説明

シアロキメラ化合物

本発明は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス(他の薬物に耐性を有していても又は有していなくてもよい)に対する、並びに他のウイルス種、例えばフラビウイルスだけでなく原虫及び他の微生物に対する阻害効果を示す新規の化合物群と、その調製方法と、それらを含有する医薬製剤と、特定の微生物(ウイルス、細菌及び原虫を含む)により引き起こされる、動物及びヒトの健康に影響を与える様々な状態の治療のための医薬品としてのそれらの使用とを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス(他の薬物に耐性を有していても又は有していなくてもよい)に対する、並びに他のウイルス種、例えばフラビウイルスに加えて原虫及び他の微生物に対する阻害効果を示すことを特徴とする新規の化合物群と、その調製方法と、医薬製剤と、特定の微生物(ウイルス、細菌及び原虫を含む)により引き起こされる、動物及びヒトの健康に影響を与える様々な状態の治療のための医薬品としてのそれらの使用とに関する。
【0002】
説明
本発明は概して、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス(他の薬物に耐性を有していても又は有していなくてもよい)のいずれかに対する、並びに特にフラビウイルス等のウイルス及び原虫を含む他の微生物種に対する阻害効果を示すことを特徴とする新規の化合物群と、その調製方法と、それらを含有する医薬製剤と、ウイルス、細菌及び原虫等の上記微生物の感染により生じる、ヒト又は動物の健康に影響を与える様々な状態の治療のための医薬品としてのそれらの使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスは、インフルエンザの大流行の主因であることから最もよく知られるウイルスであるが、他のウイルス種、例えばフラビウイルス、特にHCV、及びレトロウイルス、特にHIV、並びに原虫、特にマラリア原虫及びトリパノソーマ原虫(trypanosomiasis)は、はるかに深刻な病態へと進行し、毎年世界中で数百万もの人の死を引き起こすおそれがある。
【0004】
したがってこれらの導入部は、宿主細胞の表面上でシアル酸付加(sialylated)グリカンにより曝露されているシアル酸(N−アセチル−ノイラミン酸又はより単純にはノイラミン酸(頭文字NANA又はNeu5Acでも識別され、本明細書では頭文字SAにより特徴付けられる)としても知られる)に結合するウイルス酵素である血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)により実証される特異性に関し、該ウイルス酵素は、これまでに知られていない因子に応じて複雑な循環機構及び多元的機構によりウイルスを出入りさせる(1)(2)(3)。結果として、1974年より、これらの酵素を阻害することが可能な活性薬物を特定するために継続的な調査が行われており、またウイルス複製が進行中であり、このようにして便宜上以下で表されるシアル酸の幾つかの類似体の特有の有効性が既に観察されている。
【0005】
【化1】

【0006】
さらに、原虫及び他の微生物は一般的に、これらの単細胞病原体のHA酵素又はNA酵素と、標的細胞の表面上でシアル酸付加グリカンにより曝露されているシアル酸との通常の接着により媒介される同様の機構を利用する。幾つかの抗ウイルス薬物、特にSA類似体を用いてここ10年の間に得られた結果は、生命維持に必要な再生機構を変更することで迅速に進化するウイルス及び微生物の驚くべき能力による予期せぬ耐性の発生により意味のないものとなっており、そのため微生物(micro-organisms)が耐性の程度を変えることにより、これらの薬物の有効性が低減する又は効果がなくなる。
【0007】
アダマンタン誘導体(M2タンパク質阻害剤)及びオセルタミビルの両方に対するウイルスの薬力学耐性の発生が近年になって報告されている。幾つかのウイルス株が最大で症例の約40%においてアダマンチン誘導体に対する日々の耐性の増大を示し、オセルタミビル耐性がA/H1N1ウイルスの全症例の約15%〜20%で報告されている。実際、ウイルスエンベロープの最も典型的な特徴は放射突起(radial projections)の存在であり、これはA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの特定症例では、HA(4)(5)(6)に、及びNA(7)(8)(9)(10)に相当する。
【0008】
A型インフルエンザウイルス株のウイルスエンベロープでは、ウイルス除去に対して重要な役割を果たすホモ四量体M2タンパク質も存在する。
【0009】
さらに、C型インフルエンザウイルスには、3つの生体活性:受容体結合(H)、受容体不活性化(E)及び融合(F)に関与する血球凝集素(hemagglutinin)−エステラーゼ融合体(HEF)として知られる糖タンパク質が存在する(11)(12)(13)。第1世代の抗ウイルス製品(大部分が、アマンタジン、リマンタジン、メマンチン及び他の同様の化合物等のアダマンチン誘導体)がA型インフルエンザウイルスのイオンチャネルのM2タンパク質を遮断する。
【0010】
プロトンチャネルを介したHイオンの流入の遮断が、ウイルス除去を阻害し、遊離リボ核タンパク質の細胞質への放出を阻害する。上記のことは、A型インフルエンザウイルス株でのみ起こり、Mタンパク質を欠くB型インフルエンザウイルス株では起こらない。
【0011】
約10年間、抗ウイルス戦略はA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスのエンベロープのノイラミニダーゼ(NA)を選択的に阻害することが可能な第2世代の抗ウイルス薬物を開発することに向けられてきた。NA酵素はウイルス除去及び新たに産生したウイルスの感染細胞への放出を促進する。ノイラミニダーゼ阻害剤はノイラミニダーゼの活性部位を遮断するため、宿主細胞の表面上に存在するシアル酸の残基とウイルスエンベロープとが結合されないと考えられる。
【0012】
実際1999年以降、ザナミビル及びオセルタミビル等の第2群の選択的ノイラミニダーゼ阻害剤が診療所に導入されている。第1群は経口経路ではほとんど吸収されず(約2%)、吸入経路によってのみ投与することができ、そのためインフルエンザ予防法にしか適用されていない。オセルタミビルだけは経口投与後に全身効果を示すが、今日ではこれまでに観察されたように、ウイルス耐性の高い発生率を示す。臨床実験の最終段階にある、文献においてCS 89958として識別されたNAの別の新規の阻害剤(R−125489として識別された化合物の活性代謝産物)(14)は、酵素によって不活性化されにくく長期的な活性があるという利点を有するが、ザナミビルと同様に鼻腔吸入によってのみ局所的に投与可能であるという制限があり、このため予防にしか使用することができない。
【0013】
その上、多くの国際公開文献によって、ウイルスの(より具体的にはA型インフルエンザウイルスの)突然変異及び融合の数の増大(これにより耐性変異体が生じる)が非常に高い病原性及び予測不能な攻撃性を有することが報告されているため、科学者らの間で警戒が強くなっている。これに関して注目すべきことに、近年A型トリ(avian)インフルエンザウイルス(H5N1)及びA型ブタインフルエンザ(H1N1)は、オセルタミビル耐性ウイルス株により引き起こされる非常に危険な大流行を発生する可能性があり、オセルタミビルが経口経路による投与に好適な唯一の利用可能な製品であることから、科学者らにより重大な危険性があるとみなされている。
【0014】
実際、薬力学耐性に関する限りにおいて、既に観察されたように、アダマンタン誘導体に対する耐性があるウイルス株の発生率の上昇が報告されている(15)(16)(17)(18)(19)。最も重大な研究結果は、抗ウイルス活性を阻害するものよりずっと低い用量でのアルツハイマー病でのメマンチン、及びパーキンソン病でのアマンタジンの長期的な大規模使用の結果として耐性が発生し、このようにしてA型インフルエンザウイルスの耐性株の選択が為されると考えられることである。
【0015】
その上、より最近の刊行物は、季節的流行性疾患(A/H1N1型ブタインフルエンザ)から単離され、経口経路により投与することができる唯一のノイラミニダーゼ阻害剤であるオセルタミビルに対する耐性を伴う遺伝子突然変異を示す、A型インフルエンザウイルス株の存在を強く主張しており(20)(21)(22)(23)(24)(25)、この結果としてそれらのオセルタミビル耐性株に感染した患者を救うのが極めて困難である。
【0016】
言及された病原体の酵素が感染工程においてどのように利用されるかを考慮することにより、HAが、ウイルス又は微生物(細菌又は原虫等)が宿主細胞の細胞壁に結合する第1段階に関与することが知られている。実際、HAは、その発現がpH依存的である、細胞壁の複合糖質のシアル酸の非結合残基と結合する。
【0017】
そのため、HA阻害剤は宿主細胞の表面への(ウイルス、細菌又は原虫の)接着を防ぐことが可能であり、それによりA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの特定症例において、侵入し、再生サイクルを完了させ、放出され、それにより他の細胞へと感染を拡大するウイルスの数を大幅に低減することができる。好適なHA阻害剤は依然として見出されておらず、結果として市場には利用可能なHA阻害剤はない。上記に鑑みると、これまでのところHAが宿主細胞膜の表面上に曝露されたシアル酸付加グリカンと結合する上記の初期段階に対抗する手段は存在していないと考えられる。しかしながら、文献は、SAに対するHAの低親和性を説明しているが、一部の著者らによってpH変化が様々なインフルエンザウイルス株の融合機構に干渉し得ることが既に説明されているということを報告していない(26)(27)。
【0018】
最後に、記載の段階のうちの少なくとも2つに関与する糖タンパク質及びタンパク質を阻害することが可能であり、このようにしてHAタンパク質及び/若しくはM2タンパク質及び/若しくはノイラミニダーゼ(NA)を連続して若しくは同時に阻害することが可能であり得るか、又はウイルス複製に関わる少なくとも2つ若しくは3つの機構に連続して及び/若しくは同時に干渉することができる製品、すなわち耐性の発生を最小限に抑えながら薬物の効力を顕著に増大させることができる因子は今までのところ報告されていない。
【0019】
その上、フラビウイルスにより維持される他の感染症、例えばC型肝炎、黄熱病及びデング熱は、世界各地で非常に一般的であり、高い病原性及び死亡率レベルを生じ、そのため依然として感染患者数及び死亡数の増大をもたらしている。これらの病状に関して、有効な治療を確保することができる利用可能な薬物は存在しない。しかしながら、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する現行の戦略は、リバビリン(モノホスフェートとして)を用いて、グアノシンモノホスフェートの合成を阻害し、これにより細胞内レベルを低減することである。近年の臨床プロトコルでは、リバビリンをペグ化インターフェロンα−2a又はペグ化インターフェロンα−2bに結び付けており、これは数年間市場にて入手可能であったが、結果は不確かなものであった。
【0020】
さらに、多数の死をもたらす他のフラビウイルスにより維持されるウイルス感染症の初期段階又は急性段階を適切に治療することができる利用可能な医薬物質は存在しない。今日、ワクチンを用いた予防法の確立が唯一可能であるが、利用可能な用量が不足していることに鑑みると、黄熱病で発生するような流行的発生を制限することだけが可能となる。上記の感染症が致死事象の高い発生率を引き起こすため、フラビウイルスにより引き起こされる疾患を治療する特定の薬物を欠くことが、上記の感染症を極めて危険なものにしている。
【0021】
上記に基づいて、個々の分子がヒト及び哺乳動物に一連の他のウイルス病原体に対する広範な活性スペクトルを与えるために、多重の組み合わせた連続的かつ同時的な機構を用いてウイルス複製を阻害することが可能であるが、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、並びに今後数年の間に予想される幾つかの変異体の薬力学耐性を予防する、新規の抗ウイルス化合物に対する緊急の差し迫った必要性が存在する。
【0022】
内部移行し内部で増殖するために宿主細胞壁と結合するウイルスにより用いられる機構がヒト及び哺乳動物の他の病原体により用いられるものに酷似していることを考慮すると、複数の効果を示す化合物はこれらの感染症にも有用であり得る。実際、宿主細胞の感染の初期段階での細菌、マラリア原虫及び他の単細胞感染因子は、HA及びNAと類似の酵素を使用することにより細胞表面上の糖タンパク質のSAと結合する。したがって、世界人口における高い死亡率を伴う、細菌感染及びウイルス感染及び細菌−ウイルスの混合型感染、また他の病原性微生物も、同じ化合物により阻害することができるため、この化合物に対する必要性が増大している。
現行の抗ウイルス剤及び本発明の抗ウイルス剤の原理
特許文献1(1992年4月30日に公開されたPCT/AU90/00501号)においてColman P.M. et al.、特許文献2(1993年4月28日に公開された欧州特許出願公開第92309684.6号)においてItzstein L.M. von et al.、及び特許文献3(1991年10月31日に公開されたPCT/AU91/00161)において同じくItzstein L.M. von etal.が、ウイルスNAと結合する化合物(結果としてウイルス活性のin vitro阻害剤とみなされる)を説明している。同様に、1993年にvon Itzsteinは、著名な刊行物「Nature」(28)においてインフルエンザウイルスの再生サイクルに対するシアリダーゼ阻害剤の合理的効果を説明している。特許文献4(1996年2月26日に出願された米国特許出願第08/606,624号)においてBischofberger N.W. et al.は新規のNA阻害化合物を示している。Babu Y.S. et al.の著作物(29)及び国際公開公報である特許文献5(1999年7月8日に公開された国際出願PCT/US98/26871号)は特異的なNA阻害剤と規定される一連の他の化合物を示す。NAを阻害する最近の抗ウイルス剤のほとんど全て、例えばザナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、ラニナミビルがシアル酸(SA)の類似体であり、そのため一部のA型インフルエンザウイルス株のウイルスNAの阻害機構とのみ競合するが、B型インフルエンザウイルス又は他のウイルス疾患を治療するのに使用されてはおらず、またそうすることもできない。結果として、それらの使用を他の単細胞微生物にまで広げることができるとは考えられない。
【0023】
同様に、既知の刊行物である非特許文献1に記載のように、HVCにより維持される慢性感染症の治療のために、他のウイルス病理の影響を受けるヒト被験体において、プリンヌクレオシドの類似体、例えばリバビリン又はビラミジンと、サイトカイン、例えばインターフェロンα−2b(又はインターフェロンα−2a又はペグ化(pegylated)インターフェロンα2b)との同時投与を組み合わせることが現行の医療である。実際に、リバビリンモノホスフェート及び類似の誘導体がグアノシンモノホスフェートの合成及び細胞内濃縮を阻害し、そのトリホスフェート塩がmRNA−グアニリルトランスフェラーゼに干渉すると考えられる。言及される症例等では、ウイルス伝播は一般的に宿主細胞壁に存在する表面受容体、主にSAを含有するグリカンとHA糖タンパク質との相互作用により起こり、そのため科学者らは現在、ウイルス複製のこの伝播プロセスを変更するため又はこれを妨げるため、この典型的な機構に注力している。
【0024】
同様の機構はフラビウイルス(flavivirus)複製も支配するが、宿主細胞の表面受容体が複数あり、完全には特定されていないと考えられる点で異なる。しかしながら、フラビウイルスにおいても、ビリオンの表面と宿主細胞の受容体との間の分子間相互作用は感染の第1段階である。この特徴はウイルス種に及び特定の細胞指向性に、並びに病原性に共通している。実際、一部のウイルスに関する細胞受容体が明らかになっており、細胞表面の結合特異的タンパク質から宿主細胞に主に存在する炭水化物、例えばシアル酸及びヘパラン硫酸のラジカルとの相互作用まで多岐にわたるウイルス接着の異なる戦略を提示する。
【0025】
多数のウイルスで、宿主細胞の特異的受容体が特定されていない。特異的細胞への又は形態的に異なる複数の受容体の使用は、この知識がないことの根拠となり得る。実際、同じ機構がフラビウイルスの結合系で提唱されている(31)。幾つかのフラビウイルスが脊椎動物及び節足動物の細胞で複製し、大きい多様性及び組織指向性を示す。40kDa〜80kDaの分子質量を有する多くの潜在的な候補受容体タンパク質が、相互作用試験においてフラビウイルスと関連している(32)(33)(34)(35)(36)。その上、ヘパラン硫酸の重要な役割がデング−2ウイルスと脊椎動物細胞との結合において実証されている(31)。
【0026】
また細胞表面上にウイルス粒子を濃縮するプロセス中における相互作用分子として他のウイルスによってどのようにグルコサミングリカン(GAG)が使用され、高親和性受容体との次の結合が為されるかは非常に興味深い(37)。
【0027】
しかしながら昨今、各フラビウイルスに対して高親和性受容体の機能及び性質を評価する実験的試験は存在しない。フラビウイルスの結合及び続く内部移行はフラビウイルスの主要な糖タンパク質粒子であるEタンパク質(約50kDa)により媒介される(レビューに関しては、Chambers T. J. et al.(38)による及びMonath T.P. et al.(39)による刊行物を参照されたい)。Eタンパク質は膜の小さいMタンパク質(8kDa)を有するオリゴマーを形成し、ビリオンの利用可能な表面の大部分を構成する。上記のことにより、Eタンパク質がウイルス及び防御抗体を中和する抗原標的を本質的に構成することが決定さられる。これに関連して、Monath T.P. et al.による上記の刊行物"Flaviviruses."(39)を参照されたい。
【0028】
Eタンパク質変異の表現型分析と併せた、ダニにより引き起こされるウイルス性脳炎(TBE)のフラビウイルス(flavivirus)のEタンパク質の細胞外ドメイン(ectodomain)の結晶構造の規定(40)により、機能ドメイン、並びにフラビウイルスの結合及び内部移行に関わる機構が明らかになる(Monath T.P. et al.による上記の刊行物"Flaviviruses."(39)も参照されたい)。
【0029】
脳フラビウイルスであるマレーバレー脳炎ウイルス(MVE)の宿主細胞への配置に関連する遺伝子型変化に関する調査により、細胞指向性及び病原性に対するEタンパク質の残基390の重要な役割が示唆されている(41)。原型ウイルスで見られるAsp390がヒト腺癌の細胞株(SW13)でのMVEの継代後にHis、Gly、Ala又はAsnで修飾されており、これによりヒト細胞株の成長増大、及び同様にマウスにおける病原性の弱力化がもたらされる。MVEのEタンパク質における残基390は、外部の細胞外基質における及び細胞間接着におけるインテグリンの重要な結合因子である配列Arg−Gly−Asp(RGD)の一部である(42)。
【0030】
この証拠により、一部のフラビウイルスの結合においてインテグリンが関与している可能性があり、フラビウイルス受容体の結合部位の位置が、残基390を含む十分に防御された親水性のドメインにあるという第1の仮説が裏付けられる(42)。その上、RDG因子は全てのフラビウイルスのEタンパク質内では追跡不可能であり、RDG因子は、日本脳炎ウイルス(JEV)(43)、黄熱病ウイルス(YFV)17D株(44)及び複合血清JEVの他の成員における関連配列RGE/T(45)(46)(47)で追跡可能であるが、デングウイルスのEタンパク質における対応するアミノ酸は関連しておらず(48)(49)(50)、またTBEでは欠失している(51)。YFV(46)のワクチン17D株においてRGD配列がどのように毒性Asibi株の多様性の宿主細胞の適合の結果として現れるかは興味深いことであり、これが対応するアミノ酸Thr−Gly−Aspを示す(52)。
【0031】
配列の上記比較に基づいて、インテグリンは、口蹄疫ウイルス(53)(54)及びコクサッキーウイルス(55)とは対照的にフラビウイルスと結合する一般的な結合型を示すとは考えられず、フラビウイルスは宿主細胞への侵入に対してインテグリンRGD媒介性の結合による密接な依存性を示す。
【0032】
TBEのEタンパク質の結晶構造は、一部のフラビウイルスのRGDを保護する親水性領域の結合受容体における機能を具体的に実証している。この配列はEタンパク質の免疫グロブリン様ドメインIIIに位置する溶媒(FG)に曝露された環に位置しており、宿主細胞の指向性及び異なるフラビウイルスにおける病原性に関与する突然変異がこの領域に位置する(56)。
【0033】
実際、一部の著者らによって、感染クローンを用いてMVEにおいてRDG部分へと置換を導入することにより、推定フラビウイルスにおいて受容体と結合するドメインが、マウスでウイルスの成長、培養細胞への付着及び内部移行、並びに病原性に対する効果をもたらすことが観察されている。この主題に関するより良好な書誌概要を得るために、多くの他の刊行物を参考にすることができる(56)(33)(57)(58)(59)。
【0034】
最後に、HCVは、1型ヒト免疫不全ウイルスに感染した数のおよそ5倍である推定1億7000万もの人が世界中で感染している主なヒト病原体として考えられているため、主な懸念事項の1つである。これらのHCVに感染した人はかなりの割合で肝硬変及び肝細胞癌を含む10個の重篤な進行性肝臓疾患を発症する。現在、最も効果的なHCV療法はαインターフェロンとリバビリンとの組合せを利用するものであり、患者の40%に持続的な有効性がもたらされる。最近の臨床結果により、ペグ化α−インターフェロンが単剤療法として非修飾α−インターフェロンよりも優れていることが実証されている。しかしながら、ペグ化α−インターフェロンとリバビリンとの組合せを伴う実験治療計画を用いても、かなりの割合の患者ではウイルス量が持続的に低減しない。このため、HCV感染の治療に効果的な治療法を開発することにも明確な長年の切実な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】国際公開第92/06691号
【特許文献2】欧州特許第0539204号
【特許文献3】国際公開第91/16320号
【特許文献4】米国特許第5,952,375号
【特許文献5】国際公開第99/33781号
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】Martindale 33.th Ed. (2002) pages 639-43 (30)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
概要
本発明の主な実施の形態は、ウイルスに対する、特にインフルエンザウイルス、肝炎ウイルス及び重篤なウイルス疾患(特に例えばフラビウイルスにより持続されるもののようなシアル酸(SA)が関わるもの)に関与する他のウイルスに対する顕著な阻害効果を示す新規の化合物群を提示することである。新規の化合物は、ウイルスエンベロープの酵素タンパク質、例えばHA、及び構造ウイルスタンパク質、例えばMタンパク質、及び糖分解酵素、例えばNAの組み合わされた選択的な阻害を発揮し、より具体的にはウイルスノイラミニダーゼ及び細菌ノイラミニダーゼ、並びにヒト及び動物に影響を与える多くの他の微生物のノイラミニダーゼとの干渉を示す。さらに、本発明の新規の化合物はC型肝炎ウイルス(HVC)及び様々な種類のフラビウイルスに対する阻害活性を誘発するとも考えられている。
【0038】
本発明の別の所望の実施の形態は、一般的に使用される抗ウイルス剤に対して交差耐性を示すことなく、重篤な感染症に関与する最も一般的なウイルスの複製プロセス及び伝播プロセスの改良されたより安価な阻害剤を提供することである。本発明の更なる別の目的は、本発明の新規の阻害剤及び他の既知の抗ウイルス剤との合理的な組合せの投与のために改良された方法を提供することである。更なる態様は上記の実施の形態に有用な医薬組成物を提供することである。上記の及び更なる目的は、本発明全体の評価から当業者にとってより明らかになるであろう。
【0039】
アダマンタン誘導体(通常A型インフルエンザウイルス内に存在するMタンパク質との干渉が誘発される)及び/又はリバビリン(RNA依存性の複製において突然変異を誘導する又は或る特定のウイルスRNA依存性のRNAポリメラーゼを阻害する)の一部分を含有する、ウイルス機能を阻害するのに効果的な化合物は、国際公開第2008/090151号に記載されるものであるが、多くの場合ウイルス、細菌及び原虫に存在する、血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)の機能の更なる阻害を組み合わせて、また相乗的に誘発するように設計された新規の化合物が特に望ましく、そのため著者らは、驚くべき予想だにしない結果を達成することにより、この未調査の研究分野を更に研究している。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の簡単な説明
第1の態様では、本開示は、以下に示されるような式(I):
【0041】
【化2】

【0042】
(式中、一般式(I)の化学構造において、
Xは−O−結合又は−CH−結合を示し、
Rは−H又は直鎖若しくは分岐鎖のC1〜4アルキル基を示し、
は、−(NH)−(CH−(T)(式中、独立してn=1又は2、並びにm=0、1、2、3及び4)、−NH−CO−NH−(T)、又は−NH−C(NH)−NH−(T)(式中、−(T)部分は、以下の構造:
【0043】
【化3】

【0044】
(式中、−(T−1)部分の化学構造において、
は−H、−CH、−C、−CH−(Cのいずれかを示し、
は−NH−CO−CH、−NH−CO−Cのいずれかを示し、
は−O−CH−(CH、−O−CH−(Cを示す)、
【0045】
【化4】

【0046】
(式中、−(T−4)部分の化学構造において、
Zは−H、−CH−(C、−CO−(CH−CHを示す)
のいずれかを有する環を示す)を示し、
は−OH、−NH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C、−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つだけの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫(antiprotozoarian)化合物の一部分により置換することができる)を示し、
は−OH、−NH、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つだけの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる)を示し、
は、−CHOH−CHOH−CH−OH、−(W)、−CHOH−CH−(W)又は−CH−(W)(式中、−(W)部分は以下の構造:
【0047】
【化5】

【0048】
(式中、−(W−1)部分の化学構造において、
は結合官能基:
−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−、又は
【0049】
【化6】

【0050】
を示し、
は−H、−CH又は−Cを示し、
10は−H、−CH又は−Cを示す)、又は
【0051】
【化7】

【0052】
(式中、−(W−2)部分の化学構造において、
11は結合官能基:
−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を示す)のいずれかを有する環を示す)を示す)
の化合物、並びに本発明の化合物の直鎖又は分岐鎖のC1〜4カルボキシモノエステル又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、分割された鏡像体、及び精製されたジアステレオ異性体を提供する。
【0053】
本発明の化合物を単独で、又は哺乳動物(mammals)、特にヒトへの投与に好適な薬学的に許容される担体中で1つ若しくは複数の本発明の化合物と、又は他の活性剤(active agents)と組み合わせて含有する医薬組成物も本発明の範囲内に包含される。
【0054】
本発明の別の実施の形態では、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質の活性を、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質を含有する疑いがあるサンプルを本発明の化合物又は組成物で処理する工程を含む方法により阻害することができる。
【0055】
本発明の別の態様は、宿主において例えばインフルエンザウイルス又は肝炎ウイルスにより引き起こされるウイルス感染症を治療又は予防する方法であって、任意の好適な投与経路により、治療的に有効な用量の本明細書に記載の本発明による化合物を宿主に投与することを含む、宿主において例えばインフルエンザウイルス又は肝炎ウイルスにより引き起こされるウイルス感染症を治療又は予防する方法を提供する。
【0056】
その上、別の実施の形態では、本発明の化合物は他の微生物に対しても活性を示し、そのため細菌及びウイルスにより持続される混合型の感染症を治療するのに非常に有用であるだけでなく、フラビウイルスが関与する他のウイルス病理を治療するのにも非常に有用であり、また哺乳動物の宿主細胞に感染するのと同じ機構を使用する他の単細胞微生物及び原虫に対しても潜在的な活性を示す。
【0057】
本発明の他の実施の形態では、本発明の化合物を合成する新規の方法も提供される。
発明の詳細な説明
本発明は、幾つかの組合せにより偶発的に生じ得るが、考えられる実施の形態であり、本発明の範囲内にある現在知られている化合物、或る特定のウイルス活性を発揮することが既に知られている分子部分を含有するこれらの化合物、及び中間体として既知の化合物又はその部分を使用する方法を意図的に排除する。
【0058】
本発明は、以下の立体構造を有する構造式(I):
【0059】
【化8】

【0060】
(式中、
Xは−O−結合又は−CH−結合を示し、
Rは−H又は直鎖若しくは分岐鎖のC1〜4アルキル基を示し、
は、−(NH)−(CH−(T)(式中、独立してn=1又は2、並びにm=0、1、2、3及び4)、−NH−CO−NH−(T)、又は−NH−C(NH)−NH−(T)(式中、−(T)部分は、以下の構造:
【0061】
【化9】

【0062】
(式中、−(T−1)部分の化学構造において、
は−H、−CH、−C、−CH−(Cを示し、
は−NH−CO−CH、−NH−CO−Cを示し、
は−O−CH−(CH、−O−CH−(Cを示す)、
【0063】
【化10】

【0064】
(式中、−(T−4)部分の化学構造において、
Zは−H、−CH−(C、−CO−(CH−CHを示す)
のいずれかを有する環を示す)を示し、
は−OH、−NH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C、−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる)を示し、
は−OH、−NH、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる)を示し、
は、−CHOH−CHOH−CH−OH、−(W)、−CHOH−CH−(W)又は−CH−(W)(式中、−(W)部分は以下の化学構造:
【0065】
【化11】

【0066】
(式中、−(W−1)部分の化学構造において、
は結合官能基:
−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−、又は
【0067】
【化12】

【0068】
を示し、
は−H、−CH又は−Cを示し、
10は−H、−CH又は−Cを示す)、又は
【0069】
【化13】

【0070】
(式中、−(W−2)部分の化学構造において、
11は結合官能基:
−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を示す)のいずれかを有する環を示す)を示す)
の化合物、並びに本発明の化合物の直鎖又は分岐鎖のC1〜4カルボキシモノエステル又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、分割された鏡像体、及び精製されたジアステレオ異性体に関する。
【0071】
好ましい実施の形態では、一般式(I)の主環のXは−O−(シアル酸環特有の)、又は−CH−により示されるが、好ましくはリンカー−O−である。これは、得られるシアロキメラ化合物が、糖タンパク質血球凝集素(HA)及びウイルス、細菌又は原虫のノイラミニダーゼ(NA)と相互作用する、宿主細胞の細胞膜のシアル酸付加グリカンのシアル酸とのより良好な親和性を示すためである。
【0072】
別の典型的な実施の形態では、Rは−Hを示し、そのため依然としてカルボン酸基はHA及びNAに特異的な他の糖タンパク質と自由に相互作用する。
【0073】
別の更なる代替的な実施の形態では、Rは直鎖又は分岐鎖のC1〜4アルキル基、例えばメチル基又はより典型的にはエチル基を示すが、これは、得られるエステルが易加水分解性であり、遊離カルボン酸基を迅速に放出することができるためである。
【0074】
更なる好ましい実施の形態では、Rであるアルキルアミン(alkylaminic)基−(NH)−(CH−(T)は、典型的には単純なアミン部分−NH−(T)を特徴とし、好ましくは主環の2位の炭素原子と、−(T)部分の4位の炭素原子との間の第2級アミン結合である。さらに、このR部分は典型的には、−NH−CO−NH−(T)又は−NH−C(NH)−NH−(T)(式中、−(T)部分は本明細書により良好に詳述される構造のいずれかを有する環を特徴とする)により示される。
【0075】
実際、更なる好ましい実施の形態では、−(T)は上記のようなアミン結合官能基、アルキルアミン結合官能基、アミド結合官能基又はグアニジン結合官能基のいずれかを用いるだけで、一般式(I)の主核と結合する五員環又は六員環を示し、典型的には以下の−(T−1)部分、−(T−2)部分、−(T−3)部分及び−(T−4)部分の1つを特徴とする。
【0076】
より具体的な実施の形態では、−(T)は以下の構造式及び部分を有する−(T−1)部分:
【0077】
【化14】

【0078】
(式中、個々に、Rは−H又はアルキル基を示し、重要度の低い順に−H、−CH、−CH−(C、又はより好ましくは−Cが示され、典型的にはRは−NH−CO−CH又は−NH−CO−Cを示し、Rは−O−CH−(C又は−O−CH−(CHを示す)により示される。最も好ましい組合せでは、−(T−1)が、同時にRが−Cであり、Rが−NH−CO−CHを示し、Rが−O−CH−(Cを示す場合のものであり得る。
【0079】
更なる実施の形態では、−(T)は、典型的には以下の構造を特徴とする部分的に置換される六員環である−(T−2)を示す:
【0080】
【化15】

【0081】
また、−(T)が、典型的には以下の構造を特徴とする部分的に置換される五員環である−(T−3)を示す場合、本発明に包含される:
【0082】
【化16】

【0083】
別のより典型的な(typical)実施の形態では、−(T)は、通常以下の構造及び置換基(substituent)を特徴とする部分的に置換される六員環−(T−4):
【0084】
【化17】

【0085】
(式中、Zは水素原子(−H)若しくは−CH−(C、又は好ましくはより典型的には−CO−(CH−CH(これによりエステルとなる)を示す)を示す。
【0086】
更なる好ましい組合せでは、Rは−OH又は−NHを示すが、環の他の最近接炭素原子における置換の性質との関係で選択される、より好ましくは−NH−CO−CH−OH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH等の他の部分も示す。別の典型的な実施の形態では、Rは、この部分がキメラコピーである本発明の化合物の主環であるSAにも存在することを考慮すると、−NH−CO−CHを示す。その上、Rはアミン部分、例えばこれらに限定されないが−NH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C、−NH−C(NH)NHを示すか、又は水酸基−OHを示すのが通常である。
【0087】
別の更なる典型的な実施の形態では、Rは−CHOH−CHOH−CH−OHを示すが、概して典型的には、Rがより高い分子量を有する部分、例えばこれらに限定されないが、−CHOH−CH−W部分又は−CH−W部分又は単に−W部分(式中、−W部分は典型的には、主構造(I)と結合するアミン結合官能基又はアミド結合官能基、アダマンタン環−(W−1)(典型的には置換されている)、又はリボフラノシル−1,2,4−トリアゾール環−(W−2)を有することが包含される)を示す場合が好ましい。
【0088】
典型的な実施の形態は、−Wが好ましくは、以下の構造及び置換基を示すアダマンタン環−W−1:
【0089】
【化18】

【0090】
(式中、Rは通常、アミド結合、例えばこれらに限定されないが、−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−、又は例えば環として環状脂肪族アミン:
【0091】
【化19】

【0092】
を示す)を示すことを包含する。
【0093】
更なる典型的な好ましい実施の形態では、−(W−1)のR及びR10は対称的に同一であり、−H、−CH又は−Cであり得る。
【0094】
本発明のより好ましい実施の形態では、−(W−1)は、Rが−CH−NH−を示し、R及びR10の両方が水素原子(−H)である特定の組合せであることを特徴とする。
【0095】
本発明の別の更なる実施の形態では、−Wは典型的には、以下の構造及び置換基を特徴とするリボフラノシル−1,2,4−トリアゾール環−(W−2):
【0096】
【化20】

【0097】
(式中、R11は典型的には、結合官能基、例えば−NH−、又は更なる非限定的な例として、−CO−NH−若しくは−C(NH)−NH−を示す)を示す。
【0098】
別の典型的な実施の形態は、−(T−1)部分を包含する−(T)部分(式中、同時にRは−Cを示し、Rは−NH−CO−CHを示し、Rは−O−CH−(Cを示す)、及び−(W−1)を包含する−(W)部分(式中、同時にRは−NH−を示し、R及びR10は両方とも水素原子を示す)の存在を特徴とし、更にR及びRは−(T)又は−(W)のいずれも含有しない、本発明の二置換(bisubstituted)化合物を特徴とする。
【0099】
別の最も好ましい実施の形態では、本発明の化合物の物理化学特性は、一般式(I)に含まれる個々の部分を上回る顕著な改善を示す。実際、−(W)部分は親油性であり、そのため塩酸塩又は他の無機塩は一般的に、その水溶性を改善させるのに用いられるが、−(W)を組み込んだ化合物は水溶性であり、使用前に塩に変換することを要しない。しかしながら、水溶性により、化合物のバイオアベイラビリティが向上し、その吸収率と組織への浸透との両方が改善される。
【0100】
より強い抗ウイルス効果、抗細菌効果又は抗原虫効果が要求され、Rが−OH又は−NHを示すが、−NH−CO−CH−OH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH等の他の部分も包含される別の更に好ましい実施の形態では、Rの他の水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つの末端水素を−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる。
【0101】
同様に、Rが−OH又は−NHを示すが、−NH−CO−CH−OH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH等の他の部分も包含される別の更なる好ましい実施の形態では、Rの他の水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つの末端水素を−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる。
【0102】
しかしながら、当業者は複数の他の実施の形態が考えられ得ることを理解しており、その中でも最も好ましい組合せは以下の表に列挙されるものである。
【0103】
【表1−1】

【0104】
【表1−2】

【0105】
驚くべきことに、本発明の別の典型的な実施の形態では、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質イオンチャネルの活性は、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質を含有する疑いがあるウイルスのサンプルを本明細書に記載のような本発明の化合物又は組成物で処理することにより阻害又は遮断することができる。
【0106】
別の態様では、本発明は、哺乳動物宿主における具体的にはA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、又はフラビウイルス、より具体的にはHCVによるウイルス感染症の治療方法又は予防法であって、任意の好適な投与経路による治療的に有効な用量の本発明による化合物の宿主への投与を含む、治療方法又は予防法に関する。しかしながら、予期せぬことに及び驚くべきことに、標的宿主細胞への接着及び内部移行のために標的細胞膜上でのペプチドグリカンのシアル酸への結合が要求されることを考慮すると、本発明の化合物又は組成物は、そのシアル酸様活性のために、他の微生物、特に細菌及び原虫においても糖タンパク質酵素である血球凝集素とまたノイラミニダーゼとの両方を阻害又は遮断することができる。
【0107】
別の実施の形態では、本発明の化合物を合成する新規の包括的方法も提供される。
【0108】
本発明の化合物の調製のための中間体を調製する例示的な方法は当業者に既に多数知られているが、より便宜を図るために以下に報告している。しかし、これらは本発明の主題ではない。これとは対照的に、本発明の化合物を調製する更なる例示的な方法が以下に与えられるが、これらは適用可能な方法の範囲を限定することを意図していない。概して、温度、反応時間、溶媒、作業手法等の反応条件は、行われる特定の反応に関して当該技術分野で一般的なものである。本明細書で引用される内容とともに引用文献の内容は、かかる条件の詳細な記載を含有する。例示的な方法として、示される方法は本発明の化合物にも一般的な合成として適用可能であり得る。にもかかわらず、当業者は、他の標準的な手法が利用可能であり、同じ材料を得るために使用することができると認識する。
【0109】
薬学的に許容される担体中に本発明による化合物を単独で、又は例えば本発明の別の化合物、若しくは1つ若しくは複数の活性剤と組み合わせて含有し、これにより例えば哺乳動物への投与に好適なものとなる医薬組成物も本発明の範囲内に包含される。本発明の更なる態様は、本発明の化合物若しくは医薬組成物、又はその混合物を用いた哺乳動物の治療を、別の治療的に有効な用量の、かかるウイルス、細菌及び原虫による感染を阻止することも可能な活性剤を用いた同時の又は代替的な治療と組み合わせることによる上記のウイルス、細菌及び混合型、又は原虫による疾患又は状態の治療方法又は予防法を含む。
【0110】
本発明の化合物は、あらゆる不斉原子における濃縮又は分割された光学異性体も包含する。ラセミ混合物及びジアステレオ異性混合物の両方、並びにその鏡像異性(enantiomeric)パートナー又はジアステレオ異性(diastereomeric)パートナーをほとんど含まない単離又は合成した個々の光学異性体が全て本発明の範囲内である。ラセミ混合物を、現行の既知の技法、例えばその光学的な活性形態、例えば酸又は塩基から得られるジアステレオ異性(diastereomeric)塩の分離を用いることにより、ほぼ純粋なそれらの個々の光学異性体へと分離して、更に光学的に活性のある物質へと再変換することができる。多くの場合、所望の光学異性体を、所望の出発材料の好適な立体異性体を用いることから開始する立体特異的な反応により合成する。
【0111】
本発明の組成物は任意で、本発明で言及される化合物の塩、特に例えば無機又は好ましくは有機の酸又は塩基を含有する薬学的に許容される非毒性塩を含む。塩化は、本発明の化合物の安定性又は物理特性を改善するために化合物の水溶性塩が要求される場合に好ましい手法である。
【0112】
本発明の別の態様は、特に血球凝集素及びノイラミニダーゼの活性を様々な程度で阻害し、またそれに伴いMタンパク質及び/又はRNA−ポリメラーゼ及び/又はRNA依存性の複製に影響を与える方法であって、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMタンパク質及び/又はRNA−ポリメラーゼを含有する疑いがあるサンプルを本発明の化合物で処理する段階を含む、方法を表す。
【0113】
本発明の化合物はこれに伴い、血球凝集素及びノイラミニダーゼの阻害剤として作用すると考えられる。しかしながら、本発明の化合物はMタンパク質及びRNA−ポリメラーゼの阻害剤でもある。実際、阻害剤は、本明細書中で報告されるように、1つ又は複数のこれらの阻害剤を引き付けるか、若しくはこれに適合するか、又は同時阻害を誘発することができる特有のキメラ構造に鑑みて、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、Mタンパク質及びRNA−ポリメラーゼの表面上又は隙間の位置に結合するであろう。
【0114】
実際、新規の阻害剤は、類似の構造が言及される感染糖タンパク質と結合する、及び/又はこれと競合することに鑑みて、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はM2タンパク質及び/又はRNA−ポリメラーゼの表面又は隙間の部位に結合するであろうと思われる。しかしながら、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、Mタンパク質及びRNA−ポリメラーゼと結合する化合物は、多様な程度の親和性及び可逆性で特定の酵素及び/又は糖タンパク質と結合することができる。感染酵素及び/又は糖タンパク質と実質的に不可逆的に結合するこれらの化合物は、本発明の方法における使用に対する理想的な候補物質である。
【0115】
血球凝集素及びノイラミニダーゼを含有する感染生物としては、細菌(インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、アースロバクター・シアロフィラス(e Arthrobacter sialophilus))、並びにウイルス、特にオルトミクソウイルス又はパラミクソウイルス、例えばA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス(HVC、並びに黄熱病及びデング熱に関与するウイルス)、突然変異コロナウイルス及び/又は改変コロナウイルス、ポリオーマウイルス、耳下腺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、家禽ペストウイルス及びセンダイウイルス、並びに少なくとも単細胞寄生生物、例えばマラリア及びトリパノソーマ症(trypanosomiasis)の寄生生物が挙げられる。これらの生物のいずれかから得られた又はこれら内で見出された血球凝集素活性又はノイラミニダーゼ活性の同時阻害は本発明の範囲内である。本発明の更なる態様は、一部のスクリーニングされた化合物がA型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ耐性株及びまたオセルタミビル耐性株も大幅に阻害することであり、そのため本発明の化合物は驚くほど特有なものとなっている。
【0116】
本発明の化合物は、鳥類、例えばアヒル及びガチョウ等における、哺乳動物、例えば齧歯動物、ブタ及びヒトにおけるかかる感染症の治療又は予防にも有用である。
【0117】
更なる実施の形態では、本発明の化合物は、ウイルス、細菌及び原虫の血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼに対する阻害活性に関して、かかる酵素活性を評価する従来技法によりスクリーニングされる。本発明との関連内において、通常、化合物をまずin vitroでの血球凝集素及びノイラミニダーゼの阻害に関してスクリーニングする。
【0118】
本発明の更なる態様は、M2−タンパク質イオンチャネルを介したH+イオンの流入を遮断して、脱殻及び遊離リボ核タンパク質の細胞質への放出を阻害する方法であって、M2−タンパク質を含有する疑いがあるサンプル、例えばA型インフルエンザウイルス株を本発明の化合物で処理する工程を含む、方法に関する。実際、本発明の化合物はウイルスのM2−タンパク質機能を遮断することにより作用するとも考えられる。本発明の別の更なる態様は、グアノシンモノホスフェート及びmRNAグアニリルトランスフェラーゼの合成を阻害する方法であって、疑わしいサンプルを本発明の化合物で処理することによりHVCのmRNA及びRNAポリメラーゼの合成を遮断することを含む、方法に関する。
【0119】
別の好ましい実施の形態では、本発明の化合物は、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はMプロトンイオンチャネル及び/又はRNA−ポリメラーゼの合成の阻害剤として同時に作用すると考えられる。同様に同じ阻害効果が、マラリアのような単細胞寄生生物に曝露された、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ及び/又はウイルスのM2−タンパク質及び/又はRNA−ポリメラーゼの合成において示される。
【0120】
オセルタミビル耐性株に対する驚くべき活性を含む驚くべき抗ウイルス活性を確認するために、それぞれコードTHE 08/01及びTHE 10/01と標識された、本発明の実施例7及び実施例8の化合物のA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの活性に対するin vitroでの別々のスクリーニングの結果を以下に要約している。
研究設計(I)−A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス
A/H1N1及びA/H3N2の株、並びにB型インフルエンザウイルス株に対して化合物THE 08/01及び化合物THE 10/01の抗ウイルス活性スクリーニングを別々に行った。
材料及び方法
1. インフルエンザウイルス株の増殖及び滴定
インフルエンザウイルスのA/H3N2株(A/パナマ/2007/99)、A/H1N1株(A/ニューカレドニア/20/99)及びB株(B/パルマ/1/07)を許容(permissive)細胞株MDCK(メイディン・ダービーイヌ腎臓)に広げた。
【0121】
簡潔に述べると、インフルエンザウイルスをMDCK細胞のコンフルエントな単層上に接種し、37℃、5% COで、5日間インキュベートした。このようにして上清(supernatant)を回収し、滴定した。アッセイ測定をプラーク形成試験(プラークアッセイ、PA)により行った。
【0122】
より具体的には、各単離株の10倍(on base 10)段階希釈液を12ウェルのプレートにおいてコンフルエントなMDCK単層上で接種した。37℃、5% COで1時間インキュベーションした後、ウイルス接種液を取り除き、感染培地(10μg/mlのトリプシン、2%の寒天を含有するMEM(最小必須培地))を添加した。37℃、5% COでの3日間のインキュベーション後、細胞単層を5%グルタルアルデヒド溶液で固定し、寒天を取り除いた後、5%石炭酸フクシン溶液で染色した。プラークを目視によりカウントし、単離株のアッセイを1mlあたりのプラーク形成単位(プラーク形成単位、PFU)(PFU/ml)として表した。
2. 抗ウイルス活性の評価
2.1. 分析する化合物の調製
化合物THE 08/01(実施例7の化合物)及び化合物THE 10/01(実施例8の化合物)のそれぞれを100mMの濃度で滅菌蒸留水中で好適に再構成した。
【0123】
それから、試験する各化合物に対して0.01μM〜100μMの間隔で10倍段階希釈液を調製した。
2.2. プラーク減少アッセイ(PRA)
試験する各化合物に対して12ウェルのプレートで成長させたMDCK細胞(10細胞/ml)のコンフルエントな単層に、約50PFU/ml(PFU=プラーク形成単位)の各ウイルス単離株(A/H3N2、A/H1N1及びB)を感染させた。37℃、5% COでの1時間のインキュベーション後、ウイルス吸収を高めるために、ウイルス接種液を取り除き、細胞単層をMEM培養培地で2回洗浄した。重層培地(MEM中、10μg/mlのトリプシン、2%の寒天)を、分析する化合物の段階希釈液(間隔:0.01μM〜100μM)の入った各ウェルに加えた。試験を二連で行い、同時に抗ウイルス化合物を含有しない反応対照を調製した。培養物を37℃、5% COで3日間インキュベートした。その後、細胞単層を、5%グルタルアルデヒドを用いて固定し、室温で少なくとも3時間インキュベートし、寒天への浸透を高めた。寒天を取り除いた後、細胞単層を、5%石炭酸フクシン溶液で染色した。
【0124】
プラークを目視によりカウントし、プラーク阻害度を、試験する化合物を含有しない対照との関連で算出した。このようにして、化合物を有しない対照に対してプラーク数を50%減少させることができる各化合物の濃度(EC50)を決定した。このために、用量応答曲線をGraphPad Prism生物統計ソフトウェアにより作成した。
3. 結果
THE 08/01及びTHE 10/01は、試験したA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を示した。試験したインフルエンザウイルスに対する化合物THE 08/01及び化合物THE 10/01の用量応答曲線はシグモイド関数により表され、該曲線によりEC50及び関連する信頼区間(95% CI)の推定が可能となる。
【0125】
例示として、THE 08/01のシグモイド関数を図1、図2及び図3に報告する。特に、EC50をここに報告する:
EC50 THE 08/01(対A/H1N1):9.9μM(95% CI:4.5μM〜21.5μM);
EC50 THE 08/01(対A/H3N2):15.4μM(95% CI:2.5μM〜95.8μM);
EC50 THE 08/01(対B):125.5μM(95% CI:7.8μM〜2014.0μM);及び
EC50 THE 10/01(対A/H1N1):11.7μM(95% CI:7.3μM〜29.8μM);
EC50 THE 10/01(対A/H3N2):18.3μM(95% CI:9.6μM〜83.2.8μM);
EC50 THE 10/01(対B):99.5μM(95% CI:11.4μM〜1937.6μM)。
4. 結論
実施した試験により得られた結果から、以下の考察を行うことができる:THE 08/01は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの両方に対する抗ウイルス活性を示した。A型ウイルスに対する抗ウイルス活性は、B型ウイルスに対する抗ウイルス活性より10倍超高いものとなる。
【0126】
同様の結果がTHE 10/01でも達成された。
研究設計(II)−インフルエンザウイルスA/H1N1(H275Y)(オセルタミビル耐性)
ノイラミニダーゼをコードする遺伝子における突然変異H275Yを表すA型インフルエンザウイルスH1N1亜型(A/H1N1(H275Y))に対する化合物THE 08/01の抗ウイルス活性のin vitroでの評価
化合物THE 08/01の抗インフルエンザ活性を、インフルエンザウイルスA/H1N1(H275Y)及び非突然変異インフルエンザウイルスA/H1N1の単離株に対して決定した。
材料及び方法
1. インフルエンザウイルスの増殖及び滴定
インフルエンザウイルスA/H1N1株(H275Y)(A/パルマ/38/2008)及びA/H1N1株(A/ニューカレドニア/20/1999)を胚性鶏卵上に広げた。簡潔に述べると、インフルエンザウイルス株を尿膜(allantoic)経路により鶏卵に接種し、37℃で3日間インキュベートして、それから尿膜液を回収し、滴定を行った。
【0127】
アッセイの測定はプラーク形成試験(プラークアッセイ、PA)により行った。特に、各ウイルス単離株の10倍段階希釈液を12個のウェルを有するプレートにおいて許容細胞MDCK(メイディン・ダービーイヌ腎臓)のコンフルエントな単層上に接種した。
【0128】
37℃、5% COでの1時間のインキュベーション後、細胞接種液を取り除き、感染培地(10μg/mlのTPCK−トリプシン、2%の寒天を含有するMEM)を添加した。37℃、5% COでの3日間のインキュベーション後、細胞単層を5%グルタルアルデヒド溶液で固定し、寒天を取り除いた後、5%石炭酸フクシン溶液で染色した。
【0129】
プラークを目視によりカウントし、単離株のアッセイを1mlあたりのプラーク形成単位(プラーク形成単位、PFU)(PFU/ml)として表した。
2. 試験する化合物の抗ウイルス活性の評価
2.1 試験する化合物の調製
化合物THE 08/01を1mMの濃度で滅菌蒸留水中で好適に再構成した。その後、10倍希釈により0.01μM〜100μMの範囲で段階希釈液を調製した。
2.2. プラーク減少アッセイ(プラーク減少アッセイ、PRA)
12ウェルを有するプレートで成長させたMDCK細胞(10細胞/ml)のコンフルエントな単層に、約50PFU/mlの各ウイルス単離株(A/H1N1(H275Y)、及びA/H1N1)を感染させた。37℃、5% COでの1時間のインキュベーション後、ウイルス吸収を高めるために、ウイルス接種液を取り除き、細胞単層をMEM培養培地で2回洗浄した。重層培地(MEM中、10μg/mlのTPCK−トリプシン、2%の寒天)を、評価する化合物の段階希釈液(範囲:0.01μM〜100μM)の入った各ウェルに加えた。試験を二連で行い、同時に抗ウイルス化合物を含有しない反応対照を設定した。それから培養物を37℃、5% COで3日間インキュベートした。
【0130】
その後、細胞単層を、5%グルタルアルデヒド溶液を用いることにより固定し、室温で少なくとも3時間インキュベートし、寒天への浸透を高めた。寒天を取り除いた後、細胞単層を、5%石炭酸フクシン溶液で染色した。プラークを目視によりカウントし、50%のプラーク阻害度を、試験する化合物を含有しない対照との関連で算出した(EC50)。
【0131】
このようにして、化合物を有しない対照に対してプラーク数を50%減少させるのに必要な化合物の濃度(EC50)を決定した。このために、用量応答曲線をGraphPad Prism生物統計(biostatistic)ソフトウェアを使用することにより作成した。
3. 結果
THE 08/01は、A/H1N1に対して測定されたものと同程度のインフルエンザウイルスA/H1N1(H275Y)に対するin vitroでの抗ウイルス活性を示した。2つの試験したインフルエンザウイルスに対する化合物THE 08/01の用量応答曲線は、図4に表されるシグモイド関数により表される。この曲線の作成により、EC50及び関連する信頼区間(95% CI)を推定することが可能となる。より具体的には、
EC50 THE 08/01(対A/H1N1(H275Y)):14.5μM(95% CI:5.2μM〜41.5μM);
EC50 THE 08/01(対A/H1N1):16μM(95% CI:3.1μM〜81.8μM)。
4. 結論
実施した試験により得られた結果から、THE 08/01が、インフルエンザウイルスA/H1N1単離株と、オセルタミビルに対する耐性を付与する突然変異H275Yを表すA/H1N1単離株とで同程度の抗ウイルス活性を示すと結論づけることができる。
【0132】
したがってこれらのデータにより、従来技術の化合物を上回る本発明の化合物の抗ウイルス活性の向上の或る特定の証拠が与えられる。実際、非常に低い濃度でも場合により両方の試験化合物の抗ウイルス活性が向上することがあり、そのため血球凝集素に対する阻害に関する仮説が想起され得る。しかしながら、B型インフルエンザウイルスにおけるMタンパク質の非存在下でのB型インフルエンザウイルスに対する予期せぬ活性(M2タンパク質は通常、A型インフルエンザウイルスにのみ存在する)は、血球凝集素及び/又はMタンパク質の阻害を同時に伴う新規の作用機構に関する仮説を支持するように見える。しかしながら、該化合物がA/H1N1−275Y株(オセルタミビルに耐性がある)に対する弱い活性を示したため、ノイラミニダーゼ阻害効果も上述の活性(血球凝集素及び/又はMタンパク質の阻害)に付随する可能性がある。このことが更なる具体的な研究の目的であろう。本発明の化合物を通常の実務により選択される従来の担体及び添加剤とともに配合することができる。錠剤は賦形剤、流動促進剤、充填剤、結合剤等を含有する。水性製剤は滅菌形態で調製し、経口投与の際、他のものによる送達が意図される場合、一般的には等張である。全ての製剤は任意で、著名な刊行物:"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 4th Edition, Rowe R.C. et al, Pharmaceutical Press (2003)に記載されるものような添加剤を含有する。添加剤としては、アスコルビン酸及び他の抗酸化剤、キレート剤、例えばEDTA、炭水化物、例えばデキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキル−メチルセルロース、ステアリン酸等が挙げられる。1つ又は複数の本発明の化合物(以下、活性化合物とも称される)を治療対象の状態に適切な任意の経路により投与することができる。好適な経路としては、経口経路、直腸経路、鼻腔経路、局所経路(頬側経路及び舌下経路を含む)、膣内経路、及び非経口経路(皮下経路、筋内経路、静脈内経路、皮内経路、髄腔内経路及び硬膜外経路を含む)等が挙げられる。
【0133】
当然のことながら、好ましい経路は例えばレシピエントの状態に応じて変わり得る。本発明の化合物の利点は、本発明の化合物が経口的に利用可能であり、経口医薬品形態として投与することができることであり、肺内経路又は鼻内経路により本発明の化合物を投与することも可能であるが、その必要性はない。活性化合物、又は該化合物が得られた状態と同じ固体形態(粉末)でその集合体を投与することが可能であるが、より都合よく投与するために本発明の化合物を従来の医薬組成物中で配合することが望まれ得る。
【0134】
本発明の製剤(獣医学的使用及びヒトへの使用の両方に対するものであり得る)は、1つ又は複数の許容される担体及び任意で他の治療成分とともに、上で規定のような少なくとも1つの本発明の活性化合物を含む。担体(複数も可)は、製剤の他の成分と混合可能であり、そのレシピエントに対して生理学的に無害であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0135】
該製剤には上述の投与経路に好適なものが含まれる。便宜上、製剤は単位剤形で提示することができ、薬学分野で既知の方法のいずれかにより調製することができる。一般的には技法及び製剤は、"Remington's Pharmaceutical Sciences"(Mack Publishing Co., Easton, Pa., U.S.A.)に見出される。かかる方法には、活性成分を1つ又は複数の補助成分を構成する担体と混ぜ合わせる工程が含まれる。概して製剤を、活性成分を液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方と均一かつ密接に混ぜ合わせた後、必要に応じて要望どおりに製品を成形することにより調製することができる。経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤若しくは錠剤(それぞれが所定量の活性成分を含有する)等の固体単位として、粉末若しくは顆粒として、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションとして調製することができる。活性成分は大丸薬、舐剤又はペーストとして提示することもできる。錠剤は、任意で1つ又は複数の補助成分とともに、圧縮又は成型により作製される。圧縮錠は、任意で結合剤、滑剤、不活性希釈剤、保存料、界面活性剤又は分散剤と混合して、粉末又は顆粒等の自由流動形態の活性成分を好適な機械において圧縮することにより作製することができる。成型錠は、不活性液体希釈剤を用いて湿らせた粉末化活性成分の混合物を好適な機械において成型することにより作製することができる。錠剤は、任意でコーティング又は分割(scored)することができ、任意で錠剤からの活性成分の緩徐放出又は制御放出を提供するように配合される。
【0136】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の感染に関しては、好ましくは製剤を、例えば0.075%(w/w)〜20%(w/w)(0.1%(w/w)の増分で0.1%〜20%の範囲、例えば0.6%(w/w)、0.7%(w/w)等の活性成分(複数も可)を含む)、好ましくは0.2%(w/w)〜15%(w/w)、最も好ましくは0.5%(w/w)〜10%(w/w)の量で活性成分(複数も可)を含有する局所軟膏又はクリームとして適用することができる。軟膏中に配合する場合、活性成分(複数も可)をパラフィン系又は水混和性の軟膏基剤のいずれかとともに利用することができる。代替的には、活性成分を水中油型クリーム基剤とともにクリーム中で配合することができる。
【0137】
必要に応じて、クリーム基剤の水相は、例えば少なくとも30%(w/w)の多価アルコール、すなわち(i.e.)2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG 400を含む)、並びにその混合物を含み得る。所望に応じて局所製剤には、皮膚又は他の患部を介した活性成分の吸収又は浸透を高める化合物も含み得る。かかる皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連の類似体が挙げられる。本発明のエマルションの油相を既知の方法で既知の成分から構成することができる。該相は、乳化剤(他にはエマルジェントとしても知られる)だけを含み得るが、所望に応じて少なくとも1つの乳化剤と、脂肪若しくは油、又は脂肪及び油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤とともに含まれる。該相が油及び脂肪の両方を含むことも好ましい。まとめると、安定剤(複数も可)を含む又は含まない乳化剤(複数も可)から、いわゆる乳化ワックスが構成され、油及び脂肪を含むワックスから、いわゆる乳化軟膏基剤が構成され、これがクリーム製剤の油性分散相を形成する。本発明の製剤における使用に好適なエマルジェント及びエマルション安定剤としては、Tween(商標)60、Span(商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート及び30ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0138】
製剤に対する好適な油又は脂肪の選択は、所望の美容特性を達成することに基づいている。クリームは好ましくはべたつかず、染みにならず、チューブ又は他の容器からの漏出を避けるのに好適な粘稠性を有する洗浄可能な製品であるものとする。直鎖又は分岐鎖の一塩基アルキルエステル又は二塩基アルキルエステル、例えばジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖/エステルのブレンドを使用することができ、最後の3つが好ましいエステルである。これらは要求される特性に応じて単独で又は組み合わせて使用することができる。代替的には、白色軟パラフィン等の高融点脂質を使用する。
【0139】
眼への局所投与に好適な製剤には、活性成分を該活性成分に好適な担体、特に水性溶媒中に溶解又は懸濁させた点眼薬も含まれる。活性成分は、0.5%(w/w)〜20%(w/w)、有利には0.5%(w/w)〜10%(w/w)、特に約2.0%(w/w)の濃度でかかる製剤中に存在するのが好ましい。口への局所投与に好適な製剤には、香味基剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むトローチ剤、不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア中に活性成分を含むトローチ、並びに好適な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。直腸投与用の製剤は例えばココアバター又はサリチル酸塩を含む好適な基剤を有する坐剤として提示され得る。肺内投与又は鼻内投与に好適な製剤は、0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲の粒径(0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロン等のミクロン増分で0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲の粒径を含む)を有し、この製剤を、鼻腔を介した急速吸入により、又は肺胞嚢に到達するように口を介した吸入により投与する。好適な製剤には、活性成分の水性又は油性の溶液が含まれる。エアロゾル又は乾燥粉末の投与に好適な製剤を従来方法に従って調製することができ、他の治療剤、例えば以下に記載のようなA型インフルエンザ感染症又はB型インフルエンザ感染症の治療又は予防法にこれまでに使用されてきた化合物とともに送達することができる。
【0140】
膣内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて適切であることが当該技術分野で知られているような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡状物質又は噴霧製剤として提示され得る。
【0141】
非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水溶性及び非水溶性の滅菌注射溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。
【0142】
製剤は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば封止アンプル及びバイアル内に提示することができ、使用の直前に滅菌液体担体(溶媒)、例えば注射用水を添加することだけが要求される凍結乾燥条件で保存することができる。用時調製用の(Extemporaneous)注射溶液及び懸濁液をこれまでに記載の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製する。好ましい単位投薬製剤は、本明細書中で上で列挙されるような1日用量若しくは1日単位分割用量の活性成分、又はその適切な画分を含有するものである。当然のことながら、特に上で言及される成分に加えて、本発明の製剤は対象の製剤の種類を考慮して当該技術分野において従来的な他の作用物質を含み得る、例えば経口投与に好適な製剤は香味剤を含み得る。
【0143】
本発明は、獣医用組成物であって、それ故に獣医学的担体とともに上で規定されるような活性成分を少なくとも1つ含む獣医用組成物を更に提供する。獣医学的担体は組成物を投与するのに有用な物質であり、そうでなくとも不活性であるか、又は獣医学分野で許容可能でありかつ活性成分と混合可能である固体、液体又は気体状の物質であってもよい。これらの獣医用組成物を、経口的に、非経口的に又は任意の他の所望の経路により投与することができる。本発明の化合物は、活性成分の放出が制御及び調節され、投与頻度が低下させられるか、又は所与の活性成分の薬物動態プロファイル又は毒性プロファイルが改善する、活性成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するのに使用することができる。
【0144】
活性化合物の有効用量は少なくとも、治療する状態の性質、毒性、化合物が予防的に(より低い用量で)又は進行中のインフルエンザ感染症に対して使用されているか、送達方法、及び医薬製剤に応じて変わり、スカラ用量で従来の研究を用いて臨床医により決定される。有効用量は、1日あたり約0.0001mg/kg(体重)〜約100mg/kg(体重)、典型的には1日あたり約0.01mg/kg(体重)〜約10mg/kg(体重)、より典型的には1日あたり約0.01mg/kg(体重)〜約5mg/kg(体重)、より典型的には1日あたり約0.05mg/kg(体重)〜約0.5mg/kg(体重)であると予測することができる。例えば吸入に関して、体重がおよそ70kgの成人に対する1日の候補用量は、1mg〜1000mg、好ましくは5mg〜500mg未満の範囲であり、単回用量又は複数回用量の形態をとることができる。
【0145】
被験体の病態が要求する場合、より多くの治療的に有効な1日投薬量を投与することもできる。また本発明の活性化合物は他の活性成分と組み合わせても使用される。かかる組合せは、治療対象の状態、成分の交差反応性及び組合せの薬学的特性に応じて選択される。例えば呼吸系のウイルス感染症、特にインフルエンザ感染症を治療する場合、本発明の組成物を抗ウイルス剤(例えばアマンタジン、リマンタジン及びリバビリン)、粘液溶解薬、去痰薬、気管支作用薬、抗生物質、解熱剤又は鎮痛剤と組み合わせる。通常、抗生物質、解熱剤及び鎮痛剤を本発明の化合物とともに投与する。
【0146】
本発明を、当業者が以下の実施例の主題を作製及び使用することができるように十分詳細に説明した。以下の実施例の方法及び組成物の或る特定の変更を本発明の範囲及び精神内で行うことができることが明らかである。
【0147】
本発明は以下の例示的な実施形態及び添付の図1〜図5を参照して更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】THE 08/01(対Flu A/H1N1)の試験結果を示す図である。
【図2】THE 08/01(対Flu A/H3N2)の試験結果を示す図である。
【図3】THE 08/01(対Flu B)の試験結果を示す図である。
【図4】THE 08/01(対Flu A/H1N1(H275Y)及びFlu A/H1N1)の試験結果を示す図である。
【図5】HCV(THE 08/01、THE 10/01、THE 10/09)の試験結果を示す図である。
【実施例】
【0149】
実施例1
Neu5Acのメチルエステルのメチル−β−ケトシドの調製
【0150】
【化21】

【0151】
350mlの無水エタノールに溶解した4.50mgのシアル酸(14.55mmol)を10.0gのDowex 50(H樹脂に混合して、懸濁液を一定の速度で撹拌しながら48時間かん流した。レゾルシノール−HCl及びチオバルビツール酸(TBA)を用いた分析測定により、24時間及び48時間でそれぞれ、Neu5Acの85%及び97%がメチル−β−ケトシドに変換されたことが示された。それからサンプルを、現行のろ紙でろ別し、溶出液を濃縮し、ロータリーエバポレータにより乾固させ、黄色がかった油状液体を得て、それからそれをエチルエーテル:メタノール(3:1(w/w))の量を低減した混合物を用いて回収し、溶液を4℃で24時間〜48時間静置させた。結晶物質をろ過により回収し、P上で乾燥させた。収量:2.90g(M.W. 337.4)。得られた化合物はレゾルシノール−HCl反応に陽性であり(シアル酸と同じ強度である)、TBA反応に陰性である。
(*)事前に(Preemptively)Dowex 50(H樹脂は室温で60分間60mlの1.0M塩酸溶液を用いて活性化させるものとする。それから樹脂を使用する前に水、及びその後メタノールで十分に洗浄するものとする。
実施例2
Neu5Acのメチルエステルのメチル−β−ケトシドの穏やかなアルカリ加水分解によるNeu5Acのメチル−β−ケトシドの調製
【0152】
【化22】

【0153】
Neu5Acのメチルエステルのメチル−β−ケトシド2.90g(8.60mmol)を200mlの0.06M水酸化ナトリウム中に溶解し、室温で2.5時間インキュベートした。それから溶液を中和し、Dowex 50(H)樹脂上でその溶液を通過させることにより脱イオン化した。その後溶出液を凍結乾燥し、白色がかった固体を得た。
収量:2.64g(M.W. 332.4)。
【0154】
得られた化合物はレゾルシノール−HCl反応に陽性であり、TBA反応に陰性であった。
【0155】
実施例3
C7−Neu5Acのメチル−β−ケトシドの調製
【0156】
【化23】

【0157】
Neu5Acのメチル−β−ケトシド2.90g(8.20mmol)で構成されたこれまでの段階により得られた凍結乾燥粉末を100mlの蒸留水中に溶解し、214.0mlの0.2M NaIO(メタ過ヨウ素酸ナトリウム)(42.8mmol)を添加した。Neu5Acのメチル−β−ケトシド:NaIOのモル比=1:5.24。溶液を一定の速度で撹拌しながら暗所、室温で2時間維持した。260.0mlの0.1M酢酸バリウム水溶液を混合物に添加し、形成したヨウ素酸塩及び過剰な過ヨウ素酸塩を沈殿させた。混合物を、現行のろ紙を用いてろ過した。溶出液を二酸化炭素をバブリングして飽和させ、過剰な酢酸バリウムを沈殿させた後、ろ紙上でろ別した。溶出液を凍結乾燥し、僅かに黄色がかった固体を得た。
収量:1.806g(M.W. 260.24)。得られた化合物はレゾルシノール−HCl反応に陽性であり、TBA反応に陰性であった。
実施例4
C7−Neu5Acの調製
【0158】
【化24】

【0159】
C7−Neu5Acを、C7−Neu5Acのメチル−β−ケトシドの穏やかな加水分解により得る。7.0mmolに相当するこれまでの実施例で得られた凍結乾燥粉末を約4.0のpHで40mlの2.3mMギ酸中に溶解し、1時間、80℃に加熱した。それから溶液を凍結乾燥した。
収量:1.674g(M.W. 246.21)。
【0160】
得られた化合物はレゾルシノール−HCl反応に陽性であり、TBA反応に陰性である。
実施例5
DEAE−Sephadex A−25へのC7−Neu5Acの吸収
6.80mmolに相当するこれまでの工程で得られた凍結乾燥粉末を200mlのメタノール:水(1:1(v/v))中に溶解する。それから、20.0gのDEAE−Sephadex A−25を添加し、サンプルを4℃で一晩連続的に撹拌しながら維持する。上記の期間が経過したら、形成されたC7−Neu5Ac−DEAE−Sephadex A−25の複合体をメタノール:蒸留水(1:1(v/v))で複数回洗浄する。それから複合体を600mlの蒸留水中に溶解する。
実施例6
アマンタジン−C7Neu5Acの調製
【0161】
【化25】

【0162】
0.34mmol C7−Neu5Acを含有する、これまでの実施例で得られた30.0mlの懸濁液に、シアル酸の1.5倍過剰量のアマンタジン(0.51mmol)と、また反応中に形成されるイミンを還元してそれを安定した第2級アミンに変換するのに必要な100mlの水素化ホウ素ナトリウムとを添加する。得られたサンプルを4℃で一晩連続的に撹拌しながらインキュベートする。それからゲルをメタノール:蒸留水(1:1(v/v))で複数回洗浄する。アマンタジン−C7−Neu5Acにより構成される得られた誘導体を、100mlのクロロホルム:メタノール:35% NHOH(60:35:8(v/v/v))混合物を用いてDEAE−Sephadex A−25により溶出する。そのゲルを室温で1時間、この溶媒混合物とともにインキュベートして維持する。サンプルを遠心分離した後、固体残渣を廃棄し(DEAE−Sephadex A−25)、アマンタジン−C7−Nu5Acを含有する上清をロータリーデシケーターにより乾固させる。それから誘導体を100mlの蒸留水中に溶解し、凍結乾燥する。サンプルは凍結乾燥状態で保存することができる。
実施例7
以下の構造式を有する化合物[アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1628]の調製
【0163】
【化26】

【0164】
これまでの段階から得られた化合物(アマンタジン−C7−Neu5Ac)を100.0mlの蒸留水中に溶解する。その後、化合物C1628・PO{CAS[204255−11−8]、M.W. 410.4}を複合体のシアル酸含有量と比較して1.5倍のモル過剰で添加する(0.51mmol)。サンプルを60℃で2時間インキュベートする。それからNaBHCN(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)をC1628:NaBHCN(1:0.5(W/W))の比で添加し、得られた混合物を60℃で一晩インキュベートする。その後、10.0gのDEAE−Sephadex A−25を添加し、混合物を4℃で一晩連続的に撹拌しながらインキュベートし、この期間の後、新たに得られた化合物アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1627−DEAE−Sephadex A−25をメタノール:蒸留水(1:1(V/V))の混合物で複数回洗浄する。このようにして得られ、アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1627により構成される誘導体を200.0mlのクロロホルム:メタノール:35% NHOH(60:35:8(V/V/V))の混合物を用いてDEAE−Sephadex A−25から溶出する。
【0165】
ゲルを室温で1時間、この溶媒混合物とともにインキュベートする。その後、サンプルを遠心分離し、固体残渣を廃棄し(DEAE−Sephadex A−25)、上清をロータリーデシケーターにより乾燥させ、化合物アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1627を得る。それから化合物を完全に溶解するまで好適な容量の蒸留水中で回収した後、凍結乾燥する。
【0166】
冷凍庫内でサンプルを保存するのが好ましい。
実施例8
以下の構造式を有する化合物[アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1220]の調製
【0167】
【化27】

【0168】
これまでの段階から得られた化合物(アマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.69gのC1220{CAS[139110−80−8]、M.W. 332.30}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.37gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例9
以下の構造式を有する化合物[アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1528]の調製
【0169】
【化28】

【0170】
これまでの段階から得られた化合物(アマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.66gのC1528{CAS[229614−55−5]、M.W. 328.41}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.37gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例10
以下の構造式を有する化合物[アマンタジン−C7−Neu5Ac−C1322]の調製
【0171】
【化29】

【0172】
これまでの段階から得られた化合物(アマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.80gのC1322{CAS[203120−17−6]、M.W. 472.53}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.43gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例11
リマンタジン−C7Neu5Acの調製
実施例5で得られた61.08mlのサンプルに、10mlの蒸留水及び1.75gのリマンタジン−HClを添加する。4℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。その後、6つのサンプルそれぞれに、1.75gの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を添加し、室温で1時間サンプルをインキュベートして、得られたイミン(化学的に不安定)を安定な第2級アミンへと還元する。
【0173】
全てのサンプルを遠心分離し、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び30ml及び50mlの蒸留水とともに遠心分離する。再び遠心分離し、上清を取り除く。
実施例12
以下の構造式を有する化合物[リマンタジン−C7−Neu5Ac−C1628]の調製
【0174】
【化30】

【0175】
これまでの段階から得られた化合物(リマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、3.32gのC1628・PO{CAS[204255−11−8]、M.W. 410.4}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.7gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例13
以下の構造式を有する化合物[リマンタジン−C7−Neu5Ac−C1220]の調製
【0176】
【化31】

【0177】
これまでの段階から得られた化合物(リマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.69gのC1220{CAS[139110−80−8]、M.W. 332.30}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.37gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例14
以下の構造式を有する化合物[リマンタジン−C7−Neu5Ac−C1528]の調製
【0178】
【化32】

【0179】
これまでの段階から得られた化合物(リマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.66gのC1528{CAS[229614−55−5]、M.W. 328.41}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.37gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例15
以下の構造式を有する化合物[リマンタジン−C7−Neu5Ac−C1322]の調製
【0180】
【化33】

【0181】
これまでの段階から得られた複合体(リマンタジン−C7−Neu5Ac)を10mlの蒸留水中に溶解し、2.80gのC1322{CAS[203120−17−6]、M.W. 472.53}を添加する。60℃で2時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。1.43gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を添加する。60℃で一晩撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、上清を取り除く。30ml及び50mlの蒸留水で少なくとも1回洗浄する。再び遠心分離して上清を取り除く。50mlのクロロホルム:メタノール:15M NHOH(60:35:8(V/V/V))溶媒混合物を添加する。室温で1時間撹拌しながらサンプルをインキュベートする。遠心分離して、ロータリーデシケーターで上清を乾燥させる。乾燥したサンプルを最小量の水中に入れる。凍結乾燥し、−20℃の冷凍庫内でサンプルを保存する。
実施例16
HCVに対する活性の評価
化合物THE 08/01、化合物THE 10/01及び化合物THE 10/09(表1を参照されたい)の抗ウイルス活性の評価を、当該技術分野で既知の技法に従ってJFH−1 HCVに対して行った。本明細書に要約を記載する。
材料及び方法
1. 第I段階:組換えウイルスの産生
組換えウイルスを組換えRNAのヒト肝癌の細胞株Huh7.5へのトランスフェクションにより産生した。得られたウイルスを同じ細胞株で培養し、それからフォーカス形成単位(FFU)をカウントした後、それを続く段階に使用した。このために、細胞を各ウェルあたり10000個の細胞濃度でマイクロプレートに播種した。18時間後、細胞をウイルス懸濁液の段階希釈液を用いて感染させ、6時間インキュベートした後、培地を新たな培地に交換した。3日後、細胞層を固定し、抗HCVコア抗体を用いて染色し、各希釈液におけるフォーカス形成単位をカウントした。
2. 第II段階:in vitroでの感染(短期間)に対する活性の評価
24ウェルプレートのプレート上に播種したHuh7.5細胞の単層に、0.01に等しい感染多重度(MOI)でJFH−1を感染させた。37℃で1.5時間のウイルスを吸着させるためのインキュベーションの後、細胞単層を培地で2回洗浄した。その後、試験する化合物の段階希釈液(0.004μg/ml〜0.5μg/ml)を含有する培養培地MEM(最小必須培地)を添加した。試験を3連で行い、同時にブランク対照も調製した。細胞を37℃、5% CO中で2日間インキュベートした。最後に、ウイルス複製に対する阻害効果をFFU法により測定した。
3. 結果及び結論
試験した化合物はJFH−1 HCVに対する弱い阻害を示した。より具体的には、THE 10/09に関する結果が顕著であった。
【0182】
結果の要約を図5にまとめる。
【0183】
【表2−1】

【0184】
【表2−2】

【0185】
【表2−3】

【0186】
【表2−4】

【0187】
【表2−5】

【0188】
【表2−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

(式中、
Xは−O−結合又は−CH−結合を示し、
Rは−H又は直鎖若しくは分岐鎖のC1〜4アルキル基を示し、
は−(NH)−(CH−(T)(式中、独立してn=1又は2、並びにm=0、1、2、3及び4)、−NH−CO−NH−(T)、又は−NH−C(NH)−NH−(T)(式中、−(T)部分は、更に規定されるような化学的部分−(T−1)、−(T−2)、−(T−2)又は−(T−4)のいずれか、及び対応する置換基を特徴とする)を示し、
は−OH、−NH、−O−CH−(C、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C、−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つだけの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる)を示し、
は−OH、−NH、−NH−CO−CH、−NH−CO−CH−OH、−NH−CO−C又は−NH−C(NH)NH(式中、Rの水素がいずれの部分によっても置換されないという条件で、必要に応じてこれらの前述のR部分のいずれかの1つだけの末端水素を、−(T)部分若しくは−(W)部分により又は別の既知の抗ウイルス化合物、抗細菌化合物若しくは抗原虫化合物の一部分により置換することができる)を示し、
はRと独立して、−CHOH−CHOH−CH−OH部分、−(W)部分、−CHOH−CH−(W)部分又は−CH−(W)部分(式中、−(W)部分は、更に規定されるような化学的部分−(W−1)、−(W−2)のいずれか、及び対応する置換基を特徴とする)を示す)
の化合物、並びにそれらの直鎖又は分岐鎖のC1〜4カルボキシモノエステル又はポリエステル、付加塩、溶媒和物、分割された鏡像体、及び精製されたジアステレオ異性体。
【請求項2】
の−(T)部分が、Rの−(W)と独立して、−(T−1)構造:
【化2】

(式中、Rは−H、−CH、−C、−CH−(Cを示し、
は−NH−CO−CH、−NH−CO−Cを示し、
は−O−CH−(CH、−O−CH−(Cを示す)を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
の−(T)部分が、Rの−(W)と独立して、−(T−2)構造:
【化3】

を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
の−(T)部分が、Rの−(W)と独立して、−(T−3)構造:
【化4】

を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
の−(T)部分が、Rの−(W)と独立して、−(T−4)構造:
【化5】

(式中、Zは−H、−CH−(C、−CO−(CH−CHを示す)を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
の−(W)部分が、Rの−(T)部分と独立して、−(W−1)構造:
【化6】

(式中、Rは結合官能基:
−NH−、−CH−NH−、−CH(CH)−NH−、−NH−CH(CH)−NH−、−C(CH−CH−NH−、−NH−CO−CH−O−CH−CH−NH−、又は
【化7】

を示し、
は−H、−CH又は−Cを示し、
10は−H、−CH又は−Cを示す)を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
の−(W)部分が、Rの−(T)部分と独立して、−(W−2)構造:
【化8】

(式中、R11は結合官能基:
−NH−、−CO−NH−又は−C(NH)−NH−を示す)を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
(T)部分が独立して、置換されない又は部分的に置換される前記(T−1)部分、(T−2)部分、(T−3)部分又は(T−4)部分のいずれかの群の中から選択され、(W)部分が独立して、置換されない又は部分的に置換される前記(W−1)部分又は(W−2)部分のいずれかの群の中から選択される化合物であることを典型的には特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記部分の好ましい組合せが以下の表に示されるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【表1−1】

【表1−2】

【請求項10】
薬学的に許容される担体中に請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物又はその混合物のみを含む医薬組成物。
【請求項11】
血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)及び/又はMタンパク質及び/又はRNAポリメラーゼを含有するウイルス、細菌又は原虫により引き起こされるウイルス、細菌又は原虫のサンプルを処理するとともに、感染症を治療する方法であって、かかる治療を必要とする該宿主に、治療的に有効な量の請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物又はその混合物を任意の好適な投与経路により投与することを含む、血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)及び/又はMタンパク質及び/又はRNAポリメラーゼを含有するウイルス、細菌又は原虫により引き起こされるウイルス、細菌又は原虫のサンプルを処理するとともに、感染症を治療する方法。
【請求項12】
血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)及び/又はMタンパク質を含有する前記ウイルスのサンプル又は感染症が、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスにより、又はそれらの突然変異体により表される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
mRNA及びRNAポリメラーゼを含有する前記ウイルスのサンプル又は感染症が、C型肝炎ウイルス(HCV)により、又はそれらの突然変異体により表される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
治療的に有効な量の、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、又はそれらの耐性突然変異体に対する活性がある別の化合物と組み合わせる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
治療的に有効な量の、C型肝炎ウイルス(HVC)、又はそれらの突然変異体に対する活性がある別の化合物と組み合わせる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
HCVに対する活性がある前記化合物が単独又は組合せ(in combination)でのα−インターフェロンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
HA又はNA又はMタンパク質依存性の存在により引き起こされるウイルス、細菌及び原虫による感染症の哺乳動物における治療のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
RNAポリメラーゼ依存性又はmRNA−グアニリルトランスフェラーゼ酵素依存性の存在により引き起こされるHVC感染症の哺乳動物における治療のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
HA又はNAウイルス又はMタンパク質依存性の存在により引き起こされる感染症の哺乳動物における治療用の薬剤の製造のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
mRNA、RNAポリメラーゼ及びmRNA−グアニリルトランスフェラーゼ酵素依存性のウイルスの存在により引き起こされる感染症の哺乳動物における治療用の薬剤の製造のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512222(P2013−512222A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540431(P2012−540431)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068229
【国際公開番号】WO2011/064303
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(592255486)テラピコン エス.アール.エル. (4)
【氏名又は名称原語表記】THERAPICON S.R.L.
【Fターム(参考)】