説明

シラン基を有する高分岐型のポリオレフィンを基礎とするバインダー

本発明の対象は、少なくとも1つのシラン基を有し、少なくとも1つのケイ素原子が加水分解可能な基を有する、一般式(I)RA[(CH2)(CHRa)]p-h[(CH2k(CRcd)]m-guqot[(CH2l(CRfsi)]g+hB[式中、RA、RB、Ra、Rc、Rd、Ru、Ro、Rf、Rsi、g、h、k、l、m、p、q、tは、請求項1に示される意味を有し、m−g=r×(ra+p+q+t)という関係を満たし、かつrは0.02より大きいか又はそれと同じ値を取る]の高分岐型のポリマー(P);ポリマー(P)の製造方法;少なくとも1種のポリマー(P)を含有するバインダー;請求項1に記載のポリマー(P)を、単独でもしくは配合物の成分として、バインダーとして、溶融接着剤として、反応性溶融接着剤として、接着箇所の製造のために、接着された構造の製造のために、コーティングの製造のために、塗料の製造のために、接着テープの製造のために、接着シートの製造のために又はフォームの製造のために用いる使用;ポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)の水による架橋方法並びに水による架橋によって又は酸化物基もしくは水とは異なる性質のヒドロキシル基もしくはSiOHとの架橋によって得られる架橋されたポリマー(PV)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン基を有する高分岐型のポリオレフィンを含むポリマー、それをバインダーとして用いる使用、かかるポリマーの製造方法及び架橋方法並びに架橋されたポリマーに関する。
【0002】
バインダーの一実施形態は、例えば溶融接着剤である。溶融接着剤は、好ましくは溶剤を用いずに加工することができる。これは労働災害防止とエミッションの問題を減らす。加工に際して、室温で固体の溶融接着剤は溶融され、接着箇所に適用される。接着剤の定着は、冷却による接着剤の凝固によってもたらされる。かかる溶融接着剤の主成分は、ポリマーであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルアセテート、エチレン−ビニルアセテート−コポリマー又はエチレン−α−オレフィン−コポリマーである。溶融接着剤の非極性の性質に基づき、非極性の基材から極性の基材までの基材、例えばポリオレフィン、PVC、ポリビニルアセテート及びポリエステルなどの基材上での良好な付着が達成される。溶融接着剤は、熱可塑性に振る舞う。すなわち、接着箇所は熱に安定ではなく、かつ接着作用は遅くともポリマーの融点では失われる。種々の溶融接着剤で作られた接着箇所の熱安定性についての一般的な限界は、ASTM D 4498−07に見られる。
【0003】
それに対して、接着の作成後に架橋しうる反応性の溶融接着剤が存在する。かかる反応性の溶融接着剤は、例えば少なくとも1つのオレフィン性二重結合とケイ素原子に少なくとも1つの加水分解可能な基を有するシランでポリマーをグラフト化させ、こうしてシラン架橋性の反応性溶融接着剤を生成させることによって製造できる。好適なものは、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン又はビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランである。シラン架橋性の反応性溶融接着剤から酸化物表面又はヒドロキシル化された表面を有する基材との接着を製造する場合に、基材表面の酸化物の酸素原子もしくはヒドロキシル基を介して、基材と反応性溶融接着剤との間に、溶融接着剤中のシラン基との縮合反応によって結合が生ずる(Adhesion,2007,Iss.4,20〜21頁;Adhaesion,2007,Heft 4,22〜24頁を参照)。これらの溶融接着剤は、従って、ヒドロキシル化された表面/酸化物の表面と非極性の表面のいずれも非常に様々な組み合わせで有する基材からなる基材組み合わせを接着するために適している。
【0004】
本質的に物理的凝固によって融点未満で引き起こされる接着剤接合の作成後に迅速に始まる反応性溶融接着剤の初期付着と定着は、しばしば、助剤を用いない接着剤接合の取付けを可能にする。後にある湿分架橋に際して、溶融接着剤は、より強力な付着性、強度及び熱安定性を発揮する。付着性の発揮は、その際とりわけ、上記のように、接着剤中のシラン基と基材表面上のオキシド基もしくはヒドロキシル基との縮合によって行われる。湿分の作用による架橋は、シロキサン結合の形成によって行われ(湿分架橋あるいは硬化)、それにより熱硬化性樹脂が生じ、高められた熱安定性が保証される。架橋された接着は、高められた温度でも、すなわち相応の未架橋のポリマーの融点近くで融点未満の温度でも残る。ケイ素上の加水分解可能な基は、湿分架橋の第一段階において、つまり加水分解段階において、部分的にもしくは完全に開裂され、それにより、まず相応のシラノールが形成される。従って、多彩な基材(極性から非極性まで、無機の鉱物性もしくは金属性から有機性まで)上での良好な付着と、製造された接着箇所の良好な熱安定性の発揮(一般的な大気的周囲条件下で可能であるため、エージングの間の接着箇所の人工的な加湿及び/又は加熱を省くことができる)、並びにホットメルトとしての確実な加工のために架橋の前に十分に高い反応性溶融接着剤の熱安定性が望まれる。
【0005】
前記で溶融接着剤について記載されるような類似の考察及び経過は、シラン基を有するポリマーを基礎とする他のバインダーにも転用でき、その逆も可能である。溶融接着剤という特定のものと、バインダーという一般的なものとの差異は、一般的なバインダーが室温(20℃)で必ずしも固体である必要はないことである。
【0006】
こう考えると、かかるバインダーの性能は、ポリマーに結合されるシラン基の性質あるいは構造に大きく依存し、かつ決定的に触媒によって影響を受けうるべきであり、その際、シラン基及び/又は触媒の選択に応じて驚くべき効果が生じうる。
【0007】
ここで、US3075948号は、加水分解可能なビニル官能性シランがグラフト化されたポリ−α−オレフィンを記載している。ガラスへの良好な接着性と、良好な熱安定性が挙げられている。反応性溶融接着剤としての使用は記載されていない。
【0008】
EP827994号A1は、ビニルアルコキシシランがラジカル的にグラフト化されたアモルファスのポリ−α−オレフィン、特にビニルトリメトキシシランがグラフト化されたエテン−プロペン−1−ブテン−コポリマーを基礎とする反応性溶融接着剤と、それを用いて接着された構造の空気湿分による後架橋を記載している。
【0009】
EP827994号B1と同様の系は、DE3490656号、DE3390464号T1、DE4000695号C2、EP1303569号B1、EP1508579号A1、EP803530号B1、WO9207009号A2及びDE19516457号A1に記載されている。
【0010】
DE3490656号Cは、ビニルシランがグラフト化されたポリエチレンもしくはエチレン−ビニルアセテート−コポリマー(EVA)の、部分的にカルボン酸の添加下での接着強度を記載している。同様のビニルアルコキシシランがグラフト化されたポリマーをDE3390464号T1が記載しており、その際、該シラングラフト化されたポリマーは圧縮して複合シートとされ、該シートが接着接合の製造のために使用される。
【0011】
DE4000695号C2は、溶融接着剤としての、ビニルアルコキシシランがグラフト化された十分にアモルファスのポリ−α−オレフィンを記載している;同じことがWO9207009号A2にも当てはまり、その際、ここではアモルファスのポリ−α−オレフィンの代わりにワックスがグラフトベースとして使用されている;EP1303569号B1は、アルコキシシラン基を有するバインダーが一般的に記載されている。
【0012】
EP252372号B1は、メルカプト官能性のシラン、例えばHSCH2Si(OMe)3又はHSCH2Si(Me)(OMe)2の、ポリイソブテンのイソプロペニル末端基へのラジカル付加を記載している。該生成物は、例えば接着剤として使用することができる。しかし、かかるメルカプト官能性のシランは、耐え難い異臭を引き起こす。従って、これらのシランは、加工に際して、製造元もしくは加工者側においても、なおも微量の未反応のメルカプト官能性のシランを含有しうる最終生成物の消費者側においても望ましくない。
【0013】
EP1508579号A1は、架橋触媒として物質でジブチルスズジラウレートを用いた場合と用いない場合との、空気湿分の存在下におけるアルコキシシランがグラフト化されたワックスの貯蔵安定性及び架橋性を記載している。
【0014】
DE19516457号A1は、ビニルアルコキシシランがグラフト化されたエチレン−ビニルアセテート−コポリマー及び該コポリマーと、不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸無水物又はそれらの誘導体がグラフト化されている架橋触媒を含有する第二のポリマーとの混合物を記載している。
【0015】
EP1892253号A1及びWO2007/008765号A2は、シラングラフト化されたアモルファスのα−オレフィンポリマーあるいはエテン−α−オレフィン−コポリマー並びに前記ポリマーを、とりわけ接着剤としてもしくは反応性溶融接着剤として用いる使用を記載している。
【0016】
DE102008002163.6号は、α−シラン基を有するポリマーを基礎とするバインダーを記載している。α−シランテクノロジーによって、触媒を用いない場合でさえも又はスズ不含の触媒を用いた場合でさえも、接着箇所の迅速な架橋が達成される。Monatshefte fuer Chemie,2003,134,1081〜1092頁においては、ポリオレフィンもしくはエチレン−ビニルアセテート−コポリマーへのグラフト化のために、又はエチレン−メタクリレート−コポリマーへのグラフト化のために、あるいは迅速に架橋する接着剤の製造のために、(メタクリルオキシメチル)シランを使用することが提案される。どのようにして、かかる接着剤を製造でき、加工でき、かつ/又は架橋できるかという具体的な取り扱い指示は、しかしながら示されていない。
【0017】
Degussa社あるいはEvonik社は、シラングラフト化されたアモルファスのポリ−α−オレフィン(APAO)をVestoplast(登録商標)206として販売している。
以下を参照のこと:
https://my.coatings−colorants.com/wps/PA_1_2_2B1/showOutOfBandContentServlet?content=oobc://brochures/.%2Fpdfs%2Fresins%2Fvestoplast_product_range_0407.pdf
及び
https://my.coatings−colorants.com/wps/PA_1_2_2B1/showOutOfBandContentServlet?content=oobc://brochures/.%2Fpdfs%2Fresins%2Fkeeping_together_34_09_109_e_0508.pdf
【0018】
シラン官能性のバインダーに関しては、該バインダーが、未架橋の状態で溶融物中において加工温度で、一般に80〜250℃の範囲において安定であるのみならず、可能な限り低い粘度を有し、そのため容易に加工できることが望ましい。多くの接着されるべき基材、例えばポロプロピレンなどの基材は、とりわけその融点に基づき限定的にのみ温度安定性であるにすぎないので、該バインダーは、可能な限り低い温度の範囲において、特に最大で160℃までの範囲において低い粘度を有さねばならない。従って、バインダーの使用適性の評価のためには、任意の温度でのバインダーの粘度を評価せねばならないのみならず、その粘度の温度依存性も評価せねばならない。たしかに、粘度は、添加剤、例えばオイルもしくはワックスなどの添加剤によって調整できるものの、これらの添加剤は、バインダーの他の特性、例えばその粘着力にしばしば悪影響を及ぼす。ここで、バインダーの粘着力は、その引裂強度で測定できるが、それは未架橋の状態と架橋された状態で可能な限り高いべきである。引裂強度の測定のための測定方法については、規格DIN EN ISO 527を参照のこと。バインダーの粘着力が低ければ、接着箇所が破損した場合にバインダーは引きちぎれ、一方で、接着されたどの基材表面上にもバインダーの一部は付着したままである。接着箇所の破断イメージの評価のための手引きについては、DIN EN ISO 10365を参照のこと。種々のバインダーを比較した場合に、しばしばバインダーの高い粘着力(引裂強度)には、広い温度範囲にわたる、一般に100〜190℃にわたる、特に低い温度での、特に120〜160℃の範囲での高い粘度が伴うことが示される。その反対に、しばしば、広い温度範囲にわたる、一般に100〜190℃にわたる、特に低い温度での、特に120〜160℃の範囲でのバインダーの低い粘度には、低い粘着力が伴う。
【0019】
改善された粘着強度を、同時に可能な限り低い粘度で有し、とりわけ100〜190℃の範囲において、特に120〜160℃の範囲において、様々な種類の基材に対する同時に良好な付着性を有する架橋可能なバインダーが求められている。(バインダーの粘着力についての尺度は、この場合例えばその引裂強度(引裂試験における最大の引張応力もしくは引裂応力又はその両者)であり、バインダーの付着性についての尺度は、例えばバインダーを用いて作成された接着の引張剪断接着強さである)。バインダーは、更に、可能な限り迅速に、可能な限り穏やかな条件下で、例えば室温で大気湿分において架橋すべきである。バインダーが架橋の過程で揮発性有機分解産物(揮発性有機化合物="volatile organic chemicals"=VOC)を放出する場合に、これらの分解産物は可能な限り毒性が僅かであるべきであって、かかる分解産物のエミッションは、可能な限り低いべきであり、かつ迅速におさまるべきである。ここで、特に揮発性有機化合物としてのイソシアネートは健康を害するものであり、殆ど心配ないか又は全く心配がない化合物、例えばアルコールは比較的良好に適合性である。
【0020】
刊行物DE827994号においては、不飽和の有機官能性の基を有するアルコキシシランをアモルファスのポリ−α−オレフィンへとグラフト化させることによって得られるアルコキシシラン基の架橋によって粘着力の改善が達成できることが記載されている;相応のグラフト化生成物は、その際、バインダーとして又は後架橋可能であり、かつ架橋された状態で、例えば改善された熱安定性を有する接着の製造のためのバインダー成分として使用される。DE827994号において公開された技術に基づいて、従って、バインダーの粘着強度は、未架橋の状態においてのみ(湿分架橋の前に)決定的に、グラフト化のために使用されるポリマーによって決定される一方で、該粘着強度は、架橋された状態において(湿分架橋の後に)完全に決定的に、シロキサン基によってポリマー分子間で製造される網目構造によって決定されることを予想することができる。
【0021】
本発明の範囲内において、ポリマー骨格の特性が、未架橋の状態だけでなく、驚くべきことに、架橋された状態においても、例えば前記ポリマーから製造されたバインダーの高い粘着強度などの特性の点で決定的に注意を引くことが確認された。更に、驚くべきことに、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィン(HBPO)、特に高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレン(HBPE)は、特に良好に、シラン基の湿分架橋によるのみならず、ポリマー骨格の分岐型の構造の特に好適な選択によっても良好な粘着力という特性(未架橋状態と架橋された状態で)と低温で低い粘度という特性(未架橋の状態で)(特に120〜160℃の範囲において)とが合わさったシラン基を有するポリマーの製造のために適していることが確認された。"ポリマーの骨格"及び"ポリマー骨格"並びに"高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィン(HBPO)"及び"高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレン(HBPE)"という概念は、以下に示されるポリマー(P)と同様に更に以下に定義される。
【0022】
本発明の対象は、少なくとも1つのシラン基を有し、少なくとも1つのケイ素原子が加水分解可能な基を有する、一般式I
【化1】

[式中、
A及びRBは、一価の末端基であり、
aは、水素又は炭化水素基を表し、
c及びRdは、水素又は炭化水素基を表し、
Uは、不飽和の二価もしくは三価の炭化水素基を表し、
Oは、基−CH2−C(H)(OH)−、−CH2−C(H)(OOH)−、−CH2−C(=O)−、−C(H)(OH)−、−C(H)(OOH)−又は−C(=O)−を表し、
基[(CH2k(CRcd)]の構造は、基[(CH2)(CHRa)]の構造と同一ではなく、
ポリマー(P)の製造のためには、少なくとも1つの合成工程で、構造H2C=C(H)(Ra)のモノマーが使用され、
ポリマー(P)を製造するためには、構造H2C=C(Rc)(Rd)のモノマーはどの合成工程でも使用されず、
モノマーH2C=C(H)(Ra)の構造は、モノマーの構造H2C=C(Rc)(Rd)とは同一ではなく、
gは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
hは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
kは、0又は1の値を取ってよく、
lは、0又は1の値を取ってよく、
mは、1より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
pは、9より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
qは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
tは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
g+hの合計は、1より大きいかそれと等しい値を取り、
q+p+m+tの合計は、10より大きいかそれと等しい整数値を取り、
m−gの差は、1より大きいかそれと等しい値を取り、
p−hの差は、5より大きいかそれと等しい値を取り、
m−g=r×(m+p+q+t)という関係を満たし、
rは、0.02より大きいかそれと等しい値を取り、
fは、水素もしくは炭化水素基を表し、又は基RSiを表し、
Siは、ケイ素原子を有する基を意味し、その際、全てのRSiの少なくとも50モル%は、基[−(R2v−C1(R32))w−R4x−SiXs13-s]を意味し、その際、
1は、炭化水素基もしくはヒドロキシル基もしくはSi1〜Si20−シロキシ基又は1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基Xで、Siに結合されたヒドロキシル基でもしくはC1〜C20−炭化水素基でもしくは基−C233で置換されていてよいシランの縮合されたシラン加水分解物を表し、又は構造−C233を取り、
2は、結合又はC1〜C20−炭化水素基を表し、前記基は、1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換されていてよく、又は1もしくは複数の二価の基Q2によって中断されていてよく、又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されていてよく、その際、vが0でない場合に、炭素原子C1に結合されているR2中のその原子が炭素原子であり、
3は、水素又は非置換のもしくは1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換されたもしくは1もしくは複数の二価の基Q2によって中断されたもしくは1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されたC1〜C18−アルキル基もしくはC6〜C10−アリール基を意味し、その際、炭素原子C1もしくはC2に結合されているR3中のその原子が炭素原子もしくは水素原子であり、
4は、1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランの加水分解物からの二価のシロキサン基であって、Siに結合された基Xで、Siに結合されたヒドロキシル基でもしくはC1〜C20−炭化水素基でもしくは基−C233で置換されていてよい基を表し、その際、xが0でない場合に、単位SiXs13-sに結合されているR4中のその原子が酸素原子であり、かつ単位−(R2v−C1(R32))w−に結合されているR4中のその原子がケイ素原子であり、
1は、フッ素置換基、塩素置換基、臭素置換基、ヨウ素置換基、シアナト置換基、イソシアナト置換基、シアノ置換基、ニトロ置換基、ニトラト置換基、ニトリト置換基、シリル置換基、シリルアルキル置換基、シリルアリール置換基、シロキシ置換基、シロキサンオキシ置換基、シロキシアルキル置換基、シロキサンオキシアルキル置換基、シロキシアリール置換基、シロキサンオキシアリール置換基、ヒドロキシ置換基、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、アシルオキシ置換基、S−スルホナト置換基、O−スルホナト置換基、スルファト置換基、S−スルフィナト置換基、O−スルフィナト置換基、アミノ置換基、アルキルアミノ置換基、アリールアミノ置換基、ジアルキルアミノ置換基、ジアリールアミノ置換基、アリールアルキルアミノ置換基、アシルアミノ置換基、イミド置換基、スルホンアミド置換基、メルカプト置換基、アルキルチオ置換基もしくはアリールチオ置換基、O−アルキル−N−カルバマト置換基、O−アリール−N−カルバマト置換基、N−アルキル−O−カルバマト置換基、N−アリール−O−カルバマト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいP−ホスホナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいO−ホスホナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいP−ホスフィナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいO−ホスフィナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいホスフィノ置換基、ヒドロキシカルボニル置換基、アルコキシカルボニル置換基、アリールオキシカルボニル置換基、環式もしくは非環式のカーボネート置換基、アルキルカーボネート置換基もしくはアリールカーボネート置換基から選択されるヘテロ原子を有する一価の基を意味し、
2は、−O−、−S−、−N(R11)−、−C(O)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−O−、エポキシ、−O−C(O)−N(R11)−、−N(R11)−C(O)−O−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)−O−、−S(O)2−O−、−O−S(O)2−O−、−C(O)−N(R11)−、−S(O)2−N(R11)−、−S(O)2−N[C(O)R13]−、−O−S(O)2−N(R11)−、−N(R11)−S(O)2−O−、−P(O)(OR12)−O−、−O−P(O)(OR12)−、−O−P(O)(OR12)−O−、−P(O)(OR12)−N(R11)−、−N(R11)−P(O)(OR12)−、−O−P(O)(OR12)−N(R11)−、−N(R11)−P(O)(OR12)−O−、−N[C(O)R13]−、−N=C(R13)−O−、−C(=NR11)−、−C(R13)=N−O−、−C(O)−N[C(O)R13]−、−N[S(O)214]−、−C(O)−N[S(O)214]−、−N[P(O)R152]−、−Si(R162)−、−[Si(R162)O]a−、−[OSi(R162)]a−、−[OSi(R162)]aO−から選択されるヘテロ原子を有する二価の基を意味し、その際、R11、R12及びR13は、水素又は置換されていてよいC1〜C20−アルキル基もしくはC6〜C20−アリール基を表し、R14は、置換されていてよいC1〜C20−アルキル基もしくはC6〜C20−アリール基を表し、R15は、置換されていてよいC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール基、C1〜C20−アルコキシ基もしくはC6〜C20−アリールオキシ基を表し、R16は、C1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール基、C1〜C20−アルコキシ基もしくはC6〜C20−アリールオキシ基を表し、かつaは、1〜100の数を表し、
3は、−N=もしくは−P=から選択されるヘテロ原子を有する三価の基を表し、
Xは、加水分解可能な基を意味し、
sは、1、2又は3の値を意味し、
vは、0又は1の値を意味し、
wは、0又は1の値を意味し、
xは、0又は1の値を意味する]のポリマー(P)である。
【0023】
ポリマー(P)は、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンであって、その製造の過程で使用される構造CH2=CHRaのモノマーによって構造が決定されないポリオレフィンである。それは、一般式I中の構造単位[(CH2)(CHRa)]及び[(CH2k(CRcd)]に関係づけられる:ポリマー(P)の製造のために、少なくとも1つの合成工程で、構造CH2=CHRaが使用された。これらのモノマーの簡単な重付加によって、一般式Iに示される構造単位[(CH2)(CHRa)]が得られるが、構造単位[(CH2k(CRcd)]は得られない。構造単位[(CH2k(CRcd)]は、いわゆる分岐又は分岐箇所であり、それはモノマーCH2=CHRaの重合もしくは共重合の過程で進行しうる副反応によって、構成異性化を引き起こす反応によって形成される。かかる副反応は、例えば金属触媒による"連鎖歩行異性化"反応又はラジカル転移反応であってよく、更に以下により詳細に記載されている。構造単位[(CH2)(CHRa)]は、本発明の意味においては、分岐もしくは分岐箇所とは呼ばれない。それというのも、その構造は使用されるモノマーCH2=CHRaの構造によって決定されないからである。
【0024】
前記のシラン基を有する高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィン(P)は、同様に、極性でも非極性でも、非常に様々な基材上に優れた付着性を有する。ポリマー(P)をバインダーとしてもしくはバインダーの成分として使用する場合に、該バインダーは、改善された付着強度を、同時に低い粘度で有する。とりわけ、これは、100〜190℃の範囲、特に120〜160℃の範囲での粘度に関連し、同時に様々な種類の基材上での良好な付着性があり、その際、バインダーの粘着力は、その引裂強度(引裂試験における最大応力もしくは引裂応力)で測定でき、かつバインダーの付着力は、とりわけバインダーを用いて製造された接着の引張剪断接着強さで測定できる。バインダーは、迅速に穏やかな条件下で、例えば室温で大気湿分において架橋する。バインダーが、架橋の過程で、揮発性有機分解産物(揮発性有機化合物="volatile organic chemicals"=VOC)を放出する場合に、この分解産物は、湿分架橋の場合には、特に好ましくは基Xがアルコキシ基から選択された場合は、アルコールであり、従ってポリマー(P)の前記のアルコール性の分解産物は、ポリウレタンベースの従来のバインダーから放出されるイソシアネートよりも明らかに健康への害は低い。
【0025】
基[(CH2k(CRcd)]、RU、RO、[(CH2l(CRfSi)]及び[(CH2)(CHR8)]は、一般式Iにおいて、例えば無作為に分配されていてよく、又は前記基は、例えばブロックとしてもしくは交互に存在してもよい。
【0026】
変数rは、ポリマー(P)の分岐度を示す。該変数rは、少なくとも0.02の値、好ましくは少なくとも0.04の値、特に少なくとも0.06の値を取る。ポリマー(P)は、平均して、少なくとも20個の、好ましくは少なくとも40個の、特に好ましくは少なくとも60個の分岐を、1000個の重合されたオレフィンモノマー当たりに有する。その際、分岐という概念は、上記定義の通りである。1000個の重合されたオレフィンモノマー当たりの分岐度は、一般式Iのポリマー(P)について、r×1000である。分岐度は、1000個の炭素原子当たりの分岐でも示すことができる。ここで例えば、r=0.02の分岐度、すなわち1000個の重合されたモノマー当たり20個の分岐は、例えば高分岐型のポリエチレン(モノマー;エテン、C2)の場合には、1000個の炭素原子当たりに10個の分岐の分岐度に相当する。好ましくは、式[(CH2k(CRcd)]の構造単位によって表される分岐は、k=0の場合に、2〜100個の炭素原子を、特に2〜20個の炭素原子を有し、又はk=1の場合に、3〜100個の炭素原子を、特に3〜20個の炭素原子を有する。分岐度の測定のための方法は、実施例の部分に記載されている。
【0027】
A及びRBは、一価の基、例えば水素、塩素、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシ、アルキルペルオキシ、アリールペルオキシ、C1〜C10−アルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、t−ペントキシ基、フェニル基、ベンゾイル基、ラウロイル基、ベンゾイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、C1〜C10−アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基又はビニル基、CH=CHRaもしくはCH=CRcdである。
【0028】
Uは、好ましくは二価のもしくは三価の不飽和のC2〜C10−炭化水素基、例えば−CH=CH−、−CH=CRa−、−C(=CH2)−、−C(=CHRa)−、=C=CH−、=C=CRa−、−C≡C−、−CH(CH=CH2)−、−CH(C≡CH)−、−CH(CH=CHCH3)−、−CH(C≡CCH3)−、−CH(CH2CH=CH2)−、−CH(CH2C≡CH)−、−CH(CH2CH2CH=CH2)−、−CH(CH2CH=CHCH3)−、−CH(CH=CH2CH2CH3)−の基もしくはそれらを含む基などの基を表す。例えば、シス型の及びトランス型の二重結合、三重結合、累積二重結合及び共役二重結合が、RU中に存在してよい。
【0029】
aが炭化水素基を表す場合に、この基は、飽和のもしくは不飽和の、脂肪族の、芳香族のもしくはオレフィン性の、環式のもしくは非環式のものであってよく、かつ好ましくは1〜10個の、特に最大で6個の炭素原子を有する。好ましい基Raは、水素、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル及びフェニル、特に水素である。Raが水素として選択される場合に、ポリマー(P)の骨格は、高分岐型のポリエチレンの基である。ポリマー(P)の製造のためには、互いに独立して、1もしくは複数の合成工程において、1もしくは複数の構造H2C=CHRaの種々のモノマーを使用してよい。ポリマー(P)は、相応して、互いに独立して、1もしくは複数の種々の基Raを有してよい。
【0030】
好ましい基Rc及びRdは、水素又は直鎖状のもしくは分枝鎖状の、飽和のもしくは不飽和の、C1〜C100−、一般にC1〜C30−、好ましくはC1〜C20−、特にC1〜C10−炭化水素基、例えばC1〜C30−、C2〜C30−、C3〜C30−、C4〜C30−、C5〜C30−、C6〜C30−、C7〜C30−、C8〜C30−、C9〜C30−、C10〜C30−、C11〜C30−、C12〜C30−、C13〜C30−、C14〜C30−、C15〜C30−、C16〜C30−、C17〜C30−、C18〜C30−、C19〜C30−、C20〜C30−又はC21〜C30−炭化水素基である。既にそれ自体がポリマーと見なされない長さのRc及びRdが好ましい。1種、2種もしくは複数種の選択された鎖長又は分岐、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6もしくはC7又はそれより長いものが、累積的に存在してよい。炭化水素基のための例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル(1−メチルブチルもしくは1−エチルプロピル)、イソペンチル(2−メチルブチルもしくは3−メチルブチル)、t−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、ビニル、1−メチルビニル、2−メチルビニルである。
【0031】
q+p+m+tの合計は、好ましくは少なくとも20、特に少なくとも30であり、かつ好ましくは高くても20000、特に高くても10000である。
【0032】
fは、好ましくは上記にRaについて好ましいものとして示した意味と同じ意味を取る。Rfは、特に好ましくは水素を意味する。
【0033】
本件においては、"ポリマー(P)の骨格"又は"ポリマー(P)のポリマー骨格"という概念が使用され、その際、その骨格という概念は、その場合に、ポリマー(P)の骨格がポリマー(P)から基Rf及びRSiを取り除くことによって生ずるように定義されている。
【0034】
−(R2v−C(R32))w−R4x−は、加水分解可能なシラン基SiXs13-sとポリマー(P)の骨格とのリンカーである。w=x=0が選択される場合に、前記リンカーは結合である。
【0035】
ポリマー(P)は、特に効果的な使用を保証するために、X線回折又は溶融エンタルピーにより測定される、好ましく規定された結晶化度を超過しない。ポリマー(P)は、好ましくは、X線回折又は溶融エンタルピーにより測定された、高くても65%の結晶化度を有する;特にポリマー(P)の結晶化度は、高くても50%、特に好ましくは高くても35%である。ポリマーの結晶化度は、該ポリマーの、例えば"示差走査熱量測定(DCS)"によって測定できる融解熱から、その調査されたポリマーの規格化された融解熱を、相応の結晶性ポリマーの規格化された基準融解熱によって割ることによって計算することができる。ここで、直鎖状の結晶性のポリエチレンの規格化された基準融解熱は、280.5J/g(Polymer Handbook,Fourth Edition,Volume 1,S.V/13;編集者:J.Brandrup、E.H.Immmergut、E.A.Grulke;Wiley Interscience,1999,Hoboken,NJ,USA,ISBN 0−471−48171−8)である;この値は、他のポリエチレンの結晶化度をその融解熱をもとに計算するための基準融解熱として使用される。
【0036】
ポリマー(P)は、DSC("示差走査熱量測定")による溶融吸熱量の測定により測定される、好ましいと規定される溶融範囲を有し、その溶融吸熱量のピークは、150℃未満、好ましくは130℃未満、特に110℃未満であり、かつ溶融吸熱量の熱的により高い位置にある末端は、160℃未満、好ましくは140℃未満、特に120℃未満である。複数の溶融吸熱量が異なる結晶性の範囲にあるときに、この場合には熱的に最も高い位置にある溶融吸熱量が考慮されるべきである。
【0037】
ポリマー(P)が溶融接着剤として又は溶融接着剤調製物中の成分として使用されるべきであれば、該ポリマー(P)は、DSC("示差走査熱量測定")による溶融吸熱量の測定により測定される、好ましいと規定される溶融範囲を有し、その溶融吸熱量のピークは、30℃超、好ましくは40℃超、特に50℃超であり、かつ溶融吸熱量の熱的により高い位置にある末端は、40℃超、好ましくは50℃超、特に60℃超である。複数の溶融吸熱量が異なる結晶性の範囲にあるときに、この場合には熱的に最も高い位置にある溶融吸熱量が考慮されるべきである。
【0038】
ポリマー(P)の溶融範囲は、例えば該ポリマーのモル質量によって、そのシラン官能化の程度によって、そしてとりわけその分岐度によって調整することができる(F.J.Balta Calleja,A.Schoenfeld,"Melting point and structure of polyethylene of low degree of polymerization",Faserforschung und Textiltechnik 1967、第18巻、第4号、170〜174頁を参照のこと)。ここで、例えば非常に高分岐型のポリエチレンは、室温に至るまで液状であることがある(P.Cotts,Z.Guan,E.Kaler,C.Co,"Structure of Highly Branched Polyethylenes Obtained with a Chain−Walking Catalyst",American Physical Society,Annual March Meeting,20.−24.Maerz 2000,Minneapolis,MN,Abstract #I22.012を参照のこと)。この箇所でシラン官能性のポリオレフィンについて記載されるのと同じ、分岐度もしくはモル質量と溶融範囲との間での関係は、傾向的にシラン官能性のポリマー(P)についても当てはまる。
【0039】
ポリマー(P)のモル質量分布は、単峰性、二峰性又は多峰性であってよく、かつ多分散性Mw/Mnは、好ましくは少なくとも1であり、かつ好ましくは高くても200、特に好ましくは高くても100、特に高くても40である。
【0040】
好ましくは、ポリマー(P)は、150℃で測定した粘度、200Pa・s未満、特に50Pa・s未満を有する。好ましくは、ポリマー(P)は、190℃で測定した粘度、100Pa・s未満、特に25Pa・s未満を有する。
【0041】
ポリマー(P)は、好ましくは、数平均のモル質量Mnを、少なくとも2000g/モル、特に少なくとも3000g/モルで、かつ高くても50000g/モル、特に高くても20000g/モルで有する。ポリマー(P)は、好ましくは、質量平均のモル質量Mwを、少なくとも3000g/モル、特に少なくとも5000g/モルで、かつ高くても500000g/モル、特に高くても200000g/モルで有する。数平均のモル質量Mnと質量平均のモル質量Mwは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0042】
ポリマー(P)は、例えば分解によって、例えば熱分解によって又はラジカルによるビスブレーキング反応によって、ラジカルによる架橋反応によって、電磁線の作用によって又は湿分の作用下での加水分解反応もしくは縮合反応によって変性することができる。これらの変性は、例えば更に以下に記載されるようなポリマー(P)の製造方法のラジカル条件の間に、又は別個の段階において行うことができ、かつ該変性は、場合により制御された酸素濃度を有する雰囲気中で行うことができ、その際、酸化反応が進行することがあり、その反応により、場合により付加的な基ROの形成がもたらされることがある。ポリマー(P)の加工性を保証するために、これらの変性は、好ましくはゲル化した生成物をもたらすべきではない。すなわち、前記変性は、ポリマー(P)のゲル点に達するか又は超過するようには行われるべきでない。ポリマー(P)は、DIN EN 579に記載されるように、安定剤を含有する沸騰しているキシレン中での抽出によって測定して、好ましくは0%〜5%のゲル含量、特に0%〜2%のゲル含量を有する。規格DIN EN 579は、架橋されたポリエチレン製の管についてのゲル含量測定に対するものであり、記載される方法は、ポリマー(P)と、そこから製造されるバインダーに転用することができる。
【0043】
ポリマー(P)は、飽和のもしくは不飽和の又は多不飽和のものであってよく、不飽和の基は、骨格に沿って、枝部に、又は骨格のもしくは枝部の末端に存在してよい。好ましくは、ポリマー(P)は、シラン官能性の高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンであり、すなわちこの場合には、Raは水素を表す;高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンは、短縮して、HBPEと呼ばれる。
【0044】
基Q1が1もしくは複数のケイ素原子を有する場合に、これらは、好ましくはアルコキシ基(特にメトキシもしくはエトキシ)、アルキル基(特にメチルもしくはエチル)又はアリール基(特にフェニル)で置換されていてよい。好ましい置換基Q1は、クロロ置換基、ブロモ置換基、シアノ置換基、シリル置換基、シリルアルキル置換基、シリルアリール置換基、シロキシ置換基、シロキサンオキシ置換基、シロキシアルキル置換基、シロキサンオキシアルキル置換基、シロキシアリール置換基、シロキサンオキシアリール置換基、ヒドロキシ置換基、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、アシルオキシ置換基、アミノ置換基、アルキルアミノ置換基、アリールアミノ置換基、ジアルキルアミノ置換基、ジアリールアミノ置換基、アリールアルキルアミノ置換基、アシルアミノ置換基、イミド置換基、スルホンアミド置換基、O−アルキル−N−カルバマト置換基、O−アリール−N−カルバマト置換基、N−アルキル−O−カルバマト置換基、N−アリール−O−カルバマト置換基、アルコキシカルボニル置換基、アリールオキシカルボニル置換基、環式のもしくは非環式のカーボネート置換基、アルキルカーボネート置換基もしくはアリールカーボネート置換基、特にクロロ置換基、シリル置換基、シロキシ置換基、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、アシルオキシ置換基、アシルアミノ置換基、O−アルキル−N−カルバマト置換基、O−アリール−N−カルバマト置換基、N−アルキル−O−カルバマト置換基、N−アリール−O−カルバマト置換基、アルコキシカルボニル置換基又はアリールオキシカルボニル置換基である。
【0045】
好ましい置換基Q2は、−O−、−N(R11)−、−C(O)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−O−、エポキシ、−O−C(O)−N(R11)−、−N(R11)−C(O)−O−、−S(O)2−O−、−O−S(O)2−O−、−C(O)−N(R11)−、−S(O)2−N(R11)−、−S(O)2−N[C(O)R13]−、−O−S(O)2−N(R11)−、−N(R11)−S(O)2−O−、−N[C(O)R13]−、−N=C(R13)−O−、−C(=NR11)−、−C(R13)=N−O−、−C(O)−N[C(O)R13]−、−N[S(O)214]−、−C(O)−N[S(O)214]−、−Si(R162)−、−[Si(R162)O]a−、−[OSi(R162)]a−、−[OSi(R162)]aO−、特に−O−、−C(O)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−N(R11)−、−N(R11)−C(O)−O−、−C(O)−N(R11)−、−N[C(O)R13]−、−Si(R162)−、−[Si(R162)O]a−、−[OSi(R162)]a−である。
【0046】
1は、好ましくは非置換のC1〜C6−アルキル基もしくはフェニル基、特にメチル基もしくはエチル基である。
【0047】
2は、炭素原子と水素原子のみを含むC1〜C20−炭化水素基、特に−CH2−又は−CH2CH2−から選択される基である。
【0048】
3は、好ましくは水素又は非置換のC1〜C18−アルキル基もしくはC6〜C10−アリール基、特に水素又はメチル基、エチル基もしくはフェニル基である。
【0049】
4は、好ましくは1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基Xで又は炭素と水素のみを有するC1〜C20−炭化水素基で置換されていてよいシランの加水分解物からの二価のシロキサン基である。
【0050】
基−(R2v−C1(R32w−は、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する非置換の炭化水素基又は結合(すなわち、wは後者の場合には値0を取る)を表す。好ましい基−(R2v−C1(R32))w−は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。特に、−(CH2α−もしくは−(CH2β−CH(CH3)−(CH2γ−から選択される構造又は結合を表す−(R2v−C1(R32))w−が好ましく、その際、αは、2〜20の整数を、好ましくは2又は3を意味し、βは、0〜20の整数を、好ましくは0又は1を、特に0を意味し、かつγは、0〜20の整数を、好ましくは0又は1を、特に0を意味し、かつβ=0とγ=0〜10の組み合わせ(特にβ=0とγ=0、1もしくは2の組み合わせ)又はβ=1とγ=0の組み合わせが好ましい。
【0051】
"加水分解可能な基X"という概念は、Si−X型の結合が、場合により触媒の補助により、水によって開裂できることを意味し、その際、一般に分子HX及び基Si−OHが生じ、それらは、場合により後続反応し、例えば縮合反応などの反応を生ずる。好ましい基Xは、アルコキシ、アルケンオキシ、アミノ、炭化水素アミノ、アシルアミノ、プロペン−2−オキシ、アミノ、C1〜C10−アルキルアミノ、C6〜C20−アリールアミノ、ジ−C1〜C10−アルキルアミノ、ジ−C6〜C20−アリールアミノ及びC6〜C20−アリール−C1〜C10−アルキルアミノ、特にC1〜C6−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、イソペントキシ、s−ペントキシ、t−ペントキシ、n−ヘキソキシである。
【0052】
sは、好ましくは2又は3の値を意味する。vは、好ましくは1の値を意味する。xは、好ましくは0の値を意味する。
【0053】
ケイ素を有する基ではあるが、基[−(R2v−C1(R32))w−R4x−SiXs13-s]ではない基RSiは、好ましくは、一般式II
[−R5δ−R6ε−SiXφ73-φ] (II)
[式中、
5は、結合又はC1〜C20−炭化水素基を表し、前記基は、1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換され、又は1もしくは複数の二価の基Q2によって中断され、又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されていてよく、その際、δが0である場合に、単位−R6ε−SiXφ73-φに結合されているR5中のその原子が炭素原子であり、
6は、1、2、3又は4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基X又はSiに結合された基R8で置換されていてよいシランの加水分解物からの二価のシロキサン結合を表し、その際、εが0である場合に、単位−R5δ−に結合されているR6中のその原子がケイ素原子であり、
7は、基R8又はSi1〜Si20−シロキシ基又は1、2、3もしくは4個の加水分解基を有するシランであって、Siに結合された基X又はSiに結合された基R8で置換されていてよいシランの縮合されたシラン加水分解物を表し、
8は、非置換又は1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換され、又は1もしくは複数の二価の基Q2又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されたC1〜C20−炭化水素基又はヒドロキシル基を意味し、
δは、0又は1の値を意味し、
εは、0又は1の値を意味し、
φは、0、1、2又は3から選択される値を意味し、かつ
Xは、前記定義の意味を取ってよい]の基を意味する。
【0054】
5は、好ましくは、炭素原子と水素原子のみを含むC1〜C20−炭化水素基、特に−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−又は−CH2CH(CH3)−から選択される基である。
【0055】
6は、好ましくは1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基Xで又は炭素と水素のみを有するC1〜C20−炭化水素基で置換されていてよいシランの加水分解物からの二価のシロキサン基である。
【0056】
7は、好ましくは基R8を表す。
【0057】
8は、好ましくは炭素原子と水素原子のみを含むC1〜C20−炭化水素基、特にメチル、エチル又はフェニルである。
【0058】
好ましくは、全ての基RSiの少なくとも80モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%、特に99モル%〜100モル%は、基[−(R2v−C1(R32))w−R4x−SiXs13-s]を意味する。特に好ましい一実施態様においては、ポリマー(P)中の全ての基RSiは、基[−(R2v−C1(R32))w−R4x−SiXs13-s]である。
【0059】
g+hからなる合計は、好ましくは1、2、3、4、5又は6〜100から選択される整数を表し、特に1、2、3、4、5又は6〜20から選択される整数を表す。
【0060】
ポリマー(P)の任意の試料に対して、比率n(Σg+Σh):n(P)、すなわち試料のポリマー(P)の全ての分子にわたり加算した全てのg+hの合計の、試料中のポリマー(P)の分子の数に対する比率は、好ましくは少なくとも0.01、特に少なくとも0.1であり、かつ好ましくは高くても50、特に高くても20である。比率n(Σg+Σh):n(P)は、例えば一般式Iの構造要素での物質量濃度c(Σg+Σh)を、1グラムのポリマー(P)当たりに測定(単位[モル/g])することで測定することができる。この測定は、例えば核磁気共鳴によって、原子吸光分析("AAS";定量化すべき元素:Si)によって、誘導結合プラズマ("inductively coupled plasma − optical emission spectroscopy"、"ICP−OES";定量化すべき元素:Si)によって、赤外分光分析(積分すべきバンドは、例えばSi−OMe)によって、加水分解もしくは灰化(灰中のSiO2としてのSi物質量の測定)による遊離可能な基HXの数の測定によって測定することができる。その際、以下の通りである:
n(Σg+Σh):n(P)=c(Σg+Σh)×Mn(P)n
[式中、Mn(P)は、ポリマー(P)の数平均でのモル質量である。Mn(P)は、例えばゲル透過クロマトグラフィーによって測定できる。Mn(P)及びc(Σg+Σh)の測定の後に、比率n(Σg+Σh):n(P)を、測定値から計算することができる。
【0061】
ポリマー(P)は、例えばラジカルグラフト化によって製造することができる。
【0062】
本発明の対象は、更に、ポリマー(P)の製造方法であって、少なくとも1種の高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に少なくとも1種の高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に少なくとも1種の高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEを、ラジカル条件下で、1もしくは複数の不飽和化合物であって、そのうち少なくとも1種が、(i)少なくとも1個の、十分にグラフト化可能な不飽和基を有し、かつ(ii)少なくとも1つのケイ素原子に少なくとも1つの加水分解可能な基を有する前記化合物でグラフト化する前記製造方法である。
【0063】
高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンは、その英語の名称"highiy branched polyolefins"もしくは"hyperbranched polyolefins"に従いHBPOと呼ぶ。高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンは、その英語の名称"highiy branched polyethylene"もしくは"hyperbranched polyethylene"に従いHBPEと呼ぶ。
【0064】
ポリオレフィンは、オレフィンを、例えばラジカル的に、アニオン的に、カチオン的に又は金属触媒的にスキーム1の意味において重合させることで製造することができる:
n CH2=CHRa → RA[(CH2)(CHRa)]nB スキーム1
[式中、RA及びRBは、前記の末端基であり、nは、一般に10より大きい整数を意味する]。末端基RA及びRBは、例えばポリオレフィンを製造する重合反応の開始と中断から得られる。構造単位[(CH2)(CHRa)]は、その場合に、使用されるモノマーCH2=CHRaの構造によって決められ、かつ前記単位は、該モノマーから、重合させて、それぞれ1つの二重結合からそれぞれ2つの単結合を形成することによって生ずる。
【0065】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEは、同様に、構造CH2=CHRaのオレフィンから、構造CH2=CRcdのオレフィンを使用せずに製造されるが、それらは構造単位[(CH2k(CRcd)]を有し、その単位は基[(CH2)(CHRa)]の構造と同一ではなく、その際、モノマーH2C=CHRaの構造は、モノマーH2C=CRcdの構造と同一ではない。構造単位[(CH2k(CRcd)]は、この場合に、ポリマーの分岐箇所を表す;その構造は、使用されるモノマーCH2=CHRaの構造によって決められない。前記モノマーの簡単な重付加によって、以下に定義される式IIIに示される構造単位[(CH2)(CHRa)]が得られるが、構造単位[(CH2k(CRcd)]は得られない。構造単位[(CH2k(CRcd)]は、いわゆる分岐又は分岐箇所であり、それはモノマーCH2=CHRaの重合もしくは共重合の過程で進行しうる副反応によって、構成異性化を引き起こす反応によって形成される。かかる副反応は、例えば金属触媒による"連鎖歩行異性化"反応又はラジカル転移反応であってよく、更に以下により詳細に記載されている。Ra、Rc、Rd及びkは、上記の意味を有する。
【0066】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEは、更に、例えば製造方法によって制限されて、不飽和炭化水素基RUを、並びに例えば酸化剤、例えば(空気)酸素の作用によって制限されて、酸素を有する基ROを有してよく、前記基は、上述の意味を有する。
【0067】
構造CH2=CHRaの1もしくは複数のオレフィンから製造される高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOの構造、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPE(これは、Raが水素であるという選択を有する高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOに相当する)の構造は、一般式III
A[(CH2)(CHRa)]p[(CH2k(CRcd)]mUqOtB (III)
[式中、RA、RB、Ra、Rc、Rd、RU、RO、p、k、m、q及びtは、上記の意味を有し、基[(CH2k(CRcd)]の構造は、基H2C=C(H)(Ra)の構造と同一ではなく、
式IIIのポリマーの製造のためには、少なくとも1つの合成工程で、構造H2=C(H)(Ra)のモノマーが使用され、
式IIIのポリマーの製造のためには、構造H2C=C(Rc)(Rd)のモノマーはどの合成工程でも使用されず、
モノマーH2C=C(H)(Ra)の構造は、モノマーH2C=C(Rc)(Rd)の構造と同一ではなく、
記号は、m=r′×(m+p+q+t)に該当し、かつ
r′は、0.02より大きいか又はそれと同じ値を取る]によって表される。
【0068】
好ましくは、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOのグラフト化によるポリマー(P)の製造方法では、一般式IIIのHBPOが使用される。
【0069】
A、RB、RU、Ra、Rc、Rd、k、m、p及びqは、好ましくは、一般式Iでこれらの変数について好ましいものと示した意味と同じ意味を取る。
【0070】
aが水素であることが選択される場合に、式IIIの高分岐型のポリオレフィンは、高分岐型のポリエチレンである。高分岐型のポリオレフィンの製造のためには、互いに独立して、1もしくは複数の合成工程において、1もしくは複数の構造H2C=CHRaの種々のモノマーを使用してよい。高分岐型のポリオレフィンは、相応して、互いに独立して、1もしくは複数の種々の基Raを有してよい。
【0071】
基[(CH2k(CRcd)]、[(CH2)(CHRa)]、RU及びROは、式IIIにおいて、例えば無作為に分布して、ブロックとして、又は交互に存在してよい。
【0072】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEは、製造プロセスの間の反応条件を、スキーム1による重合反応がもっぱら進行せずに、例えばラジカル転移反応によって、ポリオレフィンがラジカル条件下で製造される場合に、又はいわゆる"連鎖歩行異性化"によって、ポリオレフィンが金属触媒により製造される場合に、分岐が形成されるように調整することによって製造できる。
【0073】
"連鎖歩行異性化"は、オレフィン性モノマーから生ずるポリオレフィンに沿ってポリオレフィン製造の条件下で触媒が歩行し、触媒が歩行した位置から始まって新たな枝部の構成の触媒反応が生じ、引き続き新たな"連鎖歩行異性化"が起こるなどといった異性化を意味する。"連鎖歩行異性化"の程度と、さらに得られるポリオレフィンの分岐度は、例えば重合の間のポリオレフィン圧によって制御できる(例えばZhibin Guan,P.M.Cotts,E.F.McCord,S.J.McLain,"Chain Walking:A New Strategy to Control Polymer Topology",Science 1999,Vol.283、2059〜2062頁を参照のこと)。いわゆる"連鎖歩行異性化"が可能な触媒は、例えばVersipol(登録商標)(DuPont社)の名称で知られており、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンのための、特に高分岐の又は超分岐のポリエチレンHBPEのための関連の製造方法は、DuPont社によって開示された(例えばEP946609号A1、EP1068245号A1、EP1127897号A2及びEP1216138号A1を参照のこと)。高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンの、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEの製造のための触媒及び製造法は、例えばBASF SE社(例えば特許文献DE19960123号A1を参照のこと)によって、かつBasell Polyolefine GmbH社(例えばEP1322680号A1を参照のこと)によって開示された。
【0074】
"連鎖歩行異性化"に基づき、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンは、エテンから単独で製造でき、かつその際に、高分岐型の又は超分岐型のポリエチレン(HBPE)と呼称される。また、少なくとも3個の又はそれより多くの炭素原子を有するα−オレフィンは、単独で、互いに混合物として、又は場合によりエテンとの混合物において、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィン(HBPO)の製造のために使用でき、その際、触媒は"連鎖歩行異性化"の機構によってα−オレフィンのアルキル鎖に沿って歩行しうる。これは、まず部分的にもしくは完全に直鎖化されたα−オレフィンの、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンへの組み込みに導き、その際、そのポリオレフィン上にそれに委ねられた分岐が、場合により"連鎖歩行"によって形成されうる。生ずる高分岐型のポリオレフィンHBPOと、特別な場合として、同様に高分岐型のポリエチレンHBPEは、ポリ−α−オレフィンとは、従って、枝部の長さと構造が使用されるα−オレフィンの構造によって予定されないという点で異なる。
【0075】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEであって、シラン官能性ポリマー(P)の製造のためにグラフト化によって使用できるものとしては、また、規定の選択された低密度のポリエチレン型("低密度ポリエチレン"、LDPE)も使用でき、それらは、オレフィンのラジカル高圧重合によって、一般に主成分としてエテンを用いて製造されている。エテンのラジカル高圧重合によりLDPEとする場合に、分子内の及び分子間のラジカル転移反応が行われる。両者とも、分岐の形成をもたらすことができるので、複数の分岐箇所が、従って異なる構造のアルキル側鎖が形成される。生ずるLDPEが高分岐型である場合に、それは、高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレン(HBPE)と呼称される。相応の生成物は、例えばWestlake Chemical社から得られる(Epolene C型、例えばEpolene C−10、C−13又はC−15)。また、少なくとも3個の又はそれより多くの炭素原子を有するα−オレフィンを、単独で、互いの混合物として又は場合によりエテンとの混合物において、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィン(HBPO)の製造のために使用してもよい。少なくとも3個の又はそれより多くの炭素原子を有するα−オレフィンの割合が高まると、ラジカル条件下で、ますます低分子量の生成物が得られ、これは、ポリオレフィン特性の相応の調整を可能にする。製造されるべきポリオレフィンの分岐度(及びさらに本質的な生成物特性、例えば硬度、結晶化度、溶融粘度、融解熱、融点などの特性)は、ラジカル重合の際の条件の選択によって制御でき、ここで、より低い圧力及び/又はより高い温度は、得られたポリマーの分岐度をより高め、かつその逆も言える(DE2532418号A1、GB861277号もしくはDE1303352号Bを参照のこと)。更に、得られたポリマーの分岐度は、調節剤の添加によって、又は重合のために使用されるラジカル開始剤の選択によって影響を及ぼすことができる:種々の開始剤を比較すると、匹敵する重合条件下で匹敵する温度において開始剤の半値時間がより短いと、より低い分岐度を有するポリマーがもたらされ、かつその逆も言える(DE2532418号A1を参照のこと)。生ずる高分岐型のポリオレフィンHBPOと、特別な場合として、同様に高分岐型のポリエチレンHBPEは、ポリ−α−オレフィンとは、従って、枝部の長さと構造が使用されるα−オレフィンの構造によって予定されないという点で異なる。
【0076】
高分岐型のポリオレフィンHBPOもしくは高分岐型のポリエチレンHBPEは、場合により規定の枝部長範囲の累積を伴って、短鎖分岐と長鎖分岐を有してよく、かつ枝部は、それ自体が再び分岐していてもよい。長鎖分岐(すなわち6個の炭素原子より多くを有する側鎖)を有する高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOは、また"長鎖分岐型のポリオレフィン"LBPOとも呼ぶ。長鎖分岐(すなわち6個の炭素原子より多くを有する側鎖)を有する高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEは、また"長鎖分岐型のポリエチレン"LBPEとも呼ぶ。
【0077】
高分岐型のポリオレフィンHBPOもしくは高分岐型のポリエチレンHBPEは、更に、より高分子のポリオレフィンの分解によって、より高分子のポリオレフィンをポリオレフィンが分解する条件(例えば熱負荷、ラジカル条件、電磁照射)にさらすことによって製造することができる。これらの方法は、場合により制御される酸素分圧を有する雰囲気で行うことができる。その際、相応の酸化されたポリマーであって、酸素を有する基、例えば基ROなどの基を有するポリマーを得ることができる。
【0078】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEであって、シラン官能性のポリマー(P)の製造のためにグラフト化によって使用できるものは、相応のシラン官能性の誘導体が既に知られているポリ−α−オレフィン及びα−オレフィン−コポリマーとは構造的に明らかに異なるべきである。構造的な違いは、以下のように明らかになる:α−オレフィンの重合又は共重合のための触媒をポリ−α−オレフィン又はα−オレフィンコポリマー(場合によりエテンとも)の製造のために使用し、前記触媒が、選択される反応条件下で十分に"連鎖歩行異性化"が可能でないか、又は前記重合又は共重合が、分岐の形成が十分に可能でないラジカル条件下で行われ、かつその場合に例えばプロペンが(例えばメタロセン触媒による触媒反応下で)(共)重合される場合に、得られるポリマーは、メチル側鎖を含む;ブタ−1−エンが(共)重合される場合に、得られるポリマーは、エチル側鎖など(すなわちペンテン→プロピル側鎖、ヘキサ−1−エン→n−ブチル側鎖、3−メチル−ペンタ−1−エン→(2−メチル−プロピル)側鎖、オクタ−1−エン→n−ヘキシル側鎖など)を含む;この技術により製造される製品であって、この製品型を代表するものには、例えばLLDPE、PE−LLDが該当する。"十分に…ない"とは、この関連では、1000個の重合されたオレフィンモノマー当たり20個未満の分岐の得られたポリオレフィンの分岐度について定義され、それは、rの値が0.02未満(本発明によるものではない)に相当し、もしくはオレフィンモノマーとしてエテンが使用されるのであれば、1000個の炭素原子当たり10個未満に相当する。つまり、構造H2C=CH−Raのα−オレフィンは、例えば"連鎖歩行異性化"が可能でない触媒を用いて(共)重合され、又は該重合又は共重合は、分岐の形成が十分に可能でないラジカル条件下で行われ、こうして、基Raは、後に得られたポリ−α−オレフィンもしくは得られたα−オレフィンコポリマーの側鎖として再び存在し、分岐Rc及びRdは、この場合に十分な数で存在しない。
【0079】
構造−CH2−C(H)(Ra)−を有するポリオレフィン中の位置は、本発明の意味においては、分岐位置もしくは欠陥箇所と見なされず又は呼称されない。それというのもその構造は、使用されるオレフィンモノマーH2C=CHRaの構造によって決定されるからである。
【0080】
シラン官能化された高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特にシラン官能性の高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEを、それぞれ類似のシラン官能性を備えたシラン官能性のポリ−α−オレフィン又はα−オレフィンコポリマーと比較すると、シラン官能化のために使用されるポリマーの構造的な違いは、得られるシラン官能化されたポリマーのポリマー基に顕れるので、シラン官能化のために使用されたポリマーだけでなく、得られたシラン官能化されたポリマーも、それ自体構造上明らかに異なる。
【0081】
高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型の又は超分岐型のポリエチレンHBPEであって、グラフト化によるポリマー(P)の製造のために適しているものは、1000個の重合されたオレフィンモノマー当たり20以上の、好ましくは40以上の、特に60以上の分岐の分岐度を有し、その際、前記の分岐の概念は前記の定義の通りである。変数r′は、式IIIの高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンの分岐度を示す。
【0082】
該変数r′は、少なくとも0.02の値、好ましくは少なくとも0.04の値、特に少なくとも0.06の値を取る。1000個の重合されたオレフィンモノマー当たりの分岐度は、一般式IIIのポリオレフィンについて、r′×1000である。分岐度は、1000個の炭素原子当たりの分岐でも示すことができる。ここで例えば、r′=0.02の分岐度、すなわち1000個の重合されたモノマー当たり20個の分岐は、例えば高分岐型のポリエチレン(モノマー;エテン、C2)の場合には、1000個の炭素原子当たりに10個の分岐の分岐度に相当する。好ましくは、式[(CH2k(CRcd)]の構造単位によって表される分岐は、k=0の場合に、2〜100個の炭素原子を、特に2〜20個の炭素原子を有し、又はk=1の場合に、3〜100個の炭素原子を、特に3〜20個の炭素原子を有する。分岐度の測定のための方法は、実施例の部分に記載されている。
【0083】
まとめると、長鎖分岐も、分岐した枝部も、モノマーとして製造のために使用されるオレフィンの構造と数によって規定されない枝部の構造も、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEも、従来のα−オレフィンのホモポリマー又はコポリマーとは異なる。
【0084】
好ましくは、グラフト化によるポリマー(P)の製造のための方法に際して、一般式IV
2123=C4(R22)−(R23y−C5(R242))z−R25u−SiXs13-s (IV)
[式中、R1、X及びsは、上記の意味を有し、
21及びR22は、水素、フッ素、塩素又は非置換のもしくは1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換された又は1もしくは複数の二価の基Q2によって中断された又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断された炭化水素基を意味し、
23は、前記のR2について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、yが0ではない場合に、炭素原子C5に結合されているR23中のその原子が炭素原子であり、
24は、前記のR3について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、炭素原子C5に結合されているR24中のその原子が炭素原子又は水素原子であり、
25は、前記のR4について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、uが0ではない場合に、単位−SiXs13-sに結合されているR25中のその原子が酸素原子であり、かつ単位R2123=C4(R22)−(R23y−C5(R242))z−に結合されているR25中のその原子がケイ素原子であり、
uは、xについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
yは、vについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
zは、wについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
その際、一般式IV中のR1、R21、R22、R23、R24、R25、X、Q1、Q2及びQ3は、互いに結合されて、1もしくは複数の環を形成してよく、かつ一般式IV中の炭素原子C4に結合されているR22中のその原子が、炭素原子もしくは水素原子とは異なる原子である]から選択されるシランが使用される。
【0085】
十分にグラフト化可能な不飽和基は、一般式IV中で、構造単位R212C=C(R22)によって表される。好ましくは、一般式IVのシランでの十分にグラフト化可能な不飽和基は、構造H2C=CH−の末端ビニル基又はビシクロ[2.2.1]ヘプテン系の部分であり、芳香族性の共役系の部分ではない。
【0086】
好ましくは、一般式IV中のuは、特にzが1の値を取る場合に、0の値を取る。
【0087】
好ましくは、一般式IV中のyは、0の値を取る。
【0088】
好ましくは、一般式IV中のzは、特にuが1の値を取る場合に、0の値を取る。
【0089】
好ましくは、一般式IV中のR21及びR22は、水素の意味を取る。
【0090】
基−(R23y−C(R242))z−は、好ましくは、1〜20個の炭素原子を有する非置換の有機基である。好ましい基−(R2y−C(R242))z−は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。特に、−(CH2i−[式中、iは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜14の整数であり、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である]から選択される構造を有する基−(R23y−C(R242))z−が好ましい。
【0091】
一般式IV中のR1及びXの好ましい意味は、一般式I中のR1及びXについて前記に好ましいとして定義されたのと同じである。
【0092】
好ましくは、一般式IVのシランは、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン又はアリルメチルジアルコキシシランから選択され、その際、前記アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基又は(2−メトキシエトキシ)基から選択され、かつ1つのケイ素原子上に異なるアルコキシ基が混ざって存在してよい。特に好ましくは、一般式IVのシランとしては、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルメトキシジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルメトキシエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランが選択される。
【0093】
該方法では、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOが使用される。HBPOの枝部は、それ自体再び分岐していてよい。該枝部は、短鎖(C1〜C6)もしくは長鎖(この場合C7以上、一般にC7〜C100、特にC7〜C30)であり、又は短鎖と長鎖のいずれであってもよく、その際、選択された1、2もしくは複数の分岐の鎖長、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6もしくはC7又はそれより長鎖で繰り返し存在してよい。好ましくは、既にそれ自体がポリマーと見なされない長さの分岐が好ましい。HBPOは、飽和のもしくは不飽和の又は多不飽和のものであってよく、不飽和の基は、骨格に沿って、枝部に、又は骨格のもしくは枝部の末端に存在してよい。好ましくは、該方法においては、高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOとしては、高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレン(略してHBPEと呼ぶ)が使用される。本発明の意味において、高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPE(Raは水素である)は、部分量の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO(Raは水素でなくてよい)の部分量であり、その際、前記の高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEは、もっぱら又は主として、エテン(使用されるモノマー中のRaは水素である)から製造され、かつ前記高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、任意のオレフィン性不飽和のオレフィンモノマー(使用されるモノマー中のRaは、水素でなくてよい)から製造される。高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEは、主として、すなわち好ましくは80%超が、特に90%超が、モノマーとしてのエテンから製造される;もっぱら従来のエテン品質からの製造又はもっぱら工業用エテン、純粋エテンもしくは超純粋エテンからの製造又はもっぱらモノマーとしてのエテンからの製造は殊に好ましい。
【0094】
該方法で使用されるHBPOもしくはHBPEのポリマーアーキテクチャーの構造特徴は、それから製造される一般式Iのポリマー(P)の骨格において相応して表れる。ポリマー(P)の製造方法の間に、所望のラジカル的なグラフト反応の過程で、副反応として、鎖開裂(ビスブレーキング)も、HBPOのマクロラジカルの組み合わせも生じうる。これらの副反応は、まだグラフト化されていないポリオレフィン上で(一般式Iのポリマー(P)へとグラフト化される前に)又は反応の間に存在が増すシラン官能化されたポリマー(P)上で行われることがある。しかしながら、これらの反応は、HBPOが基本的に高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOであって記載された構造特徴を有するものであることで何も変わらない;同様のことはポリマー(P)中の相応のポリマー骨格についても当てはまる。
【0095】
好ましくは、グラフト化によるポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、150℃で測定した粘度、200Pa・s未満、特に50Pa・s未満を有する。好ましくは、ポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、190℃で測定した粘度、100Pa・s未満、特に25Pa・s未満を有する。
【0096】
ポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、好ましくは、数平均のモル質量Mnを、少なくとも2000g/モル、特に少なくとも3000g/モルで、かつ高くても50000g/モル、特に高くても20000g/モルで有する。ポリマー(P)は、好ましくは、質量平均のモル質量Mwを、少なくとも3000g/モル、特に少なくとも5000g/モルで、かつ高くても500000g/モル、特に高くても200000g/モルで有する。
【0097】
好ましくは、グラフト化によるポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、X線回折によって又は溶融エンタルピーにより測定される、規定の結晶化度を、すなわち好ましくは65%未満の、特に50%未満の、特に好ましくは35%未満の結晶化度を有する。
【0098】
グラフト化によるポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、DSC("示差走査熱量測定")による溶融吸熱量の測定により測定される、好ましいと規定される溶融範囲を有し、その溶融吸熱量のピークは、150℃未満、好ましくは130℃未満、特に110℃未満であり、かつ溶融吸熱量の熱的により高い位置にある末端は、160℃未満、好ましくは140℃未満、特に120℃未満である。複数の溶融吸熱量が異なる結晶性の範囲にあるときに、この場合には熱的に最も高い位置にある溶融吸熱量が考慮されるべきである。
【0099】
製造されるべきポリマー(P)が溶融接着剤として又は溶融接着剤調製物中の成分として使用されるべきであれば、グラフト化によるポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOは、DSC("示差走査熱量測定")による溶融吸熱量の測定により測定される、好ましいと規定される溶融範囲を有し、その溶融吸熱量のピークは、30℃超、好ましくは40℃超、特に50℃超であり、かつ溶融吸熱量の熱的により高い位置にある末端は、40℃超、好ましくは50℃超、特に60℃超である。複数の溶融吸熱量が異なる結晶性の範囲にあるときに、この場合には熱的に最も高い位置にある溶融吸熱量が考慮されるべきである。
【0100】
高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEの溶融範囲は、例えばそのモル質量によって、そしてとりわけその分岐度によって調整することができる(F.J.Balta Calleja,A.Schoenfeld,"Melting point and structure of polyethylene of low degree of polymerization",Faserforschung und Textiltechnik 1967、第18巻、第4号、170〜174頁を参照のこと)。ここで、例えば非常に高分岐型のポリエチレンは、室温に至るまで液状であることがある(P.Cotts,Z.Guan,E.Kaler,C.Co,"Structure of Highly Branched Polyethylenes Obtained with a Chain−Walking Catalyst",American Physical Society,Annual March Meeting,20.−24.Maerz 2000,Minneapolis,MN,Abstract #I22.012を参照のこと)。
【0101】
グラフト化によるポリマー(P)の製造のために使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOのモル質量分布は、単峰性、二峰性又は多峰性であってよく、かつ多分散性Mw/Mnは、1〜30の値を、好ましくは1〜10の値を取ることができる。該方法で製造されるポリマー(P)のMwもMnも多分散性Mw/Mnも、使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOの相応の値とは異なってよい。ここで、Mw、Mn及び多分散性Mw/Mnは、該方法のラジカル条件下でマクロラジカルの組み合わせによって又はマクロラジカルの分解によって低くすることができる。当業者は、該方法での使用に該当する各ポリマーについて、好適な前試験によって、あるポリマーがラジカル条件下でどちらかと言えば前記値の増大もしくは低下の傾向があるかどうかを簡単に決定できるので、該方法の実施の後に、それとは場合により異なる値Mn、Mw及びMw/Mnを有するポリマー(P)が得られ、その際、前記値は、それぞれ所望の範囲にあるべきである。一般に、Mn、Mw及びMw/Mnの低下の傾向は、使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOの、分岐度が高まるにつれて、かつ基Raが水素でない割合が高まるにつれ高まり、かつその逆も言える。
【0102】
グラフト化によるポリマー(P)の製造のための方法で使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEは、2種もしくはそれより多くの高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO、特に高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEの混合物として、及び/又は1もしくは複数の更なる成分、例えば充填剤又はポリマーとの混合物もしくはブレンドにおいて、特に1もしくは複数の更なるポリマーとの混合物もしくはブレンドにおいて使用でき、例えば更なるポリオレフィン、例えばポリエチレン、例えばHDPEもしくはLDPE、C3〜C18−ポリ−α−オレフィン(例えばプロペン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペンからなるポリマー)又は上述のポリオレフィン(例えばエテン−α−オレフィンコポリマー、特にエテン−プロペン−コポリマー、エテン−1−ヘキセンコポリマー及びエテン−1−オクテンコポリマー、エテン−プロペン−1−ブテンターポリマー、LLDPE)からのコポリマーとの;ゴムとの;ポリビニルアセテートコポリマーもしくはエテン−ビニルアセテートコポリマーと;エテン−ビニルエーテルコポリマーと、例えばエテン−エチルビニルエーテルコポリマー、エテン−ブチルビニルエーテルコポリマーもしくはエテン−イソブチルビニルエーテルコポリマーとの;ポリオレフィン−もしくはポリ−α−オレフィン−ホモ−もしくはコポリマーワックス;ポリエステル、例えばポリ−1,4−ブチレングリコール−もしくは−1,2−エチレングリコール−もしくは−ジエチレングリコール−テレフタレート又は−フタレートもしくは−アジペートとの;ポリアミド(Nylon(登録商標)型もしくはPerlon(登録商標)型)との;アクリレートポリマーもしくはアクリレートコポリマーとの、例えばエテン−ブチルアクリレートコポリマー、エテン−エチルアクリレートコポリマー、エテン−メタクリレートコポリマー、エテン−アクリル酸コポリマー(後者のポリマーは、また部分的にもしくは完全に塩として、例えば亜鉛塩として存在してよい)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)との;メタクリレートポリマーもしくはメタクリレートコポリマー、例えばエテン−ブチルメタクリレートコポリマー、エテン−エチルメタクリレートコポリマー、エテン−メチルメタクリレートコポリマー、エテン−メタクリル酸コポリマー(後者のポリマーは、また部分的にもしくは完全に塩として、例えば亜鉛塩として存在してよい)、ポリ(メチルアクリル酸塩、ポリ(エチルメチルアクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)との;ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドとの又はポリエーテルとの、例えばテトラヒドロフランからなる;又は上述のポリマーの2種もしくはそれより多くの全組み合わせからのコポリマーもしくはブロックコポリマーもしくはグラフトコポリマーとの混合物もしくはブレンドにおいて使用できる。
【0103】
高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンは、一般式IVのシランでのグラフト化の前に、その間にもしくはその後に、別のオレフィン性不飽和の化合物で又はオレフィン性不飽和基を有する他のシランで変性することができる。
【0104】
一般式IVのシランは、ラジカルグラフト化反応において、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO上で、好ましくは高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPE上でグラフト化され、それによってシラン基含有のポリマー(P)が得られる。その際、好ましくは、100質量部の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOと、好ましくは少なくとも0.1質量部の、特に少なくとも0.5質量部の、特に好ましくは少なくとも1質量部の、かつ好ましくは高くても40質量部の、特に高くても30質量部の、特に好ましくは高くても20質量部のシランと、好ましくは少なくとも0.01質量部の、特に少なくとも0.03質量部の、かつ好ましくは高くても5質量部の、特に高くても1質量部の、選択された反応条件下でラジカルを遊離するラジカル開始剤とを含有する混合物が反応される。好ましくは、一般式IVのシランと、開始剤との物質量比は、少なくとも3:1、特に少なくとも5:1であり、かつ好ましくは高くても2000:1、特に高くても400:1である。
【0105】
グラフト化は、好ましくは、少なくとも80℃、特に少なくとも120℃の、かつ好ましくは高くても350℃、特に高くても300℃の温度で実施される。グラフト化は、大気圧で、高められた圧力で、真空中で又は部分真空中で実施することができる。圧力と温度の組み合わせは、グラフト化に際して、好ましくは、使用されるシランの沸点が選択された圧力の場合に選択された温度よりも高いように又は使用されるシランが選択された圧力の場合に20℃より高い、好ましくは40℃より高い沸点を有するように選択されるので、該シランは、グラフト化の間に水冷又はブライン循環式冷却のように通常の冷媒を用いて還流下で保持でき、又は該シランは、選択された圧力及び選択された温度の場合に部分的にもしくは好ましくは使用される量の半分より多くがグラフトベース中に溶解する。好ましくは、前記グラフト化は、大気圧で又は大気圧超で(一般に少なくとも900hPa(絶対圧))、特に好ましくは大気圧で、好ましくは900〜1100hPa(絶対圧)で実施される。グラフト化は、好ましくは不活性雰囲気中で、例えばアルゴンもしくは窒素中で、低い酸素含量及び含水量をもって又は酸素及び/又は水の不在下で、好ましくはそれぞれ1000ppm未満の、特にそれぞれ200ppm未満の水濃度及び酸素濃度をもって実施される。ラジカル開始剤としては、該方法では、例えばジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、t−ブチル−α−クミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジ−t−アミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン、例えばジアシルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジイソノナオイルペルオキシド、例えばアルキルペルエステル、例えば3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチル−ペルオキシネオデカノエート、α−クミルペルオキシネオデカノエート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオヘプタノエート、α−クミルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシアセテート、t−アミルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソノナノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−(t−ブチルペルオキシ)フタレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、例えばペルケタール、例えば1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパン、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチル)ペルオキシバレレート、エチル−3,3−ジ−(t−アミルペルオキシ)ブチレート、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、例えば環状ペルオキシド、例えば3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,1,4,4,7,7−ヘキサオキサシクロノナン、例えばアゾ化合物、例えばα,α′−アゾビス−イソブチロニトリル又は例えばCラジカル形成剤、例えば3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,2−ジフェニルエタン又は2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ペルオキシカーボネート又は−ジカーボネート、例えばジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−s−ブチル−ペルオキシジカーボネート、光開始剤、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン、電磁線の作用と組み合わせた塩素、臭素もしくはヨウ素が使用される。利用可能な化学的なラジカル開始剤の更なる例は、例えばD.MunteanuによるPlastics Additives Handbook,第5版,Hanser出版,ミュンヘン(2001年),741〜742頁又はBroschuereによる"Initiators for high polymers"(アクゾノーベル社)(Issue:June 2006;Code:2161 BTB Communication,(c)2006 Akzo Nobel Polymer Chemicals、http://www.akzonobel−polymerchemicals.com/NR/rdolyres/C2D64A96−B539−4769−A688−2447258D3DCA/0/InitiatorsforHighPolymersAkzoNobel2006.pdfを参照のこと)に記載されている。更に、ラジカル開始剤は、グラフト化されるべきポリマーの成分として反応に導入することができる。このために、グラフト化されるべきポリマーを、例えば酸素(O2)の存在下に、例えば電磁線、例えば光、紫外線又はガンマ線に晒すことができる。この場合に、例えばポリマーに結合されたヒドロペルオキシド基であって、該ポリマーがグラフト化プロセスで後に使用される場合にラジカル開始剤として作用しうる基が形成される。
【0106】
該グラフト化は、例えば固体中で実施でき、例えばラジカル開始剤及びシランを固体の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO中に拡散導入させ、そして該混合物を次いでその混合物の融点未満の温度に温めることで実施できる。同様に、グラフト化は溶融物中で実施でき、例えばラジカル開始剤及びシランを高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO中に固体状態もしくは液状状態で混加し、まだ起こらない場合は溶融し、そして溶融物を加熱することで実施できる。該グラフト化は、例えば溶液中、懸濁液中、エマルジョン中又は塊状で実施できる。グラフト化は、例えばバッチ法(例えばタンク型反応器中で好ましくは撹拌して)又は例えば連続的に(例えば押出機中、ダイナミックミキサもしくはスタティックミキサ中で、場合により1もしくは複数の後接続された、場合により調温された滞留時間容器もしくは滞留時間管を用いて)又は例えばカスケード型反応において実施でき、該方法はバッチ式反応で実施され、ここで好ましくは一方のバッチは、もう一方のバッチの後で、バッチ反応器において、該反応器を排出と次の後続バッチとの間に根本的に清浄化することなく運転される。
【0107】
押出機中での実施に際して、前記に定義される少なくとも1種のシラン及び少なくとも1種のラジカル開始剤は、押出機の好適に調温された箇所で、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOへと又は少なくとも1種の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンを含有する混合物へと計量供給される。好適に調温された、とは、計量供給の箇所が、その温度が計量供給された化学物質及びポリマーの危険な分解を妨げるのに十分に低いが、同時に押出機中のポリマーを加工するのに十分に高いように調温されることを意味する(相応する温度上限と温度下限は、温度依存性についての表、とりわけ選択されたラジカル開始剤の半値時間の温度依存性についての表並びに使用される高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンの粘度及び融点についての物質データで自体容易に測定できる;これらの表もしくは物質データは、例えばそれぞれの製造元から得ることができる)。シラン及びラジカル開始剤の計量供給は、互いに別々に又は両者の混合物の形で行うことができ、その際、両方の場合に更なる添加剤が混加されてよい。混合物が計量供給される場合に、供給箇所での最高温度は、好ましくは該混合物の分解温度に向けられる。前記の添加は、ラジカル開始剤が高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOを有するシランと接触する際にまだ反応していないか又はまだ完全に反応していないように制御される。場合により、押出機の他の箇所で、更なるラジカル開始剤及び/又は更なるシランを後に計量供給するか又は計量供給することができる。シランとラジカル開始剤とポリマーとからなる反応混合物の押出機中での滞留時間は、好ましくは少なくとも0.1分、特に少なくとも0.5分であり、かつ好ましくは長くても30分、特に長くても10分である。好ましくは、開始剤と温度と滞留時間とからなる組み合わせは、滞留時間が、所定の温度管理において開始剤の2〜10半値時間に相当するように選択される。滞留時間は、例えば押出機の長さ、回転数、ピッチによって又は返送エレメントもしくは邪魔板の使用によって変更できる。滞留時間は、例えば押出機の供給領域で着色剤、例えばグラファイトを添加して、製品の着色が生ずるまでの時間を測定することによって決定できる。反応押出のためには、例えば一軸スクリュー押出機又は同方向もしくは逆方向に回転する二軸スクリュー押出機を使用することができる。
【0108】
バッチでのグラフト化において、1もしくは複数の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO(グラフトベース)と、少なくとも1種のラジカル開始剤と、少なくとも1種の上記定義のシランとを含有する混合物を、ラジカル開始剤がラジカルを形成する温度へと、選択された温度で使用されるラジカル開始剤の好ましくは2〜10半値時間の期間にわたって加熱する。該シランと開始剤の計量供給は、混合物として又はそれぞれ個別にそれぞれ1もしくは複数の添加段階で行ってよい。
【0109】
既にグラフト化の前に又はその間に、1もしくは複数の架橋触媒を、該グラフト化をバッチ反応でもしくは連続的に行うかどうかとは無関係に添加してよい。同様に、グラフト化は、架橋触媒を添加せずに行うことができ、触媒は後に添加することができる。場合により、また、架橋触媒を添加しなくてもよい。
【0110】
反応型押出によるグラフト化の第一の好ましい一実施形態においては、高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOを溶融物として押出機中で加工し、そしてシランと開始剤からなる混合物を押出機の押出機スクリューに沿った一区域で計量供給する。第二の好ましい一実施形態においては、シランと開始剤は、押出機の押出機スクリューに沿って互いに個別に計量供給する。第三の好ましい一実施形態においては、シランは押出機の供給口でグラフトベースHBPOと一緒に配量され、開始剤は押出機の区域に沿って計量供給される。第四の好ましい一実施形態においては、開始剤は押出機の供給口でグラフトベースHBPOと一緒に配量され、シランは押出機の区域に沿って計量供給される。第五の好ましい一実施形態においては、シランと開始剤とは押出機の供給口でグラフトベースHBPOと一緒に配量される。好ましくは、押出機の温度プロフィールは、開始剤の配量区域後の少なくとも1つの該配量帯域に続く領域における温度は、開始剤の配量区域自体の温度と同じか又はそれより高い、特にそれより高いように選択される。好ましくは、開始剤は、開始剤の半値時間がこの温度で少なくとも1秒、特に少なくとも10秒であるように調温されている箇所で計量供給される。
【0111】
少なくとも1つのダイナミックミキサーもしくはスタティックミキサーにおけるグラフト化の第一の好ましい一実施形態においては、溶融された高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOを、ダイナミックミキサーもしくはスタティックミキサーにおいて溶融物として供給する;このためには、例えば押出機を使用することができる。前記ミキサーにおいて、更にシランとラジカル開始剤とは互いに個別に又は混合物として計量供給される。ダイナミックミキサーが使用される場合に、該ミキサーには、好ましくは少なくとも1つの滞留時間容器もしくは滞留時間管が接続されており、前記滞留時間容器もしくは滞留時間管は、選択されたラジカル開始剤の分解温度より高く調温され、任意の更なる混合エレメントを含んでよい。調温された滞留時間容器もしくは調温された滞留時間管は、選択された流量に対して、好ましくは混合物が使用されるラジカル開始剤の好ましくは2〜10半値時間の時間にわたり調温された反応区域に保持されるように寸法決めされる。調温は、好ましくは断熱によって行われる。第二の好ましい一実施形態においては、シランは押出機の供給口でグラフトベースHBPOと一緒に配量されるか又は押出区域に沿って計量供給され、かつ開始剤はダイナミックミキサーもしくはスタティックミキサーにおいて計量供給される;全ての他のコンポーネントの好ましい構成は、第一の好ましい一実施形態に記載されるのと同じ構造に相当する。第三の好ましい一実施形態においては、シランとラジカル開始剤とは互いに別々にもしくは混合物として押出機の供給口でグラフトベースHBPOと一緒に配量されるか又は押出区域に沿って計量供給され、かつ場合により更なる開始剤がダイナミックミキサーもしくはスタティックミキサーにおいて計量供給される;全ての他のコンポーネントの好ましい構成は、第一の好ましい一実施形態に記載されるのと同じ構造に相当する。全ての実施形態において、開始剤は、好ましくは、開始剤の半値時間がこの温度で少なくとも1秒、特に少なくとも10秒であるように調温されている箇所で計量供給される。複数のダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサー及び/又は滞留時間管は、直列的に接続されていてよい。
【0112】
好ましくは、グラフト化に際しての温度と開始剤との組み合わせは、該開始剤が、好ましくは少なくとも0.01秒の、特に少なくとも0.1秒の、かつこのましくは長くても1時間の、特に長くても0.1時間の半値時間を有するように選択される。
【0113】
該ポリマー(P)は、例えばオレフィンと、オレフィン性不飽和基を有するシランとのラジカル共重合によって製造することができる。
【0114】
本発明の対象は、更に、構造H2C=CHRaの少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマーを、ラジカル条件下で少なくとも1種の化合物であって、(i)少なくとも1つのオレフィン性不飽和C=C二重結合と、(ii)少なくとも1つの加水分解可能な基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有する化合物と共重合させることでポリマー(P)を製造する方法において、前記ポリマー(P)が、0.02より大きい又はそれと等しい分岐度rを有し、前記rは、一般式Iで前記に定義されたものであり、かつ共重合を、150℃〜360℃の温度及び5MPa〜500MPaの圧力で実施する前記製造方法である。
【0115】
前記前提条件(i)及び(ii)を満たす化合物としては、この方法においては、シラン又はシラン予備縮合物を使用することができる。好ましくは、前記方法では、一般式V
2C=C(Rf)(RSi) (V)
[式中、Rf及びRSiは、上記定義の意味を取る]から選択されるシランが使用される。
【0116】
不飽和基は、一般式Vにおいて構造単位H2C=Cによって表される。好ましくは、一般式Vのシランでの不飽和基は、構造H2C=CH−の末端ビニル基の部分であって、芳香族性共役系の部分ではない。
【0117】
一般式V中のRf及びRSiの好ましい意味は、一般式I中のRf及びRSiについて前記に好ましいとして定義されたのと同じである。
【0118】
好ましくは、一般式Vのシランは、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン、(ビニルアルキル)トリアルコキシシラン、(ビニルアルキル)(メチル)ジアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン又はアリルメチルジアルコキシシランから選択され、その際、前記アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基又は(2−メトキシエトキシ)基から選択され、かつ1つのケイ素原子上に異なるアルコキシ基が混ざって存在してよい。特に好ましくは式IVのシランとしては、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルメトキシジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルメトキシエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルジメトキシエトキシシラン、アリルメトキシジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルメトキシエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ブタ−3−エニルトリメトキシシラン、ブタ−3−エニルジメトキシエトキシシラン、ブタ−3−エニルメトキシジエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ブタ−3−エニルメチルジメトキシシラン、ブタ−3−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ブタ−3−エニルメチルジエトキシシラン、ペンタ−4−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ペンタ−4−エニルトリメトキシシラン、ペンタ−3−エニルジメトキシエトキシシラン、ペンタ−4−エニルメトキシジエトキシシラン、ペンタ−4−エニルトリエトキシシラン、ペンタ−4−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ペンタ−4−エニルメチルジメトキシシラン、ペンタ−4−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ペンタ−4−エニルメチルジエトキシシラン、ヘキサ−5−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキサ−5−エニルトリメトキシシラン、ヘキサ−5−エニルジメトキシエトキシシラン、ヘキサ−4−エニルメトキシジエトキシシラン、ヘキサ−5−エニルトリエトキシシラン、ヘキサ−5−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキサ−5−エニルメチルジメトキシシラン、ヘキサ−5−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ヘキサ−5−エニルメチルジエトキシシラン、ヘプタ−6−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘプタ−6−エニルトリメトキシシラン、ヘプタ−6−エニルジメトキシエトキシシラン、ヘプタ−6−エニルメトキシジエトキシシラン、ヘプタ−6−エニルトリエトキシシラン、ヘプタ−6−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘプタ−6−エニルメチルジメトキシシラン、ヘプタ−6−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ヘプタ−6−エニルメチルジエトキシシラン、オクタ−7−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、オクタ−7−エニルジメトキシエトキシシラン、オクタ−7−エニルメトキシジエトキシシラン、オクタ−7−エニルトリエトキシシラン、オクタ−7−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、オクタ−7−エニルメチルジメトキシシラン、オクタ−7−エニルメチルメトキシエトキシシラン、オクタ−7−エニルメチルジエトキシシラン、デカ−9−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、デカ−9−エニルトリメトキシシラン、デカ−9−エニルジメトキシエトキシシラン、デカ−9−エニルメトキシジエトキシシラン、デカ−9−エニルトリエトキシシラン、デカ−9−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、デカ−9−エニルメチルジメトキシシラン、デカ−9−エニルメチルメトキシエトキシシラン、デカ−9−エニルメチルジエトキシシラン、ドデカ−11−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ドデカ−11−エニルトリメトキシシラン、ドデカ−11−エニルジメトキシエトキシシラン、ドデカ−11−エニルメトキシジエトキシシラン、ドデカ−11−エニルトリエトキシシラン、ドデカ−11−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ドデカ−11−エニルメチルジメトキシシラン、ドデカ−11−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ドデカ−11−エニルメチルジエトキシシラン、テトラデカ−13−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラデカ−13−エニルトリメトキシシラン、テトラデカ−13−エニルジメトキシエトキシシラン、テトラデカ−13−エニルメトキシジエトキシシラン、テトラデカ−13−エニルトリエトキシシラン、テトラデカ−13−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラデカ−13−エニルメチルジメトキシシラン、テトラデカ−13−エニルメチルメトキシエトキシシラン、テトラデカ−13−エニルメチルジエトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキサデカ−15−エニルトリメトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルジメトキシエトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルメトキシジエトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルトリエトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキサデカ−15−エニルメチルジメトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルメチルメトキシエトキシシラン、ヘキサデカ−15−エニルメチルジエトキシシラン、オクタデカ−17−エニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、オクタデカ−17−エニルトリメトキシシラン、オクタデカ−17−エニルジメトキシエトキシシラン、オクタデカ−17−エニルメトキシジエトキシシラン、オクタデカ−17−エニルトリエトキシシラン、オクタデカ−17−エニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、オクタデカ−17−エニルメチルジメトキシシラン、オクタデカ−17−エニルメチルメトキシエトキシシラン、オクタデカ−17−エニルメチルジエトキシシランが選択される。
【0119】
高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンは、その製造の間にもしくはその後に、別のオレフィン性不飽和化合物もしくはオレフィン性不飽和基を有する他のシランとのラジカル共重合によって、例えば上記のグラフト化によって変性することができる。
【0120】
少なくとも1種のシラン又は2もしくは複数のシランであって、(i)少なくとも1つのオレフィン性不飽和のC=C二重結合と、(ii)少なくとも1つの加水分解可能な基を有する少なくとも1つのケイ素原子とを有する前記シランは、少なくとも1、2もしくはそれより多くの構造H2C=CHRaのオレフィン性不飽和モノマーとのラジカル共重合において共重合され、それによりシラン基を有するポリマー(P)が得られる。その際、好ましくは、100質量部のオレフィン性不飽和モノマー、好ましくはエテンと、少なくとも0.1質量部の、特に少なくとも0.5質量部の、特に好ましくは少なくとも1質量部の、かつ好ましくは高くても40質量部の、特に高くても30質量部の、特に好ましくは高くても20質量部のシランと、好ましくは少なくとも0.01質量部の、特に少なくとも0.03質量部の、かつ好ましくは高くても5質量部の、特に高くても1質量部の、選択された反応条件下でラジカルを遊離するラジカル開始剤とを含有する混合物が反応される。
【0121】
ラジカル共重合の反応条件の選択によって、製造されるポリマー(P)の分岐度を制御することができる;圧力が低くなり、かつ/又は温度が高くなるほど、得られたポリマーの分岐度は高くなり、その反対も言える。ラジカル共重合は、少なくとも150℃の、好ましくは少なくとも180℃の、特に少なくとも210℃の、かつ高くても360℃の、好ましくは高くても330℃の、特に高くても300℃の温度で実施される。ラジカル共重合は、好ましくは、高められた圧力下で、10MPa(絶対圧)超で、好ましくは25MPa超で、40MPa超で、かつ高くても500MPa(絶対圧)で、特に高くても300MPaで、特に高くても200MPaで行われる。
【0122】
ラジカル開始剤としては、この方法では、例えばラジカル的なグラフト化について更に上記したのと同じ開始剤を使用してよい。更に、共重合は、酸素の存在によって開始でき、酸素は、例えばエテンの存在下で、開始剤として作用しうるエテンヒドロペルオキシドを形成しうる。開始剤の選択によって、得られたポリマーの分岐度に影響を及ぼすことができる;種々の開始剤を比較した場合に、同等の重合条件下で同等の温度においてより短い開始剤の半値時間は、より低い分岐度を有するポリマーをもたらし、その逆も言える。
【0123】
例えば飽和のもしくは不飽和の炭化水素、アルコール、ケトン、クロロ炭化水素、チオ化合物、チオールもしくはアルデヒドなどの調節剤が任意に添加できる。調節剤は、例えば生成物のモル質量分布と分岐度に影響を及ぼすことができる。
【0124】
共重合の条件は、生成物が、0.02より高いもしくはそれと同じ分岐度rを有し、好ましくは0.04より高いもしくはそれと同じ分岐度rを有し、特に0.06より高いもしくはそれと同じ分岐度rを有するように調整される。前記の値rは、重合されたオレフィンモノマー1000個当たりに20以上の、好ましくは40以上の、特に60以上の分岐度に相当する。当業者は、明細書の記載と、関連する試験をもとに、所望の分岐度を達成するためには、どれほどの圧力、温度、開始剤及び調節剤並びにそれらの濃度が、ラジカル共重合によるポリマー(P)の製造に際して選択されるべきかを簡単に決めることができる。
【0125】
ラジカル共重合は、好ましくは液相もしくは気相中で又は多相混合物において、例えば煙霧、ミスト、懸濁液もしくはエマルジョン又は他は前記の多相混合物の複数の混合物において行われる。ラジカル共重合は、バッチ法で、例えばタンク型反応器もしくはオートクレーブにおいて又は連続的に、例えば管形反応器において実施することができる。反応器の選択によって、生成物の分岐度及び分岐様式を付加的に制御することができる。ここで、例えば栓流を伴う管形反応器は、逆混合を伴う撹拌槽よりも僅かな長鎖分岐を生ずる(Hans−Georg Elias,Makromolekuele,第3巻,Industrielle Polymere und Synthesen,第6版(ドイツ),Wiley−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2001,ISBN3−527−29961−0,チャプター5.2.3.,特に157頁を参照)。
【0126】
種々の温度の場合の開始剤の半値時間は、文献から引き出すことができ、もしくは崩壊率についての文献の値からケイ酸できる(例えばD.MunteanuによるPlastics Additives Handbook,第5版,Hanser出版,ミュンヘン(2001),739−754頁又はアクゾノーベル社のパンフレット"Initiators for high polymers"(Issue:June 2006;Code:2161 BTB Communication,(c)2006 Akzo Nobel Polymer Chemicals,http://www.akzonobel−polymerchemicals.com/NR/rdonlyres/C2D64A96−B539−4769−A688−2447258D3DCA/0/InitiatorsforHighPolymersAkzoNobel2006.pdfを参照のこと)又はPolymer Handbook,第4版,第1巻、J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke(Hrsg.),Wiley−Interscience,John Wiley&Sons,Hoboken,New Jersey,II/1−II/76頁;開始剤崩壊の活性化エネルギーの知識は、種々の温度での半値時間の計算を可能にする(Kenntnis der Aktivierungsenergie des Initiatorzerfalls erlaubt die Berechnung der Halbwertszeiten bei unterschiedlichen Temperaturen)(計算については引用された文献もしくはhttp://www.arkema−inc.com/index.cfm?pag=353を参照、そこでダウンロード可能な文書"Half life selection guide")を参照のこと)。好ましくは、共重合に際しての温度と開始剤との組み合わせは、該開始剤が、好ましくは少なくとも0.01秒の、特に少なくとも0.1秒の、かつ好ましくは長くても1時間の、特に長くても0.1時間の半値時間を有するように選択される。
【0127】
該ポリマー(P)は、単独で又は任意の更なる添加剤との混合物において、例えばバインダーとしてもしくは反応性溶融接着剤として用いもしくは使用することができる;反応性溶融接着剤は、この意味においてバインダーの特殊な場合である。反応性溶融接着剤は、完成した調製物として少なくとも30℃の、好ましくは少なくとも50℃の融点及び凝固点を有し、かつそれより高い温度で溶融可能であることを特徴とする。溶融された状態において、前記接着剤は液体として加工でき、かつ前記接着剤はその凝固点未満に冷却したときに再び凝固する。
【0128】
本発明の対象は、少なくとも1種のポリマー(P)を含有するバインダーである。
【0129】
ここで、グラフト化又は共重合によってポリマー(P)を製造する際に、グラフト化反応又は共重合反応の前に、その間にもしくはその後に、選択的に同じ工程において又は前接続もしくは後接続された方法工程において1もしくは複数の更なる添加剤を混加できるので、ポリマー(P)と前記添加剤との混合物が得られる。
【0130】
例えば、その都度の使用のために必要又は役に立つ特性、例えば粘度、接着力、初期付着力、硬度、弾性、衝撃強さ、温度安定性、光安定性もしくは酸化安定性の調整のために、ポリマー(P)へと物質、例えば接着性樹脂、ワックス、可塑剤、熱安定剤、ラジカル安定剤もしくは光安定剤、蛍光剤、帯電防止剤、離型剤及び粘着防止剤、付着促進剤、例えばアミノ官能基、メタクリル官能基、エポキシ官能基、アルキル官能基、アリール官能基もしくはアミノ官能基を有する有機官能性シラン、例えばアルコキシシラン、充填剤及び着色剤、顔料、難燃剤、ラジカル捕捉剤又は酸化防止剤を添加することができる。好適な接着樹脂は、例えば天然の又は合成の樹脂、テルペン樹脂、"ロジン"樹脂、液状樹脂、炭化水素樹脂、完全もしくは部分的に水素化された樹脂、例えばコロホニウムグリセリンエステル樹脂もしくはペンタエリトリットエステル樹脂、水素化されていない、部分水素化されたもしくは完全水素化された脂肪族もしくは芳香族の炭化水素樹脂である。ワックスとしては、例えば微結晶性ワックス、天然もしくは合成のワックス、フィッシャー・トロプシュワックス又はポリオレフィンワックスを使用できる。好適な接着樹脂は、例えばEscorez、Eastotac、Regalite、Regalrez、Piccotac、Krystalex、Unitack、Staybelite又はNirezという名称で種々のサブタイプで販売されている。概要については、例えばwww.eastman.comで入手できるEastman Chemical社の技術情報書のWA−73とWA−86を参照のこと(http://www.eastman.com/NR/rdonlyres/0120E637−5D8F−4180−8C8A−49650DDB5B27/0/WA73.pdfもしくはhttp://www.eastman.com/NR/rdonlyres/DCE8D914−FB9A−4F60−AF41−24F37DC82F54/0/WA86.pdfを参照)。
【0131】
可塑剤としては、例えばパラフィン油、鉱油、パラフィン又は低分子ポリマー、例えばポリイソブテンを使用することができる。
【0132】
更に、例えば充填剤、例えば酸化マグネシウム、シリカもしくはクレイ、酸化防止剤又は触媒を混加してよく、又は更にグラフト化可能でないもしくはグラフト可能な又は共重合可能でないもしくは共重合可能な化合物、特にシランを混加してよく、又はグラフトに際して作業でき又は共重合法でグラフト可能なシランがグラフト化されるかもしくは共重合可能なシランが共重合される同一もしくは個別の段階においてグラフト化し又は共重合することができる。グラフト可能でなく共重合可能でないが、加水分解可能なシラン、例えばヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン又はジメチルジメトキシシランの混合は、湿分架橋の遅延をもたらす。それというのも、前記のシランは、侵入する架橋に必要な水は、少なくとも部分的に加水分解反応によって受け止められるからであり、かつ前記シランは、調製物の粘度を下げるからである。その際、前記シランは、非反応性のオイル及び類似の非反応性の粘度降下剤とは異なって、好ましくは架橋に際して網目に組み込まれるため、殆どブリードしないか又は全くブリードせず、かつ網目密度に悪影響を及ぼさない。グラフト可能でなく共重合可能でないが、加水分解可能なシランの代わりに、反応により、吸着により又は吸収により水を捕捉する別の有機化合物もしくは無機化合物を、例えばアセタール、オルトエステル、モレキュラーシーブもしくは侵入する水を結晶水もしくは水和物として結合できる塩を使用することができる。好ましくは、大きいアルキル基もしくはアリール基を有するかかる水捕捉剤が使用され、こうして、ポリマー(P)との相適合性が改善され、そして水捕捉剤の事前の蒸発を避けるために水捕捉剤の蒸気圧は下げられる。大きなアルキル基としては、この関連では、好ましくはC2基以上、特にC4基以上が使用され、大きなアリール基としては、好ましくはC6基以上又はアルキル基で置換されたアリール基が使用される。
【0133】
該ポリマー(P)は、更に、他のポリマーとのブレンドとして混合することができる。かかるブレンドの製造のために適したポリマーの例は、グラフト化によるポリマー(P)の製造方法に関連して上記したポリマーであって、上記のようにグラフト化の前に高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOと混合できるものである;これらのポリマーは、場合によりグラフト化可能なシランを高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPO上にグラフト化した後にも又は共重合によりポリマー(P)を製造した後にも得られたポリマー(P)と混合できる;前記の他のポリマーは、場合により同様にシラン基(ポリマー(P)上に存在するのと同様もしくは別の)を有してよい。更に、前記ポリマーを、他の高分岐型のもしくは超分岐型のポリオレフィンHBPOと、特に高分岐型のもしくは超分岐型のポリエチレンHBPEと混合してよい。更に、共重合による前記のポリマー(P)の製造は、かかるポリマーの存在下に実施できるので、ブレンドは該方法から直接得られる。
【0134】
ポリマー(P)のバインダーとしての使用は、単独で又は添加剤との配合物中で行うことができる。ポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する混合物は、バインダーとして、溶融接着剤として、反応性溶融接着剤として、接着箇所の製造のために、接着された構造の製造のために、コーティングの製造のために、塗料の製造のために、接着テープの製造のために、接着シートの製造のために、感圧性接着剤("pressure sensitive adhesives")の製造のために又はフォームの製造のために使用することができる。該ポリマー(P)は、好ましくは反応性溶融接着剤として又は反応性溶融接着剤の成分として使用される。
【0135】
バインダーもしくは反応性溶融接着剤は、更なる添加剤を用いずに又は配合物において多岐に亘る用途のために使用することができる。例えば、自動車構造における接着、家具構造における接着、電気機器あるいは電子機器の構築での接着、航空機における接着、医学分野での接着、複合材料、多層接着、防弾ガラス又は他の装甲における接着、シーリング、封止、シーリング、コーティングが挙げられる。
【0136】
配合されていない又は配合されたポリマー(P)と、そこから製造されるバインダーあるいは溶融接着剤もしくはそれらの調製物は、小分けにすることができる。ここで、それらは、それ自体として又は他の添加剤との混合物として、例えば溶融物として詰め替え、場合により冷却することができ、これは例えば冷却後に凝固した溶融物ブロックが生じ、又は例えば機械的に固体から造粒、粉砕、破砕、切断、圧延、圧縮、押出し、溶融物からもしくは溶液から結晶化もしくは沈殿させ、ペレット化し、液状もしくは半液状で滴として、場合により担体材料上で冷却してペレットとし、又は液状もしくは固体状の状態から溶剤の作用によって溶解させ、又は例えば支持シート上にブレード塗布でき、こうして、供給形態としては、例えばストランド、ロッド、プレート、シート、ペレット、フレーク、造粒物、粉末、ブロック、溶液もしくは溶融物が得られ、それらは、場合によりレディーメイド容器、例えばカートリッジに詰め替えられ、又は好ましくは大気湿分の侵入に対して保護する樽、シート、袋もしくは紙袋に包装できる。添加剤として、例えば触媒、乾燥剤、酸化防止剤又は粘着防止剤を混合できる。好ましくは、小分け、機械的粉砕、可溶化、付形、詰め替え、貯蔵、引き渡し及び使用などの工程は、不活性ガス雰囲気下で、好ましくは1000ppm未満の含水量、特に100ppm未満の含水量を有する不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性雰囲気は、好ましくは大部分が窒素もしくはアルゴンを含有する。不活性、とは、この意味において、低い含水量を意味する;同時に、不活性雰囲気は酸素を有してよく、5容量%未満、特に1容量%未満の酸素含有率が好ましい。
【0137】
配合されていない又は配合されたポリマー(P)と、そこから製造されたバインダーあるいは溶融接着剤もしくはその少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物は、1成分系として、2成分系として又は多成分系として構成することができる。1成分系では、所望の成分は、時間的に使用の前に、一般に1成分系の製造者によって混合される。特に、1成分系は、ポリマー(P)を含有する成分を触媒と混合する;かかる触媒が触媒できる工程は、更に以下に2成分系もしくは多成分系の実施形態との関係で示されている。2成分系もしくは多成分系が説明される場合に、それらの成分は個別に使用者に供給され、一般に使用者によって使用直前に、すなわち一般には、使用前24時間未満、好ましくは60分未満、又は60秒未満に混合される。2成分系のための一実施形態は、1つ、2つもしくは複数の容器からなる系、例えば2つのコンパートメントを有するカートリッジであり、その際、それらの成分は容器もしくはコンパートメントから出るときに又は出た後に混合され、次いでその用途に使用される。2成分系もしくは多成分系が説明される場合に、好ましくは(P)を含有する成分は、以下の(i)湿分の作用下でのポリマー(P)の構造エレメントRSi中のシラン基の加水分解、(ii)一般に部分的にもしくは完全に加水分解されたポリマー(P)の構造エレメントRSiと更なる加水分解されていないもしくは部分加水分解されたもしくは完全加水分解されたポリマー(P)の構造エレメントRSiとの縮合又は(iii)ポリマー(P)の加水分解されていない、部分加水分解されたもしくは完全加水分解された構造エレメントRSiと例えば基材表面上のヒドロキシル基もしくはオキシド基との縮合から選択される少なくとも1つの工程を触媒する少なくとも1つの触媒を含有する少なくとも1種の更なる別の成分として触媒を含有しないか又は僅かしか触媒が添加されず、その際、ポリマー(P)を含有する成分は、好ましくは添加された触媒を含有しない。多成分系として実施する場合には、少なくとも1種の成分は、少なくとも1種のポリマー(P)を含有する。
【0138】
ポリマー(P)又は溶融接着剤もしくはバインダーの製造のために使用される機器は、1回、2回、3回、4回もしくはそれより多い回数の製造サイクルの後に、例えばグラフト化のために使用される1もしくは複数のポリマーを用いて、好ましくは製造されるポリマー(P)の融点より又は使用される高分岐型のポリオレフィン(ポリマー(P)がグラフト化により製造される場合)の融点より高い融点を有する溶剤、例えば炭化水素又は炭化水素混合物などの溶剤を用いて、又は特定の清浄剤、例えばAsaclean(登録商標)などの清浄剤を用いて、又は複数の同時に又は続けて使用される清浄剤からなる組み合わせ物を用いて清浄化してよい。ポリマー(P)又は溶融接着剤もしくはバインダーの製造のために使用される機器は、使用前に好ましくは乾燥される。
【0139】
ポリマー(P)又は溶融接着剤もしくはバインダーの製造プロセスにおいて、所望の熱入力又は熱出力は、例えば外から又は中から、例えば機器の壁を介して又は撹拌機を介して又は熱入力の場合は剪断によって行うことができる。熱エネルギーは、例えば水蒸気、過度の水蒸気、熱水、伝熱油、ブライン、電磁線によって又は電気的に伝えることができる。
【0140】
ポリマー(P)又は溶融接着剤もしくはバインダーは、例えば残留含量のグラフトされていないシラン、未反応のペルオキシド、分解生成物(シランもしくはポリマー(P)の加水分解産物及び縮合産物、ペルオキシド断片、グラフトベース断片、共重合に使用されたモノマー又はそのオリゴマー)を含有してよい。これらは、場合により生成物中に残留することがあり、又はポリマー(P)又は溶融接着剤もしくはバインダーから、更なる添加剤(例えば接着樹脂、ワックス、触媒)の混合の前に、その間にもしくはその後に除去することができる。これは、例えば揮発性化合物の場合には、真空の印加によって、0.01〜500ミリバールの、特に0.1〜100ミリバールで又は例えば加熱によって、好ましくは60〜350℃で、特に100〜250℃で又は濾過によって、例えば篩別によって、又はそれらの複数の方法の組み合わせによって、真空の印加と同時に加熱することによって行うことができる。
【0141】
該ポリマー(P)は、水によって架橋しうる。
【0142】
本発明の対象は、また、ポリマー(P)の又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する混合物の、場合によりバインダーもしくは反応性溶融接着剤であって、少なくとも1種のポリマー(P)を成分として有するか又は少なくとも1種のポリマー(P)からなるものにおける、水による架橋方法である。
【0143】
架橋のために必要な水は、蒸気として及び/又は液状の水として使用でき、又は空気湿分によって提供することができる。好ましくは、架橋は、接着の製造時に又はその後に始まるか、又はコーティングの製造時に又はその後に始まる。架橋方法は、触媒を用いずに又は1もしくは複数の触媒の存在下で実施することができる。触媒は、ポリマー(P)の湿分架橋の促進を、それ自体として又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物もしくは混合物で、ポリマー(P)中に含まれる加水分解可能なシラン基の水の作用下での加水分解及び/又はそのシロキサンへの縮合を触媒することでもたらすことができる。更に、それらの触媒は、ポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物もしくは混合物の付着性の改善を、例えばポリマー(P)中のシラン基と、例えば基材表面上のヒドロキシル基もしくは酸化物基との縮合を触媒することでもたらすことができる。言い換えると、該触媒は、(i)ポリマー(P)のシラン基RSiの湿分の作用下での加水分解、(ii)ポリマー(P)の一般に部分的にもしくは完全に加水分解されたシラン基RSiとポリマー(P)の更なる加水分解されていないもしくは部分加水分解されたもしくは完全加水分解されたシラン基RSiとの縮合又は(iii)ポリマー(P)の加水分解されていない、部分加水分解されたもしくは完全加水分解されたシラン基RSiと基材表面(S)上のもしくは架橋された基材の表面(SV)上のヒドロキシル基もしくはオキシド基との縮合から選択される少なくとも1つの工程を触媒する。この意味において基材表面上のヒドロキシル基もしくはオキシド基は、相応の官能基又は加水分解可能なSiに結合された基を有するシラン官能基を有し、湿分が作用する場合に、更なる添加されたポリマー上のSiOH基もしくはSiO-基であってもよい。
【0144】
ポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物もしくは混合物の湿分架橋では、架橋されたポリマー(PV)が生ずる。ポリマー(P)は、更に、酸化物基又は水とは異なる性質のヒドロキシル基又はSiOHとも縮合できる;同様にポリマー(PV)は、それらがまだ反応性のシラン基を有する場合に、すなわちまだ完全に架橋されていない。混合成分又は基材(S)がヒドロキシル基もしくはオキシド基を含み、かつその表面上にポリマー(P)もしくは部分架橋されたポリマー(PV)又は少なくとも1種のポリマー(P)もしくは部分架橋されたポリマー(PV)を含有する調製物もしくは混合物を塗布する場合に、縮合生成物[(P)(S)]及び[(PV)(S)]が生ずる。基材がそれ自体湿分架橋可能であれば、水が入ったときに、架橋された基材(SV)と(P)とのもしくは(PV)との縮合生成物が生ずる。すなわち[(P)(SV)]と[(PV)(SV)]が生ずる。基材(S)の(SV)への加水分解及び/又は縮合は、一般に、(P)の(PV)への縮合と同様に触媒することができる。同様に、既に部分架橋されたもしくは完全に架橋された基材(SV)を、少なくとも1種のポリマー(P)を含有する又は少なくとも1種のまだ完全に架橋していないポリマー(PV)を含有する混合物と接触させることで、[(P)(SV)]もしくは[(PV)(SV)]が得られる。同様に、部分架橋されたポリマー(PV)の代わりに、結合[(PV)(SV)]もしくは[(PV)(S)]を(PV)中のシロキサン基を転位させて製造することで結合[(PV)(SV)]もしくは[(PV)(S)]を製造するために、完全に架橋されたポリマー(PV)も使用することができる。(P)は、湿分の作用によって(PV)へと変換できる。[(P)(S)]は、湿分の作用によって、[(PV)(S)]、[(P)(SV)]もしくは[(PV)(SV)]に又はこれらの混合物に変換できる。[(PV)(S)]は、湿分の作用によって、[(PV)(SV)]に変換できる。[(P)(SV)]は、湿分の作用によって、[(PV)(SV)]に変換できる。縮合生成物もしくは架橋されたポリマーである(PV)、[(P)(S)]、[(PV)(SV)]、[(P)(SV)]及び[(PV)(S)]は、同様に本発明の対象である。
【0145】
加水分解生成物もしくは架橋生成物もしくは縮合生成物の製造は、好ましくは0℃〜200℃で、特に10℃〜140℃で行われる。場合により、作為的な加湿、例えば液状の水への浸漬又は噴霧もしくは蒸化による加湿は、例えば促進のために行うことができる。
【0146】
少なくとも1種のポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物もしくは混合物は、その際、例えば1種の触媒又は触媒のマスターバッチ、すなわち触媒と好適な同様のもしくは異なるポリマーとの混合物であって、好ましくは100質量部のポリマー及び0.1〜20質量部の触媒を含有する混合物と混合される。好ましくは、ポリマー(P)の又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する調製物もしくは混合物の架橋は、少なくとも0.0001質量%の、特に少なくとも0.001質量%の、特に好ましくは0.01質量%超の、かつ好ましくは高くても5質量%の、特に高くても1質量%の、特に好ましくは0.1質量%未満の触媒を用いて行われる。触媒としては、例えば有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、スズ塩、例えばイソオクタン酸スズ(II)、チタン化合物、例えばイソプロピル酸チタン(IV)、アザ化合物、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、塩基、例えば有機アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン又は無機酸もしくは有機酸、例えばトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ステアリン酸、パルミチン酸又はミリスチン酸もしくはそれらの無水物を使用できる。
【0147】
架橋されたポリマー(PV)は、好ましくは、DIN EN 579における指示に従って抽出により測定されたゲル含量、25%超、特に50%超を有する。架橋されたポリマー(PV)のゲル含量は、例えばグラフト度が高まることによって又は湿分侵入の増加により制御できる架橋の程度によって高めることができ、その逆も言える。ポリマー(P)を使用して製造したバインダーが他の成分を含有する場合に、それらの成分は、調製物の他の成分がDIN EN 579による方法様式によってともに検知されるか否かによっては、架橋されたポリマー(PV)のゲル含量に関する測定結果に影響を及ぼしうる。これは、当業者によって、調製物の他の成分自体のそれぞれを、場合により湿分エージング(Feuchteauslagerung)の後にゲル含量測定に供することで簡単に測定できる。測定値は、次いで相応して較正することができる。
【0148】
それぞれ意図された用途において架橋遅延剤、特に水捕捉剤又は架橋促進剤、特に触媒が必要又は役に立つかどうかは、当業者であれば、関連する試験によって簡単にそれ自体測定できる。
【0149】
好ましくは、ポリマー(P)の又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する混合物を、成分としてポリマー(P)を有するバインダーもしくは反応性溶融接着剤において水を用いて架橋させることは、部分的にもしくは完全に接着箇所の、接着された構造又はコーティングの製造時に又はその後に実施される。
【0150】
少なくとも1種のポリマー(P)からなるか又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有するバインダーもしくは反応性溶融接着剤は、非常に様々な基材のコーティング又は接着の製造のために、非極性ないし極性の基材へ並びに反応性の表面を有する基材への、とりわけ酸化物もしくはヒドロキシル化された性質である表面を有する基材へのコーティング又は接着の製造のために使用でき、こうして基材のオキシド基及び/又はヒドロキシル基はポリマー中のアルコキシシラン基と縮合反応において安定な結合を形成する。同時に、ポリマー(P)は、酸化物表面もしくはヒドロキシル化された表面を有さない非極性もしくは極性の基材に対しても強い付着を発揮する。少なくとも1種のポリマー(P)を含有するか又は少なくとも1種のポリマー(P)からなる反応性溶融接着剤は、従って、ヒドロキシル化された/酸化物性の表面も非極性の表面も有する基材からの基材組み合わせの安定な、特に迅速な接着のために適しており、こうして、ポリマー(P)からなる又はポリマー(P)を含有するバインダーもしくは反応性溶融接着剤を用いて、あらゆる考えられる基材の組み合わせにおいて困難なコーティングもしくは接着をも製造することができる。酸化物表面もしくはヒドロキシル化された表面を有する基材のための例は、木材、ガラス、金属(例えばチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、陽極処理アルミニウム、マグネシウム、モリブデン、タングステン)、合金(例えば上述の金属からの合金、例えば真鍮、ブロンズ、鋼、特殊鋼)、鉱物表面(例えばコンクリート、セッコウ、石材、人造石、化粧漆喰、砂岩、粘土、大理石、花こう岩)、グラファイト、紙及び板紙である;これらの基材は、上記定義による基材(S)のための例である。非極性もしくは極性の基材のための例は、ポリオレフィン、ポリ−α−オレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エテン−プロペン−コポリマー、ポリビニルアセテート、エテン−ビニルアセテート−コポリマー、エテン−ビニルエーテル−コポリマー、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン(登録商標)タイプもしくはペルロン(登録商標)タイプ)、アクリレートポリマー及びアクリレートコポリマー、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシドもしくはポリエーテル、例えばテトラヒドロフランからのポリエーテル、又は上記のポリマーからなる全組み合わせでのブレンドもしくはコポリマーもしくはグラフトコポリマーである。それらの基材は、混合物として、例えば充填されたポリマー、例えばタルクで、グラファイトで又はガラス繊維で充填されたポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはエテン−プロペン−コポリマーとして存在してよい。場合により、基材は、プライマー、例えば溶剤(例えばテトラヒドロフラン)で又は付着助剤で前処理されていてよい。
【0151】
バインダー又は反応性溶融接着剤は、溶融物として、溶液として又はエマルジョンとして、片方の基材表面上に又は両方の基材表面上に塗布することができ、それらの基材表面は、直ちに又は後に、場合により加熱しつつ(その際場合によりバインダーが溶融する)接触しうる;コーティングの製造のためには、1つだけの基材の被覆が望ましく、複数の基材の接着が望ましくない場合には、その際、第二の基材表面もしくは複数の基材の接触を省くことができる。
【0152】
少なくとも1種のポリマーからなるか又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する新規の反応性溶融接着剤の加工のために、例えば接着もしくは接着された構造の製造のために、既に公知の溶融接着剤による接着もしくは接着された構造の製造のための先行技術で用いられる方法が使用でき、その際、加工技術のみは公知であるが、新規の反応性溶融接着剤は、本発明の課題を解決する新規の特性プロフィールを有する。好ましくは、少なくとも1種のポリマー(P)からなるか又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する反応性溶融接着剤は、該反応性溶融接着剤の成形性もしくは流動性又は噴霧性を保証する温度で、接着箇所の片側もしくは両側上に塗布し、接着されるべき基材を該接着箇所につなぎ合わせる。反応性溶融接着剤の施与方法のための例は、スプレー法、ドクターブレード法もしくは吹き付け法であり、それは、場合により例えばクリンチなどの接合技術と組み合わせられる。該接着箇所は、次いで好ましくは、場合により収縮又は膨張を考慮して水エージングによって架橋させることで形状が保持される。湿分架橋のための方法は、更に上記されている。水エージング又は湿分エージングは、先ずはじめに好ましくは、まだ架橋されていないもしくは部分的にのみ架橋された反応性溶融接着剤の凝固温度未満の温度で行われ、こうして、前記接着剤は、接着されるべき基材を所望の配置で固定する機械的保持装置を省きうるために又は必要な機械的保持装置の費用を減らすために、十分な初期機械的強度を与える。
【0153】
前記式の全ての存在する記号は、それらの意味をそれぞれ互いに独立して有する。特に記載がない限り、前記の%の表記は質量%を意味する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0154】
実施例
以下に示される全ての部は、質量部を意味する。"0日目"という表記は、全ての示される場合において、それぞれ示される通常気候条件下でのエージングの開始前の測定値の測定を意味する。
【0155】
ポリマー(P)の製造
ポリマーへのシラングラフト化
ペルオキシド
試験のために、ペルオキシドとして、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンを使用した(Arkema社製のLuperox(登録商標)101)。
【0156】
シラン
使用されたシランは、以下の通り特徴付けられており公知である:
シランA: ビニルトリメトキシシラン("VTMO"もしくは"VTMS")
(Wacker Chemie AGのGENIOSIL(登録商標)XL10)
構造: H2C=CH−Si(OMe)3
シランB: ビニルトリエトキシシラン("VTEO"もしくは"VTES")
(Wacker Chemie AGのGENIOSIL(登録商標)GF56)
構造: H2C=CH−Si(OEt)3
【0157】
分岐度
グラフト化のために使用されるポリマーの分岐度は、核磁気1H−共鳴分光法(1H−NMR)によって測定し、13C−共鳴分光法(13C−NMR)とC,H相関実験とによって裏付けた。NMRによるポリオレフィンにおける分岐度と、分岐の構造及び相対長さの測定のためには、例えばD.E.Axelson,G.C.Levy,L.Mandelkern,"A Quantitative Analysis of Low−Density (Branched) Polyethlenes by Carbon−13 Fourier Transform Nuclear Magnetic Resonance at 67.9MHz",Macromolecules,1979,12(1),41−52.J.V.Prasad,P.V.C.Rao,V.N.Garg,"Quantification of Branching in Polyethylene by 13C−NMR Using Paramagnetic Relaxation Agents",Eur.Polym.J.1991,27(3),251−254.Takao Usami,Shigeru Takayama,"Fine−branching structure in high−pressure,low−density Polyethylenes by 50.10−MHz carbon−13 NMR analysis",Macromolecules,1984,17(9),1756−1761.Johannes Heinemann,"Herstellung von linearen,verzweigten und funktionalisierten Poly(ethen)en sowie von Polyolefin−Nanocompositen durch katalytische Ethenpolymerisation",Dissertation,Albert−Ludwigs−Universitaet Freiburg im Breisgau,Deutschland,2000を参照のこと。ポリオレフィンの分岐は一般にCH3基で終わるので、本文献における分岐度は、1H−NMRにおけるCH3共鳴での積分値の定量的評価によって測定される。
【0158】
グラフト化の結果の測定:グラフト化されたシランの量
グラフト化されたシランの量は、誘導結合プラズマ("ICP";定量化すべき元素:Si)での測定によって測定した。そのICP測定値(Siの質量%)は、グラフト化されたシランの濃度(シランの質量%)について、係数F=[M(シラン)/28.0855g/モル]で乗算することによって得られ、前記式中、M(シラン)は、グラフト化されたシランのモル質量であり、かつ28.0855g/モルは、元素のケイ素の相対モル質量である。
【0159】
グラフト化の結果の測定:架橋可能な割合
試料の架橋可能な割合は、ポリマー試料の溶融物を約0.1%のジオクチルスズジラウレートと混合することによって測定した。試料を冷やし、ピン(〜1×0.2×10mm)の形に切断し、次いでそれらを90℃で水中に置いた。複数時間という時間間隔で、それらのピン状物を取り出し、DIN EN 579により安定剤含有キシレン中で煮沸して、試料のゲル含量を測定した。数時間の水エージングの後に(一般には遅くとも16時間後に)、ゲル含量はもはや更には増大しない。このゲル含量を、ポリマー試料の架橋可能な割合として定義した。架橋可能な割合の測定は、本発明によるポリマー(P)の本発明による架橋のための例である。
【0160】
粘度
示される粘度は、それぞれ示される温度で恒温で、回転粘度測定(コーン 1°で20mmの直径を有する/プレート、剪断速度 20 1/s、ギャップ幅0.03mm、前剪断の使用期間10s、15測定値)によってBohlin Instruments社の装置(タイプCVO 75)で測定した。
【0161】
融点(Smp.)/溶融範囲(Smb.)
溶融範囲は、示差走査熱量測定によって測定した。2回の行程(温度 低→高→低→高)を行った。前記の2回の行程からのDSCピーク(吸熱)から吸熱の終わり(DSCピークの境界)までを溶融範囲として定義した。
【0162】
モル質量
ポリマーのモル質量は、ポリエチレンスタンダードに対する高温ゲル透過クロマトグラフィー(カラム、Polymer Standard Services(PSS)社のPolefin XL 10μを2本、カラム寸法2×300mm×8mm、温度160℃、注入容量200μL、試料濃度1〜2mg/mL(溶出剤中)、溶出剤1,2,4−トリクロロベンゼン(125ppmのBHTで安定化)、流速1mL/分、トリプルデテクタ(光散乱15°/90°))によって測定し、数平均Mnとして並びに質量平均Mwとして示される。
【0163】
得られたグラフト化ポリマーは、保護ガス(窒素もしくはアルゴン)下でかつ湿分排除下に貯蔵した。
【0164】
例1a〜c − バッチ法におけるシランAのポリマーに対するラジカルグラフト化によるポリマー(P)の製造(本発明によるものである)
グラフトベースとして、低密度の高分岐型のポリエチレン(HBPE、Ra=H)を使用した。該ポリエチレンは、製造元の記述によれば、メルトインデックス2250g/10分(2.16kg/190℃)、粘度3550mPa・s(190℃)、モル質量 数平均Mn=7700g/モル及び質量平均Mw=35000g/モル、密度906kg/m3及び軟化点約102℃(リングアンドボール)によって特徴付けられている。それは、商品名Epolene(登録商標)C−10を有するWestlake社の製品である。このグラフトベースは、HBPEについて先に定義した、さらにHBPOについても定義した基準に相当する。1H−NMR(CCl4中の溶液であってロック物質としてd6−ベンゼンを添加した溶液、測定温度60℃)によって、1000個のC原子につき45個の分岐の分岐度が測定され、それは、基礎となるモノマーであるエテン1000分子当たり平均して90の分岐に相当し、もしくはrの値0.090に相当する。そこから製造されたグラフト生成物は、同じか又は同様(一般に±10%)の分岐度を有する。
【0165】
例1d − バッチ法におけるシランAのポリマーに対するラジカルグラフト化によるポリマー(P)の製造(本発明によるものである)
グラフトベースとして、低密度の高分岐型のポリエチレン(HBPE、Ra=H)を使用した。該ポリエチレンは、製造元の記述によれば、メルトインデックス4200g/10分(2.16kg/190℃)、粘度1800mPa・s(190℃)、モル質量 数平均Mn=6700g/モル及び質量平均Mw=17000g/モル、密度906kg/m3及び軟化点約101℃(リングアンドボール)によって特徴付けられている。それは、商品名Epolene(登録商標)C−15を有するWestlake社の製品である。このグラフトベースは、HBPEについて先に定義した、さらにHBPOについても定義した基準に相当する。1H−NMR(CCl4中の溶液であってロック物質としてd6−ベンゼンを添加した溶液、測定温度60℃)によって、1000個のC原子につき49個の分岐の分岐度が測定され、それは、基礎となるモノマーであるエテン1000分子当たり平均して98の分岐に相当し、もしくはrの値0.098に相当する。そこから製造されたグラフト生成物は、同じか又は同様(一般に±10%)の分岐度を有する。
【0166】
例1e − バッチ法におけるシランBのポリマーに対するラジカルグラフト化によるポリマー(P)の製造(本発明によるものである)
グラフトベースとして、例1a〜cで使用したものと同じ高分岐型のポリエチレン(HBPE)を使用した。
【0167】
例1a〜eのグラフト化反応は、バッチ式で保護ガス(アルゴンもしくは窒素)下で行った。シランとペルオキシドを混合した。該混合物を、撹拌しながら15〜20分の時間にわたり溶融したポリエチレン(180℃)に配量し、該混合物を20分、後撹拌した。次いで、グラフト化されていないシランを180℃で真空下で除去し、溶融物を冷却した。生成物の使用量及びキャラクタリゼーションを第1表に示している。
【0168】
例1f − 連続法におけるシランAのポリマーに対するラジカルグラフト化によるポリマー(P)の製造(本発明によるものである)
グラフトベースとして、例1a〜cで使用したものと同じ高分岐型のポリエチレン(HBPE)を使用した。Thermo Electron社製の同方向回転の二軸スクリュー押出機(L:D=40:1、D=12mm、10帯域)で、ポリエチレンの溶融物を1分間当たり30回転で押し出した。ポリエチレンは7.48g/分で配量した。シラン/ペルオキシド混合物(質量比:8.75:0.15)の配量を帯域3で0.68g/分(0.6685g/分のシランと0.0115g/分のペルオキシドに相当)で行い、スクリューは帯域4で混合エレメントを備え、全ての他のスクリューエレメントは搬送エレメントからなる。入口(水冷)からノズル方向での帯域ごとの温度分布:140/140/140/200/200/200/200/200/200/200℃。真空中でガス抜きされた押出物のキャラクタリゼーションをして更に使用した。生成物の使用量及びキャラクタリゼーションを第1表に示している。
【0169】
例1g − 連続法におけるシランBのポリマーに対するラジカルグラフト化によるポリマー(P)の製造(本発明によるものである)
例1fに記載したのと同じ方法を使用した。ポリエチレン配量:7.45g/分;シラン/ペルオキシド混合物(質量比:11.23:0.10)の配量:0.88g/分(0.8722g/分のシランと0.0078g/分のペルオキシドに相当)。真空中でガス抜きされた押出物のキャラクタリゼーションをして更に使用した。生成物の使用量及びキャラクタリゼーションを第1表に示している。
【0170】
例1v − 例1a〜gに対する比較例 − グラフト化されていないポリマー(グラフトベース)(本発明によるものではない比較例)
本発明によるものではない比較例(以下、例1v(本発明によるものではない)と呼ぶ)として、上記定義のような変性されていないポリマーEpolene(登録商標)C−10を使用した。付随の分析データを、第1表に示している。これらのデータは、上記の方法で測定した(場合により対応する製造元の指示とは異なる)測定値である。
【0171】
例1w − 例1a〜gに対する比較例 − グラフト化されていないポリマー(グラフトベース)(本発明によるものではない比較例)
本発明によるものではない比較例(以下、例1w(本発明によるものではない)と呼ぶ)として、上記定義のような変性されていないポリマーEpolene(登録商標)C−15を使用した。付随の分析データを、第1表に示している。これらのデータは、上記の方法で測定した(場合により対応する製造元の指示とは異なる)測定値である。
【0172】
例1a〜g、1v及び1wからのポリマーの、DIN EN 579により測定したゲル含量は、全ての場合に0〜1%である。
【0173】
【表1】

【0174】
* =本発明による例
** =本発明によるものではない比較例
*** =グラフト化の後に、シランは、一般式Iによるポリオレフィンに結合された形態で存在する;使用されるシランのグラフト化前のモル質量は、"グラフト化の結果の測定:グラフト化されたシランの量"の章に記載されるように計算のために引き合いに出した。
**** =溶融熱から計算した;上記のように計算した
***** =例1f及び1g:単位[g/分]
【0175】
例2 − コーティングの製造;付着構成
例1bからのポリマーを、140〜160℃で溶融させ、100gのグラフト化生成物当たりに0.05gのジオクチルスズジラウレートと混合した。生成物の試料を、アルミニウム皿で秤量し、こうして約2mm厚のポリマー層が形成した。室温に冷却した直後に、該コーティングはもはや引き離し不可能(付着構成)であり、コーティングの引き離しの代わりにアルミニウムに亀裂が生じた。結合物[(P)(S)]が得られ、その際、(P)は例1bのポリマーであり、かつ基材(S)は酸化物表面を有するアルミニウム皿である。
【0176】
例3 − コーティングの製造後の架橋;コーティングの熱安定性の構成
例2からのコーティングを、その製造後に7日間にわたりDIN EN ISO 291による標準気候(23℃、50%の相対空気湿度、温度と相対湿度についてクラス1の境界のずれ)で周囲空気圧でエージングした(空気の進入は試験体の片側で)。この後、該コーティングは少なくとも140℃までもはや溶融しえなかった(熱安定性)。該コーティングは、湿分の作用によって架橋した。結合物[(PV)(S)]が得られ、その際、(PV)は例1bのポリマーの架橋物であり、かつ基材(S)は酸化物表面を有するアルミニウム皿である。
【0177】
例2及び3に対する比較例 − グラフト化されていないポリマー(本発明によるものではない)
例1vからのグラフト化されていないポリマー(変性されていないEpolene(登録商標)C−10、本発明によるものではない)を、ジオクチルスズジラウレートを用いずに例2の記載と同様にアルミニウム皿中に秤量し、もしくは2つのアルミニウムプレートの接着のために使用した。該コーティングは、アルミニウム皿を裏返したときに、部分的にその自重下で用意した皿から落ちるか又は簡単にかつ残すところ無く手でアルミニウムから引き離すことができた。該コーティングは、例3と同様のエージングの後に変わらず102〜110℃で溶融可能であった。
【0178】
例4 − ポリマー(P)の(PV)への架橋
例1b、1c、1d及び1eからのポリマーを、それぞれ140〜160℃で溶融させ、それぞれ0.05gのジオクチルスズジラウレート(DOTL)とグラフト化生成物100g当たりに混合し、次いで135℃で1mm(±0.2mm)厚のプレートに圧縮し、冷却した。更に、例1bからのポリマーの試料を、140〜160℃で溶融させ、そしてジオクチルスズジラウレート(DOTL)、49gの接着樹脂(Eastman Chemical社のRegalite R1100)及び4.6gのパラフィン(Aldrich Art.No.411663、融点≧65℃)とグラフト化生成物100g当たりに混合し、同様に同じ寸法のプレートに圧縮した。寸法15mm×10mm×1.0mm(±0.2mm)を有する試験体を打ち抜き(試験体の一般的な質量:150mg(±30mg))、DIN EN ISO 291による標準気候(23℃、50%の相対空気湿分、温度と相対湿度についてクラス1の境界のずれ)で周囲空気圧でエージングした(空気の進入は試験体の片側で)。
【0179】
個々の試験体を、既知の重さ(mn)の特殊鋼ネットに包み(端を折りたたむことにより閉じる)、秤量(m1)し、そして沸騰しているパラキシレンであって2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)(1%)が添加されたもので4時間、抽出した。パラキシレン:試料の比率は、500部:1部であった。試料を、熱いうちに取り出し、キシレンで後洗浄し、空気中室温で1時間、そして更に140℃で1時間乾燥させ、改めて秤量(m2)した。ゲル含量は、沸騰したキシレン中に不溶の試料の割合であり、それは以下のようにして計算する
ゲル含量=1−[(m1−m2)/(m1−mn)]
ゲル含量は、以下にパーセント[%]で示す。
【0180】
標準気候下でのエージング時間に依存して、以下のゲル含量が測定された(各4回の測定からの平均値):
第2表.エージング時間にわたるゲル含量の進展
【表2】

【0181】
例4hによる混合物は、その製造直後に、125/150/170/190℃で8.7/4.2/2.4/1.6Pa・sの粘度を有していた。配合成分のRegalite R1100及びパラフィンは、架橋されたポリマー(PV)のゲル含量を混合物で測定するために、DIN EN 579によるゲル含量測定に際して完全に可溶であり、従って第2表に例4gについて示されるゲル含量は、架橋されたポリマー(PV)のゲル含量を混合物で得るために、係数(100+49+4.6)/100=1.536で補正せねばならず、その際、式中の加数の+49と+4.6は、完全に溶解可能な成分(Regalite R1100及びパラフィン)の質量割合を表す。
【0182】
例5 − ポリマー(P)の架橋と、架橋後の標準気候条件下での種々のエージング時間での放出可能な揮発性有機化合物(VOC)
例4に記載されたのと同じ試験体を使用し、例4と同様に同じ条件下でエージングした。試験体を1つずつ、エージングの後に30μLの水と一緒にヘッドスペースGCバイアルに入れ、そのバイアルを密閉した(材料中に理論上最大で存在するSi−X結合の物質量に対する水過剰)。この試験は、どれほど多くの揮発性有機化学物質("volatile organic chemicals",VOC)がその都度のエージングの時点で材料中に、とりわけアルコキシ基の形でケイ素に結合して存在し、なおも放出しうるか("放出可能なアルコール")を確認するために用いられる。2つの測定の差から、どれほど多くのアルコールが観察された時間間隔において試料からエージングの標準気候条件下で事実上放出されたかを計算できる。それらのバイアルを、含まれる水と一緒に、例5b、5c、5d及び5hでは43時間で、あるいは例5eでは67時間で加温し(Si−X結合の完全な加水分解、より長い30時間超(例5b、5c、5d、5h)もしくは54時間超(例5e)の加熱で更に上がらない測定値で読みとれる)、試料から放出されたVOCの量をキャリブレーションされたヘッドスペースGCによって測定した。本例においてメトキシシラングラフト化されたもしくはエトキシシラングラフト化された高分岐型のポリエチレンを使用したので、ヘッドスペースGC法は、加水分解産物のメタノール(例5b、5c、5d、5h)もしくはエタノール(例5e)の検出についてキャリブレーションした。
【0183】
標準気候下でのエージング時間に依存して、以下の測定値が見いだされた(各3回の測定からの測定値;全ての表示は、ポリマー(P)1グラム当たりのメタノールのppm数である):
第3表.エージング時間にわたるポリマー(P)の試料から放出可能なアルコールの進展
【表3】

【0184】
イソシアネートは検出されず、系によれば試料から放出しえなかった。
【0185】
約1mmより薄い試験体について、エージング時間にわたる[ppm]MeOHの測定値の傾向的により迅速な減少が確認された。
【0186】
(a)表の最終行は、どれほど多くのアルコールがエージング時間(ここでは:14日目〜28日目)の終わり頃にそれぞれ観察される試料からエージング日数当たり放出されるかを示している。計算:その上にある表の行の測定値は、どれほど多くのアルコールがその都度のエージングの時点でなおも観察される試料から完全に加水分解する条件下(例えば熱、水過剰)で放出できるかを示している。どれほど多くのアルコールが事実上一日当たりに標準気候条件下で放出されたかは、観察される期間(ここでは:14日目〜28日目)の始まりと終わりの値の差を出して、観察される期間(ここでは:14日目)でのエージング段階の数で割ることによって計算される。
【0187】
例6及び7 − 接着の製造
例1b、1c、1dもしくは1eからのポリマーを、例4に記載されるのと同様に、ジオクチルスズジラウレート(DOTL)と混合するか、もしくはジオクチルスズジラウレート(DOTL)、Regalite R1100及びパラフィンと混合し、それぞれ1つのカートリッジに充填し、溶融接着ピストルを用いることによって更なる混合をせずに反応性溶融接着剤として使用した。例1vもしくは1wのポリマー(シラン基を含まないので、本発明によるものではない;触媒不含)を比較として用いた。寸法25mm×100mm×3mmを有するそれぞれ2つの試験体(木材(カエデ))を重複長さ12.5mmで接着し、こうして一交面の重複結合が面積312.5mm2で生じた(DIN EN 1465)。他のものでは、寸法25mm×50mm×3mmもしくは12.5mm×50mm×3mmを有するそれぞれ2つの試験体(木材(カエデ))を重複長さ20mmもしくは16mmで接着し、こうして一交面の重複結合が面積200mm2もしくは500mm2で生じた(第4表を参照)全ての接着を、5分以内で室温に冷却し、この時間の間に1kgの重さ(約9.8N)で互いに圧接させた。
【0188】
第4表.製造された接着(例6)
【表4】

** 比較例(本発明によるものではない)
【0189】
第5表.製造された接着(例7)
【表5】

** 比較例(本発明によるものではない)
【0190】
例8 − 接着の湿分架橋と、接着の引張剪断接着強さの測定
例6b、6c、6d、6e、6h、6v及び6wからの試験体を、DIN EN ISO 291による標準気候(23℃、50%の相対空気湿分、温度と相対湿度についてクラス1の境界のずれ)で周囲空気圧でエージングした(空気の進入は試験体の両側で)。接着箇所の引張剪断接着強さは、DIN EN 1465に従って室温で測定した。第6表は、種々のエージング時間後の結果を示している。それぞれ示されている結果は、5回の測定からの平均値(例外:欠陥のある試験体を省く)である。更に、測定の破壊像は、接着破壊(A)、粘着破壊(K)もしくは接着破壊と粘着破壊の混合(AK)で裂けるその都度の試験体の数で示される。
【0191】
第6表.エージング時間にわたる製造された接着の引張剪断接着強さの進展
【表6−1】

【0192】
【表6−2】

【0193】
【表6−3】

** 比較例(本発明によるものではない)
【0194】
例8b〜e、hは、本発明によるポリマー(P)が接着の製造直後に、エージングに際して変わらず維持したままの木材(カエデ)上での付着を、木材上での接着性が明らかに乏しいシラノール基を有さない相応する本発明によるものではないポリマーよりもより良い付着でもたらすことを示している。
【0195】
例9 − 接着の湿分架橋と、接着の熱安定性の測定
例7b、7c、7d、7e、7h、7v及び7wからの試験体を、DIN EN ISO 291による標準気候(23℃、50%の相対空気湿分、温度と相対湿度についてクラス1の境界のずれ)で周囲空気圧でエージングした(空気の進入は試験体の両側で)。試験体を次いで2kgの重さ(19.6Nの重さに相当)で負荷し、加熱室において5℃/分の加熱速度で加熱した。前記の負荷は、試験体の長軸に沿って約0.1MPaの引張剪断に相当する。熱安定性は、接着箇所がこの引張剪断下で破断する温度を示す。第7表は、種々のエージング時間後の結果を示している(3つの試験からの平均値)。測定は250℃に達したら中断した(木材の熱的分解);示される剪断下で15分後に250℃の一定の温度でなおも破断していない接着は、250℃での平均値測定に入る;この限界に達した試験体のそれぞれの数は、表中のかっこ内の値として示している。
【0196】
第7表.エージング時間にわたる製造された接着の熱安定性の進展
【表7】

** 比較例(本発明によるものではない)
【0197】
例9b〜e、hは、少なくとも1種のポリマー(P)(この具体的な場合には:ポリマー(P)と触媒)を含有する本発明によるバインダーが、既に接着の製造直後に(0日目のエージング時間についての測定値を参照)、もしくは配合物において(例9hを参照)遅くとも1日のエージング時間後に本質的により高い引張剪断でさえも、ポリマー(P)を含有しない本発明によるものではないバインダー(本発明によるものではない比較例9v及び9w)と同等ないしそれより良好な木材(カエデ)上の熱安定性を示すことを示している。標準気候でのエージング時間の更なる経過において、本発明によるポリマー(P)を含有する本発明によるバインダーは、ますますの熱安定性をもたらし、例外なく、ポリマー(P)を含有しない本発明によるものではないバインダーよりも本質的により良好な熱安定性に至る。
【0198】
熱安定性のために通常使用される試験規格WPS68は、例9b〜e、hのためには合理的に使用できなかった。それというのも、これらの例からの試料は、WPS68による標準気候での短いエージング時間後に既に250℃を超える熱安定性(木製の接合部材の分解は250℃で開始する)を達成したからである。方法WPS68の説明については、W.Schneider,D.Fabricius,"Methode zur Pruefung der Waermestandfestigkeit von Schmelzklebstoffen fuer die holzverarbeitende industrie(Methode WPS 68)",Adhaesion Kleben&Dichten,Jg.1969,第1号,28〜37頁を参照のこと。
【0199】
例10 − ポリマー(P)の湿分架橋と、標準気候でのエージング時間に依存した粘着強度の測定
例4に記載されるプレート(プレートの材質は、例4に記載されるような混合物からなる)から、試験体をDIN53504,タイプ32(DIN53504とは試験体が1.0mm(±0.2mm)の厚さを有する点のみで異なる)に従って打ち抜いた。それらの試験体を、DIN EN ISO 291による標準気候(23℃、50%の相対空気湿分、温度と相対湿度についてクラス1の境界のずれ)で周囲空気圧でエージングした(空気の進入は試験体の両側で)。試験体の引裂強度を、室温でDIN EN ISO 527に従って測定した。第8表は、種々のエージング時間後の測定された最大引張応力の結果を示している。示されるそれぞれの結果は、4回の測定からの平均値である。
【0200】
第8表.エージング時間にわたる本発明によるバインダーの引裂強度(粘着力)の進展
【表8−1】

【0201】
【表8−2】

【0202】
【表8−3】

【0203】
例10b〜e、hは、本発明によるバインダーをもって優れた引裂強度を達成でき、その際、本発明によるバインダーは、同時にその融点より高い温度で低い粘度を示す。
【0204】
例8及び9は、接着箇所の架橋についての例を示し、例3は、コーティングの架橋についての例であり、例4、5及び10は、本発明によるバインダーの架橋についての例である(それぞれ湿分の作用下で)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシラン基を有し、少なくとも1つのケイ素原子が加水分解可能な基を有する、一般式I
【化1】

[式中、
A及びRBは、一価の末端基であり、
aは、水素又は炭化水素基を表し、
c及びRdは、水素又は炭化水素基を表し、
Uは、不飽和の二価もしくは三価の炭化水素基を表し、
Oは、基−CH2−C(H)(OH)−、−CH2−C(H)(OOH)−、−CH2−C(=O)−、−C(H)(OH)−、−C(H)(OOH)−又は−C(=O)−を表し、
基[(CH2k(CRcd)]の構造は、基[(CH2)(CHRa)]の構造と同一ではなく、
ポリマー(P)の製造のためには、少なくとも1つの合成工程で、構造H2C=C(H)(Ra)のモノマーが使用され、
ポリマー(P)を製造するためには、構造H2C=C(Rc)(Rd)のモノマーはどの合成工程でも使用されず、
モノマーH2C=C(H)(Ra)の構造は、モノマーの構造H2C=C(Rc)(Rd)とは同一ではなく、
gは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
hは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
kは、0又は1の値を取ってよく、
lは、0又は1の値を取ってよく、
mは、1より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
pは、9より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
qは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
tは、0より大きいかそれと等しい整数値を取ってよく、
g+hの合計は、1より大きいかそれと等しい値を取り、
q+p+m+tの合計は、10より大きいかそれと等しい整数値を取り、
m−gの差は、1より大きいかそれと等しい値を取り、
p−hの差は、5より大きいかそれと等しい値を取り、
m−g=r×(m+p+q+t)という関係を満たし、
rは、0.02より大きいかそれと等しい値を取り、
fは、水素もしくは炭化水素基を表し、又は基RSiを表し、
Siは、ケイ素原子を有する基を意味し、その際、全てのRSiの少なくとも50モル%は、基[−(R2v−C1(R32))w−R4x−SiXs13-s]を意味し、その際、
1は、炭化水素基もしくはヒドロキシル基もしくはSi1〜Si20−シロキシ基又は1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基Xで、Siに結合されたヒドロキシル基でもしくはC1〜C20−炭化水素基でもしくは基−C233で置換されていてよいシランの縮合されたシラン加水分解物を表し、又は構造−C233を取り、
2は、結合又はC1〜C20−炭化水素基を表し、前記基は、1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換されていてよく、又は1もしくは複数の二価の基Q2によって中断されていてよく、又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されていてよく、その際、vが0でない場合に、炭素原子C1に結合されているR2中のその原子が炭素原子であり、
3は、水素又は非置換のもしくは1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換されたもしくは1もしくは複数の二価の基Q2によって中断されたもしくは1もしくは複数の三価の基Q3によって中断されたC1〜C18−アルキル基もしくはC6〜C10−アリール基を意味し、その際、炭素原子C1もしくはC2に結合されているR3中のその原子が炭素原子もしくは水素原子であり、
4は、1、2、3もしくは4個の加水分解可能な基を有するシランであって、Siに結合された基Xで、Siに結合されたヒドロキシル基でもしくはC1〜C20−炭化水素基でもしくは基−C233で置換されていてよいシランの加水分解物からの二価のシロキサン基を表し、その際、xが0でない場合に、単位SiXs13-sに結合されているR4中のその原子が酸素原子であり、かつ単位−(R2v−C1(R32))w−に結合されているR4中のその原子がケイ素原子であり、
1は、フッ素置換基、塩素置換基、臭素置換基、ヨウ素置換基、シアナト置換基、イソシアナト置換基、シアノ置換基、ニトロ置換基、ニトラト置換基、ニトリト置換基、シリル置換基、シリルアルキル置換基、シリルアリール置換基、シロキシ置換基、シロキサンオキシ置換基、シロキシアルキル置換基、シロキサンオキシアルキル置換基、シロキシアリール置換基、シロキサンオキシアリール置換基、ヒドロキシ置換基、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、アシルオキシ置換基、S−スルホナト置換基、O−スルホナト置換基、スルファト置換基、S−スルフィナト置換基、O−スルフィナト置換基、アミノ置換基、アルキルアミノ置換基、アリールアミノ置換基、ジアルキルアミノ置換基、ジアリールアミノ置換基、アリールアルキルアミノ置換基、アシルアミノ置換基、イミド置換基、スルホンアミド置換基、メルカプト置換基、アルキルチオ置換基もしくはアリールチオ置換基、O−アルキル−N−カルバマト置換基、O−アリール−N−カルバマト置換基、N−アルキル−O−カルバマト置換基、N−アリール−O−カルバマト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいP−ホスホナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいO−ホスホナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいP−ホスフィナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいO−ホスフィナト置換基、アルキルもしくはアリールで置換されていてよいホスフィノ置換基、ヒドロキシカルボニル置換基、アルコキシカルボニル置換基、アリールオキシカルボニル置換基、環式もしくは非環式のカーボネート置換基、アルキルカーボネート置換基もしくはアリールカーボネート置換基から選択されるヘテロ原子を有する一価の基を意味し、
2は、−O−、−S−、−N(R11)−、−C(O)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−O−、エポキシ、−O−C(O)−N(R11)−、−N(R11)−C(O)−O−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)−O−、−S(O)2−O−、−O−S(O)2−O−、−C(O)−N(R11)−、−S(O)2−N(R11)−、−S(O)2−N[C(O)R13]−、−O−S(O)2−N(R11)−、−N(R11)−S(O)2−O−、−P(O)(OR12)−O−、−O−P(O)(OR12)−、−O−P(O)(OR12)−O−、−P(O)(OR12)−N(R11)−、−N(R11)−P(O)(OR12)−、−O−P(O)(OR12)−N(R11)−、−N(R11)−P(O)(OR12)−O−、−N[C(O)R13]−、−N=C(R13)−O−、−C(=NR11)−、−C(R13)=N−O−、−C(O)−N[C(O)R13]−、−N[S(O)214]−、−C(O)−N[S(O)214]−、−N[P(O)R152]−、−Si(R162)−、−[Si(R162)O]a−、−[OSi(R162)]a−、−[OSi(R162)]aO−から選択されるヘテロ原子を有する二価の基を意味し、その際、R11、R12及びR13は、水素又は置換されていてよいC1〜C20−アルキル基もしくはC6〜C20−アリール基を表し、R14は、置換されていてよいC1〜C20−アルキル基もしくはC6〜C20−アリール基を表し、R15は、置換されていてよいC1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール基、C1〜C20−アルコキシ基もしくはC6〜C20−アリールオキシ基を表し、R16は、C1〜C20−アルキル基、C6〜C20−アリール基、C1〜C20−アルコキシ基もしくはC6〜C20−アリールオキシ基を表し、かつaは、1〜100の数を表し、
3は、−N=もしくは−P=から選択されるヘテロ原子を有する三価の基を表し、
Xは、加水分解可能な基を意味し、
sは、1、2又は3の値を意味し、
vは、0又は1の値を意味し、
wは、0又は1の値を意味し、
xは、0又は1の値を意味する]のポリマー(P)。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー(P)の製造方法であって、少なくとも1種の高分岐型の又は超分岐型のポリオレフィンHBPOを、ラジカル条件下で、1もしくは複数の不飽和化合物であって、そのうち少なくとも1種が、(i)少なくとも1個の、十分にグラフト化可能な不飽和基を有し、かつ(ii)少なくとも1つのケイ素原子に少なくとも1つの加水分解可能な基を有するシラン又はシラン予備縮合物である前記化合物でグラフト化する前記製造方法。
【請求項3】
一般式III
A[(CH2)(CHRa)]p[(CH2k(CRcd)]mUqOtB (III)
[式中、RA、RB、Ra、Rc、Rd、RU、RO、p、k、m、q及びtは、請求項1に示される意味を有し、基[(CH2k(CRcd)]の構造は、基[(CH2)(CHRa)]の構造と同一ではなく、
式IIIのポリマーの製造のためには、少なくとも1つの合成工程で、構造H2=C(H)(Ra)のモノマーが使用され、
式IIIのポリマーの製造のためには、構造H2C=C(Rc)(Rd)のモノマーはどの合成工程でも使用されず、
モノマーH2C=C(H)(Ra)の構造は、モノマーH2C=C(Rc)(Rd)の構造と同一ではなく、
m=r′×(m+p+q+t)の関係を満たし、かつ
r′は、0.02より大きいか又はそれと同じ値を取る]の高分岐型のもしくは超分岐型のHBPOが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
一般式IV
2123=C4(R22)−(R23y−C5(R242))z−R25u−SiXs13-s (IV)
[式中、R1、X及びsは、請求項1に記載の意味を有し、
21及びR22は、水素、フッ素、塩素又は非置換のもしくは1もしくは複数の一価の置換基Q1によって置換された又は1もしくは複数の二価の基Q2によって中断された又は1もしくは複数の三価の基Q3によって中断された炭化水素基を意味し、
23は、前記のR2について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、yが0ではない場合に、炭素原子C5に結合されているR23中のその原子が炭素原子であり、
24は、前記のR3について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、炭素原子C5に結合されているR24中のその原子が炭素原子又は水素原子であり、
25は、前記のR4について定義されたのと同じ意味を取ってよく、その際、uが0ではない場合に、単位−SiXs13-sに結合されているR25中のその原子が酸素原子であり、かつ単位R2123=C4(R22)−(R23y−C5(R242))z−に結合されているR25中のその原子がケイ素原子であり、
uは、xについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
yは、vについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
zは、wについて前記で定義されたのと同じ意味を取ってよく、
その際、一般式IV中のR1、R21、R22、R23、R24、R25、X、Q1、Q2及びQ3は、互いに結合されて、1もしくは複数の環を形成してよく、かつ一般式IV中の炭素原子C4に結合されているR22中のその原子が、炭素原子もしくは水素原子とは異なる原子である]のシランが使用される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の構造H2C=CHRaのオレフィン性不飽和モノマーを、ラジカル条件下で、(i)少なくとも1つのオレフィン性不飽和のC=C二重結合と(ii)少なくとも1つの加水分解可能な基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有する少なくとも1種の化合物と共重合させ、かつ前記共重合は、150℃〜360℃の温度でかつ5MPa〜500MPa(絶対圧)の圧力で実施される、請求項1に記載のポリマー(P)の製造方法。
【請求項6】
一般式V
2C=C(Rf)(RSi) (V)
[式中、Rf及びRSiは、請求項1で定義された意味を取る]のシランが使用される、請求項5に記載のポリマー(P)の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の少なくとも1種のポリマー(P)を含有するバインダー。
【請求項8】
接着性樹脂、ワックス、可塑剤、熱安定剤もしくは光安定剤、蛍光剤、帯電防止剤、離型剤及び粘着防止剤、付着促進剤、有機官能性シラン、アルコキシシラン、充填剤及び着色剤、顔料、難燃剤、ラジカル捕捉剤又は酸化防止剤から選択される物質を含有する、請求項7に記載のバインダー。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマー(P)を、単独でもしくは配合物の成分として、バインダーとして、溶融接着剤として、反応性溶融接着剤として、接着箇所の製造のために、接着された構造の製造のために、コーティングの製造のために、塗料の製造のために、接着テープの製造のために、接着シートの製造のために、感圧性接着剤の製造のために又はフォームの製造のために用いる使用。
【請求項10】
請求項1に記載のポリマー(P)又は少なくとも1種のポリマー(P)を含有する混合物の水による架橋方法。
【請求項11】
ポリマー(P)の水による架橋によって又は酸化物基もしくは水とは異なる性質のヒドロキシル基もしくはSiOHとの架橋によって得られる架橋されたポリマー(PV)。
【請求項12】
aが水素を意味する、請求項1に記載のポリマー(P)。

【公表番号】特表2013−501113(P2013−501113A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523305(P2012−523305)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061196
【国際公開番号】WO2011/015547
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】