説明

サイドエアバッグ装置

【課題】シートの意匠性を損なうことなくシートへの組付けが可能な、小型で安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】サイドエアバッグ装置20Aは、シート10の背もたれ部12に埋設されたシートフレームの側面に取付けられたガス発生器101Aと、ガス発生器101Aから噴出されたガスが導入されて展開するエアバッグ20とを備える。ガス発生器101Aは、内部に上部側燃焼室が設けられた上部側円筒状部と、内部に下部側燃焼室が設けられた下部側円筒状部とを有し、上部側円筒状部が下部側円筒状部よりも細く形成されている。上部側燃焼室に通ずる上部側ガス噴出口から噴出されたガスは、乗員Pの胸部Pcを保護する部位であるエアバッグ20の上部空間22に導入され、下部側燃焼室に通ずる下部側ガス噴出口から噴出されたガスは、乗員Pの腰部Pcを保護する部位であるエアバッグ20の下部空間23に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側方からの衝突(以下、側突という)により車両の側部に所定値以上の衝撃が加わった際に、エアバッグが車両の側部と車室内に設置されたシートに着座した乗員との間に展開するように構成された乗員保護装置としてのサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等車両の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張展開させることにより、これがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。このエアバッグ装置には、ガス発生器が組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にこのガス発生器にてガスを発生させ、発生させたガスによってエアバッグを膨張展開させる。
【0003】
エアバッグ装置においては、車両等への搭載位置や保護する身体の部位等によって種々の構成のものが存在している。その1つに、運転席または助手席等のシートに設置されるいわゆるサイドエアバッグ装置がある。サイドエアバッグ装置は、シートに埋設されたシートフレームの側面に取付けられ、側突時において車両の側部と乗員との間にエアバッグを瞬時に展開する。
【0004】
サイドエアバッグ装置においては、膨張展開させるエアバッグの内部空間をシームによって区画し、区画したそれぞれの空間を身体の保護する部位に適した内圧で膨張展開させることが好ましい。一般に、腰部は胸部に比して抗堪性があり、これに応じてエアバッグの腰部に当接する部位については高い内圧にて膨張展開させるとともに、胸部に当接する部位については低い内圧にて膨張展開させることが好ましいとされている。このような知見に基づいて構成されたサイドエアバッグ装置としては、たとえば特開2000−177527号公報(特許文献1)に開示のものや、特開2000−280853号公報(特許文献2)に開示のもの等が知られている。
【0005】
一方、好適にサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器として、いわゆるT字型のガス発生器がある。T字型のガス発生器は、円筒状のハウジングの中央位置に点火器および伝火薬が収容される点火室が1つ設けられ、この点火室を挟み込む位置である円筒状のハウジングの両端部側にガス発生剤が収容される燃焼室が一対設けられ、それぞれの燃焼室に連通するガス噴出口が円筒状のハウジングにそれぞれ別々に設けられたものである。このT字型のガス発生器においては、ガスを発生させて出力するガス出力部を独立して2つ設けることができ、しかもこれら2つのガス出力部を1つの点火器によって駆動することができる。そのため、シーム等によって区画された空間を有するエアバッグを具備したサイドエアバッグ装置に好適に利用される。このT字型のガス発生器が開示された文献としては、たとえば特開平8−26064号公報(特許文献3)や特開2003−287400号公報(特許文献4)などがある。
【0006】
図17は、上記特許文献3に開示の従来のT字型ガス発生器の断面図である。図17に示すように、従来例1におけるT字型ガス発生器201においては、両端が閉塞部材241,242によって閉塞された円筒状のハウジング202の中央部にベース部210および支持部材211が配置され、これらベース部210および支持部材211によって規定される点火室213に点火器212および伝火薬214が収容され、その両外側にガス発生剤224,234が収容される第1および第2燃焼室223,233が点火室213を挟むようにそれぞれ配置され、さらにその外側にフィルタ部材225,235が収容される第1および第2フィルタ室がそれぞれ配置されている。伝火薬214が収容された点火室213とガス発生剤224,234が収容された第1および第2燃焼室223,233とは、それぞれベース部210に設けられた第1伝火路215および第2伝火路216によって通じている。そして、発生したガスを噴出するためのガス噴出口222,232が第1および第2フィルタ室を規定する部分のハウジング202の周面に設けられ、これにより円筒状のハウジング202の両端部にガス出力部221,231が設けられている。
【0007】
上記従来例1におけるT字型ガス発生器201においては、車両衝突時に点火器212が作動することによって点火室213内の伝火薬214が点火されて燃焼し、伝火薬214が燃焼することによって発生した熱粒子が第1伝火路215および第2伝火路216を経由してそれぞれ第1燃焼室223および第2燃焼室233に流れ込み、これにより第1燃焼室223および第2燃焼室233に収容されたガス発生剤224,234がそれぞれ着火されて燃焼する。このガス発生剤224,234の燃焼により、第1および第2燃焼室223,233内において多量のガスが発生し、発生したガスはそれぞれ第1フィルタ室および第2フィルタ室に収容されたフィルタ部材225,235を経由してガス噴出口222,232からハウジング202の外部へと噴き出される。そして、このハウジング202から噴き出されたガスにより、エアバッグが膨張展開される。
【0008】
また、図18は、上記特許文献4に開示の従来例2におけるT字型ガス発生器の断面図である。図18に示すように、従来例2におけるT字型ガス発生器301においては、両端が閉塞された円筒状のハウジング302の軸方向における中央部からずれた位置に点火器312が収容されており、その両外側にガス発生剤324,334が収容される第1および第2燃焼室323,333が点火器312を挟むようにそれぞれ配置されている。第1および第2燃焼室323,333を規定する円筒状のハウジング302の周面には、各燃焼室にて発生したガスを噴出するためのガス噴出口322,332が設けられており、これにより円筒状のハウジング302の両端部近傍にガス出力部321,331が設けられている。また、第1および第2燃焼室323,333のハウジング302の閉塞端側寄りの位置に燃焼促進剤380がそれぞれ配置されており、これにより点火器312から離れた部分に位置するガス発生剤の燃焼が促進されるように構成されている。
【0009】
この従来例2におけるT字型ガス発生器301においても、上述の従来例1におけるT字型ガス発生器201とほぼ同様に、車両衝突時に点火器312が作動することによって第1および第2燃焼室323,333に収容されたガス発生剤324,334が燃焼し、これにより発生した多量のガスがガス噴出口322,332からハウジング302の外部へと噴き出し、エアバッグが膨張展開される。
【特許文献1】特開2000−177527号公報
【特許文献2】特開2000−280853号公報
【特許文献3】特開平8−26064号公報
【特許文献4】特開2003−287400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年においては、運転席や助手席等のシートの意匠性が重要視されており、特に、シートの背もたれ部の厚みは、従来に比して薄くなる傾向にある。また、一般にシートの背もたれ部の上部部分の厚みは、下部部分の厚みに比べて薄く構成される。このように薄型化したシートの側面部分にサイドエアバッグ装置を組付けるためには、当然にサイドエアバッグ装置を小型化することが必要になるが、所望の性能を確保しつつサイドエアバッグ装置を小型化することには限界があり、設計する上での大きな課題となっている。
【0011】
展開前のサイドエアバッグ装置において、その大きさを決定する主な構成部品は、ガス発生器である。上述のように、サイドエアバッグ装置は、シーム等によって区画されることによって内部の空間が分割されたエアバッグを有しており、これら分割された空間をそれぞれ独立して展開させるためには、上述のT字型ガス発生器を利用することが好適である。しかしながら、このT字型のガス発生器において、一対のガス出力部における出力を均一化させたくない場合には、第1燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼特性と第2燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼特性とを異なるものにする必要がある。より具体的には、第1燃焼室に収容するガス発生剤の種類や組成を第2燃焼室に収容するガス発生剤の種類や組成と異なるものにしたり、あるいは第1燃焼室に収容するガス発生剤の充填量と第2燃焼室に収容するガス発生剤の充填量とを異なるものにしたりすることが必要になる。
【0012】
このうち、前者のガス発生剤の種類や組成に差をもたせる手法を採用した場合には、これら異なる種類や組成のガス発生剤を準備するために余計に製造コストが必要になり、またそれぞれのガス発生剤に合わせてガス発生器の構造を最適化する必要があり、その実現は非常に困難である。これに対し、後者のガス発生剤の充填量に差をもたせる手法を採用した場合には、製造コストが増大することが抑制でき、比較的容易に実現することができる。しかしながら、ガス発生剤の充填量に差をもたせるためには、各燃焼室の容量を異なるものとする必要があり、従来例1におけるガス発生器201においては、第1および第2燃焼室223,233の少なくともいずれか一方の形状に何らかの変更を加えることが必要になる。
【0013】
上記従来例2におけるT字型ガス発生器301においては、第1燃焼室323の軸方向長さと第2燃焼室333の軸方向長さとを異なることとすることにより、第1および第2燃焼室323,333の容量を異なるものとしている。しかしながら、このように構成した場合には、軸方向長さが長い方の燃焼室(図18に示すT字型ガス発生器301においては第2燃焼室333)におけるガス出力の立ち上がり(すなわち、点火器の作動から、ガスがガス出力部から噴き出されるまでの時間およびその噴出量)が鈍くなるおそれがある。これは、点火直後においてガス発生剤が点火室側から着火されて燃焼するためであり、軸方向長さが短い方の燃焼室に比べて、軸方向長さが長い方の燃焼室では、そのガス噴出口までの距離が長くなるためである。サイドエアバッグ装置においては、乗員と車両との間の距離の短い部分にエアバッグを展開させることが必要であるため、車両の側突から瞬時にエアバッグを膨張展開させることが必要であり、上述の如くのガス出力の立ち上がりの鈍さはエアバッグの展開速度に大きな影響を与えるものとなり、非常に大きな問題となる。これを回避するために、ガス噴出口を点火器寄りの位置に設けることも考えられるが、このように構成したガス発生器をサイドエアバッグ装置に適用した場合には、シームによって分割されたエアバッグの各空間にスムーズにガスが導入されなくなったり、それぞれのガス噴出口から噴き出されたガスが混ざり合ったりするおそれがあり、所望のエアバッグの展開が得られないことにもなりかねない。
【0014】
また、燃焼室の軸方向長さを異なることとした場合には、ガス発生器自体の外形が大幅に長大化することも懸念される。ガス発生器が大幅に長大化した場合には、これに伴ってサイドエアバッグ装置も大型化し、搭載スペースの制約の厳しいシートの側面部分へのサイドエアバッグ装置の組み付けが非常に困難になるという問題も生じる。
【0015】
したがって、本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、シートの意匠性を損なうことなくシートへの組付けが可能な、小型で安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に基づくサイドエアバッグ装置は、シートの背もたれ部に埋設されたシートフレームの側面に取付けられ、ガスを発生させて噴出するガス発生器と、上記ガス発生器から噴出されたガスが導入されて展開する上部空間および下部空間を含むエアバッグとを備え、上記シートに着座した乗員と車両の側部との間に上記エアバッグを展開するものである。上記ガス発生器は、上記シートの上方に向かって延びる上部側筒状部および上記シートの下方に向かって延びる下部側筒状部とを含むハウジングと、このハウジングに設けられた上部側燃焼室、下部側燃焼室、上部側ガス噴出口および下部側ガス噴出口と、上記上部側筒状部と上記下部側筒状部との間に配置された点火器とを含む。上記上部側燃焼室は、上記上部側筒状部に設けられ、ガス発生剤が収容されるとともに上記点火器に通ずる。上記下部側燃焼室は、上記下部側筒状部に設けられ、ガス発生剤が収容されるとともに上記点火器に通ずる。上記上部側ガス噴出口は、上記上部側筒状部に設けられ、上記上部側燃焼室にて発生したガスを上記上部空間に導入する。上記下部側ガス噴出口は、上記下部側筒状部に設けられ、上記下部側燃焼室にて発生したガスを上記下部空間に導入する。そして、上記上部側筒状部は、上記下部側筒状部よりも実質的に細く構成されている。
【0017】
ここで、「上部側筒状部が下部側筒状部よりも実質的に細く構成されている」とは、上部側筒状部の軸方向の最大外形部分における軸線との直交断面の断面積が、下部側筒状部の軸方向の最大外形部分における軸線との直交断面の断面積よりも小さく形成されていることを意味し、上部側筒状部の軸方向の任意の部分における軸線との直交断面の断面積が、下部側筒状部の軸方向の最小外形部分における軸線との直交断面の断面積よりも小さく形成されていることまでをも要求するものではない。この意味において、組立て時の加工等の理由により、局所的に上部側筒状部の最大外形部分が下部側筒状部の最小外形部分よりも太く形成されていること排除しないものである。上部側筒状部および下部側筒状部が円柱状の外形を有している場合には、上部側筒状部の外径が下部側筒状部の外径よりも小さく形成されていることを要する。
【0018】
このように構成することにより、サイドエアバッグ装置の外形を決定する主たる構成部品であるガス発生器を、下部よりも上部において細い形状とすることができる。これに伴い、サイドエアバッグ装置の外形も上部において細くすることができるため、通常、上部部分の厚みが薄く、下部部分の厚みが厚く構成されるシートの背もたれ部の側部部分へのサイドエアバッグ装置の組み付けに適した形状となる。また、上記のように構成することにより、ガス発生器の長大化を防止しつつ各燃焼室の容量に差をもたせることが可能になる。その場合に、上部側ガス噴出口と下部側ガス噴出口とをハウジングの両端部またはその近傍に設けた場合にも、容量の大きい燃焼室において、点火器の作動によって着火されるガス発生剤の点火器側の部分からガス噴出口へと至る部分までの距離を短くすることができ、ガス出力の立ち上がりが鈍化することがない。したがって、シートの意匠性を損なうことなくシートへの組付けが可能な、小型で安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0019】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記上部側燃焼室の容積が上記下部側燃焼室の容積よりも小さくなるように構成することにより、上記上部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量を上記下部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量よりも少なくしてもよい。
【0020】
上記のように、ガス発生器の上部側筒状部を下部側筒状部に比べて細く形成し、これに伴って上部側燃焼室の容量を下部側燃焼室の容量よりも小さくした場合には、上部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量が下部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量よりも少なくなる。このように構成することにより、エアバッグの上部空間に導入されるガスの量と下部空間に導入されるガスの量を上部空間において少なく、下部空間において多くすることができ、展開後におけるエアバッグの形状および内圧等を差別化することが可能になる。
【0021】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記上部空間が乗員の胸部を保護する部位であることが好ましく、上記下部空間が乗員の腰部を保護する部位であることが好ましい。また、その場合には、上記エアバッグの展開時において、上記上部空間の内圧が上記下部空間の内圧よりも小さくなるように構成することが好ましい。
【0022】
上記のように、ガス発生器の上部側筒状部を下部側筒状部に比べて細く形成した場合には、通常は、上部側ガス噴出口から噴出されるガスの出力が下部側ガス噴出口から噴出されるガスの出力よりも小さくなる。したがって、高い内圧にて膨張展開される下部空間を腰部に当接させ、低い内圧にて膨張展開される上部空間を胸部に当接させるようにすることにより、胸部を強く圧迫することなく、安全かつ確実に側突の際の衝撃から乗員を保護することが可能になる。
【0023】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記上部側筒状部の中心軸が上記下部側筒状部の中心軸よりも上記シートフレーム側に配置されるように、上記上部側筒状部が上記下部側筒状部に対してオフセット配置されていることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、上部側筒状部の外形を細くした場合にも、上部側筒状部とシートフレームの側面との間に不要な隙間が生じなくなるため、安定的にガス発生器をシートフレームに組付けることが可能になる。
【0025】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置において、上記上部側筒状部と上記下部側筒状部とを連結し、伝火薬と上記点火器とを収容する点火室を含むベース部を上記ハウジングにさらに設け、上記点火室と上記上部側燃焼室とが上記ハウジングに設けられた上部側伝火路によって通じ、かつ上記点火室と上記下部側燃焼室とが上記ハウジングに設けられた下部側伝火路によって通じることとした場合には、上記点火器によって点火された上記伝火薬によって上記ガス発生剤が着火されて燃焼する際に、上記上部側燃焼室に収容された上記ガス発生剤の燃焼が、上記上部側伝火路、上記点火室および上記下部側伝火路を経由して、上記下部側燃焼室に収容された上記ガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことを抑制する抑制手段を上記ガス発生器にさらに具備させることが好ましい。
【0026】
ここで、「燃焼による影響」とは、各燃焼室間の圧力差に伴う圧変動による影響や、熱粒子の移動による影響等を含むものである。また、実際には、高圧状態にある燃焼室における燃焼と低圧状態にある燃焼室における燃焼とは相互に干渉し合い、その意味では両者ともに影響を及ぼし合い、また同時に及ぼされ合うものではあるが、本明細書において使用する「影響が及ぶ」との記述は、特に高圧状態にある燃焼室における燃焼が低圧状態にある燃焼室における燃焼に影響を与えるという観点に着目して使用するものである。また、「影響を及ぼすことを抑制する」とは、影響を軽減することのみならず、影響を完全に無くすことも含むものである。
【0027】
このように構成することにより、抑制手段により、上部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼が、上部側伝火路、点火室および下部側伝火路を経由して下部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことが抑制または防止されるようになる。したがって、上部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性と下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性とを相互に実質的にまたは完全に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室において予定したガス発生剤の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス噴出口から噴き出されるガスの出力が所望のものとなる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0028】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記抑制手段として、上記上部側伝火路の中心線と上記下部側伝火路の中心線とが同一直線上に重ならないように、上記上部側伝火路と上記下部側伝火路とをずらして配置することが好ましい。
【0029】
ここで、「伝火路の中心線」とは、伝火路が延びる方向と直交する伝火路の断面における中心点を結んだ線であり、直線状に延びる孔にて伝火路が形成された場合にはこの中心線も直線となり、湾曲状に延びる孔にて伝火路が形成された場合にはこの中心線も湾曲線となる。なお、この伝火路の中心線は、伝火路を流動するガスや熱粒子の進行方向と概ね重なることになる。
【0030】
このように構成することにより、上部側燃焼室と下部側燃焼室との間に位置する上部側伝火路、点火室および下部側伝火路からなる経路が、上部側伝火路と下部側伝火路とを点火室を挟んで同一直線上にその中心線が重なるように設けた場合に比べて複雑化することになる。そのため、これが抑制手段として機能することになり、上部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼が下部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことが抑制されるようになる。したがって、上部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性と下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性とを相互に実質的に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室において予定したガス発生剤の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス噴出口から噴き出されるガスの出力が所望のものとなる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0031】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記抑制手段として、上記点火室の壁面に設けられた上記上部側伝火路の開口面と上記点火室の壁面に設けられた上記下部側伝火路の開口面との間に隔壁を設けることが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、点火室の壁面に設けられた上部側伝火路の開口面と下部側伝火路の開口面とが隔壁によって隔てられるようになるため、上部側伝火路と下部側伝火路とを実質的にまたは完全に通じていない状態とすることができる。そのため、隔壁が抑制手段として機能することになり、上部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼が下部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことが抑制または防止されるようになる。したがって、上部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性と下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性とを相互に実質的にまたは完全に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室において予定したガス発生剤の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス噴出口から噴き出されるガスの出力が所望のものとなる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0033】
上記本発明に基づくサイドエアバッグ装置にあっては、上記抑制手段として、上記上部側伝火路を閉塞することが可能な位置に上記上部側燃焼室と上記下部側燃焼室との圧力差に基づいて駆動される逆止弁を配設することが好ましい。
【0034】
このように構成することにより、上部側燃焼室においてガス発生剤が燃焼した状態において、上部側燃焼室と下部側燃焼室との間の圧力差に基づいて逆止弁が駆動されて上部側伝火路を閉塞することになるため、上部側燃焼室と下部側燃焼室とが完全に通じていない状態とすることができる。そのため、逆止弁が抑制手段として機能することになり、上部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼が下部側燃焼室に収容されたガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことが防止されるようになる。したがって、上部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性と下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼特性とを相互に完全に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室において予定したガス発生剤の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス噴出口から噴き出されるガスの出力が所望のものとなる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シートの意匠性を損なうことなくシートへの組付けが可能な、小型で安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、サイドエアバッグ装置としていずれも自動車の右側前席に装備されるものを例示して説明を行なう。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置の展開後における側断面図であり、図2は、図1に示すII−II線に沿った縦断面図である。また、図3は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置が組み込まれたシートの断面図である。まず、これらの図を参照して、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aの概略構造について説明する。
【0038】
図1および図2に示すように、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aは、シート10に設けられている。シート10は、ヘッドレスト11と、背もたれ部12と、腰掛け部13とを含み、サイドエアバッグ装置20Aは、このうちの背もたれ部12の側部に組み込まれている。ここで、サイドエアバッグ装置20Aが設けられる背もたれ部12の側部は、車両の側部15に近い方の側部である。
【0039】
サイドエアバッグ装置20Aは、エアバッグ21とガス発生器101Aとを主に備える。ガス発生器101Aは、側突が生じた際にその衝撃を検知する図示しない衝突検知センサにコネクタ60(図3参照)を介して電気的に接続されており、この衝突検知センサからの信号を受けてガスを発生させる機器である。エアバッグ21は、ガス発生器101Aから噴出されたガスが導入されて展開する袋状の部材であり、シート10に着座した乗員Pと車両の側部15との間に展開することにより、乗員Pを側突の衝撃から保護するものである。
【0040】
図3に示すように、ガス発生器101Aは、シート10の背もたれ部12の内部に埋設されたシートフレーム14の側面に、リテーナ40を介して取付けられている。ガス発生器101Aは、長尺の略円柱状の外形を有しており、軸方向の中央部に位置するベース部110と、ベース部110からシート10の上方に向かって延びる上部側筒状部としての上部側円筒状部120と、ベース部110からシート10の下方に向かって延びる下部側筒状部としての下部側円筒状部130とを含む。ベース部110は、上部側円筒状部120と下部側円筒状部130とを連結する。図示する上部側円筒状部120および下部側円筒状部130は、加工の際に生じる凹凸をその表面に有している。しかしながら、この凹凸は局所的に設けられるものであり、上部側円筒状部120および下部側円筒状部130は、実質的にその外形が円柱状の形状を有している。そのため、ガス発生器101Aは、全体として長尺の略円柱状の外形を有していると言える。これらベース部110、上部側円筒状部120および下部側円筒状部130からなるハウジングの上端部近傍には上部側ガス噴出口122が設けられており、ハウジングの下端部近傍には下部側ガス噴出口132が設けられている。なお、ガス発生器101Aの詳細な構造については、後述することとする。
【0041】
図1および図2に示すように、エアバッグ21は、織布等からなる一対の基布をそれらの周縁において全体として袋状をなすように縫着することによって形成され、展開前においては折り畳んだ状態でシート10の背もたれ部12の側部に組み込まれている。エアバッグ21の内部には、上述のガス発生器101Aが配置されている。一対の基布を縫着することによって袋状に形成されたエアバッグ21の上下方向の略中央部には、両基布を互いに縫着することによって形成されたシーム25が形成されている。このシーム25により、エアバッグ21の内部の空間が、上部空間22と下部空間23とに区画されている。なお、上部空間22と下部空間23とは、完全に非連通の状態とはなっておらず、シーム25の端部外側に設けられた連通部において互いに連通している。
【0042】
上述のシーム25の一端は、上下方向に延びるように配置されたガス発生器101Aのベース部110の近傍にまで達している。そのため、ガス発生器101Aの上部側ガス噴出口122はエアバッグ21の上部空間22に連通していることになり、ガス発生器101Aの下部側ガス噴出口132はエアバッグ21の下部空間23に連通していることになる。エアバッグ21の上部空間22は、展開時において、ガス発生器101Aの上部側ガス噴出口122から噴出されたガスが導入されて、シート10に着座した乗員Pの胸部Pcと車両の側部15との間に展開する。これに対し、エアバッグ21の下部空間23は、展開時において、ガス発生器101Aの下部側ガス噴出口132から噴出されたガスが導入されて、シート10に着座した乗員Pの腰部Phと車両の側部15との間に展開する。なお、エアバッグ21の展開時においては、上述のシーム25の端部に設けられた連通部により、上部空間22と下部空間23との間をガスが一部行き来する。
【0043】
図4は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の内部構造を示す断面図である。以下においては、この図を参照して、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aに組み込まれるガス発生器101Aの詳細な構造について説明する。
【0044】
図4を参照して、ガス発生器101Aは、上述の通り、略円柱状の外形を有する長尺の略円筒状のハウジングを有している。円筒状のハウジングの両端部は、閉塞部材141,142によって閉塞されている。ベース部110の周方向の所定位置には、略円柱状の外形を有するハウジングの軸方向と交差する方向に凹部が設けられており、この凹部には、後述する点火器(スクイブ)112を支持する支持部材111が嵌め込まれている。上部側円筒状部120の軸方向の所定位置には、上部側円筒状部120の内部の空間を軸方向に区画する仕切り板126が配置されており、下部側円筒状部130の軸方向の所定位置には、下部側円筒状部130の内部の空間を軸方向に区画する仕切り板136が配置されている。これらベース部110、支持部材111、上部側円筒状部120、下部側円筒状部130、仕切り板126,136および閉塞部材141,142は、いずれもステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材からなり、溶接やかしめ等によってそれぞれ連結・固定されている。
【0045】
上述の通り、上部側円筒状部120のベース部110に固定されていない方の端部の近傍には、ガスを噴出するための上部側ガス噴出口122が設けられており、この部分においてガス出力部121が形成されている。また、下部側円筒状部130のベース部110に固定されていない方の端部の近傍には、上部側円筒状部120と同様に、ガスを噴出するための下部側ガス噴出口132が設けられており、この部分においてガス出力部131が形成されている。
【0046】
ハウジングの内部には、点火器112および伝火薬114が収容された点火室113と、ガス発生剤124およびフィルタ部材125が収容された上部側燃焼室123と、ガス発生剤134およびフィルタ部材135が収容された下部側燃焼室133と、点火室113と上部側燃焼室123とを通ずる上部側伝火路115と、点火室113と下部側燃焼室133とを通ずる下部側伝火路116とが主に設けられている。本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aは、上部側円筒状部120と下部側円筒状部130とが異なる径に形成されている点を除き、略円筒状のハウジングの軸方向の略中央部を中心に左右対称の構造を有しており、図中の左側の部分に上部側燃焼室123および上部側伝火路115が、図中の右側の部分に下部側燃焼室133および下部側伝火路116が配置されている。そのため、点火室113、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133は、直線状に並んで配置されることになる。
【0047】
点火室113は、ベース部110と支持部材111とによって規定され、略円筒状のハウジングの軸方向の略中央部に設けられる。点火室113には、上述のように単一の点火器112と伝火薬114とが充填されている。支持部材111によって支持された点火器112は、そのヘッダピン(入力端子)がガス発生器101Aの外表面に露出するように配置されている。このヘッダピンには、点火器112と衝突検知センサとを結線するためのコネクタ60が接続される。上部側伝火路115の開口面が形成された点火室113の壁面および下部側伝火路116が形成された点火室113の壁面には、それぞれシール部材119が貼付されており、このシール部材119によって上記開口面のそれぞれが閉塞されている。なお、シール部材119としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、点火室113と上部側伝火路115および下部側伝火路116との間の気密性が確保されることになる。
【0048】
点火器112は、火炎を発生させるための点火装置であり、内部に図示しない点火薬と点火薬を燃焼させるための図示しない抵抗体とを含んでいる。より具体的には、点火器112は、一対のヘッダピンを挿通・保持する基部と、基部上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入されたヘッダピンの先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0049】
衝突を検知した際には、ヘッダピンを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器112が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0050】
点火器112と支持部材111との間には、シール部材117が介在されている。シール部材117は、点火器112と支持部材111との間に生じる隙間を気密に封止することによって点火室113を密閉するためのものであり、点火器112を支持部材111にかしめ固定する際に上記隙間に挿入される。また、ベース部110と支持部材111との間にも、シール部材118が介在されている。シール部材118は、ベース部110と支持部材111との間に生じる隙間を気密に封止することによって点火室113を密閉するためのものであり、支持部材111をベース部110にかしめ固定する際に上記隙間に挿入される。
【0051】
点火室113に充填された伝火薬114は、点火器112が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬114としては、ガス発生剤124,134を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬114は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成型されたもの等が利用される。バインダによって成型された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0052】
上部側燃焼室123は、上部側円筒状部120とベース部110と仕切り板126とによって規定され、略円筒状のハウジングの一方端寄り(図中において上部側部分)に設けられる。下部側燃焼室133は、下部側円筒状部130とベース部110と仕切り板136とによって規定され、略円筒状のハウジングの他方端寄り(図中において下部側部分)に設けられる。上部側燃焼室123および下部側燃焼室133には、上述のようにガス発生剤124,134およびフィルタ部材125,135がそれぞれ収容されている。ガス発生剤124,134は、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133のそれぞれ点火室113側の空間に配置され、フィルタ部材125,135は、これらガス発生剤124,134に隣接して上部側燃焼室123および下部側燃焼室133のそれぞれ仕切り板126,136側の空間に配置される。
【0053】
ガス発生剤124,134は、点火器112によって点火された伝火薬114が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤124,134は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0054】
ガス発生剤124,134の成型体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものがある。また、成型体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成型体も利用される。これらの形状は、ガス発生器101Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤124,134の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤124,134の形状の他にもガス発生剤124,134の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成型体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0055】
上部側燃焼室123および下部側燃焼室133には、上部側伝火路115の開口面と下部側伝火路116の開口面が形成されたベース部110の壁面にそれぞれ接触するように、クッション材128,138が配置されている。このクッション材128,138は、成型体からなるガス発生剤124,134が振動等によって粉砕されることを防止する目的で取付けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用される。
【0056】
フィルタ部材125,135は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属からなる線材や網材を巻き回したものやプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。フィルタ部材125,135は、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133にて発生したガスがこのフィルタ部材125,135中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
【0057】
仕切り板126,136には、それぞれ連通孔127,137が設けられている。連通孔127は、上部側燃焼室123と上部側ガス噴出口122とを通じており、連通孔137は下部側燃焼室133と下部側ガス噴出口132とを通じている。上部側燃焼室123側に位置する仕切り板126の主面および下部側燃焼室133側に位置する仕切り板136の主面には、上記連通孔127,137をそれぞれ閉塞するようにシール部材129,139が貼付されている。このシール部材129,139としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133とハウジング外部との気密性が確保されることになる。
【0058】
次に、上述のガス発生器の動作について説明する。ガス発生器101Aが搭載された車両が側突した場合には、点火器112が作動する。点火室113に収容された伝火薬114は、点火器112が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬114の燃焼により、点火室113内の圧力が上昇し、これによってシール部材119の封止が破られ、熱粒子が上部側伝火路115および下部側伝火路116を経由して上部側燃焼室123および下部側燃焼室133のベース部110よりに配置されたクッション材128,138へと至る。クッション材128,138に達した熱粒子は、その熱によってクッション材128,138を開口または分断し、これにより熱粒子が上部側燃焼室123および下部側燃焼室133へと流れ込む。
【0059】
流れ込んだ熱粒子により、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133に収容されたガス発生剤124,134が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。このガス発生剤124,134の燃焼により、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133内の圧力が上昇し、これによってシール部材129,139の封止が破られ、発生したガスが上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132をそれぞれ経由してガス出力部121,131からガス発生器101Aの外部へと放出される。この際、ガスはフィルタ部材125,135をそれぞれ通過して所定の温度にまで冷却され、ガス噴出口122,132のそれぞれからハウジングの外部へと噴出され、その後エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張展開させる。
【0060】
上述のガス発生器101Aにおいては、上部側燃焼室123に収容されているガス発生剤124の充填量と、下部側燃焼室133に収容されているガス発生剤134の充填量に差がもたされている。具体的には、図4に示すように、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120の外径R1よりも下部側円筒状部130の外径R2が大きく構成されており、これによって、上部側円筒状部120の内径r1が下部側円筒状部130の内径r2よりも小さく構成されている。また、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120の軸方向長さA1と下部側円筒状部130の軸方向長さA2とは同じに設定されており、これによって、上部側燃焼室123のうちのガス発生剤124が収容される部分の軸方向長さa1と、下部側燃焼室133のうちのガス発生剤134が収容される部分の軸方向長さa2とが同じに構成されている。したがって、上部側燃焼室123の容量が下部側燃焼室133の容量よりも小さく構成されることになり、これによって上部側燃焼室123に収容されているガス発生剤124の充填量が下部側燃焼室133に収容されているガス発生剤134の充填量よりも少なくなっている。
【0061】
図5および図6は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの詳細な組付構造を説明するための図である。このうち、図5は、図3中に示すV−V線に沿った断面図である。また、図6(A)は、図5中に示すVIA−VIA線に沿った断面図であり、図6(B)は、図5中に示すVIB−VIB線に沿った断面図である。以下においては、これらの図を参照して、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aのシートフレーム14への詳細な組付構造について説明する。
【0062】
図5に示すように、ガス発生器101Aは、リテーナ40を介してシートフレーム14に取付けられる。リテーナ40は、上端および下端に開口が設けられた板金製の筒状の部材からなり、このリテーナ40の中空部内にガス発生器101Aが収容されている。ガス発生器101Aは、リテーナ40によって保持されており、リテーナ40は、その重ね合わせ部41においてボルト55およびナット56によってシートフレーム14に固定されている。また、エアバッグ21は、リテーナ40とシートフレーム14との間に挿入されており、リテーナ40とシートフレーム14とによって挟持されている。なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、リテーナ40上端および下端に開口が形成されたものを利用しているが、これらの部分が閉塞したリテーナを利用することも可能である。
【0063】
リテーナ40は、ガス発生器101Aの外形に対応して、上部側においてはその径が小さく形成されており、下部側においてはその径が大きく形成されている。リテーナ40の所定位置には、板金製の筒状の部材の周壁の所定位置を切り欠くことにより、カバー部42,43,44およびかしめ部47,48,49が形成されている。このうち、カバー部42は、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120を覆う部位であり、かしめ部47は、この上部側円筒状部120を周方向の4点において保持・固定する部位である。具体的には、図6(A)に示すように、かしめ部47の周方向の所定位置に、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120を挟み込むように一対の突起部47aとかしめによる一対の当接部47bとが設けられており、これによって上部側円筒状部120が保持・固定されている。一方、カバー部44は、ガス発生器101Aの下部側円筒状部130を覆う部位であり、かしめ部49は、この下部側円筒状部130を周方向の4点において保持・固定する部位である。具体的には、図6(B)に示すように、かしめ部49の周方向の所定位置に、ガス発生器101Aの下部側円筒状部130を挟み込むように一対の突起部49aとかしめによる一対の当接部49bとが設けられており、これによって下部側円筒状部130が保持・固定されている。また、カバー部43は、ガス発生器101Aのベース部110を覆う部位であり、かしめ部48は、このベース部110を周方向の4点において保持・固定する部位である。
【0064】
リテーナ40の上端部近傍には、ガス発生器101Aの上部側ガス噴出口122に対応してガスを噴出するための噴出窓45が設けられている。また、リテーナ40の下端部近傍には、ガス発生器101Aの下部側ガス噴出口332に対応してガスを噴出するための噴出窓46が設けられている。これら噴出窓45,46は、いずれもガス発生器101Aから噴出されたガスをエアバッグ21の内部に放出するための窓である。なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132にそれぞれ面するように噴出窓45,46を設けているが、必ずしもこのように構成する必要はなく、上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132と噴出窓45,46とをずらして配置してもよい。このように、上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132と噴出窓45,46とをずらして配置した場合には、上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132から噴出されたガスをリテーナ40カバー部42,44に吹き付けてから噴出窓45,46へと誘導することが可能になる。これにより、エアバッグ20の上部空間22および下部空間23に導入されるガスの進行方向や噴出圧等を調整することが可能になる。
【0065】
上述のリテーナ40においては、ガス発生器101Aの形状に合わせて上下方向においてその径が変更されている。したがって、より小径に構成されたリテーナ40の上部部分とシートフレーム14との間に不要な隙間が生じ、ガス発生器101Aがシートフレーム14に安定的に固定されないことが懸念される。そこで、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、リテーナ40の上部部分とシートフレーム14との間にスペーサ51を挟み込むことによってこの問題を解決し、安定的なサイドエアバッグ装置20Aの組付けを実現している。
【0066】
以上において説明した本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、装置の外形を決定する主たる構成部品であるガス発生器101Aを、下部よりも上部において細い形状としている。これに伴い、サイドエアバッグ装置20Aの外形も上部において細くすることができるため、通常、上部部分の厚みが薄く、下部部分の厚みが厚く構成されるシート10の背もたれ部12の側部部分へのサイドエアバッグ装置20Aの組み付けに適した形状となる。また、上記のように構成することにより、ガス発生器101Aの長大化を防止しつつ、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133との容量に差をもたせることが可能になる。その場合に、容量の大きい下部側燃焼室133において、点火器112の作動によって着火されるガス発生剤124の点火室113側の部分から下部側ガス噴出口132に至る部分までの距離を短くすることができ、ガス出力の立ち上がりが鈍化することがない。したがって、シート10の意匠性を損なうことなくシート10への組付けが可能な、小型で安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0067】
また、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120を下部側円筒状部130に比べて細く形成するとともに、上部側円筒状部120の内部に設けられる上部側燃焼室123の容量を下部側円筒状部130の内部に設けられる下部側燃焼室133の容量よりも小さくしているため、上部側燃焼室123に充填されるガス発生剤124の充填量が下部側燃焼室133に充填されるガス発生剤134の充填量よりも少なくなっている。そのため、上部側ガス噴出口122から噴出されるガスの出力が下部側ガス噴出口132から噴出されるガスの出力よりも小さくなる。ここで、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aにおいては、下部側ガス噴出口132から噴出される高い出力のガスにて膨張展開されるエアバッグ21の下部空間23を乗員Pの腰部Phに当接させ、上部側ガス噴出口322から噴出される低い出力のガスにて膨張展開されるエアバッグ21上部空間22を乗員Pの胸部Pcに当接させるように構成しているため、胸部Pcを強く圧迫することなく、安全かつ確実に側突の際の衝撃から乗員Pを保護することができる。
【0068】
図7ないし図10は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造の第1ないし第4変形例を示す断面図である。以下に示す変形例は、ガス発生器の上部側円筒状部の外径を下部側円筒状部の外径よりも小さくすることによって生じるガス発生器のシートフレームへの組付けの不安定性が解消される他の組付構造例を第1ないし第4変形例として示すものである。
【0069】
図7に示すように、第1変形例に係るサイドエアバッグ装置20Bのシートフレーム14への組付構造は、リテーナ40のシートフレーム14側の周壁を折り曲げることなく平面にて構成し、ガス発生器101Aの上部側円筒状部120の周面とリテーナ40の上記周壁との間にスペーサ52を挟み込むことにより、上述の組付けの不安定性の問題を解決したものである。このように構成することにより、スペーサ51よってリテーナ40とガス発生器101Aの上部側円筒状部120との不要な隙間が埋められることになるため、安定的にサイドエアバッグ装置20Bをシートフレーム14に組付けることができる。
【0070】
図8に示すように、第2変形例に係るサイドエアバッグ装置20Cのシートフレーム14への組付構造は、シートフレーム14のリテーナ40の小径部分に対応する位置をリテーナ40側に向かって突設させ、これによってシートフレーム14に突設部14Aを形成し、この突設部14Aによってリテーナ40とシートフレーム14との間の不要な隙間をなくしたものである。このように構成することにより、リテーナ40とシートフレーム14との間およびリテーナ40とガス発生器101Aの上部側円筒状部320との間のいずれにも不要な隙間が生じないため、安定的にサイドエアバッグ装置20Cをシートフレーム14に組付けることができる。
【0071】
図9に示すように、第3変形例に係るサイドエアバッグ装置20Dのシートフレーム14への組付構造は、シートフレーム14のリテーナ40の大径部分に対応する位置をリテーナ40側とは反対側に向かって突設させ、これによってシートフレーム14に凹部14Bを形成し、この凹部14Bにリテーナ40を嵌め込むとともに、凹部14Bが形成されていない部分にリテーナ40の小径部分を当接させて固定するものである。このように構成することにより、リテーナ40とシートフレーム14との間およびリテーナ40とガス発生器101Aの上部側円筒状部120との間のいずれにも不要な隙間が生じないため、安定的にサイドエアバッグ装置20Dをシートフレーム14に組付けることができる。
【0072】
図10に示すように、第4変形例に係るサイドエアバッグ装置20Eのシートフレーム14への組付構造は、リテーナ40のシートフレーム14側の周壁を折り曲げることなく平面にて構成するとともに、リテーナ40に組付けられるガス発生器として、上部側円筒状部120の中心軸が下部側円筒状部130の中心軸よりもシートフレーム14側に配置されるように、上部側円筒状部120を下部側円筒状部130に対してオフセット配置したガス発生器101Bを利用する。このように構成することにより、そもそもリテーナ40とシートフレーム14との間およびリテーナとガス発生器101Bの上部側円筒状部120との間のいずれにも不要な隙間が生じなくなるため、上述の組付けの不安定性の問題が生じない。したがって、上記構成を採用することにより、安定的にサイドエアバッグ装置20Eをシートフレーム14に組付けることができる。
【0073】
なお、図示するサイドエアバッグ装置20Eのシートフレーム14への組付構造は、上部側円筒状部120のシートフレーム14側の母線120c(上部側円筒状部120の外周面上に含まれる軸方向と平行な直線であって、シートフレーム14側に最も近接している線)と下部側円筒状部130のシートフレーム14側の母線130c(下部側円筒状部130の外周面上に含まれる軸方向と平行な直線であって、シートフレーム14側に最も近接している線)とが同一直線上に重なるように、上部側円筒状部120を下部側円筒状部130に対してオフセット配置した場合を示すものであるが、必ずしもこのように構成する必要はなく、たとえば、上部側円筒状部120のオフセット量を変更してもよいし、上部側円筒状部120がシーフレーム14側に近付く方向であれば多少オフセット方向を変更してもよい。また、図示するサイドエアバッグ装置20Eのシートフレーム14への組付構造においては、ガス発生器101Bの点火器112のヘッダピンが位置する方向を車両後方側としているが、これをシートフレーム14側や車両前方側等に変更することも可能である。しかしながら、そのように変更した場合であっても、上部側円筒状部120をオフセットさせる方向はシートフレーム14側であることが必要である。
【0074】
図11は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のエアバッグの変形例を示す側断面図である。上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aは、エアバッグ21の上部空間22と下部空間23とがシーム25の両端部外側にて連通している構成を採用している。しかしながら、本変形例に係るサイドエアバッグ装置20Fにおいては、図11に示すように、シーム25の一端をガス発生器101Aのベース部310にまで達するように形成するとともに、シーム25の他端をエアバッグ21の周縁に設けられた縫着部にまで達するように構成している。したがって、上部空間22と下部空間23とを実質的に完全に非連通とし、展開時において上部空間22と下部空間23におけるガスの行き来を防止している。このように構成した場合にも、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aと同様の効果を得ることができる。
【0075】
(実施の形態2)
図12(A)は、本発明の実施の形態2におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の断面図であり、図12(B)は、図12(A)中におけるXIIB−XIIB線に沿った断面図、図12(C)は、図12(A)中におけるXIIC−XIIC線に沿った断面図である。なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置は、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aとガス発生器の構成のみが異なるものであるため、ガス発生器のみを図示することとし、また上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様の部分については、図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。また、図12(B)および図12(C)においては、点火室113の壁面に貼付されたシール部材119の図示は省略している。
【0076】
上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aにおいては、これらガス出力部121,131における出力特性をそれぞれ相違させることを目的に、上部側燃焼室323に収容されるガス発生剤324の充填量と下部側燃焼室333に収容されるガス発生剤334の充填量とを相違させている。しかしながら、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aにおいては、点火室113の壁面に設けられた上部側伝火路115の開口面と下部側伝火路116の開口面とが対面配置されるとともに、上部側伝火路115および下部側伝火路116が点火室113を挟んで同一直線上にその中心線が重なるように設けられているため、ガス発生器101Aの動作時において、すなわち点火器112によって点火された伝火薬114によってガス発生剤124,134が着火された状態において、上部側燃焼室123および下部側燃焼室133におけるガス発生剤124,134の燃焼が上部側伝火路115、点火室113および下部側伝火路116を経由してそれぞれ他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に影響を与えることが懸念される。この影響が生じた場合には、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133との間で圧力の均一化が生じ、結果として上部側ガス噴出口122および下部側ガス噴出口132から噴出されるガスの出力が所望のものとならないおそれがある。そこで、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Cにおいては、一方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼が他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に影響を与えないように、抑制手段を設けている。
【0077】
図12(A)ないし図12(C)に示すように、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Cにおいては、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様に、下部側円筒状部130の内径r2よりも上部側円筒状部120の内径r1が小さく構成されている。点火室113と上部側燃焼室123とを通ずる上部側伝火路115は、ベース部110に穿設された直線状に延びる1つの孔によって形成され、点火室113と下部側燃焼室133とを通ずる下部側伝火路116は、ベース部110に穿設された直線状に延びる3つの孔によって形成されている。そして、上部側伝火路115を構成する孔の中心線と、下部側伝火路116を構成する孔の中心線とが同一直線上に重ならないように、上部側伝火路115と下部側伝火路116とが平行にずらして配設されている。
【0078】
このように構成することにより、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133との間に位置する上部側伝火路115、点火室113および下部側伝火路116からなる経路が、上部側伝火路115と下部側伝火路116とを点火室113を挟んで同一直線上にその中心線が重なるように設けた場合に比べて複雑化することになる。そのため、このように上部側伝火路115および下部側伝火路116を配設すること自体が抑制手段として機能することになり、ガス発生器101Cの動作時において、すなわち点火器112によって点火された伝火薬114によってガス発生剤124,134が着火された状態において、上部側燃焼室123に収容されたガス発生剤124の燃焼が下部側燃焼室133に収容されたガス発生剤134の燃焼に影響を及ぼすことが抑制されるようになる。より具体的には、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133とで圧力差が生じる場合、上部側燃焼室123においてガス発生剤124が燃焼することによって生じた上部側燃焼室123の圧力上昇に伴う発生ガスの逆流が防止され、またこれに伴う熱粒子の上部側燃焼室123から下部側燃焼室133への移動が防止される。したがって、上部側燃焼室123におけるガス発生剤124の燃焼特性と下部側燃焼室133におけるガス発生剤134の燃焼特性とを相互に実質的に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室123,133において予定していたガス発生剤124,134の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス出力部121,131において所望の出力が得られるようになる。
【0079】
また、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Cにおいては、点火室113の壁面に設けられた上部側伝火路115の開口面115bを上部側伝火路115の中心線に沿って下部側伝火路116の開口面116bが設けられた点火室113の壁面に投影した場合に、投影後の上部側伝火路115の開口面115bが下部側伝火路116の開口面116bと重ならないように、上部側伝火路115と下部側伝火路116とがずらして配設されている(特に図12(C)参照)ため、その抑制効果はより顕著なものとなる。
【0080】
以上において説明したように、一対のガス出力部における出力を均一化させたくない場合に、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器を上述の如くの構成とすることにより、ガス出力を鈍化させることなく、またガス発生器を長大化させることなく、さらには上部側燃焼室および下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼がそれぞれ他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に大きく影響を与えることを確実に防止しつつ、一対のガス出力部における出力特性をそれぞれ相違させることができる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0081】
図13(A)は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の変形例を示す断面図であり、図13(B)は、図13(A)中におけるXIIIB−XIIIB線に沿った断面図、図13(C)は、図13(A)中におけるXIIIC−XIIIC線に沿った断面図である。なお、図13(B)および図13(C)においては、点火室113の壁面に貼付されたシール部材119の図示は省略している。
【0082】
図13(A)ないし図13(C)に示すように、本変形例に係るガス発生器101Dにおいては、上部側伝火路115がベース部110に穿設された直線状に延びる1つの孔によって形成され、下部側伝火路116がベース部110に穿設された直線状に延びる1つの孔によって形成されている。また、本変形例に係るガス発生器101Dにおいては、上述の本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Cと同様に、上部側円筒状部120の内径r1と下部側円筒状部130の内径r2とが異なっている。ここで、上部側伝火路115は、上部側円筒状部120の中心軸上に配設されており、下部側伝火路116は、下部側円筒状部130の中心軸上に配設されている。そして、異なる内径を有する上部側円筒状部120と下部側円筒状部130とは、互いの中心軸が同一直線上に重ならないこととなるように、図中左右方向にオフセット配置されている。その結果、上部側伝火路115と下部側伝火路116とが平行にずらして配置されることになり、上部側伝火路115を構成する孔の中心線と下部側伝火路116を構成する孔の中心線とが同一直線上に重ならないこととなる。このように構成した場合にも、上部側伝火路115、点火室113および下部側伝火路116からなる経路が複雑化するため、上述の本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Cと同様に、顕著な抑制効果を得ることができる。したがって、それぞれのガス出力部121,131において所望の出力が得られるようになり、エアバッグ21の上部空間22および下部空間23をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになるため、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。なお、下部側円筒状部130に対して上部側円筒状部120をオフセットさせる場合のオフセット方向やオフセット量は特に制限されるものではなく、組み込むエアバッグ装置の仕様等に応じて適宜変更が可能である。
【0083】
なお、本実施の形態およびその変形例においては、上部側伝火路の中心線と下部側伝火路の中心線とが同一直線上に重ならないように、上部側伝火路と下部側伝火路とを平行にずらして配置した場合を例示したが、上部側伝火路の中心線と下部側伝火路の中心線とが非平行になるように、上部側伝火路および下部側伝火路の少なくとも一方が長尺のハウジングの軸方向と交差するように傾斜して配置することも可能である。このように、上部側伝火路の中心線の延長線上に下部側伝火路の中心線が重ならないようにすれば、多くの場合に抑制効果が得られるようになる。したがって、上部側伝火路および下部側伝火路の形状や大きさ、形成位置、あるいは上部側筒状部および下部側円筒状部の形状や大きさ、形成位置等は適宜変更が可能である。
【0084】
(実施の形態3)
図14(A)は、本発明の実施の形態3におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の断面図であり、図14(B)は、図14(A)中におけるXIVB−XIVB線に沿った断面図、図14(C)は、図14(A)中におけるXIVC−XIVC線に沿った断面図である。なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Eは、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと大部分において共通の構成を有しているため、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。また、図14(B)および図14(C)においては、点火室113の壁面に貼付されたシール部材119および後述する点火室113に設けられた隔壁150の図示は省略している。
【0085】
本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Eは、上述の実施の形態2におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Dと同様に、一方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼が他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に影響を与えないような抑制手段を備えている。しかしながら、抑制手段の具体的な構成が上述の実施の形態2におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Dと異なる。
【0086】
図14(A)ないし図14(C)に示すように、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Cにおいては、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様に、下部側円筒状部130の内径r2よりも上部側円筒状部120の内径r1が小さく構成されている。点火室113の所定位置には、抑制手段としての隔壁150が設けられている。この隔壁150は、点火室113の壁面に設けられた上部側伝火路115の開口面115bと、点火室113の壁面に設けられた下部側伝火路116の開口面116bとの間に設けられ、かつこれら開口面115b,116b同士を隔てている。隔壁150によって区画された点火室113の両空間には、伝火薬114が充填されている。なお、この隔壁150は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成され、点火室113の壁面に嵌合または溶接等によって固定される。
【0087】
このように構成することにより、点火室113の壁面に設けられた上部側伝火路115の開口面115bと下部側伝火路116の開口面116bとが隔壁150によって隔てられるようになるため、上部側伝火路115と下部側伝火路116とを実質的に通じていない状態とすることができる。そのため、隔壁150が抑制手段として機能することになり、ガス発生器101Dの動作時において、すなわち点火器112によって点火された伝火薬114によってガス発生剤124,134が着火された状態において、上部側燃焼室123に収容されたガス発生剤124の燃焼が下部側燃焼室133に収容されたガス発生剤134の燃焼に影響を及ぼすことが抑制されるようになる。したがって、上部側燃焼室123におけるガス発生剤124の燃焼特性と下部側燃焼室133におけるガス発生剤134の燃焼特性とを相互に実質的に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室123,133において予定していたガス発生剤124,134の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス出力部121,131において所望の出力が得られるようになる。
【0088】
以上において説明したように、一対のガス出力部における出力を均一化させたくない場合に、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器を上述の如くの構成とすることにより、ガス出力を鈍化させることなく、またガス発生器を長大化させることなく、さらには上部側燃焼室および下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼がそれぞれ他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に大きく影響を与えることを確実に防止しつつ、一対のガス出力部における出力特性をそれぞれ相違させることができる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0089】
なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Eにおいては、上部側伝火路115の開口面115bと下部側伝火路116の開口面116bとが隔壁150によって完全に遮蔽されるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしも完全に遮蔽されている必要はなく、その一部のみが遮蔽されるように構成した場合にも、ある程度の抑制効果を得ることができる。
【0090】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の断面図である。なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fは、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと大部分において共通の構成を有しているため、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0091】
本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fは、上述の実施の形態2および3におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101D,101Fと同様に、一方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼が他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に影響を与えないような抑制手段を備えている。しかしながら、抑制手段の具体的な構成が上述の実施の形態3および4におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101D,101Fと異なる。
【0092】
図15に示すように、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fにおいては、上述の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置20Aのガス発生器101Aと同様に、下部側円筒状部130の内径r2よりも上部側円筒状部120の内径r1が小さく構成されている。点火室113と上部側燃焼室123とを通ずる上部側伝火路115は、ベース部110に穿設された直線状に延びる1つの孔によって形成されており、点火室113と下部側燃焼室133とを通ずる下部側伝火路116は、ベース部110に穿設された直線状に延びる1つの孔によって形成されている。上部側燃焼室123および下部側燃焼室133には、点火室113側の壁面に隣接して逆止弁160,165がそれぞれ設けられている。逆止弁160,165は、上部側円筒状部120の内径r1および下部側円筒状部130の内径r2よりも僅かに大きい外形をそれぞれ有しており、上部側円筒状部120および下部側円筒状部130の点火室113寄りの部分に設けられた溝120a,130aにそれぞれスライド移動自在に嵌め込まれている。
【0093】
逆止弁160,165の中央部には、点火室113側に向かって突出する突部161,166がそれぞれ設けられており、この突部161,166は、上部側伝火路115および下部側伝火路116を上部側燃焼室123側および下部側燃焼室133側からそれぞれ閉塞することができる。また、逆止弁160,165の周縁部は、点火室113側とは反対側に向かってそれぞれ屈曲しており、この屈曲部分に貫通孔162,167がそれぞれ設けられている。これら逆止弁160,165は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属によって形成され、その点火室113側とは反対側に位置する主面にクッション材128,138がそれぞれ取付けられている。
【0094】
図16は、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の逆止弁の動作を説明するための図であり、図16(A)は、点火室内の伝火薬の燃焼が始まった段階を模式的に示す拡大断面図であり、図16(B)は、上部側燃焼室内のガス発生剤の燃焼が始まった段階を模式的に示す拡大断面図である。以下においては、この図を参照して、上部側燃焼室123内の圧力が下部側燃焼室133内の圧力よりも高圧になった場合の逆止弁160の動作について説明する。
【0095】
図16(A)に示すように、点火器112が作動して点火室113内に収容された伝火薬114が燃焼を開始すると、点火室113内の圧力が上昇し、これによってシール部材119の封止が破られ、点火室113と上部側伝火路115とが連通する。これにより上部側伝火路115内の圧力も上昇し、上部側燃焼室123との間の圧力差に基づいて逆止弁160が図中矢印A1方向に向かって押され、逆止弁161による閉塞が開放し、空間にガスが流れ、逆止弁160に設けられた貫通孔162を介して上部側伝火路115と上部側燃焼室123とが連通する。この状態において、熱粒子が、図中矢印B方向に沿って上部側伝火路115を経由して上部側燃焼室123へと流れ込み、上部側燃焼室123に収容されたガス発生剤124が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。なお、これと同様に、下部側燃焼室133側においても点火器112の作動に伴って逆止弁165が移動し、逆止弁165による下部側伝火路116の閉塞が開放されて下部側燃焼室133に収容されたガス発生剤134の燃焼が開始される。
【0096】
上述のガス発生剤124の燃焼により、上部側燃焼室123内の圧力が上昇し、上部側燃焼室123内の圧力が上部側伝火路115内の圧力よりも高くなると、図16(B)に示すように、上部側伝火路115との間の圧力差に基づいて逆止弁160が図中矢印A2方向に向かって押し戻され、逆止弁160の突部161が上部側伝火路115を閉塞し、上部側伝火路115と上部側燃焼室123とが非連通となる。上部側伝火路115と上部側燃焼室123との間が非連通となった後は、上部側燃焼室123内に収容されたガス発生剤124が残存する限りガス発生剤124の燃焼が継続し、これに伴ってエアバッグが膨張展開する。
【0097】
このように構成することにより、上部側燃焼室123においてガス発生剤124が燃焼した状態において、上部側燃焼室123と上部側伝火路115との圧力差(すなわち上部側燃焼室123と点火室113や下部側燃焼室133との間の圧力差)に基づいて逆止弁160が駆動されてスライド移動し、上部側伝火路115が閉塞されることになるため、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133とが完全に通じていない状態とすることができる。そのため、逆止弁160が抑制手段として機能することになり、ガス発生器101Fの動作時において、すなわち点火器112によって点火された伝火薬114によってガス発生剤124,134が着火された状態において、上部側燃焼室123に収容されたガス発生剤124の燃焼が下部側燃焼室133に収容されたガス発生剤134の燃焼に影響を及ぼすことが抑制されるようになる。したがって、上部側燃焼室123におけるガス発生剤124の燃焼特性と下部側燃焼室133におけるガス発生剤134の燃焼特性とを相互に実質的に独立させることが可能になるため、それぞれの燃焼室123,133において予定していたガス発生剤124,134の燃焼特性が得られるようになり、それぞれのガス出力部121,131において所望の出力が得られるようになる。
【0098】
なお、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fにおいては、図15に示すように、下部側燃焼室133側にも同様の逆止弁165が設けられた場合を例示して説明を行なったが、この下部側燃焼室133側の逆止弁165は、状況に応じてその設置を省略することが可能である。たとえば、一対のガス出力部における出力を均一化させたくない場合において、上部側燃焼室123における内圧の上昇速度が下部側燃焼室133のそれよりも明らかに大きい場合などは省略可能である。すなわち、下部側燃焼室133におけるガス発生剤134の燃焼が、下部側伝火路116、点火室113および上部側伝火路115を経由して、上部側燃焼室123におけるガス発生剤124の燃焼に影響を及ぼすおそれがない場合(下部側燃焼室133の圧力が上部側燃焼室123の圧力よりも大きくなる状況が有り得ない場合)には、下部側燃焼室133側の逆止弁165を省略することができる。
【0099】
以上において説明したように、一対のガス出力部における出力を均一化させたくない場合に、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器を上述の如くの構成とすることにより、ガス出力を鈍化させることなく、またガス発生器を長大化させることなく、さらには上部側燃焼室および下部側燃焼室におけるガス発生剤の燃焼がそれぞれ他方の燃焼室におけるガス発生剤の燃焼に大きく影響を与えることを確実に防止しつつ、一対のガス出力部における出力特性をそれぞれ相違させることができる。その結果、エアバッグの上部空間および下部空間をそれぞれ所望の展開速度でかつ所望の内圧にて膨張させることができるようになり、安定した性能の得られるサイドエアバッグ装置とすることができる。
【0100】
なお、本実施の形態におけるガスサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fにおいては、点火器112の作動前において、上部側伝火路115および下部側伝火路116が逆止弁160,165によってそれぞれ閉塞された状態となるように構成した場合を例示したが、点火器112の作動前において、逆止弁160,165によって上部側伝火路115および下部側伝火路116が閉塞されない状態としておいてもよい。
【0101】
また、本実施の形態におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器101Fにおいては、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133との間の圧力差に基づいて弁体がスライド移動することにより、逆止弁としての機能が発揮されるように構成された逆止弁160,165を上部側燃焼室123および下部側燃焼室133に設けた場合を例示して説明を行なったが、これとは異なる構成の逆止弁を利用することも可能である。たとえば、上部側燃焼室123と下部側燃焼室133との間の圧力差に基づいて弁体が変形することにより、逆止弁として機能するものを利用することも可能である。その場合にも、点火器112の作動前において、上部側伝火路115および下部側伝火路116が逆止弁によってそれぞれ閉塞された状態となるように構成してもよいし、点火器112の作動前において、逆止弁によって上部側伝火路115および下部側伝火路116が閉塞されない状態としておいてもよい。
【0102】
上述の実施の形態においては、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器として、上部側円筒状部の軸方向長さと下部側円筒状部の軸方向長さとが同一に設定され、これによりそれぞれに設けられる上部側燃焼室のガス発生剤が収容される部分の軸方向長さと下部側燃焼室のガス発生剤が収容される部分の軸方向長さとが同一に構成されたものを例示して説明を行なったが、上部側円筒状部の軸方向長さと下部側円筒状部の軸方向長さとが一致している必要はなく、また上部側燃焼室のガス発生剤が収容される部分の軸方向長さと下部側燃焼室のガス発生剤が収容される部分の軸方向長さとが必ずしも一致している必要もない。これらは、サイドエアバッグ装置の仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0103】
また、上述の実施の形態においては、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器として、燃焼室内にガス発生剤とフィルタ部材とが配置されたものを例示して説明を行なったが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば仕切り板をガス発生剤とフィルタ部材との間に配置し、ガス発生剤が収容される燃焼室とフィルタ部材が収容されるフィルタ室とを別室にて構成してもよい。その場合には、フィルタ部材を中空円筒状とし、フィルタ室を規定する円筒状部材の周壁にガス噴出口を設けることによってフィルタ室と分配室を単一の室にて構成してもよい。
【0104】
また、上述の実施の形態においては、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器として、点火室に点火器と伝火薬とが別々に収容された構成のガス発生器を例示して説明を行なったが、点火器の内部に点火薬とともに伝火薬をも充填する構成を採用することもできる。
【0105】
また、上述の実施の形態においては、サイドエアバッグ装置に搭載されるガス発生器として、上部側円筒状部と下部側円筒状部とを連結するベース部が上部側円筒状部および下部側円筒状部よりも外形の大きい略円筒状の部材にて構成された場合を例示して説明を行なったが、このベース部の形状は特に限定されるものではなく、種々の形状に変更することが可能である。サイドエアバッグ装置のシートへの収容性を考慮した場合には、軸方向と交差する断面におけるベース部の外形が、軸方向と交差する断面における下部側円筒状部の外形と同等程度の大きさとすることが好ましいが、このベース部には点火器が配置されるため、軸方向と交差する断面におけるベース部の外形が、多少、軸方向と交差する断面における下部側円筒状部の外形よりも大きくなることは許容される。その場合にも、ベース部の形状をシートの上方に向かって先細形状にしたり、ベース部に段差部をもたせてシートの上方側においてベース部の外形が細くなるようにしたりすれば、なお好適である。
【0106】
また、上述の実施の形態におけるサイドエアバッグ装置においては、エアバッグがシームによって上部区間と下部空間の2室に区画された場合のものを例示して説明を行なったが、これら上部空間と下部空間とを別々のエアバッグにて構成することも当然に可能である。また、単一のエアバッグをシーム等によって3室や4室にさらに区画することも可能ではあるが、その場合にも、少なくともガス発生器の上部側ガス噴出口から噴出されたガスが導入されて展開する空間と、ガス発生器の下部側ガス噴出口から噴出されたガスが導入されて展開する空間との2室は必ず必要である。
【0107】
また、上述の実施の形態においては、自動車の右側前席に適用されたサイドエアバッグ装置を例示して説明を行なったが、左側前席や後席に搭載されるサイドエアバッグ装置に本発明を適用することも当然に可能である。
【0108】
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置の展開後における側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置の展開後における縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置が組み込まれたシートの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造を説明するための図であり、図5中に示すV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造を説明するための断面図であり、(A)は、図5に示すVIA−VIA線に沿った断面図、(B)は、図5に示すVIB−VIB線に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造の第1変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造の第2変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造の第3変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のシートフレームへの組付構造の第4変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1におけるサイドエアバッグ装置のエアバッグの変形例を示す側断面図である。
【図12】(A)は、本発明の実施の形態2におけるサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の内部構造を示す断面図であり、(B)は、(A)中に示すXIIB−XIIB線に沿った断面図、(C)は、(A)中に示すXIIC−XIIC線に沿った断面図である。
【図13】(A)は、本発明の実施の形態2におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の変形例を示す断面図であり、(B)は、(A)中に示すXIIIB−XIIIB線に沿った断面図、(C)は、(A)中に示すXIIIC−XIIIC線に沿った断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の内部構造を示す断面図であり、(B)は、(A)中に示すXIVB−XIVB線に沿った断面図、(C)は、(A)中に示すXIVC−XIVC線に沿った断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4におけるサイドエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の内部構造を示す断面図であり、(B)は、(A)中に示すXVB−XVB線に沿った断面図、(C)は、(A)中に示すXVC−XVC線に沿った断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4におけるサイドエアバッグ装置のガス発生器の逆止弁の動作を説明するための図であり、(A)は、点火室内の伝火薬の燃焼が始まった段階を模式的に示す拡大断面図であり、(B)は、上部側燃焼室内のガス発生剤の燃焼が始まった段階を模式的に示す拡大断面図である。
【図17】従来例1におけるガス発生器の断面図である。
【図18】従来例2におけるガス発生器の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
10 シート、11 ヘッドレスト、12 背もたれ部、13 腰掛け部、14 シートフレーム、14A 突設部、14B 凹部、15 車両の側部、20A〜20F サイドエアバッグ装置、21 エアバッグ、22 上部空間、23 下部空間、25 シーム、40 リテーナ、41 重ね合わせ部、42,43,44 カバー部、45,46 噴出窓、47,48,49 かしめ部、47a,49a 突起部、47b,49b 当接部、51,52 スペーサ、55 ボルト、56 ナット、60 コネクタ、101A〜101F ガス発生器、110 ベース部、111 支持部材、112 点火器、113 点火室、114 伝火薬、115 上部側伝火路、115b 開口面、116 下部側伝火路、116b 開口面、117,118,119 シール部材、120 上部側円筒状部、120a 溝、120c 母線、121 ガス出力部、122 上部側ガス噴出口、123 上部側燃焼室、124 ガス発生剤、125 フィルタ部材、126 仕切り板、127 連通孔、128 クッション材、129 シール部材、130 下部側円筒状部、130a 溝、130c 母線、131 ガス出力部、132 下部側ガス噴出口、133 下部側燃焼室、134 ガス発生剤、135 フィルタ部材、136 仕切り板、137 連通孔、138 クッション剤、139 シール部材、141,142 閉塞部材、150 隔壁、160,165 逆止弁、161,166 突部、162,167 貫通孔、P 乗員、Pc 胸部、Ph 腰部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの背もたれ部に埋設されたシートフレームの側面に取付けられ、ガスを発生させて噴出するガス発生器と、
前記ガス発生器から噴出されたガスが導入されて展開する上部空間および下部空間を含むエアバッグとを備え、
前記シートに着座した乗員と車両の側部との間に前記エアバッグを展開するサイドエアバッグ装置であって、
前記ガス発生器は、
前記シートの上方に向かって延びる上部側筒状部および前記シートの下方に向かって延びる下部側筒状部を含むハウジングと、
前記ハウジングの前記上部側筒状部と前記下部側筒状部との間に配置された点火器と、
前記上部側筒状部に設けられ、ガス発生剤が収容されるとともに前記点火器に通ずる上部側燃焼室と、
前記下部側筒状部に設けられ、ガス発生剤が収容されるとともに前記点火器に通ずる下部側燃焼室と、
前記上部側筒状部に設けられ、前記上部側燃焼室にて発生したガスを前記上部空間に導入する上部側ガス噴出口と、
前記下部側筒状部に設けられ、前記下部側燃焼室にて発生したガスを前記下部空間に導入する下部側ガス噴出口とを含み、
前記上部側筒状部が前記下部側筒状部よりも実質的に細く構成されている、サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記上部側燃焼室の容積が前記下部側燃焼室の容積よりも小さく、これにより前記上部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量が、前記下部側燃焼室に収容されるガス発生剤の充填量よりも少ない、請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記上部空間は、乗員の胸部を保護する部位であり、
前記下部空間は、乗員の腰部を保護する部位である、請求項1または2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグの展開時において、前記上部空間の内圧が前記下部空間の内圧よりも小さい、請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記上部側筒状部の中心軸が前記下部側筒状部の中心軸よりも前記シートフレーム側に配置されるように、前記上部側筒状部が前記下部側筒状部に対してオフセット配置されている、請求項1から4のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記上部側筒状部と前記下部側筒状部とを連結し、伝火薬と前記点火器とを収容する点火室を含むベース部をさらに有し、
前記点火室と前記上部側燃焼室とは、前記ハウジングに設けられた上部側伝火路によって通じ、
前記点火室と前記下部側燃焼室とは、前記ハウジングに設けられた下部側伝火路によって通じ、
前記点火器によって点火された前記伝火薬によって前記ガス発生剤が着火されて燃焼する際に、前記上部側燃焼室に収容された前記ガス発生剤の燃焼が、前記上部側伝火路、前記点火室および前記下部側伝火路を経由して、前記下部側燃焼室に収容された前記ガス発生剤の燃焼に影響を及ぼすことを抑制する抑制手段をさらに備えた、請求項1から5のいずれかに記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記抑制手段には、前記上部側伝火路の中心線と前記下部側伝火路の中心線とが同一直線上に重ならないように、前記上部側伝火路と前記下部側伝火路とをずらして配置したことを含む、請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記抑制手段が、前記点火室の壁面に設けられた前記上部側伝火路の開口面と前記点火室の壁面に設けられた前記下部側伝火路の開口面との間に設けられた隔壁を有する、請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記抑制手段が、前記上部側伝火路を閉塞することが可能な位置に配設され、前記上部側燃焼室と前記下部側燃焼室との圧力差に基づいて駆動される逆止弁を有する、請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−98991(P2007−98991A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288264(P2005−288264)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】