説明

シェルモールド用フェノール樹脂組成物及びシェルモールド用レジンコーテッドサンド

【課題】 使用時にホルムアルデヒドなどの刺激性のガス発生量を増加させることなく、速硬化性を有し、良好な機械的強度を有する鋳型を製造できるシェルモールド用フェノール樹脂組成物と、これを用いたシェルモールド用レジンコーテッドサンドを提供する。
【解決手段】 ノボラック型フェノール樹脂と、エポキシ樹脂とを含有するシェルモールド用フェノール樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂の含有量は、上記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とするシェルモールド用フェノール樹脂組成物と、このシェルモールド用ノボラック型フェノール樹脂組成物とヘキサメチレンテトラミンとを、耐火性粒状材料とともに混練してなることを特徴とするシェルモールド用レジンコーテッドサンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルモールド用フェノール樹脂組成物、及び、シェルモールド用レジンコーテッドサンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェルモールド法による鋳型の作製は、レジンコーテッドサンドを加熱した型に充填し、硬化させることにより行われている。レジンコーテッドサンドは、予め加熱した耐火性粒状材料に粘結剤を添加、ミキサーで混練し、耐火性粒状材料の表面を溶融した粘結剤でコートした後、粘結剤がノボラック型フェノール樹脂である場合にはヘキサメチレンテトラミン水溶液などの硬化剤を添加し、さらに混練しつつ冷却してステアリン酸カルシウム等の滑剤を添加することによって得られる。
通常、粘結剤としては、レジンコーテッドサンドの保存性、鋳型の高強度、高寸法安定性を得る等の理由により、ノボラック型フェノール樹脂が使用されている。
【0003】
シェルモールド法によりレジンコーテッドサンドを成形して鋳型にする際、生産性の面より成形サイクルを短縮できることが好ましく、速硬化性を有するレジンコーテッドサンドを得られるシェルモールド用フェノール樹脂組成物が求められている。
このような樹脂組成物としては、例えば、速硬化性を有するハイオルソノボラック樹脂を用いる方法、サリチル酸、安息香酸等の硬化促進剤を用いる方法があるが、鋳型強度の低下がみられるという問題がある。
また、硬化剤であるヘキサメチレンテトラミンの添加量を増量する方法もあるが、アンモニア、フェノール、ホルムアルデヒドなどの刺激性のガス発生量が増加し、作業環境衛生上問題となる。
このほか、アルカリ金属弱酸塩又はアルカリ金属水酸化物を硬化促進剤として含有するシェルモールド用フェノール樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−170244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用時にホルムアルデヒドなどの刺激性のガス発生量を増加させることなく、速硬化性を有し、良好な機械的強度を有する鋳型を製造できるシェルモールド用フェノール樹脂組成物と、これを用いたシェルモールド用レジンコーテッドサンドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(4)により達成される。
(1)ノボラック型フェノール樹脂と、エポキシ樹脂とを含有するシェルモールド用フェノール樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂の含有量は、上記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とするシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
(2)上記エポキシ樹脂の含有量は、上記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である上記(1)に記載のシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
(3)上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び/又はフェノールノボラック型エポキシ樹脂である上記(1)又は(2)に記載のシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシェルモールド用ノボラック型フェノール樹脂組成物とヘキサメチレンテトラミンとを、耐火性粒状材料とともに混練してなることを特徴とするシェルモールド用レジンコーテッドサンド。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシェルモールド用フェノール樹脂組成物を用いることにより、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を増やすことなく速硬化性を付与することができるので、鋳型の生産性向上と作業環境衛生の維持改善とを両立したシェルモールド用レジンコーテッドサンドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のシェルモールド用フェノール樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)と、シェルモールド用レジンコーテッドサンド(以下、単に「レジンコーテッドサンド」ということがある)について説明する。
本発明の組成物は、ノボラック型フェノール樹脂と、エポキシ樹脂とを含有するシェルモールド用フェノール樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂の含有量は、上記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とする。
また、本発明のレジンコーテッドサンドは、上記本発明の組成物とヘキサメチレンテトラミンとを、耐火性粒状材料とともに混練してなることを特徴とする。
まず、樹脂組成物について説明する。
【0009】
本発明の組成物には、ノボラック型フェノール樹脂を用いる。
本発明の組成物で用いられるノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを、通常、酸性触媒下で重縮合させることによって得られるものである。
【0010】
ノボラック型フェノール樹脂の合成に用いられるフェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール,m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール、ほかのアルキルフェノール類、カテコール、レゾルシン、ビスフェノール類などが挙げられる。これらを単独で使用、あるいは2種以上を併用することができる。
通常、シェルモールド用としては、鋳型に成形したときに機械的強度を得やすいことから、フェノール、クレゾール類が用いられる。
【0011】
また、アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒドなど、またはこれらのアルデヒドの発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド類の溶液などが挙げられる。これらを単独で使用、あるいは2種以上を併用することができる。
通常、シェルモールド用としては、ノボラック型フェノール樹脂の合成時の反応性が高いことから、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが用いられる。
【0012】
上記ノボラック型フェノール樹脂の合成に際して用いられる酸性触媒としては特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸、蟻酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。これらを単独で使用、あるいは2種以上を併用することができる。
【0013】
上記ノボラック型フェノール樹脂は、上記フェノール類(P)と、アルデヒド類(F)とを、反応モル比(F/P)で0.4〜0.9となるよう配合し、酸性触媒を用いて90〜120℃にて1〜5時間反応させることにより得られる。
シェルモールド用に使用する場合は、レジンコーテッドサンド製造時の作業性、成形時の充填性、鋳型の機械的強度等の理由から、重量平均分子量(Mw)が500〜2000であるものを用いることが好ましい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定することができる。
【0014】
なお、本発明の組成物に用いられるノボラック型フェノール樹脂としては、上記の方法で得られる通常のランダムタイプのノボラック型フェノール樹脂以外にも、シェルモールド用に用いられるハイオルソタイプのノボラック型フェノール樹脂を併用することもできる。
また、ノボラック型フェノール樹脂とともに、レゾール型フェノール樹脂を併用することもできる。
【0015】
本発明の組成物には、エポキシ樹脂を用いる。
本発明の組成物に用いられるエポキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるものを用いると、ノボラック型フェノール樹脂との相溶性が優れており好ましい。
【0016】
本発明の組成物に用いられる上記エポキシ樹脂の形態としては特に限定されないが、常温で固形であるものが好ましい。これにより、レジンコーテッドサンドの保存時に耐ブロッキング性を付与することができる。
【0017】
上記エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が380〜6000であることが好ましく、特に、900〜4000であることが好ましい。これにより、鋳型の曲げ強度を向上させることができる。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定することができる。
【0018】
上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、180〜5000であることが好ましく、特に200〜2200であることが好ましい。これにより、硬化性を向上させることができる。
また、上記エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いる場合は、エポキシ当量が450〜2000であるものを用いることが特に好ましい。これにより、硬化性をより優れたものとすることができる。
【0019】
本発明の組成物において、エポキシ樹脂の配合量は、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部であることを特徴とする。
【0020】
ノボラック型フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを含有する組成物において、その配合割合は、ノボラック型フェノール樹脂が有する水酸基と、エポキシ樹脂が有するエポキシ基との当量比を考慮して調整され、通常、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂30〜200重量部程度が配合される。しかし、このような割合で配合された組成物をシェルモールド用途に適用すると、接着力(鋳型の曲げ強度)が低下するという問題があった。
【0021】
これに対して、本発明の組成物においては、ノボラック型フェノール樹脂に対してエポキシ樹脂をごく少量配合することを特徴とする。これにより、本発明の組成物をヘキサメチレンテトラミンとともに用いた場合に鋳型の曲げ強度を低下させることなく、速硬化性を付与することができる。この理由は明確ではないが、以下のように推測される。
本発明の組成物をヘキサメチレンテトラミンとともに用いた場合、エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの硬化反応に際して架橋剤あるいは硬化促進剤として働き、これにより、速硬化性を付与できるのではないかと考えられる。
そして、従来と同等もしくはそれ以下の量のヘキサメチレンテトラミンを用いて硬化させることができるので、ガス発生量の増大による鋳物のガス欠陥を増加させることなく、良好な鋳型強度を付与できるとともに、鋳型の生産性向上と作業環境衛生の維持改善とを両立することができる。
【0022】
このような目的のためには、エポキシ樹脂の配合量は、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、0.5〜3重量部であることが好ましい。
エポキシ樹脂の配合量が上記下限値未満では、速硬化性を付与する効果が小さくなることがあり、上記上限値を越えると、鋳型の強度が低下することがある。
【0023】
本発明の組成物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の合成終了時点でエポキシ樹脂を添加して溶融混合する方法、ノボラック型フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを粉砕混合する方法、などが挙げられる。
【0024】
次に、本発明のレジンコーテッドサンドについて説明する。
本発明のレジンコーテッドサンドは、上記本発明の組成物とヘキサメチレンテトラミンとを、耐火性粒状材料とともに混練してなるものである。
【0025】
本発明のレジンコーテッドサンドに用いられる耐火性粒状材料としては特に限定されないが、例えば、硅砂、ジルコンサンド、セラビーズ、サンパール、オリビンサンド、クロマイトサンド等が挙げられる。これらの中では、珪砂が一般的に用いられるが、鋳型の熱による寸法変化を抑えるにはジルコンサンド、セラビーズ、サンパール、オリビンサンド、クロマイトサンド等の熱膨張率の小さな特殊砂を用いることが好ましい。
【0026】
本発明のレジンコーテッドサンドには、上記本発明の組成物とともに、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いる。
ヘキサメチレンテトラミンの添加量は特に限定されないが、本発明の組成物100重量部に対して3〜20重量部とすることができる。より好ましくは5〜15重量部である。
ヘキサメチレンテトラミンの添加量が上記下限値未満では、硬化が遅く鋳型造型性が低下することがある。また、上記上限値を越えると、鋳型造型時のホルムアルデヒドやアンモニアの発生量が多くなり、作業環境を低下させたり、鋳物にガス欠陥が発生したりすることがある。
【0027】
本発明のレジンコーテッドサンドには、このほか必要に応じて、改質剤として、滑剤、シランカップリング剤を配合することができる。滑剤としてはエチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド等が使用でき、シランカップリング剤としてはアミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン等が使用できる。
なお、これらの滑剤やシランカップリング剤は、予め本発明の組成物中に含有させておくことができる。
【0028】
本発明のレジンコーテッドサンドにおいて、耐火性粒状材料と、本発明の組成物との配合比率としては特に限定されないが、耐火性粒状材料100重量部に対して、本発明の組成物1〜4重量部と、本発明の組成物に対して上記所定量のヘキサメチレンテトラミンを用いることができる。
【0029】
本発明のレジンコーテッドサンドを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、120〜180℃に加温した耐火性粒状材料をミキサー装置などに投入し、本発明の組成物を添加して40〜80秒間混練し、さらに、ヘキサメチレンテトラミンを水溶液形態で添加し、レジンコーテッドサンドが崩壊するまで空冷しながら混錬した後、滑剤などを添加して10〜30秒間混錬を行い、レジンコーテッドサンドを得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の組成物及びレジンコーテッドサンドを実施例に基づいて具体的に説明する。ここに記載されている「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0031】
(実施例1)
(1)組成物の調製
冷却器、攪拌装置を備えた反応容器に、フェノール1000部、蓚酸10部、37%ホルマリン603部(F/P=0.7)を仕込み、攪拌しながら昇温し、95〜100℃にて4時間反応を行った後、大気圧にて内温140℃になるまで加熱脱水し、さらに減圧下で軟化点が90℃になるまで脱フェノールを行い、重量平均分子量(Mw)が1050であるノボラック型フェノール樹脂を得た。
その後、内部滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド20部、シランカップリング剤としてアミノシラン10部、さらにエポキシ樹脂A(ジャパンエポキシレジン社製エピコート1007、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、軟化点127℃、重量平均分子量2900、エポキシ当量1900)18.6部を添加し、組成物979部を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
130℃に加熱したフラタリーサンド8000部をミキサーに投入後、上記(1)で得られた組成物160部を添加して45秒間混錬した。次いで、予めヘキサメチレンテトラミン19.2部を水88部に溶解したヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加し、コーテッドサンドが崩壊するまで空冷しながら混錬し、さらにステアリン酸カルシウム8部を添加して20秒間混錬を行い、レジンコーテッドサンドを得た。
【0032】
(実施例2)
(1)組成物の調製
エポキシ樹脂Aのかわりに、エポキシ樹脂B(ジャパンエポキシレジン社製エピコート1001、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、軟化点64℃、重量平均分子量900、エポキシ当量470)46.5部を添加した以外は、実施例1と同様にして、組成物1007部を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
実施例1(2)と同様にして、レジンコーテッドサンドを得た。
【0033】
(実施例3)
(1)組成物の調製
冷却器、攪拌装置を備えた反応容器に、フェノール1000部、蓚酸10部、37%ホルマリン603部(F/P=0.7)を仕込み、攪拌しながら昇温し、95〜100℃にて4時間反応を行った後、大気圧にて内温140℃になるまで加熱脱水し、さらに減圧下で軟化点が90℃になるまで脱フェノールを行い、重量平均分子量(Mw)が1050であるノボラック型フェノール樹脂を得た。
その後、内部滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド20部、シランカップリング剤としてアミノシラン10部を添加して、混合物960部を得た。この混合物と、エポキシ樹脂C(日本化薬社製EOCN−102S、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、軟化点70℃、重量平均分子量1000、エポキシ当量210)28部とを粗粉砕混合して、組成物988部を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
130℃に加熱したフラタリーサンド8000部をミキサーに投入後、上記(1)で得られた組成物160部を添加し45秒間混錬した。次いで、予めヘキサメチレンテトラミン19.2部を水88部に溶解した水溶液を添加し、コーテッドサンドが崩壊するまで空冷しながら混錬し、さらにステアリン酸カルシウム8部を添加して20秒間混錬を行い、レジンコーテッドサンドを得た。
【0034】
(実施例4)
(1)組成物の調製
実施例1(1)と同様にして、組成物を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
硬化剤として、予めヘキサメチレンテトラミン24部を水88部に溶解したヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加した以外は、実施例1(2)と同様にして、レジンコーテッドサンドを得た。
【0035】
(比較例1)
(1)混合物の調製
冷却器、攪拌装置を備えた反応容器に、フェノール1000部、蓚酸10部、37%ホルマリン603部(F/P=0.7)を仕込み、攪拌しながら昇温し、95〜100℃にて4時間反応を行った後、大気圧にて内温140℃になるまで加熱脱水し、さらに減圧下で軟化点が90℃になるまで脱フェノールを行い、重量平均分子量(Mw)が1050であるノボラック型フェノール樹脂を得た。
その後、内部滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド20部、シランカップリング剤としてアミノシラン10部を添加し、混合物960部を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
130℃に加熱したフラタリーサンド8000部をミキサーに投入後、上記(1)で得られた混合物160部を添加して45秒間混錬した。次いで、予めヘキサメチレンテトラミン19.2部を水88部に溶解したヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加し、コーテッドサンドが崩壊するまで空冷しながら混錬し、さらにステアリン酸カルシウム8部を添加して20秒間混錬を行い、レジンコーテッドサンドを得た。
【0036】
(比較例2)
(1)混合物の調製
比較例1(1)と同様にして、混合物を得た。
(2)レジンコーテッドサンドの製造
硬化剤として、予めヘキサメチレンテトラミン24部を水88部に溶解したヘキサメチレンテトラミン水溶液を添加した以外は、比較例1(2)と同様にして、レジンコーテッドサンドを得た。
【0037】
実施例及び比較例で得られたレジンコーテッドサンドの特性を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(特性評価方法)
(1)曲げ強度
JIS−K6910に準拠して行った。焼成は250℃で60秒間行った。
【0040】
(2)融着点
温度勾配を有した銅棒上にレジンコーテッドサンドを置き、60秒後に0.5kg/cmのエアを当ててレジンコーテッドサンドを吹き飛ばし、レジンコーテッドサンドが銅棒に融着している部分の最低温度を融着点とした。
【0041】
(3)ベンド(撓み量)
日本鋳造技術協会試験法、SM−3に準拠して行った。レジンコーテッドサンドを用いて、厚さ×幅×長さが5×40×180mmの板状試験片を作成した。これを250℃で30秒間焼成し、その20秒後に荷重をかけて撓み量を読み取った。数値の大きいものほど造型後の変形が大きく、硬化が遅いことを示す。
【0042】
(4)ホルムアルデヒドガス発生量
レジンコーテッドサンド1gを300℃の燃焼管中で10分間加熱し、発生するガスを100mlの純水に捕集して、ホルムアルデヒドの水溶液の濃度をアセチルアセトン法にて定量した。
【0043】
実施例1〜4はいずれも、ノボラック型フェノール樹脂にエポキシ樹脂を所定量配合した本発明の組成物と、これを用いた本発明のレジンコーテッドサンドである。
実施例1〜3のレジンコーテッドサンドは、本発明の組成物と、通常よりも少量のヘキサメチレンテトラミンを配合したものであり、エポキシ樹脂を配合せず、同量のヘキサメチレンテトラミンを配合した比較例1と比べて、曲げ強度を低下させることなく硬化性を大幅に向上させることができた。また、エポキシ樹脂を配合せず、通常量のヘキサメチレンテトラミンを配合した比較例2と比べても、硬化性が向上しており、ホルムアルデヒドガスの発生量を低減させることができた。
また、実施例4のレジンコーテッドサンドは、本発明の組成物と、通常量のヘキサメチレンテトラミンを用いたものであるが、エポキシ樹脂を配合せず、同量のヘキサメチレンテトラミンを配合した比較例2と比べて、曲げ強度を低下させることなく硬化性を大幅に向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のシェルモールド用フェノール樹脂組成物を用いることにより、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を増やすことなく速硬化性を付与することができるので、鋳型の生産性向上と作業環境衛生の維持改善とを両立したシェルモールド用レジンコーテッドサンドを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック型フェノール樹脂と、エポキシ樹脂とを含有するシェルモールド用フェノール樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂の含有量は、前記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とするシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂の含有量は、前記ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である請求項1に記載のシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び/又はフェノールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1又は2に記載のシェルモールド用フェノール樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシェルモールド用ノボラック型フェノール樹脂組成物とヘキサメチレンテトラミンとを、耐火性粒状材料とともに混練してなることを特徴とするシェルモールド用レジンコーテッドサンド。

【公開番号】特開2006−272412(P2006−272412A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96722(P2005−96722)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】