サンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法
【課題】各画素のサブピクセル数が偶数であるディスプレイに、ディスプレイの画素数よりも多い画素数の高精細画像信号のサンプリングレート変換をして画像を表示する際に、ハードウェア及びソフトウェアの処理規模と電力の増大を抑制する。
【解決手段】サブピクセル画素数変換器12は、輝度信号Laに対して、サブサンプリング画素数変換時のサンプリング周波数3412cpLの1/2倍のサンプリング周波数1706cpLでサンプリング画素数変換した輝度信号Lbsを生成する。第1の画素単位画素数変換器13は、輝度信号Laに対して、サンプリング周波数853cpLでサンプリングした画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを生成して出力する。特徴検出器15は、輝度信号Lbsの高域に混入している特定の波形パターンを検出し、その検出結果に基づいて生成した混合器16の混合割合を制御する制御値αを出力する。
【解決手段】サブピクセル画素数変換器12は、輝度信号Laに対して、サブサンプリング画素数変換時のサンプリング周波数3412cpLの1/2倍のサンプリング周波数1706cpLでサンプリング画素数変換した輝度信号Lbsを生成する。第1の画素単位画素数変換器13は、輝度信号Laに対して、サンプリング周波数853cpLでサンプリングした画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを生成して出力する。特徴検出器15は、輝度信号Lbsの高域に混入している特定の波形パターンを検出し、その検出結果に基づいて生成した混合器16の混合割合を制御する制御値αを出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法に係り、特にディスプレイの画素数より多い画素数の入力画像信号をディスプレイに表示させるために、入力画像信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な表示装置(ディスプレイ)のうち、マトリクス状に配列された複数の画素を、一定の順序で発光させるディスプレイでは、各信号データ値に各画素が対応している。このようなディスプレイには、例えばプラズマディスプレイ(PDP;Plasma Display Panel)、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)、また同様の素子を使ったプロジェクタなどが該当する。
【0003】
これらのディスプレイでは、図14(A)に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応する3つの発光素子(サブピクセル)からなる配列を一組として1画素を構成し、各画素により輝度や色彩を再現している。図14(A)では、赤色発光素子1R、緑色発光素子1G及び青色発光素子1Bにより画素1が構成され、赤色発光素子2R、緑色発光素子2G及び青色発光素子2Bにより画素2が構成されている。最近ではさらに原色数を増やして4原色や6原色など多原色とした広色域のディスプレイが実現されている。
【0004】
広色域のディスプレイでは、原色数とサブピクセルを追加する。ここでは原色数とサブピクセル数が一致していることとして取り扱う。サブピクセル数を4原色にした場合の例を図15に示す。4原色ディスプレイとしてはRGBにエメラルドなどシアン系や黄色が追加された例がある。なお、本明細書では、区別のため黄色又は黄色信号をYと表記し、輝度信号をルミナンスの頭文字をとってLと表記するものとする。
【0005】
ここでは黄色(Y)のサブピクセルがRGBの3つのサブピクセルに追加されているものとして説明する。図15(A)は、4つのサブピクセル(発光素子)から1画素を構成する例を示しており、赤色発光素子1R、緑色発光素子1G、青色発光素子1B及び黄色発光素子1Yにより画素1が構成され、赤色発光素子2R、緑色発光素子2G、青色発光素子2B及び黄色発光素子2Yにより画素2が構成されている。
【0006】
図16は、各画素が上記のように4つのサブピクセルから構成されるディスプレイを備える画像表示装置の一例のブロック図を示す。この画像表示装置100は、画素数変換部101、マトリクス部102、及びパネル107を有する。画素数変換部101は、入力された信号の画素数を、画素数変換によりディスプレイの画素数に合わせる。信号の画素数とディスプレイの画素数が一致している場合もあるが、近年信号源が多様化しているため、このような画素数変換部101はほぼ必須となっている。
【0007】
ここで入力される信号は、テレビジョンの伝送信号である輝度信号Lと色差信号U及び色差信号Vとからなる。色差信号(U信号及びV信号)は、NSTC(National Television Standards Committee)などの標準信号(SD信号)では、色差信号(B−L)がCbと呼称され、色差信号(R−L)がCrと呼称される。また、高精細信号(HD信号)では、色差信号(B−L)がPbと呼称され、色差信号(R−L)がPrと呼称される。測色パラメータの関係で伝送マトリクス係数値が標準信号と高精細信号とで異なるため、色差信号が区別して呼称されているが、ここでは色差信号を総称して色差信号(B−L)を色差信号U、色差信号(R−L)を色差信号Vと呼称するものとする。
【0008】
マトリクス部102は、画素数変換部101で画素数変換された輝度信号Lと色差信号U及び色差信号VとをR信号、G信号、B信号及びY信号に変換し、パネル107に転送する。パネル107はメモリ機能を有し、各画素が各信号データ値に応じて発光する。ここで、パネル107のメモリ機能は、パネル107の物理的なメモリ機能と、電子的なフレーム(1画面)またはライン(1水平周期)メモリとによって得られるものであって、R画素データ103、G画素データ104、B画素データ105、及びY画素データ106が、パネル107の各画素に一対一で対応して階調を再現することを意味する。
【0009】
図17(A1)、(A2)は、従来の画素数変換をモデル化して示す。従来の画素数変換では、例えば図17(A1)に示すように水平方向1920画素及び垂直方向1080画素からなる1フレームの高精細の輝度信号Lが、同図(A2)に示すように水平方向853画素及び垂直方向480画素からなるディスプレイに対応して変換される。
【0010】
水平方向に着目した場合、図17(A2)に示したディスプレイに表示される画素数変換後の輝度信号の周波数特性は、図18(A)に示すように、サンプリング周波数(サンプリングレート)が853サイクル/ライン(以下「cpL」と略す)であり、信号の再現可能範囲の上限であるナイキスト周波数が、サンプリング定理により、サンプリング周波数の1/2である約426cpLとなる。なお、上記のサンプリング周波数の数値「853」は、小数点第1位を四捨五入したものであるが、以下説明する他の数値は特に断らない限り、小数点第1位を切り捨てて説明する。一方、図17(A1)に示した画素数変換前の高精細の輝度信号Lの周波数特性は、図18(A)に示すように、サンプリング周波数(サンプリングレート)が1920cpLであり、そのナイキスト周波数は960cpL(=1920cpL/2)である。
【0011】
従来の画素数変換では、上記のように高精細の輝度信号のサンプリング周波数(サンプリングレート)が、1920cpLから853cpLに変換されるが、このとき、折り返し(エイリアシング)を抑えて位相を合わせるフィルタ処理が行われる。色差信号についても同様にサンプリング周波数変換及びフィルタ処理が行われるが、ここでは一般的な伝送信号に従ってサンプリング周波数は、輝度信号の最高周波数の1/2倍の周波数(上記の例では960cpL)としている。なお、色差信号は、輝度信号と同一の画素数(または同一のサンプリング周波数)の場合もある。
【0012】
ここで、画素数変換において、高域通過のフィルタ特性のカットオフ周波数が426cpLより高域周波数であるほど、図18(A)に示すように、ナイキスト周波数426cpLを境に折り返しが発生して妨害となる。しかし、この折り返し妨害の発生を避けるために、画素数変換において高域通過のフィルタ特性のカットオフ周波数を426cpL以下にするほど解像度が小さくなり画質が悪化する。
【0013】
そこで、表示品位を向上させるために、解像度の高い画像を解像度の低いディスプレイで表示する画像に変換する場合、解像度の高い画像信号をディスプレイのサブピクセル数に基づく周波数のサンプリング周波数でサンプリングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
また、高精細度テレビジョン(HDTV)信号から標準精細度(SD)信号への変換において、サブピクセル信号レートで変換を行い広帯域で折り返し妨害が抑制された変換画像を得るサンプリングレート変換装置も本発明者により開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2004−524729号公報
【特許文献2】特開2005−316392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1及び2では入力画像信号をサブピクセル信号のサンプリングレートへ変換することで折り返し妨害を抑制して高解像度に画素数変換するものであるが、4原色や6原色などサブピクセル数が多くなるほどサンプリング周波数が高くなり、ハードウェア及びソフトウェアでサンプリングレート変換を実現する場合、処理規模と電力の増大を招く問題がある。また、サブピクセル信号のサンプリングレートで高解像度に画素数変換すると擬似色妨害が発生するという問題もある。
【0017】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、各画素のサブピクセル数が偶数であるディスプレイに、ディスプレイの画素数よりも多い画素数の高精細画像信号のサンプリングレート変換をして画像を表示する際に、ハードウェア及びソフトウェアの処理規模と電力の増大を抑制したサンプリングレート変換を行うことができるサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、サブピクセル画素数変換レートよりも低いサンプリングレートで変換することにより、擬似色妨害をより低減させるサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換部と、輝度信号を、ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換部と、画像信号を構成する色差信号及びサブピクセル画素数変換部から出力される第1の輝度信号に基づいて、第1の輝度信号と画素単位画素数変換部から出力される第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出部と、第1の輝度信号と第2の輝度信号とを制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合部と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、上記特徴検出部は、第1の輝度信号より特定の波形パターンを検出すると、特定の波形パターンの輝度信号値及び色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成して最小値信号を生成する最小値信号生成部と、最小値信号をフィルタ処理して2M個のサブピクセルを1画素とする画素単位に完結された制御値を生成するフィルタとを有することを特徴とする。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、上記混合部は、制御値が小さくなるほど、第1の輝度信号の混合割合を、第2の輝度信号の混合割合に比べて多く混合することを特徴とする。
【0022】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、画素単位画素数変換部が、サブピクセル画素数変換部が入力信号をサンプリングする第2のサンプリング周波数のクロックのトリガ点タイミングと、入力される高精細画像信号を構成する輝度信号をサンプリングする第3のサンプリング周波数のクロックのトリガ点とが一致するように画素単位画素数変換することを特徴とする。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換方法は、1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換ステップと、輝度信号を、ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換ステップと、画像信号を構成する色差信号及びサブピクセル画素数変換ステップで生成された第1の輝度信号に基づいて、第1の輝度信号と画素単位画素数変換ステップで生成された第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出ステップと、第1の輝度信号と第2の輝度信号とを制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合ステップと、を含むことを特徴する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各画素のサブピクセル数が偶数であるディスプレイに、ディスプレイの画素数よりも多い画素数の高精細画像信号のサンプリングレート変換をして画像を表示する際に、ハードウェア及びソフトウェアの処理規模と電力の増大を抑制したサンプリングレート変換を行うことができ、また折り返し妨害及び疑似色妨害の発生を抑制しつつ、高品位な変換画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のサンプリングレート変換装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】サブピクセル画素数変換の概念を説明するための図である。
【図3】サブピクセル画素数変換後のスペクトル成分を説明するための図である。
【図4】4原色で4サブピクセルの画素において、サブピクセル画素数変換レートを1/2に下げた場合の画素とサブピクセルと変換データとの関係を示す図である。
【図5】6原色で6サブピクセルの画素において、サブピクセル画素数変換レートを1/2、1/3に下げた場合の画素とサブピクセルと変換データとの関係を示す図である。
【図6】サブピクセル画素数変換レートを1/2にした場合のスペクトル成分を説明するための図である。
【図7】サブピクセル画素数変換を詳細に説明するための図である。
【図8】サブピクセル画素数変換後の輝度信号を含むLUV信号を、RGBY信号に変換する方法を説明するための図である。
【図9】サブピクセル画素数変換を1/2のレートで変換した後の輝度信号を含むLUV信号を、RGBY信号に変換する方法を説明するための図である。
【図10】図1中の混合器から出力される輝度信号の周波数特性を説明するための図である。
【図11】図1中の混合器における混合処理を説明するための波形図である。
【図12】図1中の画像の特徴検出器において画素単位に完結処理された信号(制御値)を説明するための波形図である。
【図13】図1中の各部におけるクロックとデータとの関係を示す図である。
【図14】1画素(ピクセル)と3原色の発光素子(サブピクセル)との関係を示す図である。
【図15】1画素(ピクセル)と4原色の発光素子(サブピクセル)との関係を示す図である。
【図16】4原色ディスプレイにおける画像の表示を説明する図である。
【図17】ディスプレイと画素単位画素数変換、及びサブピクセル画素数変換の関係を示す図である。
【図18】画素単位画素数変換と、サブピクセル画素数変換のそれぞれにおける周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明になるサンプリングレート変換装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10は、高精細の輝度信号La(サンプリング周波数1920cpL)に対して変換後に必要な帯域に制限するプリフィルタ11と、プリフィルタ11で帯域制限された高精細の輝度信号に対してサブピクセル画素数変換を行うサブピクセル画素数変換器12と、プリフィルタ11で帯域制限された高精細の輝度信号に対して画素単位画素数変換を行う第1の画素単位画素数変換器13と、高精細の色差信号Ua及び色差信号Vaに対して画素単位画素数変換を行う第2の画素単位画素数変換器14と、画像の特徴検出器15と、混合器(MIX)16と、LUV信号をRGBY信号に変換するマトリクス変換器17とを備えている。そして、マトリクス変換器17から並列に出力されるR信号、G信号、B信号及びY信号(以下、これらを総称してRGBY信号ともいう)が、ディスプレイパネル(図示せず)に供給される。
【0028】
ここで、まず、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10において行われるサブピクセルレンダリング技術を活用した画素数変換(サブピクセル画素数変換)について図面を参照して説明する。
【0029】
サブピクセルレンダリング技術は、一般には、図14(A)に示すようにRGBの3原色を使って3つ(奇数)のサブピクセル(発光素子)から1画素が構成されるのに対し、図14(B)に示すように、R、G、Bの各サブピクセルをそれぞれ1画素と見なして、サブピクセル毎に輝度を再現する技術である。すなわち、図14(A)にはサブピクセル1R、1G、1Bを1画素として取り扱う場合(画素数2)を示し、図14(B)には、サブピクセルRを1画素、サブピクセルGを1画素、サブピクセルBを1画素として取り扱う場合(画素数6)を示す。
【0030】
本実施の形態では、図15(B)に示すようにRGBにY(黄)を加えた4原色を使って4つ(偶数)のサブピクセルRGBYのそれぞれが1画素を構成する場合について説明する。図15(A)にはサブピクセル1R、1G、1B、1Yを1画素として取り扱う場合(画素数2)を示し、図15(B)には、サブピクセルRを1画素、サブピクセルGを1画素、サブピクセルBを1画素、サブピクセルYを1画素として取り扱う場合(画素数8)を示す。
【0031】
また、サブピクセルレンダリング技術は、画素単位ではなくサブピクセルで輝度を再現するものである。
【0032】
図17(B1)、(B2)は、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10により、ディスプレイの画素数より画素数が多い高精細画像をディスプレイに表示するための、サブピクセル画素数変換のモデルを示す図である。ここでは、水平方向にRGBYの各サブピクセルが順に配列されるため、図17(B1)に示すように水平方向1920画素及び垂直方向1080画素からなる1フレームの高精細の輝度信号Lをサブピクセル画素数変換(サンプリングレート変換)して、同図(B2)に示すように、水平方向の画素数が3412画素(=853×4画素)、垂直方向の画素数480画素の輝度信号とする。図17(B2)における画素数変換後の画素数は、厳密にはサブピクセル数であるが、サブピクセル画素数変換では、各サブピクセルを輝度が再現できる1画素と見なして画素数変換を行う。
【0033】
図18(B)は、サブピクセル画素数変換における水平方向の周波数特性を示す。サブピクセル画素数変換では、サンプリング周波数が、高精細画像信号のサンプリング周波数である1920cpLから3412cpL(=853cpL×4)に変換される。すなわち、従来の画素数変換では、図18(A)に示したようにサンプリング周波数を、1920cpLから853cpLにダウンサンプリングしたのに対して、サブピクセル画素数変換では、同図(B)に示すようにサンプリング周波数を、1920cpLから3412cpLにアップサンプリングする。
【0034】
図2に、サブピクセル画素数変換を模式的に示す。サブピクセル画素数変換では、従来の1画素を構成するRGBYのサブピクセルのうち、水平方向の画素数1920画素の輝度信号Lをサブピクセル毎の輝度信号(L1R、L1G、L1B、L1Y、・・・)に変換する。水平方向の画素数960画素の色差信号U、色差信号Vを水平方向の画素数853画素の色差信号に変換する。
【0035】
図3は、サブピクセル画素数変換後のスペクトル成分の説明図を示す。サブピクセル画素数変換により、輝度信号を再現できる範囲の最高周波数は、図3に「ワイドSDのサブピクセル画素での再現範囲」として示すように、ワイドSDディスプレイサブピクセルのサンプリング周波数(3412cpL)のナイキスト周波数である1706cpLとなる。言い換えると、1水平周期の画素数(853cpL)に対して1画素が4サブピクセルから構成される場合のサブピクセルサンプリング画素数変換時の変換サンプリング周波数は、画素数の4倍の値(3412cpL)となる。これにより、輝度信号が理論的に再現できるナイキスト周波数は画素数の2倍の値(1706cpL)となる。一方、高精細画像信号(HD信号)を再現できる範囲の最高周波数は、図3に「HD信号成分」として示すように、高精細画像信号のサンプリング周波数(1920cpL)のナイキスト周波数である960cpLである。また、水平方向の画素数853画素のディスプレイの再現可能範囲は、図3に「ワイドSD再現範囲」として示すように、426cpL以下の周波数となる。
【0036】
ここで、サブピクセル画素数変換後の輝度信号における、ワイドSDディスプレイのナイキスト周波数である426cpL以上で、かつ、ワイドSDディスプレイサブピクセルのナイキスト周波数である1706cpL以下の帯域は、サブピクセルで輝度信号を再現することにより広帯域化できる帯域である。従って、サブピクセル画素数変換により、ナイキスト周波数を従来の426cpLから1706cpLに向上させて、折り返し妨害の発生を抑制しつつ高品位な変換画質を得ることが可能である。
【0037】
一方、各サブピクセルは、高域の輝度成分において各サブピクセル固有の色(R,G,B,Y)を有するため、上述した広帯域化の代償として、擬似の色妨害が発生する問題がある。そのため、本実施形態のサンプリングレート変換装置10は、サブピクセル画素数変換された輝度信号と、擬似色妨害がない通常の画素単位で画素数変換された輝度信号とを擬似色妨害が出ないように適応させて混合することにより、サンプリングレートの変換を行うように構成する。
【0038】
ところで、本発明では1画素のサブピクセル(原色)数は従来の「3」ではなく、「4」または「6」などの4以上の偶数の場合を想定している。本実施の形態では1画素のサブピクセル数が「3」ではなく「4」に増加した分、図3に示したようにサブピクセルのサンプリング周波数が高域に上がり、それに合わせてサブピクセルによるナイキスト周波数(1706cpL)がHD信号のナイキスト周波数(960cpL)からすると必要以上に高くなり広帯域化した。この広帯域化はサンプリングレート変換装置を実現する上ではハードウェアの規模や消費電力の増大を招く問題がある。またソフトウェアでサンプリングレート変換装置を実現する場合も演算量の増大を招き同様の問題がある。
【0039】
そこで、上記の問題を解決するため、本発明ではサブピクセルの画素数変換レートをN分の1(Nは2以上の自然数)に低下させる。そして低下させる条件として、後述する適応処理を実現するために画素単位にサブピクセルが完結するように位相を規制して低下させる数Nを選ぶものである。具体的には、図4(A)に示すように1画素が4つのサブピクセルR,G,B,Yから構成される場合、先述した通り各サブピクセルを1画素とみなして4画素とするのではなく、図4(B)に示すように2つのサブピクセルを1つのサブピクセル(画素)として扱う。例えば、図4(A)に示すサブピクセルRとサブピクセルGの2つのサブピクセルを、図4(B)に示すように1つのサブピクセル(R,G)として取り扱う。従って、サブピクセルレートの周期は図4(A)に比し2倍になる。なお、サブピクセルレートの周期の変化点は、画素単位の変化点と揃うように設定する。これにより、1画素を2サブピクセルとして扱うことができる。
【0040】
同様に、図5(A)に示すように、1画素のサブピクセル数が「6」(R,G,B,Y,M,C)である場合は、サブピクセルの画素数変換レートを1/2にすると同図(B)に示すように1画素のレート変換後のサブピクセル数は「3」となり、サブピクセルの画素数変換レートを1/3にすると、同図(C)に示すようにレート変換後のサブピクセル数は「2」となる。これにより、1画素を3サブピクセルまたは2サブピクセルとして扱うことができる。このようにサブピクセルの画素数変換レートを低下させることで、実現に向けたハードウェアやソフトウェアの負担がより低減できる。すなわち、本発明では、上記のNは、1画素のサブピクセル数が偶数であるときの、サブピクセル数を割り切れる2以上の自然数とする。
【0041】
図6は、1画素のサブピクセル数が「4」で、その画素数変換レートを1/2にした場合の周波数領域の説明図を示す。サブピクセル数が「4」で、サブピクセルの変換レートを低下させてサブピクセルの低域化サンプリング周波数を、サブピクセルをそれぞれ1画素とした時のサブピクセル画素数変換時のサンプリング周波数の1/2倍に選定すると、画像信号のサブピクセル画素数変換時のサンプリング周波数が3412cpLの場合、サブピクセルの低域化サンプリング周波数は1706cpLとなり、それによるナイキスト周波数は853cpL(=1706cpL/2)となる。従って、この場合の信号再現範囲は、図6にIで示すワイドSDのサブピクセル1/2サンプリング再現範囲のように、853cpL以下の周波数範囲となる。
【0042】
信号再現範囲Iは、図6にIIで示す960cpL以下の高精細信号の信号再現範囲に近いので、上記のサブピクセルの低域化サンプリング周波数1706cpLは必要以上に高くないサンプリング周波数であることが分かる。なお、この場合、高精細信号の信号再現範囲IIより信号再現範囲Iの方が帯域が狭いため、プリフィルタ11により輝度信号の帯域を制限する。
【0043】
図7は、サブピクセル画素数変換を詳細に説明するための図を示す。図7では、画素データの変化点、すなわちデジタル回路におけるクロックによるトリガ点が上向きの矢印で示されている。図7(A)はサンプリング周波数1920cpL(第1のサンプリング周波数)でサンプリングされた画素数変換前のHD信号の時間領域での画素データの変化点を上向きの矢印で表し、図7(D)は第2のサンプリング周波数1706.66cpLでサンプリングされたサブピクセル画素数変換後の画素データの時間領域での変化点を上向きの矢印で表している。なお、これまでは小数点1桁以下を切り捨てていたが、図7では小数点以下2桁まで記載して説明する。
【0044】
ここで、図7(A)に示す画素数変換前のHD信号のサンプリング周波数(1920cpL)と図7(D)に示す画素数変換後のサブピクセルレートの1/2であるサンプリング周波数(1706.66cpL)との比は9:8となり、ハードウェアで実現するうえで比較的簡単な整数比である。ディスプレイの画素数と高精細信号の画素数との比が上記値より大きい場合は、画素数変換が複雑な処理になるが、サブピクセル画素数変換の原理は同じである。また、ディスプレイの画素数よりも僅かに多めのサブピクセル画素数に画素数変換して、ディスプレイ表示上で切り捨てる場合もある。これは陰極線管(CRT;Cathode Ray Tube)におけるオーバースキャンに相当するもので、ここで取り扱うサブピクセル画素数変換で想定される範囲である。また、ディスプレイ間の変換だけでなく、ディスプレイ内の特定の領域への画素数変換においても、本変換方式は同様に機能するものである。
【0045】
SDのディスプレイ画面の高さ方向の画素数を480画素としてアスペクト16:9の場合、画面の横方向(水平)の画素数は853.33となる。この853.33を基準として各サンプリング周波数の関係を説明する。
【0046】
図7(B)は、サンプリング周波数15360cpL(=1920×8,又は1706.66×9)でサンプリングされた信号の時間領域での画素データの変化点を上向きの矢印で表している。サンプリング周波数15360cpLは、変換前の第1のサンプリング周波数1920cpLと変換後の第2のサンプリング周波数1706.66cpLとの最小公倍数であり、図7(C)に模式的に示す8種類(内4つ図示)の信号位相に従って、所定のデジタルフィルタにより内挿処理されたものである。図7(C)において、丸数字0から丸数字7の表記は、デジタルフィルタの係数を示している。また丸数字を囲った四角は、囲んだ丸数字の係数が図7(A)に示すHD信号がある位相に相当し演算されることを意味する。
【0047】
図7(B)に示す信号から、同図(D)に示す第2のサンプリング周波数(1706.66cpL)でサンプリングされた所望の位相の信号を抽出することにより、画素数変換後の輝度信号が得られる。なお、図7(E)は、従来の画素単位の画素数変換により、ディスプレイにおける水平方向の画素数に基づいて得られる変換後の信号を示す。また、図7(F)は、図7(B)、(D)、(E)に示す各信号の周波数領域のスペクトルを示している。
【0048】
サブピクセル画素数変換された信号は、マトリクス処理されて原色信号に戻され、ディスプレイに表示される。図8に1画素を構成するサブピクセルが4の際に従来の方法でサブピクセル変換した信号をマトリクス処理してディスプレイに表示する例の説明図を示す。同図(A)に示すサブピクセル画素数変換後の輝度信号LR、LG、LB、LYは、同図(B)に示すマトリクス変換器17によりマトリクス変換されて、輝度信号LR、LG、LB、LYの高域成分が入ったR信号、G信号、B信号、Y信号とされる。
【0049】
R信号、G信号、B信号、Y信号は、図8(C)において「1」、「2」、「3」、「4」で示されるように、1画素あたり4つの位相を有する。これらの中から、ディスプレイの1画素におけるRGBYサブピクセルの配列順序に一対一で対応している位相が、有効位相となり、有効位相部における信号が各サブピクセルデータとなる。図8(C)では、有効位相以外の位相の信号に×印が付されている。
【0050】
図8に示す例において、ディスプレイの1画素におけるRサブピクセルの配列順が「1」であるので、ディスプレイ上におけるR信号の位相は「1」であり、マトリクス変換後の出力における位相が「1」の信号が有効となる。同様に、G信号の位相は「2」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「2」の信号が有効となり、B信号の位相は「3」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「3」の信号が有効となる。Y信号の位相は「4」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「4」の信号が有効となる。図8(D)に示すように、有効位相の信号が取得され、その有効位相のR信号、G信号、B信号、Y信号が図8(E)に示すようにディスプレイの各サブピクセルで表示される。
【0051】
上述したように本実施形態では、サブピクセル画素数変換のサンプリングレートを1/2のサンプリングレートにしているので、1画素あたり2つの位相からなる。図9に、サブピクセル変換レートを1/2とした場合の原色信号RGBYに変換される画素の状態を示す。サブピクセル画素数変換により1画素のサブピクセル数が1/2の「2」となっているので、マトリクス変換器17に入力する輝度信号は図9(A)に示すように、サブピクセルのRとGの位相(「1」「2」)の輝度信号LRGとBとYの位相(「3」「4」)のLBYの2つの位相の輝度信号からなる。
【0052】
図9(B)に示すマトリクス変換器17がこれらの輝度信号をマトリクス変換することにより、図9(C)に模式的に示すように、R信号とG信号とが「1」と「2」の位相に、B信号とY信号とが「3」と「4」の位相に有効な信号を出力する。図9(C)において×印は無効な信号位相を意味している。マトリクス変換器17で取得された有効な信号は図9(D)に示すようにその画素の信号となり、同図(E)に示すようにディスプレイで各サブピクセルにて表示される。従来に比べてマトリクス変換器17においてもサンプリングレートは半分で済み、負担が軽減される。
【0053】
図1に戻って説明する。プリフィルタ11は、入力された第1のサンプリング周波数(1920cpL)でサンプリングされた画素数変換前のHD信号La(ナイキスト周波数960cpL)に対して、HD信号Laの高域成分が第2のサンプリング周波数(サブピクセルサンプリング周波数の1/2の周波数1706cpL)でサンプリングされた信号(ナイキスト周波数853cpL)に混入して折り返し妨害を発生させないように、ナイキスト周波数以上(853cpL以上)の帯域を制限する。
【0054】
サブピクセル画素数変換器12は、プリフィルタ11により帯域制限された輝度信号Laに対して本実施形態のサブピクセル画素数変換を行い、ディスプレイにおける水平方向のサブピクセルの数に対応した、図7(D)に示した第2のサンプリング周波数(1706cpL)でサンプリングしたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsを生成して出力する。
【0055】
第1の画素単位画素数変換器13は、プリフィルタ11により帯域制限された高精細の輝度信号Laに対して従来の画素単位画素数変換を行い、ディスプレイにおける水平方向の画素数に対応した第3のサンプリング周波数(図7(E)、853cpL)でサンプリングした画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを生成して出力する。
【0056】
第2の画素単位画素数変換器14は、入力された高精細の色差信号Ua,Va(最高周波数960cpL)を第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換して、ディスプレイにおける水平方向の画素数に対応した最高周波数426cpLの色差信号Ub,色差信号Vbを生成して出力する。第2の画素単位画素数変換器14の構成は、第1の画素単位画素数変換器13と同様であってもよいが、色差信号の帯域に基づいて簡易化されてもよい。
【0057】
特徴検出器15は、サブピクセル画素数変換器12から出力された輝度信号Lbs、及び第2の画素単位画素数変換器14から出力された画素単位画素数変換後の色差信号Ub,色差信号Vbに基づいて、サブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsの高域に混入している特定の波形パターン、例えば、疑似色妨害が発生する箇所を検出し、その検出結果に基づいて生成した混合器16の制御値αを出力する。
【0058】
特徴検出器15は、人の視覚の性質を踏まえて効果的な適応信号、すなわち制御値αを出力する必要がある。人の視覚の性質として、輝度レベルが高く明るい画面では、本来無彩色であるべきところに擬似色妨害が生じると視認しやすく、一方で、色の濃いところに擬似色妨害が生じても、周りの色にマスキングされて視認しにくいという性質がある。また、暗いところでは色が視認しにくいという性質もある。これらの視覚の性質、及び黒は発色しないことを踏まえて、黒い線の解像度を向上させるような制御値αを出力する必要がある。
【0059】
本実施形態における擬似色妨害は、高域成分であり面積は小さく局所的なものであるが、特徴検出器15により、できるだけ低減させることができる。
【0060】
混合器16は、サブピクセル画素数変換器12から出力されたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbs、及び第1の画素単位画素数変換器13から出力された画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを、制御値αに応じた混合割合で混合し、混合された輝度信号Lcを出力する。
【0061】
具体的には、混合器16は、制御値αに応じて、疑似色妨害が発生する箇所では、画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを優先した混合を行う。混合器16は、制御値αが=0であるときは、輝度信号Lbsを出力し、制御値αが=1であるときは、輝度信号Lbpを出力する。制御値αが0より大きく1より小さいときは、混合器16は制御値αの値が大きいほど輝度信号Lbsに比べて輝度信号Lbpの割合が相対的に大きくなるように二つの信号を混合した混合輝度信号Lcを出力する。すなわち、混合器16は、制御値αの値が輝度信号のレベルが低く、色が濃いことを示す0に近づくほど、サブピクセル画素数変換手段12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsを、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpに比べて混合割合が多くなるように混合した混合輝度信号Lcを出力する。
【0062】
マトリクス変換器17は、混合器16で混合されて出力された輝度信号Lcと、第2の画素単位画素数変換器14から出力された画素単位画素数変換後の色差信号Ub及び色差信号Vbとを入力信号として受け、これらの入力信号をマトリクス変換の演算を行い、高精細信号の高域成分を含んだR信号、G信号、B信号及びY信号を生成する。マトリクス変換されたR信号、G信号、B信号及びY信号は、ディスプレイ(図示せず)に出力される。
【0063】
図10は、混合器16で混合される輝度信号の周波数特性の説明図を示す。同図において、特性faは、サブピクセル画素数変換器12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsの周波数特性である。サブピクセルレートの1/2倍の周波数1706cpLをサンプリング周波数としているので、最高周波数853cpLまで理論的には再現できるが、ここでは、折り返し妨害を防止するためプリフィルタ11による輝度信号の帯域制限により853cpLを超えない信号帯域に設定している。
【0064】
一方、特性fcは、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpの周波数特性であり、ディスプレイのナイキスト周波数である426cpL近辺に高域カットオフ特性を持たせて、折り返しの影響が許容できるレベルとなるように帯域が抑圧された周波数特性に設定されている。周波数特性faは、プリフィルタ11と画素数変換時のフィルタ処理で決まる特性である。
【0065】
特徴検出器15から得られる制御値αに基づいて、混合器16によりサブピクセル画素数変換器12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsと、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpとの混合割合が制御されるので、混合器16の出力信号の周波数特性は、特性fcを下限とし、特性faを上限とする範囲内の特性となる。従って、疑似色妨害が発生し易い特定の波形パターンが検出されたとき、制御値αの値を1に近付けることにより、混合器16の出力信号の周波数特性は、特性fcに近付くので、疑似色妨害を適応的に抑制することが可能となる。
【0066】
次に、図1に示した擬似色妨害を低減するための制御値αを生成する特徴検出器15の動作について説明する。図11(A)は、特徴検出器15に入力される輝度信号Lbsの信号波形を示す。同図(A)において、明るい側がダイナミックレンジの「1」側である。また、図11(B)は、特徴検出器15に入力される色差信号Ua及び色差信号Vaから、特徴検出器15が生成した色の濃さを示す飽和度信号Vcを反転した信号VcNの波形を示す。飽和度信号Vcは次式で表わされる。なお、本実施の形態の飽和度信号Vcの反転(信号VcN)とは、色が濃いときの飽和度を示す値が小さくなるような反転であり、符号の反転を指すものではない。
【0067】
Vc=sqrt(Va*Va+Ua*Ua)
但し、sqrt( )は平方根演算を示す。
【0068】
図11(B)の信号VcNの波形は、色が薄いときダイナミックレンジの「1」側になる。図11(C)の実線は、同図(A)の輝度信号Lbsの波形と同図(B)に示す信号VcNの波形とを合成した波形を示す。ここでは合成の方法として各信号Lbs及びVcNの値、すなわち輝度信号値及び色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成している。
【0069】
上記の合成の方法は擬似色妨害がより目立たないように考慮される。先述した人の視覚の性質を利用した信号が図11(C)に実線で示す最小値信号である。最小値信号の「0」側が混合器16で擬似色妨害が発生するサブピクセル画素数変換による広帯域信号側で、「1」側が妨害を発生させない画素単位画素数変換による信号側である。生成された最小値信号は輝度信号Lbsが明るいとき「1」近傍となり、暗いときは「0」近傍となる。また、色が薄いときは「1」近傍となり、色が濃いときは「0」近傍となる。また合成の方法を最小値として「0」方向に誘導しているのは、暗いときは色が見えづらくさらに色が濃いとマスキングされて擬似色妨害が知覚されないという人間の視覚の性質に添ったものである。特徴検出器15は、輝度信号と色差信号とに基づいた値のうち、小さい方の値を選択した最小値信号を生成する最小値信号生成部として動作する。
【0070】
特徴検出器15は、図11(C)に実線で示した最小値信号を低域フィルタ(LPF)を通すことでその高域成分を低減する。これは、サブピクセル画素数変換による効果が高域成分であり、画像の特徴検出信号に高域信号が含まれるとサブピクセル画素数変換による効果が影響を受けることから、その影響を低減するためである。特徴検出器15による適応処理は、着目点のみで判断されるものではなく、周囲の明るさや色の飽和度の情報を含めて判断されるものである。特徴検出器15は、最小値信号をフィルタ処理するフィルタリング部として動作する。
【0071】
ここで、画素単位のレートはRGBYを1画素とするサンプリングレートになるが、サブピクセルサンプリングレートはR/G/B/Yの各々を1画素と見立てたレートであり、4倍のレートとなる。低域フィルタをサブピクセルレート又は1/2のレートで処理すると、図12に示すように画素の区切りとなるYとRとをまたいで処理されるため、一点鎖線で示す信号21が得られる。信号21で混合器16での適応処理を制御すると、RGBY間の値に段差ができ、疑似色妨害が出ない第1の画素単位画素数変換器13の出力信号LbpにRGBY間に偏差が生じて、本来疑似色妨害がでないところに出てしまう。
【0072】
そこで、特徴検出器15内の低域フィルタでの処理は、RGBYの4サブピクセルからなる画素単位に完結された信号22が得られるようにする。本実施の形態では特徴検出器15の入力信号が画素単位で変化する信号であるので必然的に出力信号は図12に太実線で示す画素単位の信号22になる。ただし、画素数変換するサブピクセルレート又は1/2のレートで処理した場合はRGBYで異なる値となる。その場合でも画素単位にRGBYで同一の値となるように平均化処理する。それにより図12に示す信号22が特徴検出器15が出力する混合器16の制御値αとなる。このように画素単位に変化する制御値αにすることで、混合器16に入力される画素単位のデータが不連続になることを防いでいる。
【0073】
図13は、図1に示した本実施の形態のサンプリングレート変換装置10の各部のクロックとデータの関係を示す。図13(A)に示すCKHは高精細信号のクロックで下向きの矢印がトリガ位置を示し、その周波数は1920cpLである。図13(B)に示す高精細の輝度信号Laは、クロックCKHがトリガになってサンプリングされた信号で、輝度信号Laが再現できる帯域はナイキスト周波数960cpL以下の帯域である。
【0074】
図13(C)に示すCKS1は、変換するワイドSDディスプレイの画素数にそった変換レート(画素単位)のクロックで、周波数が853cpLである。図13(D)に示すCKS2は、サブピクセルサンプリングレートの1/2倍のレートのクロックで、その周波数はCKS1の2倍の1706cpLである。サブピクセル画素数変換器12において、輝度信号Laは、周波数が第2のサンプリング周波数(図7(D))に等しいクロックCKS2によりサンプリングされて、図13(F)に模式的に示すサブピクセルサンプリングレートの1/2倍に変換されたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsとされる。
【0075】
また、第1の画素単位画素数変換器13及び第2の画素単位画素数変換器14において入力信号に対して画素単位のクロックCKS1によりサンプリングして、図13(H)、(I)、(J)に模式的に示す輝度信号Lbp,色差信号Ub及び色差信号Vbを生成する。同様に、特徴検出器15は、画素単位のクロックCKS1をトリガとして図13(K)に模式的に示すような制御値αを出力する。図9で説明したマトリクス変換器17の出力に得られる1画素周期のデータは、画素単位のクロックCKS1をトリガとしたものである。
【0076】
ここで重要なのは、CKS2のトリガ点タイミングと画素単位のクロックCKS1のトリガ点とが一致していることである。RGBYの4サブピクセルレートのクロック(3412cpL:CKS1の4倍)から、1/2周期のクロックCKS2を作り出した場合、とりうる位相はCKS2のほかにもう一つ図13(E)に示すクロックCKS2Nがある。
【0077】
仮に、サブピクセル画素数変換器12が、クロックCKS2Nをトリガとしてサンプリングを行うと、図13(G)に模式的に示すようなサブピクセル画素数変換後の輝度信号LbsNが生成される。この輝度信号LbsNは、図13(H)に示した画素単位のクロックCKS1によりサンプリングされたデータである輝度信号Lbp,色差信号Ub,色差信号Vb,制御値αと変化点が異なり、図13(K)に示した制御値αで適応処理すると、輝度信号LbsNが分断されて画像信号に不連続が生じる。
【0078】
画素単位のクロックCKS1をトリガとする制御値αで特徴検出器15は混合器16を制御するので混合器16の入力のデータは変化点が制御値αと揃っている必要がある。従って、サブピクセル画素数変換器12で使われる4サブピクセルレートの1/2周期の変換クロックは、画素単位のクロックCKS1とトリガ点が同じCKS2の位相でなければならない。
【0079】
マトリクス変換器17は、混合器16から出力された輝度信号Lcと、第2の画素単位画素数変換器14から出力された図13(I)及び(J)に模式的に示す画素単位画素数変換後の色差信号Ub及び色差信号Vbとを、図13(L)、(M)、(N)、及び(O)にそれぞれ模式的に示すような高精細信号の高域成分を含んだR信号、G信号、B信号及びY信号へマトリクス変換してディスプレイに出力する。
【0080】
このように、本実施の形態によれば、1画素のサブピクセル数が偶数である「4」のとき、サブピクセル画素数変換器12におけるサンプリング周波数を、サブピクセル画素数変換前の第1のサンプリング周波数(高精細画像信号のサンプリング周波数)を変換される画像のサブピクセルサンプリングレートの1/N倍(ただし、Nは1画素のサブピクセル数を割り切れる2以上の自然数で、ここではN=2)として、サンプリングレートを1/2に落とす。
【0081】
また、6原色で1画素のサブピクセル数が偶数である「6」のときは、サブピクセル画素数変換器12におけるサンプリング周波数は、サブピクセル画素数変換前の第1のサンプリング周波数を変換される画像のサブピクセルサンプリングレートの1/2倍,又は1/3倍に設定し、サンプリングレートを1/2、1/3に落とす。更に、低域化されたサブピクセルサンプリングレートのデータ位相を、画素単位のデータと位相を揃えるようにする。これにより、サブピクセル画素数変換器12でサンプリングしたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsと画素単位の画素数変換データLbp、Vb、Ubとを適応的に混合することができる。
【0082】
複数のサンプリング周波数を採用できる場合は、サンプリング周波数が小さい方が電力的に有利である。一方でサンプリング周波数が大きい方が、変換できる帯域は広くなる。そのため、どのサンプリング周波数を採用するかは、電力、回路規模、変換する画像の帯域等を考慮して選択すればよい。
【0083】
以上のように、本実施の形態によれば、1画素のサブピクセル数が偶数のとき、サブピクセル画素数変換器12において変換されるサンプリング周波数を、変換される画像のサブピクセル数に相当するサブピクセルサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは1画素のサブピクセル数を割り切れる2以上の自然数)に低域化してサブピクセル画素数変換処理すると共に、1/N倍に低域化されたサブピクセルサンプリングレートのデータ位相を、画素単位のデータと位相を揃える。
【0084】
このため、本実施の形態によれば、サブピクセル画素数変換のサンプリング周波数を低域化することにより、ハードウェアの規模と消費電力を低減させることができる。また、ソフトウェアで実現するときは演算量やメモリが低減でき負担が軽くなる。更にサブピクセル画素数変換された輝度信号は、図4及び図5に示したように、ディスプレイでは2サブピクセル(2原色)または3サブピクセル(3原色)を束にしたことになり、複数の原色が加色され明るくなるため、擬似色妨害の色が薄く目立たなくなる。その結果、本実施の形態は、解像度感が得られるように適応処理が調整でき、本来の目的である変換画像の解像度向上を実現する上で優れた方法といえる。
【0085】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えばディスプレイにおいて、水平方向にサブピクセルが配列されているが、垂直方向にサブピクセルが配列されていてもよく、この場合にも、本発明を適用可能である。また、ディスプレイにおいて、2次元にサブピクセルが配列されていても、本発明を適用可能である。
【0086】
また、輝度信号だけでなく色差信号U及び色差信号Vにもサブピクセル画素数変換を適用してもよい。この場合、マトリクス変換部では、偶数個の各サブピクセルで表示される各原色信号は、1画素あたりサブピクセル数の位相を有し、これらの中からディスプレイの一画素における各サブピクセルの配列順序に一対一に対応している位相が、有効位相となり、その有効位相部の信号が各サブピクセルデータとなる。
【符号の説明】
【0087】
10 サンプリングレート変換装置
11 プリフィルタ
12 サブピクセル画素数変換器
13 第1の画素単位画素数変換器
14 第2の画素単位画素数変換器
15 特徴検出器
16 混合器
17 マトリクス変換器
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法に係り、特にディスプレイの画素数より多い画素数の入力画像信号をディスプレイに表示させるために、入力画像信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な表示装置(ディスプレイ)のうち、マトリクス状に配列された複数の画素を、一定の順序で発光させるディスプレイでは、各信号データ値に各画素が対応している。このようなディスプレイには、例えばプラズマディスプレイ(PDP;Plasma Display Panel)、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)、また同様の素子を使ったプロジェクタなどが該当する。
【0003】
これらのディスプレイでは、図14(A)に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応する3つの発光素子(サブピクセル)からなる配列を一組として1画素を構成し、各画素により輝度や色彩を再現している。図14(A)では、赤色発光素子1R、緑色発光素子1G及び青色発光素子1Bにより画素1が構成され、赤色発光素子2R、緑色発光素子2G及び青色発光素子2Bにより画素2が構成されている。最近ではさらに原色数を増やして4原色や6原色など多原色とした広色域のディスプレイが実現されている。
【0004】
広色域のディスプレイでは、原色数とサブピクセルを追加する。ここでは原色数とサブピクセル数が一致していることとして取り扱う。サブピクセル数を4原色にした場合の例を図15に示す。4原色ディスプレイとしてはRGBにエメラルドなどシアン系や黄色が追加された例がある。なお、本明細書では、区別のため黄色又は黄色信号をYと表記し、輝度信号をルミナンスの頭文字をとってLと表記するものとする。
【0005】
ここでは黄色(Y)のサブピクセルがRGBの3つのサブピクセルに追加されているものとして説明する。図15(A)は、4つのサブピクセル(発光素子)から1画素を構成する例を示しており、赤色発光素子1R、緑色発光素子1G、青色発光素子1B及び黄色発光素子1Yにより画素1が構成され、赤色発光素子2R、緑色発光素子2G、青色発光素子2B及び黄色発光素子2Yにより画素2が構成されている。
【0006】
図16は、各画素が上記のように4つのサブピクセルから構成されるディスプレイを備える画像表示装置の一例のブロック図を示す。この画像表示装置100は、画素数変換部101、マトリクス部102、及びパネル107を有する。画素数変換部101は、入力された信号の画素数を、画素数変換によりディスプレイの画素数に合わせる。信号の画素数とディスプレイの画素数が一致している場合もあるが、近年信号源が多様化しているため、このような画素数変換部101はほぼ必須となっている。
【0007】
ここで入力される信号は、テレビジョンの伝送信号である輝度信号Lと色差信号U及び色差信号Vとからなる。色差信号(U信号及びV信号)は、NSTC(National Television Standards Committee)などの標準信号(SD信号)では、色差信号(B−L)がCbと呼称され、色差信号(R−L)がCrと呼称される。また、高精細信号(HD信号)では、色差信号(B−L)がPbと呼称され、色差信号(R−L)がPrと呼称される。測色パラメータの関係で伝送マトリクス係数値が標準信号と高精細信号とで異なるため、色差信号が区別して呼称されているが、ここでは色差信号を総称して色差信号(B−L)を色差信号U、色差信号(R−L)を色差信号Vと呼称するものとする。
【0008】
マトリクス部102は、画素数変換部101で画素数変換された輝度信号Lと色差信号U及び色差信号VとをR信号、G信号、B信号及びY信号に変換し、パネル107に転送する。パネル107はメモリ機能を有し、各画素が各信号データ値に応じて発光する。ここで、パネル107のメモリ機能は、パネル107の物理的なメモリ機能と、電子的なフレーム(1画面)またはライン(1水平周期)メモリとによって得られるものであって、R画素データ103、G画素データ104、B画素データ105、及びY画素データ106が、パネル107の各画素に一対一で対応して階調を再現することを意味する。
【0009】
図17(A1)、(A2)は、従来の画素数変換をモデル化して示す。従来の画素数変換では、例えば図17(A1)に示すように水平方向1920画素及び垂直方向1080画素からなる1フレームの高精細の輝度信号Lが、同図(A2)に示すように水平方向853画素及び垂直方向480画素からなるディスプレイに対応して変換される。
【0010】
水平方向に着目した場合、図17(A2)に示したディスプレイに表示される画素数変換後の輝度信号の周波数特性は、図18(A)に示すように、サンプリング周波数(サンプリングレート)が853サイクル/ライン(以下「cpL」と略す)であり、信号の再現可能範囲の上限であるナイキスト周波数が、サンプリング定理により、サンプリング周波数の1/2である約426cpLとなる。なお、上記のサンプリング周波数の数値「853」は、小数点第1位を四捨五入したものであるが、以下説明する他の数値は特に断らない限り、小数点第1位を切り捨てて説明する。一方、図17(A1)に示した画素数変換前の高精細の輝度信号Lの周波数特性は、図18(A)に示すように、サンプリング周波数(サンプリングレート)が1920cpLであり、そのナイキスト周波数は960cpL(=1920cpL/2)である。
【0011】
従来の画素数変換では、上記のように高精細の輝度信号のサンプリング周波数(サンプリングレート)が、1920cpLから853cpLに変換されるが、このとき、折り返し(エイリアシング)を抑えて位相を合わせるフィルタ処理が行われる。色差信号についても同様にサンプリング周波数変換及びフィルタ処理が行われるが、ここでは一般的な伝送信号に従ってサンプリング周波数は、輝度信号の最高周波数の1/2倍の周波数(上記の例では960cpL)としている。なお、色差信号は、輝度信号と同一の画素数(または同一のサンプリング周波数)の場合もある。
【0012】
ここで、画素数変換において、高域通過のフィルタ特性のカットオフ周波数が426cpLより高域周波数であるほど、図18(A)に示すように、ナイキスト周波数426cpLを境に折り返しが発生して妨害となる。しかし、この折り返し妨害の発生を避けるために、画素数変換において高域通過のフィルタ特性のカットオフ周波数を426cpL以下にするほど解像度が小さくなり画質が悪化する。
【0013】
そこで、表示品位を向上させるために、解像度の高い画像を解像度の低いディスプレイで表示する画像に変換する場合、解像度の高い画像信号をディスプレイのサブピクセル数に基づく周波数のサンプリング周波数でサンプリングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
また、高精細度テレビジョン(HDTV)信号から標準精細度(SD)信号への変換において、サブピクセル信号レートで変換を行い広帯域で折り返し妨害が抑制された変換画像を得るサンプリングレート変換装置も本発明者により開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2004−524729号公報
【特許文献2】特開2005−316392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1及び2では入力画像信号をサブピクセル信号のサンプリングレートへ変換することで折り返し妨害を抑制して高解像度に画素数変換するものであるが、4原色や6原色などサブピクセル数が多くなるほどサンプリング周波数が高くなり、ハードウェア及びソフトウェアでサンプリングレート変換を実現する場合、処理規模と電力の増大を招く問題がある。また、サブピクセル信号のサンプリングレートで高解像度に画素数変換すると擬似色妨害が発生するという問題もある。
【0017】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、各画素のサブピクセル数が偶数であるディスプレイに、ディスプレイの画素数よりも多い画素数の高精細画像信号のサンプリングレート変換をして画像を表示する際に、ハードウェア及びソフトウェアの処理規模と電力の増大を抑制したサンプリングレート変換を行うことができるサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、サブピクセル画素数変換レートよりも低いサンプリングレートで変換することにより、擬似色妨害をより低減させるサンプリングレート変換装置及びサンプリングレート変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換部と、輝度信号を、ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換部と、画像信号を構成する色差信号及びサブピクセル画素数変換部から出力される第1の輝度信号に基づいて、第1の輝度信号と画素単位画素数変換部から出力される第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出部と、第1の輝度信号と第2の輝度信号とを制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合部と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、上記特徴検出部は、第1の輝度信号より特定の波形パターンを検出すると、特定の波形パターンの輝度信号値及び色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成して最小値信号を生成する最小値信号生成部と、最小値信号をフィルタ処理して2M個のサブピクセルを1画素とする画素単位に完結された制御値を生成するフィルタとを有することを特徴とする。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、上記混合部は、制御値が小さくなるほど、第1の輝度信号の混合割合を、第2の輝度信号の混合割合に比べて多く混合することを特徴とする。
【0022】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換装置は、画素単位画素数変換部が、サブピクセル画素数変換部が入力信号をサンプリングする第2のサンプリング周波数のクロックのトリガ点タイミングと、入力される高精細画像信号を構成する輝度信号をサンプリングする第3のサンプリング周波数のクロックのトリガ点とが一致するように画素単位画素数変換することを特徴とする。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、本発明のサンプリングレート変換方法は、1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換ステップと、輝度信号を、ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換ステップと、画像信号を構成する色差信号及びサブピクセル画素数変換ステップで生成された第1の輝度信号に基づいて、第1の輝度信号と画素単位画素数変換ステップで生成された第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出ステップと、第1の輝度信号と第2の輝度信号とを制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合ステップと、を含むことを特徴する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各画素のサブピクセル数が偶数であるディスプレイに、ディスプレイの画素数よりも多い画素数の高精細画像信号のサンプリングレート変換をして画像を表示する際に、ハードウェア及びソフトウェアの処理規模と電力の増大を抑制したサンプリングレート変換を行うことができ、また折り返し妨害及び疑似色妨害の発生を抑制しつつ、高品位な変換画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のサンプリングレート変換装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】サブピクセル画素数変換の概念を説明するための図である。
【図3】サブピクセル画素数変換後のスペクトル成分を説明するための図である。
【図4】4原色で4サブピクセルの画素において、サブピクセル画素数変換レートを1/2に下げた場合の画素とサブピクセルと変換データとの関係を示す図である。
【図5】6原色で6サブピクセルの画素において、サブピクセル画素数変換レートを1/2、1/3に下げた場合の画素とサブピクセルと変換データとの関係を示す図である。
【図6】サブピクセル画素数変換レートを1/2にした場合のスペクトル成分を説明するための図である。
【図7】サブピクセル画素数変換を詳細に説明するための図である。
【図8】サブピクセル画素数変換後の輝度信号を含むLUV信号を、RGBY信号に変換する方法を説明するための図である。
【図9】サブピクセル画素数変換を1/2のレートで変換した後の輝度信号を含むLUV信号を、RGBY信号に変換する方法を説明するための図である。
【図10】図1中の混合器から出力される輝度信号の周波数特性を説明するための図である。
【図11】図1中の混合器における混合処理を説明するための波形図である。
【図12】図1中の画像の特徴検出器において画素単位に完結処理された信号(制御値)を説明するための波形図である。
【図13】図1中の各部におけるクロックとデータとの関係を示す図である。
【図14】1画素(ピクセル)と3原色の発光素子(サブピクセル)との関係を示す図である。
【図15】1画素(ピクセル)と4原色の発光素子(サブピクセル)との関係を示す図である。
【図16】4原色ディスプレイにおける画像の表示を説明する図である。
【図17】ディスプレイと画素単位画素数変換、及びサブピクセル画素数変換の関係を示す図である。
【図18】画素単位画素数変換と、サブピクセル画素数変換のそれぞれにおける周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明になるサンプリングレート変換装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10は、高精細の輝度信号La(サンプリング周波数1920cpL)に対して変換後に必要な帯域に制限するプリフィルタ11と、プリフィルタ11で帯域制限された高精細の輝度信号に対してサブピクセル画素数変換を行うサブピクセル画素数変換器12と、プリフィルタ11で帯域制限された高精細の輝度信号に対して画素単位画素数変換を行う第1の画素単位画素数変換器13と、高精細の色差信号Ua及び色差信号Vaに対して画素単位画素数変換を行う第2の画素単位画素数変換器14と、画像の特徴検出器15と、混合器(MIX)16と、LUV信号をRGBY信号に変換するマトリクス変換器17とを備えている。そして、マトリクス変換器17から並列に出力されるR信号、G信号、B信号及びY信号(以下、これらを総称してRGBY信号ともいう)が、ディスプレイパネル(図示せず)に供給される。
【0028】
ここで、まず、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10において行われるサブピクセルレンダリング技術を活用した画素数変換(サブピクセル画素数変換)について図面を参照して説明する。
【0029】
サブピクセルレンダリング技術は、一般には、図14(A)に示すようにRGBの3原色を使って3つ(奇数)のサブピクセル(発光素子)から1画素が構成されるのに対し、図14(B)に示すように、R、G、Bの各サブピクセルをそれぞれ1画素と見なして、サブピクセル毎に輝度を再現する技術である。すなわち、図14(A)にはサブピクセル1R、1G、1Bを1画素として取り扱う場合(画素数2)を示し、図14(B)には、サブピクセルRを1画素、サブピクセルGを1画素、サブピクセルBを1画素として取り扱う場合(画素数6)を示す。
【0030】
本実施の形態では、図15(B)に示すようにRGBにY(黄)を加えた4原色を使って4つ(偶数)のサブピクセルRGBYのそれぞれが1画素を構成する場合について説明する。図15(A)にはサブピクセル1R、1G、1B、1Yを1画素として取り扱う場合(画素数2)を示し、図15(B)には、サブピクセルRを1画素、サブピクセルGを1画素、サブピクセルBを1画素、サブピクセルYを1画素として取り扱う場合(画素数8)を示す。
【0031】
また、サブピクセルレンダリング技術は、画素単位ではなくサブピクセルで輝度を再現するものである。
【0032】
図17(B1)、(B2)は、本実施の形態のサンプリングレート変換装置10により、ディスプレイの画素数より画素数が多い高精細画像をディスプレイに表示するための、サブピクセル画素数変換のモデルを示す図である。ここでは、水平方向にRGBYの各サブピクセルが順に配列されるため、図17(B1)に示すように水平方向1920画素及び垂直方向1080画素からなる1フレームの高精細の輝度信号Lをサブピクセル画素数変換(サンプリングレート変換)して、同図(B2)に示すように、水平方向の画素数が3412画素(=853×4画素)、垂直方向の画素数480画素の輝度信号とする。図17(B2)における画素数変換後の画素数は、厳密にはサブピクセル数であるが、サブピクセル画素数変換では、各サブピクセルを輝度が再現できる1画素と見なして画素数変換を行う。
【0033】
図18(B)は、サブピクセル画素数変換における水平方向の周波数特性を示す。サブピクセル画素数変換では、サンプリング周波数が、高精細画像信号のサンプリング周波数である1920cpLから3412cpL(=853cpL×4)に変換される。すなわち、従来の画素数変換では、図18(A)に示したようにサンプリング周波数を、1920cpLから853cpLにダウンサンプリングしたのに対して、サブピクセル画素数変換では、同図(B)に示すようにサンプリング周波数を、1920cpLから3412cpLにアップサンプリングする。
【0034】
図2に、サブピクセル画素数変換を模式的に示す。サブピクセル画素数変換では、従来の1画素を構成するRGBYのサブピクセルのうち、水平方向の画素数1920画素の輝度信号Lをサブピクセル毎の輝度信号(L1R、L1G、L1B、L1Y、・・・)に変換する。水平方向の画素数960画素の色差信号U、色差信号Vを水平方向の画素数853画素の色差信号に変換する。
【0035】
図3は、サブピクセル画素数変換後のスペクトル成分の説明図を示す。サブピクセル画素数変換により、輝度信号を再現できる範囲の最高周波数は、図3に「ワイドSDのサブピクセル画素での再現範囲」として示すように、ワイドSDディスプレイサブピクセルのサンプリング周波数(3412cpL)のナイキスト周波数である1706cpLとなる。言い換えると、1水平周期の画素数(853cpL)に対して1画素が4サブピクセルから構成される場合のサブピクセルサンプリング画素数変換時の変換サンプリング周波数は、画素数の4倍の値(3412cpL)となる。これにより、輝度信号が理論的に再現できるナイキスト周波数は画素数の2倍の値(1706cpL)となる。一方、高精細画像信号(HD信号)を再現できる範囲の最高周波数は、図3に「HD信号成分」として示すように、高精細画像信号のサンプリング周波数(1920cpL)のナイキスト周波数である960cpLである。また、水平方向の画素数853画素のディスプレイの再現可能範囲は、図3に「ワイドSD再現範囲」として示すように、426cpL以下の周波数となる。
【0036】
ここで、サブピクセル画素数変換後の輝度信号における、ワイドSDディスプレイのナイキスト周波数である426cpL以上で、かつ、ワイドSDディスプレイサブピクセルのナイキスト周波数である1706cpL以下の帯域は、サブピクセルで輝度信号を再現することにより広帯域化できる帯域である。従って、サブピクセル画素数変換により、ナイキスト周波数を従来の426cpLから1706cpLに向上させて、折り返し妨害の発生を抑制しつつ高品位な変換画質を得ることが可能である。
【0037】
一方、各サブピクセルは、高域の輝度成分において各サブピクセル固有の色(R,G,B,Y)を有するため、上述した広帯域化の代償として、擬似の色妨害が発生する問題がある。そのため、本実施形態のサンプリングレート変換装置10は、サブピクセル画素数変換された輝度信号と、擬似色妨害がない通常の画素単位で画素数変換された輝度信号とを擬似色妨害が出ないように適応させて混合することにより、サンプリングレートの変換を行うように構成する。
【0038】
ところで、本発明では1画素のサブピクセル(原色)数は従来の「3」ではなく、「4」または「6」などの4以上の偶数の場合を想定している。本実施の形態では1画素のサブピクセル数が「3」ではなく「4」に増加した分、図3に示したようにサブピクセルのサンプリング周波数が高域に上がり、それに合わせてサブピクセルによるナイキスト周波数(1706cpL)がHD信号のナイキスト周波数(960cpL)からすると必要以上に高くなり広帯域化した。この広帯域化はサンプリングレート変換装置を実現する上ではハードウェアの規模や消費電力の増大を招く問題がある。またソフトウェアでサンプリングレート変換装置を実現する場合も演算量の増大を招き同様の問題がある。
【0039】
そこで、上記の問題を解決するため、本発明ではサブピクセルの画素数変換レートをN分の1(Nは2以上の自然数)に低下させる。そして低下させる条件として、後述する適応処理を実現するために画素単位にサブピクセルが完結するように位相を規制して低下させる数Nを選ぶものである。具体的には、図4(A)に示すように1画素が4つのサブピクセルR,G,B,Yから構成される場合、先述した通り各サブピクセルを1画素とみなして4画素とするのではなく、図4(B)に示すように2つのサブピクセルを1つのサブピクセル(画素)として扱う。例えば、図4(A)に示すサブピクセルRとサブピクセルGの2つのサブピクセルを、図4(B)に示すように1つのサブピクセル(R,G)として取り扱う。従って、サブピクセルレートの周期は図4(A)に比し2倍になる。なお、サブピクセルレートの周期の変化点は、画素単位の変化点と揃うように設定する。これにより、1画素を2サブピクセルとして扱うことができる。
【0040】
同様に、図5(A)に示すように、1画素のサブピクセル数が「6」(R,G,B,Y,M,C)である場合は、サブピクセルの画素数変換レートを1/2にすると同図(B)に示すように1画素のレート変換後のサブピクセル数は「3」となり、サブピクセルの画素数変換レートを1/3にすると、同図(C)に示すようにレート変換後のサブピクセル数は「2」となる。これにより、1画素を3サブピクセルまたは2サブピクセルとして扱うことができる。このようにサブピクセルの画素数変換レートを低下させることで、実現に向けたハードウェアやソフトウェアの負担がより低減できる。すなわち、本発明では、上記のNは、1画素のサブピクセル数が偶数であるときの、サブピクセル数を割り切れる2以上の自然数とする。
【0041】
図6は、1画素のサブピクセル数が「4」で、その画素数変換レートを1/2にした場合の周波数領域の説明図を示す。サブピクセル数が「4」で、サブピクセルの変換レートを低下させてサブピクセルの低域化サンプリング周波数を、サブピクセルをそれぞれ1画素とした時のサブピクセル画素数変換時のサンプリング周波数の1/2倍に選定すると、画像信号のサブピクセル画素数変換時のサンプリング周波数が3412cpLの場合、サブピクセルの低域化サンプリング周波数は1706cpLとなり、それによるナイキスト周波数は853cpL(=1706cpL/2)となる。従って、この場合の信号再現範囲は、図6にIで示すワイドSDのサブピクセル1/2サンプリング再現範囲のように、853cpL以下の周波数範囲となる。
【0042】
信号再現範囲Iは、図6にIIで示す960cpL以下の高精細信号の信号再現範囲に近いので、上記のサブピクセルの低域化サンプリング周波数1706cpLは必要以上に高くないサンプリング周波数であることが分かる。なお、この場合、高精細信号の信号再現範囲IIより信号再現範囲Iの方が帯域が狭いため、プリフィルタ11により輝度信号の帯域を制限する。
【0043】
図7は、サブピクセル画素数変換を詳細に説明するための図を示す。図7では、画素データの変化点、すなわちデジタル回路におけるクロックによるトリガ点が上向きの矢印で示されている。図7(A)はサンプリング周波数1920cpL(第1のサンプリング周波数)でサンプリングされた画素数変換前のHD信号の時間領域での画素データの変化点を上向きの矢印で表し、図7(D)は第2のサンプリング周波数1706.66cpLでサンプリングされたサブピクセル画素数変換後の画素データの時間領域での変化点を上向きの矢印で表している。なお、これまでは小数点1桁以下を切り捨てていたが、図7では小数点以下2桁まで記載して説明する。
【0044】
ここで、図7(A)に示す画素数変換前のHD信号のサンプリング周波数(1920cpL)と図7(D)に示す画素数変換後のサブピクセルレートの1/2であるサンプリング周波数(1706.66cpL)との比は9:8となり、ハードウェアで実現するうえで比較的簡単な整数比である。ディスプレイの画素数と高精細信号の画素数との比が上記値より大きい場合は、画素数変換が複雑な処理になるが、サブピクセル画素数変換の原理は同じである。また、ディスプレイの画素数よりも僅かに多めのサブピクセル画素数に画素数変換して、ディスプレイ表示上で切り捨てる場合もある。これは陰極線管(CRT;Cathode Ray Tube)におけるオーバースキャンに相当するもので、ここで取り扱うサブピクセル画素数変換で想定される範囲である。また、ディスプレイ間の変換だけでなく、ディスプレイ内の特定の領域への画素数変換においても、本変換方式は同様に機能するものである。
【0045】
SDのディスプレイ画面の高さ方向の画素数を480画素としてアスペクト16:9の場合、画面の横方向(水平)の画素数は853.33となる。この853.33を基準として各サンプリング周波数の関係を説明する。
【0046】
図7(B)は、サンプリング周波数15360cpL(=1920×8,又は1706.66×9)でサンプリングされた信号の時間領域での画素データの変化点を上向きの矢印で表している。サンプリング周波数15360cpLは、変換前の第1のサンプリング周波数1920cpLと変換後の第2のサンプリング周波数1706.66cpLとの最小公倍数であり、図7(C)に模式的に示す8種類(内4つ図示)の信号位相に従って、所定のデジタルフィルタにより内挿処理されたものである。図7(C)において、丸数字0から丸数字7の表記は、デジタルフィルタの係数を示している。また丸数字を囲った四角は、囲んだ丸数字の係数が図7(A)に示すHD信号がある位相に相当し演算されることを意味する。
【0047】
図7(B)に示す信号から、同図(D)に示す第2のサンプリング周波数(1706.66cpL)でサンプリングされた所望の位相の信号を抽出することにより、画素数変換後の輝度信号が得られる。なお、図7(E)は、従来の画素単位の画素数変換により、ディスプレイにおける水平方向の画素数に基づいて得られる変換後の信号を示す。また、図7(F)は、図7(B)、(D)、(E)に示す各信号の周波数領域のスペクトルを示している。
【0048】
サブピクセル画素数変換された信号は、マトリクス処理されて原色信号に戻され、ディスプレイに表示される。図8に1画素を構成するサブピクセルが4の際に従来の方法でサブピクセル変換した信号をマトリクス処理してディスプレイに表示する例の説明図を示す。同図(A)に示すサブピクセル画素数変換後の輝度信号LR、LG、LB、LYは、同図(B)に示すマトリクス変換器17によりマトリクス変換されて、輝度信号LR、LG、LB、LYの高域成分が入ったR信号、G信号、B信号、Y信号とされる。
【0049】
R信号、G信号、B信号、Y信号は、図8(C)において「1」、「2」、「3」、「4」で示されるように、1画素あたり4つの位相を有する。これらの中から、ディスプレイの1画素におけるRGBYサブピクセルの配列順序に一対一で対応している位相が、有効位相となり、有効位相部における信号が各サブピクセルデータとなる。図8(C)では、有効位相以外の位相の信号に×印が付されている。
【0050】
図8に示す例において、ディスプレイの1画素におけるRサブピクセルの配列順が「1」であるので、ディスプレイ上におけるR信号の位相は「1」であり、マトリクス変換後の出力における位相が「1」の信号が有効となる。同様に、G信号の位相は「2」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「2」の信号が有効となり、B信号の位相は「3」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「3」の信号が有効となる。Y信号の位相は「4」であるので、マトリクス変換後の出力における位相が「4」の信号が有効となる。図8(D)に示すように、有効位相の信号が取得され、その有効位相のR信号、G信号、B信号、Y信号が図8(E)に示すようにディスプレイの各サブピクセルで表示される。
【0051】
上述したように本実施形態では、サブピクセル画素数変換のサンプリングレートを1/2のサンプリングレートにしているので、1画素あたり2つの位相からなる。図9に、サブピクセル変換レートを1/2とした場合の原色信号RGBYに変換される画素の状態を示す。サブピクセル画素数変換により1画素のサブピクセル数が1/2の「2」となっているので、マトリクス変換器17に入力する輝度信号は図9(A)に示すように、サブピクセルのRとGの位相(「1」「2」)の輝度信号LRGとBとYの位相(「3」「4」)のLBYの2つの位相の輝度信号からなる。
【0052】
図9(B)に示すマトリクス変換器17がこれらの輝度信号をマトリクス変換することにより、図9(C)に模式的に示すように、R信号とG信号とが「1」と「2」の位相に、B信号とY信号とが「3」と「4」の位相に有効な信号を出力する。図9(C)において×印は無効な信号位相を意味している。マトリクス変換器17で取得された有効な信号は図9(D)に示すようにその画素の信号となり、同図(E)に示すようにディスプレイで各サブピクセルにて表示される。従来に比べてマトリクス変換器17においてもサンプリングレートは半分で済み、負担が軽減される。
【0053】
図1に戻って説明する。プリフィルタ11は、入力された第1のサンプリング周波数(1920cpL)でサンプリングされた画素数変換前のHD信号La(ナイキスト周波数960cpL)に対して、HD信号Laの高域成分が第2のサンプリング周波数(サブピクセルサンプリング周波数の1/2の周波数1706cpL)でサンプリングされた信号(ナイキスト周波数853cpL)に混入して折り返し妨害を発生させないように、ナイキスト周波数以上(853cpL以上)の帯域を制限する。
【0054】
サブピクセル画素数変換器12は、プリフィルタ11により帯域制限された輝度信号Laに対して本実施形態のサブピクセル画素数変換を行い、ディスプレイにおける水平方向のサブピクセルの数に対応した、図7(D)に示した第2のサンプリング周波数(1706cpL)でサンプリングしたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsを生成して出力する。
【0055】
第1の画素単位画素数変換器13は、プリフィルタ11により帯域制限された高精細の輝度信号Laに対して従来の画素単位画素数変換を行い、ディスプレイにおける水平方向の画素数に対応した第3のサンプリング周波数(図7(E)、853cpL)でサンプリングした画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを生成して出力する。
【0056】
第2の画素単位画素数変換器14は、入力された高精細の色差信号Ua,Va(最高周波数960cpL)を第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換して、ディスプレイにおける水平方向の画素数に対応した最高周波数426cpLの色差信号Ub,色差信号Vbを生成して出力する。第2の画素単位画素数変換器14の構成は、第1の画素単位画素数変換器13と同様であってもよいが、色差信号の帯域に基づいて簡易化されてもよい。
【0057】
特徴検出器15は、サブピクセル画素数変換器12から出力された輝度信号Lbs、及び第2の画素単位画素数変換器14から出力された画素単位画素数変換後の色差信号Ub,色差信号Vbに基づいて、サブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsの高域に混入している特定の波形パターン、例えば、疑似色妨害が発生する箇所を検出し、その検出結果に基づいて生成した混合器16の制御値αを出力する。
【0058】
特徴検出器15は、人の視覚の性質を踏まえて効果的な適応信号、すなわち制御値αを出力する必要がある。人の視覚の性質として、輝度レベルが高く明るい画面では、本来無彩色であるべきところに擬似色妨害が生じると視認しやすく、一方で、色の濃いところに擬似色妨害が生じても、周りの色にマスキングされて視認しにくいという性質がある。また、暗いところでは色が視認しにくいという性質もある。これらの視覚の性質、及び黒は発色しないことを踏まえて、黒い線の解像度を向上させるような制御値αを出力する必要がある。
【0059】
本実施形態における擬似色妨害は、高域成分であり面積は小さく局所的なものであるが、特徴検出器15により、できるだけ低減させることができる。
【0060】
混合器16は、サブピクセル画素数変換器12から出力されたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbs、及び第1の画素単位画素数変換器13から出力された画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを、制御値αに応じた混合割合で混合し、混合された輝度信号Lcを出力する。
【0061】
具体的には、混合器16は、制御値αに応じて、疑似色妨害が発生する箇所では、画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpを優先した混合を行う。混合器16は、制御値αが=0であるときは、輝度信号Lbsを出力し、制御値αが=1であるときは、輝度信号Lbpを出力する。制御値αが0より大きく1より小さいときは、混合器16は制御値αの値が大きいほど輝度信号Lbsに比べて輝度信号Lbpの割合が相対的に大きくなるように二つの信号を混合した混合輝度信号Lcを出力する。すなわち、混合器16は、制御値αの値が輝度信号のレベルが低く、色が濃いことを示す0に近づくほど、サブピクセル画素数変換手段12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsを、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpに比べて混合割合が多くなるように混合した混合輝度信号Lcを出力する。
【0062】
マトリクス変換器17は、混合器16で混合されて出力された輝度信号Lcと、第2の画素単位画素数変換器14から出力された画素単位画素数変換後の色差信号Ub及び色差信号Vbとを入力信号として受け、これらの入力信号をマトリクス変換の演算を行い、高精細信号の高域成分を含んだR信号、G信号、B信号及びY信号を生成する。マトリクス変換されたR信号、G信号、B信号及びY信号は、ディスプレイ(図示せず)に出力される。
【0063】
図10は、混合器16で混合される輝度信号の周波数特性の説明図を示す。同図において、特性faは、サブピクセル画素数変換器12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsの周波数特性である。サブピクセルレートの1/2倍の周波数1706cpLをサンプリング周波数としているので、最高周波数853cpLまで理論的には再現できるが、ここでは、折り返し妨害を防止するためプリフィルタ11による輝度信号の帯域制限により853cpLを超えない信号帯域に設定している。
【0064】
一方、特性fcは、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpの周波数特性であり、ディスプレイのナイキスト周波数である426cpL近辺に高域カットオフ特性を持たせて、折り返しの影響が許容できるレベルとなるように帯域が抑圧された周波数特性に設定されている。周波数特性faは、プリフィルタ11と画素数変換時のフィルタ処理で決まる特性である。
【0065】
特徴検出器15から得られる制御値αに基づいて、混合器16によりサブピクセル画素数変換器12から出力されるサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsと、第1の画素単位画素数変換器13から出力される画素単位画素数変換後の輝度信号Lbpとの混合割合が制御されるので、混合器16の出力信号の周波数特性は、特性fcを下限とし、特性faを上限とする範囲内の特性となる。従って、疑似色妨害が発生し易い特定の波形パターンが検出されたとき、制御値αの値を1に近付けることにより、混合器16の出力信号の周波数特性は、特性fcに近付くので、疑似色妨害を適応的に抑制することが可能となる。
【0066】
次に、図1に示した擬似色妨害を低減するための制御値αを生成する特徴検出器15の動作について説明する。図11(A)は、特徴検出器15に入力される輝度信号Lbsの信号波形を示す。同図(A)において、明るい側がダイナミックレンジの「1」側である。また、図11(B)は、特徴検出器15に入力される色差信号Ua及び色差信号Vaから、特徴検出器15が生成した色の濃さを示す飽和度信号Vcを反転した信号VcNの波形を示す。飽和度信号Vcは次式で表わされる。なお、本実施の形態の飽和度信号Vcの反転(信号VcN)とは、色が濃いときの飽和度を示す値が小さくなるような反転であり、符号の反転を指すものではない。
【0067】
Vc=sqrt(Va*Va+Ua*Ua)
但し、sqrt( )は平方根演算を示す。
【0068】
図11(B)の信号VcNの波形は、色が薄いときダイナミックレンジの「1」側になる。図11(C)の実線は、同図(A)の輝度信号Lbsの波形と同図(B)に示す信号VcNの波形とを合成した波形を示す。ここでは合成の方法として各信号Lbs及びVcNの値、すなわち輝度信号値及び色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成している。
【0069】
上記の合成の方法は擬似色妨害がより目立たないように考慮される。先述した人の視覚の性質を利用した信号が図11(C)に実線で示す最小値信号である。最小値信号の「0」側が混合器16で擬似色妨害が発生するサブピクセル画素数変換による広帯域信号側で、「1」側が妨害を発生させない画素単位画素数変換による信号側である。生成された最小値信号は輝度信号Lbsが明るいとき「1」近傍となり、暗いときは「0」近傍となる。また、色が薄いときは「1」近傍となり、色が濃いときは「0」近傍となる。また合成の方法を最小値として「0」方向に誘導しているのは、暗いときは色が見えづらくさらに色が濃いとマスキングされて擬似色妨害が知覚されないという人間の視覚の性質に添ったものである。特徴検出器15は、輝度信号と色差信号とに基づいた値のうち、小さい方の値を選択した最小値信号を生成する最小値信号生成部として動作する。
【0070】
特徴検出器15は、図11(C)に実線で示した最小値信号を低域フィルタ(LPF)を通すことでその高域成分を低減する。これは、サブピクセル画素数変換による効果が高域成分であり、画像の特徴検出信号に高域信号が含まれるとサブピクセル画素数変換による効果が影響を受けることから、その影響を低減するためである。特徴検出器15による適応処理は、着目点のみで判断されるものではなく、周囲の明るさや色の飽和度の情報を含めて判断されるものである。特徴検出器15は、最小値信号をフィルタ処理するフィルタリング部として動作する。
【0071】
ここで、画素単位のレートはRGBYを1画素とするサンプリングレートになるが、サブピクセルサンプリングレートはR/G/B/Yの各々を1画素と見立てたレートであり、4倍のレートとなる。低域フィルタをサブピクセルレート又は1/2のレートで処理すると、図12に示すように画素の区切りとなるYとRとをまたいで処理されるため、一点鎖線で示す信号21が得られる。信号21で混合器16での適応処理を制御すると、RGBY間の値に段差ができ、疑似色妨害が出ない第1の画素単位画素数変換器13の出力信号LbpにRGBY間に偏差が生じて、本来疑似色妨害がでないところに出てしまう。
【0072】
そこで、特徴検出器15内の低域フィルタでの処理は、RGBYの4サブピクセルからなる画素単位に完結された信号22が得られるようにする。本実施の形態では特徴検出器15の入力信号が画素単位で変化する信号であるので必然的に出力信号は図12に太実線で示す画素単位の信号22になる。ただし、画素数変換するサブピクセルレート又は1/2のレートで処理した場合はRGBYで異なる値となる。その場合でも画素単位にRGBYで同一の値となるように平均化処理する。それにより図12に示す信号22が特徴検出器15が出力する混合器16の制御値αとなる。このように画素単位に変化する制御値αにすることで、混合器16に入力される画素単位のデータが不連続になることを防いでいる。
【0073】
図13は、図1に示した本実施の形態のサンプリングレート変換装置10の各部のクロックとデータの関係を示す。図13(A)に示すCKHは高精細信号のクロックで下向きの矢印がトリガ位置を示し、その周波数は1920cpLである。図13(B)に示す高精細の輝度信号Laは、クロックCKHがトリガになってサンプリングされた信号で、輝度信号Laが再現できる帯域はナイキスト周波数960cpL以下の帯域である。
【0074】
図13(C)に示すCKS1は、変換するワイドSDディスプレイの画素数にそった変換レート(画素単位)のクロックで、周波数が853cpLである。図13(D)に示すCKS2は、サブピクセルサンプリングレートの1/2倍のレートのクロックで、その周波数はCKS1の2倍の1706cpLである。サブピクセル画素数変換器12において、輝度信号Laは、周波数が第2のサンプリング周波数(図7(D))に等しいクロックCKS2によりサンプリングされて、図13(F)に模式的に示すサブピクセルサンプリングレートの1/2倍に変換されたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsとされる。
【0075】
また、第1の画素単位画素数変換器13及び第2の画素単位画素数変換器14において入力信号に対して画素単位のクロックCKS1によりサンプリングして、図13(H)、(I)、(J)に模式的に示す輝度信号Lbp,色差信号Ub及び色差信号Vbを生成する。同様に、特徴検出器15は、画素単位のクロックCKS1をトリガとして図13(K)に模式的に示すような制御値αを出力する。図9で説明したマトリクス変換器17の出力に得られる1画素周期のデータは、画素単位のクロックCKS1をトリガとしたものである。
【0076】
ここで重要なのは、CKS2のトリガ点タイミングと画素単位のクロックCKS1のトリガ点とが一致していることである。RGBYの4サブピクセルレートのクロック(3412cpL:CKS1の4倍)から、1/2周期のクロックCKS2を作り出した場合、とりうる位相はCKS2のほかにもう一つ図13(E)に示すクロックCKS2Nがある。
【0077】
仮に、サブピクセル画素数変換器12が、クロックCKS2Nをトリガとしてサンプリングを行うと、図13(G)に模式的に示すようなサブピクセル画素数変換後の輝度信号LbsNが生成される。この輝度信号LbsNは、図13(H)に示した画素単位のクロックCKS1によりサンプリングされたデータである輝度信号Lbp,色差信号Ub,色差信号Vb,制御値αと変化点が異なり、図13(K)に示した制御値αで適応処理すると、輝度信号LbsNが分断されて画像信号に不連続が生じる。
【0078】
画素単位のクロックCKS1をトリガとする制御値αで特徴検出器15は混合器16を制御するので混合器16の入力のデータは変化点が制御値αと揃っている必要がある。従って、サブピクセル画素数変換器12で使われる4サブピクセルレートの1/2周期の変換クロックは、画素単位のクロックCKS1とトリガ点が同じCKS2の位相でなければならない。
【0079】
マトリクス変換器17は、混合器16から出力された輝度信号Lcと、第2の画素単位画素数変換器14から出力された図13(I)及び(J)に模式的に示す画素単位画素数変換後の色差信号Ub及び色差信号Vbとを、図13(L)、(M)、(N)、及び(O)にそれぞれ模式的に示すような高精細信号の高域成分を含んだR信号、G信号、B信号及びY信号へマトリクス変換してディスプレイに出力する。
【0080】
このように、本実施の形態によれば、1画素のサブピクセル数が偶数である「4」のとき、サブピクセル画素数変換器12におけるサンプリング周波数を、サブピクセル画素数変換前の第1のサンプリング周波数(高精細画像信号のサンプリング周波数)を変換される画像のサブピクセルサンプリングレートの1/N倍(ただし、Nは1画素のサブピクセル数を割り切れる2以上の自然数で、ここではN=2)として、サンプリングレートを1/2に落とす。
【0081】
また、6原色で1画素のサブピクセル数が偶数である「6」のときは、サブピクセル画素数変換器12におけるサンプリング周波数は、サブピクセル画素数変換前の第1のサンプリング周波数を変換される画像のサブピクセルサンプリングレートの1/2倍,又は1/3倍に設定し、サンプリングレートを1/2、1/3に落とす。更に、低域化されたサブピクセルサンプリングレートのデータ位相を、画素単位のデータと位相を揃えるようにする。これにより、サブピクセル画素数変換器12でサンプリングしたサブピクセル画素数変換後の輝度信号Lbsと画素単位の画素数変換データLbp、Vb、Ubとを適応的に混合することができる。
【0082】
複数のサンプリング周波数を採用できる場合は、サンプリング周波数が小さい方が電力的に有利である。一方でサンプリング周波数が大きい方が、変換できる帯域は広くなる。そのため、どのサンプリング周波数を採用するかは、電力、回路規模、変換する画像の帯域等を考慮して選択すればよい。
【0083】
以上のように、本実施の形態によれば、1画素のサブピクセル数が偶数のとき、サブピクセル画素数変換器12において変換されるサンプリング周波数を、変換される画像のサブピクセル数に相当するサブピクセルサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは1画素のサブピクセル数を割り切れる2以上の自然数)に低域化してサブピクセル画素数変換処理すると共に、1/N倍に低域化されたサブピクセルサンプリングレートのデータ位相を、画素単位のデータと位相を揃える。
【0084】
このため、本実施の形態によれば、サブピクセル画素数変換のサンプリング周波数を低域化することにより、ハードウェアの規模と消費電力を低減させることができる。また、ソフトウェアで実現するときは演算量やメモリが低減でき負担が軽くなる。更にサブピクセル画素数変換された輝度信号は、図4及び図5に示したように、ディスプレイでは2サブピクセル(2原色)または3サブピクセル(3原色)を束にしたことになり、複数の原色が加色され明るくなるため、擬似色妨害の色が薄く目立たなくなる。その結果、本実施の形態は、解像度感が得られるように適応処理が調整でき、本来の目的である変換画像の解像度向上を実現する上で優れた方法といえる。
【0085】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えばディスプレイにおいて、水平方向にサブピクセルが配列されているが、垂直方向にサブピクセルが配列されていてもよく、この場合にも、本発明を適用可能である。また、ディスプレイにおいて、2次元にサブピクセルが配列されていても、本発明を適用可能である。
【0086】
また、輝度信号だけでなく色差信号U及び色差信号Vにもサブピクセル画素数変換を適用してもよい。この場合、マトリクス変換部では、偶数個の各サブピクセルで表示される各原色信号は、1画素あたりサブピクセル数の位相を有し、これらの中からディスプレイの一画素における各サブピクセルの配列順序に一対一に対応している位相が、有効位相となり、その有効位相部の信号が各サブピクセルデータとなる。
【符号の説明】
【0087】
10 サンプリングレート変換装置
11 プリフィルタ
12 サブピクセル画素数変換器
13 第1の画素単位画素数変換器
14 第2の画素単位画素数変換器
15 特徴検出器
16 混合器
17 マトリクス変換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、前記ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換部と、
前記輝度信号を、前記ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換部と、
前記画像信号を構成する色差信号及び前記サブピクセル画素数変換部から出力される第1の輝度信号に基づいて、前記第1の輝度信号と前記画素単位画素数変換部から出力される第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出部と、
前記第1の輝度信号と前記第2の輝度信号とを前記制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合部と、
を有することを特徴とするサンプリングレート変換装置。
【請求項2】
前記特徴検出部は、
前記第1の輝度信号より特定の波形パターンを検出すると、前記特定の波形パターンの輝度信号値及び前記色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成して最小値信号を生成する最小値信号生成部と、
前記最小値信号をフィルタ処理して前記2M個のサブピクセルを1画素とする画素単位に完結された前記制御値を生成するフィルタと
を有することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項3】
前記混合部は、
前記制御値が小さくなるほど、前記第1の輝度信号の混合割合を、前記第2の輝度信号の混合割合に比べて多く混合することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項4】
前記画素単位画素数変換部は、前記サブピクセル画素数変換部が入力信号をサンプリングする前記第2のサンプリング周波数のクロックのトリガ点タイミングと、入力される前記高精細画像信号を構成する前記輝度信号をサンプリングする前記第3のサンプリング周波数のクロックのトリガ点とが一致するように画素単位画素数変換することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項5】
1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、前記ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換ステップと、
前記輝度信号を、前記ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換ステップと、
前記画像信号を構成する色差信号及び前記サブピクセル画素数変換ステップで生成された第1の輝度信号に基づいて、前記第1の輝度信号と前記画素単位画素数変換ステップで生成された第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出ステップと、
前記第1の輝度信号と前記第2の輝度信号とを前記制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合ステップと、
を含むことを特徴するサンプリングレート変換方法。
【請求項1】
1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、前記ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換部と、
前記輝度信号を、前記ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換部と、
前記画像信号を構成する色差信号及び前記サブピクセル画素数変換部から出力される第1の輝度信号に基づいて、前記第1の輝度信号と前記画素単位画素数変換部から出力される第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出部と、
前記第1の輝度信号と前記第2の輝度信号とを前記制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合部と、
を有することを特徴とするサンプリングレート変換装置。
【請求項2】
前記特徴検出部は、
前記第1の輝度信号より特定の波形パターンを検出すると、前記特定の波形パターンの輝度信号値及び前記色差信号に基づく飽和度を示す値のうち、小さい方の値を選択して合成して最小値信号を生成する最小値信号生成部と、
前記最小値信号をフィルタ処理して前記2M個のサブピクセルを1画素とする画素単位に完結された前記制御値を生成するフィルタと
を有することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項3】
前記混合部は、
前記制御値が小さくなるほど、前記第1の輝度信号の混合割合を、前記第2の輝度信号の混合割合に比べて多く混合することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項4】
前記画素単位画素数変換部は、前記サブピクセル画素数変換部が入力信号をサンプリングする前記第2のサンプリング周波数のクロックのトリガ点タイミングと、入力される前記高精細画像信号を構成する前記輝度信号をサンプリングする前記第3のサンプリング周波数のクロックのトリガ点とが一致するように画素単位画素数変換することを特徴とする請求項1記載のサンプリングレート変換装置。
【請求項5】
1画素が2M個(ただし、Mは2以上の自然数)のサブピクセルにより構成される複数の画素を備えるディスプレイの画素数より大なる画素数を有する画像信号を構成し、第1のサンプリング周波数でサンプリングされた輝度信号を、前記ディスプレイの画素数を2M倍した際のサブピクセル画素数変換におけるサンプリング周波数の1/N倍(ただし、Nは2Mを割り切れる2以上の自然数)に設定された第2のサンプリング周波数でサブピクセル画素数変換するサブピクセル画素数変換ステップと、
前記輝度信号を、前記ディスプレイの画素数に基づく第3のサンプリング周波数で画素単位画素数変換を行う画素単位画素数変換ステップと、
前記画像信号を構成する色差信号及び前記サブピクセル画素数変換ステップで生成された第1の輝度信号に基づいて、前記第1の輝度信号と前記画素単位画素数変換ステップで生成された第2の輝度信号の混合する割合を示す制御値を求める特徴検出ステップと、
前記第1の輝度信号と前記第2の輝度信号とを前記制御値に基づいた混合割合で混合した混合信号を出力する混合ステップと、
を含むことを特徴するサンプリングレート変換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−12804(P2013−12804A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142502(P2011−142502)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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