説明

ゴム組成物の製造方法、それから得られるゴム組成物およびその使用

本発明は、変性された無機酸素含有粒状物質を含む、ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、a) 変性された無機酸素含有粒状物質と第1の溶媒との混合物を製造する工程;ならびにb1) 混合物を、少なくとも1種のポリマーおよび任意的に第2の溶媒を含むゴム前駆体に添加する工程;またはb2) 混合物を、ゴム前駆体の少なくとも1種のモノマーおよび任意的に第2の溶媒を含むゴム組成物に添加し、かつモノマーを重合させてゴム前駆体を形成する工程;c) 任意的に、ゴム前駆体を架橋剤の存在下で架橋して、ゴム組成物を形成する工程;ならびにd) 任意的に、工程b1)、b2)およびc)のいずれかの前、間または後に、第1および/または第2の溶媒を除去する工程を含む方法に関する。本発明はさらに、ゴムおよび、カップリング剤で変性された無機酸素含有粒状物質を含むゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムおよび、カップリング剤で変性された無機酸素含有粒状物質を含むゴム組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は米国特許第6,509,423号明細書から公知であり、この明細書では、オルガノポリシロキサン、有機水素シラン、無機充填剤およびヒドロシリル化触媒を含むシリコーンゴム組成物の製造が開示される。無機充填剤は一般に、0.1〜500μmの平均粒径を有する。これらの無機充填剤はまた、有機ケイ素化合物で処理され得る。
【0003】
米国特許第6,830,811号明細書においては、疎水性の一部凝集したコロイドシリカが記載される。この方法で得られるのは、オルガノシランで変性されたコロイドシリカの水性溶媒/有機溶媒媒体中の懸濁物である。シリカの変性後、水が除去され、その後の懸濁物から、残留溶媒が、蒸発または噴霧乾燥によって除去される。かくして得られたコロイドシリカの凝集物は、シリコーン中で使用することができる。
【0004】
欧州特許第0 982 268号公報は、シリコーンゴム組成物において充填剤として使用するのに適当な、疎水性非凝集コロイドシリカを製造する方法を開示する。このために、親水性非凝集コロイドシリカの水性懸濁物が、少なくとも1種の有機ケイ素化合物と反応されて、コロイドシリカの疎水化が行われる。疎水性コロイドシリカはその後乾燥形態で得られ、その後で、乾燥固体がシリコーン液体に添加される。
【0005】
従来技術の方法の不都合は、変性コロイドシリカの塊状物がゴム前駆体に添加され、樹脂前駆体が硬化されると、コロイドシリカが均質に分布されていないゴム組成物にされることである。この不均質な分布は、ゴム組成物が最適な物性を有さない原因となる。
本発明の目的は、ゴム組成物を製造するための改善された方法を提供することである。さらなる目的は、改善された物性を有するゴム組成物を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、変性された無機酸素含有粒状物質を含む、ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 変性された無機酸素含有粒状物質と第1の溶媒との混合物を製造する工程;ならびに
b1) 該混合物を、少なくとも1種のポリマーおよび任意的に第2の溶媒を含むゴム前駆体と接触させる工程;または
b2) 該混合物を、少なくとも1種のモノマーおよび任意的に第2の溶媒を含むモノマー組成物と接触させ、かつモノマーを重合させてゴム前駆体を形成する工程;
c) 任意的に、ゴム前駆体を架橋剤の存在下で架橋して、ゴム組成物を形成する工程;ならびに
d) 任意的に、工程b1)、b2)およびc)のいずれかの前、間または後に、第1および/または第2の溶媒を除去する工程
を含む方法を用いて達成される。
【0007】
変性された粒状物質と第1の溶媒との混合物の使用(工程a))は、混合物がゴム前駆体またはそのモノマーと合わせられる前に、粒状物質がすでによく分散されていることを可能にする。このように、粒状物質は、塊状化することなく、または最小の塊状化で、ゴム前駆体中によく分散されることができる。それに対して、従来の方法、例えば欧州特許第0 982 268号公報に記載された方法は、疎水性シリカを固体形態で使用し、これは一般に、変性シリカの凝塊物が最終シリコーン組成物中に存在する原因となる。この塊状化は、慣用の方法において研削または粉砕の工程を必要とし、本発明の方法に比べてより複雑で、かつ経済的に魅力のないものにし得る。
【0008】
さらには、工程a)における変性された粒状物質と第1の溶媒との混合物は、一般に比較的低い粘度を有するので、容易に扱うことができ、また工程b1)のゴム前駆体または工程b2)のそれらのモノマーへの容易な混合を可能にする。一般に、本発明の方法中、特にゴムがシリコーンゴムであるとき、別々の蒸発工程を必要とせず、かつ最終的なゴム組成物において空隙を形成することなく、第1の溶媒は大部分蒸発するか、または完全に蒸発さえする。本発明の方法を用いると、変性された無機酸素含有粒状物質を含むゴム組成物は、改善された機械的特性、例えばデュロメーター硬度、引張強さ、伸び、弾性率、引裂強さおよび改善された光学特性を有して得られる。
【0009】
本発明の方法は、2つの二者択一の工程b1)およびb2)を含む。工程b1)においては、変性された粒状物質とゴム前駆体との間に反応が起こらずに、第1の溶媒/粒状物質混合物は、ゴム前駆体に添加される。
工程b2)においては、工程a)の混合物は、ゴム前駆体の少なくとも1種のモノマーに添加され、モノマーはその後、重合される。
この方法の1つの実施態様においては、無機酸素含有粒状物質は、粒状物質と反応性の第1の官能基ならびに、モノマーおよび/またはゴム前駆体と反応性の第2の官能基を含むカップリング剤で変性される。そのような場合には、第2の官能基は、それの重合中にモノマーと反応することができ、粒状物質をゴム前駆体に化学的に結合させる。あるいは、第2の官能基は、工程c)において前駆体が硬化されると、ゴム前駆体と反応することができ、変性された粒状物質をゴム組成物に化学的に結合させる。
【0010】
本発明の方法において使用される第1および第2の溶媒は、この方法において使用するために適当な、当業者に公知の任意の溶媒であることができる。そのような第1および/または第2の溶媒は同じまたは異なることができ、好ましくは変性された粒状物質と相溶性の溶媒、すなわち、粒状物質が別個の凝集していない粒子へとうまく分散されたままでいる溶媒、ならびにゴム前駆体、そのモノマーおよび/または得られるゴム組成物と相溶性の溶媒である。
第1および/または第2の溶媒としては、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn-ブタノール;ケトン、例えばメチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン;エステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;不飽和アクリルエステル、例えばアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルおよびトリメチロールプロパントリアクリレート;芳香族炭化水素、例えばトルエンおよびキシレン;ならびにエーテル、例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を包含する。
上記した方法の好ましい実施態様においては、第1および/または第2の溶媒は、式:
【化1】

(ここでR1はC1〜C4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数である)
に従うアルコキシル化アルコールである。
そのようなアルコキシル化アルコールの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルおよびジプロピレングリコールモノブチルエーテルである。これらのアルコールの中で、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルはあまり好ましくない。というのは、それらは催奇形であり、健康の問題を引き起こし得るからである。
最も好ましいアルコキシル化アルコールは、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルである。溶媒は、例えばシェル(Shell)(Oxitol/Proxitol)およびダウ(Dow)(Dowanol)ならびにユニオン カーバイド(Union Carbide)(Carbitol/Cellosolve)から入手可能である。本発明の方法において2種以上のアルコキシル化アルコールを使用することがまた想像される。
【0011】
本願中において、「変性された無機酸素含有粒状物質」という語は、少なくとも1方向において平均して1〜1,000nmの寸法を有する粒状物質をいい、この物質は、カップリング剤で変性される。
典型的には、本発明の無機酸素含有粒状物質は、動的光散乱法を用いて決定される、1〜1,000nmの数平均粒径、10〜50重量%の固形分含量を有する。好ましくは数平均粒径は、1〜150nmであり、最も好ましくは数平均粒径は、1〜100nmである。本発明の無機酸素含有粒状物質は、双峰分布または多峰分布の粒径分布を含むことができることが認識される。
【0012】
無機酸素含有粒状物質は、当業者に公知の任意の粒状物質であることができる。本発明の無機粒状物質は、本発明の方法に従って変性される前に、すでに変性されていることができ、例えば有機成分を含むことができるか、または第2の無機物質中にカプセル封入されることができることが想像される。無機酸素含有粒状物質は一般に、酸化物、水酸化物、カルシウム化合物、ゼオライトおよびタルクから選択される。
適当な酸化物および水酸化物の例は、シリカ(すなわち二酸化ケイ素)、アルミナ、アルミニウム3水和物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ユウロピウム、酸化インジウム、水酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化ネオジム、酸化ニッケル、酸化サマリウム、酸化テルビウム、酸化スズ、酸化タングステンおよび酸化イットリウムである。
カルシウム化合物の例は、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムである。
好ましい無機酸素含有粒状物質は酸化物および水酸化物であり、特にシリカ、アルミナ、アルミニウム3水和物、二酸化チタンおよび酸化亜鉛である。
最も好ましい粒状物質はシリカである。水性コロイドシリカの例は、アクゾ ノーベル(Akzo Nobel)N.V.からのNyacol(商標)、ニッサン ケミカルズ(Nissan Chemicals)社からのSnowtex(商標)およびクラリアント(Clariant)からのKlebosol(商標)である。
本発明はまた、上記した無機粒状物質の2種以上の混合物の変性を包含する。
【0013】
無機酸素含有粒状物質と反応することができる任意のカップリング剤を本発明の方法において使用することができ;適当なカップリング剤は、当業者に公知である。一般に本発明のカップリング剤は、Si、Al、Ti、Zr、B、Zn、SnおよびVからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。好ましくはカップリング剤は、Si、Al、Ti、ZrおよびBからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。
本発明のカップリング剤は一般に、式:
【化2】

にしたがうカップリング剤である。ここで、M1およびM2は独立して、Si、Al、Ti、ZrおよびBからなる群より選択され、R1〜R6の少なくとも1つは独立して、ヒドロキシル、塩素、1〜10個の炭素原子を有するアセトキシ、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含む2個の炭化水素基を含む有機ホスフェートおよび1〜20個の炭素原子を含む2個の炭化水素基を含む有機ピロホスフェートから選択され、このアセトキシ、アルコキシ、有機ホスフェートまたは有機ピロホスフェートは任意的に少なくとも1個の官能基を含み、残りのR1〜R6は独立して、ヒドロキシル、塩素、1〜10,000個の炭素原子を有する炭化水素(この炭化水素は任意的に少なくとも1個の官能基を含む)、1〜5個の炭素原子を有するアセトキシおよび1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ(このアルコキシは任意的に少なくとも1個の官能基を含む)、シロキサンおよびシラザン(このシロキサンおよび/またはシラザンは任意的に環構造、はしご構造もしくはかご様の構造であるか、または残りの基R1〜R6の任意の1個と共に環、ハシゴもしくはかご様の構造を形成する)から選択され、Xは、酸素を表すか、またはM1および/またはM2がSiなら、XはO、N、S、ジスルフィド、ポリスルフィド、R7-S4-R8および/またはR7-S2-R8を表し、ここでR7およびR8は独立して、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素から選択され、pは0〜50の整数を表し、ただし、M1がAlもしくはBであるなら、R3は不在であるか、および/またはM2がAlもしくはBであるなら、R5は不在である。官能基は、当業者に公知の任意の官能基であり得る。そのような官能基の例は、ヒドロキシル、エポキシ、イソシアネート、チオール、オリゴスルフィドアミンおよびハロゲンである。
2種以上のカップリング剤の組合せを、本発明の方法において使用することができる。カップリング剤は、混合物として、または別々に、無機酸素含有粒状物質と接触させることができる。カップリング剤の割合は、望まれるように変わり得る。粒状物質に添加されるときにちょうどよい時間にカップリング剤の割合を変えることがまた考えられる。
【0014】
無機酸素含有粒状物質がシリカであるなら、好ましいカップリング剤は、ケイ素に基づく化合物である。ケイ素に基づく化合物は典型的には、シラン、ジシラン、シランのオリゴマー、シラザン、シラン官能性シリコーン、シラン変性樹脂およびシルセスキオキサンからなる群より選択される。好ましいケイ素に基づく化合物は、シランおよびシラザンである。本発明の方法において使用するのに適当なシランは、式I〜VI:
【化3】

(ここで、R1、R2、R3、R4のそれぞれ1つは独立して、水素または1〜20個の炭素原子を有する炭化水素から選択され、炭化水素は任意的に、少なくとも1個の官能基を含む)
に従うシランである。式IV〜VIの任意の1つに従うシランが本発明の方法において使用されるなら、イオン、特にCl-は好ましくは、例えばイオン交換法を用いて、混合物から除去される。追加のイオン除去工程を避けるために、式I〜IIIの任意の1つに従うシランが好ましい。
【0015】
本発明に従うシランの例は、トリブチルメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)MTMS)、メチルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)MTES)、プロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)PTMO)、プロピルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)PTEO)、イソブチルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)IBTMO)、イソブチルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)IBTEO)、オクチルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)OCTMO)、オクチルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)OCTEO)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)9116)、フェニルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)9165)、フェニルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)9265)、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)GLYMO)、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)GLYEO)、3-メルカプトトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)MTMO)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(Dynasylan(商標)3403)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)MEMO)、ビニルトリエトキシシラン(Dynasylan(商標)VTEO)、ビニルトリメトキシシラン(Dynasylan(商標)VTMO)、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン(Dynasylan(商標)VTMOEO)、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチル-n-オクタデシルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、オクタンチオン酸S-(トリエトキシシリル)プロピルエステル、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ(Degussa)からのSi69(商標))、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ガンマメルカプトプロピルトリメトキシシラン(PCCからのSiSiB(商標)PC2300)、および3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン(GEからのNXT(商標))である。シランカップリング剤のさらなる例は、国際特許出願公開WO99/09036号公報から収集することができ、このシランカップリング剤は、引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0016】
本発明の方法において使用されるシランは、式I〜VIの任意の1つに従う2種以上のシランの混合物であることがさらに考えられる。
適当なジシランの例は、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンおよび1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンである。
適当なシランのオリゴマーの例は、ビニルトリメトキシシランオリゴマー(Dynasylan(商標)6490)、ビニルトリエトキシシランオリゴマー(Dynasylan(商標)6498)である。
適当なシラザンの例は、ヘキサメチルジシラザン(Dynasylan(商標)HMDS)、テトラメチルジシラザン、ジメチル環状シラザン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタメチルジシラザンおよびN-メチルシラザン樹脂(ペトラルチ(Petrarch)からのPS117)である。
適当なシロキサンの例は、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジエトキシジシロキサン、シラノール-末端化されたポリジメチルシロキサン(例えば、フルオロケム(Fluorochem)からのPS340, PS 340.5, PS 341, PS342.5およびPS 343)、ジアセトキシ-官能化されたポリジメチルシロキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 363.5)、メチルジアセトキシ-官能化されたポリジメチルシロキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 368.5およびPS 375)、ジメチルエトキシ末端化されたポリジメチルシロキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 393)およびジメチルメトキシ-末端化されたポリジメチルシロキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 397)である。
シラン変性樹脂は一般に、モノ-ジ-もしくはトリアルコキシシリル部分またはそれらのヒドロキシシリル、アセトキシシリルもしくはクロロシリル対応物を含むポリマーであり、これは、当業者に明らかであるように、重合中にケイ素含有モノマーを導入することにより、または樹脂を変性することにより製造することができる。好ましいシラン変性樹脂は、モノ-ジ-もしくはトリアルコキシシリル部分を含むポリマーである。というのは、それらはより安定であり、望ましくない副生物、例えば酸および塩化物を除去するためにさらなる加工処理工程を必要としないからである。そのようなシラン変性樹脂の例は、トリメトキシシリル変性ポリエチレンイミン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 076)、メチルジメトキシシリル変性ポリエチレンイミン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 076.5)、N-トリエトキシシリルプロピル-o-ポリエチレン-オキシドウレタン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 077)およびメチルジエトキシシリル変性1,2-ポリブタジエン(フルオロケム(Fluorochem)からのPS 078.8)である。
適当なシルセスキオキサンの例は、ポリメチルシルセスキオキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPR 6155)、ポリフェニルプロピルシルセスキオキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPR 6160)およびOH-官能性ポリフェニルプロピルシルセスキオキサン(フルオロケム(Fluorochem)からのPR 6163)である。
本発明の方法において好ましい他のカップリング剤は、チタン、アルミニウム、ホウ素およびジルコニウムのオルガノ-メタレートである。
チタン含有カップリング剤の例は、イソプロピルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトライソプロピルジ((ジオクチル)ホスフィト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチルジ((ジトリデシル)ホスフィト)チタネート、イソプロピルトリ((ジオクチル)ピロホスフェート)チタネート、イソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、ジ((ジオクチル)ピロホスフェート)オキソエチレンチタネート、ジ((ジオクチル)ホスフェート)エチレンチタネート、ジ((ジオクチル)ピロホスフェート)エチレンチタネート、テトラオクチルチタネートジ(ジトリデシル)ホスファイト、チタン(IV)2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラト、トリス(ジオクチル)ピロホスパト-Oおよびジアルコキシビス(トリエタノールアミン)チタネートである。
アルミニウム含有カップリング剤の例は、ジイソプロピルアセトアルコキシアルミネート、イソプロピルジイソステアロイルアルミネートおよびイソプロピルジオクチルホスフェートアルミネートである。
ホウ素含有カップリング剤の例は、ホウ酸トリメチル(セミケム(Semichem)からのTMB)、ホウ酸トリエチル(セミケム(Semichem)からのTEB)およびホウ酸トリプロピルである。
ジルコニウム含有カップリング剤の例は、イソプロピルトリイソステアロイルジルコネート、ブチルトリイソステアロイルジルコネート、ブチルトリオレイルジルコネート、イソプロピルトリリノレイルジルコネート、ジ(クミル)フェニルオキソエチレンジルコネート、ジ(クミル)フェニルジブチルジルコネートおよびトリ(クミル)フェニルプロピルジルコネートである。
【0017】
本発明の方法の1つの実施態様においては、少なくとも1種の上記カップリング剤で変性された無機酸素含有粒状物質はその後、さらなるカップリング剤で、または粒状物質に結合されたカップリング剤と反応することができる化合物で変性される。例えば、変性された粒状物質は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理され、これは、変性された酸素含有粒状物質をより疎水性にし、従って疎水性マトリックスとより相溶性にする。
本発明の方法を用いて製造されるゴム前駆体は、硬化または加硫されると、ゴムに転化することができるゴムの前駆体である。そのようなゴム前駆体ならびにそれで形成されたゴムは、当業者に公知である。
ゴムの例としては、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソブチレン(IIR)、ハロゲン化ポリイソブチレン、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)および同様の(水素化)スチレンブロックコポリマー(SBS、水素化SIS、水素化SBS)、ポリ(エピクロロヒドリン)ゴム(CO、ECO、GPO)、ケイ素ゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)、ポリアクリルゴム(ACM)、ポリノルボルネン(PNR)、ポリウレタンならびにポリエステル/エーテル熱可塑性エラストマーを包含する。好ましいゴムは、天然ゴム、SBR、EPDM、ポリウレタンおよびシリコーンゴムである。
本願中において、「ゴム組成物」という語は、ゴムおよび変性された無機酸素含有粒状物質、ならびに任意的に他の添加剤を含む組成物をいう。
【0018】
本発明のゴム前駆体は任意的に、架橋剤の存在下で硬化されて、ゴム組成物を形成することができる。ゴム前駆体の硬化プロセスは、当業者に公知である。架橋剤は、ゴム前駆体の硬化のために適当に使用される任意の架橋剤であることができる。そのような架橋剤は当技術分野で公知であり、第VIII族金属(例えばPtおよびRu)錯体、担持された第VIII族金属触媒、硫黄含有硬化剤、ペルオキシドまたはそれらの組合せを包含する。
【0019】
本発明の1つの実施態様においては、ゴムはシリコーンゴムである。シリコーンゴムの製造は一般に当業者に公知であり、例えば「シリコーンズ(Silicones)」、カーク オスマー エンサイクロペディア オブ ケミカル テクノロジー(Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、ジョン ウィリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)、オンライン掲示日:2002年、12月20日、の第3、4 および5章に記載されている。本質においては、シリコーンの製造は、モノマーを重合してシリコーン前駆体を形成し、その後、シリコーン前駆体を架橋してシリコーンを形成することによって進む。本発明の方法において使用されるシリコーン前駆体は、当業者に公知である。シリコーン前駆体は好ましくは液体であり、それで、変性された粒状物質および第1の溶媒の混合物は、シリコーン前駆体中に粒状物質の均質かつ均一な分布を得るために、容易に混合することができることが注目される。
【0020】
本発明の方法の1つの実施態様においては、工程b1)およびb2)のいずれかで得られるシリコーン前駆体は硬化されて、シリコーン、例えばシリコーンゴムまたはシリコーンフォームゴムを形成する。そのような硬化は典型的には、架橋ポリジオルガノシロキサン鎖からなる三次元ネットワーク構造を形成させる。硬化は一般に、ペルオキシドで誘導されるフリーラジカルプロセスによって、第VIII族金属(例えばPtおよびRu)錯体もしくは担持された第VII族金属触媒を用いるヒドロシリル化付加プロセスによって、または縮合反応によって進む。これらの硬化プロセスのそれぞれの例は、「シリコーンネットワーク形成(Silicone Network Formation)」、「シリコーンズ(Silicones)」、カーク オスマー エンサイクロペディア オブ ケミカル テクノロジー(Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、ジョン ウィリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)、オンライン掲示日:2002年、12月20日、の第5章に見出すことができる。シリコーン前駆体を硬化したら、シリコーンゴムまたはゴムフォームを得ることができる。
そのまま(例えば工程b1)の生成物として)、またはシリコーン前駆体にすでに結合された粒状物質として(例えば工程b2)の生成物として)、硬化工程中に、粒状物質と反応性の第1の官能基およびシリコーン前駆体と反応性の第2の官能基を含むカップリング剤で変性される無機酸素含有粒状物質を使用することが認識される。このように、粒状物質に結合されたカップリング剤の第2の官能基はまた、2つ以上のシリコーン前駆体鎖間に結合を形成するように、シリコーン前駆体と反応することができる。得られるシリコーンゴムまたはフォームは、化学的にそれに結合された変性粒状物質を含む。
上記した第2の官能基の適当な例は、ヒドロキシル、ビニル、クロリド、ハイドライド、チオール、アクリレート、メタクリレートまたはアセトキシである。
本発明はさらに、ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物および式
【化4】

(ここで、R1はC1〜C4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数である)
に従うアルコキシル化アルコールの混合物を製造する工程;
b) 任意的に、混合物を少なくとも1種のモノマーと接触させ、任意的にモノマーを重合してゴム前駆体を形成するか、および/または混合物を少なくとも1種のゴム前駆体と接触させる工程;
c) 少なくとも1種のカップリング剤を混合物と接触させ、無機酸素含有粒状物質を少なくとも部分的に変性する工程;
d) 任意的に、少なくとも1種のモノマーと得られた混合物とを接触させ、モノマーを重合してゴム前駆体を形成するか、または少なくとも1種のゴム前駆体と得られた混合物とを接触させる工程;
e) 任意的に、ゴム前駆体を硬化する工程
を含み、任意的に水および/またはアルコキシル化アルコールが、先の工程のいずれかの前、間、または後に、混合物から少なくとも部分的に除去される方法に関する。特定の実施態様においては、水が、工程b)および/または工程d)の前に除去される。
本発明の方法は、樹脂と良好な相溶性を有する、変性された無機酸素含有粒状物質を提供する。溶媒と水、粒状物質はおよびゴム前駆体および/またはそのモノマーとの良好な相溶性のために、ゴム前駆体中での変性された粒状物質の安定した分散を達成することができる。本発明の方法のさらなる利点は、この方法が一般に、変性された粒状物質を製造するための慣用の方法より少ない工程およびより少ない溶媒しか必要とせず、単位体積当たりの無機粒状物質のより高い収量を可能にし、この方法をより効率のよいものにすることである。アルコキシル化アルコールの使用は、無機酸素含有粒状物質、アルコキシル化アルコールおよび水を含む混合物から水をより効率的に除去させる。アルコキシル化アルコールはさらに、ほとんどのゴム前駆体と相溶性であり、樹脂を(より)容易に溶解する他の溶媒の使用を不要にするという利点を有する。したがって、本発明の方法は、慣用の方法より簡単であり、経済的に魅力的であり、環境にやさしい。
【0021】
本発明の方法においては、水、特に水性懸濁物由来の水ならびに/または、第1および/もしくは第2の溶媒は、プロセス中の任意の時間に除去することができる。1つの実施態様においては、水、第1および/または第2の溶媒は、水または溶媒がゴム内部に閉じ込められるのを避けるために、硬化工程の前に除去される。除去は、当分野で公知の任意の方法、例えば真空排気、蒸留、真空排気と組み合わせた蒸留によって、膜、例えば混合物から水を選択的に除去することができる限外ろ過膜を用いて、行うことができる。ある用途においては、水の存在は、ゴム前駆体またはそのモノマーの望ましくない劣化を引き起こし得る;そのような用途においては、工程a) の混合物中の水の量-工程b)で使用されるモノマーおよび/またはゴム前駆体が水に感応性であるなら-または工程c)の混合物中の水の量は一般に、工程a)またはc)で得られる混合物の全重量に基づいて5重量%未満、好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の水に減ぜられる。
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、脱イオンされた、無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物、特に水性シリカが使用される。「脱イオンされた」は、任意の遊離のイオン、例えばアニオン、例えばCl-、およびカチオン、例えばMg2+およびCa2+が、当業者に公知の技術、例えばイオン交換法を用いて望ましい濃度まで、水性懸濁物から除去されることを意味する。「遊離イオン」は、溶媒中に溶解され、混合物中を自由に移動することができるイオンをいう。遊離イオンの量は典型的には10,000ppm未満、好ましくは1,000ppm未満、最も好ましくは500ppm未満である。
本発明はさらに、ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物と第1の溶媒との混合物を製造する工程;
b) 少なくとも1種のモノマーまたはゴム前駆体を添加し、少なくとも1種のモノマーはカップリング剤である工程;
c) モノマーを重合してゴム前駆体を形成する工程;
d) 任意的にゴム前駆体を硬化する工程
を含み、任意的に水および/または第1の溶媒が、前の工程のいずれかの前、間または後に、混合物から少なくとも部分的に除去される方法に関する。
第1の溶媒は、水および変性された粒状物質と相溶性である、すなわち粒状物質が個別の凝集していない粒子へとうまく分散されたままでいる任意の溶媒であることができ、ならびにゴム前駆体、そのモノマーおよび/または得られるゴム組成物と相溶性の任意の溶媒であることができる。好ましくは溶媒は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールであるか、または先に定義されたアルコキシル化アルコールである。最も好ましい溶媒はアルコキシル化アルコールである。
本方法の利点は、無機酸素含有粒状物質の変性およびゴム前駆体の製造を1工程で可能にすることである。モノマーの重合は一般に、例えば開始剤例えばペルオキシドを使用することによる、または触媒を使用することによる開始を必要とすることが注目される。このことは、重合が開始される前に粒状物質の変性を見込む。あるいは、変性および重合が同時に進行することができる。
本発明の方法の好ましい実施態様においては、カップリング剤としてまたふるまうモノマーは、粒状物質と反応性の第1の官能基ならびにモノマーおよび/またはゴム前駆体と反応性の第2の官能基を含む。そのようなモノマーを使用することによって、粒状物質をゴム前駆体に化学的に結合させる。
【0022】
本発明中では、「無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物」という言い方は、少なくとも一方向で1〜1,000nmの寸法を有する無機酸素含有粒状物質の固体粒子の少なくとも一部が水性媒体中に分散されている懸濁物をいう。
【0023】
本発明はさらに、ゴムおよび、カップリング剤で変性された無機酸素含有粒状物質を含むゴム組成物であって、無機酸素含有粒状物質が少なくとも一方向で1〜1,000nmの寸法を有するゴム組成物に関する。
本発明のゴム組成物の利点は、それらが、変性された粒状物質を含む慣用のシリコーンに比べて、改善されたデュロメーター硬度および引張強さ、高められた伸びおよび弾性率ならびに、改善された引裂強さを示すことである。
これらの特性は、酸素含有粒状物質が、粒状物質と反応性の第1の官能基およびゴムまたはゴム前駆体と反応性の第2の官能基を含むカップリング剤で変性されるなら、なおさらに改善される。
【0024】
一般に、本発明のゴム組成物中に存在する変性された粒状物質の量は、ゴム組成物の全重量に対して0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%、最も好ましくは1〜30重量%である。慣用のゴム組成物と比べて、本発明のゴム組成物は一般に、同様の機械的特性を有するために、少ない変性された粒状物質しか必要としないことが注目される。
【0025】
本発明はさらに、ゴム前駆体および少なくとも一方向で1〜1,000nmの寸法を有する無機酸素含有粒状物質を含み、粒状物質がカップリング剤で変性された、任意の上記した方法によって得ることができるマスターバッチであって、粒状物質の量がマスターバッチの全重量に対して5〜80重量%であり、ゴム前駆体の量が20〜95重量%であるマスターバッチに関する。
好ましくは粒状物質の量は、マスターバッチの全重量に対して15〜75重量%であり、ゴム前駆体の量は25〜85重量%である。
マスターバッチは、ゴム組成物の製造において使用することができる、高度に濃縮された付加的予備混合物として当技術分野で公知である。そのようなマスターバッチは、本発明のゴム組成物を形成するように、本発明の変性された粒状物質を含まない少なくとも1種のゴム前駆体と接触される。マスターバッチの利点は、それが一箇所で製造でき、別の場所に輸送でき、かつ最終的なゴム組成物を製造するのに使用できることである。
【0026】
マスターバッチの好ましい実施態様は、粒状物質と反応性の官能基およびゴムまたはゴム前駆体と反応性の有機基を含むカップリング剤で変性された粒状物質を含む。
【0027】
本発明のゴム組成物は、タイヤ製造において、例えば冬季タイヤ、トラックタイヤ、オフロードタイヤおよび航空機タイヤを含む車のタイヤにおいて、手袋、コンドーム、風船、カテーテル、ラテックス糸、フォーム、カーペット裏張りおよびゴムびきされたコイアおよび毛を含むラテックス製品において、履物において、土木工学製品、例えば橋のベアリング、ゴム-金属積層ベアリングにおいて、ベルトおよびホースにおいて、エンジンマウント、ゴムベアリング、シール、グロメット、ワッシャーおよび車両固定具を含む非タイヤ自動車用途において、ワイヤーおよびケーブルにおいて、パイプシール、医療用閉鎖器具、ローラー、小中実タイヤ、家庭用および工業用取付器具のための台、ゴムボールおよびチューブ、搾乳インフレーション、ならびに他の農業に基づく用途において、適当に適用され得る。
【0028】
本発明の1つの実施態様においては、変性された無機酸素含有粒状物質は、タイヤ、特に車のタイヤのゴム組成物において使用される。ゴム組成物中のゴムは、タイヤにおいて慣用的に使用される任意のゴムであることができる。そのようなゴムの例は、天然ゴム、架橋されていないスチレン-ブタジエンゴム、架橋されたスチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ビニル-ブタジエンゴムおよび合成ゴムである。またこれらのゴムの混合物 が一般に使用される。
本発明のゴム組成物は、無機充填剤、例えばカーボンブラックまたは沈降シリカが慣用的に使用される、タイヤの任意の部分において使用することができる。特に、ゴム組成物は、アンダートレッドもしくはトレッドベース、トレッド、側壁、リムクッション、内層、カーカス、ビードおよびベルト層において使用することができる。本発明の変性された粒状物質と慣用の無機充填剤、例えばカーボンブラックまたは沈降シリカとの組合せを使用することがまた考えられる。変性された粒状物質の使用は、同様または改善された機械的特性を維持しながら、ゴム組成物における無機充填剤の全量を減らすことができる。
【0029】
好ましい実施態様においては、変性された無機酸素含有粒状物質は、加硫可能な基を含むカップリング剤で変性される。そのようなカップリング剤は、シランカップリング剤、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ(Degussa)からSi69(商標))、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(PCCからSiSiB(商標)PC2300)および3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン(GEからNXT(商標))であり得る。
これらの変性された粒状物質の利点は、新しいタイヤを製造するのに必要とされる時間を減らすことができることである。さらには、未硬化タイヤならびに最終的なタイヤの寸法安定性が改善する。
慣用のプロセスにおいては、沈降シリカが、カップリング剤、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドと一緒にゴムに添加され、ゴム組成物は、高められた温度で反応させられ、生成したエタノールが除去され、未硬化タイヤが得られ、これはその後、より高い温度で硬化されて、加硫を引き起こし、かつタイヤを形成する。タイヤの製造における、本発明の変性された粒状物質、特に加硫可能な基を有するカップリング剤で変性された粒状物質の使用は、カップリング剤がすでに粒状物質に結合され、エタノールが形成されず、加工処理時間を減少させ、これは新しいタイヤの製造速度を向上させることができるという利点を有する。変性された粒状物質と、慣用の充填剤、例えば沈降シリカとの組合せが使用されるなら、カップリング剤は別々に混合物に添加され、それで、沈降シリカと反応することができ;カップリング剤の量は一般に、慣用のプロセスにおいて使用される量より少ない。変性された粒状物質は、適当な溶媒(水を含まないか、ほとんど含まない)中の(コロイド)懸濁物の形態でゴムに添加することができるか、またはエキステンダー油中、もしくは固体として添加することができる。エキステンダー油もしくは固体の場合には、溶媒を除去する必要はなく、加工処理時間のさらなる減少および改善されたプロセス安全性に至る。
【0030】
ゴム組成物が、シリコーンゴムおよび本発明の変性された粒状物質を含むシリコーン組成物であるなら、そのようなゴム組成物は、圧感接着剤、プラスチックハードコートおよびペーパーリリースコーティングを含むコーティング製品において、織物および毛のケア用途を含む繊維仕上げ用途、シーラント、接着剤、カプセル封入物および太陽電池ユニットにおいて、適当に適用することができる。
本発明はさらに、太陽電池ユニットにおける本発明のゴム組成物の使用に関する。好ましい実施態様においては、ゴム組成物のゴムは、透明ゴムである。透明ゴムは、可視光に対して透明であるゴムである。そのような透明ゴムの例は、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニルゴムおよびシリコーンゴムである。好ましくは透明ゴムは、シリコーンゴムである。太陽電池ユニットは、当分野で公知の任意の太陽電池ユニットであることができる。そのような太陽電池ユニットの例は、結晶Si太陽電池、無定形ケイ素太陽電池、結晶ケイ素薄膜太陽電池および、例えばCdTe、CuInSe2、Cu(In, Ga)(Se, S)2(いわゆるCIGS)に基づくコンパウンド半導体太陽電池、ならびにグラッツェル(Gratzel)電池である。さらなる詳細は、F.フィステラー(Pfisterer)(「光電池(Photovoltaic cells)」、第4章:「光電池のタイプ(Types ofPhotovoltaic Cells)」、ウルマンズ エンサイクロペディア オブ インダストリアル テクノロジー(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Technology)、オンライン掲示日:2000年6月15日)から調べることができる。
太陽電池ユニットにおいて使用されるゴム組成物は、ユニットにおいて2つの並列層を接続するのに役立ち得る。本発明のゴム組成物の利点は、それの可視光に対する透明性であり、これは、光が電気エネルギーに転換されるセルの一部に光が達する前に、光がゴム組成物中を進む位置で適用を可能にする。ゴム組成物はまた、太陽電池ユニットを基体、例えば板または屋根瓦に結合するのに役立ち得る。そのような場合、ゴム組成物は、透明である必要はない。一般に、このゴム組成物は、慣用のゴム組成物より改善された機械的特性を示す。
【0031】
本発明の1つの実施態様は、裏電極、光起電層、表電極および透明上部層を含む太陽電池ユニットであって、本発明のゴム組成物の層が表電極と透明上部層との間に存在する太陽電池ユニットに関する。先に示したように、ゴム組成物のゴムは好ましくは透明ゴムであり、最も好ましくはゴムはシリコーンゴムである。ゴム組成物は、透明上部層と表電極のための接着剤または結合層として役立つ。上記した改善された機械的特性のために、ゴム組成物の接着力および引裂強さは増加され、(使用される)太陽電池ユニットは、さらされるべき天候の影響または他の機械的な力によりよく耐えることができる。したがって、太陽電池ユニットの寿命は向上する。さらには、本発明のゴム組成物は、可視光に対して透明であり、このことは、可視光波長の範囲またはそれを超える大きさ、すなわち400〜800nmの大きさを有する粒子を有するゴム組成物を含む太陽電池ユニットと比べて、改善された光収率および太陽エネルギー回収率をもたらす。
裏電極、光起電層、表電極および透明上部層を含む光太陽電池ユニットは、当業者に公知である。一般に、裏電極、光起電層、表電極および透明上部層は、交互に積み重ねられた層で提供される。そのような太陽電池ユニットのより詳細な説明は、欧州特許EP 1 397 837号公報およびEP 1 290 736号公報に見出すことができ、裏電極、光起電層、表電極および透明上部層のその詳細な説明は、引用することにより本明細書に組み入れられる。
【0032】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0033】
実施例
実施例1
機械的撹拌器、温度計および蒸留ユニットを備えた3リットルの三つ口丸底フラスコに、222.56gのシリカを含む647.0gのNyacol 2034DI(アクゾ ノーベル(Akzo Nobel)から)および970.5gのEthyl Proxitol(シェル(Shell)から)を量り入れた。水/溶媒混合物を蒸留するために、温度を38℃に上げ、圧力を60ミリバールに減じた。3時間の間に、圧力をゆっくりと40ミリバールまで下げた。次に、反応を止め、カール フィッシャー法(KarlFisher method)で決定される水分含量2.4重量%を有するオルガノゾルを生じた。固形分含量は、30.7重量%のナノ-シリカであった(溶媒の損失が観察されなくなるまで、140℃のオーブンで決定した)。
【0034】
実施例2
機械的撹拌器、滴下漏斗、還流冷却器および温度計を備えた250mlの四つ口丸底フラスコに、40.4gの変性ナノ-シリカを含む、131.51gの実施例1のオルガノゾルを量り入れた。温度を110℃に上げ、次に、19.08g(0.129モル)のビニルトリメトキシシラン(アルドリッチ(Aldrich)から)、8.35g(0.46モル)の水、0.1gのNyacol 2034DIおよび38.16gのEthyl Proxitolの混合物を、100分間かけて投与した。
次に、温度を130℃に上げて、シランおよび溶媒の一部から生ずる揮発性成分を留去した。残留する溶液は、36.35重量%の変性ナノ-シリカを含んでいた(溶媒の損失が観察されなくなるまで、140℃のオーブンで決定した)。
【0035】
実施例3
この実施例で使用したシリコーン樹脂は、Wacker SLM61211#268であり、2成分Pt硬化シリコーン樹脂(ワッカー(Wacker)から)で、Pt触媒を含まない成分Aおよび、Pt触媒を含む成分Bからなる。成分Aに、種々の量、すなわち成分AおよびBの全重量に基づき1重量%、2重量%および5重量%の量で、実施例1のオルガノゾルを添加した。その後、成分Aを成分Bと混合した後、室温の真空オーブン中で脱気した。
エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE;表面変性されたETFE、アサヒ(Asahi)から)でできた2枚の箔を、変性シリコーン樹脂を用いて、互いに接着した。変性シリコーン樹脂はその後、ブルクルプレス(Burkle press)で、2.5バールの圧力を用いて、120℃にて20分間硬化した。
対照として、実施例2のオルガノゾルを成分Aに添加しなかったこと以外は先に記載されたようにして製造された未変性のシリコーンを供給した。
シリコーンゴムの接着および強度は、CECO、銅クラッドピールテスター(Copper Clad Peeltester) TA630を用いて10 x 1 cm2の試料で決定された。
全ての場合に、シリコーン樹脂に粘着性の破損が生じたが、シリコーンETFE界面に破壊は観察されなかった。異なるシリコーンゴム試料について得られた剥離強度を以下の表に示す。
【表1】

上記の結果から、実施例2のオルガノゾルの添加は強度の改善をもたらすと結論を下すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性された無機酸素含有粒状物質を含む、ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 変性された無機酸素含有粒状物質と第1の溶媒との混合物を製造する工程;ならびに
b1) 該混合物を、少なくとも1種のポリマーおよび任意的に第2の溶媒を含むゴム前駆体と接触させる工程;または
b2) 該混合物を、少なくとも1種のモノマーおよび任意的に第2の溶媒を含むモノマー組成物と接触させ、かつモノマーを重合させてゴム前駆体を形成する工程;
c) 任意的に、ゴム前駆体を架橋剤の存在下で架橋して、ゴム組成物を形成する工程;ならびに
d) 任意的に、工程b1)、b2)およびc)のいずれかの前、間または後に、第1および/または第2の溶媒を除去する工程
を含む方法。
【請求項2】
第1および/または第2の溶媒が、式
【化1】

(ここでR1はC1〜C4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数である)
に従うアルコキシル化アルコールである請求項1記載の方法。
【請求項3】
ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物および式
【化2】

(ここで、R1はC1〜C4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数である)
に従うアルコキシル化アルコールの混合物を製造する工程;
b) 任意的に、混合物を少なくとも1種のモノマーと接触させ、任意的にモノマーを重合してゴム前駆体を形成するか、および/または混合物を少なくとも1種のゴム前駆体と接触させる工程;
c) 少なくとも1種のカップリング剤を混合物と接触させ、無機酸素含有粒状物質を少なくとも部分的に変性する工程;
d) 任意的に、少なくとも1種のモノマーと得られた混合物とを接触させ、モノマーを重合してゴム前駆体を形成するか、または少なくとも1種のゴム前駆体と得られた混合物とを接触させる工程;
e) 任意的に、ゴム前駆体を硬化する工程
を含み、任意的に水および/またはアルコキシル化アルコールが、先の工程のいずれかの前、間、または後に、混合物から少なくとも部分的に除去される方法。
【請求項4】
ゴム前駆体またはゴム組成物を製造する方法であって、
a) 無機酸素含有粒状物質の水性懸濁物と第1の溶媒との混合物を製造する工程;
b) 該混合物を、少なくとも1種のモノマーと接触させ、少なくとも1種のモノマーはカップリング剤である工程;
c) モノマーを重合してゴム前駆体を形成する工程;
d) 任意的にゴム前駆体を硬化する工程
を含み、任意的に水および/またはアルコキシル化アルコールが、先の工程のいずれかの前、間または後に、混合物から少なくとも部分的に除去される方法。
【請求項5】
ゴムおよび、カップリング剤で変性された無機酸素含有粒状物質を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法によって得ることができるゴム組成物であって、無機酸素含有粒状物質が、少なくとも一方向で、1〜1,000nmの寸法を有するゴム組成物。
【請求項6】
カップリング剤が、粒状物質と反応性の官能基および、ゴムもしくはゴム前駆体と反応性の有機基を含む請求項5記載のゴム組成物。
【請求項7】
ゴム前駆体および少なくとも一方向で1〜1,000nmの寸法を有する無機酸素含有粒状物質を含み、粒状物質がカップリング剤で変性された、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法によって得ることができるマスターバッチであって、粒状物質の量がマスターバッチの全重量に対して5〜80重量%であり、ゴム前駆体の量が20〜95重量%であるマスターバッチ。
【請求項8】
カップリング剤が、粒状物質と反応性の官能基および、ゴムもしくはゴム前駆体と反応性の有機基を含む請求項7記載のマスターバッチ。
【請求項9】
裏電極、光起電層、表電極および透明上部層を有する積層構造を含む太陽電池ユニットであって、請求項5〜6のいずれか1項記載のゴム組成物の層が、表電極と透明上部層との間に存在し、ゴムが透明ゴム組成物(好ましくはシリコーンゴム)である太陽電池ユニット。
【請求項10】
請求項5および6のいずれか1項に記載のゴム組成物(好ましくはゴムはシリコーンゴムである)を、太陽電池ユニットに使用する方法。

【公表番号】特表2009−530432(P2009−530432A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558813(P2008−558813)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052385
【国際公開番号】WO2007/107485
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】