説明

ショックアブソーバの取付構造

【課題】ショックアブソーバの減衰力の効きを低下させることなく防振マウントによりサスペンションメンバをボデーに搭載する。
【解決手段】ショックアブソーバ10の取付構造は、サスペンションメンバ14に固定されるブッシュ外筒部20と、ボデー16に固定されるブッシュ内筒部24と、ブッシュ外筒部20とブッシュ内筒部24との間に介在するゴム部22とを含む防振マウントブッシュ18と、ショックアブソーバ10の上端部をブッシュ内筒部24に連結するアブソーバブラケット12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンションのショックアブソーバをボデーに取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ショックアブソーバの取付構造として、ショックアブソーバの上端を、例えばブッシュ等を介してピン等によりクロスメンバー等のボデーの所定の部位に取り付けるものが知られている(例えば特許文献1ないし5を参照)。
【特許文献1】特開平8−156552号公報
【特許文献2】特開平10−129227号公報
【特許文献3】特開平8−244427号公報
【特許文献4】特開平5−169939号公報
【特許文献5】特開平4−362407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の取付方法に代えて、ショックアブソーバの上端部をサスペンションメンバに取り付ける場合もある。そのようにすれば、ショックアブソーバをサスペンションメンバに取り付けて一体にボデーに組み付けることが可能となり、組付作業の作業性が向上するという点で好ましい。ところが、サスペンションメンバのボデーへの搭載は、所定の要求範囲に車両の振動や騒音を抑えるために例えばゴム製のブッシュといった防振部材を介してなされる場合がある。これを防振マウントと称する。防振マウントとされたサスペンションメンバにショックアブソーバの上端部を取り付けると、ショックアブソーバの上端部をボデーに直接取り付けるのに比較して、ショックアブソーバの減衰力の効きが低下してしまう。
【0004】
そこで、本発明は、防振部材を介してボデーに搭載されたサスペンションメンバに、減衰力の効きを低下させずにショックアブソーバの上端部を取り付けるためのショックアブソーバの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のショックアブソーバの取付構造は、サスペンションメンバに固定される第1の固定部材と、ボデーに固定される第2の固定部材と、第1の固定部材と第2の固定部材との間に介在する防振部材とを含む防振マウントブッシュと、ショックアブソーバの上端部を第2の固定部材に連結するアブソーバブラケットと、を備える。
【0006】
この態様によれば、サスペンションメンバは防振マウントブッシュを介してボデーに取り付けられるとともに、ショックアブソーバの上端部はアブソーバブラケットを介してサスペンションメンバ防振マウントブッシュの第2の固定部材に固定される。すなわち、サスペンションメンバのボデーへの搭載はいわゆる防振マウントとされる一方、ショックアブソーバはボデーに剛に固定される。よって、ショックアブソーバの減衰力の効きを低下させることなくサスペンションメンバを防振マウントによりボデーに搭載することができる。
【0007】
この場合、ボデーに第2の固定部材を締結して固定する締結手段をさらに備え、アブソーバブラケットは、第2の固定部材とともに締結手段により共締めされてボデーに固定されてもよい。この態様によれば、アブソーバブラケットと第2の固定部材とが共締めという簡素な構成によりボデーに固定される。部品数の増大を招かずに固定することができるので、コストの上昇を抑制するという観点から見て好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ショックアブソーバの減衰力の効きを低下させることなくサスペンションメンバを防振マウントによりボデーに搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るショックアブソーバ10のボデー16への取付構造を模式的に示す図である。図1における上下方向が車両の上下方向に相当する。本実施形態においては、ショックアブソーバ10の上端部は、アブソーバブラケット12を介してサスペンションメンバ14に連結されている。サスペンションメンバ14は、防振マウントブッシュ18を介してボデー16に取り付けられている。なお、ショックアブソーバ10の下端部は、図示されないブラケット及びブッシュ等を介してサスペンション機構のサスペンションアームあるいはアクスルキャリアに取り付けられている。
【0011】
防振マウントブッシュ18は、第1の固定部材としてのブッシュ外筒部20、防振部材としてのゴム部22、及び第2の固定部材としてのブッシュ内筒部24とを含んで構成されている。第1の固定部材及び第2の固定部材は、防振部材よりも剛性の高い部材とされている。ブッシュ外筒部20、ゴム部22、及びブッシュ内筒部24はそれぞれ略円筒状の部材である。
【0012】
ブッシュ外筒部20の内周面にゴム部22の外周面が接着されて固定され、ゴム部22の内周面にブッシュ内筒部24の外周面が接着されて固定され、ゴム部22はブッシュ外筒部20及びブッシュ内筒部24の間に介在している。ブッシュ外筒部20の外周面には、サスペンションメンバ14が固定されている。防振マウントブッシュ18は、ボデー16から突出するボルト部26の周囲に同軸に配設されている。このとき、ブッシュ内筒部24の内周面とボルト部26の外周面との間に微小な間隙を有するように防振マウントブッシュ18は配設されている。
【0013】
ブッシュ外筒部20は、ブッシュ内筒部24よりも車両上下方向の長さが若干短くされており、ブッシュ内筒部24がボルト部26と同軸にボデー16に当接した状態においては、ブッシュ外筒部20はボデー16に接触しないようになっている。ボデー16から突出するボルト部26の先端部には、締結手段としてのナット30が螺合されている。ナット30を充分に締め付けることによりブッシュ内筒部24がボデー16に対して押接されるので、サスペンションメンバ14をボデー16に組み付けることができる。
【0014】
一方、ショックアブソーバ10の上端部には、アブソーバ取付用ブッシュ32がアブソーバアッパーボルト34に締結されて固定されている。アブソーバ取付用ブッシュ32の中央部には、アブソーバブラケット12の一端であるアブソーバ連結部36が連結されている。アブソーバ取付用ブッシュ32の中央部の外表面は、ショックアブソーバ10の中心軸からの距離が小さくされた縮径部が形成されており、この縮径部にアブソーバブラケット12の第1貫通孔42(図2参照)が嵌合されている。
【0015】
ここで、図2を参照して、本実施形態に係るアブソーバブラケット12の形状を説明する。図2は、本実施形態に係るアブソーバブラケット12を模式的に示す斜視図である。アブソーバブラケット12は、全体として略L字状の形状の部材であり、アブソーバ連結部36、接続部38、及びボデー連結部40を含む。接続部38の一端からは、略長円形状の平板状のボデー連結部40が接続部38の長手方向に対して略垂直方向に延びている。接続部38の他端からは、取付状態のショックアブソーバ10の中心軸に垂直な平面に沿うように、略長円形状の平板状のアブソーバ連結部36が延びている。接続部38の長手方向に垂直な平面による接続部38の断面は略L字状とされている。アブソーバ連結部36の中央部には円形状の第1貫通孔42が形成されており、ボデー連結部40の中央部には円形状の第2貫通孔44が形成されている。
【0016】
図1に示されるように、ボデー連結部40の第2貫通孔44にはボデー16から突出するボルト部26が遊挿された状態で防振マウントブッシュ18のブッシュ内筒部24の一端にボデー連結部40の一方の面が当接している。ボデー連結部40の他方の面には座金部28が当接し、ボデー連結部40は、座金部28とブッシュ内筒部24とに挟持されている。このような状態で、ボルト部26の先端部に螺合しているナット30が締結されることにより、アブソーバブラケット12は、ブッシュ内筒部24とともにボデー16に共締めされて固定されている。
【0017】
以上の構成により、例えば次のようにサスペンションメンバ14とショックアブソーバ10とを一度にボデー16に組み付けることができる。まず、上端部にアブソーバブラケット12が取り付けられたショックアブソーバ10の下端部をサスペンション機構のサスペンションアームあるいはアクスルキャリアに予め組み付ける。また、サスペンションメンバ14に防振マウントブッシュ18のブッシュ外筒部20を固定しておく。そして、ボデー16から突出するボルト部26に、防振マウントブッシュ18、アブソーバブラケット12のボデー連結部40、及び座金部28を順次遊嵌させる。次いでボルト部26の先端部にナット30を螺合させてナット30とボルト部26とを締結することにより、防振マウントブッシュ18のブッシュ内筒部24とアブソーバブラケット12とが共締めされる。このようにして、サスペンションメンバ14とショックアブソーバ10とが一度にボデー16に組み付けられる。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、サスペンションメンバ14は防振部材であるゴム部22を介してボデー16に取り付けられる一方、ショックアブソーバ10はアブソーバブラケット12及びブッシュ内筒部24を介してボデー16に剛に固定されることとなる。よって、ショックアブソーバ10の減衰力の効きを低下させることなくボデー16に取り付けることができる。
【0019】
なお、防振マウントとされたサスペンションメンバにショックアブソーバの上端部を直接取り付ける場合には、防振マウントのバネ定数を大きくすることによりショックアブソーバの減衰力の効きの低下を抑えることも可能であろう。ところが、防振マウントのバネ定数を大きくすると、サスペンションメンバからボデーへの振動や騒音の伝達を抑制するという防振マウントの本来の機能を低下させることとなるという問題が生じてしまう。ところが本実施形態によれば、上述のように、サスペンションメンバは防振部材を介してボデーに取り付けられる一方ショックアブソーバはボデーに剛に固定されるので、防振マウントの機能とショックアブソーバの機能を両立することができるという点でも好ましい。
【0020】
本実施形態では、アブソーバブラケット12が防振マウントブッシュ18のブッシュ内筒部24とともに共締めされるという簡素な構成によりボデー16に固定されている。よって、部品数の増大を招かずに固定することができ、コストの上昇を抑制するという観点から見て好ましい。
【0021】
また、本実施形態においては、ショックアブソーバ10の下端部をサスペンション機構に予め取り付けることにより、ショックアブソーバ10をサスペンションメンバ14と一体にボデー16に組み付けることができる。よって、ショックアブソーバ10とサスペンションメンバ14とをそれぞれ別個にボデー16に組み付けるのに比較して、組付作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るショックアブソーバのボデーへの取付構造を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態に係るアブソーバブラケットを模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ショックアブソーバ、 12 アブソーバブラケット、 14 サスペンションメンバ、 16 ボデー、 18 防振マウントブッシュ、 20 ブッシュ外筒部、 22 ゴム部、 24 ブッシュ内筒部、 26 ボルト部、 30 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションメンバに固定される第1の固定部材と、ボデーに固定される第2の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との間に介在する防振部材とを含む防振マウントブッシュと、
ショックアブソーバの上端部を前記第2の固定部材に連結するアブソーバブラケットと、
を備えることを特徴とするショックアブソーバの取付構造。
【請求項2】
前記ボデーに前記第2の固定部材を締結して固定する締結手段をさらに備え、
前記アブソーバブラケットは、前記第2の固定部材とともに前記締結手段により共締めされて前記ボデーに固定されることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−191110(P2007−191110A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12974(P2006−12974)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】