説明

ゴム組成物

【課題】押し出し加工性に優れたゴム組成物および加硫性ゴム組成物、ならびにこれらを用いて得られる、表面平滑性及び寸法精度に優れた導電性のゴム加硫物を提供する。
【解決手段】エピハロヒドリン系ゴム(A)と、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜50重量%、共役ジエン単量体単位49.9〜89.9重量%、および多官能性単量体単位0.1〜3重量%を含有してなるニトリルゴム(B)と、を混合してなるゴム組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリン系ゴムおよびニトリルゴムを含有するゴム組成物に係り、さらに詳しくは、導電性のゴム加硫物を与えることができ、かつ、押し出し加工性に優れたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エピハロヒドリン系ゴムは耐熱性、耐オゾン性および耐油性において優れた性能バランスを有しており、オイルシール、ダイヤフラム、ガスケットパッキング、耐油ホース、耐熱ベルト、印刷用ロール、電子写真装置に用いられる導電性ロールなどの工業用品に広く使用されており、特に、電子写真装置に用いられる導電性ロール材料として好適に用いられている。
【0003】
一方、このようなエピハロヒドリン系ゴムを、導電性ロールなどのロール材料などとして用いる場合において、耐圧縮永歪み性などの各種特性を向上させるために、エピハロヒドリン系ゴムに、各種ゴム材料を配合したゴム組成物が検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1では、エピクロルヒドリンゴムに、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを配合してなるポリマー成分と、該ポリマー成分100質量部に対して、SP値が6.5〜9.5の範囲内であるナフテン系オイルおよび/またはパラフィン系オイルからなる軟化剤1〜10質量部、および有機過酸化物を含む加硫剤1〜2質量部を含有してなる導電性ローラ用ゴム組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載のゴム組成物は、ダイスウェル値(ダイスからの押出時の膨張率を示す値)が比較的大きなものであったため、押し出し加工性が悪く、押出成形物の表面が凸凹となって、充分な表面平滑性が得られないという問題や、良好な寸法精度が確保できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−309063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、押し出し加工性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなゴム組成物に加硫剤を添加してなる加硫性ゴム組成物、およびこのような加硫性ゴム組成物を加硫してなる表面平滑性および寸法精度に優れた導電性のゴム加硫物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エピハロヒドリン系ゴムに、多官能性単量体単位を特定量有するニトリルゴムを配合してなるゴム組成物が、優れた押し出し加工性を実現でき、かつ、表面平滑性および寸法精度に優れた導電性のゴム加硫物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、エピハロヒドリン系ゴム(A)と、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜50重量%、共役ジエン単量体単位49.9〜89.9重量%、および多官能性単量体単位0.1〜3重量%を含有してなるニトリルゴム(B)と、を混合してなるゴム組成物が提供される。
好ましくは、前記多官能性単量体単位が、ビニル結合を2つ以上有する多官能性単量体単位である。
好ましくは、前記ニトリルゴム(B)は、メチルエチルケトン不溶分が30〜95重量%である。
好ましくは、前記エピハロヒドリン系ゴム(A)は、エチレンオキシド単量体単位含有量が48〜73モル%である。
【0010】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物に、加硫剤を添加してなる加硫性ゴム組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記加硫性ゴム組成物を加硫してなるゴム加硫物が提供される。
本発明のゴム加硫物は、導電性ゴムローラーとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押し出し加工性に優れたゴム組成物および加硫性ゴム組成物、ならびにこれらを用いて得られる、表面平滑性及び寸法精度に優れた導電性のゴム加硫物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴム(A)と、
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜50重量%、共役ジエン単量体単位49.9〜89.9重量%、および多官能性単量体単位0.1〜3重量%を含有してなるニトリルゴム(B)と、
を混合してなる。
【0013】
エピハロヒドリン系ゴム(A)
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴム(A)は、少なくともエピハロヒドリン単量体単位を必須構成単量体単位として含有するゴム重合体であり、具体的には、1種のエピハロヒドリン単量体の単独重合体、もしくは2種以上のエピハロヒドリン単量体の共重合体、またはエピハロヒドリン単量体およびこれと共重合可能な単量体との共重合体であるが、エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体との共重合体が好ましい。
【0014】
エピハロヒドリン単量体単位を形成するエピハロヒドリン単量体としては、たとえば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、2−メチルエピクロロヒドリン、2−メチルエピブロモヒドリン、2−エチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0015】
エピハロヒドリン系ゴム(A)中における、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは20〜75モル%、より好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは25〜50モル%である。エピハロヒドリン単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム加硫物の引張強さ、伸びおよび耐圧縮永久歪み性が悪化する場合がある。一方、含有割合が高すぎると、体積固有抵抗値が上昇する場合がある。
【0016】
エピハロヒドリン系ゴム(A)を、エピハロヒドリン単量体と、エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体との共重合体とする場合における、共重合可能な単量体の単位としては、体積固有抵抗値の低減及び耐オゾン性の向上効果の観点から、アルキレンオキシド単量体単位および不飽和エポキシド単量体単位が好ましい。
【0017】
アルキレンオキシド単量体単位を形成するアルキレンオキシド単量体としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−4−クロロペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシイソブタン、2,3−エポキシイソブタン等の直鎖状または分岐鎖状アルキレンオキシド;1,2−エポキシクロロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカン等の環状アルキレンオキシド;ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどのアルキル長鎖または分岐鎖を有するグリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのオキシエチレン側鎖を有するグリシジルエーテル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これらアルキレンオキシド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、直鎖状のアルキレンオキシドが好ましく、体積固有抵抗値低減の観点から、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドがより好ましく、エチレンオキシドが特に好ましい。
【0018】
エピハロヒドリン系ゴム(A)中にアルキレンオキシド単量体単位を含有させる場合における、アルキレンオキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは24.9〜75モル%、より好ましくは39〜74モル%、さらに好ましくは48〜73モル%である。アルキレンオキシド単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム加硫物の体積固有抵抗値が高くなる傾向にある。一方、含有割合が高すぎると、オキシエチレン鎖の結晶化を招き、同様に体積固有抵抗値が高くなる傾向にある。
【0019】
不飽和エポキシド単量体単位を形成する不飽和エポキシド単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンエポキシド、クロロプレンエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエンモノエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテネート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、3−シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、グリシジル−4−メチル−3−ペンテネート等のエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これら不飽和エポキシド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、耐オゾン性向上の観点から、不飽和グリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0020】
エピハロヒドリン系ゴム(A)中に不飽和エポキシド単量体単位を含有させる場合における、不飽和エポキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20モル%、より好ましくは1〜15モル%、さらに好ましくは2〜10モル%である。不飽和エポキシド単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られるゴム加硫物の耐オゾン性が低下する場合がある。一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム加硫物の破断伸びが小さくなるおそれがある。
【0021】
エピハロヒドリン系ゴム(A)のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは30〜100である。ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム加硫物の機械的強度が低下する場合がある。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の加工性が低下するため好ましくない。
【0022】
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴム(A)は、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより、上記各単量体を開環重合することにより得ることができる。重合触媒としては、一般のエピハロヒドリン系ゴム用の触媒であれば、特に限定されない。重合触媒としては、たとえば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンを反応させた触媒(特公昭35−15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒(特公昭46−27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにジアザビアシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた触媒(特公昭56−51171号公報)、アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる触媒(特公昭43−2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールとからなる触媒(特公昭45−7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水とからなる触媒(特公昭36−3394号公報)、有機スズ化合物からなる触媒(特開2000−63656号公報)などが挙げられる。
【0023】
重合溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−へキサンなどの直鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状飽和炭化水素類;などが用いられる。また、重合反応は、通常0〜100℃、好ましくは30〜80℃で、回分式、半回分式、連続式などの任意の方法で行うことができる。
【0024】
ニトリルゴム(B)
本発明で用いるニトリルゴム(B)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜50重量%、共役ジエン単量体単位49.9〜89.9重量%、および多官能性単量体単位0.1〜3重量%を含有してなるニトリルゴムである。
【0025】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。これらα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。
【0026】
ニトリルゴム(B)中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、ニトリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%、特に好ましくは17〜40重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が少なすぎると、耐屈曲疲労性に劣るとともに、体積固有抵抗値が高くなるおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム加硫物のゴム弾性が損なわれるおそれがある。
【0027】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これら共役ジエン単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0028】
ニトリルゴム(B)中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、ニトリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、49.9〜89.9重量%、より好ましくは54.8〜84.8重量%、特に好ましくは59.7〜82.7重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られるゴム加硫物のゴム弾性が損なわれるおそれがあり、一方、多すぎると、耐屈曲疲労性に劣るとともに、体積固有抵抗値が高くなるおそれがある。
【0029】
多官能性単量体単位を形成する多官能性単量体としては、上述のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体と共重合可能であり、かつ、架橋性の官能基を複数有する単量体であれば良く、特に限定されないが、本発明の効果がより一層顕著になることから、ビニル結合を2つ以上有する多官能性単量体(以下、「多官能エチレン性不飽和単量体」と略す)が好ましい。
【0030】
このような多官能エチレン性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。以下同様。)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。これら多官能エチレン性不飽和単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、ジ(メタ)アクリル酸エステル及びトリ(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、トリ(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0031】
ニトリルゴム(B)中における、多官能性単量体単位の含有割合は、ニトリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2重量%、さらに好ましくは0.3〜1重量%である。多官能性単量体単位の含有割合が少なすぎると、ニトリルゴム(B)を、エピハロヒドリン系ゴム(A)と混合し、ゴム組成物とした場合における、押し出し加工性が低下し、得られる導電性のゴム加硫物の表面平滑性および寸法精度が悪化するおそれがある。一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム加硫物の伸びが低下するなど物性が悪化するおそれがある。
【0032】
また、本発明で用いるニトリルゴム(B)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位および多官能性単量体単位以外に、これらを形成する各単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有していても良い。このようなその他の単量体としては、非共役ジエン単量体、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0033】
非共役ジエン単量体としては、たとえば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
α−オレフィン単量体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0034】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、たとえば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸多価エステルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0035】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0036】
これらの共重合可能なその他の単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。ニトリルゴム(B)中における、その他の単量体単位の含有割合は、ニトリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0037】
また、本発明で用いるニトリルゴム(B)は、部分架橋していることが好ましく、これにより、溶剤としてのメチルエチルケトンに不溶な成分を形成させることができる。ニトリルゴム(B)を部分架橋しているものとすることにより、ニトリルゴム(B)を、エピハロヒドリン系ゴム(A)と混合し、ゴム組成物とした場合における、押し出し加工性の更なる向上を図ることができる。なお、ニトリルゴム(B)を部分架橋したものとする方法としては、たとえば、乳化重合中にニトリルゴム(B)を多官能性単量体により架橋させる方法などが挙げられる。
【0038】
また、ニトリルゴム(B)はメチルエチルケトン不溶分を含有していることが好ましく、その含有量は、ニトリルゴム(B)全量に対して、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である。メチルエチルケトン不溶分の含有量が少なすぎると、ゴム組成物の押し出し加工性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム加硫物の伸びが低下するなど物性が悪化する傾向にある。なお、ニトリルゴム(B)におけるメチルエチルケトン不溶分は、ニトリルゴム(B)200mgを、溶剤としてのメチルエチルケトン100mlに浸漬して25℃で24時間放置し、ろ過後の不溶解成分の乾燥重量を求め、メチルエチルケトンに浸漬する前のニトリルゴム(B)を構成する全ゴム成分に対する重量割合(100×不溶解成分の乾燥重量/メチルエチルケトンに浸漬する前のニトリルゴム(B)の重量;重量%)として算出することができる。
【0039】
ニトリルゴム(B)のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは20〜150、より好ましくは25〜100、さらに好ましくは27〜80である。ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム加硫物の機械的強度が低下する場合がある。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の加工性が低下するため好ましくない。
【0040】
ニトリルゴム(B)の製造方法は、特に限定されないが、一般的には、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、多官能性単量体、および必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。
【0041】
本発明のゴム組成物中における、エピハロヒドリン系ゴム(A)と、ニトリルゴム(B)との比率は、これらの比率を「エピハロヒドリン系ゴム(A):ニトリルゴム(B)」と表した場合に、重量比で、好ましくは95:5〜10:90、より好ましくは93:7〜50:50、さらに好ましくは93:7〜60:40である。ニトリルゴム(B)の比率が少なすぎると、ゴム組成物の押し出し加工性が低下するおそれがある。一方、ニトリルゴム(B)の比率が高すぎると、得られるゴム加硫物の体積固有抵抗値が高くなるおそれがある。
【0042】
さらに、本発明のゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(本発明で用いるニトリルゴム(B)は除く)、クロロプレンゴムなどのゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル、クマロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂:などを配合してもよい。これらのゴム、熱可塑性エラストマーまたは樹脂の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム(A)およびニトリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。
【0043】
加硫性ゴム組成物
本発明の加硫性ゴム組成物は、上記本発明のゴム組成物に加硫剤を添加してなるものである。
【0044】
加硫剤としては、一般にゴムの加硫剤として使用されるものであれば何でもよく、特に限定はされないが、硫黄系加硫剤、有機過酸化物系加硫剤、チオウレア系加硫剤などが挙げられる。
【0045】
硫黄系加硫剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、高分散性硫黄および不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼノピン−2)、含リンポリスルフィド及び高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。
【0046】
有機過酸化物系加硫剤としては、ケトンパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類が例示される。
【0047】
チオウレア系加硫剤としては、たとえば、チオウレア、ジブチルチオウレア、トリエチルチオウレアなどを挙げることができる。
【0048】
本発明の加硫性ゴム組成物中における、加硫剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム(A)およびニトリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部である。加硫剤の配合量が少なすぎると、加硫速度が遅くなり、ゴム加硫物の生産性が低下したり、得られるゴム加硫物を研磨して使用する場合に研磨性が低下したりするおそれがある。一方、配合量が多すぎると、得られるゴム加硫物の硬度が高くなったり、加硫剤がブルームしたりする可能性がある。
【0049】
なお、本発明の加硫性ゴム組成物において、加硫剤として硫黄系加硫剤を用いる場合には、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤などの加硫促進剤を使用することが好ましい。
【0050】
チウラム系促進剤としては、たとえば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。
チアゾール系促進剤としては、たとえば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどが挙げられる。
スルフェンアミド系促進剤としては、たとえば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。
これら加硫促進剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の加硫性ゴム組成物中における、加硫促進剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム(A)およびニトリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部である。加硫促進剤の配合量が多すぎると、加硫速度が早くなりすぎたり、得られるゴム加硫物の表面にブルームしたりするおそれがある。
【0052】
本発明の加硫性ゴム組成物は、充填剤を含有していても良い。充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;シリカなどの珪酸;珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどの珪酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;などが挙げられる。これら充填剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム(A)およびニトリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは2〜150重量部、さらに好ましくは4〜100重量部である。
【0053】
また、本発明の加硫性ゴム組成物には、さらに必要に応じて、上記各成分以外に、本発明の効果、目的を阻害しない範囲で、各種添加剤を配合しても良い。このような添加剤としては、たとえば、老化防止剤、加工助剤、補強材、光安定剤、スコーチ防止剤、加硫遅延剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などが挙げられる。
【0054】
本発明のゴム組成物および加硫性ゴム組成物を調製する方法としては特に限定されないが、上述した各成分を、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混合機を用いて混合する方法などが挙げられる。
【0055】
ゴム加硫物
本発明のゴム加硫物は、上記本発明の加硫性ゴム組成物を成形し、加硫することにより製造される。加硫性ゴム組成物の成形および加硫方法としては、特に限定されないが、たとえば、一軸や多軸の押出機を使用して、加硫性ゴム組成物を押し出して成形体とした後、加熱して加硫する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型により成形し、成形と同時に成形時の加熱で加硫する方法;などが挙げられる。これらの方法のうちでも、押出機または射出成形機を用いる方法が好ましく、押出機を用いる方法が特に好ましい。成形と加硫を同時に行うか、あるいは、成形後に加硫するかは特に限定されず、成形方法、加硫方法、成形体の大きさなどに応じて選択すればよい。
【0056】
加硫性ゴム組成物を成形、加硫する際における、成形温度は好ましくは15〜220℃、より好ましくは20〜200℃である。また、加硫温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃〜250℃である。加硫時間は、1分〜5時間の範囲で任意に選択すればよい。加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの加硫に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0057】
また、ゴム加硫物の形状、大きさなどによっては、表面が加硫していても内部まで十分に加硫していない場合があるので、さらに加熱して二次加硫を行ってもよい。二次加硫を行う際における、加熱温度は、好ましくは100〜220℃、より好ましくは130〜210℃であり、加熱時間は、好ましくは30分〜5時間、より好ましくは1〜4時間である。
【0058】
このようにして得られる本発明のゴム加硫物は、優れた押し出し加工性を有する本発明の加硫性ゴム組成物を加硫してなるものであるため、優れた表面平滑性および寸法精度も実現できるものである。そのため、本発明のゴム加硫物は、各種工業ゴム製品用材料として有用であり、たとえば、複写機や印刷機等に使用される、導電性ロール、導電性ベルトや導電性ブレードなどの導電性材料;靴底やホース用材料;コンベアーベルトやエスカレータのハンドレール等のベルト用材料;シール、パッキン用材料;などとして用いることができ、なかでも、複写機や印刷機等に使用される導電性ロール、導電性ベルトや導電性ブレードに好適に用いることができ、導電性ロールとして特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0060】
ムーニー粘度
ポリマームーニー粘度及びコンパウンド・ムーニー粘度は、JIS K6300−1に従って測定した(単位は(ML1+4、100℃))。
【0061】
メチルエチルケトン不溶分
ニトリルゴム200mgを、溶剤としてのメチルエチルケトン100mlに浸漬して25℃で24時間放置し、ろ過して不溶解成分を得た。次いで、不溶解成分を60℃で真空乾燥し、その重量を求め、メチルエチルケトンに浸漬する前のニトリルゴムを構成する全ゴム成分に対する重量割合(100×不溶解成分の乾燥重量/メチルエチルケトンに浸漬する前のニトリルゴム(B)の重量;重量%)として求めた。
【0062】
ガーベダイ押出し試験
加硫性ゴム組成物を、先端にガーベダイを付けた押出機(単軸バレル径20mm、回転数30rpm、バレル温度60℃、ヘッド温度80℃)を用いて、押出成形した。そして、ASTM D2230−77 A法(ガーベダイ押出試験、採点法A)に従い、得られた押出成形品の状態を評価した。具体的には、得られた押出成形品について、ダイスウェル(%)を求めるとともに、スウェル・気泡、押出成形品の表面肌の平滑性、30°エッジ以外の角(コーナー)の鋭さ、および30°エッジの連続性のそれぞれについて最高4点、最低1点で評価を行った。ダイスウェル(%)が小さく、点数が大きいほど、押し出し加工性に優れ、かつ、表面平滑性および寸法精度に優れた導電性のゴム架橋物を提供できる。
【0063】
常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、300%引張応力、硬さ)
加硫性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら160℃、30分間プレス成形してシート状の加硫物を得た。
そして、得られた加硫物を3号形ダンベルで打ち抜いて加硫物の試験片を作製し、作製した加硫物の試験片を用いて、JIS K6251に従い、引張強さ、伸び、100%引張応力および300%引張応力を、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いて硬さを、それぞれ測定した。
【0064】
体積固有抵抗値
上記常態物性の評価で用いたものと同様の加硫物を得て、得られた加硫物を用いて、体積固有抵抗値を、JIS K6271に従って、測定した。なお、体積固有抵抗値の測定条件は、測定電圧500V、温度23℃、湿度50%とした。
【0065】
合成例1〔エピクロロヒドリンゴム(A1)の合成〕
密栓した耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン184.8部およびトリイソブチルアルミニウム55.2部を仕込み、耐圧ガラスボトルを氷水に浸漬することにより冷却させた後、ジエチルエーテル103.1部を耐圧ガラスボトルに添加し、攪拌した。次いで、耐圧ガラスボトルに、氷水で冷却を継続しながら、リン酸8.18部を添加し、さらに攪拌した。この際、トリイソブチルアルミニウムとリン酸との反応により、ガラスボトルの内圧が上昇するので適時脱圧を実施した。次いで、ガラスボトルに1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩8.27部を添加し、最後に、60℃の温水浴内で1時間熟成反応させることにより触媒溶液を得た。
【0066】
上記とは別に、反応器に、エピクロルヒドリン40部、エチレンオキシド7部、アリルグリシジルエーテル5部、およびトルエン560部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら内溶液を70℃に昇温し、上記にて調製した触媒溶液を10部添加して、反応を開始した。
【0067】
次いで、反応開始直後から、エチレンオキシド48部をトルエン110部に溶解した溶液を5時間かけて等速度で連続添加した。同時に、上記にて調製した触媒溶液を、30分毎に7部ずつ、5時間にわたり添加した。
【0068】
そして、反応器に水15部を添加し、攪拌することにより反応を終了させ、次いで、スチームストリッピングを実施し、上澄み水を除去後、60℃にて真空乾燥することにより、エピクロロヒドリンゴム(A1)を得た。得られたエピクロロヒドリンゴム(A1)は、H−NMR分析の結果、エピクロルヒドリン単位40モル%、エチレンオキシド単位55モル%、アリルグリシジルエーテル単位5モル%を含有するものであり、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は60であった。
【0069】
合成例2〔エピクロロヒドリンゴム(A2)の合成〕
重合開始時における、各単量体の使用量を、エピクロルヒドリン30部、エチレンオキシド7部、およびアリルグリシジルエーテル5部に、それぞれ変更し、反応開始後に添加するエチレンオキシドの量を58部に変更した以外は、合成例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム(A2)を得た。得られたエピクロロヒドリンゴム(A2)は、H−NMR分析の結果、エピクロルヒドリン単位30モル%、エチレンオキシド単位65モル%、アリルグリシジルエーテル単位5モル%を含有するものであり、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は45であった。
【0070】
合成例3〔部分架橋ニトリルゴム(B1)の合成〕
反応器に、水240部、アクリロニトリル33.5部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)2.5部を仕込み、温度を5℃に調整した。次いで、気相を減圧して十分に脱気してから、1,3−ブタジエン66.0部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5部、重合開始剤であるパラメンタンヒドロペルオキシド0.06部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄(7水塩)0.006部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.06部、ならびに連鎖移動剤のt−ドデシルメルカプタン1部を添加して反応を開始した。その後、仕込み全単量体に対する重合転化率が90重量%に達した時点でヒドロキシルアミン硫酸塩0.3部および水酸化カリウム0.2部を添加して重合反応を停止させた。反応停止後、反応容器の内容物を70℃に加温し、減圧下に水蒸気蒸留により未反応の単量体を回収して部分架橋ニトリルゴム(B1)のラテックスを得た。
【0071】
そして、得られたラテックスを、多量のメタノールで凝固後、ろ過、乾燥して部分架橋ニトリルゴム(B1)を得た。得られた部分架橋ニトリルゴム(B1)は、H−NMR分析の結果、アクリロニトリル単位33重量%、ブタジエン単位66.5重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート単位0.5重量%であり、また、メチルエチルケトン不溶分は75重量%であった。
【0072】
合成例4〔部分架橋ニトリルゴム(B2)の合成〕
各単量体の配合量を、アクリロニトリル18.5部、1,3−ブタジエン80.7部、およびトリメチロールプロパントリアクリレート0.8部に、それぞれ変更した以外は、合成例3と同様にして、部分架橋ニトリルゴム(B2)を得た。得られた部分架橋ニトリルゴム(B1)は、H−NMR分析の結果、アクリロニトリル単位18重量%、ブタジエン単位81.2重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート単位0.8重量%であり、また、メチルエチルケトン不溶分は、80重量%であった。
【0073】
実施例1
合成例1で得られたエピクロロヒドリンゴム(A1)90部、合成例3で得られた部分架橋ニトリルゴム(B1)10部、受酸剤としての亜鉛華1号(ZnO#1、正同化学社製)5部、加硫助剤としてのステアリン酸1部、充填剤としての炭酸カルシウム(シルバーW、白石工業社製)30部、加硫剤としての硫黄(サルファックスPMC、鶴見化学工業社製)0.3部、同じく加硫剤としてのモルホリンジスルフィド(バルノックR、大内新興化学工業社製)0.5部、および、加硫剤促進剤としてのテトラエチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製)1.2部を配合し、混練することにより、加硫性ゴム組成物を得た。
【0074】
次いで、得られた加硫性ゴム組成物を用いて、コンパウンド・ムーニー粘度、ガーベダイ押出し試験、常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、300%引張応力、硬さ)、体積固有抵抗値の各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例2
エピクロロヒドリンゴム(A1)の配合量を90部から80部に、部分架橋ニトリルゴム(B1)の配合量を10部から20部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
実施例3
エピクロロヒドリンゴム(A1)の代わりに、合成例2で得られたエピクロロヒドリン系ゴム(A2)を用いた以外は実施例1と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
実施例4
部分架橋ニトリルゴム(B1)の代わりに、合成例4で得られた部分架橋ニトリルゴム(B2)を用いた以外は実施例1と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
比較例1
エピクロロヒドリンゴム(A1)の配合量を90部から100部に変更し、部分架橋ニトリルゴム(B1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
比較例2
部分架橋ニトリルゴム(B1)10部の代わりに、ニトリルゴム(Nipol DN219、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位33.5重量%、ブタジエン単位66.5重量%、メチルエチルケトン不溶分は0重量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
比較例3
エピクロロヒドリンゴム(A1)の配合量を90部から80部に、ニトリルゴム(Nipol DN219)の配合量を10部から20部にそれぞれ変更した以外は、比較例2と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
比較例4
エピクロロヒドリンゴム(A1)の配合量を90部から70部に、ニトリルゴム(Nipol DN219)の配合量を10部から30部にそれぞれ変更した以外は、比較例2と同様にして、加硫性ゴム組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】



【0083】
表1より、エピクロロヒドリンゴムと、多官能性単量体単位であるトリメチロールプロパントリアクリレート単位を含有するニトリルゴムとを混合して得られるゴム組成物は、押し出し加工性に優れ、表面平滑性および寸法精度に優れた導電性のゴム架橋物を提供可能な成形体を得ることができた(実施例1〜4)。
これに対して、多官能性単量体単位を含有するニトリルゴムを配合しない場合、および多官能性単量体単位を含有しないニトリルゴムを用いた場合には、押し出し加工性に劣り、成形体の表面平滑性および寸法精度が悪化する結果となった(比較例1〜4)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピハロヒドリン系ゴム(A)と、
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜50重量%、共役ジエン単量体単位49.9〜89.9重量%、および多官能性単量体単位0.1〜3重量%を含有してなるニトリルゴム(B)と、
を混合してなるゴム組成物。
【請求項2】
前記多官能性単量体単位が、ビニル結合を2つ以上有する多官能性単量体単位である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ニトリルゴム(B)は、メチルエチルケトン不溶分が30〜95重量%である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エピハロヒドリン系ゴム(A)は、エチレンオキシド単量体単位含有量が48〜73モル%である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴム組成物に、加硫剤を添加してなる加硫性ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の加硫性ゴム組成物を加硫してなるゴム加硫物。
【請求項7】
導電性ゴムローラーである請求項6に記載のゴム加硫物。



【公開番号】特開2010−174090(P2010−174090A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16537(P2009−16537)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】