説明

サンプル濃縮装置及びサンプル濃縮方法

【課題】検出しようとする粒子を高濃度に濃縮することのできるサンプル濃縮装置を提供する。
【解決手段】流路14の内壁面はマイナスに帯電しており、流路14内のサンプル溶液28に含まれるプラスイオン30が流路14の内壁面に吸着されている。濃縮用電極18、19間に電界を発生させると、濃縮用電極18、19間の濃縮エリア内にあるサンプル溶液28のマイナスに帯電した粒子29が電界と反対向けに力を受けて移動し(電気泳動)、濃縮用電極18に吸引されて凝集し、濃縮用電極18の場所で濃縮される。一方、プラスイオン30が電界方向にクーロン力を受けて移動し、それによってサンプル溶液28の流れ(電気浸透流)が生じる。そのため、濃縮エリアには電気浸透流によって連続的に粒子29が供給され、供給された粒子29が電気泳動によって濃縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプル濃縮装置及びサンプル濃縮方法に関する。具体的に言えば、細菌、ウィルス、DNA、タンパク質などの生体物質を含んだサンプルを電気泳動法によって濃縮させるためのサンプル濃縮装置と当該装置を用いたサンプル濃縮方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
(電気泳動法の概観)
バイオセンサ、化学センサの分野では、低濃度物質を検出するためや装置の小型化に伴う検出能力の低下を補うために、センサ感度の向上が求められている。例えば細菌検査では、細菌を数日間培養した後、細菌培養したサンプルを用いて目的とする細菌を検出する方法が用いられている。しかし、この方法では細菌の検出までに数日間要したり、検出感度が細菌の増殖能力に依存したりするため、迅速な検査には対応できない。また、高感度で短時間に検出する方法としてはDNAを分析する方法があるが、この方法では死菌と生菌の区別ができないため、殺菌した菌も検出してしまい、根本的な問題がある。
【0003】
これに対し、電気泳動を用いた濃縮法では、電気泳動による細菌の濃縮と分離が可能であるため、サンプルを濃縮することにより細菌の高感度検出が行えるようになり、さらに生菌を死菌から分離することで生菌の高感度検出が行えるようになることが期待される。特に、キャピラリー電気泳動法では、高い分離能を有し、短い時間で分析を行え、必要とするサンプルや試薬の量が少ないなどの利点によって近年注目されている。
【0004】
従来の電気泳動を利用した濃縮システムでは、ゲルや二種類の溶液を用いて濃縮するスタッキングという手法が一般的に用いられてきたが、このシステムでは濃縮サンプルの検出方法が限られてしまったり、サンプル量が限られてしまう欠点がある。また、公知の発明例でも、濃縮についての発明はあるが、濃縮したサンプルを検出する機構まで考えた例は少なく、そのままでは濃縮サンプルを検出するまでに拡散してしまったり、センサ上で検出できなかったりした。
【0005】
(公知文献例の説明)
公知文献としては、例えば特開2005−127771号公報(特許文献1)がある。この文献に開示されているものは、DNAサンプルのゲル電気泳動用マイクロチップである。このチップでは、流路の途中に中間電極を設け、マイナスに帯電しているDNAをプラスの電圧を印加した中間付近に集める。そして、その後、中間電極の電圧をオープンさせ、その先の電極にプラス電圧を印加することで取り出している。
【0006】
しかし、この特許文献1のマイクロチップでは、ゲルを使用する必要があるため、電気浸透流などの流れがある場合には、そのままの機構で濃縮に適用することができない。また、ゲルを用いるため、大腸菌などの大きな粒子のサンプルを濃縮することもできない。さらに、溶液中の粒子をそのまま分析できず、粒子がゲル中に侵入するため検出方法が限られるという難点がある。特に、化学センサやSPRとの相性が悪い。
【0007】
また、別な公知文献としては、特表平6−505593号公報(特許文献2)がある。この文献に開示されているのは、サンプルの成分を補助バッファ内にスタックしながら、電気浸透流で毛細管からサンプルバッファを抽出してサンプル濃度を改良するものである。
【0008】
しかし、特許文献2に記載されている方法では、希釈したサンプル溶液を用いるため、構造が複雑になる。また、全体の構造が大きく、複雑であるという難点がある。さらに、スタッキングによる濃縮であるため、一般的なスタッキング濃縮と同様な課題がある。
【0009】
一般に、スタッキング濃縮では、泳動液間にサンプル溶液を保持させなければならないので、サンプル溶液の注入量に限界があるという点が最大の短所である。すなわち、サンプル溶液の注入量が増大すると溶液中と泳動液中における電場の強さの違いにより電気浸透流に差が生じて,溶液が混合してしまい、分離できなくなるのである。この短所は、特許文献2の方法でも同様である。
【0010】
また、別な公知文献としては、特表2002−517751号公報(特許文献3)がある。この文献に開示されているものは、マイクロチップあるいは毛細管を用いて、その入口に電極を形成しておき、溶液の流れと電極による電気泳動のバランスにより、入口付近に成分物質を濃縮させる方法である。この溶液の流れには、圧力流、電気浸透流などが含まれる。
【0011】
しかしながら、特許文献3の方法では、入口の電極に14kVという非常に高い高電圧をかけているので、使用上の安全面で問題があり、用途も限定される。また、流路の外部に電極を設けているため、成分物質を電気泳動させる領域が広くなり、そのため濃縮効率が悪く、低電圧では使用できないと考えられる。また、流路の外部で濃縮するため、成分物質の濃縮位置が正確に定まらず、検出が不正確になる恐れがある。さらに、流路内にセンサ部を設けた場合には、成分物質をセンサ部まで移動させるために、何らかの手段が必要になる。
【0012】
また、別な公知文献としては、特開2005−87868号公報(特許文献4)がある。ここに開示されているものは、導電率の異なる2種類の溶液をT字型流路の両端から電気浸透流により送液し、溶液界面にて目的とする粒子をいずれかに寄せて分離するという方法である。
【0013】
しかし、この方法では、2種類の溶液を用いる必要があり、簡便性に欠ける。また、なによりも、この方法は粒子の分離方法であって、濃縮方法ではない。
【0014】
また、別な公知文献としては、特開2002−233792号公報(特許文献5)がある。ここに開示されているものでは、流路の内面に流路方向に沿って複数の電極を配置してあり、流路断面方向に配置した電極に電界を与え、粒子を電極に寄せて捕捉している。
【0015】
しかし、特許文献5に開示されているものも粒子分離機構であって、粒子を濃縮するものではない。また、補足した粒子を検出する点や、補足した粒子を移動させる点については記載されていない。
【0016】
また、別な公知文献としては、特開2001−504937号公報(特許文献6)がある。ここに開示されているのは、流路の外側から電界を与え、荷電している粒子を流路壁に寄せ、pHを調製して目的とする粒子の等電点とすることで、目的の粒子のみを粒子壁に寄せることなく通過させ、これによって粒子を分離するものである。
【0017】
しかし、特許文献6に開示されている方法も、粒子の分離方法であって、粒子を濃縮する方法ではない。また、この方法では、物質毎にpHを調整する必要があり、実施に手間が掛かる。
【0018】
【特許文献1】特開2005−127771号公報
【特許文献2】特表平6−505593号公報
【特許文献3】特表2002−517751号公報
【特許文献4】特開2005−87868号公報
【特許文献5】特開2002−233792号公報
【特許文献6】特開2001−504937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その主な目的とするところは、電気泳動と電気浸透流を利用することにより、簡単な構造により、検出しようとする成分物質を高濃度に濃縮することのできるサンプル濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のサンプル濃縮装置は、サンプル溶液の供給部と回収部を結ぶ流路を有し、検出目的とするサンプル溶液の帯電した成分物質を濃縮させるための少なくとも2つの電極を前記流路に備え、前記成分物質と同じ極性で前記流路の内壁面が帯電していることを特徴としている。
【0021】
サンプル溶液の帯電した成分物質を濃縮させるための少なくとも2つの電極とは、当該電極間に電界を発生させることによって帯電した成分物質をいずれかの電極に吸引して濃縮(凝集)させるための電極である。なお、成分物質の濃度を高めるためには、成分物質を吸引して濃縮させる電極は1つであることが望ましい。
【0022】
本発明のサンプル濃縮装置にあっては、流路の内壁面が成分物質と同じ極性(プラス又はマイナス)で帯電しているので、サンプル溶液中の成分物質と逆極性のイオンは流路の内壁面に吸着される。従って、濃縮用の電極間に電界を発生させると、帯電している成分物質は電界と同じ方向、あるいは逆方向へ吸引され、ある濃縮用の電極に集められて濃縮される。また、流路の内壁面に吸着しているイオンは電界によって成分物質と反対方向へ力を受けて移動し、それによってサンプル溶液に流れを生じさせる。よって、成分物質が電極に吸引されて成分物質が少なくなったサンプル溶液は濃縮エリアから排出されて成分物資を含んだ新しいサンプル溶液が濃縮エリアに送り込まれる。そのため、サンプル溶液によって連続的に成分物質が濃縮エリアへ供給されてさらに濃縮されることになり、成分物質を高い濃度に濃縮することが可能になる。
【0023】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のある実施態様においては、前記流路の断面が、その幅よりも高さが小さな扁平形状をしていることを特徴としている。かかる実施態様においては、流路の高さが低いので、イオンの移動によって流路内のサンプル溶液を均一に流動させることができる。一方、流路の幅が広くなっているので、流路にながれるサンプル溶液の流量を大きくすることができる。
【0024】
本発明にかかるサンプル濃縮装置の別な実施態様は、検出目的とする成分物質の帯電電荷をe、サンプル溶液の粘度をη、検出目的とする成分物質の平均半径をr、サンプル溶液の誘電率をε、ゼータ電位をζ、流路の全体に電界が加わったと仮定したときに電界によって駆動されるサンプル溶液の流速に対する、前記濃縮用の電極がxの距離をおいて配置されたときに前記濃縮用の電極間に発生する電界によって駆動されるサンプル溶液の流速の比をf(x)とするとき、
e/(6πηr) > f(x)・(εζ/η)
の関係が成り立つことを特徴としている。この関係式が成り立てば、濃縮用の電極間に電界を発生させたとき、電界によって成分物質が得る速度がサンプル溶液の流速よりも大きくなる。よって、成分物質がサンプル溶液に流されることなく、濃縮用の電極に濃縮させることができる。
【0025】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のさらに別な実施態様は、前記流路内のサンプル溶液と共に同じ方向へ前記成分物質を送液するための少なくとも2つの電極を前記流路内又は前記流路の近傍に備えている。かかる実施態様によれば、濃縮用の電極間に電界を発生させて成分物質を濃縮させた後、送液用の電極間に電界を発生させてサンプル溶液を流動させることにより、濃縮された成分物質をサンプル溶液の流れとともに搬送することができる。例えば、濃縮された成分物質を濃縮位置からセンサの設置位置まで移動させることによって、成分物質を簡便に、かつ高感度で検出することが可能になる。
【0026】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のさらに別な実施態様は、前記送液用の電極間の距離が、前記濃縮用の電極間の距離よりも長いことを特徴としている。送液用の電極間と濃縮用の電極間に同じ電圧を印加する場合、送液用の電極間に電界を発生させて成分物質をサンプル溶液と同じ方向へ移動させ、濃縮用の電極間に電界を発生させて成分物質をサンプル溶液と反対方向へ移動させるためには、送液用の電極間の距離を濃縮用の電極間の距離よりも長くする必要があるためである。
【0027】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のさらに別な実施態様は、前記送液用の電極が前記供給部と前記回収部とに設けられていることを特徴としている。送液用の電極を供給部と回収部に設けることにより、送液用の電極間の距離を大きくできるからである。
【0028】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のさらに別な実施態様は、前記濃縮用の電極のうち一部が、前記送液用の電極を兼ねていることを特徴としている。かかる実施態様によれば、電極の数を減少させることができる。
【0029】
本発明にかかるサンプル濃縮装置のさらに別な実施態様は、サンプル溶液の誘電率をε、ゼータ電位をζ、サンプル溶液の粘度をη、検出目的とする成分物質の帯電電荷をe、検出目的とする成分物質の平均半径をrとするとき、
εζ/η > e/(6πηr)
の関係が成り立つことを特徴としている。この関係式が成り立てば、送液用の電極間に電界を発生させたとき、電界によって成分物質が得る速度がサンプル溶液の流速よりも小さくなる。よって、成分物質はサンプル溶液と同じ方向へ搬送される。
【0030】
本発明にかかるサンプル濃縮方法は、サンプル溶液の供給部と回収部を結ぶ流路を有し、目的とするサンプル溶液の成分物質を濃縮させるための少なくとも2つの電極を前記流路に備え、前記流路内のサンプル溶液と共に同じ方向へ前記成分物質を送液するための少なくとも2つの電極を前記流路内又は前記流路の近傍に備え、検出目的とするサンプル溶液の帯電した成分物質と反対の極性で前記流路の内壁面が帯電したサンプル濃縮装置を用いたサンプル濃縮方法であって、前記濃縮用の電極間に電界を発生させ、当該電極のうちいずれかの電極に前記成分物質を濃縮させるとともに、前記成分物質の吸引方向と反対方向にむけてサンプル溶液の流れを生じさせる工程と、前記送液用の電極間に電界を発生させて前記流路内にサンプル溶液の流れを生じさせるとともに、前記成分物質をサンプル溶液の流れと同じ方向へ移動させる工程とを備えたことを特徴としている。
【0031】
本発明のサンプル濃縮方法によれば、第1の工程によって成分物質を高い濃度に濃縮させることができ、また第2の工程によって濃縮された成分物質を流路に沿った所望位置に移動させることができる。
【0032】
本発明にかかる第1の検出装置は、本発明にかかるサンプル濃縮装置と、前記サンプル濃縮装置の前記濃縮用の電極間の領域に配置されたセンサとを備えたことを特徴としている。かかる検出装置によれば、サンプル濃縮装置で濃縮された成分物質を直ちにその位置で検出することができ、検出効率が高くなる。
【0033】
本発明にかかる第2の検出装置は、送液用の電極を備えた本発明のサンプル濃縮装置と、前記サンプル濃縮装置の前記濃縮用の電極間の領域の外側に配置されたセンサとを備えたことを特徴としている。かかる検出装置によれば、サンプル濃縮装置で濃縮された成分物質をセンサの位置まで移動させて検出することができる。従って、濃縮用の電極や電界に妨げられることなく検出を行わせることができる。
【0034】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
以下、図1(a)及び図1(b)を参照して実施形態1によるサンプル濃縮装置の構造を説明する。図1(a)は実施形態1によるサンプル濃縮装置11の概略断面図、図1(b)は図1(a)のX−X線に沿った概略断面図である。実施形態1においては、マイナスに荷電した粒子(成分物質)を濃縮させる場合を例として説明する。
【0037】
(構造の説明)
このサンプル濃縮装置11は、平板状をしたプレート12によって形成されている。プレート12内には一対のリザーバ13、15(サンプル溶液の供給部、回収部)が設けられており、リザーバ13、15間は直線状の微小な流路14によってつながっている。また、リザーバ13、15の底面には、それぞれ送液用電極16、17が設けられており、流路14の底面には流路途中を横切るようにして一対の濃縮用電極18、19が設けられている。
【0038】
プレート12は粒子と同じ極性に帯電する材料によって形成されており、少なくとも流路14の内壁面は予め粒子と同じ極性、すなわちマイナスに帯電させられている。実施形態1では、粒子はマイナスに帯電しているので、プレート12もマイナスに帯電する材料によって形成されている。例えばガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などを用いることができるが、これら以外にもマイナスに帯電するものであれば使用可能である。また、流路14の内面に表面処理することでマイナスに帯電させれば、プレート12としてどのような材料も使用可能となる。なお、プレート12は透明材料であっても不透明材料であってもよいが、流路内で濃縮された粒子を光学式のセンサや検査手段で測定する場合には、少なくともその部分は透明材料によって形成する必要がある。
【0039】
リザーバ13、15は柱状の空間となっており、いずれもその上面がプレート12の上面で開口している。このうち一方のリザーバ13は溶液供給側のリザーバであって、これから検査しようとするサンプル溶液を溜めておくためのものであり、他方のリザーバ15は溶液回収側のリザーバであって、流路14を通過した後のサンプル溶液を溜めておくためのものである。いずれのリザーバ13、15も流路14の容積に比べて十分に大きな容積を有している。
【0040】
流路14の両端はそれぞれリザーバ13、リザーバ15の下端部側面で開口していてリザーバ13、15に連通している。流路14の断面は高さが約10μm、幅が約100μmの長方形断面となっている。
【0041】
送液用電極16、17及び濃縮用電極18、19はAuをスパッタ、化学メッキ等の方法でプレート12に付着させて形成しているが、Au以外にもPtなどの白金系金属も利用可能である。
【0042】
図1(b)に示すように、送液用電極16は配線23によって直流電源20に接続されており、濃縮用電極18もスイッチ21を介して配線24によって直流電源20に接続されている。また、送液用電極17は配線25によってグランドに接続されており、濃縮用電極19もスイッチ22を介して配線26によってグランドに接続されている。スイッチ21とスイッチ22は連投スイッチとなっており、同時に開成され、あるいは同時に閉成される。また、直流電源20は電源スイッチ27を備えている。
【0043】
(濃縮動作の説明)
上記のようなサンプル濃縮装置11によれば、電気浸透流と電気泳動を利用してサンプル溶液中の粒子を高濃度に濃縮させることが可能になる。以下、図2〜図6に従ってサンプル濃縮装置11によるサンプル溶液の濃縮動作を説明する。図2(a)(b)はサンプル濃縮装置11の動作を示し、図3及び図4はそのときに粒子が濃縮される様子を模式的に表した図である。図5は電気浸透流が存在せず、電気泳動のみで粒子が濃縮される様子を示す図である。また、図6は電気浸透流と電気泳動を説明するための図である。
【0044】
サンプル溶液を濃縮する場合には、スイッチ21、22は閉じた状態となっている。まず、図2(a)に示すように、電源スイッチ27をオフにしたままで、溶液供給側のリザーバ13にサンプル溶液28を注入して溜め、流路14内にもサンプル溶液28を浸入させておく。この濃縮開始前の状態では、図3に示すように、流路14の内壁面がマイナスに帯電しているためにサンプル溶液28内のプラスイオン30が流路14の内壁面に吸引され、流路14の内壁面には電気二重層が発生している。しかし、流路14内には電界が存在しないので、流路14内におけるサンプル溶液28の流れ(電気浸透流)はなく、粒子29も流路14の全体に均一に分散している。
【0045】
ついで、図2(b)に示すように、電源スイッチ27をオンにすると、図4に示すように、流路14内に電気浸透流が生じてサンプル溶液28がリザーバ13側からリザーバ15側へ流れて送液されるとともに、粒子29が濃縮用電極18に吸引されて濃縮用電極18の場所で濃縮される。
【0046】
この理由を説明するため電気泳動と電気浸透流について説明する。図6は流路14内に電気泳動と電気浸透流が生じる理屈を説明した模式図である。電気泳動とは、帯電した粒子がクーロン力により電界方向に引かれ、粒子が電荷量に依存して動く現象である。図6を参照して説明すると、流路14に設けられた電極K1、K2間に電圧が印加されると、流路14内で電極K1、K2間には電界Eが生じる。このとき粒子29がマイナスに帯電していると、粒子29は電界Eによって力を受けプラスの電極K1側へ引っ張られる。
【0047】
電気浸透流とは、帯電した壁面に反対極性のイオンが集まり、集まったイオンがクーロン力によって電界方向へ引かれ、溶液がイオンの移動に巻き込まれることで生じる溶液の流れである。図6を参照して説明すると、流路14の内壁面がマイナスに帯電していると、サンプル溶液28中のプラスイオン30が流路14の内壁面に吸引されて当該内壁面には電気二重層が生じる。しかも、電極K1、K2間に電圧が印加されていて流路14内に電界Eが生じていると、内壁面のプラスイオン30が電界Eにより力を受けてマイナスの電極K2側へ引っ張られて移動する。このとき電極K2側へ移動するプラスイオン30がサンプル溶液28を引きずることでK2側に向けてサンプル溶液28の流れが生じる。この現象を電気浸透効果といい、この流れを電気浸透流という。
【0048】
図2(b)及び図4の濃縮動作に戻って考えると、スイッチ21、22が閉じているために濃縮用電極18と濃縮用電極19の間には電界E(≠0)が発生しているが、送液用電極16と濃縮用電極18の間の領域、および濃縮用電極19と送液用電極17の間の領域では電界E=0となっている。よって、濃縮用電極18及び19の間の濃縮エリアにある粒子29は電界による力を受けて濃縮用電極18側へ吸着され、濃縮用電極18の近傍に凝集する。この結果、濃縮エリア内でサンプル溶液28に分散していた粒子29は濃縮用電極18に集められて濃縮される。
【0049】
また、サンプル溶液28は、濃縮用電極18と19の間の領域では電界が存在しているために電気浸透効果によって駆動力を受けるが、送液用電極16と濃縮用電極18の間の領域や、濃縮用電極19と送液用電極17との間の領域では電界E=0であるから、電気浸透効果による駆動力は発生しない。よって、流路14内のサンプル溶液28は、濃縮用電極18、19間での駆動力によってのみ電気浸透流を生じさせる。
【0050】
いま仮に、流路14の内壁面が帯電しておらず、電気浸透流が生じていないとすると、図5に示すように、濃縮用電極18と濃縮用電極19の間の濃縮エリアにある粒子29が濃縮用電極18に集まってしまうと、それ以上粒子29は濃縮されない。従って、あまり大きな濃縮度は得られない。
【0051】
これに対し、電気浸透流が存在すると、図5のように濃縮エリア内の粒子29がすべて濃縮用電極18に集まったとしても、電気浸透流によって粒子29を含んだサンプル溶液28が濃縮エリアに供給され、新しく供給された粒子29も濃縮用電極18に集まる。寄って、電気泳動と電気浸透流を組み合わせることによって局所的に非常に高い濃度で集まった粒子29を得ることができる。
【0052】
ただし、電気泳動と電気浸透流が存在すると、粒子29は電気浸透流によって濃縮用電極18と反対方向へ流されるので、粒子29を濃縮用電極18に集めるためには、電気泳動によって粒子29が濃縮用電極18側へ引き付けられる速度が、電子浸透流の流速よりも速くなければならない。
【0053】
(粒子搬送動作の説明)
こうして粒子29の濃縮が完了した後、図7に示すように、スイッチ21、22を開いて送液用電極16、17間にのみ電圧が加わるようにすると、流路14内では電気浸透効果によってサンプル溶液28が送液され、濃縮用電極18に濃縮されていた粒子29がサンプル溶液28の流れに乗って粒子搬送される。なお、送液とはサンプル溶液を電気浸透流として通路内で移動させることをいい、粒子搬送とはサンプル溶液と共に粒子をサンプル溶液と同じ方向へ移動させることをいう。
【0054】
スイッチ21、22を開いて送液用電極16、17間に電圧を印加している場合には、図8に示すように、送液用電極16と送液用電極17の間に電界E(≠0)が発生して電気泳動と電気浸透流が生じる。このためには、電気泳動によって粒子29が濃縮用電極18側へ引き付けられる速度が、電気浸透流の流速よりも遅くなければならない。
【0055】
よって、スイッチ21、22を開いた場合には、濃縮用電極18において濃縮されていた粒子29を流路14に沿って移動させることが可能になる。ただし、濃縮した粒子29は粒子搬送によって拡散する恐れがあるので、電気浸透流の流速は粒子29の拡散を考慮して適度な流速となるようにすることが好ましい。
【0056】
こうして粒子搬送によって濃縮した粒子29を移動させる目的は、粒子29を検査するためのセンサ又は検出装置の検査位置まで粒子29を移動させるためである。
【0057】
以上より理解されるように、このサンプル濃縮装置11によれば、サンプル溶液28に含まれている帯電粒子29を高い濃度で凝集させることが可能になる。また、濃縮された粒子29をセンサ等の位置まで搬送することができるので、粒子29をセンサ等により効率よく、かつ高感度で検出することが可能になる。また、電気浸透流を利用して粒子29を搬送しているので、外部ポンプ等が必要なく、サンプル濃縮装置11をコンパクトにできると共にコストも安価にできる。
【0058】
(濃縮と粒子搬送を可能にするための条件)
上記のように送液しながら粒子を濃縮するためには、粒子はサンプル溶液に流されることなく濃縮用電極18に吸引されなければならない。反対に、送液により粒子搬送を行う場合には、送液用電極16が粒子を吸引する力よりもサンプル溶液が粒子を押し流す力が勝っていなければならない。このような作用は以下に述べるような条件のもとで実現することができる。
【0059】
まず、送液による粒子搬送が起きるための条件を求める。この場合にはスイッチ21、22が開いていて流路15の全長に電界Eが発生しているので、電気浸透効果によって流れるサンプル溶液28の流速νEOFは、流路全体が駆動力となる電気浸透流速度に等しくなり、次の数式(1)で表される。
νEOF=(εζ/η)E=kEOFE …(1)
ε:サンプル溶液の誘電率
ζ:ゼータ電位
η:サンプル溶液の粘度
E:送液用電極16、17間の電位勾配(電界)
ここで、kEOF=(εζ/η)は、流路14やサンプル溶液28によって決まる電気浸透移動度である。また、ゼータ電位ζとは、流路14の内壁面に生成している(拡散)電気二重層の「すべり面」(サンプル溶液中で内壁面近傍に形成する「イオン固定層」と、その外側の「イオン拡散層」との間に存在すると便宜的に定義された境界)の電位として定義されるものである。
【0060】
また、電気泳動により移動する粒子29の電気泳動速度νEPは、次の数式(2)で表される。
νEP=〔e/(6πηr)〕E=kEPE …(2)
e:粒子の電荷
η:サンプル溶液の粘度
r:粒子の半径
E:送液用電極16、17間の電位勾配(電界)
ここで、kEP=(〔e/(6πηr)〕は、粒子29の性質によって決まる電気泳動移動度である。
【0061】
スイッチ21、22を開いたときに電気浸透流方向に粒子29を移動させるためには、粒子29の電気泳動速度νEPよりも、サンプル溶液28の流速νEOFのほうが大きければよい。よって、上記数式(1)、(2)より、この条件は、
EOFE>kEP
と表される。また、送液用電極16、17の電極間距離をL、送液用電極16への印加電圧(直流電源20の電圧)をVとすれば、E=V/Lであるから、送液による粒子搬送が起きるための条件は次の数式(3)のようになる。
EOF(V/L)>kEP(V/L) …(3)
【0062】
つぎに、粒子を濃縮させるための条件を求める。この場合にはスイッチ21、22が閉じていて濃縮用電極18、19間に電界Eが発生しているので、濃縮用電極18、19の電極間距離をx、濃縮用電極18への印加電圧(直流電源20の電圧)をVとすれば、E=V/xである。従って、濃縮用電極18、19間の濃縮エリアにある粒子29の電気泳動速度νEPは、上記数式(2)を用いて、次の数式(4)のように表される。
νEP=kEP(V/x) …(4)
【0063】
一方、このときには送液用電極16と濃縮用電極18の間にも、濃縮用電極19と送液用電極17との間にも電界が発生していないので、これらの濃縮エリア外領域ではサンプル溶液28には駆動力が加わらず溶液抵抗が生じる。よって、電気浸透流はこのような溶液抵抗の影響を受けることになり、サンプル溶液28の流速νEOFは電気浸透流速度よりも遅くなる。この溶液抵抗による流速維持率をf(x)という、濃縮用電極18、19の電極間距離xの関数で表すと、サンプル溶液の流速は、次の数式(5)で表される。
νEOF=f(x)・kEOF(V/x) …(5)
なお、流速維持率f(x)は電極間距離xの増加関数であって、f(x)≦1である。
【0064】
スイッチ21、22を閉じたときに粒子29を電気浸透流方向と反対側(電気泳動方向)に移動させるためには、粒子29の電気泳動速度νEPがサンプル溶液28の流速νEOFよりも大きければよい。よって、電気泳動により粒子29の濃縮がおきるための条件は、上記数式(4)、(5)より、次の数式(6)のようになる。
f(x)・kEOF(V/x)<kEP(V/x) …(6)
【0065】
結局、スイッチ21、22を開いたとき送液による粒子搬送が起き、スイッチ21、22を閉じたとき電気泳動よる粒子29の濃縮が起きるためには、数式(3)と数式(6)とが同時に成り立てばよいので、この条件は次の数式(7)となる。
EOF>kEP>f(x)・kEOF …(7)
あるいは、数式(7)は、次のように表すこともできる。
εζ/η > e/(6πηr) > f(x)・(εζ/η) …(8)
ε:サンプル溶液の誘電率
ζ:ゼータ電位
η:サンプル溶液の粘度
e:粒子の電荷
r:粒子の半径
f(x):流速維持率
【0066】
粒子29の性質は基本的に変えることができないので、数式(8)の左の不等式を満たすためには、流路14の内壁面の帯電量を大きくしてゼータ電位ζを大きくすることが有効である。また、数式(8)の右の不等式を満たすためには、流速維持率f(x)を小さくする(すなわち、溶液抵抗を大きくする)ことが有効である。
【0067】
ゼータ電位ζは、シランカップリング剤や自己組織化膜(SAM)などの表面処理により変えることが可能であるから、これらの表面処理によってゼータ電位ζを大きくすればよい。
【0068】
溶液抵抗としては圧力損失が考えられる。圧力損失ΔPは一般的に以下の式で表される。
ΔP=(32ηIu)/D
η:サンプル溶液の粘度
I:流れ代表長さ
u:平均流速
D:流路の直径
従って、直径Dの小さな流路を用いれば、圧力損失ΔPが大きくなり、溶液抵抗が増大するので、流速維持率f(x)を小さくできる。そのため、細い流路を用いればよいことは明らかである。
【0069】
また、濃縮用電極18、19の電極間距離xを短くすることによっても圧力損失ΔPを大きくし、流速維持率f(x)を小さくすることができる。図9は、14mmの長さの流路14に距離xをあけて濃縮用電極18、19を設け、濃縮用電極18、19間に電圧を印加させてサンプル溶液28を送液させたときの、電極間距離xとサンプル溶液28の流速(単位電圧当たり)との関係を表したものである。図9には、圧力損失がないと仮定して計算により求めた流速と、サンプル溶液28の流速の実測値とを表している。図9によれば、電極間距離xが小さくなるほど実測値と計算値(圧力損失の無いときの理論値)とのずれが大きくなっており、電極間距離xが1mmのときには計算値と実測値との間に6倍の違いがある。よって、濃縮用電極18、19の電極間距離xが小さいほど圧力損失が大きくなることが分かる。従って、電極間距離xを小さくすれば、f(x)が小さくなって数式(8)の右の式の値を小さくできる。
【0070】
さらに、サンプル溶液28のpHを調整することで粒子29の帯電量eを変えることができるので、数式(8)の真ん中の式の値を変化させることができるが、このときには流路14の内壁面のゼータ電位ζやサンプル溶液の誘電率εも変化するので、注意が必要である。
【0071】
なお、細い流路を用いることが好ましいことを上に記載したが、実施形態1では、実際には高さが約10μm、幅が約100μmの流路14を用いている。これはつぎのような理由による。流路14の高さが大きい場合を考えると、流路14の内壁面にマイナスイオンが引き付けられているので、電気浸透流を発生させたときに流路14の内壁面近傍では電界によるサンプル溶液の流れが生じるが、流路14内の中央部では流れが生じなかったり、流れが生じても流速が遅かったりして、流路14内の流れが層流となる恐れがある。実験的には、流路14の高さを約10μmよりも小さくすることによって流路14内全体の流れを均一な流速とすることができた。一方、流路14の高さをあまり小さくすると、流路14に流れるサンプル溶液の流量が小さくなる。従って、流路14の高さは約10μmとするのが最も望ましい。
【0072】
しかし、流路14を直径が約10μmの円形断面とすると、流路14に流れるサンプル溶液の流量が少なくなる。そのため、実施形態1では、流路14の高さを約10μmとして流速を均一化すると共に、流路14の幅を大きくして(約100μm)流量を確保している。
【0073】
また、流路14の断面形状としては、幅が約10μmで高さが約100μmといった縦長断面形状も可能である。しかし、縦長断面形状であると、リザーバ13内のサンプル溶液が少なくなってきたときに流路14に気泡を噛み込む恐れがある。そのため幅方向に広い流路14を用いている。
【0074】
(粒子の移動速度と電極間距離)
つぎに、濃縮時と粒子搬送時の粒子29の移動速度を考える。スイッチ21、22を閉じて濃縮を行っている場合には、粒子29の移動速度は、数式(4)、(5)より、
〔kEP−f(x)・kEOF〕(V/x)
となる。また、このときのサンプル溶液28の流速は、
f(x)・kEOF(V/x)
である。よって、濃縮用電極18、19の電極間距離xを小さくすることによって、粒子の移動速度を大きくして濃縮効率を向上させ、またサンプル溶液28の流速を大きくして濃縮エリアへ粒子29を効率よく供給できることを期待できる。
【0075】
また、スイッチ21、22を閉じて粒子搬送を行っている場合には、粒子29の移動速度は、数式(1)、(2)より、
〔kEOF−kEP〕(V/L)
となる。従って、粒子搬送の場合には、送液用電極16、17の電極間距離Lを大きくすれば、粒子の移動速度を小さくすることができ、濃縮された粒子を所定のセンシング位置へ搬送して精度よく停止させることができ、センシング時の信号強度を高くして測定感度を向上させることができる。よって、送液用電極16、17の電極間距離Lは、プレート12のサイズが大きくならない範囲で、できるだけ長くなることが好ましく、実施形態1では、送液用電極16、17をリザーバ13、15内に設けている。
【0076】
以上より、送液用電極16、17の電極間距離Lと濃縮用電極18、19の電極間距離xの比L/xはできるだけ大きいことが望ましい。
【0077】
(サンプル濃縮装置の作製方法)
つぎに、実施形態1のサンプル濃縮装置11の作製方法を説明する。図10(a)〜(e)、図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(d)は、当該作製方法を説明する概略断面図である。
【0078】
まず、図10(a)に示すように、ガラス基板41(ウエハ)を洗浄した後、Auをスパッタしてガラス基板41の上面に膜厚300nmのAu膜42を形成する。ついで、図10(b)に示すように、Au膜42の上にフォトレジストをスピンコートしてレジスト膜43を形成する。ついで、図10(c)に示すように、マスクを用いてレジスト膜43をパターニングし、さらに図10(d)のように、パターニングされたレジスト膜43をマスクとしてAu膜42をエッチング液によってエッチングした後、Au膜42の上のレジスト膜43をアセトンで除去する。この結果、図10(e)に示すように、ガラス基板41の上面には、Au膜42によって送液用電極16、17及び濃縮用電極18、19が完成される。図10には1枚分のガラス基板41だけを示しているが、ガラス基板41はウエハサイズのままで複数個分の電極16〜19を形成されているので、ウエハをダイシングソーによってカットし、個々のガラス基板10に分割する。こうして分割されたガラス基板は、例えば縦27mm、幅55mm、厚み0.5mmとなっている。
【0079】
一方、図11(a)に示すように、洗浄したシリコン基板44の上面にフォトレジストを塗布した後、フォトリソグラフィ工程によってフォトレジスト膜45をパターニングしてフォトレジスト膜45に流路14と同じパターンの開口46をあける。ついで、図11(b)に示すように、フォトレジスト膜45の開口46からシリコン基板44をエッチングし、流路14を形成するための溝47を形成し、フォトレジスト膜45を剥離する。この後、図11(c)に示すように、電鋳法によってシリコン基板44の上面にNiを堆積させてNi成形型48に溝47を転写し、図11(d)のようにNi成形型48の表面に流路14と同じ断面サイズ、同じパターンの凸条49を形成する。
【0080】
この後、図12(a)に示すように、Ni成形型48の上面にPDMS前駆体溶液を流し、60℃の温度に2時間保持して硬化させ、硬化後にこれをNi成形型48から剥離させることにより、下面に流路14を形成された図12(b)のような流路基板50を得る。こうして得られた流路基板50は、例えば縦25mm、幅35mm、厚み4mmとなっている(ガラス基板41と同じ縦、横サイズであってもよい。)。ついで、図12(c)に示すように、流路基板50に2つの貫通孔51を開口させた後、ガラス基板41の上面に流路基板50の下面を貼り合わせて図12(d)のようなサンプル濃縮装置11を得る。こうして作製されたサンプル濃縮装置11では、ガラス基板41と流路基板50によってプレート12が形成され、2つの開口貫通孔51の下面がガラス基板41で塞がれてリザーバ13、15となる。
【0081】
(実施例)
実際に作製したサンプル濃縮装置によって粒子が濃縮される様子と粒子搬送される様子を観察した。図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(c)は、観察粒子として、表面をカルボキシル基で処理したポリスチレンビーズ(粒子直径2mm)を用いたものであり、図13(a)〜(d)は粒子が濃縮される様子を示し、図14(a)〜(c)は粒子が搬送される様子を示す。また、図15(a)〜(e)及び図16(a)〜(c)は、観察粒子として、大腸菌O-157を用いたものであり、図15(a)〜(e)は大腸菌が濃縮される様子を示し、図16(a)〜(c)は大腸菌が搬送される様子を示す。
【0082】
この観察に用いたサンプル濃縮装置は、流路の高さが10μm、幅が50〜200μmのものである(いずれの幅のものでも、濃縮効果が確認できた。)。高さが40μmの流路では、流路中心付近で電気浸透流による流れが弱くなり、粒子搬送時に中心付近の粒子がプラスの送液用電極側へ逆流した。本発明のサンプル濃縮装置では、電気浸透流と電気泳動のバランスが重要であるから、流路の高さは低い方が好ましい。なお、このバランスは前記のように粒子の電荷量と流路内壁面の帯電量によって決まる。
【0083】
2つの送液用電極及び2つの濃縮用電極は、いずれもAu電極を用いた。送液用電極は円形のAu電極であり、濃縮用電極は長方形のAu電極で流路を横切るように配置した。また、電気泳動と電気浸透流の差を大きくするため、流路全体の長さ(10mm)と比べて短い距離に濃縮用電極を配置した。具体的には、濃縮電極の電極間距離は1〜2mmが好ましいが、この実施例では1mmとした。また、リザーバ内に配置された送液用電極の電極間距離は14mmとした。濃縮用電極の幅はいずれも0.5mmとした。そして、プラス側の送液用電極とプラス側の濃縮用電極との距離を5.25mmとし、マイナス側の送液用電極とマイナス側の濃縮用電極との距離を6.75mmとした。
【0084】
さらに、濃縮用電極及び送液用電極には、電源から50ボルトの電圧を印加することとした。印加電圧を高くするほど大きな流速を得ることができ、濃縮速度も速くなるが、印加電圧を高くするとサンプル溶液内に気泡が発生する可能性が高くなるため、印加電圧は濃縮速度と気泡発生のトレードオフである。従って、印加電圧は、これらの点を考慮して50ボルトとした。
【0085】
緩衝液として10mMのボーレートバッファを用いて濃縮動作等を確認した。純水ではさらに大きな流速が得られ、高濃度の緩衝液にするほど流速が遅くなった。従って、適当な緩衝液を用いることで、粒子搬送速度を調整することが可能となる。
【0086】
図13は表面をカルボキシル基で処理した直径2mmのポリスチレンビーズを観察粒子として濃縮動作を観察したものであり、図13(a)は濃縮開始前の流路の様子を示し、図13(b)は濃縮開始直後の流路の様子を示し、図13(c)は濃縮開始後1分経過時の流路の様子を示し、図13(d)は濃縮開始後3分経過時の流路の様子を示している。濃縮開始前の図13(a)では粒子は流路内に均一に分散しているが、時間の経過とともに図13(b)、図13(c)、図13(d)というように粒子が次第にプラスの濃縮電極に凝集していき、3分経過後の図13(d)は多量の粒子が濃縮電極の近傍に凝集して濃縮されていることを観察できる。3分経過後の状態では、濃縮前の粒子密度に比べて8.6倍の粒子密度であった。
【0087】
図14は、図13の濃縮工程の後、送液用電極間に電圧を印加して粒子搬送の動作に切り替えたときの様子を観察したものであり、図14(a)は粒子搬送を開始して1秒後の流路の様子を示し、図14(b)は粒子搬送を開始して3秒後の流路の様子を示し、図14(c)は粒子搬送を開始して5秒後の流路の様子を示している。粒子搬送開始から1秒後の図14(a)では、プラスの濃縮用電極で濃縮されていた粒子がマイナスの濃縮用電極側へ搬送されている。粒子搬送開始から3秒後の図14(b)でも、濃縮された粒子は濃縮エリア内においてマイナスの濃縮用電極側へ搬送されている。さらに、粒子搬送開始から5秒後の図14(c)では、濃縮された粒子は、マイナスの濃縮用電極を超えて濃縮エリア外へ搬送されている。なお、搬送開始から3秒後のとき、画像処理によって積算光量を計測したところ、濃縮前に比べて積算光量は8.6倍となることを確認できた。
【0088】
図15は大腸菌O-157を観察粒子として濃縮動作を観察したものであり、図15(a)は濃縮開始前の流路の様子を示し、図15(b)は濃縮開始直後の流路の様子を示し、図15(c)は濃縮開始後1分経過時の流路の様子を示し、図15(d)は濃縮開始後3分経過時の流路の様子を示し、図15(e)は濃縮開始後5分経過時の流路の様子を示している。濃縮開始前の図15(a)では大腸菌は流路内に均一に分散していると思われるが、時間の経過とともに図15(b)、図15(c)、図15(d)、図15(e)というように大腸菌が次第にプラスの濃縮電極に凝集していき、5分経過後の図15(e)では多くの大腸菌が濃縮電極の近傍に凝集して濃縮されている。ポリスチレンビーズを用いた場合に比べると、濃縮速度は遅いが、大腸菌の場合でも十分に濃縮できることが観察される。
【0089】
図16は、図15の濃縮工程の後、送液用電極間に電圧を印加して粒子搬送の動作に切り替えたときの様子を観察したものであり、図16(a)は粒子搬送を開始して1秒後の流路の様子を示し、図16(b)は粒子搬送を開始して3秒後の流路の様子を示し、図16(c)は粒子搬送を開始して5秒後の流路の様子を示している。大腸菌の場合にも、ゆっくりとした速度で濃縮された大腸菌がマイナスの濃縮用電極側へむけて搬送されていることが観察できる。
【0090】
従って、このような実施例における観察により、実施形態1のサンプル濃縮装置の有効性を確認することができた。
【0091】
(その他)
以上の説明においては、粒子がマイナスに荷電している場合について述べたが、粒子がプラスに荷電している場合にもサンプル濃縮装置11を用いることができる。この場合には、プレート12としてプラスに帯電可能なものを用いて流路14の内壁面をプラスに帯電させ、送液用電極16及び濃縮用電極18側に直流電源20を接続し、送液用電極17及び濃縮用電極19側をグランドに接続するようにすれば、同じ場所(マイナスの濃縮用電極)に粒子が濃縮される。
【0092】
また、濃縮する対象は荷電した粒子に限らず、電荷を持ったイオン、生体分子なども濃縮したり、濃縮したものを搬送させることができる。
【0093】
また、送液用電極にもスイッチを設け、濃縮時には送液用電極のスイッチを開いて電源から切り離すようにしてもよい。
【0094】
(第2の実施形態)
図17は本発明の実施形態2によるサンプル濃縮装置61を示す概略図である。このサンプル濃縮装置61は、マイナス側の送液用電極を省いて3つの電極、すなわち2つの濃縮用電極18、19と1つの送液用電極16で構成したものである。このサンプル濃縮装置61においては、送液用電極16は配線64によって直流電源20に直結されている。濃縮用電極18は、配線65及び66によって直流電源20に接続可能となっており、また配線66及び67によってグランドに接続可能となっており、スイッチ62によって電源側とグランド側とに切替可能となっている。濃縮用電極19は、配線68及び69によってグランドに接続可能となっており、またスイッチ62によってグランドから切離し可能となっている。
【0095】
しかして、図17(a)に示すように、スイッチ62を電源側へ切り替えて濃縮用電極18を直流電源20に接続し、スイッチ63を閉じて濃縮用電極19をグランドに接続している状態では、濃縮用電極18、19間の濃縮エリアにあるマイナスの粒子は、プラス側の濃縮用電極18に吸引されて濃縮用電極18のある場所で濃縮される。同時に、濃縮用電極18、19間における電気浸透効果によって流路14内に電気浸透流が生じてサンプル溶液がリザーバ13からリザーバ15へ送液される。
【0096】
また、図17(b)に示すように、スイッチ62をグランド側へ切り替えて濃縮用電極18をグランドに接続し、スイッチ63を開いて濃縮用電極19をオープンにしている状態では、送液用電極16と濃縮用電極18の間における電気浸透効果によって流路14内に電気浸透流が生じ、濃縮用電極18で濃縮された粒子が濃縮用電極19側へ搬送される。
【0097】
以上のような動作から分かるように、このサンプル濃縮装置61では、濃縮用電極18がマイナス側の送液用電極の働きを兼ねている。また、濃縮用電極18及び19によって粒子の濃縮を行い、送液用電極16及び濃縮用電極18によって粒子搬送を行うので、送液用電極16と濃縮用電極18の電極間距離は、濃縮用電極18と19の電極間距離よりも長くなっている。
【0098】
(第3の実施形態)
図18は本発明の実施形態3によるサンプル濃縮装置71を示す概略図である。このサンプル濃縮装置71は、流路14から濃縮用流路72を分岐させて流路をT形に構成したものである。流路14の両端に設けられたリザーバ13、15内にはそれぞれ送液用電極16、17を設けてある。濃縮用流路72の端にもリザーバ80を形成してあり、リザーバ80内に送液用電極73を設けてあり、濃縮用流路72の途中には濃縮用電極74を設けている。送液用電極16は配線75によって直流電源20に直結され、送液用電極73も配線76によって直流電源20に直結されている。送液用電極17は配線77によってグランドに接続されている。濃縮用電極74はスイッチ78を介して配線79によって直流電源20に接続されている。また、濃縮用電極74と送液用電極17との流路に沿った電極間距離は、送液用電極16と送液用電極17との電極間距離よりも十分短くなっている。
【0099】
しかして、スイッチ78を閉じて濃縮用電極74に電圧を印加した場合には、図19に示すように、濃縮用電極74、と送液用電極17の間の濃縮エリアにある粒子29が濃縮用電極74に吸引され(電気泳動)、濃縮用電極74の場所に粒子29が凝集して濃縮される。このとき送液用電極16から送液用電極17に向けて電気浸透流が生じている。また、濃縮用電極74から送液用電極17に向けて電気浸透流が生じており、これによってリザーバ80から濃縮用電極74に向けてもサンプル溶液28の流れが生じ、粒子29を含んだサンプル溶液28がリザーバ80から濃縮エリアに供給されている。
【0100】
粒子29の濃縮が終わった後、スイッチ78を開いて濃縮用電極74を開放にすると、図20に示すように、送液用電極16から送液用電極17に向けて電気浸透流が生じ、また送液用電極73から送液用電極17に向けても電気浸透流が生じ、これによって濃縮用電極74の場所で濃縮された粒子29が濃縮用流路72及び流路14に沿って送液用電極17側へ向けて搬送される(粒子搬送)。
【0101】
(第4の実施形態)
図21は本発明の実施形態4による検出装置81を示す概略平面図である。この検出装置81は、実施形態1のサンプル濃縮装置11を用いたものであり、濃縮用電極18及び19の間の濃縮エリアに対応する位置で、プレート12の下面にセンサ82を設けたものである。センサ82としては、SPR(表面プラズモン共鳴)センサ、QCM(クオーツクリスタルマイクロバランス)、酵素センサ、電気化学センサなどのバイオセンサのほか、蛍光検出センサ、分光装置などでもよい。
【0102】
この検出装置81では、濃縮エリア特に濃縮用電極18の近傍にセンサ82を配置しているので、濃縮用電極18で粒子29を濃縮しながら、あるいは粒子29の濃縮が終了した直後に(粒子搬送を行うことなく)、センサ82によって粒子29を検出することができる。よって、濃縮した粒子29をそのまま検出できるので、粒子搬送による濃縮粒子29の拡散を回避することができ、センサ82による検出を高感度化できる。また、このような構成であればインキャピラリー(in-capillary)方式となるので、検出作業を効率よく行うことができる。なお、このような形態では、濃縮した粒子29を搬送する必要がないので、送液用電極16、18は省略することができる。
【0103】
しかし、図21のような構成であると、電界Eの影響によってセンサ82を使用できなくなる可能性がある。そのような場合には、図22に示す検出装置83のように、センサ82を濃縮エリア外で、粒子搬送方向の下流側となる位置に配置すればよい。この場合には、濃縮用電極18の場所で粒子29を濃縮した後、粒子搬送によって濃縮した粒子29をセンサ82の位置へ移動させて検出を行う。このような構造であれば、粒子搬送によって濃縮粒子29が多少拡散するおそれがあるが、ほとんどすべてのセンサに適用することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明にかかるサンプル濃縮装置は、マイクロTAS(Total Analysis Systems)と呼ばれるような、微小な化学分析システムを構築する際に用いることができる。例えば、細菌、ウィルス、DNA、タンパク質などを検出するためのバイオチップの開発や、高感度センサ(SPRセンサ、化学センサ、バイオセンサ等)の開発において、センサ感度を向上させるためなどに、採取したサンプルを前処理する工程において用いることができる。細菌の培養などに比べると簡単に成分物質の濃度を高めることができる。
【0105】
また、成分の分離を目的とするナノピラーチップとしての応用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1(a)は実施形態1によるサンプル濃縮装置の概略断面図、図1(b)は図1(a)のX−X線に沿った概略断面図である。
【図2】図2(a)(b)は、実施形態1のサンプル濃縮装置により粒子の濃縮を行う方法を説明する断面図である。
【図3】図3は、粒子の濃縮を開始する前の状況における粒子の分布を模式的に表した図である。
【図4】図4は、粒子の濃縮を行っている状況における粒子の分布を模式的に表した図である。
【図5】図5は、流路内に電気浸透流が存在せず、電気泳動のみで粒子が濃縮される様子を模式的に表した図である。
【図6】図6は、流路内に電気泳動と電気浸透流が生じる理屈を説明するための模式図である。
【図7】図7は、実施形態1のサンプル濃縮装置により粒子搬送を行っている状態を示す断面図である。
【図8】図8は、粒子搬送を行っている状況における粒子の分布を模式的に表した図である。
【図9】図9は、14mmの長さの流路に距離xをあけて一対の濃縮用電極を設け、濃縮用電極間に電圧を印加させてサンプル溶液を送液させたときの、電極間距離xとサンプル溶液の流速(単位電圧当たり)との関係を表した図である。
【図10】図10(a)〜(e)は、実施形態1のサンプル濃縮装置の製造工程を示す図であって、ガラス基板上に電極を形成するまでの工程を表している。
【図11】図11(a)〜(d)は、実施形態1のサンプル濃縮装置の製造工程を示す図であって、Ni成形型を作製するまでの工程を表している。
【図12】図12(a)〜(d)は、実施形態1のサンプル濃縮装置の製造工程を示す図であって、Ni成形型を用いて流路基板を作製し、流路基板をガラス基板の上面に貼り合わせてサンプル濃縮装置を作製するまでの工程を表している。
【図13】図13(a)〜(d)は、観察粒子として表面をカルボキシル基で処理したポリスチレンビーズ(粒子直径2mm)を用い、粒子が濃縮される様子を観察したものである。
【図14】図14(a)〜(c)は、観察粒子として表面をカルボキシル基で処理したポリスチレンビーズ(粒子直径2mm)を用い、粒子が搬送される様子を観察したものである。
【図15】図15(a)〜(e)は、観察粒子として大腸菌O-157を用い、大腸菌が濃縮される様子を観察したものである。
【図16】図16(a)〜(c)は、観察粒子として大腸菌O-157を用い、大腸菌が搬送される様子を観察したものである。
【図17】図17(a)(b)は、本発明の実施形態2によるサンプル濃縮装置を示す概略図である。
【図18】図18は、本発明の実施形態3によるサンプル濃縮装置を示す概略図である。
【図19】図19は、実施形態3のサンプル濃縮装置において、濃縮用電極に粒子が濃縮する様子を模式的に表した概略図である。
【図20】図20は、実施形態3のサンプル濃縮装置において、濃縮された粒子が搬送される様子を模式的に表した概略図である。
【図21】図21は、本発明の実施形態4による検出装置を示す概略平面図である。
【図22】図22は、本発明の実施形態4による別な検出装置を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0107】
11、61、71 サンプル濃縮装置
13、15 リザーバ
14 流路
16、17、73 送液用電極
18,19、74 濃縮用電極
20 直流電源
21、22 スイッチ
28 サンプル溶液
29 粒子
30 プラスイオン
62 スイッチ
63 スイッチ
72 濃縮用流路
78 スイッチ
80 リザーバ
81、83 検出装置
82 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル溶液の供給部と回収部を結ぶ流路を有し、検出目的とするサンプル溶液の帯電した成分物質を濃縮させるための少なくとも2つの電極を前記流路に備え、前記成分物質と同じ極性で前記流路の内壁面が帯電していることを特徴とするサンプル濃縮装置。
【請求項2】
前記流路の断面は、その幅よりも高さが小さな扁平形状をしていることを特徴とする、請求項1に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項3】
検出目的とする成分物質の帯電電荷をe、サンプル溶液の粘度をη、検出目的とする成分物質の平均半径をr、サンプル溶液の誘電率をε、ゼータ電位をζ、流路の全体に電界が加わったと仮定したときに電界によって駆動されるサンプル溶液の流速に対する、前記濃縮用の電極がxの距離をおいて配置されたときに前記濃縮用の電極間に発生する電界によって駆動されるサンプル溶液の流速の比をf(x)とするとき、
e/(6πηr) > f(x)・(εζ/η)
の関係が成り立つことを特徴とする、請求項1に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項4】
前記流路内のサンプル溶液と共に同じ方向へ前記成分物質を送液するための少なくとも2つの電極を前記流路内又は前記流路の近傍に備えていることを特徴とする、請求項1に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項5】
前記送液用の電極間の距離が、前記濃縮用の電極間の距離よりも長いことを特徴とする、請求項4に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項6】
前記送液用の電極が前記供給部と前記回収部とに設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項7】
前記濃縮用の電極のうち一部が、前記送液用の電極を兼ねていることを特徴とする、請求項4に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項8】
サンプル溶液の誘電率をε、ゼータ電位をζ、サンプル溶液の粘度をη、検出目的とする成分物質の帯電電荷をe、検出目的とする成分物質の平均半径をrとするとき、
εζ/η > e/(6πηr)
の関係が成り立つことを特徴とする、請求項4に記載のサンプル濃縮装置。
【請求項9】
サンプル溶液の供給部と回収部を結ぶ流路を有し、目的とするサンプル溶液の成分物質を濃縮させるための少なくとも2つの電極を前記流路に備え、前記流路内のサンプル溶液と共に同じ方向へ前記成分物質を送液するための少なくとも2つの電極を前記流路内又は前記流路の近傍に備え、検出目的とするサンプル溶液の帯電した成分物質と反対の極性で前記流路の内壁面が帯電したサンプル濃縮装置を用いたサンプル濃縮方法であって、
前記濃縮用の電極間に電界を発生させ、当該電極のうちいずれかの電極に前記成分物質を濃縮させるとともに、前記成分物質の吸引方向と反対方向にむけてサンプル溶液の流れを生じさせる工程と、
前記送液用の電極間に電界を発生させて前記流路内にサンプル溶液の流れを生じさせるとともに、前記成分物質をサンプル溶液の流れと同じ方向へ移動させる工程と、
を備えたことを特徴とするサンプル濃縮方法。
【請求項10】
請求項1に記載したサンプル濃縮装置と、前記サンプル濃縮装置の前記濃縮用の電極間の領域に配置されたセンサとを備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項11】
請求項4に記載したサンプル濃縮装置と、前記サンプル濃縮装置の前記濃縮用の電極間の領域の外側に配置されたセンサとを備えたことを特徴とする検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−274041(P2009−274041A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130083(P2008−130083)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】