説明

シフト装置

【課題】操作レバーを複数方向に操作可能なシフト装置において、操作レバーの操作によって車両状態をユーザに認知させることができるシフト装置を提供する。
【解決手段】シフトレバー4は、シフト方向及びセレクト方向の2方向に回動操作可能である。シフト機構3は、シフト方向に操作されたシフトレバー4に節度を付与するシフト側節度用モータ24と、セレクト方向に操作されたシフトレバー4に節度を付与するセレクト側節度用モータ25とを備える。これら節度用モータ24,25は、車速に応じた回転数(回転トルク)にて回転することにより、シフトレバー4に車速に応じた節度感を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の変速機の動作状態を切り換える際に操作するシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知のように、車両には、変速機の動作切り換え時に操作するシフト装置が搭載されている。この種のシフト装置では、シフトレバーを操作した感触を操作者に伝えるために、シフトレバーに節度感を付与する節度機構を搭載するものが多い。この節度機構としては、シフトレバーの操作に伴って、ばね材で付勢するボールが節度山を乗り越える際に生じる荷重を節度感として付与する構造が周知である(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−067250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、節度山を用いた節度機構は、ボールを押さえ付けるばね材のばね荷重、ボールの大きさ、節度山の高さによって、節度感が1つの固定値として決まってしまう。このため、車両がどんな状況をとっていても、節度機構は予め決められた1つの節度感しか付与せず、装置としての機能性に乏しい現状があった。また、近年はレンジ位置の多様化に伴い、シフトレバーが複数方向(例えば英大文字H型)に操作される型が多くなってきており、このタイプを前提としたシフト装置の技術開発のニーズもあった。
【0005】
本発明の目的は、操作レバーを複数方向に操作可能なシフト装置において、操作レバーの操作によって車両状態をユーザに認知させることができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、複数の操作方向に操作可能な操作レバーの操作位置を位置検出手段にて検出し、当該検出手段の検出信号を基に電気的に変速機の動作状態を切り換えるシフトバイワイヤ型のシフト装置において、前記操作レバーの操作方向ごとに設けられ、当該操作レバーに各操作方向における節度感を付与する複数の節度発生アクチュエータと、前記操作レバーが操作された際、その操作方向に対応する前記節度発生アクチュエータのみを機能させる変換機構と、車両の状態を検出する車両状態検出手段と、前記操作レバーの操作時、そのときの操作方向に対応した前記節度発生アクチュエータを動作させて、車両状態に応じた節度を発生させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、複数方向に操作可能な操作レバーを操作した際には、その時々の車両状態に応じた節度感が、節度発生アクチュエータからシフトレバーに付与される。このため、操作レバーを複数方向に操作することが可能なタイプのシフト装置において、レバー操作時に操作レバーに発生する付勢力によって、ユーザに車両状態を認知させることが可能となる。よって、機能性の高いシフト装置を提供することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記車両状態検出手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段であり、前記制御手段は、前記節度発生アクチュエータを介して前記操作レバーに車速に応じた節度を発生させることを要旨とする。この構成によれば、操作レバーに車速に応じた節度感を付与することが可能となるので、操作レバーの操作によって車速をユーザに認知させることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記操作レバーは、基準位置から他の操作位置に操作され、他の位置に操作されると、前記基準位置に自動で戻るモーメンタリ式であり、前記制御手段は、前記操作レバーを前記基準位置から他の操作位置に切り換える際の節度を変化させることを要旨とする。この構成によれば、モーメンタリ式の操作レバーにおいて、操作レバーに発生する節度を車両状態に応じて適宜切り換えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記制御手段は、前記車速に応じて前記操作レバーの操作を制限することを要旨とする。この構成によれば、例えば車速が極端に低いときや高いときに操作レバーの操作を制限すれば、無理なシフト操作であることを、操作レバーを介してユーザに認知させることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記制御手段は、前記操作レバーのレンジ位置を他のレンジ位置に切り換えるレンジ位置切換操作の際に、前記車両状態に応じて前記操作レバーに発生する節度を変化させることを要旨とする。この構成によれば、操作レバーのレンジ位置切換操作を介して、車両状態をユーザに認知させることが可能となる。
【0012】
本発明では、前記制御手段は、前記操作レバーのマニュアル操作にて前記変速機のシフトアップ又はシフトダウンを行うシーケンシャル操作の際に、前記車両状態に応じて前記操作レバーに発生する節度を変化させることを要旨とする。この構成によれば、操作レバーのシーケンシャル操作を、車両状態に応じた心地よい操作とすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記変換機構は、前記操作レバーが1軸方向に操作された際、自身のみが独立して回動する第1回動部と、前記操作レバーが他の1軸方向に操作された際、前記第1回動部は回動させずに自身のみが独立して回動する第2回動部とを有するジンバル機構であることを要旨とする。この構成によれば、ジンバル機構という汎用的な機構を使用して、操作レバーを各操作方向に独立して回動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操作レバーを複数方向に操作可能なシフト装置において、操作レバーの操作によって車両状態をユーザに認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のシフト装置のブロック図。
【図2】シフト機構の外観を示す斜視図。
【図3】シフト機構の内部構成を示す分解斜視図。
【図4】(a)はシフトレバーがシフト方向に操作された状態を示す斜視図、(b)はシフトレバーがセレクト方向に操作された状態を示す斜視図。
【図5】各車速においてシフトレバーの操作ストロークと操作力との関係を示すグラフ。
【図6】第2実施形態において各車速におけるシフトレバーの操作ストロークと操作力との関係性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両用のシフト装置に具体化した第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0017】
図1に示すように、シフトバイワイヤ型のシフト装置1には、シフト装置1の動作を制御するシフトECU(Electronic Control Unit)2と、シフト装置1の機構部分であるシフト機構3とが設けられている。シフト機構3は、シフトレバー4の操作位置を内部のポジションセンサ5で検出し、この検出信号をシフトECU2に出力する。シフトECU2は、ポジションセンサ5の検出信号に応じたポジション信号を車両側ECU6に出力し、変速機の動作状態を電気的に切り換える。なお、シフトレバー4が操作レバーに相当し、ポジションセンサ5が位置検出手段に相当する。
【0018】
図2に示すように、シフトレバー4は、車両の変速機の動作状態を切り換える際に操作され、シフト機構3のハウジング7において複数方向に操作可能に取り付けられている。シフトレバー4には、ノブ部8と、ノブ部8を支持する棒状のシャフト9とが設けられている。本例のシフトレバー4は、シフト方向(図2の矢印X方向)と、このシフト方向と直交するセレクト方向(図2の矢印Y方向)との両方向に操作可能である。なお、シフト方向が1軸方向に相当し、セレクト方向が他の1軸方向に相当する。
【0019】
シフトレバー4は、英大文字H型のゲート(図示略)に沿って操作可能であり、H位置(ホーム位置)、N位置(ニュートラル位置)、R位置(リバース位置)、D位置(ドライブ位置)、+位置(シフトアップ位置)、−位置(シフトダウン位置)の各位置に操作可能である。シフトレバー4は、基準位置であるH位置から他の操作位置に操作された後、ノブ部8から手が離されると、自動でH位置に戻るモーメンタリ式である。シフトレバー4をH位置からN位置、R位置、D位置に切り換える操作がレンジ位置切換操作であり、シフトレバー4をH位置から+位置や−位置に切り換える操作がシーケンシャル操作である。
【0020】
シーケンシャル操作では、シフトレバー4がH位置から+位置に操作される度に変速機のギヤが1段ずつシフトアップし、シフトレバー4がH位置から−位置に操作される度に変速機のギヤが1段ずつシフトダウンする。よって、シフトレバー4でシーケンシャル操作を行えば、オートマチック車両でもマニュアル車両のようなシフト切り換えが可能である。
【0021】
図3に示すように、ハウジング7の略ドーム状の上壁には、シフトレバー4のシフト方向及びセレクト方向の動きを許容する開口孔10が貫設されている。シフトレバー4は、ノブ部8がハウジング7の外部に露出する状態で、シャフト9が開口孔10に挿通された取り付け状態をとる。
【0022】
図1、図3及び図4に示すように、シフト装置1には、シフトレバー4に発生する節度感を、車速に応じた値に切り換える節度切換機能が設けられている。本例の節度切換機能は、フィードバック機能の一種として、フォースフィードバック機能を利用して節度切り換えを実施する。フォースフィードバック機能とは、例えば入力操作や走行状況に呼応して、入力装置(即ち、シフトレバー4)に振動や衝撃を与える機能である。本例の節度感とは、例えば操作時のクリック感やレバー操作の重い/軽いなど、シフトレバー4の操作力Fに関するパラメータのことを言う。
【0023】
図3及び図4に示すように、シフト機構3には、シフトレバー4のシフト方向の回動とセレクト方向の回動とを各々独立した動きとして許容するジンバル機構11が設けられている。ジンバル機構11を以下に説明すると、シャフト9の略中間位置には、略四角形状で中空のシフト側連結部12が設けられている。このシフト側連結部12には、セレクト方向(図3のy軸方向)に延びるシフト側回動軸13が挿通され、その先端が例えばナット(図示略)にて抜け止めされている。シフト側回動軸13は、ハウジング7内の軸支持プレート14に取り付けられている。シフト側連結部12には、セレクト方向に延びる長孔状開口15が設けられ、この長孔状開口15にシャフト9が挿通されている。なお、ジンバル機構11が変換機構に相当し、シフト側連結部12及びシフト側回動軸13が第1回動部を構成する。
【0024】
シフト側連結部12の近傍には、略コ字形状のセレクト側連結部16が設けられている。セレクト側連結部16には、シフト方向(図3のx軸方向)に延びるセレクト側回動軸17が挿通され、その先端が例えばナット(図示略)にて抜け止めされている。セレクト側回動軸17も、前述の軸支持プレート14に取り付けられている。セレクト側連結部16において図3のx−y平面方向の壁部18には、シフト方向に延びる長孔19が貫設され、この長孔19にシャフト9が挿通されている。なお、セレクト側連結部16及びセレクト側回動軸17が第2回動部を構成する。
【0025】
図4(a)に示すように、シフトレバー4がシフト方向に操作された際には、シャフト9がシフト側連結部12を押しながらセレクト側連結部16の長孔19に沿って動くことにより、シフトレバー4のシフト側回動軸13回りの回動のみが許容される。一方、図4(b)に示すように、シフトレバー4がセレクト方向に操作された際には、シャフト9がセレクト側連結部16を押しながらシフト側連結部12の長孔状開口15に沿って動くことにより、シフトレバー4のセレクト側回動軸回りの回動のみが許容される。
【0026】
シフト側回動軸13には、略扇形状のシフト側連結片20がシフト側回動軸13と一体回動可能に取り付け固定されている。シフト側連結片20の先端周縁には、複数のギヤ歯からなるギヤ部21が設けられている。また、セレクト側回動軸17にも、シフト側連結片20と同様の形状のセレクト側連結片22がセレクト側回動軸17と一体回動可能に取り付け固定されている。セレクト側連結片22の先端周縁にも、複数のギヤ歯からなるギヤ部23が設けられている。
【0027】
シフト機構3には、シフトレバー4にシフト方向の節度感を付与するシフト側節度用モータ24と、シフトレバー4にセレクト方向の節度感を付与するセレクト側節度用モータ25とが設けられている。これら節度用モータ24,25は、例えばDCモータが使用されている。シフト側節度用モータ24のモータ軸には、複数のギヤ歯を有するギヤ部26が設けられ、これがシフト側連結片20のギヤ部21と噛合されている。また、セレクト側節度用モータ25のモータ軸にも、複数のギヤ歯を有するギヤ部27が設けられ、これがセレクト側連結片22のギヤ部23と噛合されている。なお、節度用モータ24,25が節度発生アクチュエータに相当する。
【0028】
シフト側節度用モータ24のモータ軸の先端には、シフト側節度用モータ24の回転状態を検出するシフト側回転検出センサ28が設けられている。また、セレクト側節度用モータ25のモータ軸の先端にも、セレクト側節度用モータ25の回転状態を検出するセレクト側回転検出センサ29が設けられている。これら回転検出センサ28,29は、例えばホールIC等の磁気センサが使用されている。これら回転検出センサ28,29は、各々検出したパルス信号をシフトECU2に出力する。
【0029】
図1に示すように、シフトECU2には、車両側ECU6から車両の車速情報(車速データ)を取得する車速情報取得部30が設けられている。車速情報取得部30は、例えば車両メータ等で検出される車速を車速情報として車両側ECU6から取得する。なお、車速情報取得部30が車両状態検出手段及び車速検出手段を構成する。
【0030】
シフトECU2には、車速に基づき各節度用モータ24,25を制御することにより、車速に応じた節度感をシフトレバー4に発生させる節度切換制御部31が設けられている。節度切換制御部31は、車速情報取得部30が取得した車速情報に基づくモータ制御信号を各節度用モータ24,25に出力することにより、各節度用モータ24,25を車速に応じた回転数(回転トルク)で回転させて、車速に応じた節度感をシフトレバー4に付与する。なお、節度切換制御部31が制御手段に相当する。
【0031】
本例の場合、節度切換制御部31は、回転検出センサ28,29でH位置からのシフトレバー4の操作を検出すると、その操作方向と逆方向に節度用モータ24,25を回転させて、シフトレバー4に節度を発生させる。このとき、節度切換制御部31は、図5に示すように、シフトレバー4の操作ストロークSに応じて決まる目標操作力にシフトレバー4の実操作力を追従させながら、操作ストロークSに応じた節度感をシフトレバー4に発生させる。
【0032】
詳述すると、節度切換制御部31は、回転検出センサ28,29のセンサ出力からシフトレバー4のH位置からの操作を確認すると、回転検出センサ28,29からのパルス信号のパルス数を計測し、シフトレバー4の操作ストロークSを監視する。そして、節度切換制御部31は、図5に示すように、シフトレバー4の操作ストロークSが大きくなるに連れて徐々に操作力を大きくしていき、最大ストローク位置の手前(操作ストロークS0)でシフトレバー4に最大操作力を付与する。
【0033】
本例の節度切換制御部31は、走行中においてレンジ切換操作やシーケンシャル操作の際に、シフトレバー4に付与する節度感(クリック感、レバー操作の重さ)を、車速に応じた値に設定する。例えば、図5に示すように、シフトレバー4の操作ストロークSがS0に操作される際、車速がV1のときには操作力(節度感)FがF1に設定され、車速がV2(>V1)のときには操作力FがF2(>F1)に設定され、車速がV3(>V2)のときには操作力FがF3(>F2)に設定される。
【0034】
次に、本例のシフト装置1の動作を、図4及び図5を用いて説明する。
図4(a)に示すように、シフトレバー4がシフト方向に操作されたとき、ジンバル機構11が利いて、シフト側の部品群のみがシフト側回動軸13回りに回動する。このとき、シフトレバー4及びシフト側連結片20が一体となって同方向に回転し、シフト側連結片20のギヤ部21にて、シフト側節度用モータ24がシフト側連結片20と逆方向に回転する。節度切換制御部31は、シフト側節度用モータ24の回転開始を、シフト側回転検出センサ28のセンサ出力により確認すると、このときの回転方向とは逆向きにシフト側節度用モータ24を回転させて、シフトレバー4に節度感を発生させる。
【0035】
このとき、節度切換制御部31は、車速情報取得部30が取得する車速情報を基に、シフトレバー4に発生する節度感を、そのときの車速に応じた値に設定する。図5に示すように、例えば車速がV1の場合、図5の破線で示す操作ストロークSと操作力Fとの関係性で以て、シフトレバー4に節度を発生する。即ち、車速V1のときには、シフトレバー4に弱めの節度感が付与される。
【0036】
本例の場合、節度切換制御部31は、シフトレバー4の操作開始から徐々に操作力Fを高くしていく。ここでは、操作ストロークSが高くなるに連れて、操作力Fが略S字の曲線を描くように右肩上がりに変化させる。そして、節度切換制御部31は、操作ストロークSが最大ストローク手前のS0に到達したとき、最大の操作力であるF1を付与する。操作力F1を付与した後、節度切換制御部31は、操作力Fを一旦下げ、最大ストローク付近で操作力Fを再び大きく上昇させる。
【0037】
また、節度切換制御部31は、車速がV2のとき、図5の実線で示す操作ストロークSと操作力Fとの関係性で以て、シフトレバー4に節度を発生させる。即ち、車速V2のときには、シフトレバー4に中間の節度感が付与される。なお、車速V2の際の変化特性である図5の実線の波形は、車速V1の変化特性である破線の波形を、グラフのY軸方向(操作力F方向)において所定量高くした波形となっている。
【0038】
さらに、節度切換制御部31は、車速がV3のとき、図5の一点鎖線で示す操作ストロークSと操作力Fとの関係性で以て、シフトレバー4に節度を発生させる。即ち、車速V3のときには、シフトレバー4に高めの節度感が付与される。なお、車速V3の際の変化特性である図5の一点鎖線の波形は、車速V2の変化特性である実線の波形を、グラフY軸において更に高くした波形となっている。
【0039】
図4(b)に示すように、シフトレバー4がセレクト方向に操作されたとき、ジンバル機構11が利いて、今度はセレクト側の部品群のみがセレクト側回動軸17回りに回動する。このとき、シフトレバー4及びセレクト側連結片22が一体となって同方向に回転し、セレクト側連結片22にギヤ部23にて、セレクト側節度用モータ25がセレクト側連結片22と逆方向に回転する。そして、節度切換制御部31は、セレクト方向に操作されたシフトレバー4に対し、車速に応じた節度感を付与する。なお、セレクト方向操作時におけるシフトレバー4への節度感付与は、シフト方向操作時と同一であるので、説明は省略する。
【0040】
以上により、本例の場合、フォースフィードバック機能を有するシフトバイワイヤ型のシフト装置1において、シフトレバー4に発生する節度感を、車速に応じて切り換え可能とした。よって、シフトレバー4のレンジ位置切換操作やシーケンシャル操作の際に、シフトレバー4に発生する節度を、車速に応じた値に設定することが可能となる。このため、シフトレバー4の操作によって、ユーザに車速を認知させることが可能となる。
【0041】
また、本例によれば、シフトレバー4のレンジ位置切換操作において、シフトレバー4の節度を車速に応じた値に切り換えられるので、車速が速い状態でレンジ位置が切り換えられたことを、シフトレバー4を介してユーザに認知させることが可能となる。また、シフトレバー4のシーケンシャル操作において、シフトレバー4の節度を車速に応じた値に切り換えられるので、シフトレバー4の心地よい操作感や、メータ目視以外の車速認識が可能となる。
【0042】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)シフト方向及びセレクト方向の複数方向に操作可能なシフトレバー4を有したシフトバイワイヤ型のシフト装置1において、シフトレバー4の節度感を、車速に連動して切り換え可能とした。このため、シフトレバー4を操作することにより、ユーザに車速を認知させることができる。よって、機能性の高いシフト装置1を提供することができる。
【0043】
(2)シフトレバー4の節度を決定するパラメータを車速としたので、例えばメータの目視などに頼ることなく、単なるシフトレバー4の操作によって車速を認知することができる。
【0044】
(3)シフトレバー4をモーメンタリ式としたので、この型のシフトレバー4において、シフトレバー4に発生する節度を、車速に連動して適宜切り換えることができる。
(4)シフトレバー4におけるレンジ位置切換操作の際、シフトレバー4の節度が車速に応じて切り換わるので、例えば車速が速い状態でレンジ位置が切り換えられたのか、或いは車速が遅い状態でレンジ位置が切り換えられたのかを、ユーザに認知させることができる。
【0045】
(5)シフトレバー4におけるシーケンシャル操作の際、シフトレバー4の節度が車速に応じて切り換わるので、シーケンシャル操作を車速に応じた心地よい操作とすることができる。また、メータを目視しなくとも、シフトレバー4の操作時に伝わる車速を感じながら、スムーズにシーケンシャル操作を行うこともできる。
【0046】
(6)シフトレバー4は、ジンバル機構11を介してハウジング7に取り付けられる。このため、シフトレバー4がシフト方向に操作された際には、シフト側回動軸13のみが回り、シフトレバー4がセレクト方向に操作された際には、セレクト側回動軸17のみが回るようになる。よって、各回動軸13,17の独立した動きが許容されるので、本例のようなフォースフィードバック機能付きのシフト装置1を実現することができる。
【0047】
(7)シフトレバー4の操作時、操作ストロークSに応じた節度感がシフトレバー4に付与されるように、各節度用モータ24,25がフィードバック制御される。よって、シフトレバー4に対し、操作ストロークSに応じた好適な節度感を発生させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態においてシフトレバー4への節度のかけ方を変更した実施例であって、その他の基本的な構成は同一である。よって、本例は、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0049】
図6に示すように、本例の節度切換制御部31は、車速に応じて、シフトレバー4のシーケンシャル操作を制限する。節度切換制御部31は、車速が低速時、所定のギヤ位置から高い側へのシフトアップ操作を制限したり、車速が高速時、所定のギヤ位置から低い側へのシフトダウン操作を制限したりする。節度切換制御部31は、図6に示すように、短いストローク量で直ぐに高い操作力Fが付与される関係性で以てシフトレバー4に節度を付与することにより、シフトレバー4の操作を制限する。
【0050】
さて、本例の場合、例えば低速(約20km/h)のとき、3速から4速、5速へとシフトアップできないようにする。また、高速(約80km/h)のとき、3速から2速、1速へとシフトダウンできないようにする。これにより、シフトレバー4のシーケンシャル操作において、無理なギヤチェンジ操作であることを、シフトレバー4を介してユーザに認知させることが可能となる。
【0051】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(7)に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)車速が極端に低いときや高いときに、シフトレバー4のシーケンシャル操作を制限するので、無理なシフト操作であることを、シフトレバー4を介してユーザに認知させることができる。
【0052】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、ポジションセンサ5は、磁気センサや光学センサなど、種々のセンサが使用可能である。また、ポジションセンサ5は、無接点式に限らず、有接点式でもよい。
【0053】
・各実施形態において、操作ストロークSと操作力Fとの関係性は、シフト方向とセレクト方向とで同一であることに限定されず、それぞれが異なる態様をとっていてもよい。
・各実施形態において、車速判定はV1〜V3の3段階に限定されず、これよりも段数を少なくしてもよいし、逆に多くしてもよい。
【0054】
・各実施形態において、シフトレバー4に車速に応じた節度を付与する際の処理方式は、操作ストロークSに応じた操作力Fを付与する方式に限定されない。例えば、操作ストロークSに関係なく一律の操作力Fが付与される方式としてもよく、要はシフトレバー4に対して車速(車両状態)に応じた節度感が付与されれば、節度の切り換え方は適宜変更可能である。
【0055】
・各実施形態において、シフトレバー4はモーメンタリ式に限定されず、シフトレバー4が各レンジ位置で保持されるステーショナリ式としてもよい。
・各実施形態において、シフトレバー4の操作方向は、英大文字H字に沿う方向に限定されず、例えば英小文字h型や、これを反転させた型、王という字を90度回して横にした型など、他の方向に適宜適宜変更である。
【0056】
・各実施形態において、アクチュエータ駆動量検出手段(回転検出センサ28,29)は、種々のセンサが使用可能である。
・各実施形態において、節度発生アクチュエータは、モータに限定されず、例えば空気圧シリンダなどの他の駆動源を採用可能である。
【0057】
・各実施形態において、車両状態は車速に限定されず、例えばステアリングホイールの回転角度や、車体に発生する振動など、他のパラメータに変更してもよい。
・各実施形態において、変換機構はジンバル機構11に限定されず、他の機構に変更してもよい。
【0058】
・各実施形態において、本発明は、AT車にかぎらず、MT車においても採用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0059】
(イ)請求項1〜7のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記操作レバーに発生する節度が、当該操作レバーの操作ストロークに応じた値をとるように、前記節度発生アクチュエータをフィードバック制御して該操作レバーに節度を発生させる。この構成によれば、操作レバーに好適な節度を適宜発生させることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1…シフト装置、4…操作レバーとしてのシフトレバー、5…位置検出手段としてのポジションセンサ、11…変換機構としてのジンバル機構、12…第1回動部を構成するシフト側連結部、13…第1回動部を構成するシフト側回動軸、16…第2回動部を構成するセレクト側連結部、17…第2回動部を構成するセレクト側回動軸、24,25…節度発生アクチュエータを構成する節度用モータ、30…車両状態検出手段及び車速検出手段としての車速情報取得部、31…制御手段としての節度切換制御部、V1〜V3…車速。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作方向に操作可能な操作レバーの操作位置を位置検出手段にて検出し、当該検出手段の検出信号を基に電気的に変速機の動作状態を切り換えるシフトバイワイヤ型のシフト装置において、
前記操作レバーの操作方向ごとに設けられ、当該操作レバーに各操作方向における節度感を付与する複数の節度発生アクチュエータと、
前記操作レバーが操作された際、その操作方向に対応する前記節度発生アクチュエータのみを機能させる変換機構と、
車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
前記操作レバーの操作時、そのときの操作方向に対応した前記節度発生アクチュエータを動作させて、車両状態に応じた節度を発生させる制御手段と
を備えたことを特徴とするシフト装置。
【請求項2】
前記車両状態検出手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段であり、前記制御手段は、前記節度発生アクチュエータを介して前記操作レバーに車速に応じた節度を発生させる
ことを特徴とする請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記操作レバーは、基準位置から他の操作位置に操作され、他の位置に操作されると、前記基準位置に自動で戻るモーメンタリ式であり、
前記制御手段は、前記操作レバーを前記基準位置から他の操作位置に切り換える際の節度を変化させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記車速に応じて前記操作レバーの操作を制限する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記操作レバーのレンジ位置を他のレンジ位置に切り換えるレンジ位置切換操作の際に、前記車両状態に応じて前記操作レバーに発生する節度を変化させる
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のシフト装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操作レバーのマニュアル操作にて前記変速機のシフトアップ又はシフトダウンを行うシーケンシャル操作の際に、前記車両状態に応じて前記操作レバーに発生する節度を変化させる
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のシフト装置。
【請求項7】
前記変換機構は、前記操作レバーが1軸方向に操作された際、自身のみが独立して回動する第1回動部と、前記操作レバーが他の1軸方向に操作された際、前記第1回動部は回動させずに自身のみが独立して回動する第2回動部とを有するジンバル機構である
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82357(P2013−82357A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224255(P2011−224255)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】