説明

シヌクレイノパチーの治療

本発明は一般に、リソソーム蓄積症とは臨床的に診断されていない対象におけるシヌクレイノパチーを治療すること、ならびに関連した医薬の製造方法およびスクリーニング方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、対象におけるリソソーム蓄積症ではないシヌクレイノパチーを治療すること、ならびに関連したスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
遺伝学的、神経病理学的および生化学的な証拠から、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)およびその他を含むいくつかの神経変性障害の発症におけるα-シヌクレイン(αS)の定常状態存在量の増加ならびに異常なプロセシングの関与が指摘されている(Dawson et al., (2003) Science 302, 819-22(非特許文献1);Vila et al., (2004) Nat Med., 10 Suppl:S58-62(非特許文献2))。
【0003】
遺伝学的な証拠から、α-シヌクレインをコードする遺伝子における点突然変異は、早期発症性で重症の優性遺伝型のPDと関連していることが示されており(Krueger et al., (1997) Nat. Genet., 18, 106-108(非特許文献3);Zarranz et al., (2004) Ann. Neurol., 55(2):164-73(非特許文献4);Polymeropoulos et al., (1997) Science, 276:2045-7(非特許文献5))、このことは「有害な機能獲得(toxic-gain-of-function)」性の発生病理を暗示している。これらの突然変異は以下のアミノ酸変化を引き起こす:アラニン30→プロリン(A30P)、グルタミン46→リジン(E46K)およびアラニン53→トレオニン(A53T)。さらに、α-シヌクレインをコードするシヌクレインα(アミロイド前駆体の非A4成分)遺伝子(SNCA)の二重化および三重化は、複合性PD/DLB表現型を有する家族性パーキンソニズムと関連づけられており、このことは野生型(wt)遺伝子の発現割合の増大でさえも疾患を引き起こしうることを示している(Chartier-Harlin et al., (2004) Lancet, 364, 1167-9(非特許文献6);Singleton et al., (2003) Science, 302, 841(非特許文献7))。興味深いことに、SNCA遺伝子のプロモーター領域内部のある種の多型も、孤発性で遅発性のPDのリスク増大と関連づけられている(Pals et al., (2004) Ann. Neurol., 56, 591-5(非特許文献8);Maraganore et al., (2006) JAMA, 296, 661-70(非特許文献9))。
【0004】
神経病理学的な証拠から、剖検時に認められるPDおよびDLBの病理学的な顕著な特徴の1つである、レビー小体およびレビー神経突起と呼ばれるニューロン内封入体が、凝集したα-シヌクレインタンパク質を高レベルで含むことが指し示されている(Spillantini et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 95, 6469-73(非特許文献10);Baba et al., (1998) Am. J. Pathol., 152, 879-884(非特許文献11))。これらの凝集物は一般に、細胞によるα-シヌクレインタンパク質の処理の誤り(mis-handling)の結果とみなされている(おそらくは、過剰リン酸化(Anderson et al., (2006), J. Biol. Chem., 281, 29739-29752(非特許文献12))ならびに可溶性の毒性オリゴマーおよび不溶性細線維の双方としての細胞内蓄積(Sharon et al., (2001), P.N.A.S., 98, 9110-9115(非特許文献13))などの翻訳後イベントに関係している)。
【0005】
加えて、生化学的な証拠から、細胞または動物の系におけるα-シヌクレインの過剰発現は、さまざまな機序、中でも、過剰なドーパミン濃度および反応性酸素種の生成(Tabner et al., (2002), Free Radic. Biol. Med., 32(11):1076-83(非特許文献14);Fahn et al., (1992), Ann. Neurol., 32, 804-12(非特許文献15))ならびにミトコンドリア機能不全(Lee (2003), Antioxid. Redox Signal, 5:337-48(非特許文献16);Hashimoto et al., (2003), Neuromolecular Med., 4(1-2):21-36(非特許文献17))を含む機序を通じて、細胞ストレスおよび/または最終的な細胞死を引き起こしうることが示唆されている。PCT特許出願公開WO 07084737(特許文献1)は、リソソーム酵素の中枢神経系での関与が指摘されているリソソーム貯蔵障害を治療することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 07084737
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dawson et al., (2003) Science 302, 819-22
【非特許文献2】Vila et al., (2004) Nat Med., 10 Suppl:S58-62
【非特許文献3】Krueger et al., (1997) Nat. Genet., 18, 106-108
【非特許文献4】Zarranz et al., (2004) Ann. Neurol., 55(2):164-73
【非特許文献5】Polymeropoulos et al., (1997) Science, 276:2045-7
【非特許文献6】Chartier-Harlin et al., (2004) Lancet, 364, 1167-9
【非特許文献7】Singleton et al., (2003) Science, 302, 841
【非特許文献8】Pals et al., (2004) Ann. Neurol., 56, 591-5
【非特許文献9】Maraganore et al., (2006) JAMA, 296, 661-70
【非特許文献10】Spillantini et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 95, 6469-73
【非特許文献11】Baba et al., (1998) Am. J. Pathol., 152, 879-884
【非特許文献12】Anderson et al., (2006), J. Biol. Chem., 281, 29739-29752
【非特許文献13】Sharon et al., (2001), P.N.A.S., 98, 9110-9115
【非特許文献14】Tabner et al., (2002), Free Radic. Biol. Med., 32(11):1076-83
【非特許文献15】Fahn et al., (1992), Ann. Neurol., 32, 804-12
【非特許文献16】Lee (2003), Antioxid. Redox Signal, 5:337-48
【非特許文献17】Hashimoto et al., (2003), Neuromolecular Med., 4(1-2):21-36
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、少なくとも一部には、酸性β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)ポリペプチド、およびカテプシンファミリーのプロテアーゼの特定のメンバー(例えば、カテプシンD)を含むある種の薬剤が、中枢および/または末梢神経系の構成要素の内部でのα-シヌクレイン(αS)の細胞内レベルを低下させうるという発見に基づく。その結果として、本発明は、特に、既知の古典的リソソーム貯蔵障害を有しない対象におけるシヌクレイノパチー、例えば、原発性シヌクレイノパチーを、例えば、非プロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチド、例えばGBAポリペプチドなどの脂質代謝酵素、またはGBAポリペプチドをコードする核酸分子、またはGBA活性を活性化する薬剤、またはα-シヌクレイン低下活性(「シヌクレイナーゼ」活性)を有するプロテアーゼ型リソソーム酵素を投与することによって治療する、新たな方法を含む。
【0009】
一般に、プロテアーゼ型リソソーム酵素は、アスパルチルプロテアーゼ(カテプシンDまたはカテプシンEなど)およびシステイニルプロテアーゼ(例えば、カテプシンFおよびカテプシンLなど)のカテゴリーに分類される。このため、本発明はまた、特に、プロテアーゼ型リソソーム酵素、ならびにプロカテプシンD、E、FおよびLポリペプチド、またはカテプシンD、E、FもしくはLをコードする核酸分子、またはそれらのプロタンパク質ポリペプチドおよびプレプロタンパク質ポリペプチド形態をコードするものによって、シヌクレイノパチーを治療する、新たな方法も含む。
【0010】
加えて、非プロテアーゼ酵素、例えばGBAポリペプチド、またはカテプシンDポリペプチドなどのプロテアーゼ酵素を、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体のようなオートファジーを増強または誘導する薬剤とともに同時投与することもできる。
【0011】
さらに、プロサポシン(PS)ならびにその誘導体であるサポシンA(SA)、サポシンB(SB)、サポシンC(SC)およびサポシンD(SD)が、インビボでのGBAの活性において補因子としての役割を果たすという極めて重要な役割を考えれば、他の治療方法には、インビボでのα-シヌクレインの定常状態タンパク質レベルの低下を促すために、GBAポリペプチドを、PSポリペプチドおよび/もしくはSCポリペプチドといったGBA活性化ポリペプチドとともに投与すること;またはPSポリペプチドおよび/もしくはSCポリペプチドを単独で投与すること(内因性GBAを活性化または増強するために)が含まれる。
【0012】
一般に、本発明は、シヌクレイノパチー、例えば、原発性または続発性シヌクレイノパチーを有するが、リソソーム蓄積症とは臨床的に診断されていないか、または臨床的に診断することができない対象、例えば、ヒトまたは動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウシおよびブタといった飼育動物などを治療する方法を特徴とする。これらの方法は、対象に対して、以下のうち任意の1つまたは複数を、対象の中枢神経系もしくは末梢神経系もしくはその両方における、または対象のリソソーム区画におけるα-シヌクレインのレベルを低下させるのに有効な量で投与する段階を含む:リソソーム酵素ポリペプチド(例えば、GBAなどの非プロテアーゼ型ポリペプチド、またはカテプシンDなどのプロテアーゼ型酵素ポリペプチド)、1つまたは複数のリソソーム酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、リソソーム酵素活性化物質、およびリソソーム酵素活性化物質をコードするポリヌクレオチド。
【0013】
シヌクレイノパチーは、以下のうち任意の1つまたは複数でありうる:パーキンソン病(PD);孤発性または遺伝性のレビー小体型認知症(DLB);シヌクレイン沈着を伴う純粋自律神経不全症(PAF);多系統萎縮症(MSA);脳内鉄蓄積を伴う遺伝性神経変性;および高齢での偶発的レビー小体病。他の態様において、シヌクレイノパチーは以下のうち任意の1つまたは複数でありうる:レビー小体亜型のアルツハイマー病;ダウン症候群;進行性核上麻痺;レビー小体を伴う本態性振戦;認知症を伴う、または伴わない家族性パーキンソニズム;パーキンソニズムを伴う、または伴わないタウ遺伝子およびプログラニュリン遺伝子関連性の認知症;クロイツフェルト-ヤコブ病;ウシ海綿状脳症;続発性パーキンソン病;神経毒曝露に起因するパーキンソニズム;α-シヌクレイン沈着を伴う薬物誘発性パーキンソニズム;孤発性または遺伝性の脊髄小脳失調症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);および特発性急速眼球運動睡眠行動障害。
【0014】
これらの方法において、プロテアーゼ型リソソーム酵素は、カテプシンDポリペプチド、プロカテプシンDポリペプチド、カテプシンEポリペプチドおよびプロカテプシンEポリペプチドなどのアスパルチルプロテアーゼポリペプチド、またはカテプシンFポリペプチド、プロカテプシンFポリペプチド、カテプシンLポリペプチドおよびプロカテプシンLポリペプチドなどのシステイニルプロテアーゼポリペプチドでありうる。
【0015】
ある態様において、リソソーム酵素活性化物質は、イソファゴミン(IFG)などのGBAポリペプチド活性化物質、またはプロサポシンポリペプチド、サポシンAポリペプチド、サポシンBポリペプチド、サポシンCポリペプチドおよびサポシンDポリペプチドのうち任意の1つもしくは複数などの活性化ポリペプチドであるか、またはそれらを含む。当然ながら、プロサポシンポリペプチド、サポシンAポリペプチド、サポシンBポリペプチド、サポシンCポリペプチドおよびサポシンDポリペプチドのうち任意の1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを用いることもできる。
【0016】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載したような、およびα-シヌクレインのオートファジーを増強する1つまたは複数の薬剤をさらに投与することによる、シヌクレイノパチーの治療方法を特徴とする。例えば、薬剤はmTOR阻害剤、ラパマイシン、ラパマイシン類似体、エベロリムス、シクロスポリン、FK506、hsc70、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミンまたはグリセロールでありうる、またはそれらを含みうる。
【0017】
本明細書に記載した方法において、薬剤は小分子、大分子、ペプチド、抗体、核酸、またはそれらの生物活性断片でありうる。
【0018】
もう1つの局面において、本発明は、周知の製造方法を用いて、シヌクレイノパチーの治療のための医薬を調製する方法における、本明細書に記載したような、リソソーム酵素ポリペプチド、1つまたは複数のリソソーム酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、リソソーム酵素活性化物質、およびリソソーム酵素活性化物質をコードするポリヌクレオチドのうち任意の1つまたは複数の使用を含む。
【0019】
「ポリペプチド」とは、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)とは関係なく、任意のアミノ酸の鎖のことを意味し、このためこれにはタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが含まれる。
【0020】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、インビボでそれに付随する成分から分離されたポリペプチドのことを意味する。ポリペプチドは、自然下でそれに付随するタンパク質および天然に存在する有機分子を除いた割合が重量比で少なくとも60%であれば実質的に純粋である。調製物は、重量比で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%が所望のポリペプチドであることが好ましい。
【0021】
「GBAポリペプチド」とは、本明細書に記載したようなドーパミン作動性細胞モデルにおけるαSのレベルを低下させる点で、対応する野生型GBAの生物活性の少なくとも50パーセントを有する、任意のGBAタンパク質またはポリペプチドのことである。
【0022】
カテプシンDポリペプチドなどの「カテプシンポリペプチド」とは、本明細書に記載したようなドーパミン作動性細胞モデルにおけるαSのレベルを低下させる点で、対応する野生型カテプシンの生物活性の少なくとも50パーセントを有する、任意のカテプシンタンパク質またはポリペプチドのことである。
【0023】
「α-シヌクレイン」タンパク質またはポリペプチド(αSまたはαSタンパク質)は、本明細書で用いる場合、単一の単量体タンパク質またはポリペプチドのほか、オリゴマーの形態にある、例えば二量体もしくは三量体の形態にある、または脂質結合複合体もしくは脂質を含まない形態にある、または凝集物の形態にある、αSタンパク質およびポリペプチドを含み、これらの形態はいずれも可溶性であっても不溶性であってもよい。この用語はまた、他の分子との複合体中に認められるαSタンパク質も含む。
【0024】
もう1つの局面において、本発明は、シヌクレイノパチーを治療するための候補化合物を同定するための方法であって、(a)α-シヌクレイン複合体の定量を容易にするモデル系、例えば、本明細書に記載したようなドーパミン作動性細胞モデルなどの細胞系を入手する段階;(b)モデル系を被験化合物とインキュベーションのために接触させる段階;ならびに(c)被験化合物の存在下および非存在下におけるα-シヌクレインのレベルを比較する段階であって、被験化合物の存在下におけるα-シヌクレイン複合体のレベルの低下によって被験化合物がシヌクレイノパチーを治療するための候補化合物であることが示される段階、を含む方法を特徴とする。いくつかの態様において、α-シヌクレインタンパク質の厳密な定量は、例えば本明細書に記載したような、サンドイッチ型の特異的かつ高感度のELISAの採用によって達成される。α-シヌクレインモデル系は例えば、タンパク質発現細胞または動物モデルでありうる。
【0025】
本発明はまた、シヌクレイノパチーを治療する方法であって、神経細胞および非神経細胞の内部でのグルコシルセラミドおよびグルコシルセラミド含有スフィンゴ糖脂質の数または濃度を、タンパク質、ペプチド配列、酵素、抗体、天然脂質、半合成脂質および合成脂質ならびにそれらの誘導体によるグルコシルセラミドおよびグリコシルセラミド含有スフィンゴ糖脂質のターゲティングによって低下させる方法も特徴とする。例えば、グルコシルセラミドおよびグリコシルセラミド含有スフィンゴ糖脂質の数または濃度は、グルコシルセラミドおよびグルコシルセラミド含有スフィンゴ糖脂質の酵素的または非酵素的加水分解によって、神経および非神経細胞の内部で低下させることができる。そのような方法は、野生型形態、または結合能力はあるが触媒的には不活性である突然変異型形態のいずれかにあるGBAによって触媒させることができる。これらの方法において、プロサポシンおよび/またはその誘導体、例えば本明細書に記載したサポシンCなどを投与することもできる。いくつかの態様において、GBAなどの所望のタンパク質またはポリペプチドは、その酵素またはその誘導体をコードするポリヌクレオチドの発現によって得られる。
【0026】
これらの方法において、GBAの天然の生物機能を向上させる、薬剤、プロサポシン、サポシンA、サポシンB、サポシンC、サポシンD、それらに由来するペプチド、小分子もしくは大分子、抗体、抗体の断片、または小型もしくは大型ポリヌクレオチド、例えばGBA活性化物質は、αSタンパク質のレベルを低下させるのに有効な量で中枢および/または末梢神経系に送達される。
【0027】
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解しているものと同じ意味を持つ。本発明の実施または検討において本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は以下に説明するものである。本明細書で言及したすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。対立する場合には、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は例示のみに過ぎず、限定を意図したものではない。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ウエスタンブロットを図示したものであり、インビトロでのヒト脳ガングリオシドとα-シヌクレインとの間での安定な19〜20kDa複合体(αS/G)の時間依存的な形成を示している。
【図2A】指定されたレベルのα-シヌクレインcDNAプラスミドによる一過性トランスフェクションを受けたMES23.5細胞で発現されたα-シヌクレインタンパク質のウエスタンブロットを図示したものである。
【図2B】MES23.5-syn細胞における細胞内α-シヌクレインタンパク質レベルに対する、GBA cDNAトランスフェクションの、プロサポシンcDNAトランスフェクションの有無の下での影響を示している、ウエスタンブロットを図示したものである。後者のタンパク質のレベルはウエスタンブロットの下方パネルに示されている。
【図2C】プロサポシンの存在下および非存在下で、共トランスフェクトされたGBA DNAの量に依存してMES-syn細胞において検出された細胞内α-シヌクレインタンパク質レベルを示している、ELISA測定の棒グラフである。
【図3A】OD吸光度の読み取り(y軸)によってモニターした、種々の量の組換えα-シヌクレインタンパク質(x軸)を特異的に検出するサンドイッチELISAの成績のグラフである。
【図3B】MES23.5-syn細胞において、これらの細胞にトランスフェクトされた種々の量のSNCA(シヌクレイン、α(アミロイド前駆体の非A4成分))cDNA(x軸)の存在下で検出された細胞内α-シヌクレインタンパク質レベルを示している、ELISA測定の棒グラフであり、溶解物は1:200から1:4,000まで系列様式で希釈した。
【図3C】サンドイッチELISAによって測定し、図3Aおよび図3Bで得られたデータから外挿した、所定の量のSCNA cDNAのトランスフェクト後の細胞内α-シヌクレインタンパク質の濃度の回帰分析である。
【図3D】乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイおよびMTTアッセイの結果を示している棒グラフであり、トランスフェクションから24時間後のα-シヌクレインタンパク質を発現するMES-syn細胞の細胞生存度が完全であることが確かめられている。
【図4】5回の別々の実験によるサンドイッチELISAの結果を図示したものであり、パーキンソン病およびレビー小体型認知症と最近関連づけられたいくつかのミスセンス突然変異の1つを保有するか、またはGBA活性部位に対して有害な突然変異を保有する突然変異型GBAポリペプチドの発現の後の、MES23.5細胞における細胞内α-シヌクレインタンパク質レベルの20〜270パーセント超の上昇を示している。α-シヌクレインタンパク質レベルは、異所性GBAを含まない空ベクターcDNAのみをトランスフェクトしたMES-syn細胞における濃度を基準として相対的に表されている。
【図5】MES23.5-syn細胞(MES-αS)において一緒に発現させた場合の、ヒトカテプシンDの、ヒトおよびラットα-シヌクレインタンパク質レベル低下活性に関するサンドイッチELISA測定の棒グラフである。
【図6】MES23.5-syn細胞(MES-αS)において一緒に発現させた場合の、ヒトカテプシンDの用量依存的なα-シヌクレインタンパク質レベル低下活性を示している、ウエスタンブロットを図示したものである。
【図7】MES23.5-syn細胞(MES-αS)において一緒に発現させた場合の、カテプシンDのヒトα-シヌクレインタンパク質レベル低下活性に関するサンドイッチELISA測定の棒グラフである。野生型α-シヌクレインタンパク質のほかに、ミスセンス突然変異を保有し、家族型の本疾患および剖検で確定されたパーキンソン病と関連づけられているいくつかの突然変異型α-シヌクレインアイソフォームもカテプシンDによって減少させうることに注目されたい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
一般に、本発明は、リソソーム貯蔵障害ではないシヌクレイノパチーを有するヒトまたは動物対象、例えば原発性(primary)(または不変性(invariable))シヌクレイノパチーを有する対象における細胞内のαSのレベルを低下させる方法に関する。これらの方法は、例えば、GBAポリペプチドなどの非プロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチド、またはカテプシンDポリペプチドなどのプロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードする核酸分子を、単独で、またはオートファジーを増強もしくは誘導する薬剤、例えばラパマイシンまたはラパマイシン類似体などと組み合わせて投与する段階を含む。加えて、インビボでのαSの定常状態タンパク質レベルの低下を促すために、他のGBA活性化物質、例えばプロサポシンポリペプチドおよび/もしくはサポシンCポリペプチドなどを投与することもでき、またはプロサポシンポリペプチドおよび/もしくはサポシンCポリペプチドを単独で投与すること(内因性GBAを活性化または増強するために)もできる。
【0031】
したがって、本発明は、リソソームおよび/または細胞質の内部でのプロセシングを増強することによって、ならびに、いくつかの態様においては、リソソームによって取り込まれるαSの量(オートファジー)を増強することによって、α-シヌクレイン(αS)の生理的分解をモジュレートすることを伴う。いかなる動作理論にも拘束されることは望まないが、αS凝集物の分解性プロセシングは、定常状態レベルで機能する系である。質量作用の法則をαSタンパク質、オリゴマー形態、凝集物および/または複合体の定常状態の分解性プロセシングに対して適用することにより、その出発物質(educt)の存在量を増加させることによって分解プロセスをその最終生成物の側に向けてモジュレートすることができる。経路の成分反応を変更することにより、全体的なプロセシングをより高度な生成物レベルの側に推し進めることができる。このため、リソソーム内へのαSの投入を増やすことにより、または分解効率それ自体を向上させることにより、αSの加水分解およびそれに続くプロセシングをより高度の生成物レベルへと推し進めることができる。経路のオートファジー成分およびリソソーム成分の両方を増加させることで、αSタンパク質損傷からの防御の増大を導くことができ、そのような組み合わせは相加的効果を上回るものを達成することができる。
【0032】
本明細書に記載したいくつかの態様は、例えば、GBAおよび/またはプロサポシン/サポシンCの活性またはレベルを高める1つまたは複数の薬剤を投与することによって、リソソーム蓄積症ではないシヌクレイノパチー性障害を治療する、またはその進行もしくは発症を遅らせる方法である。いくつかの態様において、薬剤は、GBAおよび/もしくはプロサポシン/サポシンCポリペプチド、またはそれらの活性断片、またはそのようなポリペプチドもしくは活性断片をコードする核酸でありうる。いくつかの態様において、薬剤は、結合能力はあるが触媒的には不活性な形態のGBA、またはそれをコードする核酸分子である。
【0033】
本明細書に記載されるまた別の態様は、例えば、カテプシンDもしくはカテプシンFおよび/またはプレプロカテプシンDもしくはプレプロカテプシンFの活性またはレベルを高める1つまたは複数の薬剤を投与することによって、シヌクレイノパチー性障害を治療する、またはその進行もしくは発症を遅らせるための方法である。いくつかの態様において、薬剤は、GBAおよび/もしくはプロサポシン/サポシンC/カテプシンD/カテプシンFポリペプチド、またはそれらの活性断片、またはそのようなポリペプチドもしくは活性断片をコードする核酸でありうる。いくつかの態様において、薬剤は、結合能力はあるが触媒的には不活性な形態のGBA、カテプシンDもしくはカテプシンF、またはそれらをコードする核酸分子である。
【0034】
シヌクレイノパチー性障害を治療する方法
シヌクレイノパチーという用語は、本明細書において、ニューロンおよびグリアの選択的集団の細胞区画の内部における、α-シヌクレイン(αS)タンパク質の可溶性非線維性変異体、可溶性オリゴマー性アイソフォーム、不溶性非線維性変異体、複合体、および不溶性線維性凝集物のうち任意の1つまたは複数の、上昇したレベルでの、例えば定常状態レベルでの存在によって特徴づけられる、一群の神経変性障害を命名するために用いられる。したがって、このαS定常状態レベルは、SNCA遺伝子産物のすべての可溶性形態ならびに不溶性および中間(準安定)形態を含むと解釈される。
【0035】
これらの障害には、「不変性」(または「原発性」)シヌクレイノパチーとしてグループ化される以下のいずれかが含まれる(Schlossmacher MG. a-synuclein and synucleinopathies. The Dementias 2 Blue Books of Practical Neurology; Editors: Growdon JH & Rossor MN. Butterworth Heinemann, Inc., Oxford. 2007; Chapter 8: pp 184-213):パーキンソン病(PD)、例えば、孤発性パーキンソン病/パーキンソニズムおよび家族性パーキンソン病/パーキンソニズム;孤発性または遺伝性レビー小体型認知症(DLB)(びまん性レビー小体病としても知られる);シヌクレイン沈着を伴う純粋自律神経不全症(PAF);多系統萎縮症(MSA)(小脳性、パーキンソン病様または混合型);脳内鉄蓄積を伴う遺伝性神経変性(ハラーフォルデン-シュパッツ病またはパントテン酸キナーゼ2関連神経変性としても知られる);および高齢での偶発的レビー小体病。
【0036】
さらに、「可変性(variable)」(または「続発性(secondary)」)シヌクレイノパチーが同定されており、ここで、α-シヌクレイン代謝の調節不全が続発性イベントであること(神経系におけるタンパク質の存在量から考えて)が認識されているが、それにもかかわらず、これは原発性疾患の経過、浸透度、発病年齢、重症度および表現度に顕著に寄与する。可変性シヌクレイノパチーを伴う障害(Schlossmacher MG. a-synuclein and synucleinopathies. The Dementias 2 Blue Books of Practical Neurology; Editors: Growdon JH & Rossor MN. Butterworth Heinemann, Inc., Oxford. 2007; Chapter 8: pp 184-213)には、レビー小体亜型のアルツハイマー病;ダウン症候群;進行性核上麻痺;レビー小体を伴う本態性振戦;遺伝子突然変異がまだ同定されていない、突然変異性の遺伝子および座位に起因する、認知症を伴うか、または伴わない家族性パーキンソニズム;クロイツフェルト-ヤコブ病、およびウシ海綿状脳症(狂牛病)などの関連したプリオン病;続発性パーキンソン病/神経毒曝露に起因するパーキンソニズム/α-シヌクレイン沈着を伴う薬物誘発性パーキンソニズム;孤発性または遺伝性脊髄小脳失調症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);特発性急速眼球運動睡眠行動障害;ならびに原発性疾患プロセスが随伴する哺乳動物における中枢性および/または末梢性シヌクレイン蓄積と関連する他の病状が非限定的に含まれる。
【0037】
臨床的に、これらの関連した障害はすべて、α-シヌクレイン異常の分布に依存した、運動、認知、行動および/または自律神経機能の慢性かつ進行性の低下によって特徴づけられる。
【0038】
シヌクレイノパチーは、疾患症状を伴うこともあれば伴わないこともある。これはまた、正常な加齢の産物のこともある。例えば、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳または80歳以上の人では、例えば凝集物の形態にあるそのようなαSタンパク質が、明らかな病態、症状または疾患状態を伴うことなく蓄積することがある。この病状は偶発的レビー小体病(上記参照)と呼ばれ、この病状を伴う人々ではPD/パーキンソニズムのリスクが相対的に高い。
【0039】
一般に、本明細書で想定している各種のシヌクレイノパチーを有する対象は、ゴーシェ病またはテイ-サックス病といった、臨床的に診断された(または臨床的に診断可能でない)原発性リソソーム貯蔵障害(LSD)を有しない;これらのLSD症候群はしばしば、常染色体劣性遺伝パターンを示す。しかし、通常であれば古典的LSD表現型と関連づけられる遺伝子の単一アレル突然変異を有する対象がまた、全身性LSDの証拠を伴わずに、シヌクレイノパチーを発症し、その帰結(PD/パーキンソニズムまたはレビー小体型認知症など)に罹患することもある(Eblan et al., N. Engl. J. Med., 2005)。
【0040】
LSDは、リソソーム酵素をコードする遺伝子の両方のアレル中の突然変異によって一般的に引き起こされる、さまざまなリソソーム加水分解酵素の遺伝的欠陥をその多くが伴う、40種を上回る遺伝的障害を含む一群の代謝障害である。LSDの顕著な特徴は、問題となるリソソーム加水分解酵素の酵素的活性の90パーセント(またはそれ以上)の損失、およびその結果として生じるリソソーム内部での代謝産物の異常蓄積であり、これは核周部における多数の拡張リソソームの形成を招く。
【0041】
本明細書に記載した方法は、そのリソソーム酵素遺伝子、例えばGBA遺伝子などに突然変異を有しない者(すなわち、公知の単一遺伝子の異常を有しない孤発性パーキンソン病患者)を含む、原発性または続発性シヌクレイノパチーを有するすべての人々を治療するために用いることができる。これらは、加齢/中毒性傷害(toxic insult)/頭部外傷/変更(modifier)遺伝子の影響または他の未知の原因が一体となって働いて疾患を引き起こすか、または促進している患者である(Klein and Schlossmacher, Neurology, 2007, 69(22):2093-104)。
【0042】
また、本明細書に記載した新たな方法を、リソソーム酵素遺伝子の1つまたは複数における、例えばGBA遺伝子におけるヘテロ接合性(すなわち、2つのアレルではなく単一のアレルの)突然変異を有するシヌクレイノパチー患者の部分集団を治療するために用いることもできる。これらの対象は、典型的なLSDには罹患していない(その理由は、残っている1つの健常アレルから十分なGBAを依然として十分に発現するため、彼らが90パーセントまたはそれを上回る酵素欠乏症は有しないためである)が、彼らはしばしば原発性シヌクレイノパチーには罹患する。現在入手可能なデータからは、GBAにおけるこのヘテロ接合性突然変異がパーキンソン病(および関連した障害)の危険因子として、および神経系における原発性シヌクレイノパチーの発症のリスクアレル(risk allele)としての役割を果たすことを示唆する(Clark et al., Neurology, 2007, 69(12):1270-7)。興味深いことに、GBA遺伝子の両方のコピー(アレル)が突然変異していれば(例えば、GBAのN370S、L444P、K198TおよびR329C変異体の保有者において)、ゴーシェ病の古典的なLSDの特徴を有する患者サブグループは続発性シヌクレイノパチーを発症すると考えられる(Lwin et al., Mol. Genet. Metab., 2004, 81(1):70-3)。
【0043】
特に、既知のGBA突然変異に関して遺伝子型判定を受けている人々(例えば、ゴーシェ病の家族歴が理由で遺伝子型判定を既に受けている者)に対してパーキンソン病の発症を予防するために治療を予防的に適用すること、または既知のGBA突然変異を有していてシヌクレイノパチー性障害を既に発症している人々に対して治療的に適用することができる。したがって、患者または対象をリソソーム酵素遺伝子、例えばGBA遺伝子における突然変異に関して遺伝子型判定する段階は、本明細書に記載した治療方法における第1の段階であることができる。突然変異に関してヘテロ接合体である患者はこれらの新たな方法による治療の候補である。
【0044】
非プロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチドの投与または活性化
これらの新たな方法は、非プロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチド、例えばGBAポリペプチドを、直接的に、またはGBAポリペプチドをコードする核酸分子を投与することによって、それらを必要とする患者に対して、例えばリソソーム貯蔵障害ではないシヌクレイノパチーと診断された対象に投与する段階を含む。
【0045】
GBAは、グルコシダーゼ、β、酸性;酸性β-グルコシダーゼ;酸性ベータグルコシダーゼ;グルコセレブロシダーゼ;グルコシルセラミダーゼ;およびGBAPとしても知られている。この遺伝子は通常、糖脂質代謝における中間体であるグリコシルセラミド(グルコセレブロシドとしても知られる)のβ-グルコシド結合を切断するリソソーム膜タンパク質をコードする。これはまた、グルコシルスフィンゴシンを二次基質として切断してグルコースおよびスフィンゴシンを生成することもできる(Sidransky, Mol Genet Met, 2004, pp6-15)。この遺伝子における突然変異は、グルコセレブロシドおよびグルコシルスフィンゴシンの蓄積によって特徴づけられるリソソーム蓄積症の1つであるゴーシェ病を引き起こす。選択的スプライシングは結果として、同じタンパク質をコードする複数の転写物変異体を生じさせる。5種のmRNA変異体(これらは5' UTRに違いがある)があり、そのうち最も長いものはGenBankデータベースのアクセッション番号NM_001005749.1(mRNA)およびNP_001005749.1(アミノ酸)に示されている。GBAに関する情報は、Entrez GeneデータベースのGeneID:2629に見いだすことができる。
【0046】
本方法はまた、プロサポシン(PS)および/またはその誘導体、サポシンA(SA)、サポシンB(SB)、サポシンC(SC)およびサポシンD(SD)などのGBA活性化ポリペプチドを投与することによって、投与されたGBAポリペプチドまたは任意の内因性GBAの活性化を増大させる段階を含むこともできる。
【0047】
プロサポシン遺伝子は、神経栄養活性を有する完全長タンパク質として分泌されるか、またはエンドソーム/リソソーム区画内でカテプシンDおよび他のプロテアーゼによって4種のサポシンA、B、CおよびDへとタンパク質分解的にプロセシングされる、高度に保存された糖タンパク質をコードする(Leonova et al., J. Biol. Chem, 1996, 271:17312-17320;Hiraiwa et al., Arch. Biochem. Biophys.,1997, 341:17-24)。サポシンA〜Dは主としてリソソーム区画に局在し、そこでそれらは短いオリゴ糖基を有するスフィンゴ糖脂質の異化を促進する。サポシンCは、低pH条件下でGBAタンパク質をリソソーム膜の内側に係留させ、それ故にGBAに正しい基質相互作用のために適正にフォールディングさせる働きをする(Salvioli et al., 2000, FEBS. Lett. 472:17-21)。さらに、サポシンCは、GBAタンパク質をリソソームプロテアーゼによるタンパク質加水分解性分解から防御する(Sun et al., J. Biol. Chem., 2003, 278:31918-31923)。このタンパク質の生物学的な重要性は、プロサポシン遺伝子におけるヌル突然変異および/またはその遺伝子のサポシンC領域における点突然変異が、野生型GBAの存在にもかかわらず臨床的なゴーシェ病を導くことができるという事実によって強く示されている(Pamplos et al., Acta. Neuropathol., 1999, 97:91-97;Tylki-Szymanska, 2007, Clin. Genet., 72:538-542;Rafi et al., 1993, Somat. Cell Mol. Genet., 19:1-7)。
【0048】
さらに、最も頻度の高いGBA突然変異であるN370Sのインビボでの低活性は、それがサポシンCおよびアニオン性リン脂質と相互作用することができない理由の説明になりうる(Salvioli et al., Biochem. J., 2005, 390:95-103)。プロサポシンの選択的スプライシングは結果として、異なるアイソフォームをコードする複数の転写変異体を生じさせる。プロサポシン(変異型ゴーシェ病および変異型異染性白質ジストロフィー)は、Entre GeneデータベースのGeneID:5660に記載されている。そのアイソフォームの配列は、GenBankで以下の通りに入手することができる:プロサポシンアイソフォームaプレプロタンパク質:NM_002778.2(mRNA)およびNP_002769.1(アミノ酸);プロサポシンアイソフォームbプレプロタンパク質:NM_001042465.1(mRNA)およびNP_001035930.1(アミノ酸);ならびにプロサポシンアイソフォームcプレプロタンパク質NM_001042466.1(アミノ酸)およびNP_001035931.1 042465.1(mRNA)。
【0049】
GBAポリペプチド、およびGBAをコードする核酸分子、ならびにGBA活性化ポリペプチドおよび対応する核酸分子はいずれも、本明細書に記載した手法を含む公知の手法を用いて投与することができる。例えば、GBAポリペプチドをコードする核酸分子を、本明細書に記載したような遺伝子治療を用いて投与することができる。
【0050】
プロテアーゼ型リソソーム酵素ポリペプチドの投与
1つの代替的な方法において、LSDではないシヌクレイノパチーを有すると診断された対象は、リソソームプロテアーゼポリペプチド、例えばカテプシンDポリペプチドなどによって治療することができる。そのようなプロテアーゼは、直接的に、または所望のプロテアーゼをコードする核酸分子を投与することによって投与することができる。
【0051】
一般に、プロテアーゼ型リソソーム酵素は、カテプシンD(またはカテプシンE)などのアスパルチルプロテアーゼ、およびシステイニルプロテアーゼ(例えば、カテプシンFおよびカテプシンL)のカテゴリーに分類される。このため、本発明は、特に、プロカテプシンDもしくはプロカテプシンEポリペプチドと関係のあるプロテアーゼ型リソソーム酵素、または代替的にはプロカテプシンFもしくはプロカテプシンLポリペプチドと関係のあるプロテアーゼ型リソソーム酵素、またはカテプシンD、カテプシンE、カテプシンFもしくはカテプシンLをコードする核酸分子、またはそれらのプレプロタンパク質ポリペプチド形態をコードする核酸分子によってシヌクレイノパチーを治療する、新たな方法も含む。
【0052】
カテプシンファミリーに属するプロテアーゼにはおよそ12種のメンバーが含まれ、それらはそれらの構造およびそれらが切断するタンパク質によって区別される。メンバーのほとんどは、リソソーム中で認められる低pHで活性化される。このため、このファミリーの活性はほとんどすべてそれらのオルガネラ内にある。カテプシンD遺伝子(CTSD)は、いずれも単一のタンパク質前駆体から生成されるジスルフィド結合した重鎖および軽鎖の二量体で構成されるリソソームアスパルチルプロテアーゼをコードする。ペプチダーゼC1ファミリーのメンバーであるこのプロテイナーゼは、ペプシンAのそれと類似しているがそれよりも範囲の狭い特異性を有する。そのヒト遺伝子の配列情報は、GenBankでヒト(Homo sapiens)カテプシンD(CTSD)、mRNA:NM_001909として入手可能である。
【0053】
カテプシンファミリーの中で(カテプシンDのほかに)公知である他の唯一のメンバーはアスパルチルプロテアーゼ活性を有しており、それはカテプシンEである。それは2種類のバリアントへと転写される。ヒトバリアントに関する配列情報は、GenBankでヒトカテプシンE(CTSE)、mRNA:NM_001910.2およびNM_148964.1として入手可能である。
【0054】
カテプシンファミリーの中では、他のさまざまなメンバーがシステインプロテアーゼ活性を有しており、これには例えばカテプシンC、L、FおよびWがある。これらの多くのシステインプロテアーゼカテプシンのうち、F酵素およびW酵素は、それらの染色体上の位置、配列相同性およびスプライシングパターンに基づいて別個のサブグループを形成する(Wex et al., 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun., 259:401-407)。カテプシンFは脳のほか、心臓、骨格筋および他の組織でも発現される(Wang et al., 1998, J. Biol. Chem., 273:32000-32008)。マウスにおけるカテプシンF遺伝子のノックアウトは、グリオーシス、ニューロン損失および自己蛍光性顆粒の蓄積を伴う遅発性の神経疾患を招き(Tang et al., 2006, Mol. Cell Biol., 26:2309-2316)、これはヒトの成人発症型神経セロイドリポフスチン症のモデルになると考えられている。そのヒト遺伝子の配列情報は、GenBankでヒトカテプシンE(CTSE)、mRNA:NM_003793.3として入手可能である。
【0055】
カテプシンDまたはFポリペプチド、およびカテプシンDまたはFをコードする核酸分子はいずれも、本明細書に記載した手法を含む公知の手法を用いて投与することができる。例えば、カテプシンDをコードする核酸分子を、本明細書に記載したような遺伝子治療を用いて投与することができる。
【0056】
他のリソソーム酵素ポリペプチドの投与
リソソーム内部でのαSの分解プロセシングを増強するために投与することのできる他のポリペプチドの例には、アルパルチルグルコサミニダーゼ;α-ガラクトシダーゼA;パルミトイルプロテインチオエステラーゼ;トリペプチジルペプチダーゼ;リソソーム膜貫通タンパク質;システイン輸送体;酸性セラミダーゼ;酸性α-L-フコシダーゼ;保護(Protective)タンパク質/カテプシンA;酸性β-ガラクトシダーゼ;イズロン酸-2-スルファターゼ;α-L-イズロニダーゼ;ガラクトセレブロシダーゼ;酸性α-マンノシダーゼ;酸性β-マンノシダーゼ;アリールスルファターゼB;アリールスルファターゼA;N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸;酸性β-ガラクトシダーゼ;N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ;酸性スフィンゴミエリナーゼ;NPC-1;α-グルコシダーゼ;β-ヘキソースアミニダーゼB;ヘパランN-スルファターゼ;α-N-アセチルグルコサミニダーゼ;アセチル-CoA:α-グルコサミニダーゼ;N-アセチルグルコサミン-6-硫酸;α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ;α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ;α-ノイラミニダーゼ;β-グルクロニダーゼ;β-ヘキソースアミニダーゼA;グルコセレブロシダーゼ;ユビキチンC末端加水分解酵素-L1;および酸性リパーゼが含まれる。
【0057】
タンパク質およびポリペプチドは、シヌクレインまたはシヌクレイン凝集物の分解を促進するリソソーム性分解酵素または非リソソーム性タンパク質のいずれであってもよい。これらのタンパク質およびそれらのコード配列は当技術分野で周知である。典型的にはヒト型のタンパク質およびそれらのコード配列が用いられると考えられるが、動物モデルにおける研究では動物オルソログが望ましい可能性がある。そのような酵素の1つまたは複数を用いることができる。
【0058】
α-シヌクレインのオートファジーの増強および誘導
本発明のもう1つの局面においては、相加的なものを上回る治療効果を達成するために、オートファジーを増強および/または誘導する薬剤、例えばラパマイシンまたはラパマイシン類似体などを、リソソーム酵素、例えば、GBAポリペプチド、またはカテプシンDポリペプチドなどの非GBA型リソソームプロテアーゼとともに同時投与することができる。
【0059】
オートファジーとは、リソソーム機構を通じての細胞自身の成分の分解を伴う異化プロセスのことである。これは、細胞の成長、発生およびホメオスタシスにおいて標準的な役割を果たす厳密に調節されるプロセスであり、細胞産物の合成、分解およびその後の再利用の間での平衡を維持する一助となる。これは、飢餓状態にある細胞が不要なプロセスからより必須なプロセスへと栄養分を再配分する主要な機序である。
【0060】
種々のオートファジープロセスが存在し、それらはすべてリソソームを介した細胞内成分の分解を共通に有する。オートファジーの最もよく知られた機序は、細胞の標的領域の周りでの、その内容物を細胞質の残りの部分と隔てる膜の形成を伴う。その結果生じた小胞は続いてリソソームと融合し、引き続いてその内容物を分解する。
【0061】
オートファジーは大きく以下の3つのタイプに分けることができる:マクロオートファジー、ミクロオートファジーおよびシャペロン介在性オートファジー:(i)マクロオートファジーは、サイトゾル成分(タンパク質および/またはオルガネラ全体)を取り込むためにそれ自身でシーリングする新規形成膜の形成を伴い、それはリソソームとの融合後に分解される;(ii)ミクロオートファジーはリソソーム内への材料の直接的な陥入を伴う;および(iii)シャペロン介在性オートファジー(CMA)は、特定のペプチド配列による目印が付けられた特定のサイトゾルタンパク質の分解を伴う。CMAは分解される物に関して非常に選択的であり、ある特定のタンパク質のみを分解し、オルガネラは分解しない。CMAは、肝臓、腎臓などの組織、および多くのタイプの培養細胞において、サイトゾルタンパク質のおよそ30%の分解を担っている。
【0062】
シャペロン分子は、印が付けられたタンパク質と結合して、受容体複合体を介してそれをリソソームへと輸送する。CMA中では、コンセンサスペプチド配列を有するタンパク質のみがシャペロンの結合によって認識される。このCMA基質/シャペロン複合体は続いてリソソームの方に移動し、そこでCMA受容体リソソームに付随する膜タンパク質が複合体を認識する;このタンパク質はフォールディングされておらず、リソソーム膜を、その内面にある別のタンパク質による補助を受けて通って移行する。可溶性野生型α-シヌクレインはこの機序によって分解されることが報告されている(Cuervo et al. (2004), Science, 305:1292)。
【0063】
オートファジーは日常的な正常な細胞増殖および発生の一部であり、哺乳動物のラパマイシン標的(mTOR)は重要な調節的役割を果たす。飢餓状態はmTOR活性を阻害して、初期G1相での細胞停止、タンパク質合成の阻害、栄養分輸送体の代謝回転、転写の変化およびオートファジーを含むさまざまな細胞応答を誘発する。ラパマイシンは、mTOR活性の阻害のためのよく知られた薬剤である。当技術分野で公知の任意のラパマイシン類似体またはmTOR阻害剤を、本明細書に記載した方法のために用いることができる。例えば、エベロリムス、シクロスポリンおよびFK506を用いること、またはそれらのオートファジー刺激能力を検査することができる。そのような類似体および阻害剤の全てがラパマイシンのオートファジー刺激活性を有するわけではない可能性があるが、この活性はこれらの化合物の間で容易に決定することができる。オートファジーを促進する薬剤には、シャペロンタンパク質、および基質と結合してそれをリソソームに移す化合物が含まれる。オートファジーを刺激しうるその他の化合物には、hsc70、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミンおよびグリセロールが含まれる。そのような薬剤の1つまたは複数を、本明細書に記載したオートファジーを増強する方法に用いることができる。
【0064】
シヌクレインの分解またはシヌクレイン複合体の脱凝集の一助となる任意のリソソーム酵素を、単独で、または他のリソソーム酵素もしくは薬剤と組み合わせて、本発明のために用いることができる。
【0065】
投与の方法
一般に、本明細書に記載した方法は、本明細書に記載した治療用化合物の治療的有効量を、そのような治療を必要とする、またはそのような治療を必要とすると判定された対象に対して投与する段階を含む。
【0066】
この文脈で用いる場合、「治療する」とは、対象における、シヌクレイノパチー性障害の少なくとも1つの症状を緩和すること、および/またはαSタンパク質のレベルの測定可能な低下を引き起こすことを意味する。同様に、シヌクレイノパチーの治療のための本明細書に記載した組成物の「治療的有効量」または「有効量」の投与は、αSタンパク質のレベルの低下をもたらす、および/またはシヌクレイノパチー性障害の1つまたは複数の症状の改善をもたらすと考えられる。この量は、疾患の発現または疾患症状を抑制するため、例えば予防するために必要な量である「予防的有効量」と同じでも異なってもよい。
【0067】
有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬で投与することができる。組成物の治療的有効量は選択される組成物に依存する。組成物は、1日に1回または複数回から、1週間に1回または複数回までの範囲で投与することができる;これは隔日1回を含む。当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の全般的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を非限定的に含むある種の要因が、対象を有効に治療するために必要な投与量および時期に影響することを理解しているであろう。さらに、本明細書に記載した組成物の治療的有効量による対象の治療は、単回の治療または一連の治療のいずれも含みうる。
【0068】
化合物の投与量、毒性および治療効力は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順などによって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量の比が治療指数であり、それはLD50/ED50の比として表現することができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。有害な副作用を示す化合物を用いてもよいが、そのような化合物を罹患組織部位に向かわせる送達系を設計するためには、非罹患細胞に対する障害をできるだけ少なくし、それによって副作用を軽減するように注意を払うべきである。
【0069】
細胞培養アッセイおよび動物試験によって得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を設定するために用いることができる。そのような化合物の投与量は、毒性がほとんどまたは全くない、ED50を含む流血中濃度の範囲内にあることが好ましい。採用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で投与量はさまざまであってよい。本発明の方法に用いる任意の化合物に関して、治療的有効量を細胞培養アッセイによってまず推定することができる。細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半値抑制が達成される被験化合物の濃度)を含む流血中血漿中濃度が達成される用量を動物モデルで設定することができる。そのような情報を用いて、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0070】
投与量に関するより具体的な情報について以下で考察する。
【0071】
ポリペプチドおよび小分子の投与
血液脳関門を通過する薬剤は、必要に応じて全身性に投与することができる。または、本明細書に記載したポリペプチドおよび小分子などの薬剤を、細胞がαS蓄積を呈している体内の部位に直接送達することもできる。血液脳関門を通過しないそのような薬剤は、定位ガイドによる補助下での直接注射によって投与することができる。また、そのような薬剤を脳室内(intraventricular)または実質内経路を介して投与することもできる。
【0072】
他の態様において、所望のポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子を含むウイルスベクターの形態で送達することができる。ウイルス送達は、脳質の内側を覆う上衣細胞または他のグリア細胞などの特定の中枢性または末梢性の神経細胞における導入遺伝子の発現に有利に働く条件下でなされうる。上衣細胞に形質導入を行って、導入遺伝子を発現させ、コードされるタンパク質産物を脳脊髄液(CSF)中に分泌させることができる。
【0073】
本明細書に記載したポリペプチドは、シヌクレイノパチーを治療するため、例えば、抑制するため、減弱させるため、または緩和するために有用な薬学的組成物の中に組み入れることができる。薬学的組成物は、シヌクレイノパチー性障害に罹患した対象、または前記の欠陥を発症するリスクがある者に対して投与することができる。組成物は、薬学的に許容される担体中に、治療的または予防的な量のポリペプチドを含むべきである。薬学的担体は、送達するポリペプチドを患者に送達するのに適した、配合適性のある任意の非毒性物質であることができる。滅菌水、アルコール、脂肪および蝋状物質を担体として用いてよい。薬学的に許容される補助剤、緩衝剤、分散剤なども薬学的組成物に組み入れることができる。担体は、脳室内への注射もしくは注入または他の様式による投与のために適した任意の形態(その形態は静脈内または髄腔内投与のためにも適しうる)で、ポリペプチドと組み合わせることができる。
【0074】
適した担体には、例えば、生理食塩水、滅菌精製水、Cremophor EL(登録商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、他の食塩液、デキストロース溶液、グリセロール溶液、石油、動物油、植物油または合成由来の油(ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油またはゴマ油)などで作られたもののような水性および油性エマルジョンが含まれる。いくつかの態様においては、人工的CSFを担体として用いられる。一般に、担体は無菌であってパイロジェンを含まない。薬学的組成物中のポリペプチドの濃度は非常にさまざまであってよく、すなわち、組成物全体に対し、少なくとも約0.01重量%から、0.1重量%まで、約1重量%まで、さらには20重量%またはそれ以上までであってよい。
【0075】
本明細書に記載したポリペプチドまたは他の薬剤の脳室内投与のためには、組成物は無菌でなければならず、かつ流体であるべきである。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から防御されなければならない。微生物作用の防止は、種々の抗菌薬および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって行いうる。多くの場合には、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが有用であると考えられる。
【0076】
投与の速度は、単回用量の投与をボーラスとして投与しうるようなものである。また、単回用量を約1〜5分間、約5〜10分間、約10〜30分間、約30〜60分間、約1〜4時間かけて注入すること、または4時間超、5時間超、6時間超、7時間超もしくは8時間超をかけて消費することもできる。それには1分超、2分超、5分超、10分超、20分超、30分超、1時間超、2時間超、または3時間超かけてもよい。ボーラス脳室内投与は有効であるものの、緩徐な注入が特に有効である。いかなる特定の動作理論にも拘束されることはないが、緩徐な注入はCSFの入れ替え(turn-over)という理由から有効であると考えられている。
【0077】
文献中での推定値および算出値はさまざまであるが、CSFはヒトでは約4、5、6、7または8時間以内に入れ替わると考えられている。1つの態様において、緩徐な注入の時間は、それがCSFの入れ替え時間とほぼ等しいかそれよりも長くなるように計量されるべきである。入れ替え時間は対象の種、サイズおよび年齢によって決まると考えられるが、当技術分野で公知の方法を用いて決定することができる。また、注入が1日または数日の期間にわたって連続的であってもよい。患者は、1カ月に1回、2回または3回またはそれ以上の回数、例えば、週単位、例えば2週間に1回、治療することができる。注入は、脳または内臓への疾患の基質の再蓄積によって要求される通りに対象の生涯にわたって繰り返すことができる。再蓄積は、該当する基質の同定および定量のための、当技術分野で周知の手法の任意のものによって判定することができ、その手法は、脳から、および/または内臓の1つもしくは複数から採取した1つもしくは複数の試料に対して行うことができる。そのような手法には、酵素的アッセイおよび/またはイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイまたはELISAが含まれる。
【0078】
緩徐な脳室内注入は、少なくとも脳において、および潜在的可能性としては内臓において、投与されたポリペプチド(例えば、酵素)の基質の量の減少をもたらす。脳、肺、脾臓、腎臓および/または肝臓内に蓄積したαSタンパク質などの基質の減少は劇的なことがある。10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を上回る減少を達成することができる。達成される減少は患者間で、さらには単一の患者における臓器間でさえも必ずしも一様ではない。減少は、当技術分野で周知の手法の任意のもの、例えば、本明細書の他の箇所で考察しているように酵素アッセイおよび/またはイムノアッセイ手法によって決定することができる。
【0079】
1つの例示的な態様において、投与は、対象または患者の側脳室の一方または両方へのポリペプチドの注入によって達成することができる。側脳室内に注入することにより、ポリペプチドは最大量のCSFが産生される脳内の部位へと送達される。また、ポリペプチドを複数の脳室内に注入することもできる。治療は、1つの標的部位につき単回の注入からなることもでき、または繰り返すこともできる。複数の注入/注射部位を用いることができる。例えば、ポリペプチドが投与される脳室には側脳室および第四脳室が含まれうる。いくつかの態様においては、第1の投与部位に加えて、ポリペプチドを含む組成物がもう1つの部位にも投与され、それは第1の投与部位に対して対側性でも同側性でもよい。注射/注入は単回でも複数回でもよく、一側性でも両側性でもよい。
【0080】
ポリペプチドを含む溶液または他の組成物を、特定の脳室、例えば側脳室または第四脳室といった中枢神経系の特定の領域に特異的に送達するためには、それを定位的マイクロインジェクションによって投与することができる。例えば、手術の当日に、定位的フレームベースを患者の所定の位置に固定する(頭蓋内にねじ留めする)。定位的フレームベース(保証表示付きのMRI適合性のあるもの)を伴う脳の画像を高分解能MRIで撮影する。続いてMRI画像を、定位ソフトウエアが動作するコンピュータに転送する。一連の冠状断像、矢状断像および横断像を用いて、ベクター注射の標的部位および軌道を決定する。ソフトウエアがその軌道を、定位フレームに適した三次元座標に直接的に変換する。進入部の上に穿頭孔を開け、針が配置された定位的装置を所定の深さに植え込む。続いて、薬学的に許容される担体中にあるポリペプチド溶液を注射する。別の投与の経路、例えば、直接観察下での皮質表面適用または他の非定位的適用を用いることもできる。
【0081】
緩徐な注入を送達するための1つのやり方は、ポンプを用いることである。そのようなポンプは、例えば、Alzet(Cupertino, CA)またはMedtronic(Minneapolis, MN)から販売されている。ポンプは植え込み式であってもよい。酵素を投与するためのもう1つの簡便なやり方は、カニューレまたはカテーテルを用いることである。カニューレまたはカテーテルは、時間をおいて複数回の投与を行うために用いることができる。カニューレおよびカテーテルは定位的に植え込むことができる。シヌクレイノパチー性障害を有する典型的な患者を治療するためには複数回の投与が用いられるであろうと想定している。カテーテルおよびポンプは別々に用いることも組み合わせて用いることもできる。
【0082】
核酸分子の投与および遺伝子治療
GBAまたはカテプシンDポリペプチドをコードする核酸分子のような、本明細書に記載した核酸分子は、数多くのさまざまな方法を用いて送達することができる。例えば、遺伝子移入は、アデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介することができる。ベクター構築物とは、ウイルスゲノムまたはその一部および導入遺伝子を含むポリヌクレオチド分子のことを指す。アデノウイルス(Ad)は比較的詳細に特徴づけられた均質な一群のウイルスであり、これには50種を上回る血清型が含まれる。例えば、国際PCT出願WO 95/27071を参照。Adは容易に増殖させることができ、宿主細胞ゲノム中への組込みを必要としない。組換えAd由来のベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび生成の能力を低下させたものも構築されている。国際PCT出願WO 95/00655およびWO 95/11984を参照。野生型AAVは宿主細胞のゲノム中に組み込まれる高度な感染性および特異性を有する。Hermonat and Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 81:6466-6470およびLebkowski et al. (1988) Mol. Cell. Biol., 8:3988-3996を参照。
【0083】
本明細書に記載した核酸分子を送達するために適した神経栄養性ウイルスベクターには、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,672,344号)およびレンチウイルスベクターが非限定的に含まれる。
【0084】
これらの新たな方法では、任意の血清型またはシュードタイプのAAVを用いることができる。本発明のある態様において用いられるウイルスベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7およびAAV8からなる群より選択される(例えば、Gao et al. (2002) PNAS, 99:11854-11859;およびViral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照)。本明細書に列記したもの以外の他の血清型も用いることができる。さらに、シュードタイプ化されたAAVベクターを本明細書に記載した方法に利用することもできる。シュードタイプ化されたAAVベクターとは、1つのAAV血清型のゲノムを第2のAAV血清型のキャプシド中に含むもの;例えば、AAV2キャプシドおよびAAV1ゲノムを含むAAVベクター、またはAAV5キャプシドおよびAAV2ゲノムを含むAAVベクターのことである(Auricchio et al., (2001) Hum. Mol. Genet., 10(26):3075-81)。
【0085】
AAVベクターは、哺乳動物に対しては非病原性である一本鎖(ss)DNAパルボウイルスに由来する(Muzyscka (1992) Curr. Top. Microb. Immunol., 158:97-129に総説されている)。手短に述べると、AAVベースのベクターでは、ウイルスゲノムの96%を占めるrepおよびcapウイルス遺伝子が除去されて、隣接した2つの145塩基対(bp)の逆方向末端反復配列(ITR)が残り、それらがウイルスDNAの複製、パッケージングおよび組込みを開始するために用いられる。ヘルパーウイルスの非存在下では、野生型AAVはヒト宿主細胞ゲノム中に選好的な部位特異性を伴って染色体19q13.3で組み込まれる、またはそれはエピソーム性に維持される。単一のAAV粒子は最大5kbのssDNAを収容することができ、このため約4.5kbが導入遺伝子および調節エレメントのために残るが、典型的にはこれで十分である。しかし、例えば米国特許第6,544,785号に記載されているトランス-スプライシング系は、この限界をほぼ2倍にする可能性がある。
【0086】
1つの例示的な態様において、AAVはAAV2である。多くの血清型のアデノ随伴ウイルス、特にAAV2は、遺伝子治療ベクターとして詳細にわたって研究および特性決定がなされている。当業者は、機能的なAAVベースの遺伝子治療ベクターの調製に精通している。ヒト対象への投与のためのAAVの産生、精製および調製のさまざまな方法についての数多くの参考文献を、多大な刊行文献の中に見いだすことができる(例えば、Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照)。さらに、CNSの細胞を標的とするAAVベースの遺伝子治療が、米国特許第6,180,613号および第6,503,888号に記載されている。そのほかの例示的なAAVベクターには、ヒトタンパク質をコードする組換えAAV2/1、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7およびAAV2/8血清型ベクターがある。
【0087】
本明細書に記載したある方法において、ベクターはプロモーターと機能的に連結された導入遺伝子を含む。この導入遺伝子は、CNSにおけるその発現がシヌクレイノパチーの少なくとも部分的な是正をもたらす、GBAポリペプチドなどの生物活性分子をコードする。
【0088】
真核細胞における導入遺伝子発現のレベルは、導入遺伝子発現カセット内部の転写プロモーターによって主として決定される。長期的活性を示し、組織特異的な、さらには細胞特異的ですらあるプロモーターが、いくつかの態様においては用いられる。プロモーターの例には、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(Kaplitt et al. (1994) Nat. Genet., 8:148-154)、CMV/ヒトβ3グロビンプロモーター(Mandel et al. (1998) J. Neurosci., 18:4271-4284)、GFAPプロモーター(Xu et al. (2001) Gene Ther., 8:1323-1332)、1.8kbニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Klein et al. (1998) Exp. Neurol., 150:183-194)、ニワトリβアクチン(CBA)プロモーター(Miyazaki (1989) Gene, 79:269-277)、β-グルクロニダーゼ(GUSB)プロモーター(Shipley et al. (1991) Genetics, 10:1009-1018)、ならびに米国特許第6,667,174号に記載されているようにヒトユビキチンA、ヒトユビキチンBおよびヒトユビキチンCから単離されたものなどのユビキチンプロモーターが非限定的に含まれる。発現を延長させるために、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)(Donello et al. (1998) J. Virol., 72:5085-5092)またはウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化部位といった他の調節エレメントを導入遺伝子にさらに機能的に連結させてもよい。
【0089】
ある種のCNS遺伝子治療の用途のためには、転写活性を制御することが必要な可能性がある。この目的のためには、例えば、Haberma et al. (1998) Gene Ther., 5:1604-16011;およびYe et al. (1995) Science, 283:88-91に記載されたようなさまざまな調節エレメントおよび薬物応答性プロモーターを含めることにより、ウイルスベクターによる遺伝子発現の薬理学的調節を得ることができる。
【0090】
高力価のAAV調製物は、例えば、米国特許第5,658,776号およびViral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003に記載されているような、当技術分野で公知の手法を用いて作製することができる。
【0091】
投与量
疾患の治療のための、ポリペプチド、例えば、本明細書に記載したGBAもしくはカテプシンポリペプチドまたは他の薬剤の適切な投与量は、治療しようとする疾患の種類、疾患の重症度および経過、ポリペプチドまたは薬剤を予防目的または治療目的のいずれのために投与するか、治療歴、患者の病歴および酵素または薬剤に対する応答、ならびに主治医の判断に依存すると考えられる。
【0092】
併用療法レジメンでは、本明細書に記載した組成物を治療的に有効な、または相乗的な量で投与する。治療的に相乗的な量とは、2種のポリペプチド/薬剤が単独で投与された場合の相加的なものを上回る様式で特定の疾患に伴う病状または症状を有意に軽減または消失させるために必要な、1つまたは複数の他のポリペプチドもしくは薬剤と併用される1つまたは複数のポリペプチドもしくは他の薬剤の量のことである。
【0093】
投与量は疾患および患者に応じて異なりうるが、ポリペプチドは一般に患者に対して各投与毎に患者50kg当たり約0.1〜約1000ミリグラムの量で投与され、週単位、月単位または必要な他の時間間隔で繰り返すことができる。1つの態様において、ポリペプチドは患者に対して患者50kg当たり毎月約1〜約500ミリグラムの量で投与される。他の態様において、ポリペプチドは患者に対して患者50kg当たり毎月約5〜約300ミリグラム、または患者50kg当たり毎月約10〜約200ミリグラムの量で投与される。
【0094】
疾患の種類および重症度に応じて、ポリペプチドまたは薬剤は、もたらされる局所濃度が約100pg/ml〜約100μg/ml、1ng/ml〜約95μg/ml、10ng/ml〜約85μg/ml、100ng/ml〜約75μg/ml、約100ng/ml〜約50μg/ml、約1μg/ml〜約25μg/ml、約1μg/ml〜約15μg/ml、約1μg/ml〜約10μg/mlまたは約1μg/ml〜約4μg/mlとなるように投与することができる。
【0095】
ポリペプチドまたは薬剤がウイルスビリオンを介した遺伝子治療によって送達される場合には、用量は、単位用量当たり約2×106〜約2×1012drp、約2×107〜約2×1011 drpまたは約2×108〜約2×1010 drp(DNアーゼ抵抗性粒子)でありうる。ある態様において、組成物中のベクターの濃度または力価は少なくとも以下である:(a)5、6、7、8、9、10、15、20、25、または50(×1012 gp/ml);(b)5、6、7、8、9、10、15、20、25、または50(×109 tu/ml);または(c)5、6、7、8、9、10、15、20、25、または50(×1010 iu/ml)。
【0096】
ウイルス力価に言及して用いられる「ゲノム粒子(gp)」または「ゲノム当量」という用語は、感染性または機能性とは無関係に、組換えAAV DNAゲノムを含むビリオンの数のことを指す。特定のベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例、または例えば、Clark et al. (1999) Hum. Gene Ther., 10:1031-1039;Veldwijk et al. (2002) Mol. Ther., 6:272-278に記載されたような手段によって測定することができる。
【0097】
ウイルス力価に言及して本明細書で用いられる「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」という用語は、例えば、McLaughlin et al. (1988) J. Virol., 62:1963-1973に記載されたような、複製中心アッセイとしても知られる感染中心アッセイによって測定される、感染性および複製能のある組換えAAVベクター粒子の数のことを指す。
【0098】
ウイルス力価に言及して用いられる「形質導入単位(tu)」という用語は、本明細書の実施例、または例えば、Xiao et al. (1997) Exp. Neurobiol., 144:113-124;もしくはFisher et al. (1996) J. Virol., 70:520-532(LFUアッセイ)に記載されたような機能アッセイで測定される、機能的な導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数のことを指す。
【0099】
ポリペプチドまたは薬剤をタンパク質または化学的治療法によって投与する場合には、用量は単位用量当たり約0.1mg〜約50mg、約0.1mg〜約25mg、約0.1mg〜約10mg、約0.5mg〜約5mgまたは約0.5mg〜約2.5mgであってよい。
【0100】
本明細書に記載したポリペプチドおよび薬剤は、単回用量として、または反復して投与することができる。数日またはそれ以上にわたる反復投与のためには、病状に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで治療を継続する。本発明の治療法の進展は従来の手法およびアッセイによってモニターされる。
【0101】
薬学的組成物
「薬学的組成物」または「医薬」とは、活性成分または薬剤、例えば酵素ポリペプチドと、任意で、担体または他の材料、例えば、不活性な(例えば、検出可能な薬剤または標識)、または例えば補助剤、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存料、補助剤といった活性のある化合物または組成物、またはこれらの物質の2つもしくはそれ以上の混合物との組み合わせのことを意図している。
【0102】
担体は薬学的に許容されることが好ましい。それらには薬学的賦形剤および添加剤、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および糖質(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖およびオリゴ糖を含む糖類;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖;および多糖類または糖ポリマー)が含まれ、それは単独で存在しても組み合わせで存在してもよく、単独でまたは組み合わせとして重量比または容積比で1〜99.99%を占めてよい。例示的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)などの血清アルブミン、ゼラチン、カゼインなどが含まれる。緩衝能力においても機能することのできる代表的なアミノ酸/抗体成分には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが含まれる。糖質賦形剤も本発明の範囲内にあるものとし、その例には、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;およびアルジトール類、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどが非限定的に含まれる。
【0103】
担体という用語は、緩衝剤またはpH調整剤またはそれらを含む組成物も含む;典型的には、緩衝剤は有機酸または有機塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤には、有機酸塩、例えばクエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸の塩など、トリス緩衝液、塩酸トロメタミン緩衝液またはリン酸緩衝液が含まれる。そのほかの担体には、ポリマー性賦形剤/添加剤、例えば、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー性糖)、デキストレート(dextrate)(例えば、2-ヒドロキシプロピル-quadrature-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン類)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗微生物薬、甘味料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN 20(登録商標)」および「TWEEN 80(登録商標)」などのポリソルベート類)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)およびキレート剤(例えば、EDTA)が含まれる。
【0104】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」という用語には、医薬投与との配合適性がある標準的な薬学的担体の任意のもの、例えば溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤など、リン酸緩衝食塩液、水、およびエマルジョン、例えば水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンなど、ならびにさまざまな種類の湿潤剤が範囲として含まれる。補足的な活性化合物を組成物中に組み入れることもできる。本発明に従って製造および/または使用され、かつ特定のポリペプチド、核酸分子または他の薬剤を含む組成物および医薬は、安定化剤および保存料、ならびに本明細書に記載した担体の任意のものを、それらがインビボでの使用に関して許容されるという補足条件付きで含むことができる。追加的な担体、安定化剤および補助剤の例については、Martin REMINGTON'S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975)およびWilliams & Williams, (1995)、および"PHYSICIAN'S DESK REFERENCE," 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)を参照されたい。
【0105】
本明細書に記載した方法は、薬学的組成物の製造および使用を含み、それは本明細書に記載したスクリーニング方法によって同定された化合物を有効成分として含むことができる。また、薬学的組成物それ自体も含まれる。例えば、本明細書に記載した組成物は、GBAまたはPS/SCの一方または両方のレベルまたは活性を高める薬剤を含むことができる。
【0106】
薬学的組成物は典型的には、その意図する投与の経路と適合性があるように製剤化される。投与の経路の例には、非経口的、例えば静脈内、皮内、皮下など、経口的(例えば、吸入)、経皮的(局所的)、経粘膜的および直腸内投与が含まれる。
【0107】
適した薬学的組成物を製剤化する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Drugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs(Dekker, NY)のシリーズの本を参照されたい。例えば、非経口、皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は以下の成分を含みうる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など;抗菌薬、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなど;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば酢酸鉛、クエン酸塩またはリン酸塩など、および張性の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。pHは塩酸または水酸化ナトリウムといった酸または塩基によって調整することができる。非経口的製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製もしくはプラスチック製の多回投与用バイアル中に封入することができる。
【0108】
注射用に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の要時調製のための滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与のためには、適した担体には、生理食塩水、滅菌精製水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に行える程度に流動的であるべきである。それは製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から防御されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適した混合物などを含む、溶媒または分散媒でありうる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合には必要な粒子径の維持により、および表面活性剤の使用により維持しうる。微生物作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌薬および抗真菌薬によって行いうる。多くの場合には、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムといった等張剤を組成物中に含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続性吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含めることによって達成しうる。
【0109】
滅菌注射液は、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、その後に滅菌濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合には、好ましい調製の方法は、有効成分と、事前に滅菌濾過した溶液由来の任意の所望の追加成分を加えたものが粉末として得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0110】
経口用組成物は一般に、不活性希釈液または可食担体を含む。経口治療投与の目的には、活性化合物を賦形剤とともに組み入れ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で用いることができる。経口用組成物を、口内洗浄剤として用いるために流体担体を用いて調製することもできる。薬学的に配合適性のある結合剤および/または補助材料を組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、トローチ剤などは以下の成分、または同様の性状をもつ化合物のうち任意のものを含みうる:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなど;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトースなど;崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel(登録商標)もしくはコーンスターチなど;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes(登録商標)など;流動促進剤(glidant)、例えばコロイド二酸化ケイ素など;甘味料、例えばショ糖またはサッカリンなど;または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料など。
【0111】
吸入による投与のためには、化合物を、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧の形態で送達することができる。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されたものが含まれる。
【0112】
本明細書に記載したような治療用化合物の全身投与が、経粘膜的または経皮的な手段によるものであってもよい。経粘膜的または経皮的投与のためには、透過させようとする障壁に対して適した浸透剤が製剤中に用いられる。そのような浸透剤は当技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜的投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は鼻腔スプレーまたは坐薬の使用によって行うことができる。経皮的投与のためには、活性化合物は当技術分野で一般に知られた軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームの中に配合される。
【0113】
また、薬学的組成物を、直腸内送達のための坐薬(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリド類などの従来の坐薬用基剤)または停留浣腸剤の形態として調製することもできる。
【0114】
核酸であるか、または核酸を含む治療用化合物は、DNAワクチンなどの核酸薬剤の投与のために適した任意の方法で投与することができる。これらの方法には、遺伝子銃、バイオインジェクター(bio injector)および皮膚用パッチ剤、ならびに針を使わない方法、例えば米国特許第6,194,389号に開示されている微粒子DNAワクチン技術、および米国特許第6,168,587号に開示されている粉末形態ワクチンによる針を用いない哺乳動物の経皮的ワクチン接種が含まれる。さらに、特にHamajima et al., (1998) Clin. Immunol. Immunopathol., 88(2), 205-10に記載されているような鼻腔内送達も可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6,472,375号に記載されているような)およびマイクロカプセル化を用いることもできる。生分解性の標的設定可能な微粒子送達システムを用いることもできる(例えば、米国特許第6,471,996号に記載されているように)。
【0115】
1つの態様において、治療用化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出型製剤などの、化合物を身体からの迅速排出から保護すると思われる担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸といった生分解性で生体適合性の重合体を用いることもできる。そのような製剤は標準的な手法を用いて調製することができる。材料を、Alza社(Alza Corporation)およびNova Pharmaceuticals社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から購入することもできる。リポソーム懸濁液(感染細胞を標的とするリポソームをウイルス抗原に対するモノクローナル抗体とともに含む)を、薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されたような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0116】
薬学的組成物は、投与に関する説明書とともに容器、パックまたはディスペンサー中に含めることができる。
【0117】
キット
本発明によるキットは、別個の成分の集合物である。それらを単一の容器内にパッケージ化することもできるが、それらを別々にサブパッケージ化することもできる。単一の容器を複数の区画に分割することもできる。典型的には、一組の説明書がキットに添付され、酵素、例えばGBAポリペプチドを脳室内に送達するための指示を与える。説明書は、印刷された形態で、電子的形態で、説明用のビデオまたはDVDとして、コンパクトディスク上に、フロッピーディスク上に、パッケージ中にアドレスを与えた上でインターネット上に、またはこれらの手段の組み合わせとして存在してよい。希釈剤、緩衝剤、溶媒、テープ、ネジおよびメンテナンス用工具といった他の成分を、酵素、1つもしくは複数のカニューレもしくはカテーテル、および/またはポンプに加えて用意することができる。
【0118】
スクリーニングの方法
同じく本明細書に含まれるのは、リソソーム蓄積症と関連のないシヌクレイノパチー性障害、例えば原発性シヌクレイノパチーの治療に有用な薬剤を同定するために、被験化合物、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、無機性または有機性の大分子または小分子被験化合物をスクリーニングするための方法である。特に、GBAの野生型形態または突然変異型形態のいずれかに対するGBA活性化物質としての役割を果たす新たな化合物を探し出すための新たなスクリーニングアッセイが設計される。
【0119】
本明細書で用いる場合、「小分子」とは、分子量が約3,000ダルトン未満の小型の有機性または無機性分子のことを指す。一般に、本発明にとって有用な小分子は、3,000ダルトン(Da)未満の分子量を有する。小分子は、例えば、少なくとも約100Da〜約3,000Da(例えば、約100〜約3,000Da、約100〜約2500Da、約100〜約2,000Da、約100〜約1,750Da、約100〜約1,500Da、約100〜約1,250Da、約100〜約1,000Da、約100〜約750Da、約100〜約500Da、約200〜約1500、約500〜約1000、約300〜約1000Daまたは約100〜約250Da)である。
【0120】
被験化合物は例えば、天然物、またはコンビナトリアル化学ライブラリーの要素である。電荷、芳香族性、水素結合、柔軟性、サイズ、側鎖の長さ、疎水性および剛性といった種々の機能を対象として扱うために、一揃いの多様な分子を用いるべきである。小分子を合成するのに適したコンビナトリアル手法は当技術分野で公知であって、例えば、Obrecht and Villalgordo, Solid-Supported Combinatorial and Parallel Synthesis of Small-Molecular-Weight Compound Libraries, Pergamon-Elsevier Science Limited (1998)に例示されており、これには「スプリット・アンド・プール(split and pool)」または「並行的(parallel)」合成手法、固相および液相手法、ならびに符号化手法などが含まれる(例えば、Czarnik, (1997) Curr. Opin. Chem. Bio., 1:60-6を参照)。加えて、小分子ライブラリーも数多く市販されている。多数の適した小分子被験化合物が米国特許第6,503,713号に列記されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0121】
本発明の方法を用いてスクリーニングされるライブラリーは、さまざまな種類の被験化合物を含みうる。ある所与のライブラリーは、一揃いの構造的に関連のある、または関連のない被験化合物を含むことができる。いくつかの態様において、被験化合物はペプチドまたはペプチド模倣分子である。いくつかの態様において、被験化合物は核酸である。
【0122】
いくつかの態様において、被験化合物およびそれらのライブラリーは、第1の被験化合物、例えば、標的ポリペプチドの公知の天然性結合パートナーと構造的に類似している第1の被験化合物、または標的ポリペプチドと結合しうるものとして同定された第1の小分子の構造を、例えば、当技術分野で公知の方法または本明細書に記載した方法を用いて体系的に変更すること、およびその構造を結果的に得られた生物活性と相関づけること、例えば構造-活性相関研究によって得ることができる。当業者は理解しているであろうが、そのような構造-活性相関を作成するためには種々の標準的な方法がある。すなわち、ある場合には作業は主として経験的であり、また別の場合には、内因性ポリペプチドもしくはその部分の三次元構造を1つもしくは複数の小分子化合物の合理的設計のための出発点として用いることができる。例えば、1つの態様においては、小分子の包括的ライブラリーを、例えば本明細書に記載した方法を用いてスクリーニングする。
【0123】
いくつかの態様においては、被験化合物を被験試料、例えば細胞または生きている組織もしくは臓器に対して適用し、被験化合物の1つまたは複数の影響を評価する。例えば、培養細胞または初代細胞において、被験化合物がGBAまたはPS/SCのレベルおよび/または活性を高める能力を決定することができる。本明細書に記載したMES細胞ベースのモデルを、そのようなスクリーニングアッセイのために用いることができる。例えば、MES細胞培養プレート(96ウェルまたは384ウェルをベースとする)を用いて、小分子ベースの化学ライブラリーを1μMの試験濃度で36〜48時間の期間にわたって適用する。細胞を溶解させて、例えば本明細書中の図3A〜3Dに概要が示されているようにサンドイッチELISAによって分析して、各ウェルにおけるα-シヌクレインタンパク質濃度に対するこれらの化合物の正味の影響を決定する。
【0124】
いくつかの態様において、被験試料は、本明細書に記載したようなシヌクレイノパチー性障害のインビボモデルであるか、またはそれに由来する(例えば、それから採取した試料)。例えば、動物モデル、例えば、マウスまたはラットモデルのような齧歯動物モデルを用いることができる。特に、シヌクレイノパチーのMasliahマウスモデルが適している(Graz, AustriaのJSW Researchから販売されている)(Masliah et al., Science, 2000 Feb 18;287(5456):1265-9を参照。
【0125】
これらの影響のそれぞれを評価するための方法は当技術分野で公知である。例えば、タンパク質の発現をモジュレートする能力は、例えば定量的PCRまたはイムノアッセイ法を用いて、遺伝子またはタンパク質レベルで評価することができる。いくつかの態様においては、ハイスループット方法、例えば当技術分野で公知であるようなタンパク質チップまたは遺伝子チップ(例えば、Ch. 12, Genomics, in Griffiths et al., Eds. Modern genetic Analysis, 1999,W. H. Freeman and Company;Ekins and Chu, 1999 Trends in Biotechnology, 17:217-218;MacBeath and Schreiber, 2000 Science, 289(5485):1760-1763;Simpson, Proteins and Proteomics: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press;2002;Hardiman, Microarrays Methods and Applications: Nuts & Bolts, DNA Press, 2003を参照)を、本明細書に記載したポリペプチドの2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上に対する影響を検出するために用いることができる。
【0126】
本明細書に記載した方法によってスクリーニングされて、GBAもしくはPS/SCのレベルおよび/もしくは活性を高める、またはαS凝集物のレベルを低下させると判定された被験化合物は、候補化合物とみなすことができる。その後に、例えば障害のインビボモデル、例えばシヌクレイノパチー性障害の動物モデルでスクリーニングされて、障害に対して、例えば障害の1つまたは複数の症状に対して望ましい影響を有すると判定された候補化合物は、候補治療薬とみなすことができる。候補治療薬は、ひとたび臨床的状況でスクリーニングされれば治療薬となる。候補化合物、候補治療薬および治療薬は、任意で最適化および/または誘導体化した上で、生理的に許容される賦形剤とともに製剤化されて薬学的組成物を形成する。
【0127】
したがって、第1のスクリーニングで「ヒット」(例えば、GBAまたはPS/SCのレベルおよび/または活性を高める被験化合物)として同定された被験化合物を選択して、例えば合理的設計を用いて、結合親和性、結合力(avidity)、特異性または他のパラメーターを最適化するために体系的に変更する。そのような最適化もまた、本明細書に記載した方法を用いるためにスクリーニングすることができる。したがって、1つの態様において、本発明は、化合物の第1のライブラリーを当技術分野で公知のおよび/または本明細書に記載した方法を用いてスクリーニングする段階、そのライブラリーにおける1つまたは複数のヒットを同定する段階、そのヒットを体系的な構造変更に供して、ヒットと構造的に関連のある第2の化合物ライブラリーを作成する段階、および第2のライブラリーを本明細書に記載した方法を用いてスクリーニングする段階、を含む。
【0128】
ヒットとして同定された被験化合物は、本明細書に記載したようなシヌクレイノパチー性障害の治療において有用な候補治療用化合物とみなすことができる。「ヒット」の構造を決定するために有用な種々の手法、例えば、NMR、質量分析、電子捕獲型検出器を装備したガスクロマトグラフィー、蛍光および吸光分光法を、本明細書に記載した方法に用いることができる。したがって、本発明はまた、本明細書に記載した方法によって「ヒット」として同定される化合物、ならびに本明細書に記載した障害の治療、予防またはその発症もしくは進行の遅延におけるそれらの投与および使用のための方法も含む。
【0129】
候補治療用化合物として同定された被験化合物は、本明細書に記載したようなシヌクレイノパチー性障害の動物モデルに対する投与によってさらにスクリーニングすることができる。動物を、障害の変化、例えば、障害のパラメーター、例えば臨床転帰と関連したパラメーターの改善に関してモニターすることができる。
【0130】
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
実施例1:スフィンゴ糖脂質はインビトロでα-シヌクレインと生化学的に結合する
この実施例で行った実験は、最終的にGBA酵素の基質となる、α-シヌクレインタンパク質とヒト脳ガングリオシドとの間での安定な複合体の存在を実証している。
【0132】
ガングリオシドは複合スフィンゴ糖脂質であり、グルコセレブロシド単位をそれらの化学構造の一部として含む(例えば、Dreisewerd et al., (2005) Anal Chem., 77, 4098-107を参照)。その結果として、グルコセレブロシド単位はガングリオシドの連続的な合成-分解サイクルにおいて構成要素および分解産物の両方となる。詳細に特徴づけられている一群の脳由来ガングリオシド(Schlossmacher et al., (2005) N.E.J.M., 352, 728-731、およびDreisewerd et al. (2005)を参照)と組換えα-シヌクレインタンパク質とのインビトロでの共インキュベーションは高度な変性SDS/PAGE条件下で安定な複合体の形成を生じ、ウエスタンブロット法によって示されるように、16kDaのα-シヌクレイン複合体から19〜20kDaのより高分子量のα-シヌクレインタンパク質/グルコセレブロシド複合体への電気泳動シフトを促した(図1)。
【0133】
図1は、ウエスタンブロットを図示したものであり、インビトロでのヒト脳ガングリオシドとα-シヌクレインタンパク質との間での安定な19〜20kDa複合体(αS/G)の時間依存的な形成を示している。ヒト脳由来ガングリオシド(G)を組換えヒトα-シヌクレインタンパク質(αS;野生型)とともに最長72時間のさまざまな期間にわたって4℃で共インキュベートし、その後にSDS/PAGEに供した。陰性対照(C)として、水を組換えヒトα-シヌクレインタンパク質とともに72時間インキュベートした。ガングリオシドとともにインキュベートした試料では19〜20kDaで移動する上方バンドの時間依存的な出現が認められたが、水とともにインキュベートしたものでは認められず、安定なα-シヌクレインタンパク質-ガングリオシド(αS/G)複合体の形成と解釈された。複合体化していないα-シヌクレインタンパク質の存在は、分子量16kDaのバンドによって指し示される。
【0134】
これらのおよび関連した所見により、α-シヌクレインタンパク質が、高度に安定であってSDSの存在に対して相対的に抵抗性のある様式で、グルコセレブロシドを含む複合脂質と相互作用しうることが実証された。
【0135】
実施例2:グルコセレブロシドはインビトロでα-シヌクレインタンパク質と生化学的に結合する
ヒト組織由来の、または合成のグルコセレブロシド(グルコシルセラミド;GCとしても知られる)を、組換えヒトα-シヌクレインタンパク質(αS;野生型)とともに最長72時間のさまざまな期間にわたって4℃で共インキュベートし、その後にSDS/PAGEに供する。陰性対照(C)として、水を組換えヒトα-シヌクレインタンパク質とともに72時間インキュベートする。グルコセレブロシドとともにインキュベートした試料では、およそ19〜22kDaで移動する上方バンドの時間依存的な出現が認められるはずである。複合体化していないα-シヌクレインタンパク質の存在は分子量16kDaのバンドによって指し示される。
【0136】
これらのおよび関連した所見は、α-シヌクレインタンパク質が、高度に安定であってSDSの存在に対して相対的に抵抗性のある様式で、グルコセレブロシドと相互作用しうることを実証する。
【0137】
実施例3:グルコスフィンゴシンはインビトロでα-シヌクレインタンパク質と生化学的に結合する
ヒト組織由来の、または合成のグルコスフィンゴシン(グルコシルスフィンゴシン;GSとしても知られる)を、組換えヒトα-シヌクレインタンパク質(αS;野生型)とともに最長72時間のさまざまな期間にわたって4℃で共インキュベートし、その後にSDS/PAGEに供する。陰性対照(C)として、水を組換えヒトα-シヌクレインタンパク質とともに72時間インキュベートする。グルコスフィンゴシンとともにインキュベートした試料では、およそ19〜22kDaで移動する上方バンドの時間依存的な出現が認められるはずである。複合体化していないα-シヌクレインタンパク質の存在は分子量16kDaのバンドによって指し示される。
【0138】
これらのおよび関連した所見は、α-シヌクレインタンパク質が、高度に安定であってSDSの存在に対して相対的に抵抗性のある様式で、グルコスフィンゴシンと相互作用しうることを実証する。
【0139】
実施例4:α-シヌクレインタンパク質発現のための、ドーパミンを発現する神経細胞培養系の樹立
ドーパミンを発現する齧歯動物中脳細胞培養系(MES23.5細胞)を、α-シヌクレインタンパク質過剰発現系の樹立のために利用した。以前に、これらの細胞は、αSを過剰発現する安定な細胞系を作り出すために、Sharonらによって用いられている。しかし、これらの著者らは、安定なαSトランスフェクションを受けたMES23.5細胞クローンが、2カ月またはそれ以上にわたる継代後には徐々にαS発現を喪失することを観察した(Sharon R, et al., (2001) PNAS 98, 9110-9115)。この問題を克服するために、今回の研究では、MES23.5細胞を、Lipofectamine(登録商標)2000(Invitrogen Corp)を用いてその都度一過性にトランスフェクトした。MES23.5細胞はプラスチック製組織培養ディッシュに緩くしか付着しないため、文献中で以前には用いられていない対策として、ポリ-D-リジンでコーティングしたプラスチック製ディッシュ上で細胞を培養した。さらに、Invitrogen社は、細胞の集密度が80%を超えた時にLipofectamine 2000を用いてトランスフェクトすることを推奨しているが、本研究では細胞の集密度が50〜60%の時にトランスフェクトすることによってトランスフェクション効率がはるかに改善することが経験的に見いだされた(トランスフェクションの24時間後に蛍光顕微鏡で観察した、シスターウェル(sister well)における緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミドのトランスフェクション効率により測定)。
【0140】
図2Aに示されているように、MES23.5細胞に対して、CMVプロモーターの制御下にある完全長αSをコードするSNCA cDNAプラスミドを一過性にトランスフェクトした。細胞には0、0.25、0.5、1、5および10μg(10cmディッシュ当たり)のプラスミドをトランスフェクトした。24時間後に、細胞をTris緩衝食塩水で洗浄し、140mM NaCl、50mM Tris-HCl、pH 8.0、1mM EDTA、0.5%Triton-X100および1×プロテアーゼ阻害剤の中で溶解させた。溶解物を100,000×g、4℃で30分間遠心した;上清の上方2/3を取り出してシリコン処理チューブ中にて-80℃で凍結させた。試料を、1mM DTTを還元剤として用いるSDS/PAGE上で泳動させた。αSタンパク質の発現はトランスフェクションから24時間後にウエスタンブロット法によって確認し、細胞溶解物をαSタンパク質に対するモノクローナル抗体(syn-1抗体、BD Transduction Labs)を用いてプロービングした。発現は、10cmディッシュ当たり5〜10μgの飽和量に至るまでは、トランスフェクトしたプラスミドの初期量に依存することが示された。
【0141】
実施例5:αシヌクレインおよび選択したリソソームタンパク質の同時発現のためのMES23.5細胞の探索的試験
この実施例で行った実験(図2Bに示されている)は、細胞GBAタンパク質のレベルの上昇が、神経α-シヌクレインタンパク質のレベルを低下させうることを実証している。
【0142】
MES23.5細胞に対して、10cmディッシュ当たり0.5μgのαSをコードするSNCA cDNA、および1.25、2.5もしくは5μg(低、中または高)のGBAをコードするcDNAを、5μgのプロサポシンをコードするcDNAの存在下または非存在下でトランスフェクトした。実験のすべての選択肢に対して、10cmディッシュ当たりのcDNAが合計10.5μgとなるように空ベクターcDNAを用いてバランスをとった。CMVプロモーター下にあるGBAおよびプロサポシンをコードするcDNAプラスミド、ならびにpCMV-XL5空ベクターは、OriGene Technologies, Incから購入した(クローンは単離およびマキシプレップ(maxiprep)後に配列に関して完全に確認した)。24時間後に、細胞を溶解させて、GBAおよびαSタンパク質レベルに関してプロービングを行った。図2B3の上のパネルは、共トランスフェクトしたプロサポシンの非存在下および存在下におけるGBAタンパク質の発現を指し示しているウエスタンブロットを図示したものである。GBAはモノクローナル抗体8E4を用いてプロービングした。GBA過剰発現は、プロサポシンの非存在下ではわずかに遺伝子量依存的な様式で起こった。プロサポシン過剰発現の存在下では、GBAシグナルそれ自体が低下した。この観察所見は、GBAがその活性化の間に修飾されて、これらのSDS/PAGE/ウエスタンブロット条件下で用いたモノクローナル抗体による認識性の低下を招いたことにより、PS/SCによるその活性化後のGBAのより急速なリソソーム内分解速度により、説明することができ、またはそれは3種の異なる外因性cDNA保有プラスミドの同時送達によるcDNAの転写速度および翻訳速度の全体的な低下の結果として起こった可能性もある。
【0143】
図2Bの下のパネルは、GBAが、共トランスフェクトされたプロサポシンの非存在下で、最大量のGBA cDNAの共トランスフェクト下で共発現されるα-シヌクレインタンパク質のレベルを低下させたことを示している。GBAによるこの観察されたα-シヌクレインタンパク質低下作用は、トランスフェクトされたGBAをコードするcDNAがより低い濃度(低および中)でさえもα-シヌクレインタンパク質レベルの強い低下によって示されているように、プロサポシンの共発現によって大きく増強された。図2C中の棒グラフは、図2Bに示されたデータの半定量的な概要を示している。
【0144】
以上を総合して、これらのエクスビボ細胞培養条件下でのGBA活性の上昇は、特に高PS/SCの存在下で、α-シヌクレイン定常状態レベルを低下させることができると結論づけた。このため、この戦略は、例えばシヌクレイノパチー性障害を有する対象における、α-シヌクレイン含有量の危機的なレベル上昇のリスクのある、または既にそれによって影響されているヒト脳におけるものを含む、インビボでのα-シヌクレイン定常状態レベルを低下させるために利用することができる。したがって、インビボでのGBA活性および/またはPS/SCレベルを高めるための戦略は、パーキンソン病(PD)および関連したシヌクレイノパチーの神経保護治療のための新規な手段となる。
【0145】
実施例6:トランスフェクトされたMES23.5細胞におけるα-シヌクレイン濃度を定量的に決定するための、この種としては初めての高感度かつ高精度なELISAシステム
さらなる実験および調査のために、低スループットであってダイナミックレンジが限定されているウエスタンブロット法への依存を減らし、その代わりに、感度が改善され、特異性およびダイナミックレンジが最適化された、αSの中程度のスループットでの定量のための定量的サンドイッチELISA(固相酵素免疫アッセイ)システムを作り出すことが望まれた。
【0146】
6匹のウサギから血清を得た上で、組換え完全長ヒトαSに対するアフィニティー精製をOpen Biosystems, Inc(http ://www.openbiosystems.com)で行った。組換えαSをHPLCおよびMSで特性決定し、アミノ酸組成およびタンパク質濃度の分析に供した。ELISAのために、384ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Inc)を、コーティング緩衝液(NaHCO3に0.2% NaN3を伴う、pH 9.6)中に希釈した50μl/ウェルの捕捉用ポリクローナルAb(hSA-2)でコーティングした。PBS/0.05% Tween-20(PBS-T)による数回の洗浄後に、プレートをブロッキング緩衝液(1.125%魚皮ゼラチン;PBS-T)中にて37℃で2時間おいてブロックした。4回の洗浄後に、試料をローディングし、4℃で12時間インキュベートした。200μgのスルホ-NHS-LCビオチン(Pierce)を用いてビオチン化Syn-1 mAb(アッセイ用Abとして)を作製し、ブロッキング緩衝液中に希釈してプレートに添加し、37℃で2時間おいた。4回の洗浄後に、ブロッキング緩衝液中に希釈したExtrAvidinホスファターゼ(Sigma)を37℃で1時間適用した。Fast-p-ニトロフェニルリン酸(Sigma)を用いることによって発色を行わせ、5分毎に最長60分間にわたってOD 405nmで動態学的にモニターした。
【0147】
種々の濃度の高度に精製された組換えヒトαS(r-haS)を、図3Aに示されているように、ELISA感度およびアッセイ範囲を確定するための標準物質として用いた(r2>0.98)。
【0148】
「DNA:Lipofectamine(登録商標)2000」比を低い細胞毒性で最適化するために、MES23.5細胞に対して、0.25、0.5または1μgのαSをコードする野生型ヒトSNCA cDNAと共に、10cmディッシュ当たり合計5.5μgのDNAとなるような空ベクターcDNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、細胞溶解物を上記の通りに収集した。細胞溶解物の系列希釈のためには、ベクターをトランスフェクトしたウェル由来の0.5%溶解産物を含むブロッキング緩衝液を希釈剤として用い、それをブランク(blank)および組換えヒトαSの対応する標準曲線の作成にも用いた。標準物質および試料希釈物が対数期にある時点の同定のために飽和動態を調べた。
【0149】
これらの細胞溶解物をELISAによって分析した際、記録したMES-αS細胞における濃度は、系列希釈後に予想される平行性(parallelism)を示し、SCNA cDNA用量依存的であり(どちらの様相も図3Bのグラフに示されている)、かつ生細胞内で発現されるαSタンパク質濃度の総量の正確な算出を初めて可能とした(図3Cに示されているように)。
【0150】
また、これらの厳密な細胞発現の条件下では、MES23.5細胞およびMES-syn細胞の生存度は変化しないことが、細胞漏出性のマーカーとしての馴化培地中のLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ、通常サイトゾル性の酵素)、および細胞代謝の無傷性のマーカーとしてのMTT((3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)のホルマザンへの細胞性変換のいずれによる測定でも確かめられた。これらの標準的な毒性アッセイについては、100%の細胞溶解を招く陽性対照(0.1% Triton-X(登録商標)100処置)を並行して行った。その結果は図3Dに示されている。すべての実験で選択したcDNA濃度の範囲に関しては、MES-αS細胞およびMES-ベクター細胞はMTTアッセイにおいて完全な代謝活性を有し、トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞の馴化培地中へのサイトゾル由来LDHの放出は示されなかった。このため、いずれのアッセイからも細胞の完全性が実証された。
【0151】
実施例7:GBAにおけるシヌクレイノパチー性疾患に関連した突然変異および触媒部位特異的突然変異は、ドーパミン作動性MES細胞におけるα-シヌクレインの蓄積を促進する
実施例6に記載した、最適化された細胞発現/ELISA読み取りシステムを用いて、MES23.5細胞におけるαSレベルに対する突然変異型GBAタンパク質の過剰発現の影響を調べた。
【0152】
MES細胞に対して、10cmディッシュ当たり0.5μgのαSをコードするSNCA cDNA保有プラスミドと共に、10cmディッシュ当たり5μgの、野生型または突然変異型のヒトGBAをコードするプラスミドをトランスフェクトした。用いたGBA変異体は、野生型、N370S、D409H、L444P、E235AおよびE340Aであった。これらの5種のGBA突然変異体はQuickchange(登録商標)キット(Stratagene)を用いて部位特異的突然変異誘発法によって作り出し、配列を確認した。N370S、D409HおよびL444Pは、ゴーシェ病において(ホモ接合性または複合ヘテロ接合性状態で)、ならびにパーキンソン病患者および/またはレビー小体型認知症の患者においてヘテロ接合性状態で生じることが知られている。E235AおよびE340A突然変異型GBAタンパク質がヒトに存在することは判明していない。それらはそれぞれGBA酵素の酸/塩基触媒および求核基を対象とし、リソソームへは正しく輸送されるものの触媒的には不活性であることが以前に示されている(Fabrega et al., 2000, Glycobiology, vol 10, pp 1217-1224)。
【0153】
トランスフェクションの24時間後に、MES細胞を上記の通りに溶解させて、すべての溶解物をELISAによって分析した。いくつかのELISA実験をまとめた複合棒グラフ(図4に示されている)に示されているように、α-シヌクレイン定常状態の量の変化を、並行してローディングした既知の量の組換えα-シヌクレインタンパク質と比較したところ、これらの条件下での野生型GBA(プロサポシンではなく)のαSとの共発現(5μg/10cmディッシュ)は、αSレベルを有意には変化させなかった(ベクターcDNA対照レベルの109.7+/-9.88%)。これは上記の実施例5で観察された結果とは対照的である。観察されたこの相違は、2つの例でトランスフェクトされたDNA総量が異なる(図2B;図2Cと図4との対比)ことによるDNA:Lipofectamine(登録商標)2000比の違い、および共発現されるプロサポシン(サポシンC)の役割の違いを反映している可能性がある。このため、野生型GBAは、リソソーム内へのαSの輸送の速度ならびに複数のリソソーム酵素の組成および活性化状態に応じて、これらのMES23.5細胞におけるαSレベルに対して多様な影響を及ぼしうることが考えられる。
【0154】
対照的に、αSと、疾患に関連したGBAのN370S、D409HまたはL444P保有突然変異体(10cmディッシュ当たり5μg)との共トランスフェクションは、図4の棒グラフに示されているように、一貫して細胞内α-シヌクレインの蓄積を招き、対照レベルの121.1+/-4.98%、269.4+/-56.6%および172.7+/-23.02%(平均+/-平均の標準誤差、n=4(〜6)、5回の独立した実験による)であった。これらの結果は、N370S、D409HまたはL444P突然変異を有する人々がなぜ孤発性パーキンソン病に対する易罹患性が高いかという理由を「初めて」説明する一助となる。最も軽症な型のゴーシェ病(GD)を一般に生じさせる突然変異、すなわちN370SはαSのわずかな蓄積のみを促進し、一方、より重症なGD表現型と関連のあるものは細胞内αSのより顕著な蓄積を促進したことは興味深い(例えば、図4中のGBA突然変異体D409Hを参照)。
【0155】
αS濃度に対するGBA突然変異の蓄積促進作用が、より全般的な細胞ストレスを引き起こす輸送障害、またはリソソーム内部の酵素機能の喪失のいずれに起因するかを調べるために、本発明者らは次に、リソソームには正しく輸送されるが酵素機能の完全な喪失を示す2種の突然変異体を用いた。αSと、GBAのE235AおよびE340Aミスセンス突然変異を保有する変異体(10cmディッシュ当たり5μg)との共トランスフェクションは、図4に示された棒グラフに示されているように、対照ベクターDNAレベルのそれぞれ231.0+/-37.14%および156.4+/-19.65%である細胞内α-シヌクレインレベルをもたらした(平均+/-sem、n=4(〜6)、5回の独立した実験)。
【0156】
これらの実験の結果に基づくと、この非プロテアーゼ型リソソーム酵素の活性喪失は、少なくとも部分的には、ヒト疾患に関連したGBA突然変異体によって誘導されたαS蓄積作用に寄与すると考えられる。
【0157】
実施例8:カテプシンDの発現は、α-シヌクレインタンパク質レベルを用量依存的な様式で一貫して有意に低下させる
実施例6に記載したシステムを用いて、共トランスフェクトされたαSのレベルに対するプロテアーゼ型リソソーム酵素、すなわちカテプシンDの影響について検討した。
【0158】
MES23.5細胞に対して、10cmディッシュ当たり0.5μgのαSをコードする野生型ヒトSNCA cDNA保有プラスミド(図6に示されたウエスタンブロットではMES-hSNCA WT細胞と称している)と共に、OriGene Technologies, Inc.から購入した、CMVプロモーターの制御下にある、10cmディッシュ当たり1.25、2.5または5μgのヒトカテプシンDをコードするCTSD cDNAプラスミドをトランスフェクトした。カテプシンDクローンは単離およびマキシプレップの後に完全に配列を確認した。各トランスフェクションの選択肢においては、10cmディッシュ当たりのDNAが合計5.5μgとなるように空ベクターDNAでバランスをとった。トランスフェクションの24時間後に、細胞を溶解させ、その結果得られた溶解物を本明細書に記載したサンドイッチELISAによって分析した。
【0159】
図5に示されているように、ヒトカテプシンDの共発現は細胞内α-シヌクレインタンパク質レベルを低下させた。これはCTSD cDNAの用量に依存的な様式で起こり、共トランスフェクトしたカテプシンDの量の増加は細胞内α-シヌクレインレベルの累進的低下をもたらした。α-シヌクレイン定常状態レベルの変化を、並行してローディングした既知の量の組換えα-シヌクレインタンパク質と比較したところ、最も高濃度のカテプシンD過剰発現(5μg/10cmディッシュ)は対照レベルの25.3+/-7.0%(n=11、3回の独立した実験による)の細胞内総α-シヌクレインレベルをもたらしたと算出された。より低いレベルのカテプシンD過剰発現(1.25μg/10cmディッシュおよび2.5μg/10cmディッシュ)は、それぞれ対照レベルの68+/-17.7%および53+/-16.8%(n=2、2回の独立した実験による)の細胞内α-シヌクレインレベルをもたらした。同様に、ヒトカテプシンDは、同じ例を用いて、共トランスフェクトされたラットαSのレベルも低下させることができた。
【0160】
カテプシンDのαS低下作用が、真に、検出可能な細胞内αS濃度の総量の75パーセントもの大きさで測定されたことを示すために(および後者の作用が選択したELISAシステムに起因するのではないことを示すために)、それらの結果をウエスタンブロット法によって確かめた。図6に示されているように、細胞溶解物を2種類の抗シヌクレイン抗体:前記のモノクローナルsyn-1およびウサギポリクローナル7071AP(Periquet et al., (2007) J. Neurosci., 27:3338-46)により独立にプロービングした。
【0161】
重要なことに、カテプシンDとαSとの24時間にわたる共発現は、syn-1および7071APによって可視化したところ、いかなる視認しうるより低分子量または高分子量の種の生成も招かなかった。第3の抗体であるアフィニティー精製したウサギポリクローナルhSA-2を用いた場合(非提示データ)、およびより長期の露出でブロットを過剰現像した場合も同じ結果が得られた。
【0162】
カテプシンDの作用がインビボで起こり、細胞溶解手順の間に起こったのではないことを確かめるために、強力なカテプシンD阻害剤であるペプスタチンAの影響を、細胞溶解緩衝液中にそれを存在させることによって検討した。図5の棒グラフ(左側の最初の2つのバー)に示されているように、ペプスタチンAを溶解緩衝液に含めることは溶解産物中に検出されるαSの量を変化させず、それによって上記の図5および6に記載された結果が細胞溶解手順のアーチファクトではなかったことが実証された。
【0163】
MES23.5細胞におけるαSの低下に対するカテプシンDの作用が特異的であって、細胞の代謝および完全性の全体的な低下によって引き起こされるのではないことを確かめるために、MTTアッセイおよびLDHアッセイを、カテプシンDをコードするcDNAの最大量(5μg/10cmディッシュ)を共トランスフェクトしたMES-syn細胞に対して行った。0.1% Triton-X(登録商標)100による細胞の溶解を、最大限の細胞死に相当する陽性対照として用いた。CTSD cDNAを共トランスフェクトしたMES-syn細胞は、対照ベクターをトランスフェクトした細胞と違いのない正常なMTTシグナルを呈した(それぞれ101.3+/-3.91%および100+/-4.05%;n=6、2回の独立した実験による)。同様に、カテプシンDを共トランスフェクトしたMES-syn細胞は、対照ベクターをトランスフェクトした細胞のそれと同一なLDHシグナルを呈した。
【0164】
カテプシンDがミスセンス突然変異を保有するαSタンパク質のレベルも低下させうるか否かを検討するために、MES23.5細胞に対して、ヒトにおいて家族性パーキンソン病との関連がみられるα-シヌクレインのA30P、E46KまたはA53T変異体、ならびにS129DおよびS129A突然変異体のいずれかをコードする少量(0.5μg/10cmディッシュ)のSNCA cDNAをトランスフェクトした。セリン129残基でのαSのリン酸化はインビボでのαS凝集物の病理学的な顕著な特徴であることが知られている(Anderson J et al., 2006, J Biol Chem, vol 281, pp29739-29752)。Ser残基のAspへの突然変異は、持続的なセリン部でのリン酸化を模倣することが当技術分野では公知である。リン酸化できないαSの突然変異体であるS129A突然変異体も比較のために含めた。
【0165】
図7の棒グラフに示されているように、カテプシンDをコードするCTSD cDNA(5μg/10cmディッシュ)とA30P、E46K、A53T、S129DまたはS129A αSのいずれかとの共発現は、空ベクターDNAとそれらの共発現と比較して、検討したすべてのαSタンパク質に関してαSレベルの同程度の低下を引き起こした。α-シヌクレイン定常状態レベルの変化を、並行してローディングした、詳細に特徴づけられている組換えα-シヌクレインタンパク質のレベルと比較したところ、カテプシンD過剰発現(cDNA濃度5μg/10cmディッシュ)は、A30P、E46K、A53T、S129DまたはS129A αSポリペプチドに関して、それぞれ対応する対照のレベルの23.98+/-3.57%、33.08+/-18.51%、39.21+/-14.63%、34.84+/-11.36%および34.31+/-13.39%である細胞内α-シヌクレインレベルをもたらしたと推定された(n=2(〜3)、2〜3回の独立した実験による)。
【0166】
この結果は、(a)カテプシンDは家族性PDで生じる突然変異型のαSも分解しうること、および(b)αSのSer129残基でのリン酸化または脱リン酸化は、カテプシンDがαSに対して示すタンパク質分解(「シヌクレイナーゼ」)活性を変化させないことを示唆する。
【0167】
注目されることに、αSの残基D98およびQ99は、αSがシャペロン介在性オートファジー(CMA)の際にLamp2a受容体によって認識されるモチーフである;Cuervo et al. (2004), Science, 305:1292-1295)。カテプシンDによって誘導されるαS低下作用におけるこのモチーフの重要性を調べるために、MES 23.5細胞に対して、部位特異的突然変異誘発法によってD98およびQ99残基がいずれもアラニン(A)に変化した突然変異型αS変異体(すなわち、αSのDQ/AA変異体)をコードするcDNA(0.5μg/10cmディッシュ)もトランスフェクトした。DQ/AA αS定常状態レベルの変化を、並行してローディングした、詳細に特徴づけられている組換えα-シヌクレインタンパク質のレベルと比較したところ、カテプシンD過剰発現(5μg/10cmディッシュ)は、ベクター対照レベルの22.14+/-5.32%である細胞内DQ/AA αSレベルをもたらしたと推定された(n=3、3回の独立した実験による;非提示)。これらの結果に基づくと、α-シヌクレインはLamp2a介在性CMA以外の方法によってもリソソーム内に進入するか、またはカテプシンDがリソソーム活性以外のシヌクレイナーゼ活性を呈する、および/もしくは誘導するかのいずれかであるように思われる。
【0168】
実施例9:カテプシンFの発現はα-シヌクレインタンパク質レベルを低下させる
実施例6に記載したシステムを用いて、共トランスフェクトされたαSレベルに対する、別のリソソーム性カテプシン酵素、すなわちカテプシンFの影響について検討した。
【0169】
MES23.5細胞に対して、10cmディッシュ当たり0.5μgのαSをコードするSCNA cDNAプラスミドと共に、OriGene Technologies, Inc.から購入した、CMVプロモーターの制御下にある、10cmディッシュ当たり5μgのヒトカテプシンFをコードするヒトCTSFプラスミドをトランスフェクトした。カテプシンFクローンは単離およびマキシプレップの後に完全に配列を確認した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を溶解させ、その結果得られた溶解物をサンドイッチELISAによって分析した。
【0170】
トランスフェクションから24時間後に、共発現させたヒトカテプシンFタンパク質は、サンドイッチELISAによる測定で、細胞内α-シヌクレインタンパク質濃度を低下させた。α-シヌクレイン定常状態レベルの変化を、並行してローディングした、詳細に特徴づけられている組換えα-シヌクレインタンパク質のレベルと比較したところ、カテプシンF過剰発現(5μg/10cmディッシュ)は、対照レベルの51.7+/-14.1%の細胞内α-シヌクレインレベルをもたらしたと推定された(n=3、2回の独立した実験による)。
【0171】
αSの低下に対するカテプシンFの作用が特異的であって、細胞の完全性の全体的な低下によって引き起こされるのではないことを確かめるために、カテプシンFをコードするCTSF cDNA(5μg/10cmディッシュ)を共トランスフェクトしたMES-syn細胞に対してLDHアッセイを行った。0.1% Triton-X100による細胞の溶解を、最大限の細胞死を促す、細胞毒性に関する陽性対照として用いた。カテプシンFを共トランスフェクトしたMES-syn細胞は、対照ベクターをトランスフェクトした細胞のそれよりも低いか、またはそれと等しいLDHシグナルを呈した(データは2回の独立した実験による;非提示)。
【0172】
実施例10:GBA活性の上昇は、マウスモデルにおけるα-シヌクレインの蓄積を防止する
野生型ヒトα-シヌクレインタンパク質が脳内で中程度に過剰発現されるマウスモデルは、脳の細胞体におけるα-シヌクレインタンパク質の蓄積に関するモデルとして用いることができる。中枢神経系におけるGBA活性レベルは、マウスおよびヒトにおいてGBA活性を上昇させることが示されているイミノ糖であるイソファゴミン(IFG)(Lieberman R et al., (2007) Nat Chem Biol. Feb;3(2):101-7)もしくはイソファゴミン様物質でマウスを処置すること、または、マウスにおけるGBAタンパク質の投与もしくは過剰発現のいずれかによって高められる。GBA活性の上昇は、中枢および/または末梢神経系の神経細胞におけるα-シヌクレインタンパク質の加齢依存的な蓄積を防止する。
【0173】
実施例11:GBA活性の上昇は、パーキンソン病のマウスモデルにおける治療効果をもたらす
ニューロンにおけるGBA活性を上昇させることの治療効果は、新規な家族性パーキンソン病モデルであるC3H-Tg(SNCA)83Vleにおいて、被験動物の脳内でのα-シヌクレイン凝集物の蓄積の減少を示すことによって確かめられる。このマウスモデルは、マウスプリオン(prnp)タンパク質プロモーターの制御下にある突然変異型A53Tヒトα-シヌクレインを発現する。prnpプロモーターは、中枢神経系のほとんどのニューロンにおいて高レベルの遺伝子発現を実現させることが示されている。8カ月齢までに、ホモ接合性B6;C3H-Tg(SNCA)83Vleマウスは、シヌクレイノパチーに罹患した患者で見られるものに類似した進行性表現型および加齢依存的な細胞質内神経封入体を生じ始める。GBA活性の上昇は、脳の細胞体におけるα-シヌクレインの加齢依存的な蓄積を防止し、疾患表現型を軽減する。
【0174】
実施例12:カテプシンD活性の上昇は、マウスモデルにおけるα-シヌクレインの蓄積を防止する
野生型または突然変異型のヒトα-シヌクレインタンパク質が脳内で中程度に過剰発現されるマウスモデルは、ヒト脳の細胞体におけるα-シヌクレインタンパク質の蓄積のモデルとして用いることができる。カテプシンD活性は、カテプシンD活性の小分子活性化物質もしくは安定化剤によりマウスを全身性に、または脳へのもしくは定位的な注入により処置すること、または、インビボでのカテプシンDタンパク質もしくはそのプレプロタンパク質の投与もしくは過剰発現のいずれかによって高められる。カテプシンD活性の上昇は、脳の細胞体におけるα-シヌクレインタンパク質の加齢依存的な蓄積を防止する。当然ながら、同じ試験を、他のカテプシンポリペプチド、プレポリペプチド、およびそれをコードするポリヌクレオチドを用いて実施することもできる。
【0175】
実施例13:カテプシンD活性の上昇は、パーキンソンのマウスモデルにおける治療効果をもたらす
ニューロンにおけるカテプシンD活性を上昇させることの治療効果は、新規な家族性パーキンソン病モデルであるC3H-Tg(SNCA)83Vleにおいて、被験動物の脳内でのα-シヌクレイン凝集物の蓄積の減少を示すことによって確かめられる。このマウスモデルは、マウスプリオン(prnp)タンパク質プロモーターの制御下にある突然変異型A53Tヒトα-シヌクレインを発現する。prnpプロモーターは、中枢神経系のほとんどのニューロンにおいて高レベルの遺伝子発現を実現させることが示されている。8カ月齢までに、ホモ接合性B6;C3H-Tg(SNCA)83Vleマウスは、α-シヌクレイノパチーに罹患した患者で見られるものに類似した進行性表現型および加齢依存的な細胞質内神経封入体を生じ始める。カテプシンD活性の上昇は、脳の細胞体におけるα-シヌクレインの加齢依存的な蓄積を防止し、疾患表現型を軽減する。当然ながら、このモデルは、他のカテプシンを同様の様式で試験するために用いることもできる。
【0176】
その他の態様
本発明のさまざまな態様を説明してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、さまざまな変更を加えうることは理解されるであろう。したがって、その他の態様も以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シヌクレイノパチーを有するが、リソソーム蓄積症とは臨床的に診断されていない対象を治療する方法であって、
対象に対して、
酸性β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)ポリペプチド、
酸性β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
GBAポリペプチド活性化ポリペプチド、
GBAポリペプチド活性化物質をコードするポリヌクレオチド、
カテプシンDポリペプチド、
プロカテプシンDポリペプチド、および
カテプシンDまたはプロカテプシンDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
のうちいずれか1つまたは複数を、対象の中枢神経系もしくは末梢神経系もしくはその両方における、または、対象のリソソーム区画におけるα-シヌクレインのレベルを低下させるのに有効な量で投与する段階
を含む、方法。
【請求項2】
シヌクレイノパチーが原発性シヌクレイノパチーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD);孤発性または遺伝性のレビー小体型認知症(DLB);シヌクレイン沈着を伴う純粋自律神経不全症(PAF);多系統萎縮症(MSA);脳内鉄蓄積を伴う遺伝性神経変性;および高齢での偶発的レビー小体病のうちいずれか1つまたは複数を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
シヌクレイノパチーが続発性シヌクレイノパチーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
シヌクレイノパチーが、レビー小体亜型のアルツハイマー病;ダウン症候群;進行性核上麻痺;レビー小体を伴う本態性振戦;認知症を伴う、または伴わない家族性パーキンソニズム;パーキンソニズムを伴う、または伴わないタウ遺伝子およびプログラニュリン遺伝子関連性の認知症;クロイツフェルト-ヤコブ病;ウシ海綿状脳症;続発性パーキンソン病;神経毒曝露に起因するパーキンソニズム;α-シヌクレイン沈着を伴う薬物誘発性パーキンソニズム;孤発性または遺伝性の脊髄小脳失調症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);および特発性急速眼球運動睡眠行動障害のうちいずれか1つまたは複数を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
GBA活性化ポリペプチドが、プロサポシンポリペプチド、サポシンAポリペプチド、サポシンBポリペプチド、サポシンCポリペプチド、およびサポシンDポリペプチドのうちいずれか1つまたは複数を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
GBA活性化ポリペプチドがサポシンCポリペプチドを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
GBA活性化ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、プロサポシンポリペプチド、サポシンAポリペプチド、サポシンBポリペプチド、サポシンCポリペプチド、およびサポシンDポリペプチドのうちいずれか1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
α-シヌクレイン複合体のオートファジーを増強する1つまたは複数の薬剤を投与する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤がmTOR阻害剤を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がラパマイシンまたはラパマイシン類似体を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤がエベロリムス、シクロスポリン、FK506、hsc70、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン、およびグリセロールのうち1つまたは複数を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が小分子、大分子、ペプチド、抗体、核酸、またはそれらの生物活性断片を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
シヌクレイノパチーの治療のための医薬を調製する方法における、
酸性β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)ポリペプチド、
酸性β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
GBAポリペプチド活性化ポリペプチド、
GBAポリペプチド活性化物質をコードするポリヌクレオチド、
カテプシンDポリペプチド、
プロカテプシンDポリペプチド、および
カテプシンDまたはプロカテプシンDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
のうちいずれか1つまたは複数の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−535153(P2010−535153A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508624(P2010−508624)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/064017
【国際公開番号】WO2008/144591
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507235262)サ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】