説明

サンプルの作製

【課題】TEMサンプルを基板から抽出する方法を提供すること。
【解決手段】方法は、サンプル上に穴をミリングすることと、プローブを穴に挿入することとを含む。サンプルはプローブに接着し、プローブの上にある間、移送時に処理することができる。他の実施形態では、サンプルは基板から切り出され、静電引力によってプローブに接着する。サンプルは、真空室においてTEMサンプル・ホルダの上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡および走査型透過電子顕微鏡用のサンプルの作製に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡は、光学顕微鏡法より著しく高い分解能および優れた焦点深度を提供する。走査型電子顕微鏡(SEM)では、1次電子ビームが、観察される表面を走査する微小スポットに集束される。1次ビームが表面に衝突する際、2次電子が表面から放出される。2次電子は検出され、像が形成されるが、像の各点の輝度は、ビームが表面上の対応するスポットに衝突するときに検出された2次電子の数によって決定される。
【0003】
透過型電子顕微鏡(TEM)では、広幅ビームがサンプルに衝突し、サンプルを透過した電子は、集束されてサンプルの像を形成する。サンプルは、1次電子ビーム中の電子の多くがサンプルを通過し、反対側に出ることが可能であるように、十分に薄くなければならない。サンプルは、通常、100nm未満の厚さである。
【0004】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)では、1次電子ビームは、微小スポットに集束され、スポットは、サンプル表面にわたって走査される。ワーク・ピースを透過した電子は、サンプルの遠位側面上において電子検出器によって収集され、像の各点の強度は、1次ビームが表面上の対応する点に衝突する際に収集された電子の数に対応する。
【0005】
TEMまたはSTEMで観察するための薄いサンプルを作製する方法がいくつか存在する。ある方法は、サンプルが抽出される基板全体を破壊せずにサンプルを抽出することが必要である。他の方法は、サンプルを抽出するために基板を破壊することを必要とする。「Combined Tripod Polishing and FIB Method for Preparing Semiconductor Plan View Specimens」、Materials Research Society Proceedings、Vol.480、187〜192頁(1997年)においてAndersonらによって記載された1つの方法は、ダイアモンド鋸を使用して基板から薄いストリップ(strip)をカットし、サンプルを特定の厚さに機械的に研摩し、次いで集束イオン・ビームを使用してサンプルをさらに薄くする。「Cross−Sectional Transmission Electron Microscopy of Precisely Selected Regions from Semiconductor Devices」、Inst.Phys.Conf.Ser.No.100、セクション7(1989年)においてE.C.G.Kirkらによって記載された他の方法は、ダイアモンド鋸を使用して基板から一部をカットし、次いで集束イオン・ビームを使用して基板部分の一部の上に薄いサンプルを生成することを必要とする。
【0006】
Robinsonによる米国特第6,841,788号明細書は、フェムト秒レーザ(femtosecond laser)を使用して半導体ウエハを切断し、ウエハと同程度の厚さ、すなわち約750μmの厚さであるプラグ(plug)またはブロック(block)を取り除くことを記載する。TEMまたはSTEMで観察するのに適切な薄いサンプルが、ブロックの上部において形成される。レーザで穿孔されたガイド穴がブロックに開けられ、ブロックを拾い上げるために使用される。Robinsonは、ブロックを除去することによって、「もろい部材」、すなわちTEMにおいて観察するできる薄いサンプルの排除が回避できることを教示する。Robinsonの方法はウエハ全体を破壊しないが、プラグが除去された後のウエハの穴には汚染物質が溜まるので、ウエハは他の処理には不適切になる。
【0007】
Ohnishiらによる米国特許第5,270,552号明細書に記載された基板を破壊せずにサンプルを抽出することを可能にする1つの方法は、集束イオン・ビームを使用してサンプルを基板から取り出し、サンプルを輸送するためにイオン・ビーム付着を使用してプローブをサンプルに溶着することを記載する。Herlingerら、「TEM Sample Preparation Using a Focused Ion Beam and a Probe Manipulator」、Proceedings of the 22nd International Symposium for Testing and Failure Analysis、199〜205頁(1996年)は、集束イオン・ビームを使用してサンプルを基板から取り出すことと、サンプルを真空室から除去することと、次いでサンプルが静電引力によって接着するプローブを使用して、サンプルをTEMサンプル・ホルダに移動させることとを記載する。他の方法は、サンプルをつかむためにピンセット状のグリッパを使用することを含む。すべてのこれらの方法は、緩慢で時間がかかる。
【0008】
Ohnishiらによって記載された方法など、いくつかの抽出方法では、抽出されたサンプルは、TEMまたはSTEMで見ることができるようになる前に、広範囲に薄くすることを必要とする「チャンク」である。Herlingerらにおいて記述されたものなど、他の実施形態では、抽出されたサンプルは、TEMで見る前に些少な仕上げのみを必要とする薄いラメラ(lamella)である。
【特許文献1】米国特許第6,841,788号明細書
【特許文献2】米国特許第5,270,552号明細書
【特許文献3】米国特許第5,851,413号明細書
【特許文献4】米国特許第5,435,850号明細書
【特許文献5】米国特許第6,570,170号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0251412号明細書
【特許文献7】米国特許第6,538,254号明細書
【特許文献8】米国特許第6,963,068号明細書
【非特許文献1】Andersonら、「Combined Tripod Polishing and FIB Method for Preparing Semiconductor Plan View Specimens」、Materials Research Society Proceedings、Vol.480、187〜192頁(1997年)
【非特許文献2】E.C.G.Kirkら、「Cross−Sectional Transmission Electron Microscopy of Precisely Selected Regions from Semiconductor Devices」、Inst.Phys.Conf.Ser.No.100、セクション7(1989年)
【非特許文献3】Herlingerら、「TEM Sample Preparation Using a Focused Ion Beam and a Probe Manipulator」、Proceedings of the 22nd International Symposium for Testing and Failure Analysis、199〜205頁(1996年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、基板からTEMサンプルまたはSTEMサンプルを抽出するために、簡素で堅牢な方法を提供することである。これにより、サンプルは、プローブの上において処理することができ、または真空室内または真空室外においてTEMまたはSTEMのサンプル・ホルダの上に配置することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、穴が、集束イオン・ビームを使用してサンプルに穿孔される。プローブがその穴に挿入され、サンプルは、移動、処理、またはその両方のためにプローブが付着しているままである。いくつかの実施形態により、サンプルを抽出した基板に関するサンプルの配向を認識することが可能になり、それにより、適切な角度においてサンプルを観察することができ、あるいはサンプルをさらに処理することができる。
【0011】
他の実施形態では、サンプルは、プローブへの電気引力によって真空室内において基板から抽出され、サンプルは、真空室においてTEMサンプル・ホルダまたはSTEMサンプル・ホルダに配置され、それにより、サンプルをプローブまたはサンプル・ホルダに溶着する必要がなくなり、またサンプル・ホルダに配置するために真空室からサンプルを取り出す必要性がなくなる。
【0012】
以上は、以下の本発明の詳細な記述がよりよく理解されることが可能であるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広範に概述した。本発明の追加の特徴および利点が、以下において記述される。当業者なら、開示される概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施するための他の構造を修正または設計する基盤として、容易に使用されることが可能であることを理解されたい。また当業者なら、そのような等価な構築は、添付の特許請求の範囲において述べられる本発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解されたい。
【0013】
本発明およびその利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面と関連して、以下の記述を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示は、基板から材料の小さなチャンク(chunks)を除去する新規な方法に関する。この方法は、チャンクまたはラメラをエクスシチュ(ex−situ)またはインシチュ(in−situ)で取り除くために使用することができる。
【0015】
図1は、本発明を実施するのに適切な通常のイオン・ビーム・システムである集束イオン・ビーム(FIB)システム10を示す。FIBシステム10は、液体金属イオン源14と抽出器の電極および静電光学システムを含む集束カラム16とが内部に配置される上部ネック部分12を有する排気エンベロープ11を含む。マルチカスプまたは他のプラズマ源などの他のタイプのイオン源、および成形ビーム・カラムなどの他の光学カラム、ならびに電子ビームおよびレーザ・システムを使用することもできる。
【0016】
イオン・ビーム18は、液体金属イオン源14からイオン・ビーム集束カラム16を経て、偏向プレート20で概略的に示された静電偏向手段の間を通り、下方室26内の可動X−Yステージ24の上に配置された、例えば半導体デバイスを含むサンプル22に向かって進行する。システム制御装置19が、FIBシステム10の様々な部分の動作を制御する。システム制御装置19により、ユーザが、従来のユーザ・インタフェース(図示せず)に入力されたコマンドにより所望の方式で走査されるイオン・ビーム18を制御することができる。代替として、システム制御装置19は、プログラムされた命令に従ってFIBシステム10を制御することが可能である。
【0017】
たとえば、ユーザは、ポインティング・デバイスを使用して表示スクリーン上で対象の領域の輪郭を描くことができ、次いでシステムは、サンプルを抽出するために、以下に示されるステップを自動的に実施することができる。いくつかの実施形態では、FIBシステム10は、対象の領域を自動的に識別するために、Cognex Corporation[マサチューセッツ州ナティック在]から市販されているソフトウエアなどの画像認識ソフトウエアを組み込んでおり、したがってシステムは、本発明によりサンプルを手動でまたは自動的に抽出することができる。たとえば、システムは、複数のデバイスを含む半導体ウエハの上の同様のフィーチャを自動的に特定することができ、異なる(または同じ)デバイス上でそれらのフィーチャを有するサンプルを選択することができる。
【0018】
イオン・ポンプ28が、上方ネック部分12を排気するために使用される。下方室26は、真空制御装置32の制御下でターボ分子および機械式ポンピング・システム30で排気される。真空システムは、下方室26内において、約1×10-7Torr(1.3×10-7mbar)と5×10-4Torr(6.7×10-4mbar)の間の真空を提供する。エッチング補助気体、エッチング遅延気体、または付着前駆物質気体が使用される場合、室の背景圧力は、通常約1×10-5Torr(1.3×10-5mbar)に上昇する可能性がある。
【0019】
高電圧電源34が、約1keVから60keVのイオン・ビーム18を形成して、それをサンプルに向けるために、液体金属イオン源14およびイオン・ビーム集束カラム16の適切な電極に接続される。パターン生成装置38によって提供される規定パターンに従って動作する偏向制御装置および増幅器36が偏向プレート20に結合され、それにより、サンプル22の表面上の対応するパターンをトレースするために、手動でまたは自動的にイオン・ビーム18を制御することが可能である。いくつかのシステムでは、偏向プレートは、当技術分野において周知であるように、最終レンズの前に配置される。イオン・ビーム集束カラム16内のビーム・ブランキング電極(図示せず)により、イオン・ビーム18は、ブランキング制御装置(図示せず)がブランキング電圧をブランキング電極に印加するとき、対象物22ではなくブランキング・アパーチャ(図示せず)に衝突する。
【0020】
液体金属イオン源14は、通常、ガリウムの金属イオン・ビームを提供する。源は、通常、イオン・ミリング、強化エッチング、材料付着によってサンプル22を修正するために、またはサンプル22を撮像するために、サンプル22において10分の1マイクロメートル以下の幅のビームに集束させることができる。2次イオンまたは電子の放出を検出するために使用されるEverhart Thornleyまたはマルチチャネル・プレートなどの帯電粒子検出器40が、駆動信号をビデオ・モニタ44に供給し、かつ偏向信号を制御装置19から受信するビデオ回路42に接続される。
【0021】
下方室26内の帯電粒子検出器40の位置は、異なる実施形態において変更することができる。たとえば、帯電粒子検出器40は、イオン・ビームと同軸とすることができ、またイオン・ビームが通過可能な穴を含むことができる。他の実施形態では、2次粒子は、最終レンズを経て収集することができ、次いで収集するために軸外に偏向させることができる。走査型電子顕微鏡(SEM)41は、その電源および制御45と共に、任意選択でFIBシステム10を備える。
【0022】
気体搬送システム46が、気体蒸気を導入してサンプル22に向けるために、下方室26の中に延びる。本発明の譲受人に譲渡された「Gas Delivery Systems For Particle Beam Processing」についてのCasellaらによる米国特許第5,851,413号明細書が、適切な気体搬送システム46を記載する。他の気体搬送システムが、やはり本発明の譲受人に譲渡された「Gas Injection System」についてのRasmussenによる米国特許第5,435,850号明細書に記載されている。たとえば、エッチングを強化するためにヨウ素を搬送することができ、または、金属を付着させるために金属有機化合物を搬送することができる。
【0023】
Omniprobe Inc.[テキサス州ダラス在]からのAutoProbe200(商標)、またはKleindiek Nanotechnik[ドイツ、ロイトリンゲン在]からのModel MM3Aなどの微調整装置47が、真空室内において物体を精確に移動させることができる。微調整装置47は、真空室内に配置された部分49のX、Y、Z方向および角度シータの制御を可能にするために、真空室外に配置された精密電気モータ48を備えてもよい。微調整装置47は、小さい物体を操作するために様々なエンド・エフェクタ(end effectors)を装備することができる。以下で記述される実施形態では、エンド・エフェクタは、先細の端部を有する薄いプローブ50である。薄いプローブ50をシステム制御装置19に電気的に接続して、サンプルとプローブの間の引力を制御するための電荷がプローブ50に加わるようにしてもよい。
【0024】
加熱または冷却することが可能であるX−Yステージ24の上にサンプル22を挿入するために、また内部気体供給リザーバが使用される場合はそれを使うために、ドア60が開かれる。ドアは、システムが真空下にある場合に開くことができないようにインタロックされる。高電圧電源は、イオン・ビーム18に給電し、かつそれを集束させるために、イオン・ビーム集束カラム16の電極に適切な加速電圧を提供する。イオン・ビーム18がサンプル22に衝突するとき、材料がサンプルからスパッタリングされる、すなわち物理的に放出される。あるいはまた、イオン・ビーム18は、材料を付着させるために前駆物質気体を分解することができる。集束イオン・ビーム・システムは、たとえば本発明の譲受人であるFEI Company[オレゴン州ヒルズボロ在]から市販されている。適切なハードウエアの例が上記で提供されたが、本発明は、任意の特定のタイプのハードウエアにおいて実施されることに限定されるものではない。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態のステップを記述する。ステップ202において、基板から抽出するサンプルの概要が決定される。たとえば、基板は、半導体ウエハまたはその一部であってもよく、抽出される部分は、TEMを使用して観測される集積回路の一部を含んでいてもよい。図3は、破線で示されているサンプル領域304を有する基板302の一部を示している。ステップ204において、サンプルとして抽出される部分の範囲内で基板に穴がミリングされる。図3は、サンプル領域304の穴306を示す。穴の位置は、観測されるサンプルの一部を穴が損なわないようにするべきである。たとえば、集積回路の特定の断面が観測の対象である場合、穴は、回路のその領域を損傷するべきではない。
【0026】
プローブが穴に挿入されると、プローブが基板から引き出されるときにサンプルがプローブに接着しているように、穴306は十分深いことが好ましい。ほとんどの実施形態では、穴はサンプルを貫通していないことが好ましい。したがって、穴の深さ、直径、および配向は、抽出されるサンプルのタイプに応じて変更される。TEMで観察するために抽出される集積回路のサンプルでは、穴は、通常、直径が約1ミクロンまたは2ミクロン、深さが約3μmであり、サンプルの表面に対して垂直ではない角度で配向させることが可能である。穴の壁は、通常、集束イオン・ビーム・ミリング・プロセスの当然の結果としてわずかな先細り(テーパ(taper))を有する。穴の外周近傍の部分で受けるイオンが穴の中央付近の部分で受けるイオンより少なくなるようにイオンの投与量を制御するなど、FIBビーム経路を制御することにより、穴がその中央付近でより深くなるようにして、所望のテーパを作り出すこともできる。
【0027】
ステップ206において、サンプル304は、集束イオン・ビームを使用して基板から部分的に切り出される。サンプルは、例えば、電子顕微鏡で観察する前に成形して薄くする必要がある「チャンク」であってもよく、あるいは、サンプルは、例えば、電子顕微鏡で観察する前に処理をほとんどまたは全く必要としない薄いラメラであってもよい。図4および5は、基板302から切り出された「チャンク」のサンプル304を示す。例えばMooreによる米国特許第6,570,170号明細書によって記載されているように、集束イオン・ビームを2つの方向から向けることによって、または、Ohnishiらによる米国特許第5,270,552号明細書に示されているようにして、サンプル304を切り出すことができる。サンプルは、例えば、互いにおよび表面と交差する2つの平面を形成するように、反対方向からサンプルをアンダーカットし、次いでサンプルを取り出すためにサンプルの側面をミリングすることによって切り離される。
【0028】
図5は、サンプル304が切り離された後の基板302のサンプル304の断面図である。図5は、サンプル304の表面に対する穴306の角度502を示す。FIB真空室内は立て込んでいて、プローブを垂直に挿入する十分な空間はないかもしれないが、角度502により、FIB真空室内でプローブを穴に挿入することが可能になる。ある角度でプローブを挿入することはまた、プローブが移動する際にサンプルをプローブ上で維持するのを補助するために、プローブとサンプルの間に摩擦を加えることに寄与する可能性もある。任意選択のステップ208において、サンプルは、集束イオン・ビームの真空室から除去される。ステップ210において、プローブの先端が、穴306に挿入される。図6は、サンプル304と先端604が穴306に挿入されたプローブ602を示す。プローブの先端604は、プローブの先端604と穴306の内側が十分確実に密接するように、穴306のテーパとほぼ同じかそれよりわずかに急なテーパを有する。穴306の側面とプローブの先端604の間の接触を最大限にするために、プローブの先端604は、穴306の底部と接触しないことが好ましい。プローブの先端604のテーパは、例えば、集束イオン・ビームでミリングすることによって創出することができる。丸い穴306およびプローブの先端604が図示されているが、穴およびプローブについて他の対応する形状を使用することができる。たとえば穴は、2つの平行な壁と、くさび形の先端を形成する2つのテーパ壁を有する形状とすることができる。機械的摩擦および/または静電力が、チャンクをプローブの先端に接着させて維持する。さらに、先端を基板により良好に接着させるために、直流、交流、または無線周波数の信号をプローブに加えることができる。
【0029】
図7、8、および9は、たとえばHerlingerらによって記載された方法を使用して、ラメラが基板700からカットされる本発明の実施形態を示す。イオン・ビームは、ラメラ704の一方の側において小さい矩形のトレンチ702をカットし、ラメラの反対側においてより広い矩形のトレンチ706をカットする。ラメラは、矩形の間に残された材料で形成される。上述した穴306と同様の穴708が、ラメラ704の表面にミリングされる。次いで、基板かビームが傾けられ、ラメラは、完全にまたは部分的に切り出される。ラメラは、ほぼその全周に沿ってイオン・ビームでカットするが、ラメラを基板に付着させるタブを表面の両側に残すことによって、部分的に切り出すことができる。図8は、部分的に解放されたラメラ704であって、タブ810によって基板に付着が保持されている断面図を示す。プローブを穴708に挿入することができ、次いで集束イオン・ビームを使用して、タブ810をカットすることができる。いくつかの実施形態では、タブが十分に薄く、かつプローブと穴の間の接触が十分に強い場合、タブは、サンプルが付着されているプローブを動かすことによって機械的に折り取ることができる。代替として、ラメラは、タブを残さずに、その全周に沿ってカットすることによって完全に切り出すことができる。図9は、ラメラが基板から完全に切り離され、かつトレンチ702またはトレンチ706に残っている実施形態を示す。プローブの挿入は、ラメラが切り出される前でも後でもよい。
【0030】
イオン・ビームは、エッチング促進気体と共に、またはそれを伴わずに使用することができる。集束ビームまたは成形ビームを使用することができる。ステップの順序は、本発明の範囲から逸脱せずに変更することができる。たとえば、プローブのサンプルへの付着は、サンプルが基板から切り出される前でも切り出された後でもよい。プローブは、真空室においてまたは真空室外においてサンプルに付着させることができる。プローブに付着している間、サンプルは、たとえば薄くするために、集束イオン・ビームによってさらに処理することができる。プローブに付着している間、サンプルは、SEM、TEM、またはSTEMなど、電子顕微鏡において観察することもできる。穴は、基板の表面に対して既知の角度で(90°とすることが可能である)サンプルの中にミリングされているので、分離する前の基板の表面に対する分離されたサンプルの配向は、容易に決定することができる。したがってサンプルは、さらに処理したりまたは観察したりするために、好ましい配向で容易に維持することができる。
【0031】
代替として、サンプルは、プローブから取り外して、TEMサンプル・ホルダの上に配置することができる。サンプルは、例えば、プローブとサンプルの間の引力を排除し、サンプルがプローブからはずれるように、プローブの上の静電荷を中性化することによってプローブから解放することができる。いくつかの実施形態では、さらに強制的にプローブからサンプルを離すために、サンプルをサンプル・ホルダに引き付ける静電荷をTEMサンプル・ホルダに加えることができる。他の実施形態では、サンプルは、プローブがサンプルから外される前に、あるいは外された後に、イオン・ビーム付着または接着剤によって、TEMサンプル・ホルダに付着することができる。代替として、プローブの一部は、本出願の譲受人に譲渡されたTappelの米国特許出願公開第2004/0251412号明細書に記載されているように、サンプルに付着したままとすることができる。
【0032】
図10〜16は、サンプルに穴の穿孔が不要なTEMサンプルを作製するための代替実施形態を示す。図10は、この実施形態の好ましいステップを示すフロー・チャートであり、図11〜16は、図10のステップを示す。ステップ1002において、薄いサンプル1102(図11)が、集束イオン・ビームまたは他の方法を使用して基板1104から切り出される。例えば、Herlingerらによって記載された方法が適切である。図11は、基板1104の空洞1106に依然として存在するサンプル1102を示し、プローブ1108がサンプル1102より上に位置する。基板1104およびサンプル1102は、サンプルが基板から切り出された真空室に依然として存在する。ステップ1004において、図12に示されたように、プローブ1108はサンプル1102と接触し、サンプルは、好ましくは静電力を使用して、プローブ1108に接着する。静電荷は、たとえば、電子ビーム、イオン・ビームを使用して電荷を追加または中性化することによって、あるいはプローブを電位源に電気的に接続することによりプローブを電気的に偏向させることによって制御することができる。プローブ1108がサンプル1102に付着された後、サンプルは、図13に示されるようにステップ1006において基板1104から持ち上げられる。次いでステップ1008において、サンプルのステージは、TEMサンプル・ホルダ1110がプローブの下に位置するように移動される。代替として、プローブがTEMサンプル・ホルダの上方に位置するように移動させることができる。
【0033】
次いでステップ1010において、サンプルが付着されているプローブは、図14に示されるように、TEMサンプル・ホルダにサンプルを配置するように降下される。サンプル1102が図15に示されるようにTEMサンプル・ホルダ1110に接触した後、ステップ1012において、プローブよりTEMサンプルについて大きい引力によって、あるいはプローブ、TEMサンプル・ホルダ、またはその両方の静電荷を制御することによって、サンプルはプローブから解放される。たとえば、電荷は、電子ビーム、イオン・ビームによって、プローブに対する電気偏向を変化させることによって、またはサンプル・ホルダを通るバイアス経路または接地経路をサンプル・ステージに提供することによって制御することができる。サンプルとプローブの間の引力が低減または排除された後、サンプルがプローブから落下するのを重力が補助する。サンプルをプローブに対して保持する静電力が取り除かれた後、あるいは重力または相殺力によって打ち消された後、サンプルはプローブから離れ、TEMサンプル・ホルダの上に留まる。図16は、プローブ1108から解放され、かつサンプル・ホルダ1110に依然として固定されているサンプルを示す。
【0034】
図10の実施形態は、米国特許第5,270,552号明細書に記載されているような、サンプルのプローブへの溶着が必要ではなく、したがってイオン・ビームを使用してサンプルをプローブからカットすることが不要であるという利点を提供する。また、Tomimatsuらによる米国特許第6,538,254号明細書に記載されているような、サンプルのTEMサンプル・ホルダへの溶着も必要ではない。1つまたは両方の溶着ステップを排除することによって、サンプルを真空室から取り出すことなく基板から抽出し、TEMサンプル・ホルダの上に配置し、観測することが迅速にできる。
【0035】
図10〜16の実施形態は、TEM格子においてサンプルを平坦に配置することによってサンプルの平面図を提供するのに特に有用である。Asselbergsらによる米国特許第6,963,068号明細書に記載されているフリップ・ステージなどの技法は、サンプルの平面TEM図またはSTEM図を迅速に提供するのに容易には役に立たない可能性がある。
【0036】
本発明およびその利点が詳細に記述されたが、添付の特許請求の範囲によって確定される本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な修正、代用、および変更を本明細書において実施することができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書において記述されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書において記述された対応する実施形態とほぼ同じ機能を実施する、またはほぼ同じ結果を達成する現存する、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップが、本発明により使用されることが可能である。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップを範囲内に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を実施する好ましい集束イオン・ビーム・システムを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示すフロー・チャートである。
【図3】サンプル領域が破線によって示されている基板の上面図である。
【図4】サンプルが基板から解放されている基板の上面図である。
【図5】図4の基板およびサンプルの断面図である。
【図6】プローブが挿入されている図5のサンプルを示す図である。
【図7】2つの矩形カットを有する基板の上面図である。
【図8】サンプルが部分的にアンダーカットされている図7の基板の断面図である。
【図9】サンプルが解放されている図8のサンプルの上面図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示すフロー・チャートである。
【図11】解放されたサンプルに近付くプローブを示す図である。
【図12】図11のサンプルと接触しているプローブを示す図である。
【図13】基板の表面から移動しているプローブに付着されたサンプルを示す図である。
【図14】TEMサンプル・ホルダに近付くサンプルを示す図である。
【図15】TEMサンプル・ホルダと接触しているサンプルを示す図である。
【図16】プローブから離れ、かつ依然としてTEMサンプル・ホルダにあるサンプルを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10 集束イオン・ビーム・システム
11 排気エンベロープ
12 上方ネック部分
14 液体金属イオン源
16 集束カラム
18 イオン・ビーム
19 システム制御装置
20 偏向プレート
22 サンプル
24 X−Yステージ
26 下方室
28 イオン・ポンプ
30 ターボ分子および機械ポンピング・システム
32 真空制御装置
34 高電圧電源
36 偏向制御装置および増幅器
38 パターン生成装置
40 帯電粒子検出器
41 走査型電子顕微鏡
42 ビデオ回路
44 ビデオ・モニタ
45 電源および制御
46 気体搬送システム
47 微調整装置
48 精密電気モータ
49 部分
50 薄いプローブ
60 ドア
302 基板
304 サンプル領域
306 穴
502 角度
602 プローブ
604 プローブの先端
700 基板
702 小さい矩形のトレンチ
704 ラメラ
706 より広い矩形のトレンチ
708 穴
810 タブ
1102 サンプル
1104 基板
1106 空洞
1108 プローブ
1110 TEMサンプル・ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板からTEMまたはSTEMで観察するためのサンプルを抽出する方法であって、
集束イオン・ビームを使用して、真空室に配置されたサンプルに穴を形成することと、
集束イオン・ビームを使用して、前記基板から前記サンプルを少なくとも部分的に切断することと、
プローブの先端を前記穴に挿入することと、
前記プローブを使用して、前記サンプルを前記基板から取り出し、前記挿入されたプローブが前記サンプルを支持することと、
前記プローブによって支持された前記サンプルを移動することと、
TEMまたはSTEMで前記サンプルを観察することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記サンプルが前記プローブに付着している間、帯電粒子ビームを使用して前記サンプルを処理することをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが前記プローブに付着している間、帯電粒子ビームを使用して前記サンプルを処理することが、SEM、TEM、またはSTEMを使用して前記サンプルを観測することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが前記プローブに付着している間、帯電粒子ビームを使用して前記サンプルを処理することが、イオン・ビームを使用して前記サンプルを薄くすることを含む請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
集束イオン・ビームを使用して、前記サンプルを前記基板から少なくとも部分的に切断することが、集束イオン・ビームを使用して、前記サンプルを前記基板から少なくとも部分的に切断し、次いで残存する付着物を機械的に破壊することを含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記残存する付着物を機械的に破壊することが、前記プローブが前記サンプルに挿入されている間、前記プローブを移動させることによって前記残存する付着物を破壊することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
集束イオン・ビームを使用して、サンプルに穴を機械加工することが、前記サンプルを貫通していない穴を機械的に穿孔することを含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
集束イオン・ビームを使用して、サンプルに穴を機械加工することが、先細の穴を機械的に穿孔することを含み、プローブの先端を前記穴に挿入することが、先細のプローブの先端を前記穴に挿入することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
集束イオン・ビームを使用して、サンプルに穴を機械加工することが、エッチング促進気体を使用することを含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記穴が、前記サンプルが前記基板から分離される前に形成される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記プローブが、前記サンプルが前記基板から分離された後に挿入される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
プローブを前記穴に挿入することが、真空室において実施される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
プローブを前記穴に挿入することが、真空室の外部において実施される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
イオン集束カラムと、
イオン・ビーム・システムを制御するためのコンピュータと、
請求項1のステップを実施するためのコンピュータ命令を記憶するメモリと、
を備えるイオン・ビーム・システム。
【請求項15】
TEMまたはSTEMで観察するために基板からサンプルを抽出する方法であって、
前記基板の厚さより著しく浅い穴を基板に形成することと、
前記基板の厚さより著しく薄く、かつ前記穴を備えるサンプルを基板から切り出すことと、
プローブを前記穴に挿入することと、
前記サンプルを前記基板から抽出し、前記プローブが、前記穴に挿入された単一のアームによって前記サンプルを支持することと、
を備える方法。
【請求項16】
穴を前記基板に形成し、前記サンプルを前記基板から切り出すことが、イオン・ビーム加工を使用して実施される請求項11に記載の方法。
【請求項17】
プローブを前記穴に挿入することが、真空室において実施される請求項11または12に記載の方法。
【請求項18】
プローブを前記穴に挿入することが、真空室の外部において実施される請求項11または12に記載の方法。
【請求項19】
穴を前記基板に形成することが、複数の穴を前記基板に形成することを含み、サンプルを基板から切り出すことが、複数のサンプルを切り出すことを含む請求項11、12、13、14のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−316073(P2007−316073A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−136354(P2007−136354)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】