説明

サーマルインターフェイス材料

架橋性サーマルインターフェイス材料が、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を組合わせることにより製造される。このインターフェイス材料は、液体または“ソフトゲル”の形をしている。このゲル状態は、少なくとも一種のゴムコンパウンド組成物と少なくとも一種のアミン樹脂組成物との間の架橋反応によりもたらされる。一度、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を含んでなる基本組成物を調製してから、その組成物の物理的性質の幾つかを変えるために、相変化材料が必要であるかどうかを決めるために、その組成物は、電子部材、供給業者または電子製品からの要求と照らし合わせなければならない。本明細書中に開示された架橋性サーマルインターフェイス材料を調製する方法は、 a) 少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドを提供する工程、 b) 少なくとも一種のアミン樹脂を提供する工程、 c) この少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドと少なくとも一種のアミン樹脂を架橋して、架橋されたゴム‐樹脂混合物を調製する工程、 d)この架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の熱伝導性充填材を添加する工程および、 e) その架橋されたゴム‐樹脂混合物に湿潤剤を添加する工程からなる。この方法は、さらにまた、その架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の相変化材料を添加する工程を含んでなる場合もある。企図された架橋性サーマルインターフェイス材料は、散布できる(dispensable) 液状ペースト、ゲル、テープまたはフィルムとして提供される。本明細書で説明されたこの企図されたサーマルインターフェイス材料の適用は、多層材料、電子部材または最終電子製品に、この材料を組込むことを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、部分継続出願であり、そして本明細書中に、その全体が参照引用されている、US Utility Application Serial No.09/452483(1999年12月 1日出願)で権利を請求する。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明の属する技術分野は、電子部材および多層材料の適用におけるインターフェイス材料に関する分野である。
【0003】
本発明の背景
電子部材は、絶えず増加する数の消費者用および商業用電子製品で用いられている。このような消費者用および商業用電子製品の幾つかの例は、テレビジョン、パーソナルコンピューター、インターネット・サーバー、セルホン、ページャー、手の平サイズ・システム手帳、携帯ラジオ、カー・ステレオまたはリモートコントローラーである。これらの消費者用および商業用電子機器に対する需要が増すにつれて、同じこれらの製品が消費者および業務用のために、より小さく、より機能的で、そしてより携帯に便利になることも要望される。
【0004】
これらの製品の寸法が小さくなる結果、その製品を構成する部材もより小さくならなければならない。寸法を縮小またはスケール・ダウンする必要のある、これら部材の幾つかの例は、印刷回路または配線基板、抵抗体、配線、キーボード、タッチパッドおよびチップ実装(chip packaging)である。
【0005】
かくして、部材は分解され、そして、より小さい電子部材への要求を受入れるためにスケール・ダウンすることが可能となるであろう、より良い組立て材料および方法があるかどうかを決めるための研究が行われている。多層化部材での、一つのゴールは、その層の数を減らすと同時に、残した層の機能と耐久性を増大させることであると思われる。しかし、この課題は、これら層およびこれら層の成分の幾つかは、普通、そのデバイスを作動するために存在しなければならないことを考えると、困難な場合がある。
【0006】
また、電子デバイスが、より小さくなり、そしてより高速で操作されるようになると、熱の形で放散されるエネルギーが劇的に増大する。物理的インターフェイスを横断して放散されるこの過剰の熱を伝導させるために、工業で普通に実用されているのは、サーマル・グリースまたはグリース様物質を、この様なデバイス中で、単独で、または担体上で、用いることである。最も普通のタイプのサーマルインターフェイス材料は、サーマル・グリース、相変化材料およびエラストマー・テープである。サーマル・グリースまたは相変化材料は、非常に薄い層に広げられる性能を有し、そして隣接表面間の密な接触を提供することができるので、エラストマー・テープより小さい熱抵抗(熱伝導における)を示す。標準的なサーマル・インピーダンスの値は 0.6〜1.6 ℃cm2 /wの範囲である。しかし、サーマル・グリースの重大な欠点は、65℃から 150℃へのような熱サイクル後に、またはVLSIチップで利用した時の電圧サイクル後に、熱的実用性能が有意に低下することである。また、表面の平面性からのずれが大きいことが原因で、その電子デバイス内で対になってくっつく表面(mating surfaces)の間に間隙が生じる場合、または製造時の許容誤差などの他の理由で、対になってくっつく表面の間に大きい間隙が存在する場合には、これら材料の実用性能が悪化することが見いだされている。これら材料の熱伝達性が損なわれると、その材料が使われている電子デバイスの実用性能が悪影響を受ける。
【0007】
かくして a) デバイスの寸法と層の数を最少にしながら、使用者仕様にかなうサーマルインターフェイス材料と多層化材料を設計し製造すること、および b) 望まれるサーマルインターフェイス材料と多層化材料および、企図するサーマル・インターフェイス材料と多層化材料を含んでなる部材、を製造する信頼できる方法を開発することに対する引き続いての需要が存在する。
【0008】
本発明の概要
企図する架橋性サーマルインターフェイス材料は、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を組合わせることにより製造される。この企図されたサーマルインターフェイス材料は、液体または“ソフトゲル”の形をしている。このゲル状態は、少なくとも一種のゴムコンパウンド成分と少なくとも一種のアミン樹脂成分との間の架橋反応によりもたらされる。より特定すれば、このアミン樹脂は、そのゴムコンパウンドの第1級ヒドロキシル基を架橋するために、ゴム組成物中に混和されて、ソフトゲル相を形成する。それ故、そのゴムコンパウンドの少なくとも幾らかは少なくとも一つの末端ヒドロキシル基を含んでなるように考えられている。
【0009】
アミンまたはアミンをベースにする樹脂が、主として、そのアミン樹脂と、少なくとも一種のゴムコンパウンドの第1級または末端ヒドロキシル基との間の架橋反応を容易にするために、そのゴム組成物またはゴムコンパウンドの混合物に添加または混和される。このアミン樹脂とゴムコンパウンドとの間の架橋反応が、その混合物を、液体状態の代わりに“ソフトゲル”相に導く。
【0010】
一度、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を含んでなる(comprise)基礎組成物が調製されたら、その組成物の何等かの物理的性質を変えるのに相変化材料が必要かどうかを決めるために、その組成物は、電子部材、供給業者または電子製品からの要求と照らしあわされなければならない。
【0011】
相変化材料は、それが固体形状と液体形状の間を行き来する時に熱を蓄え、そして放出するので、サーマル・インターフェイス材料の適用時に有用である。相変化材料は、それが固体状態に変わる時に熱を出し、そして液体に戻る時に熱を吸収する。この相変化温度が融解温度であり、その温度で熱の吸収と排出が起きる。
【0012】
本明細書中に開示された架橋性サーマルインターフェイス材料を調製する方法は a) 少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドを提供する工程、 b) 少なくとも一種のアミン樹脂を提供する工程、 c) この少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドと少なくとも一種のアミン樹脂を架橋して、架橋されたゴム‐樹脂混合物を調製する工程、 d) この架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の熱伝導性充填材を添加する工程および、 e) その架橋されたゴム‐樹脂混合物に湿潤剤を添加する工程からなる。この方法は、さらにまた、その架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の相変化材料を添加する工程を含んでなる場合もある。
【0013】
この企図されたサーマルインターフェイス材料は、散布(dispensing)法により塗布され、次いで希望に応じて硬化される散布可能な(dispensable) 液状ペーストとして提供される場合もある。それはまた、ヒート・シンクなどの、境界面に前適用(pre-application) するための非常に扱い易い硬化エラストマー・フィルム又はシートとして提供される場合もある。さらに、任意の適切な散布法により、表面に塗布できるソフト・ゲルまたは液体として提供され、そして製造される場合もある。さらにまた、この材料は、境界面または電子部材に直接適用できるテープとして提供される場合もある。
【0014】
本明細書に記載の企図されたサーマル・インターフェイス材料の適用は、多層化材料、電子部材または最終電子製品に、この材料を組込むことを含んでなる。
【0015】
以下に説明する本発明の推奨される実施態様の詳細な説明から、本発明の様々な目的、特徴、態様および優位点が明らかになるであろう。
【0016】
本発明の詳細な説明
企図された架橋性サーマルインターフェイス材料は、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を組合わせることにより製造される。この企図されたサーマル・インターフェイス材料は、液体または“ソフトゲル”の形態をしている。本明細書中で用いられる“ソフトゲル”とは、分散相が、連続相と混和して、粘ちょうな“ジェリー様”生成物を形成しているコロイドを意味する。このゲル状態は、少なくとも一種のゴムコンパウンド組成物と少なくとも一種のアミン樹脂組成物との間の架橋反応によりもたらされる。より特定すれば、このアミン樹脂は、そのゴムコンパウンドの第1級ヒドロキシル基を架橋するためにゴム組成物中に混和されて、このソフトゲル相が形成される。それ故、このゴムコンパウンドの少なくとも幾らかは、少なくとも一つの末端ヒドロキシル基を含んでなるように企図される。本明細書で用いられる“第1級ヒドロキシル基”という用語は、そのヒドロキシル基が、分子または化合物の末端部位に存在することを意味する。このゴムコンパウンドは、アミン樹脂と架橋反応をすることもできるところの追加的な、第2、第3または、その他の内部ヒドロキシル基をも含んでなる場合もある。この追加的な架橋は、そのゲルが組込まれるべきである製品または部材にとって必要な最終ゲル状態によっては、望ましい場合もある。
【0017】
このゴムコンパウンドは、それらが、その組成物の他の成分に依存して、他のゴムコンパウンドと分子間で架橋し得るか、またはそれら自身で分子内で架橋し得る、“自己架橋性”であることが企図される。また、このゴムコンパウンドは、アミン樹脂化合物によっても架橋され得ることが企図され、そしてまた、それ自身でまたは他のゴムコンパウンドとの自己架橋活性を示すことも企図される。
【0018】
推奨される態様で、使用されるゴム組成物またはコンパウンドは、飽和または不飽和のいずれでもよい。飽和ゴムコンパウンドは、熱酸化分解に対し敏感でないので、本出願で推奨される。用いられる得る飽和ゴムの例は、エチレン‐プロピレンゴム(EPR,EPDM)、ポリエチレン/ブチレン、ポリエチレン‐ブチレン‐スチレン、ポリエチレン‐プロピレン‐スチレン、(水素化ポリブタジエン・モノオール、水素化ポリプロパジエン・モノオール、水素化ポリペンタジエン・モノオール、のような)水素化ポリアルキルジエン“モノオール類”、(水素化ポリブタジエン・ジオール、水素化ポリプロパジエン・ジオール、水素化ポリペンタジエン・ジオール、のような)水素化ポリアルキルジエン“ジオール類”および水素化ポリイソプレンである。しかし、そのコンパウンドが不飽和ならば、その二重結合の少なくともある程度を切断または除去するために、水素化プロセスにかけるのが最も望ましい。本明細書で用いられる“水素化プロセス”という用語は、不飽和有機化合物が、その二重結合の幾らかまたは全てへの水素の直接付加により飽和生成物になる(付加水素化)か、またはその二重結合が完全に切断され、それにより、そのフラグメントがさらに水素と反応する(水素化分解)プロセスで、水素で反応されることを意味する。不飽和ゴムおよびゴムコンパウンドの例は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン‐ブタジエンおよび他の不飽和ゴム類、ゴムコンパウンド類またはゴムコンパウンドの混合物/組合せ、である。
【0019】
本明細書で用いられる“compliant:扱い易い”という用語は、室温で固体で降伏しない(unyielding) 性質とは逆に、室温で降伏して成形し得る材料の性質を包含している。本明細書で用いられる“架橋性:crosslinkable”という用語は、これらの材料または化合物が未だ架橋されていないことを意味する。
【0020】
架橋性サーマル・インターフェイス材料を製造するために、一より多い各タイプのゴムを、組合せることができるが、推奨されるサーマル・インターフェイス材料では、ゴムコンパウンドまたは成分の少なくとも一つが、飽和化合物であるように企画される。適切なサーマル充填剤を含むオレフィン含有材料または不飽和インターフェイス材料は、0.5 cm2 ℃/w 未満の熱容量(thermal capability)を示す。サーマル・グリースとは異なり、液状オレフィン類および(アミン樹脂を含んでなる(comprising)混合物のような)液状オレフィン混合物は、熱活性化すると架橋してソフト・ゲルを生成するであろうから、この材料の熱的実用性能は、ICデバイス中での熱サイクルまたはフローサイクル(flow cycling)後に劣化しないであろう。さらに、インターフェイス材料として用いると、サーマル・グリースを使用する時のように“搾り出される:squeezed out ”ことはなく、そして熱サイクル中に界面層剥離は起きないであろう。
【0021】
主として、そのアミン樹脂と、少なくとも一種のゴムコンパウンドの第1級または末端ヒドロキシル基との間の架橋反応を容易にするために、アミンまたはアミンをベースにする樹脂が、そのゴム組成物またはゴムコンパウンドの混合物に添加または混和される。このアミン樹脂とゴムコンパウンドとの間の架橋反応が、その混合物の中で、液体状態の代わりに、“ソフトゲル”相を生成する。このアミン樹脂とゴムコンパウンドとの間および/または、そのゴムコンパウンド自身の間での架橋度が、そのソフトゲルのコンシステンシー(形状保持性)を決めるであろう。例えば、そのアミン樹脂とゴムコンパウンドが、最小量の架橋(架橋に利用できる部位の10%が、実際にその架橋反応に用いられている)をしているなら、そのソフトゲルは、より“液体様”であろう。しかし、そのアミン樹脂とゴムコンパウンドが、有意量の架橋(架橋に利用できる部位の40〜60%が、実際に架橋反応に用いられ、そして恐らく、ゴムコンパウンド自身の間に測定可能な程度の分子間または分子内架橋が存在する)をしているなら、そのゲルは、より粘ちょうで、より“固体様”になるであろう。
【0022】
アミンおよびアミノ樹脂とは、その樹脂骨格の任意の部位に少なくとも一つのアミン置換基を含んでなる樹脂である。アミンおよびアミノ樹脂とは、尿素、チオ尿素、メラミンまたは関連化合物(allied compounds)と、アルデヒド特にホルムアルデヒドとの反応で誘導される合成樹脂でもある。標準的な、そして当該のアミン樹脂は、第1アミン樹脂、第2アミン樹脂、第3アミン樹脂、グリシジルアミン・エポキシ樹脂、アルコキシベンジルアミン樹脂、エポキシアミン樹脂、メラミン樹脂、アルキル化メラミン樹脂、およびメラミン‐アクリル樹脂である。メラミン樹脂は、本明細書に記載されている、幾つかの企図された実施態様で特に有用であり、そして推奨されるが、その理由は a) この樹脂は、三個の炭素原子と三個の窒素原子を含む環をベースにする環状化合物であり b) この樹脂は、重縮合反応により、他の化合物および分子と容易に結合することが可能であり c) この樹脂は、分子鎖の成長および架橋を容易にするために、他の分子および化合物と反応させることが可能であり d) この樹脂は、尿素樹脂より耐水性で、そしてより耐熱性であり e) この樹脂は、水溶性シロップ中または水中に分散性の不溶性粉末として使用することが可能であり、そして f) この樹脂は、高い融点を有する(325 ℃より高く、そして比較的難燃性である)ことである。ブチル化メラミン樹脂のようなアルキル化メラミン樹脂は、その樹脂の調製中にアルキルアルコールを混和することにより製造される。これら樹脂は、ペイントおよびエナメル溶媒および表面用塗料(surface coatings)に可溶である。
【0023】
サーマルインターフェイス材料または混合物に分散されるべきサーマル充填材粒子は、高い熱伝導性を有することが利点になるに違いない。適した充填材に属するのは、銀、銅、アルミニウムおよび、それらの合金のような金属、および窒化ホウ素、窒化アルミニウム、銀被覆銅、銀被覆アルミニウムおよび炭素繊維などの他の化合物である。窒化ホウ素と銀、または窒化ホウ素と銀/銅の組合せも高められた熱伝導性を提供する。窒化ホウ素は、少なくとも20重量%の量で、そして銀は少なくとも約60重量%の量で特に有用である。望ましくは、約 20w/m℃より大きい、そして最も望ましくは、少なくとも約 40w/m℃の熱伝導度を有する充填材が用いられる。約 80w/m℃以上の熱伝導度を有する充填材が理想的である。
【0024】
本明細書で用いられる“金属”という用語は、ケイ素およびゲルマニウムのような金属類似の性質を有する元素と共に、周期律表のd-ブロックおよび、f-ブロックにある元素を意味する。本明細書で用いられる“d-ブロック”という用語は、これらの元素が、その元素の原子核の回りの3d、4d、5dおよび 6d 軌道を占有する電子を有していることを意味する。本明細書で用いられる“f-ブロック”という用語は、ランタニド類およびアクチニド類を含めて、その元素の原子核の回りの 4f および 5f 軌道を占有する電子を有している元素を意味する。推奨される金属に含まれるのは、インジウム、銀、銅、アルミニウム、スズ、ビスマス、ガリウムおよび、それらの合金、銀被覆銅および銀被覆アルミニウムである。“金属”という用語は、合金、金属/金属複合材料、金属/セラミック複合材料、金属/重合体複合材料さらに他の金属複合材料をも含む。本明細書で用いられる“化合物(又はコンパウンド)”という用語は、化学的プロセスで元素に分解できる一定の組成を有する物質を意味する。
【0025】
特に有効なのは、Applied Sciences,Inc.,Cedarville, Ohio 社から入手できるような“気相成長炭素繊維”(“vapor grown carbon fiber":VGCF)と呼ばれている特別な形状の炭素繊維を含んでなる充填材である。VGCFまたは“carbon micro fibers ”(炭素ミクロ繊維)は熱処理による高度に黒鉛化されたタイプ(熱伝導度=1900 w/m℃)である。約 0.5wt%の炭素ミクロ繊維を添加すると、有意に増大した熱伝導度が得られる。長さと直径を変えたこの種の繊維が入手できる;即ち、長さ1ミリメートル(mm)〜数10センチメートル(tens of centimeters(cm))そして、直径 0.1μm 以下から 100μm 以上まで。一つの有用な形状のVGCFは、直径約 1μm 以下、長さ約50〜100 μm であり、 5μmを超える直径を有する他の普通の炭素繊維より約 2又は3 倍大きい熱伝導度を有する。
【0026】
重合体系および既に議論した水素化ゴムと樹脂の組合せのような界面系に大量のVGCFを混和するのは困難である。炭素ミクロ繊維(例えば 約1μm以下)が重合体に添加される場合、熱伝導度で何等かの有意な改善を得るためには、大量の繊維を重合体に添加しなければならないことが、それらが十分混ぜられない主な理由である。しかし、本発明者達は、比較的多量の他の常用の充填材を含んでいる重合体系に、比較的多量の炭素ミクロ繊維を添加できることを見いだした。その重合体に単独で添加することができる他の繊維と一緒に添加すると、より大量の炭素ミクロ繊維をその重合体に添加できる。炭素ミクロ繊維/重合体の重量比は、0.05〜0.50の範囲であるのが望ましい。
【0027】
一度、少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を含んでなる基礎組成物を調製してから、その組成物の何等かの物理的性質を変えるために、追加の相変化材料が必要であるかどうかを決めるために、その組成物は、電子部材、供給業者または電子製品からの要求と照らし合わせなければならない。特定的にいえば、その部材または製品の要求が、その組成物またはインターフェイス材料が“ソフト・ゲル”形状または幾分液体状であることであるならば、追加の相変化材料を添加する必要はないかもしれない。しかしその部材、多層材料または製品が、その組成物または材料がより固体に近いことを要求するならば、少なくとも一種の相変化材料を添加すべきである。
【0028】
本発明で企図する相変化材料は、ワックス、ポリマー・ワックスまたはパラフィン・ワックスのようなそれらの混合物を含んでなる。パラフィン・ワックスは、一般式がCn 2n+2で、約20℃〜100 ℃の範囲の融解点を有する固体の炭化水素の混合物である。ポリマ・ワックスは、普通ポリエチレン・ワックス、ポリプロピレン・ワックスで、その融点は約40℃〜160 ℃の範囲である。
【0029】
相変化材料は、それが固体状と液体状の間を行き来する時に、熱を蓄えそして放出するので、サーマルインターフェイス材料の適用時に有用である。相変化材料は、それが固体状態に変わる時に熱を出す。それが液体に戻る時に熱を吸収する。この相変化温度が、融解温度であり、その温度で熱の吸収と放出が起きる。
【0030】
しかし、パラフィンをベースにする相変化材料は、幾つかの欠点を有している。それらは、それ自身、非常に脆く、取扱いが困難である。それらはグリースに非常に似ていて、熱サイクル中に、適用されているデバイスから間隙の外に絞りだされる傾向もある。本発明の方法に従うゴム‐樹脂修飾パラフィン・ポリマー・ワックス系は、これらの問題を回避でき、そして取扱いの容易さが有意に改善され、可撓性のテープまたは固体の層状に作製することが可能で、そしてポンプ・アウトまたは圧力下でのしみ出しが起きない。このゴム‐樹脂‐ワックス混合物は、同じか殆ど同じ温度を有していても、それらの融解粘度は遥かに大きく、それらは容易に移行(マイグレーション)しない。さらに、このゴム‐ワックス‐樹脂‐混合物は、自己架橋性になるように設計することが可能で、特定用途でのポンプ・アウトの問題を排除することが保証される。当該相変化材料の例は、マレイン化パラフィン・ワックス、ポリエチレン‐マレイン酸無水物ワックスおよびポリプロピレン‐マレイン酸無水物ワックスである。このゴム‐樹脂‐ワックス混合物は、約50〜150 ℃の間の温度で機能的になり、架橋ゴム‐樹脂網目を形成するであろう。
【0031】
充填材粒子、湿潤剤または抗酸化剤のような追加の充填材、物質または粒子を混和することも利点がある。充填密度を最大にするために、このインターフェイス混合物に実質的に球形の充填材粒子が添加される場合がある。さらに、実質的に球形の形状物または類似物は、詰込む時に、その厚さを或る程度調節できるであろう。このゴム材料中の充填材として有用な標準的粒径は、約 1〜20μm の範囲で、最大で約 100μm である。
【0032】
有機シラン、有機チタネート、有機ジルコニウムなどのような機能性有機金属カップリング剤または“湿潤”剤を添加することにより、充填材粒子の分散を容易にすることができる。有機チタネートは、ペーストの粘度を低下させ、充填材の充填量を増加させるための濡れ向上剤として作用する。使用できる有機チタネートはイソプロピル・トリイソステアリル・チタネートである。有機チタネートの一般構造は、RO-Ti(OXRY) で、式中 RO は加水分解できる基であり、そして XとY はバインダー官能基である。
【0033】
硬化ゴムゲルまたは固体組成物の酸化および熱分解を禁止するために、抗酸化剤が添加されることもある。標準的に有用な抗酸化剤としては、例えば、Ciba Geigy of Hawthorne,N.Y.から入手できる、フェノールタイプのIrgnox 1076 またはアミンタイプのIrgnox 565(0.01〜約 1重量%)が挙げられる。標準的な硬化促進剤は、ジデシルアネチルアミン(didecylanethylamine),(50 ppm〜0.5 重量%)である。
【0034】
少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂、少なくとも一種の相変化材料、またはそれら三種全て、の間の架橋または連鎖反応を促進するために、サーマルインターフェイス材料または組成物に、少なくとも一種の触媒が添加されることもある。本明細書で用いられる“触媒”という用語は、それ自身は消費されないか、または化学的に変化しないで化学反応の速度に有意に影響する物質または条件のことを意味する。触媒は、無機物、有機物または有機グループと金属ハロゲン化物の組合せでもよい。物質ではないが、光および熱も触媒として作用し得る。企図された実施態様では、触媒は酸である。推奨される態様では、この触媒は、カルボン酸、酢酸、ぎ酸、安息香酸酸、サリチル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フェニルステアリン酸、アミノ酸類およびスルホン酸、等の有機酸である。
【0035】
本明細書中に開示された架橋性サーマルインターフェイス材料を調製する方法は a) 少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドを提供する工程、 b) 少なくとも一種のアミン樹脂を提供する工程、 c) この少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドと、この少なくとも一種のアミン樹脂を架橋して、架橋されたゴム‐樹脂混合物を調製する工程、 d) この架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の熱伝導性充填材を添加する工程および、 e) この架橋されたゴム‐樹脂混合物に湿潤剤を添加する工程、を含んでなる。この方法は、さらにまた、その架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の相変化材料を添加する工程を含んでなる場合もある。本明細書中で考察されるように、液状および固体サーマルインターフェイス混合物、材料および組成物が、テープ類、電子部材、多層材料および電子製品と共に、当該企図される方法を用いて調製できる。
【0036】
当該のサーマルインターフェイス材料は、散布法により適用され、そして希望により硬化される散布できる液状ペーストとして提供される場合もある。それはまた、ヒート・シンクのような境界面に前適用(pre-application) するための非常に扱い易い、硬化された、エラストマーフィルムまたはシートとして提供される場合もある。さらに、任意の適切な散布法により表面に適用できるソフト・ゲル、または液体として提供され、そして製造される場合もある。さらにまた、この材料は、境界面または電子部材に直接適用できるテープとして提供される場合もある。
【0037】
本明細書に記載された該サーマルインターフェイス材料の適用は、多層材料、電子部材または最終電子製品に、この材料を組込むことを含んでなる。本明細書で企図されたように、電子部材は、普通、電子系製品中で用いられる任意の多層化部材を含んでなると考えられる。当該企図される電子部材は、回路基板、チップ・パッケージ、セパレータ・シート、回路基板の誘電素子、プリント配線基板および、コンデンサー、誘導子、抵抗器のような回路基板の他の素子などである。
【0038】
電子系製品は、工業で、そして他の消費者により直ぐ使えるという意味において、“最終仕上げ”される(“finished”)。最終仕上げされる消費者用製品の例は、テレビジョン、コンピューター、セルホン、ページャー、手の平サイズ・システム手帳、携帯ラジオ、カー・ステレオおよびリモートコントロールである。回路基板、チップ・パッケージ、およびキーボードのような、最終製品中で使用される可能性のある“中間”(“intermediate”)製品も企図される。
【0039】
電子製品は、概念模型から最終スケール‐アップ/モックアップまでの開発の任意の段階におけるプロトタイプ部材も含んでなる。プロトタイプは、最終製品で予定されていた実際の素子の全てを含んでいても、いなくても良く、そしてプロトタイプは、初期試験の間に、他の部材でのその初期の効果を消すために、複合材料から構成されている幾つかの部材を有している場合もある。
【0040】
本発明を例示するために、実施例Aから実施例Fに記載した成分を混合することにより、一連の試料を調製した。表中に示したように、粘度、製品の形状、サーマル・インピーダンス、弾性率および熱伝導度も報告されている。
【0041】
示された実施例は、例えば、抗酸化剤、濡れ性向上剤、硬化促進剤、粘度低下剤および架橋助剤などの一以上の、場合により加えられる添加剤を含んでいる。このような添加剤の量は変えられるが、一般に、これらは大体以下の量(重量%)存在するのが普通である;充填材:総量(充填材+ゴム)の95%以下;濡れ性向上剤(総量の)0.1〜1 %;抗酸化剤(総量の)0.01〜1 %;硬化促進剤(総量の) 50ppm 〜0.5 %;粘度低下剤 0.2〜15%;および架橋助剤 0.1〜2 %。 0.5%以上の炭素繊維を添加すると熱伝導度が有意に増加することに留意すべきである。
【0042】
【表1】

【0043】
かくして、サーマルインターフェイス材料の特定の実施態様と適用例が開示された。しかし、この技術分野の習熟者には、既に説明されたこれらの他にも、多くのさらなる修飾が、本明細書での発明概念から逸脱することなしに可能であることが、明らかであるに違いない。それ故に、本発明の主題は、添付された特許請求の範囲の精神を除いては、限定されるべきでない。さらにまた、本明細書と特許請求の範囲の解釈において、全ての用語は、できるだけ広い見方で本明細書の文脈と矛盾しないように解釈すべきである。特に“含んでなる”という用語は、引用される素子、部材または工程が、特に引用されていない他の素子、部材または工程と、共に存在するか、または共に利用されるか、または組合わされ得ることを示しており、非排他的な意味で素子、部材または工程、を引用していると解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のゴムコンパウンド、少なくとも一種のアミン樹脂および少なくとも一種の熱伝導性充填材を含んでなる、架橋性サーマルインターフェイス材料。
【請求項2】
少なくとも一種の相変化材料をさらに含んでなる、請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項3】
該少なくとも一種のゴムコンパウンドが少なくとも一つの末端ヒドロキシル基を含んでなる、請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項4】
該少なくとも一種のゴムコンパウンドが少なくとも一種の飽和化合物を含んでなる、請求項3に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項5】
該少なくとも一種のゴムコンパウンドが水素化ポリアルキルジエン・モノオール、水素化ポリアルキルジエン・ジオールまたはそれらの組合せ或いは混合物を含んでなる、請求項4に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項6】
該水素化ポリアルキルジエン・モノオールが水素化ポリブタジエン・モノオールを含んでなる、請求項5に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項7】
該水素化ポリアルキルジエン・ジオールが水素化ポリブタジエン・ジオールを含んでなる、請求項5に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項8】
該少なくとも一種のアミン樹脂がメラミン樹脂を含んでなる、請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項9】
該メラミン樹脂がアルキル化メラミン樹脂を含んでなる、請求項8に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項10】
該アルキル化メラミン樹脂がブチル化メラミン樹脂を含んでなる、請求項9に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項11】
該少なくとも一種の熱伝導性充填材が金属粉末、窒化ホウ素化合物またはそれらの組合せ或いは混合物を含んでなる、請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項12】
該金属粉末がアルミニウム粉末、銀粉末、銅粉末またはそれらの組合せ或いは混合物を含んでなる、請求項11に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項13】
該少なくとも一種の相変化材料がワックスを含んでなる、請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項14】
該ワックスがパラフィン・ワックスを含んでなる、請求項13に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項15】
少なくとも一種の触媒材料をさらに含んでなる、請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項16】
少なくとも一種の触媒材料をさらに含んでなる、請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項17】
該少なくとも一種の触媒材料が、スルホン酸触媒を含んでなる、請求項15または16の内の一項に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項18】
少なくとも一種の湿潤剤をさらに含んでなる、請求項1または2の内の一項に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項19】
該湿潤剤が、有機チタネートを含んでなる、請求項18に記載のサーマルインターフェイス材料。
【請求項20】
請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、多層化部材。
【請求項21】
請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、電子部材。
【請求項22】
請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、多層化部材。
【請求項23】
請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、電子部材。
【請求項24】
請求項1に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、液体組成物。
【請求項25】
請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる、固体組成物。
【請求項26】
請求項2に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなるテープ。
【請求項25】
少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドを提供する工程;
少なくとも一種のアミン樹脂を提供する工程;
該少なくとも一種の飽和ゴムコンパウンドと該少なくとも一種のアミン樹脂を架橋して、架橋されたゴム‐樹脂混合物を調製する工程;
該架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の熱伝導性充填材を添加する工程;および、
該架橋されたゴム‐樹脂混合物に湿潤剤を添加する工程;
を含んでなる、架橋性サーマルインターフェイス材料を調製する方法。
【請求項26】
該架橋されたゴム‐樹脂混合物に少なくとも一種の相変化材料を添加する工程をさらに含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法により調製された液体のサーマルインターフェイス組成物。
【請求項28】
請求項26に記載の方法により調製された固体のサーマルインターフェイス組成物。
【請求項29】
請求項28に記載のサーマルインターフェイス組成物を含んでなるテープ。
【請求項30】
請求項27に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる電子部材。
【請求項31】
請求項28に記載のサーマルインターフェイス材料を含んでなる電子部材。

【公表番号】特表2006−502248(P2006−502248A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−563809(P2003−563809)
【出願日】平成15年1月13日(2003.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/001094
【国際公開番号】WO2003/064148
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】