サブミクロン粒度を有するバルク金属構造体の製造法及びかかる方法により製造された構造体
【課題】三次元の大きなサブミクロン粒度の結晶質の構造体の単純で経済的な製造方法を提供する。
【解決手段】サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体の製造法において、超音波金属粉末ジェットを基材に当て、粉末を基材及び該粉末自体に付着させて、サブミクロン粒構造を有しかつ全三次元においてサイズの大きな稠密な凝集堆積物を形成させることを含むことを特徴とする方法。
【解決手段】サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体の製造法において、超音波金属粉末ジェットを基材に当て、粉末を基材及び該粉末自体に付着させて、サブミクロン粒構造を有しかつ全三次元においてサイズの大きな稠密な凝集堆積物を形成させることを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
サブミクロン又はナノ結晶質の構造体を有する金属及び金属合金は、商業的及び軍事分野において極めて重要である。前記金属及び金属合金は、完全に新規の生成品の開発の機会を許容する新規の特性を有している。しかしながら、目下、注目されている金属のバルクナノ結晶質材料の製造には問題が生じている。成功の多くは、薄膜及び噴霧された皮膜の場合に達成されてきた。高エネルギーミル処理、高変形速度機械加工チップ、等角押出し及び容易なガラス形成体により成功する場合もあった。しかしながら、これらはいずれも重大な欠点を有している。三次元の大きなサブミクロン粒度の結晶質構造体の単純で経済的な製造方法が求められている。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンの、又はナノ結晶質の粒子構造を有する金属材料は、拡張された延性及び極めて高い降伏強さを含む該金属材料特有の特性に基づき、極めて重要である。ナノ結晶質構造体を製造するための薄膜、皮膜及び粉末に関する研究は数多くなされてきたが、三次元の大きな構造体の製造法はいまだ達成困難である。
【0003】
高エネルギーミル処理は、恐らく、サブミクロンサイズの粒子構造を有する金属粉末の極めて一般的な製造法の一つである。このアプローチに関する問題の一つは、粉末が、しばしば、プロセスにおいて使用されるミル、磨砕機又は粉砕媒体の摩耗により生じる微視的な粒子で高度に汚染されることである。
【0004】
パーデュ大学が先駆けとなり、現在はNanodynamics Inc.により商業化されている他の技術には、高変形速度で作製される突固め機械加工チップが含まれる。機械加工プロセスにおいて誘導された低温加工によって、チップ中にナノ結晶質の粒度が生じる。高エネルギーミル処理と同様に、この技術は機械加工プロセスからの汚染が問題であり、かつ、ルーズな粉末又はチップを圧密化してバルク固体とするための高額な二次操作(熱間静水圧プレス加工、押出し、爆発圧搾等)の使用も必要である。制御が慎重に行われない場合には、多くの場合、この二次プロセスは圧密化の間に初期の微細構造が損傷され得る。
【0005】
等径角度付き押出し法(ECAE)は、金属又は合金をフローの方向を変化させてダイに通過させる高剪断プロセスである。極めて高いひずみが生じ、その結果微粒化される。しかしながら、サブミクロン粒度にするには、金属を複数(3〜4)回ダイに通過させねばならず、これによってプロセス処理及びコストが高額になる。
【0006】
他の文献、例えばA. C. Hall, L. N. Brewer and T. J. Roemer, "Preparation of Aluminum coatings Containing Homogeneous Nanocrystalline Microstructures Using the cold Spray Process", JTTEES 17:352-359には、皮膜がコールドスプレーにより作製された場合、サブミクロン粒度の粉末からなる薄い皮膜はサブミクロン粒度を保持することが示されている。さらに、アルミニウムを用いたある事例では、サブミクロン粒度が低減された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. C. Hall, L. N. Brewer and T. J. Roemer, "Preparation of Aluminum coatings Containing Homogeneous Nanocrystalline Microstructures Using the cold Spray Process", JTTEES 17:352-359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、三次元の大きなサブミクロン粒度の結晶質の構造体の単純で経済的な製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、実質的に5〜10ミクロン及びそれより大きい通常の粒度の特定の金属粉末が、超音速で比較的低温で発射され、かつ基材上に堆積された場合、サブミクロン粒子構造を有する稠密な固体が形成されることが見出された。この堆積物は全三次元において大きく形成されることができ、かつこの基材を容易に除去し、ナノ結晶質堆積物のみを残留させることができる。この堆積物は、耐火性の金属皮膜が典型的に厚さ0.5mm未満、通常0.1mm未満であり、かつ、その物理的集結性を維持するために、基材へ付着したままであることに依存しているという点で、皮膜とは異なる。この場合、厚さの寸法は、1〜2cmまで及びこれを上回って極めて大きいことができる。この大きな厚さによって、堆積物を基材から取り外して自立形の適用において使用することが可能となる。
【0010】
本発明により、Ta、Nb及びMo金属(いずれもBCC構造であり、かつ高い溶融点温度を有する)に関する上記挙動が実証され、これは速度感受性である普遍的現象であると考えられる。
【0011】
図1は、コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示し;
図2は、コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb複合材のSEM顕微鏡写真であり、
図3は、MoTiスパッタリングターゲットの拡大写真であり、かつ
図4は、コールドスプレーされたMoTi種のSEM拡大顕微鏡写真である。
【0012】
本発明により、サブミクロン粒子構造を有する三次元の大きな構造体の製造法が見出された。このサブミクロン粒子構造体は、粒子間結合強度の向上、加工硬化の排除及び延性の向上のために使用され得る、高められた温度での加工の間の成長にも抗する。さらに、この堆積物は、ECAE加工のための出発材料として使用することもでき、完全に稠密化された微細で均質な構造体の開発に必要なパスの数が1つに低減される。
【0013】
一般に、サブミクロン範囲のサイズからなる三次元の大きな金属構造体の製造法には、超音波粉末ジェットを基材に当てて粉末を基材及び該粉末自体に付着させ、稠密な凝集堆積物を形成させることが含まれる。その結果、かかる堆積物から、これに限定されるものではないが、爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜を含む生成品が作製され得る。該方法において、粉末ジェットは耐火性の金属粉末からなることができる。それにより、サブミクロン粒度の微細構造を有する金属粉末からなる稠密な金属構造体は、耐火性の金属構造体として有用である。本発明は、粉末を超音波ジェットにより堆積させ、かつ等径角度付き押出し法により押出し加工するというように実施することができる。堆積物は、基材に付着したままでもよいし、基材から除去されてもよい。
【0014】
本発明は、公知のコールドスプレー系を用いて実施することができ、その際、例えば、加熱されたガス、例えば窒素を使用して、粉末を加速させて超音波粉末ジェットを形成し、このジェットを基材に当てる。超音波粉末ジェットを基材に当てて粉末が基材及び該粉末自体に付着した場合、得られる稠密な凝集堆積物は、サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示す図。
【図2】コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb複合材のSEM顕微鏡写真を示す図。
【図3】MoTiスパッタリングターゲットの拡大写真を示す図。
【図4】コールドスプレーされたMoTi種のSEM拡大顕微鏡写真を示す図。
【実施例】
【0016】
以下に示す結果は全てKinetics 4000コールドスプレー系を用いて達成されたものである。これは市販の標準的な系である。一般に、コールドスプレー法はターゲットに向いたガスフローを含み、その際、このガスフローは粉末と共にガス粉末混合物を形成する。このガスフローに超音速を印加する。超音速のジェットを基材の表面に当て、それにより基材にコールドスプレーが行われる。PCT出願US2008/062434号には、コールドスプレー技術が開示されている。前記出願の全詳細が参照により援用される。本発明の実施において、粉末を加速させ、かつ超音波粉末ジェットを形成するために、500〜800℃の温度でかつ約30バールの加熱された窒素ガスを使用した。このジェットを典型的に銅又は鋼基材に当てた。基材は通常、円筒形、円筒状又は平面状であった。管形、ボウル状及び平円盤及び矩形体を形成した。金属組織試料を成形体から切断し、機械的に研磨した。微細構造を、FIB SEMを二次及び後方散乱モードの双方で使用して調査した。この実験において、コールドスプレーに適用するためのHC Starck社製の特に高純度のタンタル、ニオブ及びモリブデン粉末を使用した。
【0017】
図1は、コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示す。このプリフォームは、長さ約150mm、外側直径85mm及び肉厚14mm、質量8.8kgである。これは三次元の大きな構造体の一例である。
【0018】
図2は、コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb(50/50w/o)複合材のSEM顕微鏡写真である。Taは明色の相として現れており、かつNbは暗色の相として現れている。この図の左側は、Ta微細構造の詳細を明らかにするために輝度及びコントラストを調整したものであり、一方で右側はNb微細構造を明らかにするために調整したものである。Ta粉末粒子の表面近傍では、微細構造が典型的に400〜500ナノメートル未満の粒子からなり高度に微細化されていることが明らかである。内側へ移ると、構造はさらに拡散している。これは、粒子の外側から内側に向かって生じたひずみにおける勾配によるものであると考えられ、それというのも、内側が受ける変形の方が少ないためである。この勾配は、単純に、より微細な粉末及び恐らくより高い粒子速度を使用することにより排除することができる。顕微鏡写真の右側は、周辺のNbの微細構造を示している。多くの粒子サイズがなおもサブミクロンであるのに対して、微粒化のレベルがTaにおいて生じている微粒化のレベルよりも著しく低いことが明らかである。図2は、該図の左側及び右側の双方の底部に、ミクロンの標識を示すバーを含む。
【0019】
図3は、MoTi(67/33w/o)直径125mmのスパッタリングターゲットの拡大写真である。図1と同様に、これはまさに、大きな、自立形の物体を形成するための、コールドスプレーに関する可能性を示している。
【0020】
図4は、コールドスプレーされたMoTi種の高倍率顕微鏡写真である。この種は700℃で1.5時間、真空アニールしたものである。明色の相はMoであり、暗色の相はTiである。Moにおいて粒度は500ナノメートルオーダーであるのに対して、Tiにおいて粒子はほぼマイクロメートルのサイズにまで成長した。図4には、該図の底部の中央に配置された、ミクロンの標識を示すバーが記載されている。
【技術分野】
【0001】
サブミクロン又はナノ結晶質の構造体を有する金属及び金属合金は、商業的及び軍事分野において極めて重要である。前記金属及び金属合金は、完全に新規の生成品の開発の機会を許容する新規の特性を有している。しかしながら、目下、注目されている金属のバルクナノ結晶質材料の製造には問題が生じている。成功の多くは、薄膜及び噴霧された皮膜の場合に達成されてきた。高エネルギーミル処理、高変形速度機械加工チップ、等角押出し及び容易なガラス形成体により成功する場合もあった。しかしながら、これらはいずれも重大な欠点を有している。三次元の大きなサブミクロン粒度の結晶質構造体の単純で経済的な製造方法が求められている。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンの、又はナノ結晶質の粒子構造を有する金属材料は、拡張された延性及び極めて高い降伏強さを含む該金属材料特有の特性に基づき、極めて重要である。ナノ結晶質構造体を製造するための薄膜、皮膜及び粉末に関する研究は数多くなされてきたが、三次元の大きな構造体の製造法はいまだ達成困難である。
【0003】
高エネルギーミル処理は、恐らく、サブミクロンサイズの粒子構造を有する金属粉末の極めて一般的な製造法の一つである。このアプローチに関する問題の一つは、粉末が、しばしば、プロセスにおいて使用されるミル、磨砕機又は粉砕媒体の摩耗により生じる微視的な粒子で高度に汚染されることである。
【0004】
パーデュ大学が先駆けとなり、現在はNanodynamics Inc.により商業化されている他の技術には、高変形速度で作製される突固め機械加工チップが含まれる。機械加工プロセスにおいて誘導された低温加工によって、チップ中にナノ結晶質の粒度が生じる。高エネルギーミル処理と同様に、この技術は機械加工プロセスからの汚染が問題であり、かつ、ルーズな粉末又はチップを圧密化してバルク固体とするための高額な二次操作(熱間静水圧プレス加工、押出し、爆発圧搾等)の使用も必要である。制御が慎重に行われない場合には、多くの場合、この二次プロセスは圧密化の間に初期の微細構造が損傷され得る。
【0005】
等径角度付き押出し法(ECAE)は、金属又は合金をフローの方向を変化させてダイに通過させる高剪断プロセスである。極めて高いひずみが生じ、その結果微粒化される。しかしながら、サブミクロン粒度にするには、金属を複数(3〜4)回ダイに通過させねばならず、これによってプロセス処理及びコストが高額になる。
【0006】
他の文献、例えばA. C. Hall, L. N. Brewer and T. J. Roemer, "Preparation of Aluminum coatings Containing Homogeneous Nanocrystalline Microstructures Using the cold Spray Process", JTTEES 17:352-359には、皮膜がコールドスプレーにより作製された場合、サブミクロン粒度の粉末からなる薄い皮膜はサブミクロン粒度を保持することが示されている。さらに、アルミニウムを用いたある事例では、サブミクロン粒度が低減された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. C. Hall, L. N. Brewer and T. J. Roemer, "Preparation of Aluminum coatings Containing Homogeneous Nanocrystalline Microstructures Using the cold Spray Process", JTTEES 17:352-359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、三次元の大きなサブミクロン粒度の結晶質の構造体の単純で経済的な製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、実質的に5〜10ミクロン及びそれより大きい通常の粒度の特定の金属粉末が、超音速で比較的低温で発射され、かつ基材上に堆積された場合、サブミクロン粒子構造を有する稠密な固体が形成されることが見出された。この堆積物は全三次元において大きく形成されることができ、かつこの基材を容易に除去し、ナノ結晶質堆積物のみを残留させることができる。この堆積物は、耐火性の金属皮膜が典型的に厚さ0.5mm未満、通常0.1mm未満であり、かつ、その物理的集結性を維持するために、基材へ付着したままであることに依存しているという点で、皮膜とは異なる。この場合、厚さの寸法は、1〜2cmまで及びこれを上回って極めて大きいことができる。この大きな厚さによって、堆積物を基材から取り外して自立形の適用において使用することが可能となる。
【0010】
本発明により、Ta、Nb及びMo金属(いずれもBCC構造であり、かつ高い溶融点温度を有する)に関する上記挙動が実証され、これは速度感受性である普遍的現象であると考えられる。
【0011】
図1は、コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示し;
図2は、コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb複合材のSEM顕微鏡写真であり、
図3は、MoTiスパッタリングターゲットの拡大写真であり、かつ
図4は、コールドスプレーされたMoTi種のSEM拡大顕微鏡写真である。
【0012】
本発明により、サブミクロン粒子構造を有する三次元の大きな構造体の製造法が見出された。このサブミクロン粒子構造体は、粒子間結合強度の向上、加工硬化の排除及び延性の向上のために使用され得る、高められた温度での加工の間の成長にも抗する。さらに、この堆積物は、ECAE加工のための出発材料として使用することもでき、完全に稠密化された微細で均質な構造体の開発に必要なパスの数が1つに低減される。
【0013】
一般に、サブミクロン範囲のサイズからなる三次元の大きな金属構造体の製造法には、超音波粉末ジェットを基材に当てて粉末を基材及び該粉末自体に付着させ、稠密な凝集堆積物を形成させることが含まれる。その結果、かかる堆積物から、これに限定されるものではないが、爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜を含む生成品が作製され得る。該方法において、粉末ジェットは耐火性の金属粉末からなることができる。それにより、サブミクロン粒度の微細構造を有する金属粉末からなる稠密な金属構造体は、耐火性の金属構造体として有用である。本発明は、粉末を超音波ジェットにより堆積させ、かつ等径角度付き押出し法により押出し加工するというように実施することができる。堆積物は、基材に付着したままでもよいし、基材から除去されてもよい。
【0014】
本発明は、公知のコールドスプレー系を用いて実施することができ、その際、例えば、加熱されたガス、例えば窒素を使用して、粉末を加速させて超音波粉末ジェットを形成し、このジェットを基材に当てる。超音波粉末ジェットを基材に当てて粉末が基材及び該粉末自体に付着した場合、得られる稠密な凝集堆積物は、サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示す図。
【図2】コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb複合材のSEM顕微鏡写真を示す図。
【図3】MoTiスパッタリングターゲットの拡大写真を示す図。
【図4】コールドスプレーされたMoTi種のSEM拡大顕微鏡写真を示す図。
【実施例】
【0016】
以下に示す結果は全てKinetics 4000コールドスプレー系を用いて達成されたものである。これは市販の標準的な系である。一般に、コールドスプレー法はターゲットに向いたガスフローを含み、その際、このガスフローは粉末と共にガス粉末混合物を形成する。このガスフローに超音速を印加する。超音速のジェットを基材の表面に当て、それにより基材にコールドスプレーが行われる。PCT出願US2008/062434号には、コールドスプレー技術が開示されている。前記出願の全詳細が参照により援用される。本発明の実施において、粉末を加速させ、かつ超音波粉末ジェットを形成するために、500〜800℃の温度でかつ約30バールの加熱された窒素ガスを使用した。このジェットを典型的に銅又は鋼基材に当てた。基材は通常、円筒形、円筒状又は平面状であった。管形、ボウル状及び平円盤及び矩形体を形成した。金属組織試料を成形体から切断し、機械的に研磨した。微細構造を、FIB SEMを二次及び後方散乱モードの双方で使用して調査した。この実験において、コールドスプレーに適用するためのHC Starck社製の特に高純度のタンタル、ニオブ及びモリブデン粉末を使用した。
【0017】
図1は、コールドスプレーにより作製された管状のタンタルプリフォームを示す。このプリフォームは、長さ約150mm、外側直径85mm及び肉厚14mm、質量8.8kgである。これは三次元の大きな構造体の一例である。
【0018】
図2は、コールドスプレーにより作製されたスパッタリングターゲットから採取したTaNb(50/50w/o)複合材のSEM顕微鏡写真である。Taは明色の相として現れており、かつNbは暗色の相として現れている。この図の左側は、Ta微細構造の詳細を明らかにするために輝度及びコントラストを調整したものであり、一方で右側はNb微細構造を明らかにするために調整したものである。Ta粉末粒子の表面近傍では、微細構造が典型的に400〜500ナノメートル未満の粒子からなり高度に微細化されていることが明らかである。内側へ移ると、構造はさらに拡散している。これは、粒子の外側から内側に向かって生じたひずみにおける勾配によるものであると考えられ、それというのも、内側が受ける変形の方が少ないためである。この勾配は、単純に、より微細な粉末及び恐らくより高い粒子速度を使用することにより排除することができる。顕微鏡写真の右側は、周辺のNbの微細構造を示している。多くの粒子サイズがなおもサブミクロンであるのに対して、微粒化のレベルがTaにおいて生じている微粒化のレベルよりも著しく低いことが明らかである。図2は、該図の左側及び右側の双方の底部に、ミクロンの標識を示すバーを含む。
【0019】
図3は、MoTi(67/33w/o)直径125mmのスパッタリングターゲットの拡大写真である。図1と同様に、これはまさに、大きな、自立形の物体を形成するための、コールドスプレーに関する可能性を示している。
【0020】
図4は、コールドスプレーされたMoTi種の高倍率顕微鏡写真である。この種は700℃で1.5時間、真空アニールしたものである。明色の相はMoであり、暗色の相はTiである。Moにおいて粒度は500ナノメートルオーダーであるのに対して、Tiにおいて粒子はほぼマイクロメートルのサイズにまで成長した。図4には、該図の底部の中央に配置された、ミクロンの標識を示すバーが記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体の製造法において、超音波金属粉末ジェットを基材に当て、粉末を基材及び該粉末自体に付着させて、サブミクロン粒構造を有しかつ全三次元においてサイズの大きな稠密な凝集堆積物を形成させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
粉末ジェットが耐火性の金属粉末を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
製造された三次元の大きな金属構造体が耐火性の金属構造体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
粉末を超音波ジェットにより堆積させ、かつ等径角度付き押出し法により押出す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
三次元の大きな金属構造体を製造する際に、堆積物を基材に付着させたままにする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
基材と堆積物との相互の分離を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
製造された三次元の大きな金属構造体が、爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜からなる群から選択された生成品である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
方法においてコールドスプレー系を使用し、その際、粉末を加速させて超音波粉末ジェットを形成させるために、加熱されたガスを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
粒子間の結合及び又は延性を増加させるため、又は加工硬化を低減するために、アニーリング工程が組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
粒子間の結合及び又は延性を増加させるため、又は加工硬化を低減するために、熱処理工程が組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
粉末が、タンタル、ニオブ及びモリブデンからなる群から選択されている、請求項1記載の系。
【請求項12】
請求項1記載の方法により製造されたサブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体。
【請求項13】
請求項1記載の方法により製造された耐火性の金属構造体。
【請求項14】
噴霧後にアニール又は熱処理された、請求項1記載の方法により製造された耐火性の金属構造体。
【請求項15】
請求項1記載の方法により製造された爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜からなる群から選択された生成品。
【請求項1】
サブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体の製造法において、超音波金属粉末ジェットを基材に当て、粉末を基材及び該粉末自体に付着させて、サブミクロン粒構造を有しかつ全三次元においてサイズの大きな稠密な凝集堆積物を形成させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
粉末ジェットが耐火性の金属粉末を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
製造された三次元の大きな金属構造体が耐火性の金属構造体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
粉末を超音波ジェットにより堆積させ、かつ等径角度付き押出し法により押出す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
三次元の大きな金属構造体を製造する際に、堆積物を基材に付着させたままにする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
基材と堆積物との相互の分離を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
製造された三次元の大きな金属構造体が、爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜からなる群から選択された生成品である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
方法においてコールドスプレー系を使用し、その際、粉末を加速させて超音波粉末ジェットを形成させるために、加熱されたガスを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
粒子間の結合及び又は延性を増加させるため、又は加工硬化を低減するために、アニーリング工程が組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
粒子間の結合及び又は延性を増加させるため、又は加工硬化を低減するために、熱処理工程が組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
粉末が、タンタル、ニオブ及びモリブデンからなる群から選択されている、請求項1記載の系。
【請求項12】
請求項1記載の方法により製造されたサブミクロン粒度からなる三次元の大きな金属構造体。
【請求項13】
請求項1記載の方法により製造された耐火性の金属構造体。
【請求項14】
噴霧後にアニール又は熱処理された、請求項1記載の方法により製造された耐火性の金属構造体。
【請求項15】
請求項1記載の方法により製造された爆発的に形成された発射体及び運動エネルギー圧子及び水素膜からなる群から選択された生成品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−90477(P2010−90477A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232394(P2009−232394)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
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