説明

サージ吸収装置

【課題】 装置容積の小型化及び低コスト化が実現できるサージ吸収装置を提供する。
【解決手段】 3相の交流を出力する電力変換装置で駆動される電動機の入力部に接続されたサージ吸収装置において、抵抗6とコンデンサ7と逆導通型スイッチ8から成り、その一端を前記電動機4の入力端近傍の各相に接続し、その他端を共通の中性点として接続した3相の直列回路と、前記直列回路の各相の両端の電圧を検出する電圧検知制御手段と
を有し、この電圧検知制御手段の各相の検出電圧に応じて、当該相の前記逆導通型スイッチ8のオン/オフ制御を行うようにサージ吸収装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置で駆動される電動機に印加されるサージ電圧を吸収するサージ吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源からの直流を、インバータ装置等に代表される電力変換装置によって任意の周波数の交流に変換して電動機に供給する交流可変速駆動システムの適用が、各方面で拡大している。また、インバータ装置には、IGBTなどの自己消弧型で高速遮断能力のある半導体スイッチング素子の適用が拡大している。通常、インバータ装置と電動機間の配線ケーブルは、LC回路で模擬できるため、インバータ装置が電流を遮断する際に発生するサージ電圧は直流電圧の2倍相当の振幅をもった共振波形となる。近年、このサージ電圧(以下、インバータサージ電圧と呼ぶ)によって、電動機の巻線間絶縁が破壊されるという問題が顕在化してきている。
【0003】
このインバータサージ電圧から電動機を保護するためのサージ吸収回路については、過去に検討が為されており、コンデンサと抵抗から構成されるダンピング回路でサージ電圧を吸収する方式(例えば、特許文献1参照。)、また、サージ吸収回路をコンデンサと整流回路で構成し、この出力をインバータ装置の中間直流部にフィードバックする方式(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【特許文献1】特開平11−262245号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平10−167593号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されたサージ吸収回路は、インバータサージ電圧のエネルギーを抵抗で熱エネルギーに変換して吸収するため、抵抗の発熱量が大きくなるため、損失の増大によって装置容積が増大し、また高コストとなるという問題があった。一方、特許文献2に示されたサージ吸収回路は、損失は低減するが、インバータサージ電圧のエネルギーをインバータ装置の中間直流部にフィードバックするための配線が必要であるため、全体としての装置が高コスト化、大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたもので、装置容積の小型化及び低コスト化が実現できるサージ吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のサージ吸収装置は、3相の交流を出力する電力変換装置で駆動される電動機の入力部に接続されたサージ吸収装置であって、抵抗とコンデンサと逆導通型スイッチから成り、その一端を前記電動機の入力端近傍の各相に接続し、その他端を共通の中性点として接続した3相の直列回路と、前記直列回路の各相の両端の電圧を検出する電圧検知制御手段とを有し、この電圧検知制御手段の各相の検出電圧に応じて、当該相の前記逆導通型スイッチのオン/オフ制御を行うようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力変換装置により駆動される電動機に印加される電圧が所定値以下であれば損失が生じないようにしたので、装置容積の小型化および低コスト化が実現できるサージ吸収装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1及び図2を参照して本発明の実施例を説明する。
【0009】
図1は本発明に係るサージ吸収装置を示すブロック構成図である。直流電源1から供給される直流電圧は、平滑コンデンサ2によって平滑され、インバータ3によって任意の周波数の交流に変換されて電動機4を駆動する。直流電源1は、図示しない商用交流電源をコンバータにより直流に変換する構成とするのが普通であるが、蓄電池などであっても良い。また、インバータ3はスイッチング素子をブリッジ接続してその主変換回路を構成するが、2レベルインバータに限らず、多レベルインバータであっても良い。
【0010】
電動機4の入力端子の近傍にサージ吸収装置5が接続されている。ここで、入力端子の近傍とは、インバータ3からサージ吸収装置5までの配線ケーブル長に対し、サージ吸収装置5から電動機4の入力端子までの配線ケーブルが十分短いことを言う。以下、サージ吸収装置5の内部構成について説明する。
【0011】
U相入力端子には、抵抗6Uとコンデンサ7U及び逆導通型スイッチ8Uの直列回路が接続され、V相入力端子には、抵抗6Vとコンデンサ7V及び逆導通型スイッチ8Vの直列回路が、同様にW相入力端子には、抵抗6Wとコンデンサ7W及び逆導通型スイッチ8Wの直列回路が接続されている。そしてこれ等の3相の直列回路はその終端同士が中性点として接続され、所謂スター結線を構成している。従って、各相がバランスしていれば、上記直列回路の両端の電圧は電動機に印加される相電圧となる。尚、逆導通型スイッチ8U、8V及び8Wは、夫々自己消弧型の主素子とこの主素子に逆並列接続されたダイオードで構成され、自己消弧型の主素子のオン/オフ制御によって通流制御が可能となっている。
【0012】
上記のU相の直列回路の両端の電圧即ち電動機4に印加されるU相の相電圧は、電圧検知制御回路9により検出され、この検出電圧が所定値以上のとき、逆導通型スイッチ8Uの主素子にゲート信号が供給される。図1には図示を省略しているが、V相及びW相の相電圧も同様に電圧検知制御回路9により検出され、この検出電圧が所定値以上のとき、逆導通型スイッチ8V及び逆導通型スイッチ8Wの主素子に夫々ゲート信号が供給される。
【0013】
図2は本発明に係るサージ吸収装置の電圧検知制御回路の回路構成図の一例を示したものである。図2に示すように、電圧検知制御回路9の制御用直流電源は、交流の制御用電源を入力とし、絶縁トランスを介して直流に変換する構成の絶縁制御電源回路10から供給される。この絶縁制御電源回路10から供給される直流電圧は、分圧抵抗11によって所定の比に分圧され、この分圧値はサージ電圧閾値としてU相コンパレータ12U、V相コンパレータ12V及びW相コンパレータ12Wの一方の入力に接続されている。
【0014】
サージ吸収装置5のU相の直列回路の両端の電圧は、電圧検知制御回路9の入力端子Eu−E0u間に与えられ、この電圧を分圧抵抗13Uで所定の比に分圧し、前述のサージ電圧閾値に対応する電動機相電圧を得、U相コンパレータ12Uの他方の入力とする。同様に、V相及びW相の直列回路の両端の電圧は、電圧検知制御回路9の入力端子Ev−E0v間、Ew−E0w間に夫々与えられ、この電圧を分圧抵抗13V、13Wで夫々所定の比に分圧して夫々の電動機相電圧に相当する電圧を得、U相コンパレータ12V、12Wの夫々の他方の入力とする。そして、分圧抵抗13U、13V及び13Wで分圧された夫々の電圧即ち各相の電動機相電圧が、分圧抵抗11で分圧されたサージ閾値電圧より大きいとき、U相コンパレータ12U、V相コンパレータ12V及びW相コンパレータ12Wはゲート出力端子Gu、Gv及びGwにゲート信号を夫々出力し、逆導通型スイッチ8U、8V及び8Wの主素子に夫々ゲート信号を供給する。尚、U相コンパレータ12U、V相コンパレータ12V及びW相コンパレータ12Wの制御電圧として、上記の絶縁制御電源回路10から供給される直流電圧が与えられている。
【0015】
以上の構成における本発明の作用効果は以下の通りである。
【0016】
電動機相電圧がサージ閾値電圧より低いときは、逆導通型スイッチ8U、8V及び8Wの主素子にはゲート信号が供給されないので、各相の直列回路に電流は流れない。従って損失は発生しない。そして、電動機相電圧がサージ閾値電圧より高くなったとき、逆導通型スイッチ8U、8V及び8Wの主素子にゲート信号が供給され、各相の直列回路に電流が流れる。ここで、各相のインバータサージ電圧は、各々時系列的に発生するので、例えばまずU相の電動機相電圧だけがサージ閾値電圧を超える。このとき、逆導通型スイッチ8Uの主素子がオンし、U相の直列回路側から、V相またはW相の逆導通型スイッチのダイオードを経由してV相またはW相に電流が流れる。この電流によって抵抗6U並びに抵抗6Vまたは抵抗6Wに損失が発生してエネルギーが吸収され、U相のサージ電圧は抑制される。V相、W相についても上記と同様の理由でサージ電圧は抑制される。尚、このサージ電圧抑制のためには、電圧検知制御回路9の電圧検出速度がインバータサージ電圧の立ち上がり速度より速いマイクロ秒級の検出速度が必要であるが、現状の電子回路技術でこれは達成可能である。
【0017】
サージ閾値電圧を電動機の絶縁耐圧より若干低い値に設定しておけば、各相の直列回路は、各相にサージ電圧が生じたときだけ損失を発生してサージ電圧を吸収する。電動機相電圧は、正弦波を模擬した矩形波にスイッチング時のインバータサージ電圧(スパイク電圧)が重畳された波形となっているので、各相の直列回路は、このスパイク部分でのみ通流するだけの電流定格があれば良い。従って、本発明によれば、小型で低コストのサージ吸収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るサージ吸収装置を示すブロック構成図。
【図2】本発明に係るサージ吸収装置の電圧検知制御回路の回路構成図。
【符号の説明】
【0019】
1 直流電源
2 平滑コンデンサ
3 インバータ
4 電動機
5 サージ吸収装置
6U、6V、6W 抵抗
7U、7V、7W コンデンサ
8U、8V、8W 逆導通型スイッチ
9 電圧検知制御回路
10 絶縁制御電源回路
11 分圧抵抗
12U、12V、12W コンパレータ
13U、13V、13W 分圧抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の交流を出力する電力変換装置で駆動される電動機の入力部に接続されたサージ吸収装置であって、
抵抗とコンデンサと逆導通型スイッチから成り、その一端を前記電動機の入力端近傍の各相に接続し、その他端を共通の中性点として接続した3相の直列回路と、
前記直列回路の各相の両端の電圧を検出する電圧検知制御手段と
を有し、
この電圧検知制御手段の各相の検出電圧に応じて、当該相の前記逆導通型スイッチのオン/オフ制御を行うようにしたことを特徴とするサージ吸収装置。
【請求項2】
前記電圧検知制御手段は、
絶縁型電源回路から供給された制御電圧を分圧してサージ閾値電圧を生成する手段と、
前記電圧検知制御手段の各相の検出電圧を分圧して電動機相電圧を得る手段と、
前記電動機相電圧と前記サージ閾値電圧とを各相毎に比較する比較手段と
を有し、
前記比較手段によって比較された前記電動機相電圧が前記サージ閾値電圧を超えたとき、
当該相の前記逆導通型スイッチをオンさせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のサージ吸収装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−333564(P2006−333564A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150426(P2005−150426)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】