説明

サスペンションメンバ締結構造

【課題】 サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を容易にする。
【解決手段】 サスペンションメンバ締結構造10では、車両の前面衝突時に、サスペンションメンバ26が車両後側へ変位される。ここで、カラー42の車両後側がサスペンションメンバ26の上壁26Aに結合されていないため、サスペンションメンバ26の車両後側への変位による後締結部36の車両後側への回動が容易になる。さらに、サスペンションメンバ26が前傾斜面46にてサブサイドメンバ16の後傾斜面18に案内されて下側への変位を促進される。このため、サブサイドメンバ16及びリンフォース20からの後締結部36の離脱を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションメンバと車体側とを締結するサスペンションメンバ締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションメンバ締結構造としては、サスペンションクロスメンバの前端部に設けられた連結アームがフロントフレームに前方側締結部によって締結されると共に、サスペンションクロスメンバの後端部がフロントフレームに後方側締結部によって締結されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このサスペンションメンバ締結構造では、くさび部材が設けられており、車両の前面衝突時には、サスペンションクロスメンバが車両後側へ変位されることで、くさび部材によって連結アーム又は前方側締結部が破断されてサスペンションクロスメンバの前端部がフロントフレームから離脱されると共に、サスペンションクロスメンバの後端部が後方側締結部の周囲において破断されてフロントフレームから離脱される。
【0004】
しかしながら、このサスペンションメンバ締結構造では、連結アームの上壁が前方側締結部のワッシャとフロントフレームの下壁とに狭持されて前方側締結部が全周において連結アームの上壁に結合されている。さらに、サスペンションクロスメンバ後端部の上壁が後方側締結部のワッシャとフロントフレームの下壁とに狭持されて後方側締結部が全周においてサスペンションクロスメンバ後端部の上壁に結合されている。
【0005】
このため、車両の前面衝突時には、サスペンションクロスメンバの車両後側への変位による前方側締結部及び後方側締結部の上部を中心とした車両後側への回動が困難になって、サスペンションクロスメンバ又はフロントフレームから前方側締結部及び後方側締結部が離脱困難である。
【特許文献1】特開2004−148959公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を容易にできるサスペンションメンバ締結構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のサスペンションメンバ締結構造は、車両の衝突時に車両内側へ変位されるサスペンションメンバと、前記サスペンションメンバと車体側とを締結し、車両内側において前記サスペンションメンバの車体側端に結合されない締結部と、車両の衝突時に前記サスペンションメンバ又は車体側からの前記締結部の離脱を促進する離脱促進手段と、を備えている。
【0008】
請求項2に記載のサスペンションメンバ締結構造は、請求項1に記載のサスペンションメンバ締結構造において、前記離脱促進手段は、前記サスペンションメンバ及び車体側の少なくとも一方に設けられ、前記サスペンションメンバと車体側とが車両内外方向において重なる位置で車両内側へ向かうに従い車体側から前記サスペンションメンバ側へ向かう方向へ傾斜された傾斜面とされた、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のサスペンションメンバ締結構造は、請求項1又は請求項2に記載のサスペンションメンバ締結構造において、前記締結部は、前記サスペンションメンバと車体側とを離間させた状態に締結する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のサスペンションメンバ締結構造では、サスペンションメンバと車体側とが締結部によって締結されており、車両の衝突時には、サスペンションメンバが車両内側(車両後側、車両前側及び車幅方向中央側等の変位方向を含む)へ変位する。
【0011】
ここで、締結部は、車両内側において、サスペンションメンバの車体側端に結合されていない。このため、車両の衝突時には、サスペンションメンバの車両内側への変位による締結部の回動が容易になる。
【0012】
さらに、車両の衝突時には、サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を離脱促進手段が促進する。
【0013】
これにより、サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を容易にすることができる。
【0014】
請求項2に記載のサスペンションメンバ締結構造では、離脱促進手段がサスペンションメンバ及び車体側の少なくとも一方に設けられた傾斜面とされており、傾斜面はサスペンションメンバと車体側とが車両内外方向において重なる位置で車両内側へ向かうに従い車体側からサスペンションメンバ側へ向かう方向へ傾斜されている。このため、車両の衝突時には、サスペンションメンバが車両内側へ変位することで、傾斜面によってサスペンションメンバが車体側から離間される。これにより、サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を離脱促進手段が促進することができる。
【0015】
請求項3に記載のサスペンションメンバ締結構造では、締結部がサスペンションメンバと車体側とを離間させた状態に締結している。このため、車両の衝突時には、サスペンションメンバの車両内側への変位による締結部の回動モーメントを大きくでき、サスペンションメンバ又は車体側からの締結部の離脱を一層容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造10の主要部が車両左側から見た断面図(図3の1−1線断面図)にて示されており、図2には、サスペンションメンバ締結構造10が車両左側から見た断面図(図3の2−2線(車両の車幅方向中央線)断面図)にて示されている。さらに、図3には、サスペンションメンバ締結構造10が上側から見た平面図にて示されている。なお、図面では、車両前方(車両外側)を矢印FRで示し、車両右方を矢印RHで示し、上方を矢印UPで示す。
【0017】
本実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造10は、上面が開放された長尺断面略コ字状のメインサイドメンバ12を一対備えており、一対のメインサイドメンバ12は、車両の左右両側部において、車両の前端から後端まで車両前後方向に配置されている。各メインサイドメンバ12は、車両前側部12A及び車両前後方向中間部12Bにおいて水平に配置されると共に、車両前側部12Aと車両前後方向中間部12Bとの間の前傾斜部12Cにおいて車両後側(車両内側)へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。また、各メインサイドメンバ12の上面は、下記ダッシュパネル22及びフロアパネル25等の別部品のプレート等によって閉じられている。
【0018】
各メインサイドメンバ12の車両前側部12A下面には、各前傾斜部12Cの近傍において、締結箱14が固定されている。各締結箱14は、上面が開放された略直方体箱状とされている。
【0019】
各メインサイドメンバ12の前傾斜部12Cには、車幅方向内側面及び下面において、車体側としてのサブサイドメンバ16の車両前側端が固定されており、各サブサイドメンバ16は、上面が開放された長尺断面略コ字状とされて、各サブサイドメンバ16の車幅方向内側において各メインサイドメンバ12から車両後側へ延伸されている。各サブサイドメンバ16の車両前側部には、車両前側面の下部において離脱促進手段の傾斜面としての後傾斜面18が形成されており、各後傾斜面18は車両後側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。また、各サブサイドメンバ16の上面は、下記フロアパネル25等の別部品のプレート等によって閉じられている。
【0020】
各サブサイドメンバ16の車両前側部内には上面が開放された断面略コ字状のリンフォース20がスポット溶接等によって固定されており、各リンフォース20は、外周面の略全体において各サブサイドメンバ16に面接触されて、各サブサイドメンバ16(特に各サブサイドメンバ16の車両前側壁及び下壁の全体)を補強している。
【0021】
一対のメインサイドメンバ12の上側には、板状のダッシュパネル22が固定されており、ダッシュパネル22は、各メインサイドメンバ12の前傾斜部12Cの上下方向中間部から前傾斜部12Cの上端まで各メインサイドメンバ12に沿って配置されている。さらに、ダッシュパネル22は各メインサイドメンバ12の前傾斜部12Cの上端から上方へ延伸されており、ダッシュパネル22は車両前側のエンジン室23と車両後側の車室24とを仕切っている。また、ダッシュパネル22の下部には、車室24側においてペダル(図示省略)が設けられている。
【0022】
一対のメインサイドメンバ12及び一対のサブサイドメンバ16の上側には、板状のフロアパネル25が固定されており、フロアパネル25は、ダッシュパネル22の下端に固定されて、ダッシュパネル22の下端から各メインサイドメンバ12及び各サブサイドメンバ16に沿って車両後側へ配置されている。
【0023】
一対のメインサイドメンバ12間の下側には、各車両前後方向中間部12Bより車両前側において、サスペンションメンバ26(サスペンションサブフレーム)が設けられており、サスペンションメンバ26は、平面視略矩形枠状にされて、車体側端としての上壁26Aと、反車体側端としての下壁26Bと、を有している。
【0024】
サスペンションメンバ26と各メインサイドメンバ12の締結箱14とは、前締結部28によって締結されている。サスペンションメンバ26の車両右側部及び車両左側部の車両前後方向中間部、及び各メインサイドメンバ12の締結箱14下壁には、前締結部28を構成するボルト30が下側から貫通されており、各ボルト30には上側から前締結部28を構成するナット32が螺合されている。各ボルト30は前締結部28を構成する円筒状のカラー34に挿通されており、各カラー34は、各ボルト30の頭部(図示省略)との間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bを狭持すると共に、各ナット32との間に全周において各締結箱14の下壁を狭持し、かつ、サスペンションメンバ26の上壁26Aと各締結箱14の下壁とを離間させている。
【0025】
サスペンションメンバ26と各サブサイドメンバ16及び各リンフォース20とは、締結部としての後締結部36によって締結されている。サスペンションメンバ26の車両右側部及び車両左側部の車両後側端、各サブサイドメンバ16の下壁、及び各リンフォース20の下壁には、後締結部36を構成するボルト38が下側から貫通されており、各ボルト38には上側から後締結部36を構成するナット40が螺合されている。各ボルト38は後締結部36を構成する配置部材としての円筒状のカラー42に挿通されており、各カラー42は、各ボルト38の頭部38Aとの間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bを狭持すると共に、各ナット40との間に全周において各サブサイドメンバ16の下壁及び各リンフォース20の下壁を狭持し、かつ、サスペンションメンバ26の上壁26Aと各サブサイドメンバ16の下壁とを離間させている。なお、各サブサイドメンバ16の下壁とサスペンションメンバ26の上壁26Aとの隙間の上下方向における幅(図1のAで示される上下オフセット量)は、例えば16mmにされている。
【0026】
サスペンションメンバ26の下壁26Bは各カラー42の全周に溶接44によって結合(固定)されている。一方、サスペンションメンバ26の上壁26Aは、各カラー42の車両前側には存在するものの各カラー42の車両後側には存在せず、サスペンションメンバ26の上壁26Aは、各カラー42の車両前側部には溶接44によって結合されるが各カラー42の車両後側部には結合されていない。
【0027】
サスペンションメンバ26上壁26Aの車両後側部には、離脱促進手段の傾斜面としての前傾斜面46が形成されており、前傾斜面46は、車両後側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されると共に、各サブサイドメンバ16の後傾斜面18に車両前方において対向している。なお、前傾斜面46と各後傾斜面18とが対向する範囲の上下方向における幅(図1のBで示される上下ラップ量)は、例えば20mmにされている。
【0028】
サスペンションメンバ26には一対のサスペンション(図示省略)が取り付けられており、一対のサスペンションには車両の前側の車輪(図示省略)が支持されている。サスペンションメンバ26にはパワーユニット(図示省略)が取り付けられており、パワーユニットにはエンジン(図示省略)及びトランスミッション(図示省略)が設けられている。
【0029】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0030】
以上の構成のサスペンションメンバ締結構造10では、車両の前面衝突時(車両の前面全体の衝突時(フルラップ衝突時)又は車両の前面片側部(右側部又は左側部)の衝突時(オフセット衝突時))に、パワーユニットと共にサスペンションメンバ26が車両後方への変位力X(図1参照)を受ける。これにより、メインサイドメンバ12の締結箱14が前締結部28(ナット32)によって破断されて締結箱14から前締結部28が離脱される。さらに、後締結部36のサブサイドメンバ16及びリンフォース20への締結位置C(図1参照)を中心とした回転モーメントY(図1参照)が発生して、サスペンションメンバ26が車両後斜め下方Z(図1参照)へ変位する。
【0031】
その後、サスペンションメンバ26の車両後斜め下方Zへの変位によりサスペンションメンバ26の前傾斜面46がサブサイドメンバ16の後傾斜面18に接触する。この時、サブサイドメンバ16の後傾斜面18より上側の部位は、リンフォース20によって充分に補強されているため、座屈しない。これにより、サスペンションメンバ26が前傾斜面46においてサブサイドメンバ16の後傾斜面18に案内されて(後傾斜面18を滑って)更に下側へ変位することで、上記回転モーメントYが増加する。
【0032】
上記回転モーメントYの増加に伴い、ナット40の車両前側端に配置されるサブサイドメンバ16及びリンフォース20の破断位置D(図1参照)がナット40によって破断されて、後締結部36がサブサイドメンバ16及びリンフォース20から離脱されることで、サスペンションメンバ26が更に車両後斜め下方Z(図1参照)へ変位する。
【0033】
以上により、車両の長さ(特に車両前端とパワーユニットとの間の長さ及びパワーユニットとダッシュパネル22との間の長さ)を長くしなくても、サスペンションメンバ26と共に車両後側へ変位されるパワーユニットが車両後側のダッシュパネル22やペダル等へ与えるダメージを最小限に抑えることができる。
【0034】
ここで、各後締結部36のカラー42の車両後側は、サスペンションメンバ26の上壁26Aが存在せず、サスペンションメンバ26の上壁26Aに結合されていない。このため、車両の前面衝突時には、カラー42の車両後側部とサスペンションメンバ26の上壁26Aとの相対移動が制限されることが抑制されて、サスペンションメンバ26の車両後側への変位による後締結部36の車両後側への回動が容易になる。
【0035】
さらに、上述の如く、車両の前面衝突時には、サスペンションメンバ26が、前傾斜面46においてサブサイドメンバ16の後傾斜面18に案内されて、下側への変位(サブサイドメンバ16からの離間)を促進される。
【0036】
これにより、サブサイドメンバ16及びリンフォース20からの後締結部36の離脱を容易にすることができる。
【0037】
さらに、後締結部36がカラー42によってサスペンションメンバ26の上壁26Aと各サブサイドメンバ16の下壁とを離間させた状態に締結している。このため、車両の前面衝突時には、サスペンションメンバ26の車両後側への変位による後締結部36の回動モーメントを大きくでき、サブサイドメンバ16及びリンフォース20からの後締結部36の離脱を一層容易にすることができる。
【0038】
また、サスペンションメンバ26が各メインサイドメンバ12の締結箱14に各前締結部28によって締結されており、各前締結部28のカラー34とボルト30の頭部との間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bが狭持されると共に、各前締結部28のカラー34とナット32との間に全周において各締結箱14の下壁が狭持されている。このため、各前締結部28によるサスペンションメンバ26の各メインサイドメンバ12への締結部分の剛性を高くすることができる。
【0039】
さらに、サスペンションメンバ26が各サブサイドメンバ16及び各リンフォース20に各後締結部36によって締結されており、各後締結部36のカラー42とボルト38の頭部38Aとの間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bが狭持されると共に、各後締結部36のカラー42とナット40との間に全周において各サブサイドメンバ16の下壁及び各リンフォース20の下壁が狭持されている。このため、各後締結部36によるサスペンションメンバ26の各サブサイドメンバ16への締結部分の剛性を高くすることができる。
【0040】
以上により、車両の走行時に各車輪及び各サスペンションを介してサスペンションメンバ26に入力する振動が、各メインサイドメンバ12及び各サブサイドメンバ16とサスペンションメンバ26との結合部を振動させることが抑制され、各メインサイドメンバ12及び各サブサイドメンバ16からダッシュパネル22及びフロアパネル25へ振動が伝達されることによる車室24内の振動を抑制することができる。
【0041】
さらに、サスペンションメンバ26、各メインサイドメンバ12又は各サブサイドメンバ16の板厚を厚くしなくても車室24内の振動を抑制できるため、重量及び原価を低減することができる。
【0042】
しかも、一対のメインサイドメンバ12及び一対のサブサイドメンバ16へのサスペンションメンバ26の締結部位が一対の前締結部28及び一対の後締結部36の4つのみであるため、当該締結部位の数を少なくすることができる。
【0043】
さらに、車両が軽量車の場合には、走行時の振動入力が小さいと予想されるため、サブサイドメンバ16及びリンフォース20の厚さを薄くすることができる。一方、車両が重量車の場合には、走行時の振動入力が大きいと予想されるが、この場合でも、リンフォース20の厚さを厚くすることで対応することができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
図4には、本発明の第2の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造60の主要部が車両左側から見た断面図にて示されている。
【0045】
本実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造60は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0046】
サスペンションメンバ締結構造60では、サスペンションメンバ26が各後締結部36によって車体側としての各メインサイドメンバ12に締結されている。
【0047】
各メインサイドメンバ12の前傾斜部12C下壁は、上下方向中間部において、水平に配置されて水平壁62にされており、水平壁62の車両前側における前傾斜部12Cの下面は、離脱促進手段の傾斜面としての後傾斜面64にされて、車両後側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0048】
各リンフォース20は、各メインサイドメンバ12の前傾斜部12C内にスポット溶接等によって固定されており、各リンフォース20は各前傾斜部12Cの水平壁62及び水平壁62の車両前側下壁に面接触されて、各前傾斜部12C(各前傾斜部12Cの水平壁62及び水平壁62の車両前側下壁)を補強している。
【0049】
各後締結部36は、サスペンションメンバ26と各メインサイドメンバ12の前傾斜部12C及び各リンフォース20とを締結している。サスペンションメンバ26の車両右側部及び車両左側部の車両後側端、各前傾斜部12Cの水平壁62、及び各リンフォース20の下壁には、ボルト38が下側から貫通されており、各ボルト38には上側からナット40が螺合されている。各ボルト38はカラー42に挿通されており、各カラー42は、各ボルト38の頭部38Aとの間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bを狭持すると共に、各ナット40との間に全周において各前傾斜部12Cの水平壁62及び各リンフォース20の下壁を狭持し、かつ、サスペンションメンバ26の上壁26Aと各前傾斜部12Cの水平壁62とを離間させている。なお、各前傾斜部12Cの水平壁62とサスペンションメンバ26の上壁26Aとの隙間の上下方向における幅(図4のAで示される上下オフセット量)は、例えば16mmにされている。
【0050】
サスペンションメンバ26の下壁26Bは各カラー42の全周に溶接44によって結合されている。一方、サスペンションメンバ26の上壁26Aは、各カラー42の車両前側には存在するものの各カラー42の車両後側には存在せず、サスペンションメンバ26の上壁26Aは、各カラー42の車両前側部には溶接44によって結合されるが各カラー42の車両後側部には結合されていない。
【0051】
サスペンションメンバ26の前傾斜面46は、各前傾斜部12Cの後傾斜面64に車両前方において対向している。なお、サスペンションメンバ26の前傾斜面46と各前傾斜部12Cの後傾斜面64とが対向する範囲の上下方向における幅(図4のBで示される上下ラップ量)は、例えば20mmにされている。
【0052】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0053】
以上の構成のサスペンションメンバ締結構造60では、車両の前面衝突時に、パワーユニットと共にサスペンションメンバ26が車両後方への変位力X(図4参照)を受ける。これにより、メインサイドメンバ12の締結箱14が前締結部28(ナット32)によって破断されて締結箱14から前締結部28が離脱される。さらに、後締結部36のメインサイドメンバ12及びリンフォース20への締結位置C(図4参照)を中心とした回転モーメントY(図4参照)が発生して、サスペンションメンバ26が車両後斜め下方Z(図4参照)へ変位する。
【0054】
その後、サスペンションメンバ26の車両後斜め下方Zへの変位によりサスペンションメンバ26の前傾斜面46がメインサイドメンバ12の後傾斜面64に接触する。この時、メインサイドメンバ12の下壁は、リンフォース20によって充分に補強されているため、座屈しない。これにより、サスペンションメンバ26が前傾斜面46においてメインサイドメンバ12の後傾斜面64に案内されて(後傾斜面64を滑って)更に下側へ変位することで、上記回転モーメントYが増加する。
【0055】
上記回転モーメントYの増加に伴い、ナット40の車両前側端に配置されるメインサイドメンバ12及びリンフォース20の破断位置D(図4参照)がナット40によって破断されて、後締結部36がメインサイドメンバ12及びリンフォース20から離脱されることで、サスペンションメンバ26が更に車両後斜め下方Z(図4参照)へ変位する。
【0056】
また、サスペンションメンバ26が各メインサイドメンバ12の締結箱14に各前締結部28によって締結されており、各前締結部28のカラー34とボルト30の頭部との間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bが狭持されると共に、各前締結部28のカラー34とナット32との間に全周において各締結箱14の下壁が狭持されている。このため、各前締結部28によるサスペンションメンバ26の各メインサイドメンバ12への締結部分の剛性を高くすることができる。
【0057】
さらに、サスペンションメンバ26が各メインサイドメンバ12の前傾斜部12C及び各リンフォース20に各後締結部36によって締結されており、各後締結部36のカラー42とボルト38の頭部38Aとの間に全周においてサスペンションメンバ26の下壁26Bが狭持されると共に、各後締結部36のカラー42とナット40との間に全周において各前傾斜部12Cの水平壁62及び各リンフォース20の下壁が狭持されている。このため、各後締結部36によるサスペンションメンバ26の各メインサイドメンバ12への締結部分の剛性を高くすることができる。
【0058】
以上により、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
なお、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、後締結部36を上下方向に沿って配置した構成としたが、後締結部36を車幅方向や傾斜方向等他の方向に沿って配置した構成としてもよい。
【0060】
さらに、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、車両の前面衝突時における締結箱14のナット32による破断やメインサイドメンバ12及びリンフォース20の破断位置Dのナット40による破断が妨げられない程度に、締結箱14(車体側)にナット32を溶接固定したり、リンフォース20(車体側)にナット40を溶接固定した構成としてもよい。
【0061】
また、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、本発明を車両前部に適用した構成としたが、本発明を車両後部に適用した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造の主要部を示す車両左側から見た断面図(図3の1−1線断面図)である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造を示す車両左側から見た断面図(図3の2−2線断面図)である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造を示す上側から見た平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るサスペンションメンバ締結構造の主要部を示す車両左側から見た断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 サスペンションメンバ締結構造
12 メインサイドメンバ(車体側)
16 サブサイドメンバ(車体側)
18 後傾斜面(離脱促進手段、傾斜面)
26 サスペンションメンバ
26A 上壁(車体側端)
36 後締結部(締結部)
46 前傾斜面(離脱促進手段、傾斜面)
60 サスペンションメンバ締結構造
64 後傾斜面(離脱促進手段、傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時に車両内側へ変位されるサスペンションメンバと、
前記サスペンションメンバと車体側とを締結し、車両内側において前記サスペンションメンバの車体側端に結合されない締結部と、
車両の衝突時に前記サスペンションメンバ又は車体側からの前記締結部の離脱を促進する離脱促進手段と、
を備えたサスペンションメンバ締結構造。
【請求項2】
前記離脱促進手段は、前記サスペンションメンバ及び車体側の少なくとも一方に設けられ、前記サスペンションメンバと車体側とが車両内外方向において重なる位置で車両内側へ向かうに従い車体側から前記サスペンションメンバ側へ向かう方向へ傾斜された傾斜面とされた、ことを特徴とする請求項1記載のサスペンションメンバ締結構造。
【請求項3】
前記締結部は、前記サスペンションメンバと車体側とを離間させた状態に締結する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサスペンションメンバ締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240325(P2006−240325A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54699(P2005−54699)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】