス類;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫活性剤等を含んでいても良い。
【0020】
上記シリカ以外の無機充填材としては、下記一般式(4)で表わされる無機充填材が好ましい。
mM1・xSiOy・zH2O ・・・(4)
ここで、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、該金属の酸化物又は水酸化物、該酸化物又は該水酸化物の水和物、及び該金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。但し、上記式(4)において、x、zがともに0である場合には、該無機充填材はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
【0021】
上記一般式(4)で表わされる無機充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、上記一般式(4)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
上記式(4)で表されるこれらの無機充填材は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよく、また上記カーボンブラック及び/又はシリカと併用することができる。
【0022】
本発明のゴム材料成型体を構成する材料としては、ジエン系ゴム成分と充填材成分との複合体であるマスターバッチのみならず加硫性ゴム組成物等のゴム組成物をも包含する。
ここで、マスターバッチは、ゴムラテックスと充填材スラリーとを混合凝固してなる所謂ウエットマスターバッチであっても良いし、天然ゴム又は合成ゴムの原料ゴムと充填材等とを混練装置内で混練して得られる所謂ドライマスターバッチであっても良い。
【0023】
本発明に係るウエットマスターバッチは、例えば、ゴムラテックスと充填材スラリーとを混合凝固させ、凝固物を含有する凝固液から固形分を分離して脱水し乾燥した後、押出加工及び/又はロール加工により所定の形状に成形されて本発明のゴム材料成型体となる。ここで、例えば特許文献4に記載されているように、多軸混練押出機、例えば2軸混練押出機を用い、昇温されたバレル中に供給された固形分を、複数のスクリューで押し出することにより固形分中の水分を加熱蒸発させて乾燥させ、上記の乾燥工程と押出加工工程と同時に行い、ウエットマスターバッチからなるゴム材料成型体を連続的に製造しても良い。
【0024】
また、本発明のゴム材料成型体を複数個集合してなるゴム材料成型体集合物として用いることが好ましい。
図6は、本発明のゴム材料成型体集合物2の1例を示す模式図である。図6に示すゴム材料成型体集合物2は、シート状のゴム材料成型体1を所定枚数(例えば、2〜30枚、好ましくは3〜20枚)積層した後、樹脂フィルム長尺体5によりラッピングされてなる。ラッピングは、例えば樹脂フィルム長尺体5により複数個所固定されることによりなされる。図6においては、樹脂フィルム長尺体a(5a)、樹脂フィルム長尺体b(5b)及び樹脂フィルム長尺体c(5c)により3個所固定されている。
図7は、本発明のゴム材料成型体集合物2の他の1例を示す模式図である。図7に示すゴム材料成型体集合物2は、ひも状のゴム材料成型体1を所定個数(例えば、2〜50個、好ましくは4〜40個)配列した後、樹脂フィルム長尺体5によりラッピングされてなる。ラッピングは、図6と同様に樹脂フィルム長尺体5により複数個所固定されることによりなされる。図7においては、樹脂フィルム長尺体a(5a)、樹脂フィルム長尺体b(5b)及び樹脂フィルム長尺体c(5c)により3個所固定されている。
【0025】
以下、本発明のゴム材料成型体集合物2の製造方法の概略を説明する。
[ゴム材料成型体1の成形工程]
第1の工程において、上記のジエン系ゴム成分と充填材成分との複合体は、オープンロール、押出機(例えば、単軸混練押出機)、プレス等によりベール状、シート状又はひも状に成形され、ゴム材料成型体1となる。ゴム材料成型体1の寸法は、通常、Gb2〜250mm、Wb3〜800mm、Lb200〜1500mmであり、ゴム材料成型体集合物2としないでそのまま用いても良い。
【0026】
[離型材料付与工程]
得られたゴム材料成型体1は、必要に応じ、ゴム材料成型体1間に離型材料を付与される。離型材料を付与することにより、積層作業や配列作業がし易くなり、且つ使用時にゴム材料成型体集合物2が直ちに分離できるようになるからである。離型材料としては、炭酸カルシウム等の離型剤や薄ゲージの樹脂フィルム等が挙げられる。また、裁断時に離型材料を塗布又は貼着しても良いし、裁断前又は裁断後に離型剤等を含有するダスティング液に浸漬しても良い。
離型材料として薄ゲージの樹脂フィルム等を用いる場合は、離型材料付与工程と、積層工程又は配列工程とを同時に行っても良い。
[積層又は配列工程]
ゴム材料成型体1は、上記範囲の所定枚数又は所定個数積層又は配列される。
【0027】
[ラッピング工程]
所定枚数又は所定個数積層又は配列されたゴム材料成型体1は、ラッピングされてゴム材料成型体集合物2を形成する。ラッピング方法としては、積層又は配列されたゴム材料成型体1の全面を覆う完全包装でも良いが、包装材の量が多くなって費用がかかったり、混練機等の加工機に投入するとゴム物性の低下を招く恐れがある。これらの懸念点を解消するためには、ゴム材料成型体1を樹脂フィルム長尺体5で好ましくは複数個所、より好ましくは2〜10個所、さらに好ましくは2〜5個所固定することが望ましい。
ここで、樹脂フィルム長尺体5としては、ゴム材料成型体集合物2と共に、密閉型混練装置内に投入できるものが好ましく、この観点からポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体又はポリブタジエンからなる樹脂フィルム長尺体が特に好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン等のいずれでも良く、ニ軸延伸フィルムが好ましく用いられる。
樹脂フィルム長尺体の形状は、ラッピング方法に応じて適宜選択すれば良いが、幅10〜100mm、且つ厚さ10〜100μmであることが好ましい。
【0028】
本発明のゴム材料成型体集合物2のかさ比重Dvは、0.42以上であることがゴム材料成型体の形状を保つことができると共に梱包に関わる工数やコストを削減できるので好ましく、この観点から、0.45以上がより好ましい。
また、ゴム材料成型体集合物2の質量は、40kg以下であることが人力による持ち運びが可能であり、且つ梱包に関わるコスト減や引き続くゴム材料成型体を用いた混練の精度向上を図ることができるので好ましく、この観点から0.03〜36kgであることがより好ましい。
【0029】
本発明のゴム材料成型体1及び/又はゴム材料成型体集合物2は、ゴム用配合材料、例えば、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、プロセス油等の軟化剤;石油樹脂、天然樹脂等の樹脂類;老化防止剤やワックス類;スコーチ防止剤;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫活性剤;硫黄、不溶性硫黄等の加硫剤;グアニジン系、チウラム系、ジチオカルバミン系、チアゾール系等の有機加硫促進剤;その他の配合材料等と密閉型混練装置内で混練してゴム組成物、特に加硫性ゴム組成物が得られる。
【0030】
得られたゴム組成物、特に加硫性ゴム組成物は、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド、アンダートレッド、ベルト、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ用途を始め、防振ゴム,ベルト,ホースその他の工業品等の各種ゴム製品に用いられるが、特に、タイヤ用として好適に使用される。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、ムーニー粘度(ML1+4)及びかさ比重の試験方法は以下の通りである。
<ムーニー粘度(ML1+4)>
JIS K 6300−1:2001に従い、L形ロータを用いて、130℃において予熱1分後4分間ロータ回転させた時の粘度を測定した。
<かさ比重>
ゴム材料成型体の場合は、まず、室温(20℃)において、試料約100gを採取し精秤し、その質量をw1(単位:g)とした。
シート状のゴム材料成型体においては、巾、奥行き及び厚みを各々10回ずつ測定して相加平均値から体積V1(単位:cm3)を求め、(w1/V1)を算出した。これを5回繰り返して、(w1/V1)の相加平均値をかさ比重とした。
ひも状のゴム材料成型体においては、断面積を10箇所で測定して相加平均値を計算し、長さを測定して体積V2(単位:cm3)を求め、(w1/V2)を算出した。これを5回繰り返して、(w1/V2)の相加平均値をかさ比重とした。
ペレット状のゴム材料成型体においては、JIS K 7370:2000に準拠して、タッピング後の体積V3(単位:cm3)を求め、(w1/V3)を算出した。これを5回繰り返して、(w1/V3)の相加平均値をかさ比重とした。
ゴム材料成型体集合物の場合は、約100cm3の試料を採取してその3辺を測定して体積V4(単位:cm3)を求めると共に、その質量を精秤し、w2(単位:g)とし、(w2/V4)を算出した。これを5回繰り返して、(w2/V4)の相加平均値をかさ比重とした。
【0032】
実施例1〜9及び比較例1〜5
第1表に示すジエン系ゴム成分と充填材成分とを、第1表に示す組成及び製造方法により、第1表に示すムーニー粘度(ML1+4、130℃)、形状、寸法、かさ比重及び質量(単位は「g」とした。)のゴム材料成型体1を、第1表に示す形状、寸法、かさ比重及び質量(単位は「g」とした。)のゴム材料成型体集合物2を得た。これらをそれぞれ第1表に示す機種及びロータ形状の密閉型混練装置内で第2表に示す配合組成により第1表に示すバッチ当りゴム量(Kg)を混練して加硫性ゴム組成物を得る際の混練状況を目視及び密閉型混練装置に付属する電流計により評価した。結果を第1表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[注]
1) N220:カーボンブラックISAF、旭カーボン(株)製、商品名「旭#80」
2) A:2軸連続混練押出機を用いて製造したウエットマスターバッチ(WMB)
3) B:バッチ式密閉混練機を用いて製造したドライマスターバッチ(DMB)
4) C:2軸連続混練押出機を用いて製造したウエットマスターバッチ(WMB)をさらにバッチ式密閉混練機を用いて混練したマスターバッチ(MB)
5) E:離型材料(炭酸カルシウム)によりダスティングしたシート状のゴム材料成型体5枚を積層し、高圧法低密度ポリエチレンニ軸延伸フィルムで図6に示すように3箇所ラッピングしてゴム材料成型体集合物を得た。
6) F:離型材料(炭酸カルシウム)によりダスティングしたシート状のゴム材料成型体10枚を積層し、高圧法低密度ポリエチレンニ軸延伸フィルムで図6に示すように3箇所ラッピングしてゴム材料成型体集合物を得た。
7) G:離型材料(炭酸カルシウム)によりダスティングしたひも状のゴム材料成型体15本を配列し、高圧法低密度ポリエチレンニ軸延伸フィルムで図7に示すように3箇所ラッピングしてゴム材料成型体集合物を得た。
8) L:バッチ式密閉型混練機:神戸製鋼(株)製、商品名「OOC」
9) M:バッチ式密閉型混練機:神戸製鋼(株)製、商品名「F270」
10) N:バッチ式密閉型混練機:日立機械(株)製、商品名「K4」
11) P:接線式、1つの羽根を有するロータを2つ備えた1翼型
12) Q:接線式、2つの羽根を有するロータを2つ備えた2翼型
13) R:噛合式、3つの羽根を有するロータを2つ備えた3翼型
<ゴム組成物の混練状況>
14) V:投入時にやや高電流を観察した。
15) X:温度上昇せず、ペレット状で混練不能であった。
16) Y:過剰電流により材料投入に5分要し、混練後のゴムにゴム焦け(スコーチ)が見られた。
17) Z:過剰電流により混練装置が停止した。
【0035】
【表2】

【0036】
[注]
18) 老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」
19) 加硫促進剤 CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ」
【0037】
第1表より明らかなように、実施例1、2、4〜7では、密閉型混練装置への負荷が非常に低く、混練状況は良好であった。実施例3、8及び9では、投入時にやや高電流を観察したが、密閉型混練装置への負荷が非常に低かった。これに対し、比較例1、3、4及び5では混練不能であった。また、比較例2ではゴム焦け(スコーチ)が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のゴム材料成型体及び/又はゴム材料成型体集合物は、各種ゴム製品、例えば、乗用車用、軽自動車用、軽トラック用、トラック・バス用、ダンプトラック用及びオフ・ザ・ロード用(建設車両用)等のタイヤ、防振ゴム、ベルトコンベア、ホース、ラバーダム、免震ゴム等に好適なゴム組成物に用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1 ゴム材料成型体
2 ゴム材料成型体集合物
5、5a、5b、5c 樹脂フィルム長尺体
20 密閉型混練装置
21 混練機
22 混練機本体
23 混練室
24 開口部
25a 第1のロータ
25b 第2のロータ
26a 第1の回転軸
26b 第2の回転軸
27a 第1の羽根
27b 第2の羽根
31 動力部
32 フローティングウェイト
34 油圧シリンダー
35 ガイドロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータを有する密閉型混練装置内で混練してゴム組成物を得るために用いられるゴム材料成型体であって、少なくともジエン系ゴム成分と充填材成分とからなり、且つその形状が下記式(1)、(2)及び(3)を満足することを特徴とするゴム材料成型体。
0.05Dm ≦ Gb ≦ 2Dm ・・・(1)
0.15Wm ≦ Wb ≦ 0.95Wm ・・・(2)
1.5Rm ≦ Lb ≦ 32Rm ・・・(3)
[式(1)中、Gbはゴム材料成型体の厚さであり、Dmは混練装置のロータの回転軸を含む平面上におけるロータの回転軸に垂直なロータ間空隙距離の最大値である。式(2)中、Wbはゴム材料成型体の幅であり、Wmは混練装置のロータ回転軸に平行な混練室の幅である。式(3)中、Lbはゴム材料成型体の長さであり、Rmは混練装置の最大ロータ回転半径である。]
【請求項2】
かさ比重Dvが0.42以上である請求項1に記載のゴム材料成型体。
【請求項3】
130℃におけるムーニー粘度ML1+4 が85〜140であるか又は130℃におけるムーニー粘度MS1+4 が68〜112である請求項1又は2に記載のゴム材料成型体。
【請求項4】
上記ジエン系ゴム成分が天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムであり、且つ上記充填材成分がカーボンブラック、シリカ及び下記一般式(4)で表わされる無機充填材からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム材料成型体。
mM1・xSiOy・zH2O ・・・(4)
[式中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、該金属の酸化物又は水酸化物、該酸化物又は該水酸化物の水和物、及び該金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。但し、上記式(4)において、x、zがともに0である場合には、該無機充填材はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。]
【請求項5】
ゴムラテックスと充填材スラリーとを混合凝固してなるウエットマスターバッチを脱水し乾燥した後、押出加工及び/又はロール加工により成形してなる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム材料成型体。
【請求項6】
質量が40kg以下である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム材料成型体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム材料成型体を複数個集合してなるゴム材料成型体集合物。
【請求項8】
かさ比重Dvが0.42以上である請求項7に記載のゴム材料成型体集合物。
【請求項9】
質量が40kg以下である請求項7又は8に記載のゴム材料成型体集合物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム材料成型体及び/又は請求項7に記載のゴム材料成型体集合物とゴム用配合材料とを前記密閉型混練装置内で混練してなるゴム組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のゴム組成物を用いてなるゴム製品。
【請求項12】
請求項10に記載のゴム組成物を用いてなるタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−274506(P2010−274506A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128681(P2009−128681)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】