説明

サファイア単結晶成長方法とその装置

本発明は、サファイア単結晶成長方法とその装置に関し、より詳細には矩形の長い坩堝を使って、c−軸方向に長い種晶を使うに当たり、短い時間内に高品質の長い単結晶を獲得できるサファイア単結晶成長方法とその装置に関する。本発明に係るサファイア単結晶成長方法及びその装置を利用すると、矩形の坩堝を利用しても坩堝内部の水平方向の温度を均一に維持できて、高品質の単結晶を獲得できるだけでなく、単結晶成長において失敗率を低くする効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア単結晶成長方法及びその装置に関し、より詳細には矩形の長い坩堝を使って、c−軸方向で長い種晶を使うに当たり、短時間に高品質の長い単結晶が獲得できるサファイア単結晶成長方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近発明された、ブルー(Blue)または白色(white)LEDを製造するためには、GaN半導体が利用されているが、CVD法によってGaN半導体を成長させるための基板は原則的にGaN単結晶ウェハーがなければならない。しかし、GaN単結晶は、成長させることが困難なため、実用化可能なGaN単結晶成長法は、まだ開発されていない。
【0003】
一方、日本の中村はサファイアウェハー上でGaN単結晶を成長させて、ブルーLEDを作って、これの実用化に成功した。最近20年余り多くの結晶成長学者がGaN単結晶を成長させようと努力してきたが、経済性のある成長法は開発できなかった。従って、ブルーまたは白色LEDを製造するためには、サファイア(Al)単結晶ウェハーを使うことが当り前のようになっており、その需要が増大している。
【0004】
サファイア単結晶は、ベルヌーイ法(Verneuil process)、水熱合成法、チョクラルスキー法、熱交換法、カイロポーラス法、EFG法等多くの成長法で成長が可能であるが、その中LED用基板に使うほどの品質と大きさに成長させるに適している方法は、熱交換法とカイロポーラス法が挙げられる。また、現在はLED用としてc−面のサファイアウェハーを使っているが、c−面のサファイアウェハーを製造にはc−軸で長い円柱状のサファイアを製造することが歩留まり面で好ましい。
【0005】
チョクラルスキー法は、円柱状の単結晶を成長させるには良い方法であるが、サファイアの場合には、c−軸方向への成長が難しいため、図1aのようにチョクラルスキー法で成長させたインゴット(ingot)は、主にa軸に成長し、これを垂直方向にコア採取せん孔(core drilling)してc−軸に円柱状を作ってこれをスライシング(slicing)して、ウェハーを作るようになるため、歩留が非常に低くなる(最大30%程度)。
【0006】
従って、歩留向上のために細長い円柱よりは太くて短い円柱状が得られるカイロポーラス(Kyropoulos)法が適用されており、この方法で成長した結晶の品質は、チョクラルスキー法で成長させた結晶の品質より優秀であると考えられている。ところが、最近サファイアウェハーも、例えば2インチから4インチに大型化し、この方法によって成長した単結晶の歩留は32%程度であり、さらに大型化したウェハーが使われとカイロポーラス法の適用が困難な問題点がある。
【0007】
熱交換法によるサファイア単結晶に係る基本特許である米国登録特許第3,898,051号(1975.8.5)では、図1bのように短い円柱状の結晶を成長させるため、カイロポーラス法と似たような歩留(32〜34%)を持つが、図1cのように四角坩堝を使えば、歩留(約70%)を大きく向上できると知られている。しかし、坩堝の形態が矩形で長くなると、坩堝の温度を均一に維持し難い問題点がある。これは、坩堝外側にヒーターを囲むように設ける場合、坩堝の真中が最も温度が低くなり、坩堝端に行くほど温度が高まるようになるためである。つまり、種晶の中央部位よりも両側端の部分が温度が高まるようになる。
【0008】
このような問題点を解決するために、韓国登録特許第0428699号(出願番号10−2001−0011553)では長い坩堝を使って、ヒーターの幅と厚さを変えて、所望の水平方向と垂直方向の温度勾配が得られる方法を提案しているが、長さが長い棒型種晶を採用する場合、その種晶の長さに応じた温度を均一に維持できない問題点がある。特に、坩堝の長さが長くなると、さらに坩堝の両側端の部分と中の部分の温度を含んで、水平方向の温度を均一にすることが難しくなるだけでなく、2000℃以上の温度で保温材の状態が使用回数や使用時間の経過に従って変化するため、ヒーターの幅や厚さを調整して均一に合わせておいたとしても、使用回数や使用時間の経過に従って温度が変化するという問題がある。このようになって、水平方向における温度が均一でなくなると、特に長さが長い棒形状の種晶を使った場合、長さ方向において位置により坩堝底の中央部に位置した種晶が溶けてしまったり装入した原料が溶融できなくなる現象が起き、このような現象が起きると単結晶を成長させることができなくなるか、種晶が完全に溶けない上に均一な形状を有さなくなり、品質が低くなる等の問題がある。
【0009】
そこで、本発明者等は、(1)坩堝の外部に多数の発熱体を分割配置し、各々を独立的に作動させる場合、坩堝内部の水平温度を均一に維持でき、(2)側部発熱体及び連結発熱体を含む発熱体を利用する場合、垂直方向の温度勾配が得られ、電極の数を減少させることができ、(3)坩堝の底を内部に窪んだり外部に突出するように形成する場合、サファイアスクラップの未溶融または種晶の完全溶融を防ぐことができ、(4)結晶成長終了後、アニーリング工程を行う場合、単結晶の品質を向上できるという知見を得て、本発明を完成するようになった。
【発明の要約】
【0010】
本発明の目的は、矩形の長い坩堝を使って短時間にc−軸方向に長い高品質の単結晶を獲得することができるようにするサファイア単結晶成長方法及びその装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、垂直方向の温度勾配が容易に得られるだけでなく、電極の数を減少できるサファイア単結晶成長方法及びその装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、水平方向の温度を均一にできるサファイア単結晶成長方法及びその装置を提供するだけでなく、温度が多少均一でなくても高品質の単結晶を獲得できるサファイア単結晶成長方法及びその装置を提供することにある。
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、そして種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐため坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、前記坩堝の水平方向温度を均一にするために、前記坩堝の外部に発熱体が多数の分割された状態に設けられて、各々独立的に作動することを特徴とするサファイア単結晶成長装置を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記サファイア単結晶成長装置を用いて、坩堝の外部に設けられた多数の発熱体で坩堝内部の温度を調節しながら、サファイアスクラップを溶融させ、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が設けられる坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることを特徴とするサファイア単結晶成長装置を提供する。(他の観点)
【0016】
本発明はまた、前記サファイア単結晶成長装置を利用して、サファイアスクラップを溶融させて、種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、垂直方向の温度勾配を得て、電極の数を減少させるために、前記坩堝の外側壁に隣り合うように坩堝の両側に設けられ、そして各々一つの電極に連結する一対の側部発熱体及び前記側部発熱体の上部において側部発熱体を相互に連結させる連結発熱体を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長装置を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記サファイア単結晶成長装置を利用して、サファイアスクラップを溶融させ、種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、坩堝の底に種晶を置き、粉砕されたサファイアスクラップを坩堝に充鎮した後、前記種晶が完全に溶融しないように底下部に設けられた冷却手段で冷却すると共に、電気抵抗発熱体を介して常温からサファイアスクラップの溶融温度以上に昇温することによって、サファイアスクラップを溶融させる工程、及び前記冷却手段で冷却すると共に前記発熱体の温度を徐々に減温することによって、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法において、前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断して、アニーリング(annealing)を実施する工程をさらに含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の技術に係るサファイア単結晶成長方法を説明するための成長結晶の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサファイア単結晶成長装置の概略平断面図である。
【図3】図2の線A−Aの概略断面図である。
【図4】本発明の他の一実施形態に係る単結晶成長装置の概略断面図である。
【0021】
<図面の主要部分に対する符号の説明>
10:ファーネス 11〜16:分割領域(zone)
20,21:坩堝 21a:突出部
30:発熱体 31:電極
32:側部発熱体 33:連結発熱体
40:冷却手段 50:溶融物
51,52:種晶
【発明の詳細な説明】
【0022】
本発明では、矩形の坩堝においてサファイア単結晶を成長させるとき、単一の発熱体を利用する代わりに、独立的に制御される分割された多数の発熱体を利用する場合、坩堝の水平方向温度を均一に維持できるか否かを確認した。
【0023】
本発明の一実施形態では、6個の発熱体を含む単結晶成長装置を製造し、これを利用して、サファイア単結晶を成長させた。その結果、サファイア単結晶成長時坩堝の水平方向温度が均一に維持されて、優れた品質の単結晶が生成されたことが確認できた。
【0024】
従って、一観点において、本発明は、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、そして種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐため坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、前記坩堝の水平方向温度を均一にするために、前記坩堝の外部に発熱体が多数の分割された状態に設けられて、各々独立的に作動することを特徴とするサファイア単結晶成長装置に関する。
【0025】
前記発熱体30は、坩堝20内部に充填されたサファイアスクラップを溶融させるために熱を供給することで、通常使われる電気抵抗による高融点金属発熱体、黒鉛発熱体等が使われる。
【0026】
前記発熱体30は、独立的に温度センサー、電力調節装置、温度制御装置等によって制御される。
【0027】
本発明において、前記分割された発熱体30の長さは、5〜25cmであることが好ましい。前記発熱体の長さが5cm未満の場合、発熱体及び発熱体の温度を制御する部品の数が多くなって、装置が複雑になって、装置の価格が高くなる恐れがあり、25cmを超える場合、水平方向温度を均一に維持し難い問題がある。前記発熱体の数は坩堝の長さに応じて異なる。
【0028】
つまり、本発明では通常使われる単一の発熱体を利用することなく、分割された多数の発熱体を坩堝の外部に設けることによって、坩堝を水平方向に多数の領域(zone)に分割する効果を得ることができ、分割された各々の領域に対し温度センサー、電力調節装置、温度制御装置を別に設けて、フィードバックによる温度制御を行うことによって、坩堝の長さに関係なく水平方向に温度を均一に得ることができる。従って、前記装置を利用する場合、使用回数に係る断熱材の特性変化にもかかわらず、常に均一な温度を獲得することができるようになる。理論的には、分割された領域の数が多いほど温度の均一性が向上するが、約30〜40cmの長さを持つ坩堝の場合には3〜6個の領域があれば十分な品質のサファイアの成長が可能になる(図2参照)。
【0029】
前記発熱体30は、前記坩堝20の外側壁に隣り合うように両側に設けられ、各々一つの電極31に連結する一対の側部発熱体32及び前記側部発熱体32を上部において連結させる連結発熱体33で構成されることを特徴とする。
【0030】
図3に示したように、本発明のサファイア単結晶成長装置の一実施形態に係る発熱体30は、坩堝の側壁に隣り合うように両側に設けられ、各々一つの電極31に連結する一対の側部発熱体32とその一対の側部発熱体32を上部において連結させる連結発熱体33で構成される。このように発熱体30を構成することによって、垂直方向の温度勾配が簡単に得られるだけでなく、多数の発熱体30を採用するにもかかわらず、電極の数を減少させられて、構成を簡単にできて安く製造することができる。但し、図2で両断部に該当する分割領域16の発熱体30は、下部を介して連結してもよい。また、垂直方向の温度勾配は、特に坩堝下部の冷却と断熱構造に応じて制御可能である。
【0031】
本発明において、坩堝はサファイアスクラップを溶融させ、種晶を成長させるためのもので、高温でも溶融しないモリブデン材質等を利用することができる。好ましくは、前記坩堝は、前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が配置される坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成される。
【0032】
他の観点において、本発明は、前記サファイア単結晶成長装置を利用して、坩堝の外部に設けられた多数の発熱体で坩堝内部の温度を調節しながら、サファイアスクラップを溶融させ、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法に関する。
【0033】
本発明に係るサファイア単結晶成長方法は、従来の技術であるサファイアスクラップの溶融工程と種晶51からの結晶成長工程を含んで構成される。
【0034】
つまり、サファイアスクラップの溶融工程では、ファーネス10内に設けられる水平方向に長さが長い坩堝20の底に、c−軸方向で長い種晶51を配置させてサファイアスクラップを粉砕して、坩堝20に充填させる。その後、その種晶が完全に溶融しないように底下部に設けられた冷却手段40により冷却させながら、電気抵抗による発熱体30を介して加熱することによって、常温からサファイアスクラップの溶融温度以上に昇温させてサファイアスクラップを溶融させる。
【0035】
このようにサファイアスクラップが全部溶融した後、種晶51からの結晶成長工程では、坩堝20の底下部に設けられた冷却手段40により冷却させながら、発熱体30の温度を徐々に冷却させて、種晶から結晶を成長させる。
【0036】
前記溶融工程及び結晶成長工程では、各分割領域(11〜16)に設けられる温度センサー(図示略)から得た各分割領域(11〜16)の温度が、均一になるように制御装置によって、発熱体30に供給される電力が制御される。
【0037】
このようにして、坩堝20内の水平方向に温度が均一なようになることで成長した結晶の品質は優れており、特に断熱材の特性変化等と関係なく品質が維持されるようになる。
【0038】
本発明において、前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断して、アニーリングを実施する工程をさらに含んでもよい。
【0039】
一方、本発明では、発熱体を坩堝の左右側に位置した一対の側部発熱体とこれを連結させた連結発熱体で構成する場合、坩堝内部で垂直方向の温度勾配を得ることができ、電極の数を減少させて、電極部による熱損失を抑制できることを確認しようとした。
【0040】
従って、本発明は、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、垂直方向の温度勾配を得て、電極の数を減少させるために、前記坩堝の外側壁に隣り合うように坩堝の両側に設けられ、そして各々一つの電極に連結する一対の側部発熱体及び前記側部発熱体の上部において側部発熱体を相互に連結させる連結発熱体を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長装置に関する。
【0041】
前記サファイア単結晶成長装置は、発熱体の幅と厚さを調節して、水平方向の温度均一性を確保でき、前述した通り、前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が配置される坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることが好ましい。
【0042】
また他の観点において、本発明は、前記サファイア単結晶成長装置を利用して、サファイアスクラップを溶融させ、種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法に関する。
【0043】
一方、本発明の一実施形態では、矩形の坩堝を使わず、底が内部に窪むか外部に突出するように形成されたものを用いる場合、成長結晶下部の冷却表面を増大させて成長した単結晶の品質を向上でき、さらに単結晶成長において失敗率を低くできることを確認した。
【0044】
従って、他の観点において、本発明は、サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が設けられる坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることを特徴とするサファイア単結晶成長装置に関する。
【0045】
本発明において、前記種晶が配置される坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成される場合、W字またはV字の断面形状を持つようになる(図4参照)。
【0046】
坩堝底が内部に窪むか外部に突出するように形成される場合、下部の冷却表面を増大させて、種晶上部と下部の温度差を大きくすることで、水平方向の温度不均一や、多少不適切な設定温度にもかかわらず、種晶上部原料の未溶融現象や種晶の完全溶融現象を防ぐことができる。
【0047】
つまり、前記サファイア単結晶成長装置を利用する場合、多少水平方向の温度が不均一でも坩堝下部の形が突き出ているため、下部の冷却板によって、十分に冷却されるため、種晶が溶けるか装入した原料の未溶融現象を減らせる効果があり、また、坩堝上部が広がっているため、原料の装入が容易である。
【0048】
前記サファイア単結晶成長装置の発熱体は、前述した多数の分割された発熱体で構成され、また前記発熱体は多数の側部発熱体とこれを連結させた連結発熱体を含むことが好ましい。
【0049】
また他の観点において、本発明は、前記サファイア単結晶成長装置を利用して、サファイアスクラップを溶融させて、種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法に関する。
【0050】
最後に、本発明では、結晶成長が終了した後、室温で冷却する前にアニーリング工程を実施する場合、坩堝及び成長した結晶内の温度勾配による結晶内のストレスを緩和することによって、単結晶の品質が向上できることを確認した。
【0051】
従って、また他の観点において、本発明は、坩堝の底に種晶を置き、粉砕されたサファイアスクラップを坩堝に充鎮した後、前記種晶が完全に溶融しないように底下部に設けられた冷却手段で冷却すると共に、電気抵抗発熱体を介して常温からサファイアスクラップの溶融温度以上に昇温することによって、サファイアスクラップを溶融させる工程、及び前記冷却手段で冷却すると共に前記発熱体の温度を徐々に減温することによって、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法において、前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断して、アニーリングを実施する工程をさらに含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法に関する。
【0052】
前記アニーリングは、坩堝内部の温度を1700〜2000℃で1〜50時間維持することによって行われる。
【0053】
通常サファイアスクラップは、2100℃以上で溶融し、結晶の成長は約1920〜2100℃で形成される。サファイアの溶融温度が2045℃であるため、溶融開始温度と結晶成長温度は2045℃であるべきではあるが、温度を測定する部分と坩堝内における結晶が成長して原料が溶ける位置の差があるため、このような温度差が発生できて、この温度範囲は、温度測定位置を変更すると変わる。
【0054】
本発明において、前記冷却手段は、坩堝の底に位置した種晶を完全溶融しないように温度を低くすることで、通常使われる手段を利用できて、機体または液体を利用して、強制冷却させるタングステンまたはモルリブデン冷却板等が挙げられる。従って、前記冷却手段が冷却板である場合、その冷却板の上下運動によって、または坩堝の上下運動によって、冷却板を坩堝から分離させることによって、冷却を遮断できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を持って本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者には明らかである。
【0056】
特に、その他のサファイア単結晶成長装置の具体的構成と構造は、既に公知の先行技術のそれと類似するため省略し、下記では上の前記のような構成の本発明の具体的な実施例が説明される。下記の実施例及び図面では矩形の長い坩堝を採用しているが、本発明がこれに限定されず単に四角形坩堝に長さが長い種晶52だけを採用しても類似の結果が得られ、実施例2を除いては坩堝の断面状も特に制限されるのではない。
【0057】
実施例1:多数の分割された発熱体を含むサファイア単結晶成長装置
サファイア単結晶成長装置スペック及び使われた材料は下記の通りである。
坩堝材質:Mo(モリブデン)
坩堝の大きさ:110W*200H*400L(単位mm)
種晶:30W*10H*380L(単位mm)
冷却板(冷却手段):Mo 20*360L(単位mm)
分割領域数:6個(左右側部を含む)
ヒーター(発熱体):高純度等方性グラファイト8t
温度センサー:パイロメーター、測定地点:ヒーター表面
温度調節方式:PID
冷却板冷却方式:水冷式
【0058】
発熱体によって、前記6個の分割領域を持つサファイア単結晶成長装置を利用して、サファイア単結晶を成長させた。先ず、サファイアスクラップ19.5kgを粉砕して、坩堝に充填した後、常温から2110℃まで15時間昇温させて2時間維持した。結晶成長は、発熱体の温度を1920℃まで5℃/hrの速度で徐冷して行った。以後は30時間常温まで徐冷した。
【0059】
溶融最後の工程、つまり、結晶成長直前の工程における発熱体の温度(側部発熱体の中央部)を2100℃に維持して、水平方向の位置に応じて部位別に坩堝受け台の温度(側部発熱体の中央部に該当する高さ)を長さ(水平)方向に沿ってパイロメーターで測定した結果、長さ方向の温度は2080〜2085℃で、長さ方向の温度偏差が5℃以内であると確認された。温度偏差が大きいならば。種晶が溶けてなくなる部位が発生する可能性が高いが、坩堝受け台の温度偏差が5℃程度ならば、坩堝内部の冷却板上に置かれている種晶ではずっと少ない温度偏差が生じるようになり、坩堝内部の温度はこれよりは均一で、結晶成長に問題ないことが示された。この時、温度の測定は、パイロメーターで観測するため、坩堝の側壁は外部から観測不可であり、ヒーターと同じ高さの坩堝受け台温度を測定した。
【0060】
成長した結晶は、気泡やクラック(crack)等の欠陥がなく、ウェハー(wafer)に加工し、300℃のKOH溶液でエッチングしてEPD(Etch Pit Density)を測定した結果、ウェハーと部位別に差があったが、平均400個/cm程度であった。
【0061】
これは、従来の技術によって現在商用化しているウェハーに比べて(平均500〜1000個/cm)優秀な品質であり、水平方向の均一な温度制御による効果で、水平方向の温度勾配が殆どなく、略直線状の高液界面ができたためと考えられる。これにより、従来技術では坩堝の横縦比率が1.5以上になった場合、温度制御が困難になり、長い種晶の使用が難しく、長さが長い結晶を成長させることができなかったが、本発明ではc−軸に長い種晶を使って、坩堝の長さも長くし、つまり、坩堝の横縦比が1.5倍以上にしてc−軸方向により長い結晶に成長させられることを確認した。従って、同じ時間に優れた品質の結晶を長く成長させることが可能であるため、1回当たり生産量が大きく向上したと考えられる。現在、100*100*100mmの大きさのインゴットを生産した場合と比較すると、100*100*400mmの大きさのインゴットを生産する場合、時間は同じで、生産量は4倍、原価は55%に過ぎなく、少ない投資で大きい利益が発生する効果がある。長さを長くしようとするなら、いくらでも長くすることができるため、このようなメリットが本発明の最も大きな長所であり、メリットには制限がない。但し、現実的な観点から、100*100*400〜600mm程度が良いと予想する。それ以上長さが長くなると、取扱いが不便になり、否定的な効果が大きくなる恐れがある。
【0062】
実施形態2:V字断面状の坩堝を含むサファイア単結晶成長装置
サファイア単結晶成長装置スペック及び使われた材料は下記の通りである。
坩堝材質:Mo(モリブデン)
坩堝の大きさ:正三角形辺の長さ200*400L(単位mm)
種晶:30W*26H*380L(単位mm)
冷却板:Mo 20*360L(単位mm、上部に溝加工)
分割領域数:6個
発熱体:高純度等方性グラファイト8t
温度センサー:パイロメーター、測定地点:ヒーター表面
温度調節方式:PID
冷却板冷却方式:水冷式(結晶成長後冷却板を坩堝底から分離)
【0063】
発熱体によって、前記6個の分割領域を持ち、V字断面状の坩堝を含むサファイア単結晶成長装置を利用して、サファイア単結晶をアニーリング方法を追加して成長させた。先ず、サファイアスクラップ44.5kgを粉砕して、坩堝に充填した。温度は常温から2120℃まで15時間昇温させて2時間維持した。結晶成長は、発熱体の温度を1920℃まで5℃/hrの速度で徐冷して行った。結晶成長が終了した後には坩堝の下面に接触している冷却板を下へ移送させて坩堝底から分離させ、3時間維持させることによってアニーリング工程を行った。
【0064】
水平方向の位置に応じた部位別に坩堝受け台の温度をパイロメーターで測定した結果、温度差は6℃以内で測定され、坩堝内部の温度はこれよりは均一で、結晶成長に問題がないものと判断された。
【0065】
冷却板分離によるアニーリングで常温までの冷却時間をクラックが発生することなく20時間に短縮させることができた。前記のアニーリング工程がない時は、20時間冷却された結晶の多くは、結晶内のストレスによるクラックが発生した。成長した結晶は、実施例1同様気泡やクラック等の欠陥はなく、ウェハーに加工して300℃のKOH溶液でエッチングしてEPDを測定した結果、ウェハーと部位別に差があったが、平均300個/cm程度であり、これは現在商用化しているウェハーはもちろん、実施例1よりも優れた品質である。
【0066】
前記詳細に説明されない構成や作用及び条件は、既に公知の先行技術と類似するため、その具体的な説明と図示は省略された。
【産業上の利用の可能性】
【0067】
以上説明した通り、本発明によると、c−軸に長い種晶を使ったり、使用回数及び使用時間の経過に応じた保温材の状態変化にもかかわらず、坩堝を水平方向に多数の領域に分割して、温度を制御することによって、水平方向の温度を均一にできるようになって、それによって種晶の上部が均一な形に溶けて、結晶の成長時にも均一に成長できて、高品質の単結晶を獲得できるようになる効果がある。坩堝の長さをより長く、つまり、坩堝の横縦費が1.5倍以上として、c−軸方向にさらに長い結晶に成長させることもできるようになる。
【0068】
本発明はまた、発熱体を一対の側部発熱体とこれを連結させた連結発熱体で構成することによって、容易に垂直方向の温度勾配が得られるようになり、電極の数を減少させて、電極部による熱損失を抑制させ、安価で構成できる効果がある。それと共に、結晶成長が終了した後、アニーリング工程を実施することによって、単結晶の品質を向上させることができ、種晶とその種晶が配置される坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成することによって、下部の冷却表面を増大させて成長した単結晶の品質を向上するたけでなく、単結晶成長において失敗率を低くする効果がある。
【0069】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス;前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、そして種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝;前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体;及び前記種晶の完全溶融を防ぐため坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、
前記坩堝の水平方向温度を均一にするために、前記坩堝の外部に発熱体が多数の分割された状態に設けられて、各々独立的に作動することを特徴とするサファイア単結晶成長装置。
【請求項2】
前記分割された発熱体の長さは、5〜25cmであることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項3】
垂直方向の温度勾配を得て、電極の数を減少させるために、前記坩堝の外側壁に隣り合うように坩堝の両側に設けられ、そして各々一つの電極に連結する多数の側部発熱体、及び前記側部発熱体の上部において、側部発熱体を相互に連結させる連結発熱体を含むことを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項4】
前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が配置される坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のサファイア単結晶成長装置を用いて、坩堝の外部に設けられた多数の発熱体で坩堝内部の温度を調節しながら、サファイアスクラップを溶融させ、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法。
【請求項6】
前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断し、そして温度を一定に維持することによって、アニーリングを実施する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のサファイア単結晶成長方法。
【請求項7】
サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が設けられる坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることを特徴とするサファイア単結晶成長装置。
【請求項8】
内部に窪むか外部に突出するように形成されるように、前記坩堝の底がW字またはV字の断面形状を持つことを特徴とする請求項7に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項9】
前記坩堝の水平方向温度を均一にするために、前記坩堝の外部に発熱体が多数の分割された状態に設けられ、そして各々独立的に作動することを特徴とする請求項7に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項10】
垂直方向の温度勾配を得て、電極の数を減少させるために、前記坩堝の外側壁に隣り合うように坩堝の両側に設けられて、各々一つの電極に連結する多数の側部発熱体、及び前記側部発熱体の上部において側部発熱体を相互に連結させる連結発熱体を含むことを特徴とする請求項7に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のサファイア単結晶成長装置を用いて、サファイアスクラップを溶融させて、そして種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法。
【請求項12】
前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断することによって、アニーリングを実施する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のサファイア単結晶成長方法。
【請求項13】
サファイアスクラップの溶融温度以上に内部温度が上昇するように、加熱されそして周囲から断熱されるファーネス、前記ファーネス内部に位置し、サファイアスクラップが溶融して、種晶から単結晶が長く成長されるための坩堝、前記サファイアスクラップを溶融させるために前記坩堝外部に設けられた発熱体、及び前記種晶の完全溶融を防ぐために坩堝の底に設けられた冷却手段を含むサファイア単結晶成長装置において、垂直方向の温度勾配を得て、電極の数を減少させるために、前記坩堝の外側壁に隣り合うように坩堝の両側に設けられ、そして各々一つの電極に連結する一対の側部発熱体、及び前記側部発熱体の上部において側部発熱体を相互に連結させる連結発熱体を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長装置。
【請求項14】
前記サファイアスクラップの未溶融または前記種晶の完全溶融を防ぐために、前記種晶が設けられる坩堝の底が内部に窪むか外部に突出するように形成されることを特徴とする請求項13に記載のサファイア単結晶成長装置。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載のサファイア単結晶成長装置を用いて、サファイアスクラップを溶融させ、そして種晶から結晶を成長させる工程を含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法。
【請求項16】
坩堝の底に種晶を置き、粉砕されたサファイアスクラップを坩堝に充鎮した後、前記種晶が完全に溶融しないように、底下部に設けられた冷却手段で冷却すると共に、電気抵抗発熱体を介して常温からサファイアスクラップの溶融温度以上に昇温することによって、サファイアスクラップを溶融させる工程、及び前記冷却手段で冷却すると共に前記発熱体の温度を徐々に減温することによって、種晶から結晶を成長させる工程を含むサファイア単結晶成長方法において、前記結晶成長が終了した後、室温で冷却する前に前記冷却手段による冷却を遮断して、アニーリングを実施する工程をさらに含むことを特徴とするサファイア単結晶成長方法。
【請求項17】
前記アニーリングは、坩堝内部の温度を1700〜2000℃で1〜50時間維持することを特徴とする請求項16に記載のサファイア単結晶成長方法。
【請求項18】
前記冷却手段が冷却板である場合、前記冷却板の上下運動または坩堝の上下運動を用いて、坩堝から冷却板を分離させることによって、冷却を遮断させることを特徴とする請求項16に記載のサファイア単結晶成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503810(P2013−503810A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527816(P2012−527816)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005731
【国際公開番号】WO2011/027992
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512055880)クリステク カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】