説明

シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン及びそれからなる容器

【課題】シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れたシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン及びそれからなる容器の提供。
【解決手段】(a)温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が0.05〜100g/10分、(b)密度が0.930〜0.970g/cm、(c)周期表第17族元素の含有量が10重量ppm以下、(d)リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppm未満、(e)脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量が100重量ppm未満、(f)無機系制酸剤の含有量が100重量ppm未満の要件を満足するシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンおよびそれからなる容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン及びそれからなる容器に関し、詳しくはシアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れたシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン及びそれからなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート系接着剤は、速硬化性、接着強度に優れ、近年、工業用、医療用、家庭用の接着剤、いわゆる瞬間接着剤として広く利用されている。このシアノアクリレート系接着剤の容器用材料は、接着剤の保存安定性が他のプラスチック材料に比べに優れることが求められ、主にポリエチレンが用いられている。
ところが、ポリエチレンの種類、銘柄によっては、保存中に接着剤が一部硬化し粘度が上昇し、接着剤の性能を損なう問題があった。この問題はポリエチレンに添加される酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、その他機能性付与剤が原因となっていることが疑われていたが、影響度を判別することが困難であった。このため、これら添加剤を無添加にしたポリエチレンが一部用いられているが、例えば、高密度ポリエチレンは塩素を含んだ金属触媒、いわゆるチーグラー型触媒等を用いている場合が多く、酸化防止剤、中和剤等を添加しないと樹脂劣化や成形機を腐食させる等の理由から、ある程度の添加剤の使用は止むを得ない状況にある。
さらに、例えば、低密度ポリエチレンのような柔軟な樹脂の場合は、粘度の低い液体のシアノアクリレート系接着剤を容器から適量滴下させる際、容器の材質や肉厚の影響を強く受けることから高密度ポリエチレンのような剛性のある容器に対抗することが難しい状況にある。
【0003】
このような問題を解決する方法として、例えば、シアノアクリレート系接着剤容器として、内層に密度0.93〜0.98g/cmのポリエチレン樹脂、外層にナイロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、その他のプラスチック材料を用いた多層のプラスチック容器により貯蔵安定性、塗布コントロール特性等を有するプラスチック容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、低密度ポリエチレン層及び高密度ポリエチレン層の双方の層を含むと共に、該低密度ポリエチレン層の低密度ポリエチレンの密度と、該高密度ポリエチレン層の高密度ポリエチレンの密度との中間の密度を有する中間密度ポリエチレン層を含んでおり、かつこれら各層は直接隣接していて、各層間には接着剤層を介在させていない、2−シアノアクリレート系組成物用容器が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、大型高純度薬品容器用ではあるが、薬品への微粒子の発生及び金属溶出の少ないポリエチレン樹脂が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
ところが、これらのポリエチレン樹脂製容器でも、樹脂中に含まれる添加剤の影響により、シアノアクリレート系接着剤の長期間の保存安定性が不十分であり、また、容器から適量滴下させる塗布コントロール特性と変形の復元性の改良が大きな課題となっていた。
【特許文献1】特開昭58−108135号公報
【特許文献2】特開2001−88815号公報
【特許文献3】特開平11−80449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れたシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン及びそれからなる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述のシアノアクリレート系接着剤の長期間の保存安定性及び容器から適量滴下させる塗布コントロール特性と変形の復元性の課題を鋭意検討した結果、特定のメルトフローレート、密度、曲げ弾性率、塩素含有量を有するポリエチレンを用いることにより、シアノアクリレート系接着剤に対する長期保存安定性と塗布コントロール特性と変形の復元性に優れ、かつブロー成形性にも優れた、シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記要件(a)〜(f)を満足することを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが提供される。
(a)温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が0.05〜100g/10分
(b)密度が0.930〜0.970g/cm
(c)周期表第17族元素の含有量が10重量ppm以下
(d)リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppm未満
(e)脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量が100重量ppm未満
(f)無機系制酸剤の含有量が100重量ppm未満
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、フェノール系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、イオウ系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、フェノール系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下及びイオウ系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリエチレンがフィリップス型触媒を用いて製造されたものであることを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンが提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明のポリエチレンを用いて成形されたシアノアクリレート系接着剤容器が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明のポリエチレンを最内層に用いて多層成形されたシアノアクリレート系接着剤容器が提供される。
【0014】
また、本発明の第8の発明によれば、第6又は7の発明において、 容器の胴部の材料の曲げ弾性率が400〜1800MPaであって、容器胴部の全体の厚みが0.3〜2.0mmであることを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエチレンは、シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れ、かつブロー成形性にも優れ、シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン容器として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンおよびそれを用いた容器である。以下、本発明のポリエチレン、ポリエチレンからなる容器について詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリエチレンは、エチレン単独重合体またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体からなり、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等が挙げられる。このα−オレフィンの中では1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明のポリエチレンは、フィリップス型触媒、チーグラー型触媒、メタロセン触媒、フェノキシイミン系触媒等の触媒により重合して得られる。この中でも、触媒活性の高いものが、酸化劣化を促進させる触媒残渣が少ないので好ましい。また、成形機腐食の観点より塩素を含まない、もしくは、塩素量の少ないフィリップス型触媒、メタロセン触媒、フェノキシイミン系触媒が好ましい。とりわけフィリップス型触媒を用いて製造したポリエチレンは、シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ成形性に優れるので好ましい。
なお、高活性のチーグラー型触媒における固体触媒成分の例としては、三塩化チタン、三塩化バナジウム、四塩化チタン又はチタンのハロアルコラートをマグネシウム化合物に担持した触媒成分、マグネシウム化合物とチタンの化合物の共沈殿物または共晶体などからなる触媒成分等が挙げられる。この中では、マグネシウム、チタン、塩素を含む固体触媒成分が好ましく、該固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系が好ましい。有機アルミニウムとしては、トリエチルアルミニウム(以下、TEAと略す)、トリイソブチルアルミニウム(以下、TIBAと略す)、ジエチルアルミニウムクロライド(以下、DEACと略す)等が挙げられるが、成形機腐食性の観点より塩素成分を含まないものが好ましく、触媒活性の高いTEAがより好ましい。
【0019】
上記重合触媒系を用いたポリエチレンの製造における重合方法は、スラリー重合法、気相重合法、溶液重合法等を例示することができ、単段もしくは多段重合方法を採用することができる。この中でも、炭素数が4〜10の重合溶媒、例えば、イソブタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等を用いるスラリー重合法が好ましい。
【0020】
本発明のポリエチレンは、以下に示す(a)〜(f)の特性を有することにより、シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、かつ、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れ、かつブロー成形性にも優れ、シアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン容器として好適に用いることができる。
【0021】
(a)MFR
本発明のポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS−K7210(1999)熱可塑性プラスチックの流れ試験方法により、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。このMFRは、0.05〜100g/10分のものが利用でき、ブロー成形とチューブ成形の場合は、0.05〜5.0g/10分のものが好ましく、射出成形の場合は1〜100g/10分のものが好ましい。このMFRが上記下限値未満の場合は、成形時に押し出しが困難になる。一方、このMFRが上記上限値を超える場合は、容器の衝撃強度等が低下する。
このMFRを調整する方法としては、重合時の水素濃度、重合温度を変化させる方法等の一般的な方法で調整でき、水素濃度が高く、重合温度が高いほどMFRは高くなる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより分子量を下げて結果としてMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより分子量を上げて結果としてMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより分子量を下げて結果としてMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより分子量を上げて結果としてMFRを小さくすることができる。
【0022】
(b)密度
本発明のポリエチレンの密度は、JIS−K6922−1及び2(1997)のポリエチレン成形用及び押出用材料試験方法により、190℃で標準メルトインデクサーから押し出されたストランドを30分間沸騰処理し、1時間放置後24時間以内に密度勾配管にて測定した値である。この密度は0.930g/cm〜0.970g/cmであり、好ましくは0.935g/cm〜0.965g/cmである。この密度が上記下限値未満の場合は、容器の剛性が低くなり、薄肉化できない。また、シアノアクリレート系接着剤の場合、低粘度の接着剤液を一滴ずつ、滴下しながら瞬時に硬化させるため微量な滴下量を制御できる容器の特性も必要である。この滴下量を制御する流滴性はポリエチレンの密度が低いほど悪化し不都合となる。さらに、密度が低いと水蒸気透過性が高くなり、水分で硬化反応を起こすシアノアクリレート系接着剤の保存安定性を損なう。この密度が上記上限値を超えると、ポリエチレン製造上困難であり、容器の衝撃強度が劣る。
この密度を調整する方法としては、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができ、一般的にコモノマー量を多くすると密度を小さくすることができる。
【0023】
(c)周期表第17族元素の含有量
本発明のポリエチレンの周期表第17族元素の含有量は、蛍光X線分析により測定される。周期表第17族元素の含有量は10重量ppm以下であり、好ましくは5重量ppm以下、さらに好ましくは1重量ppm以下である。周期表第17族元素の含有量が上記上限値を超える場合、成形機を腐食させる原因になると共にポリエチレン自体が劣化しやすくなる。周期表第17族元素としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン等が挙げられ、いわゆるハロゲン元素といわれる。中でも塩素は主として触媒残渣に起因するものであり、ハロゲン捕捉効果のある中和剤等の添加により、成形機の腐食を防止することができるが、中和剤として一般的に用いられるステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩やマグネシウム及びアルミニウムを含む含水塩基性炭酸塩であるハイドロタルサイト、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等は、シアノアクリレート系接着剤を硬化させるので、中和剤として好ましくない。この周期表第17族元素の含有量は、触媒の種類と触媒収率、並びに添加剤の種類及び量により調整できる。中でも周期表第17族元素を含有しないクロム化合物を主成分とするフィリップス型触媒を使用することが好ましい。
【0024】
本発明をさらに一層効果的にするには、本発明のポリエチレンに含まれる主な金属元素の含有量を適宜選択することが望ましい。
例えば、主な金属元素の含有量は、1000重量ppm以下、好ましくは500重量ppm以下、さらに好ましくは300重量ppm以下であることが望ましい。金属元素の含有量は、蛍光X線分析により測定できる。金属元素の含有量が上記上限値を超えると容器内容物への金属元素の溶出が大きくなり、シアノアクリレート系接着剤を硬化させる原因となることがある。金属元素としては、樹脂に添加又は混入される主だった種類のものが挙げられ、例えば、ナトリウム、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等が少ないほど好ましい。本発明のポリエチレンは、アルミニウム元素含有量が0.2重量ppm以下、または鉄元素含有量が0.2重量ppm以下であることがシアノアクリレート系接着剤容器として望ましい。さらに、本発明のポリエチレンは、チタン元素含有量が1重量ppm以下、クロム元素含有量が20重量ppm以下、またはケイ素元素含有量が250重量ppm以下としたものが、シアノアクリレート系接着剤容器適性が向上し好ましい。
さらに、マグネシウム、カルシウム、バリウムの含有量は、それぞれ1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、さらに好ましくは0.1重量ppm以下が望ましい。上記上限値を超えると容器内容物への当該元素の溶出が大きくなり、シアノアクリレート系接着剤を硬化させる原因となることがある。
【0025】
(d)リン系酸化防止剤の含有量
本発明のポリエチレンのリン系酸化防止剤の含有量は、蛍光X線分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーを用いて測定される。リン系酸化防止剤の含有量は100重量ppm未満、好ましくは50重量ppm以下、さらに好ましくは10重量ppm以下である。このリン系酸化防止剤含有量が上記上限値を超える場合、シアノアクリレート系接着剤を硬化させるので好ましくない。このリン系酸化防止剤の含有量は、ポリエチレンの酸化防止剤を選択する際に種類及び量を適宜選択することにより調整することができる。
リン系酸化防止剤とは、分子中にリン元素を含む化合物であり、例えば、ホスファイト系有機化合物(分子中にホスファイト構造を有する有機化合物)、ホスフォナイト系有機化合物が挙げられ、具体的には、
トリフェニルホスファイト、
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、
トリス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、
トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、
トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、
ジフェニルアシッドホスファイト、
2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、
ジフェニルデシルホスファイト、
ジフェニルオクチルホスファイト、
ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
フェニルジイソデシルホスファイト、
トリブチルホスファイト、
トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、
トリデシルホスファイト、
トリラウリルホスファイト、
ジブチルアシッドホスファイト、
ジラウリルアシッドホスファイト、
トリラウリルトリチオホスファイト、
ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、
テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、
ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、
テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、
ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、
2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0026】
(e)脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量
本発明のポリエチレンの脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量は、蛍光X線分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーを用いて測定される。脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量は、100重量ppm未満、好ましくは50重量ppm以下、さらに好ましくは10重量ppm以下である。この脂肪酸金属塩系制酸剤含有量が上記上限値を超える場合、シアノアクリレート系接着剤を硬化させるので好ましくない。この脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量は、ポリエチレンに触媒残渣として含有されるハロゲン元素の量を適宜選択することにより調整することができる。
脂肪酸金属塩系制酸剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等の脂肪酸とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属との化合物が挙げられ、具体的には
ステアリン酸カルシウム、
ステアリン酸マグネシウム、
ステアリン酸アルミニウム、
ステアリン酸亜鉛、
ヒドロキシステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0027】
(f)無機系制酸剤の含有量
本発明のポリエチレンの無機系制酸剤の含有量は、蛍光X線分析を用いて測定される。無機系制酸剤の含有量は100重量ppm未満、好ましくは50重量ppm以下、さらに好ましくは10重量ppm以下である。この無機系制酸剤含有量が上記上限値を超える場合、シアノアクリレート系接着剤を硬化させるので好ましくない。この無機系制酸剤の含有量は、ポリエチレンに触媒残渣として含有されるハロゲン元素の量を適宜選択することにより調整することができる。
脂肪酸金属塩系制酸剤としては、水酸基とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属との化合物、マグネシウム及びアルミニウムを含む含水塩基性炭酸塩、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩が挙げられ、具体的には
水酸化カルシウム、
水酸化マグネシウム、
水酸化アルミニウム、
水酸化亜鉛、
合成ハイドロタルサイト、
リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等が挙げられる。
【0028】
また、本発明のポリエチレンには、フェノール系酸化防止剤を配合することができる。
配合できるフェノール系酸化防止剤は、ポリエチレンに対して0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の添加が好適である。これを添加しないと酸化防止効果が不十分な場合があり、一方、上記上限値を超えると不経済であるばかりか変色、ブリード等が発生する傾向にある。ポリエチレンに含まれるフェノール系酸化防止剤は、蛍光X線分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、分子中にフェノール構造を有する有機化合物が挙げられ、具体的には、
2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、
トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、
1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、
2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、
2,4−ジ−t−ブチル−6−オクチルチオメチルフェノール、
ステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
ジステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、
トリデシル・3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、
チオジエチレンビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、
2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、
ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、
4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、
4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、
2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、
ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、
1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、
1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、
2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、
3,9−ビス[2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
トリエチレングリコールビス[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、
テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)〔1,1−ビフェニル〕−4,4’−ジイルビスホスフォナイト等が挙げられる。
【0029】
さらに、本発明のポリエチレンには、上記のフェノール系酸化防止剤のほかにイオウ系酸化防止剤を配合することができる。
配合できるイオウ系酸化防止剤は、ポリエチレンに対して0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の添加が好適である。これを添加しないと酸化防止効果が不十分な場合があり、一方、上記上限値を超えると不経済であるばかりか変色、ブリード等が発生する傾向にある。ポリエチレンに含まれるイオウ系酸化防止剤は蛍光X線分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
イオウ系酸化防止剤としては分子中にイオウ元素を含む化合物が挙げられ、具体的には、
ジ−ラウリル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート、
ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート、
ジ−ステアリル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート、
ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げることができる。
【0030】
本発明のポリエチレンには、所望により酸化防止剤、中和剤、耐候剤、結晶化核剤、気泡防止剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、分子量調整剤(過酸化物等)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加剤、他の各種樹脂、エラストマー、フィラー、充填材、着色剤等を添加することができる。しかし、これらの添加剤等は、シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進しないよう配慮して使用するべきである。
【0031】
本発明において、シアノアクリレート系接着剤とは、2−シアノアクリレートを重合主成分として含む組成物をいう。2−シアノアクリレートとしては、アルキル2−シアノアクリレート、シクロアルキル2−シアノアクリレート、アルコキシアルキル2−シアノアクリレート、アルケニル2−シアノアクリレート、アルキニル2−シアノアクリレート、フルオロアルキル2−シアノアクリレート、含ケイ素2−シアノアクリレートなどが挙げられる。
このうち、アルキル2−シアノアクリレートの具体例としては、メチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート、各種プロピル2−シアノアクリレート、各種ブチル2−シアノアクリレート、各種ペンチル2−シアノアクリレート、各種ヘキシル2−シアノアクリレート、各種オクチル2−シアノアクリレートなどが挙げられる。
アルコキシアルキル2−シアノアクリレートの具体例としては、エトキシエチル2−シアノアクリレート、メトキシエチル2−シアノアクリレート、メトキシイソプロピル2−シアノアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
シアノアクリレート系接着剤には、SO、ハイドロキノンなどの安定剤が配合される。また必要に応じ、その他の重合防止剤、増粘剤、耐熱性付与剤、可塑剤、柔軟化剤、着色剤、チクソトロピー性改善剤、アニオン重合促進剤、Hイオン捕捉剤、pH調整剤、エチレンカーボネート、有機溶剤、フィラー、ポリマー類などを適当量含有させることができる。シアノアクリレート系接着剤の粘度は、通常1〜3000cPのものが多い。
【0033】
2−シアノアクリレートを重合主成分とする組成物は、瞬間接着剤として特に有用であるが、そのほか、補修剤、補強剤、注入剤、パテ剤、被覆剤、絵付け剤、封止剤、シール剤などとしても用いられる。
シアノアクリレート系接着剤としては、市販の東亜合成社製の瞬間接着剤アロンアルファ201(商品名)、高圧ガス工業社製の瞬間接着剤シアノン(商品名)、セメダイン社製の瞬間接着剤ロックタイト(商品名)等が挙げられる。
【0034】
本発明の容器は、上記のアクリレート系接着剤容器用ポリエチレンを用い、ブロー成形、射出成形、チューブ成形のいずれか、またはこれらの成形法を複合した方法により成形することができる。
【0035】
ブロー成形法としては、一般的なブロー成形法が適用出来る。具体的には、単頭または多頭のダイレクト押出ブロー成形機、金型が多数個回転しながら連続的に押し出すローター式ブロー成形機、または樹脂を一度溜めてから間欠的に射出押し出しするアキューム式ブロー成形機が挙げられる。また、これら成形機の中でも2種以上の層に出来る多層構造のブロー成形機が好ましい。ブロー成形容器の胴部中心部の肉厚は0.3〜2.0mmが好ましく、更に好ましくは0.4〜1.0mmである。この胴部中心部の肉厚が上記範囲未満の場合は、外気からの水蒸気の透過量が多くなり、水で硬化するシアノアクリレート系接着剤の保存安定性を低下させる。また、低粘度の接着剤液を一滴ずつ、滴下しながら瞬時に硬化させるため微量な滴下量の制御が非常に重要であるが、胴部中心部の肉厚が薄すぎると容器に指で圧力を加えたときに瞬時に接着剤液が多量に排出してしまう問題がある。この胴部中心部の肉厚が上記範囲を超える場合は、逆に容器が硬くなりすぎて接着剤液が滴下しない問題が発生する。
【0036】
多層ブロー成形の場合、最内層に本発明のポリエチレンを用いる必要があり、最内層の肉厚は接着剤の保存安定性を確保するため、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上である。
これらブロー成形条件は、高密度ポリエチレンの一般的な条件でよい。具体的には、成形温度は成形可能な温度であれば特に限定されないが、樹脂温度で150〜250℃が好ましく、酸化防止剤が添加されていない場合は、成形時の熱により高密度ポリエチレンが分子切断しやすくなり、樹脂の劣化を招くので樹脂温度が200℃以下の低温で成形するほうがより好ましい。ブロー圧力については3〜10Kg/cm程度、金型での冷却時間5〜60秒程度でボトル容量としては0.5〜100ml程度のものである。
【0037】
射出成形法としては、一般的な射出成形法が適用出来る。具体的には、キャップ形状のキャビティーに溶融樹脂を射出充填し、金型内で冷却後、取り出す方法が代表的な方法として挙げられる。また、二色射出成形機、サンドイッチ射出成形機により多層構造のものを成形することができる。これら射出成形条件は、高密度ポリエチレンの一般的な条件でよい。具体的には、成形温度は成形可能な温度であれば特に限定されないが、樹脂温度で150〜300℃が好ましく、酸化防止剤が添加されていない場合は、成形時の熱により高密度ポリエチレンが分子切断しやすくなり、樹脂の劣化を招くので樹脂温度が250℃以下の低温で成形するほうがより好ましい。本発明で用いる射出成形容器とは、ボトルもしくはカップ形状になった容器本体であるが、キャップ、中栓等の接着剤液と接触する付属部品も前記の高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0038】
チューブ成形法としては、一般的な押出チューブ成形法が適用出来る。具体的には、押出機からクロスヘッド等のチューブダイスに溶融樹脂を押出し、サイジング装置で規定の肉厚に調整し冷却後、取り出す方法が代表的な方法として挙げられる。このチューブ成形機も多層スパイラルダイ等を用いた多層構造になった成形機が好ましい。チューブ成形容器の肉厚は0.3〜2.0mmが好ましく、更に好ましくは0.4〜1.0mmである。これらチューブ成形条件は、高密度ポリエチレンの一般的な条件でよい。具体的には、成形温度は成形可能な温度であれば特に限定されないが、樹脂温度で150〜250℃が好ましく、酸化防止剤が添加されていない場合は、成形時の熱により高密度ポリエチレンが分子切断しやすくなり、樹脂の劣化を招くので樹脂温度が200℃以下の低温で成形するほうがより好ましい。サイジング方法は外径制御の真空サイジング法、内圧サイジング法や内径制御のマンドレルサイジング法等を用いることができる。また、冷却方法は水冷、散水方法が一般的である。
【0039】
本発明の容器は、ブロー成形容器、射出成形容器、チューブ成形容器が採用可能であり、多層容器の場合、その内層以外の層の樹脂としては特に制限はない。しかし、内層以外の層の樹脂として、内層に用いるポリエチレンと相溶性の高いポリオレフィンが好ましく、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等を満足させるものが望ましい。また、ブロー成形等の場合、製品以外のバリが発生するので、これらバリを粉砕し内層以外の層に利用する方法も可能である。
【0040】
本発明のシアノアクリレート系接着剤容器の構造は、ボトル形状の容器に、使用時に先端を針で穴開けできるようなノズル形状のキャップを備えた構造のものが挙げられる。また、チューブ容器とキャップとの組み合わせ、射出容器とのキャップとの組み合わせも挙げられる。容器の滴下性を確保するためには、先端がノズル形状であることが好ましい。容器のサイズは任意にできるが、一度空気に触れると空気中の水分で硬化が始まるため、一般的には0.5〜500ml程度のものである。
【0041】
本発明の容器は、少なくとも最内層に本発明のポリエチレンを用いた2層またはそれ以上の層からなる多層容器が好ましい。層厚み構成としては、容器の胴部における各層の厚み比率が、その全体の厚みをD、最内層の厚みをD、最内層以外の層の厚みをDとするとき、DがDの10〜90%、DがDの90〜10%であるものが好ましい。
【0042】
本発明の容器の胴部の材料は、その曲げ弾性率が400〜1800MPa、好ましくは600MPa以上1600MPa以下であることが好適である。容器の胴部の材料の曲げ弾性率は、JIS−K6922−2(1997)に準拠し測定されるものである。曲げ弾性率が400MPa未満であると成形容器の剛性不足が顕在化し、1800MPaを超えると衝撃性能が不足する。容器の胴部が単層の場合、その単層の胴部を構成する材料自体の曲げ弾性率が上記範囲のものを選択すればよい。一般的に、ポリエチレンの密度と曲げ弾性率は相関があり、密度が大きいと曲げ弾性率が大きくなる。容器の胴部が多層の場合、多層積層体としての曲げ弾性率が上記範囲となるように材料を選択すればよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、ポリエチレンの物性性能評価および容器の性能評価は以下の方法で行なった。
【0044】
1.物性性能評価
(1)温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)
JIS−K7210(1999)熱可塑性プラスチックの流れ試験方法により、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)密度
JIS−K6922−1及び2(1997)のポリエチレン成形用及び押出用材料試験方法により、190℃で標準メルトインデクサーから押し出されたストランドを30分間沸騰処理し、1時間放置後24時間以内に密度勾配管にて測定した。
(3)曲げ弾性率
JIS−K6922−2(1997)に準拠して測定した。
(4)周期表第17族元素の含有量
試料を温度180℃の熱圧縮成形機により、溶融後25℃/分の速度で降温し、厚み5mmのシートを成形した。このシートを島津製作所社製波長分散型蛍光X線分析装置にて検量線法により測定した。
(5)金属元素の含有量
試料を温度180℃の熱圧縮成形機により、溶融後25℃/分の速度で降温し、厚み5mmのシートを成形した。このシートを島津製作所社製波長分散型蛍光X線分析装置にて検量線法により測定した。
(6)酸化防止剤、制酸剤の含有量
試料を温度180℃の熱圧縮成形機により、溶融後25℃/分の速度で降温し、厚み0.5mmのシートを成形した。そのシートをソックスレー抽出器にてクロロホルム中で5時間還流抽出し、この抽出液を島津製作所社製ガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
(7)耐腐食性
鉄板をサンドペーパーで研磨し、ヘプタンで脱脂した後、この鉄板でポリエチレンを挟み温度250℃で10分間加熱した状態で圧縮シートを成形した。次に金属板で挟んだまま温度80℃、湿度80%の恒温恒湿槽に48時間入れ、金属板の樹脂との接触部を目視で観察し腐食状態を下記の基準で判定した。測定は各サンプルにつき3点ずつ行なった。
判定基準
○ :ほとんど腐食せず
× :一部腐食発生
××:全面腐食発生
【0045】
2.容器性能評価
(1)胴部肉厚
円筒状容器本体の肩部と底部の中間位置を切断し周方向に90度づつ4個所マイクロメーターで肉厚を測定し平均値を求めた。
(2)シアノアクリレート系接着剤の保存安定性
成形した20mlの容器中に、シアノアクリレート系接着剤(東亜合成社製の瞬間接着剤アロンアルファ201)を10ml入れて、容器にこの容器と同じ材料で成形した蓋を取り付け、40℃の加温室に6ケ月保管した。この後、この充填容器から接着剤を流し出し、粘度上昇に伴う流動性に変化がないか、目視で観察し保存安定性を観察した。この保存安定性は下記の基準で判定した。測定は各サンプルにつき3点ずつ行なった。
判定基準
○ :流動性の変化なし
△ :流動性の変化ほとんどなし
× :流動性に変化みられる
××:流動性が変化あり
(3)滴下性
室温23℃、湿度50%の室内で、成形した20ml容器本体にシアノアクリレート系接着剤(東亜合成社製の瞬間接着剤アロンアルファ201)を速やかに10ml注ぎ、先端がノズル状の円錐形状で先端部を直径0.4mmの針で穴あけ加工した射出成形ノズルを取り付けた。この後、手で容器胴部を指で押して滴下性を試験した。この滴下性は下記の基準で判定した。測定は各サンプルにつき3点ずつ行なった。
判定基準
○ :適度に滴下し作業性がよい
×過多 :滴下量が多すぎて作業性やや悪い
×過少 :滴下量が少なすぎて作業性やや悪い
××超過多:滴下量が多すぎて作業性悪い
××超過少:滴下量が少なすぎて作業性悪い
【0046】
(実施例1)
(1)容器本体内層用ポリエチレン(I)の製造
固体触媒として、無水三酸化クロムと純水を混合した溶液をシリカと攪拌混合し、110℃で乾燥後、さらに電気炉内の石英ガラス管に入れ焼成温度700℃で10時間焼成し、クロム原子担持量1重量%のフィリプス型触媒を用い、イソブタンを溶媒として、無水素状態で圧力30kg/cm、重合温度100℃でエチレンと1−ヘキセンを連続に共重合させポリエチレン(I)(エチレン・1−ヘキセン共重合体)を製造した。
次に、このスラリーを減圧し、イソブタンを蒸発させ乾燥後、添加剤を一切使用せずにL/Dが26、直径40mmφのフルフライト型シングルスリュータイプの押出機で樹脂温度が220℃になるように調整してペレット化し、容器本体内層用の材料とした。
このようにして得られた容器本体内層用ポリエチレン(I)は、MFRが0.5g/10分、密度が0.950g/cm、曲げ弾性率が1100MPa、塩素元素の含有量が1重量ppm以下、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
【0047】
(2)容器本体に付属するノズル状キャップ用ポリエチレン(II)の製造
上記(1)とは別に、容器本体に付属するノズル状キャップ用の材料として、上記(1)の焼成温度を750℃、重合温度を105℃とした以外は上記と同様にして、ノズル状キャップ用の材料とした。このようにして得られたノズル状キャップ用ポリエチレン(II)は、MFRが5g/10分、密度が0.950g/cm、塩素元素の含有量が1重量ppm以下、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
【0048】
(3)容器の成形
上記(1)で得られたポリエチレン(I)を用い、スパイラルダルでパリソン肉厚コントローラー付きのダイスを有する小型ダイレクト押出ブロー成形機で成形温度180℃、金型冷却は30℃、10秒間冷却、容器の重量は胴部中心部の肉厚が0.7mmになるように調整して、20ml容量の口部がネジ付きの単層の円筒状ボトルを中空成形した。
また、上記(2)で得られたポリエチレン(II)を用い、型締め圧力100トンの射出成形機を用いて、上記のブロー成形した容器本体にネジで取り付けられる、先端がノズル状のテーパー形状のキャップを成形した。成形条件は、成形温度220℃、円錐形状とし、金型冷却は30℃、10秒間とし、後で先端部を直径0.4mmの針で穴あけ加工した。
このようにして成形した容器本体とノズル状キャップとをネジ合わせて容器とした。
【0049】
(4)容器の評価
上記(3)で得られた容器にシアノアクリレート系接着剤(東亜合成社製の瞬間接着剤アロンアルファ201)10mlを充填し、容器内溶液の保存安定性及び容器内容液の滴下性の評価を行った。これらの評価結果を表1に示した。
【0050】
(実施例2)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)の代わりに、有機過酸化物の高圧ラジカル重合法用い、圧力2400kg/cm、温度180℃でエチレンを重合させてポリエチレン(III)を製造した。
このようにして得られた容器本体内層用ポリエチレン(III)は、MFRが1.0g/10分、密度が0.930g/cm、曲げ弾性率が400MPa、塩素元素の含有量が1重量ppm以下、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
ポリエチレン(I)の代わりにポリエチレン(III)を使用した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0051】
(実施例3)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)の代わりに、Mg(OEt)、Ti(OBu)Cl、n−COHを溶解し、エチルアルミニウムセスキクロライドで析出したチーグラー型高活性の固体触媒と、助触媒として塩素が含まれないトリエチルアルミニウムを用い、ノルマルヘプタンを溶媒として、水素の存在時様態で圧力12kg/cm、温度90℃でエチレンの第1槽目の連続重合後、圧力3kg/cm、温度80℃で第2槽目のエチレンと1−ブテンの共重合をさせてポリエチレン(IV)を製造した。
このようにして得られた容器本体内層用ポリエチレン(IV)は、MFRが0.5g/10分、密度が0.950g/cm、曲げ弾性率が1100MPa、塩素元素の含有量が4重量ppm、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
ポリエチレン(I)の代わりにポリエチレン(IV)を使用した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0052】
(実施例4)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IF168と略す)を10重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0053】
(実施例5)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IF168と略す)を50重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0054】
(実施例6)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに日東化成工業社製ステアリン酸カルシウム(CaStと略す)を50重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0055】
(実施例7)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに協和化学工業社製Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO(DHT4Aと略す)を50重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0056】
(実施例8)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(IR1010と略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表1に示した。
【0057】
(実施例9)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(IR1010と略す)を3000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0058】
(実施例10)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHTと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0059】
(実施例11)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IR1076と略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0060】
(実施例12)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(IR1330と略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0061】
(実施例13)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに旭電化社製3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン(AO80と略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0062】
(実施例14)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DMTPと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0063】
(実施例15)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DMTPと略す)を3000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0064】
(実施例16)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製ジ−ステアリル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DSTPと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表2に示した。
【0065】
(実施例17)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製ジ−ラウリル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DLTPと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表3に示した。
【0066】
(実施例18)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに旭電化社製ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)(412Sと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表3に示した。
【0067】
(実施例19)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにエーピーアイコーポレーション社製2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHTと略す)を1000重量ppm及びエーピーアイコーポレーション社製ジ−ステアリル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DSTPと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表3に示した。
【0068】
(実施例20)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IR1076と略す)を1000重量ppm及びエーピーアイコーポレーション社製ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジ−プロピオネート(DMTPと略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表3に示した。
【0069】
(実施例21)
実施例1の(3)容器の成形を、押出チューブ成形機で成形温度は180℃、チューブ内径が10mm、肉厚が0.7mmになるよう真空サイジングプレートで外径を調整し、水槽冷却した成形品に変えた以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。なお、容器本体と先端がノズル状の射出成形ノズルを熱溶着にて接合した。これらの評価結果を表3に示した。
【0070】
(実施例22)
実施例1の(3)容器の成形を、型締め圧力100トンの射出成形機で成形温度は220℃、金型冷却温度30℃、金型冷却時間10秒間の条件で成形後に先端がノズル状の円錐形状で先端部を直径0.4mmの針で穴あけ加工した射出成形ノズルを取り付けられるようにしたカップ状の10mlの成形品とした以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。なお、容器本体と先端がノズル状の射出成形ノズルを熱溶着にて接合した。これらの評価結果を表3に示した。
【0071】
(比較例1)
実施例2の重合圧力を1800kg/cm、重合温度を210℃でエチレンを重合させた以外は実施例2と同様に行ない、ポリエチレン(V)を製造した。
このようにして得られた容器本体内層用ポリエチレン(V)は、MFRが1.0g/10分、密度が0.920g/cm、曲げ弾性率が200MPa、塩素元素の含有量が1重量ppm以下、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
ポリエチレン(I)の代わりにポリエチレン(V)を使用した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
ポリエチレンの密度が小さいと容器からの滴下量が多くなり、容器材料として満足できるものではなかった。
【0072】
(比較例2)
実施例3の重合を、有機アルミニウムとしてジエチルアルミニウムクロライドを用い水素濃度、重合比率を調整して重合した以外は実施例1と同様に行ない、ポリエチレン(VI)を製造した。
このようにして得られた容器本体内層用ポリエチレン(VI)は、MFRが0.5g/10分、密度が0.950g/cm、曲げ弾性率が200MPa、塩素元素の含有量が12重量ppm、主な金属元素の含有量が300重量ppm以下であり、そのうち、ナトリウムは1重量ppm以下、マグネシウムは1重量ppm以下、アルミニウムは0.2重量ppm以下、ケイ素は250重量ppm以下、カルシウムは1重量ppm以下、鉄は0.2重量ppm以下、銅は1重量ppm以下、亜鉛は1重量ppm以下、バリウムは1重量ppm以下であった。
ポリエチレン(I)の代わりにポリエチレン(VI)を使用した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
塩素含有量が多いと成形時の金型腐食性が大きく、容器材料として満足できるものではなかった。
【0073】
(比較例3)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IF168と略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0074】
(比較例4)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IF168と略す)を1000重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
リン系酸化防止剤の含有量が多いとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が著しく低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0075】
(比較例5)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに旭電化社製2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(HP10と略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0076】
(比較例6)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときにチバ・スペシャリティーケミカルズ社製テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)〔1,1−ビフェニル〕−4,4’−ジイルビスホスフォナイト(P−EPQと略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0077】
(比較例7)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに旭電化社製ビス(2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(PEP36と略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表4に示した。
リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0078】
(比較例8)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに日東化成工業社製ステアリン酸カルシウム(CaStと略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表5に示した。
制酸剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0079】
(比較例9)
実施例1の容器本体内層用ポリエチレン(I)をペレタイズするときに協和化学工業社製Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO(DHT4Aと略す)を100重量ppm添加した以外は実施例1と同様に行ない、シアノアクリレート系接着剤容器を得た。これらの評価結果を表5に示した。
制酸剤の含有量が100重量ppmを超えるとシアノアクリレート系接着剤の保存安定性が低下し、容器材料として満足できるものではなかった。
【0080】
(実施例23)
実施例1の(3)容器の成形を、上記のポリエチレン(I)を厚さ0.5mmの内層に用い、上記のポリエチレン(IV)を厚さ0.2mmの外層に用い、スパイラルダルでパリソン肉厚コントローラー付きのダイスを有する小型ダイレクト押出ブロー成形機で成形温度180℃、金型冷却は30℃、10秒間冷却、容器の重量は胴部中心部の肉厚が0.7mmになるように調整して、20ml容量の口部がネジ付きの二層の円筒状ボトルを中空成形した。
また、上記のポリエチレン(II)を用い、型締め圧力100トンの射出成形機を用いて、上記のブロー成形した容器本体にネジで取り付けられる、先端がノズル状のテーパー形状のキャップを成形した。成形条件は、成形温度220℃、円錐形状とし、金型冷却は30℃、10秒間とし、後で先端部を直径0.4mmの針で穴あけ加工した。
このようにして成形した容器本体とノズル状キャップとをネジ合わせて容器とした。
このようにして得られた容器にシアノアクリレート系接着剤(東亜合成社製の瞬間接着剤アロンアルファ201)10mlを充填し、容器内溶液の保存安定性及び容器内容液の滴下性の評価を行った。これらの評価結果を表3に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のポリエチレンは、シアノアクリレート系接着剤の保存安定性に優れ、それから得られる容器は、滴下性、塗布コントロール特性、容器変形復元性、耐久性等にも優れ、工業的に非常に利用価値の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)〜(f)を満足することを特徴とするシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン。
(a)温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が0.05〜100g/10分
(b)密度が0.930〜0.970g/cm
(c)周期表第17族元素の含有量が10重量ppm以下
(d)リン系酸化防止剤の含有量が100重量ppm未満
(e)脂肪酸金属塩系制酸剤の含有量が100重量ppm未満
(f)無機系制酸剤の含有量が100重量ppm未満
【請求項2】
フェノール系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン。
【請求項3】
イオウ系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン。
【請求項4】
フェノール系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下及びイオウ系酸化防止剤の含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン。
【請求項5】
ポリエチレンがフィリップス型触媒を用いて製造されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシアノアクリレート系接着剤容器用ポリエチレン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンを用いて成形されたシアノアクリレート系接着剤容器。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンを最内層に用いて多層成形されたシアノアクリレート系接着剤容器。
【請求項8】
容器の胴部の材料の曲げ弾性率が400〜1800MPaであって、容器胴部の全体の厚みが0.3〜2.0mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載のシアノアクリレート系接着剤容器。

【公開番号】特開2008−101042(P2008−101042A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282248(P2006−282248)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】