説明

サスペンションタワー構造

【課題】ストラットハウジングの変形を抑制するサスペンションタワー構造を提供する。
【解決手段】サイドメンバ11と、フードリッジ12とを連結し上部取付板17にショックアブソーバ上端部が取り付けられたストラットハウジング13と、サスペンションのアッパーリンクブラケット19とを備えたサスペンションタワー構造であって、アッパーリンクブラケット19が上部取付板17よりも下方位置に配置され、ストラットハウジング13には、アッパーリンクブラケット19を覆う部分の外壁上面に、外壁側面に向かって斜め下方に延びて第1の稜線21を有する傾斜面15Dが設けられ、第1の稜線21の一端は、上部取付板17への取付点Pを通る仮想直線Lに接続され、ストラットハウジングの上部壁15Bには、第1の稜線21の一端と仮想直線Lとの接続点P1からフードリッジ12まで第2の稜線23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスペンションタワー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボンネット型の自動車においては、車体前部に車体前後方向に沿ってサイドメンバが設けられ、このサイドメンバよりも車幅方向外側で且つサイドメンバよりも上方位置に、フロントピラーの基部から車体前方に向かって延設されたフードリッジが配置されている。
【0003】
このような自動車の車体前部構造において、サイドメンバとフードリッジとの間にはストラットハウジングが配設され、このストラットハウジングの中央に設けられた上部取付面に下方からサスペンションのショックアブソーバの上端部が取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上記車体前部構造においては、車体前後方向に沿ってショックアブソーバの前方及び後方の2箇所に、サスペンションのアッパーリンクを支持するとともに、サイドメンバとフードリッジとを連結するアッパーリンクブラケットが設けられている。これらアッパーリンクブラケットはストラットハウジングに覆われ、ボンネットを開けただけでは上方から確認することはできない位置に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−26138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、アッパーリンクブラケットの高さ位置が、ストラットハウジングの外壁上面と略同じであるため、ショックアブソーバに大きな力が作用したときに、ストラットハウジングが変形しやすいという問題がある。
【0007】
すなわち、上記従来の構成では、アッパーリンクブラケットの上面の位置が、ショックアブソーバの上端部が取り付けられるストラットハウジングの上部取付面と略同一の高さとなっており、ストラットハウジングの外壁上面はアッパーリンクブラケットを超えた所で下方へ向かって折り曲げられ、この折り曲げられた部分が外壁側面を形成している。しかし、このような構成であると、路面の凹凸によってショックアブソーバに上方向の大きな力が加わったとき、ストラットハウジングの外壁上面には前記折り曲げ部を中心にして上方向のモーメントが作用し、ストラットハウジング中央の上部取付面が上方へ変位しやすくなる。その結果、ショックアブソーバのストローク動作が減殺され、ショックアブソーバが十分な減衰力を発揮しにくくなって、乗心地に問題が生じる。
【0008】
本発明の課題は、ストラットハウジングの変形を小さく抑えることのできるサスペンションタワー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のサスペンションタワー構造は、車体の左右に車体前後方向に沿って設けられたサイドメンバと、前記サイドメンバよりも車幅方向外側で且つ該サイドメンバよりも上方に配置され、フロントピラーの基部から車体前方に向かって延設されたフードリッジと、前記サイドメンバと前記フードリッジとを連結するとともに、中央の上部取付面に下方からサスペンションのショックアブソーバ上端部が取り付けられたストラットハウジングと、車体前後方向に沿って前記ショックアブソーバの前方及び後方に設けられ、前記サスペンションのアッパーリンクを支持するアッパーリンクブラケットとを備えている。
【0010】
そして、本発明のサスペンションタワー構造は、上記構成において、前記アッパーリンクブラケットが、前記ストラットハウジングの前記上部取付面よりも下方位置に配置され、前記ストラットハウジングには、その外壁面のうち前記アッパーリンクブラケットを覆う部分の外壁上面に、外壁側面に向かって斜め下方に傾斜面が設けられ、その傾斜面には第1の稜線が形成され、前記第1の稜線の一端は、前記ショックアブソーバ上端部の前記上部取付面への取付点を通り且つ車体前後方向に沿った仮想直線に接続され、さらに、前記ストラットハウジングの外壁上面には、前記第1の稜線の一端と前記仮想直線との接続点から前記フードリッジまで第2の稜線が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ストラットハウジングの外壁正面にショックアブソーバから上方向の大きな力が加わったとき、その力を、第1の稜線に沿って分散させつつストラットハウジングの外壁側面の方向へ伝達するとともに、第2の稜線に沿って分散させつつフードリッジの方向へ伝達することができる。その結果、ストラットハウジングの変形を小さく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1によるサスペンションタワー構造を示す斜視図である。
【図2】図1のSA−SA線に沿った断面図である。
【図3】実施例2によるサスペンションタワー構造を示す斜視図である。
【図4】実施例3によるサスペンションタワー構造を示す斜視図である。
【図5】図4のSB−SB線に沿った概略形状を示す断面図である。
【図6】図4のサスペンションタワー構造において、ストラットハウジングの車両前後軸回りの剛性の変化を説明した図である。
【図7】実施例4によるサスペンションタワー構造の概略平面図である。
【図8】図7のサスペンションタワー構造において、ストラットハウジングの車両前後軸回りの剛性の変化を説明した図である。
【図9】実施例5によるサスペンションタワー構造を示す斜視図である。
【図10】図9に示したサスペンションタワー構造の概略平面図である。実施例6によるサスペンションタワー構造の概略平面図である。
【図11】実施例6によるサスペンションタワー構造を示す斜視図である。
【図12】実施例7によるサスペンションタワー構造の断面図である。
【図13】実施例8によるサスペンションタワー構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0014】
《実施例1》
図1及び図2は実施例1を示しており、図1はサスペンションタワー構造を示す斜視図、図2は図1のSA−SA線に沿った断面図である。図1において、左側上方は車体後部側であり、右側下方は車体前部側である。また、図1では車体前部左側に配設されたサスペンションタワー構造を示しており、車体前部右側に配設されるサスペンションタワー構造も同様な構成となっている。
【0015】
本実施例によるサスペンションタワー構造には、図1に示すように、車体の左右に車体前後方向に沿って設けられたサイドメンバ11と、サイドメンバ11よりも車幅方向外側で且つサイドメンバ11よりも上方に配置され、フロントピラー(図示省略)の基部から車体前方に向かって延設されたフードリッジ12とを備えている。なお、フロントピラーは、図1においては左側に配置されている。
【0016】
サイドメンバ11及びフードリッジ12は縦断面が矩形状を成し、且つ内部が中空状に形成されている。これらサイドメンバ11とフードリッジ12とはストラットハウジング13で互いに連結されている。
【0017】
ストラットハウジング13は、車体前後方向に沿って中央にハウジング本体14が設けられ、このハウジング本体14の前方に前部ハウジング部材15が、後方に後部ハウジング部材16がそれぞれ設けられている。また、ストラットハウジング13は、ハウジング本体14、前部ハウジング部材15及び後部ハウジング部材16がアルミ軽合金の鋳物で一体的に形成されている。
【0018】
ハウジング本体14は、矢印A方向から見たとき全体が略逆L字状を成している。またハウジング本体14は、車体前後方向に沿った断面形状(つまり、車体前後方向の平面で切断したときの断面形状)がコ字状を成し、そのコ字状の開放端は、サイドメンバ11に近い部分では車幅方向外側に向かって配置され、フードリッジ12に近い部分では下方に向かって配置されている。これにより、ハウジング本体14には、サイドメンバ11に近い部分に縦壁14Aが、フードリッジ12に近い部分に上部壁14Bがそれぞれ形成されている。
【0019】
前部ハウジング部材15及び後部ハウジング部材16も、ハウジング本体14と同様に、矢印A方向から見たとき全体が略逆L字状を成している。前部ハウジング部材15及び後部ハウジング部材16には、サイドメンバ11に近い部分に縦壁15A,16Aがそれぞれ形成され、フードリッジ12に近い部分に上部壁15B,16Bがそれぞれ形成されている。そして、前部ハウジング部材15の縦壁15Aの後部及び上部壁15Bの後部は、ハウジング本体14の縦壁14Aの前部及び上部壁14Bの前部にそれぞれ接合されている。また、後部ハウジング部材16の縦壁16Aの前部及び上部壁16Bの前部は、ハウジング本体14の縦壁14Aの後部及び上部壁14Bの後部にそれぞれ接合されている。
【0020】
また、ハウジング本体14の上部壁14Bには、車体前後方向において中央で且つ車幅方向において車体中央寄りで、サイドメンバ11の略上方の位置に上部取付板17が設けられている。上部取付板17は、下側から支持板18(図2参照)によって支持されている。上部取付板17及び支持板18の中央部には、下方からサスペンションのショックアブソーバ(図示省略)の上端部が取り付けられる。なお、ここでは、上部取付板17の上面は上部取付面を構成している。
【0021】
さらに、車体前後方向に沿って前記ショックアブソーバの前方及び後方には、図1及び図2に示すように、サスペンションのアッパーリンク(図示省略)を支持するアッパーリンクブラケット19,20がそれぞれ配設されている。すなわち、ショックアブソーバが設けられたハウジング本体14の前方に位置する前部ハウジング部材15の内部にはアッパーリンクブラケット19が配設され、このアッパーリンクブラケット19は前部ハウジング部材15の縦壁15A及び上部壁15Bで覆われた格好となっている。また、ハウジング本体14の後方に位置する後部ハウジング部材16の内部にはアッパーリンクブラケット20が配設され、このアッパーリンクブラケット20は後部ハウジング部材16の縦壁16A及び上部壁16Bで覆われた格好となっている。
【0022】
本実施例では、アッパーリンクブラケット19,20が、ハウジング本体14の上部取付面よりも下方位置に配置されている。すなわち、アッパーリンクブラケット19,20は、それらの上面がハウジング本体14の上部取付板17の上面よりも下方位置となるよう配置されている。
【0023】
前部ハウジング部材15の上部壁15Bには、その一部(車体前後方向の前部側)に外壁側面15Cに向かって斜め下方に傾斜面15Dが設けられている。傾斜面15Dには、車体前後方向に沿って直線状に、且つ上に凸状(山折り)に折り曲げられた箇所が設けられ、当該箇所が第1の稜線21を形成している。図1においては、第1の稜線21は太線で示されている。また、後部ハウジング部材16の上部壁16Bには、その一部(車体前後方向の後部側)に外壁側面16Cに向かって斜め下方に傾斜面16Dが設けられている。傾斜面16Dには、車体前後方向に沿って直線状に、且つ上に凸状(山折り)に折り曲げられた箇所が設けられ、当該箇所が第1の稜線22(図2参照)を形成している。
【0024】
第1の稜線21の一端(車体前後方向の後端)は、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点Pを通り且つ車体前後方向に沿った仮想直線Lに接続されている。また、第1の稜線22の一端(車体前後方向の前端)も、同様に仮想直線Lに接続されている。
【0025】
また、本実施例では、図1に示すように、前部ハウジング部材15の上部壁15Bには、第1の稜線21の一端(車体前後方向の後端)と仮想直線Lとの接続点P1からフードリッジ12まで第2の稜線23が形成されている。この第2の稜線23は傾斜面15Dの上部に配置されている。また、後部ハウジング部材16の上部壁16Bにも、第1の稜線22の一端(車体前後方向の前端)と仮想直線Lとの接続点P2からフードリッジ12まで第2の稜線24が形成されている。この第2の稜線24は傾斜面16Dの上部に配置されている。なお、図1では第2の稜線23,24は太線で示されている。
【0026】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0027】
本実施例においては、従来のサスペンションタワー構造に比べて、第1の稜線21と仮想直線Lとの接続点P1、及び第1の稜線22と仮想直線Lとの接続点P2が、ストラットハウジング13の中心軸(つまり、ショックアブソーバ)に近い位置に配置されている。
【0028】
これにより、例えば車両走行時にショックアブソーバに大きな力が加わって、ハウジング本体14の上部取付板17及び支持板18にショックアブソーバから入力F1があったとき、接続点P1には上向きの力F2が、接続点P2には上向きの力F2’がそれぞれ作用する。
【0029】
ストラットハウジング13の中心軸に対する前部ハウジング部材15の傾斜面15Dの傾斜角度をθとしたとき、前記力F2を、傾斜面15Dに沿った力F2・cosθと、傾斜面15Dに垂直な力F2・sinθとに分けて考えることができる。同様に、ストラットハウジング13の中心軸に対する後部ハウジング部材16の傾斜面16Dの傾斜角度をθとしたとき、前記力F2’を、傾斜面16Dに沿った力F2’・cosθと、傾斜面16Dに垂直な力F2’・sinθとに分けて考えることができる。
【0030】
そして、傾斜面15Dには、F2・cosθの反力として力F3(=F2・cosθ)が作用し、同様に傾斜面16Dには、F2’・cosθの反力として力F3’(=F2’・cosθ)が作用する。傾斜面15Dには第1の稜線21が形成されており、力F3は稜線21に沿って伝達されて分散される。また、傾斜面16Dには第1の稜線22が形成されており、力F3’は稜線22に沿って伝達されて分散される。その結果、接続点P1,P2周りに生じるモーメントM,M’をそれぞれ低減することができる。
【0031】
また、前部ハウジング部材15の上部壁15Bには、第1の稜線21の一端と仮想直線Lとの接続点P1からフードリッジ12まで第2の稜線23が形成され、同様に、後部ハウジング部材16の上部壁16Bにも、第1の稜線22の一端と仮想直線Lとの接続点P2からフードリッジ12まで第2の稜線24が形成されているので、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点P周りに発生するモーメントM1を、第2の稜線23,24で受け止めることができる。そのため、ショックアブソーバから上部取付板17に作用する力を効率的に分散することが可能であり、上部取付板17の面外方向(面に垂直な方向)への変位、つまりストラットハウジング13の変形を抑制することができる。これにより、ショックアブソーバそのものの減衰特性をより効果的に引き出すことが可能となるため、車両の乗心地が良くなる。
【0032】
さらに、図示しないアッパーリンクからアッパーリンクブラケット19に、車幅方向内側への力F4が入力された場合でも、前記力F4の反力が第2の稜線23を介してフードリッジ12へ効率的に伝達されるので、サスペンションの取付点剛性が向上する。また、前記力F4がアッパーリンクブラケット20に入力された場合も、力F4の反力が第2の稜線24を介してフードリッジ12へ効率的に伝達されるため、同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上のことから、本実施例においては、サスペンションからのロードノイズなどの振動の伝達も抑制でき、車両の静粛性が向上することになる。
【0034】
また、本実施例によれば、ハウジング本体14、前部ハウジング部材15及び後部ハウジング部材16からなるストラットハウジング13がアルミ軽合金の鋳物で一体的に形成されているので、ショックアブソーバからの入力F1による荷重の分散をより効果的に行うことができる。さらに、部品を一体化することによる局所的な共振を抑制することが可能となるため、ショックアブソーバ取付点の剛性向上と、大幅な軽量化の両立が可能となる。
【0035】
《実施例2》
本実施例では、図3に示すように、ストラットハウジング13の外壁面のうち車幅方向内側の外壁面(ハウジング本体14の縦壁14A上部)に第3の稜線25が形成されている。図3では第3の稜線25は太線で示されている。この第3の稜線25は、ストラットハウジング13の前部における仮想直線Lと第1の稜線21との接続点P1と、ストラットハウジング13の後部における仮想直線Lと第1の稜線22との接続点P2とを互いに接続するとともに、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点Pを迂回するように配置されている。他の構成は実施例1の場合と同様である。
【0036】
本実施例においては、図2に示すように、接続点P1における力F2の分力F2・sinθのベクトルは、第1の稜線21の面外方向(傾斜面15Dに対する法線方向)への変形を誘発するような入力となる。また、接続点P2における力F2’の分力F2’・sinθのベクトルは、第1の稜線22の面外方向(傾斜面16Dに対する法線方向)への変形を誘発するような入力となる。ところが、分力F2・sinθと分力F2’・sinθは、それらの各水平成分が車両前後方向において互いに逆向きであるから、接続点P1とP2とを繋ぐ第3の稜線25により、これら分力F2・sinθ及び分力F2’・sinθの前後方向成分をキャンセルすることができる。その結果、第1の稜線21,22の面外方向の変形、つまりストラットハウジング13の変形を抑制することができ、ショックアブソーバ取付点の剛性をより一層向上させることが可能となる。
【0037】
《実施例3》
図4は実施例3を示している。また図5は、図4のSB−SB線に沿った概略形状を示す断面図である。
【0038】
本実施例では、図4及び図5に示すように、ストラットハウジング13の外壁面のうちアッパーリンクブラケット19を覆う部分の外壁上面、つまり前部ハウジング部材15の上部壁15Bに、第1の稜線21の他端(車体前後方向前部側)P3から、第2の稜線23とフードリッジ12との接続点P4まで第4の稜線26が形成されている。図4では第4の稜線26は太線で示されている。また同様に、後部ハウジング部材16の上部壁16Bにも、第1の稜線22の他端(車体前後方向後部側)P5から、第2の稜線24とフードリッジ12との接続点P6まで第4の稜線27が形成されている(第1の稜線22の他端P5や第4の稜線27については図7参照)。
【0039】
そして、本実施例では、前部ハウジング部材15の上部壁15Bに、第1の稜線21、第2の稜線23及び第4の稜線26によって画成された部分に三角形状の平面28が形成されている。後部ハウジング部材16の上部壁16Bにも、同様に、第1の稜線22、第2の稜線24及び第4の稜線27によって画成された部分に三角形状の平面29(図7参照)が形成されている。他の構成は実施例2の場合と同様である。
【0040】
本実施例においては、三角形状の平面28,29が形成されているので、図6に示すように、ストラットハウジング13の車両前後方向での軸回りの剛性を、接続点P1(又はP2)から接続点P4(又はP6)にかけて順次高めることができ、これにより、上部取付板17に発生するモーメントM1によるストラットハウジング13の変位を抑制することができる。その結果、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点P付近の剛性を効率的に向上させることが可能となる。
【0041】
《実施例4》
図7は実施例4を示している。本実施例では、図7に示すように、前部ハウジング部材15に形成された第2の稜線23及び第4の稜線26のフードリッジ12との接続点P4が矢印B1のようにより車体前方側へ、後部ハウジング部材16に形成された第2の稜線24及び第4の稜線27のフードリッジ12との接続点P6が矢印B2のようにより車体後方側へ配置され、両接続点P4,P6は互いに離れる方向に配置されている。他の構成は実施例3の場合と同様である。
【0042】
本実施例においては、ストラットハウジング13の車両前後方向での軸回りの剛性を、図8に実線で示すように、接続点P1(又はP2)から接続点P4(又はP6)にかけて矢印Cで示すように更に高めることができ、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点Pの剛性をより効率的に向上させることが可能となる。なお、図8において、破線は、両接続点P4,P6が互いに接近した位置P4’,P6’(図7参照)に配置された場合の例を示している。
【0043】
《実施例5》
図9及び図10は実施例5を示している。本実施例では、図9及び図10に示すように、前部ハウジング部材15の上部壁15Bには、第1の稜線21より車幅方向内側の位置に第1の稜線21に平行に第5の稜線30が形成されている。そして、第1の稜線21の一端(接続点P1)と第5の稜線30の一端(車体前後方向後部側)P7とは第6の稜線31で、第1の稜線21の他端P3と第5の稜線30の他端(車体前後方向前部側)P8とは第7の稜線32でそれぞれ接続されている。なお、図9では、第5の稜線30、第6の稜線31及び第7の稜線32は太線で示されている。
【0044】
後部ハウジング部材16の上部壁16Bには、第1の稜線22より車幅方向内側の位置に第1の稜線22に平行に第5の稜線33が形成されている。そして、第1の稜線22の一端(接続点P2)と第5の稜線33の一端(車体前後方向前部側)P9とは第6の稜線34で、第1の稜線22の他端P5と第5の稜線33の他端(車体前後方向後部側)P10とは第7の稜線35でそれぞれ接続されている。なお、図9では、第5の稜線33、第6の稜線34及び第7の稜線35は太線で示されている。
【0045】
また、本実施例では、第1の稜線21、第5の稜線30、第6の稜線31及び第7の稜線32によって画成された部分に矩形状の平面36が形成されている。同様に、第1の稜線22、第5の稜線33、第6の稜線34及び第7の稜線35によって画成された部分に矩形状の平面37が形成されている。他の構成は実施例4の場合と同様である。
【0046】
本実施例においては、力F3(図2参照)の平面36へ伝達効率及び力F3’(図2参照)の平面37へ伝達効率がそれぞれ向上するとともに、ショックアブソーバ上端部の上部取付板17への取付点P周りに発生するモーメントM1(図1参照)に対しても荷重伝達効率が向上する。その結果、ショックアブソーバ取付点付近の剛性をより向上させることが可能となる。
【0047】
《実施例6》
図11は実施例6を示している。本実施例では、図11に示すように、前部ハウジング部材15の縦壁15Aに、第5の稜線30の一端P7及び他端P8からサイドメンバ11まで第8の稜線38及び第9の稜線39がそれぞれ形成されている。同様に、後部ハウジング部材16の縦壁16Aに、第5の稜線33の一端P9及び他端P10(P9及びP10については図10参照)からサイドメンバ11まで第8の稜線40及び第9の稜線41がそれぞれ形成されている。ここで、第8の稜線38及び第9の稜線39の他端は、サイドメンバ11上の接続点P11において互いに接続されている。同様に、第8の稜線40及び第9の稜線41の他端も、サイドメンバ11上の接続点P12において互いに接続されている。他の構成は実施例5の場合と同様である。なお、図11では、第8の稜線38,40及び第9の稜線39,41は太線で示されている。
【0048】
本実施例においては、平面36に伝えられた力F3(図2参照)が第8の稜線38及び第9の稜線39を介してサイドメンバ11に、平面37に伝えられた力F3’(図2参照)が第8の稜線40及び第9の稜線41を介してサイドメンバ11にそれぞれ伝達されるため、ショックアブソーバ取付点付近の剛性をより一層向上させることが可能となる。
【0049】
《実施例7》
図12は実施例7を示しており、ストラットハウジング13を車体前後方向の垂直面で切断したときの様子を示す図である。本実施例では、図12に示すように、前部ハウジング部材15の上部壁15Bに形成された三角形状の平面28(第1の稜線21、第2の稜線23及び第4の稜線26で画成された部分)の裏面に、複数のリブ42が設けられている。複数のリブ42は、第2の稜線23及び第4の稜線26に沿って配置されている。
【0050】
同様に、後部ハウジング部材16の上部壁16Bに形成された三角形状の平面29(第1の稜線22、第2の稜線24及び第4の稜線27で画成された部分)の裏面に、複数のリブ43が設けられている。複数のリブ43は、第2の稜線24及び第4の稜線27に沿って配置されている。
【0051】
本実施例においては、力F3(図2参照)を第2の稜線23及び第4の稜線26を介してフードリッジ12側へ伝達する際に、当該力F3を複数のリブ42によって効果的に分散させることができる。同様に、力F3’(図2参照)を第2の稜線24及び第4の稜線27を介してフードリッジ12側へ伝達する際に、当該力F3’を複数のリブ43によって効果的に分散させることができる。その結果、ショックアブソーバ取付点付近の面外方向への剛性の向上を図ることが可能となる。
【0052】
《実施例8》
図13は実施例8を示しており、ストラットハウジング13を車体前後方向の垂直面で切断したときの様子を示す図である。
【0053】
本実施例では、三角形状の平面28(図12参照)の代わりに、当該部分に下に凸状に折り曲げられた外壁面44が形成され、その外壁面44のうち折り曲げられた部分を第10の稜線45とするとともに、第2の稜線23’、第4の稜線26’及び第10の稜線45で画成された空間部に三角形状のリブ47が複数個設けられている。リブ47は、第2の稜線23’、第4の稜線26’及び第10の稜線45に沿って複数配置されている。
【0054】
同様に、三角形状の平面29(図12参照)の代わりに、当該部分に下に凸状に折り曲げられた外壁面(左右対称形状ではあるが、外壁面44と同様の形状であり図示省略)が形成され、その外壁面のうち折り曲げられた部分を第10の稜線(左右対称形状ではあるが、第10の稜線45と同様の形状であり図示省略)とするとともに、第2の稜線24’、第4の稜線27’及び前記第10の稜線で画成された空間部に三角形状のリブ48が複数個設けられている。リブ48は、第2の稜線24’、第4の稜線27’及び前記第10の稜線に沿って複数配置されている。
【0055】
本実施例においては、力F3(図2参照)を、第2の稜線23’、第4の稜線26’及び第10の稜線45を介して効率よくフードリッジ12側へ伝達することができる。またその際に、当該力F3を複数のリブ47によって効果的に分散させることができる。同様に、力F3’(図2参照)を、第2の稜線24’、第4の稜線27’及び図示しない前記第10の稜線を介して効率よくフードリッジ12側へ伝達することができる。またその際に、当該力F3’を複数のリブ48によって効果的に分散させることができる。
【0056】
したがって、本実施例の場合も、ショックアブソーバ取付点付近の面外方向への剛性の向上を図ることが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0058】
例えば、実施例1〜実施例6を組み合わせたサスペンションタワー構造や、実施例1〜実施例6を組み合わせたものに更に実施例7を追加したサスペンションタワー構造や、実施例1〜実施例6を組み合わせたものに更に実施例8を追加したサスペンションタワー構造であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 サイドメンバ
12 フードリッジ
13 ストラットハウジング
17 上部取付板
19,20 アッパーリンクブラケット
21,22 第1の稜線
23,24 第2の稜線
25 第3の稜線
26,27 第4の稜線
28,29 三角形状の平面
30,33 第5の稜線
31,34 第6の稜線
32,35 第7の稜線
36,37 矩形状の平面
38,40 第8の稜線
39,41 第9の稜線
42,43 リブ
45 第10の稜線
47,48 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右に車体前後方向に沿って設けられたサイドメンバと、
前記サイドメンバよりも車幅方向外側で且つ該サイドメンバよりも上方に配置され、フロントピラーの基部から車体前方に向かって延設されたフードリッジと、
前記サイドメンバと前記フードリッジとを連結するとともに、中央の上部取付面に下方からサスペンションのショックアブソーバ上端部が取り付けられたストラットハウジングと、
車体前後方向に沿って前記ショックアブソーバの前方及び後方に設けられ、前記サスペンションのアッパーリンクを支持するアッパーリンクブラケットとを備えたサスペンションタワー構造であって、
前記アッパーリンクブラケットが、前記ストラットハウジングの前記上部取付面よりも下方位置に配置され、前記ストラットハウジングには、その外壁面のうち前記アッパーリンクブラケットを覆う部分の外壁上面に、外壁側面に向かって斜め下方に傾斜面が設けられ、その傾斜面には第1の稜線が形成され、
前記第1の稜線の一端は、前記ショックアブソーバ上端部の前記上部取付面への取付点を通り且つ車体前後方向に沿った仮想直線に接続され、
さらに、前記ストラットハウジングの外壁上面には、前記第1の稜線の一端と前記仮想直線との接続点から前記フードリッジまで第2の稜線が形成されていることを特徴とするサスペンションタワー構造。
【請求項2】
前記ストラットハウジングの外壁面のうち車幅方向内側の外壁面には、該ストラットハウジングの前部及び後部における前記仮想直線と前記第1の稜線の一端との接続点同士を互いに接続し、且つ前記ショックアブソーバ上端部の前記上部取付面への取付点を迂回する第3の稜線が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項3】
前記ストラットハウジングの外壁面のうち前記アッパーリンクブラケットを覆う部分の外壁上面には、前記第1の稜線の他端から前記第2の稜線と前記フードリッジとの接続点まで第4の稜線が形成され、
前記第1の稜線、前記第2の稜線及び前記第4の稜線によって画成された部分に三角形状の平面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項4】
前記第2の稜線及び前記第4の稜線の前記フードリッジとの接続点は、前記ストラットハウジングよりも前方側では車体前部側に、前記ストラットハウジングよりも後方側では車体後部側にそれぞれ設けられ、互いに離れる方向に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項5】
前記ストラットハウジングの外壁面には、前記第1の稜線より車幅方向内側の位置に当該第1の稜線に平行に第5の稜線が形成され、
前記第1の稜線の一端と前記第5の稜線の一端とは第6の稜線で、前記第1の稜線の他端と前記第5の稜線の他端とは第7の稜線でそれぞれ接続され、
前記第1の稜線、前記第5の稜線、第6の稜線及び前記第7の稜線によって画成された部分に矩形状の平面が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項6】
前記ストラットハウジングの外壁面には、前記第5の稜線の一端及び他端から前記サイドメンバまで第8の稜線及び第9の稜線がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項7】
前記ストラットハウジングの外壁面のうち前記三角形状の平面部分の裏面には、複数のリブが設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項8】
前記三角形状の外壁面の代わりに、当該部分に下に凸状に折り曲げられた外壁面が形成され、その折り曲げられた部分を第10の稜線とするとともに、前記第2の稜線、前記第4の稜線及び前記第10の稜線で画成された空間部に三角形状の複数のリブが設けられていることを特徴とする請求項7に記載のサスペンションタワー構造。
【請求項9】
前記ストラットハウジングはアルミ軽合金の鋳物で一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のサスペンションタワー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−5882(P2011−5882A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148224(P2009−148224)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】