説明

シリカ含有積層体、及び多孔性シリカ層形成用塗布組成物

透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体であって、該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなり、そして該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含み、但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する、ことを特徴とするシリカ含有積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、シリカ含有積層体に関する。更に詳細には、本発明は、透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体であって、該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリング(moniliform silica strings)からなり、そして該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が特定の大きさの孔を含むことを特徴とするシリカ含有積層体に関する。本発明のシリカ含有積層体においては、該多孔性シリカ層が、低屈折率及び高光透過性を有するだけでなく、強度に優れるため、本発明のシリカ含有積層体は、反射防止膜などの反射防止材として有利に使用することができる。また、本発明は、基板上に低屈折率多孔性シリカ層を形成するための塗布組成物、並びに上記塗布組成物を用いて形成した低屈折率多孔性シリカ層を含有する反射防止膜にも関する。
従来技術
光学部品、眼鏡のレンズ、ディスプレイ装置のスクリーンなどを被覆して用いる反射防止膜としては、単層または複数層からなるものが知られている。単層および2層からなる反射防止膜は、反射率が大きくなってしまうため、屈折率の異なる3層以上を積層したものが好ましいと考えられてきた。しかし、3層以上を積層させるのは、真空蒸着法、ディップコーティング法等の公知のどのような方法を用いても、単層に比べ工程が煩雑であるとともに生産性に劣るという欠点があった。
そこで、単層のものであっても下記の条件を満足すれば反射率の低減が可能であることが見出され、下記条件を満足する単層膜の開発が検討されてきた。即ち、基材の屈折率をn、単層膜の屈折率をnとし、n>nである場合、反射率Rは極小値として(n−n/(n+nをとることを利用し、nとnの値とがなるべく近くなるように単層膜の屈折率nをn1/2に近づけて反射率を低減させることが試みられてきた。
具体的には、透明基板としてガラス(n=1.52程度)やポリメチルメタクリレート(n=1.49程度)、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す。)(n=1.54〜1.67程度)、トリアセチルセルロース(n=1.49程度)からなる基板のように屈折率nが1.49〜1.67のものを用いると、単層膜に要求される目標屈折率nは基板の屈折率nに応じて1.22〜1.30となる。従って、使用する透明基板に対応して、単層膜の屈折率nを1.22〜1.30の範囲に制御できれば単層膜でも充分な反射防止膜となりうる。
上記の単層膜の目標屈折率を達成するために、膜中に空孔助剤を導入し、該空孔助剤を抽出により除去することによって空隙を導入した多孔体からなる単層膜が検討されている(例えば日本国特開平1−312501号公報、日本国特開平7−140303号公報、日本国特開平3−199043および日本国特開平11−35313号公報参照)。しかしこれらの多孔体は、空孔助剤を抽出により除去する際に、膜が膨潤したり、剥離を起こしたりするという問題や、製造工程が煩雑であるという問題が生じている。
そこで、抽出工程を経ずに屈折率の低い多孔体の単層膜を成膜する方法として、無機微粒子が鎖状に連なったもの(以下、鎖状の無機物と称す)をシランカップリング剤で処理し、さらにバインダーとして光硬化性アクリレートなどを加えて得られる塗布液を用いて、基板上に成膜することで形成される微細な空隙を有する多孔体からなる単層膜(例えば日本国特開2001−188104号公報参照)が検討されているが、膜強度の達成のために添加されたバインダーによって空隙が充填され、十分に低い屈折率をもつ膜が得られないといった問題が生じている。
また、シリカ微粒子が鎖状に連なったもの(以下、鎖状シリカと称する)にバインダーとしてポリシロキサンを添加した塗布液を用いて得られた多孔体からなる単層膜(例えば日本国特開平11−61043号公報および日本国特開平11−292568号公報参照)も検討されているが、鎖状シリカが有するヒドロキシル基とポリシロキサンの有するヒドロキシル基との間で脱水縮合させて充分な膜強度を得るためには300℃以上で熱処理をしなければならない。すなわちこの方法では基材としてガラス等の高耐熱性基板を用いることしかできず、耐熱性の低い透明熱可塑性樹脂基板を用いることができない。
さらに、アルコキシシランや金属アルコキシドの加水分解物と5〜30nmの粒子径を有するシリカ微粒子とを含有する組成物を基板に塗布し硬化することで得られる、屈折率が1.28〜1.38である反射防止膜が開示されている(日本国特開平8−122501号公報参照)。この特許文献には利用可能なシリカ微粒子として数珠状のシリカが言及されており、また用いられる基板として熱可塑性樹脂基板が言及されている。該特許文献の実施例において、熱可塑性樹脂基板上に単層膜を形成した例は1例のみ報告されているが、利用するシリカ微粒子として鎖状のものではなく独立したシリカ微粒子(粒子径15nm)を用いている。得られた該単層膜の屈折率は1.32と高く、十分な反射防止効果を有するとは言い難い。また該特許文献の実施例において、独立したシリカ微粒子(粒子径15nm)を用いてシリコン基板上に屈折率が1.30未満である単層膜を得た例も1例のみ報告されている。しかし、該実施例において用いられているシリカ微粒子は、テトラエトキシシランをアンモニア触媒の存在下で加水分解・縮合して製造したものである。一般的に、テトラアルコキシシランを塩基触媒の存在下にて加水分解・縮合を行って製造したシリカ微粒子は低密度であり、内部に多数の非常に小さな空孔を有するものであることが知られている(日本国特許第3272111号公報、及び「ゾルゲル法の技術的課題とその対策」(日本国株式会社アイピーシー)、1990年、61〜62頁参照)。このような低密度のシリカ微粒子を用いれば屈折率の低い単層膜を容易に製造することができるが、このような低密度のシリカ微粒子は強度に乏しく、したがって形成された単層膜の強度も低いものとならざるを得ない。該実施例ではそれを補うためか膜形成後に300℃の加熱を必要としているので、この方法は熱可塑性樹脂基板を用いる場合には実施不可能である。すなわち該特許文献においては、実用的な強度を有する反射防止膜は提供されていない。
以上の通り、従来の技術では、透明熱可塑性樹脂基板と多孔性シリカ層からなる反射防止積層体であって、多孔性シリカ層が十分に低い屈折率を有し、かつ優れた機械的強度を有する反射防止積層体は得られなかった。
発明の概要
このような状況下、本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の方法で得られた、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる数珠状シリカストリングを含む特定の塗布組成物を用いて、透明熱可塑性樹脂基板上に、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなる多孔性シリカ層であって、多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含む(但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する)多孔性シリカ層を形成することによって、屈折率が1.22以上1.30未満と低く、高光透過性であって、且つ優れた機械的強度を有する多孔性シリカ層が、該透明熱可塑性樹脂基板上に積層されてなるシリカ含有積層体が得られることを見出した。上記の特定の塗布組成物は、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる数珠状シリカストリングの分散液を加水分解基含有シランと混合して混合物を得、該混合物を加水分解及び脱水縮合に付すことにより得られる。これらの知見に基づいて、本発明は完成された。
従って、本発明の一つの目的は、屈折率が1.22以上1.30未満と低く、高光透過性であって、且つ優れた機械的強度を有する多孔性シリカ層が、該透明熱可塑性樹脂基板上に積層されてなる、反射防止材として有利に用いることができるシリカ含有積層体を提供することである。
本発明の他の一つの目的は、耐熱性の低い透明熱可塑性樹脂基板を用いても、該基板上に低屈折率及び高光透過性であるだけでなく優れた機械的強度を有する多孔性シリカ層を形成することに用いることができる塗布組成物を提供することである。
本発明の更に他の一つの目的は、上記塗布組成物を用いて形成した低屈折率多孔性シリカ層を含有する反射防止膜を提供することである。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながらおこなう以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
添付の図面において:
図1は、塗布組成物中における硝酸の濃度が0.0010mol/リットルであったときの塗膜(実施例17)の外観であり;
図2は、塗布組成物中における硝酸の濃度が0.0020mol/リットルであったときの塗膜(実施例18)の外観であり;
図3は、塗布組成物中における硝酸の濃度が0.0035mol/リットルであったときの塗膜(実施例19)の外観であり;
図4は、塗布組成物中における硝酸の濃度が0.0050mol/リットルであったときの塗膜(実施例20)の外観であり;
図5は、数珠状シリカストリングを含む塗布組成物をPET基板上に塗布し、120℃の熱処理を行うことで得られた多孔性シリカ層(実施例21)の走査電子顕微鏡による撮像であり;
図6は、図5の撮像に対し画像解析を行って得られた、孔開口部面積率の分布図であり、
図7は、数珠状シリカストリングを含む塗布組成物をガラス基板上に塗布し、最高500℃の熱処理を行うことで得られた多孔性シリカ層(比較例6)の走査電子顕微鏡による撮像であり;
図8は、図7の撮像に対し画像解析を行って得られた、孔開口部面積率の分布図であり;
図9は、独立したシリカ粒子を含む塗布組成物をPET基板上に塗布し、120℃の熱処理を行うことで得られた多孔性シリカ層(比較例7)の走査電子顕微鏡による撮像であり;そして
図10は、図9の撮像に対し画像解析を行って得られた、孔開口部面積率の分布図である。
本発明の詳細な説明
本発明の基本的な態様によれば、透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体であって、
該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなり、そして
該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含み、但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する、
ことを特徴とするシリカ含有積層体が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体であって、
該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなり、そして
該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含み、但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する、
ことを特徴とするシリカ含有積層体。
2.該複数の数珠状シリカストリングの、動的光散乱法により測定した平均値として表される、平均長さが30〜200nmであることを特徴とする、前項1に記載のシリカ含有積層体。
3.該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子数が、該少なくとも1層の多孔性シリカ層中に存在する全珪素原子数に対して15.0%以上であることを特徴とする、前項1または2に記載のシリカ含有積層体。
4.該複数の孔(P)の一部又は全ての孔開口部面積(a)が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値(a)より少なくとも3σ大きく、但し該孔開口部面積(a)は該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定され、σは該複数のシリカ一次粒子の最大断面積測定値の標準偏差であり、

孔性シリカ層の表面又は断面中の全ての孔開口部に関して測定した孔開口部面積の総和Sとが、下記式(1)を満足することを特徴とする、前項1〜3のいずれかに記載のシリカ含有積層体。

5.該透明熱可塑性樹脂基板の鉛筆硬度が1H〜8Hであることを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載のシリカ含有積層体。
6.該透明熱可塑性樹脂基板と該多孔性シリカ層との間に、水接触角が85°以下であるハードコート層をさらに含有することを特徴とする、前項1〜5のいずれかに記載のシリカ含有積層体。
7.基板上に、低屈折率多孔性シリカ層を形成するために用いる塗布組成物であって、以下の方法によって得られることを特徴とする塗布組成物:
複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングの分散液を加水分解基含有シランと混合して混合物を得、
該混合物を加水分解及び脱水縮合に付す
ことを含む方法。
8.該複数の数珠状シリカストリングの、動的光散乱法により測定した平均値として表される、平均長さが30〜200nmの範囲であることを特徴とする、前項7に記載の塗布組成物。
9.該加水分解基含有シランの、該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子に対するモル比が0.005〜1.0の範囲であることを特徴とする、前項7または8のいずれかに記載の塗布組成物。
10.少なくとも1種のアルカリ土類金属塩をさらに含むことを特徴とする、前項7〜9のいずれかに記載の塗布組成物。
11.該少なくとも1種のアルカリ土類金属塩の、該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子に対するモル比が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とする、前項10に記載の塗布組成物。
12.さらに酸を0.0008mol/リットル以上の濃度で含有し、且つ水含有率が、該複数の数珠状シリカストリング1重量部に対して1.5重量部を超えることを特徴とする、前項7〜11のいずれかに記載の塗布組成物。
13.前項7〜12のいずれかに記載の塗布組成物を用いて形成された、少なくとも1層の低屈折率多孔性シリカ層を含むことを特徴とする反射防止膜。
14.透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなる、前項1〜6のいずれかに記載のシリカ含有積層体を含む反射防止膜であって、
該シリカ含有積層体に含まれる該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、前項7〜12のいずれかに記載の塗布組成物を用いて形成されることを特徴とする反射防止膜。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシリカ含有積層体は、透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなる。
本発明に用いる透明熱可塑性樹脂基板は、可視光の領域で透明なフィルムが好ましい。例えば、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート系フィルム、延伸したポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルムおよびポリスルホン系フィルム等を用いることができる。さらに、本発明の透明熱可塑性樹脂基板として、上記のフィルムよりも厚いシート状や板状のポリアルキルメタクリレートやポリアルキルアクリレートやポリカーボネートを用いることもできる。
透明熱可塑性樹脂基板の熱変形温度に関しては、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。60℃よりも低い場合は、多孔性シリカ層形成時の加熱温度が必然的に低くなり、そのため多孔性シリカ層の機械的強度が不十分となる可能性があり、また、該透明熱可塑性樹脂基板の耐環境長期安定性が不十分となる可能性がある。
透明熱可塑性樹脂基板がフィルムである場合、該基板の膜厚は1〜500μmが好ましく、より好ましくは30〜300μm、特に好ましくは50〜200μmである。1μm未満の厚さのフィルムは実用的な強度を有せず、500μmを超える厚さのフィルムはロール状に加工するのが困難であるため、連続塗工プロセスを適用するのが難しい等の問題点がある。透明熱可塑性樹脂基板がシート状や板状の場合、用途に求められる光透過率と強度を有する範囲でどのような厚さのものでも用いることができる。
該基板の550nmでの光透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが更に好ましい。また該基板のヘーズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。また、該基板の屈折率は、1.49〜1.67の範囲であることが好ましい。
本発明の積層体の強度を支配する因子として、透明熱可塑性樹脂基板と多孔性シリカ層間の界面相互作用や、透明熱可塑性樹脂基板自身の強度が挙げられる。このため、透明熱可塑性樹脂基板として極性基を有するものを用いるのが好ましい。極性基としては、水酸基、シラノール基、シロキサン基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、カーボネート基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、スルホン基等が挙げられる。このような極性基を有する透明熱可塑性樹脂基板を用いることにより、より高い機械的強度を有する反射防止積層体を得ることができる。
また、透明熱可塑性樹脂基板は鉛筆硬度が1H〜8H、好ましくは1H〜7Hのものを用いるのが好ましい。ここで、鉛筆硬度とは、JIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400に規定される鉛筆硬度の評価方法に従って測定した、1kg荷重における鉛筆硬度のことである。
透明熱可塑性樹脂基板の鉛筆硬度が1H未満だと積層体の鉛筆硬度が不十分となる場合があり、逆に8Hを超えると、透明熱可塑性樹脂基板の上に積層する多孔性シリカ層などが受ける応力を透明熱可塑性樹脂基板が緩和する作用が無くなり、該多孔性シリカ層などの鉛筆硬度が不十分となる場合がある。
本発明において、透明熱可塑性樹脂基板は単一の材料から得られる単層であってもよいし、必要に応じて異なる材料から得られる複数の層を積層して得られる積層構造を有するものであってもよい。例えば、透明熱可塑性樹脂基板の屈折率が1.49〜1.67の範囲にない場合や、鉛筆硬度が1H〜8Hの範囲にない場合など、単一樹脂からなる単層の透明熱可塑性樹脂基板を単独で用いても望ましい物性が得られない場合には、複数の異なる樹脂の層を積層して所望の物性を有する透明熱可塑性樹脂基板を得ることができる。
より具体的には、例えば、該透明熱可塑性樹脂基板の鉛筆硬度が1H〜8Hの範囲にないか、屈折率が1.49〜1.67の範囲にないか、あるいは該熱可塑性樹脂基板が上記の極性基を含有しない場合には、該透明熱可塑性樹脂基板上にハードコート層を設けた上で透明熱可塑性樹脂基板として用いることができる。ここで、ハードコート層とは、透明熱可塑性樹脂基板を補強する目的で、基板表面に設ける層のことである。
特に透明熱可塑性樹脂基材の表面における強度が不足するような場合には、上記透明熱可塑性樹脂基板上にハードコート層を設けたものを基板として用いることが好ましい。
ハードコート層は、有機系、有機−無機ハイブリッド系、無機系の硬化性のハードコート材料を該透明熱可塑性樹脂基板に塗布して硬化することによって形成する。硬化の方法として熱硬化や紫外線硬化、電子線硬化が行えるハードコート材料であることが好ましい。
代表的な材料としては、メラミン系、アクリル系、アクリルシリコーン系、シリコーン系、エポキシ系のハードコート材料が好ましい。また、ハードコート層の強度向上、屈折率調整、帯電防止性能付与のために、これらのハードコート材料をマトリックスとして有機および/又は無機の微粒子を分散したもの(以下、有機・無機微粒子分散系と称する)を用いることも可能である。
上記のハードコート材料のうち、アクリル系ハードコート材料は多官能(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有しているものが好適に用いられる。多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としてアルキレンビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両方を指す。
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ノボラック型やビスフェノール型エポキシ樹脂を(メタ)アクリレート変性したエポキシ(メタ)アクリレート、ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られるウレタン化合物の(メタ)アクリレート変性物であるウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル樹脂を(メタ)アクリレート変性したポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリルシリコーン系ハードコート材料は、シリコーン樹脂上に(メタ)アクリル基を共有結合により結合させたものが好適に用いられる。
シリコーン系ハードコート材料は、公知の加水分解基含有シランを加水分解重縮合させることにより得られたシラノール基を有する縮合体を含んでいるものが好適に用いられる。上記シリコーン系ハードコート材料は、塗布後の熱硬化等により、シラノール基がシロキサン結合に変換されて硬化膜が得られる。
エポキシ系ハードコート材料はビスフェノール型エポキシ樹脂や、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどのエポキシ含有モノマーを含有するものが好適に用いられる。
これらのハードコート材料としては極性基を有するものが好ましい。極性基としては、水酸基、シラノール基、シロキサン基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、カーボネート基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、スルホン基等が挙げられる。このような極性基を有するハードコート材料を用いることにより、より高い機械的強度を有する積層体を得ることができる。
有機・無機微粒子分散系ハードコート材料に用いる微粒子の具体例として、無機微粒子としては二酸化ケイ素微粒子、二酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化錫微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウム微粒子等が挙げられ、有機微粒子としてはメタクリル酸−メチルアクリレートコポリマー、シリコーン樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル酸−スチレンコポリマー、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドおよびポリフッ化エチレンが含まれる。これらの微粒子がハードコート材中に分散することでハードコート層の硬度を高くし、また硬化収縮を抑える機能がある。
これらの微粒子の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、0.02〜0.5μmであることがさらに好ましい。0.01μm未満では微粒子を添加した効果が十分に現れない場合があり、逆に2μmを超えると積層体の透明性が低下する。尚、有機微粒子や無機微粒子は各々複数種を混合して用いても構わず、有機微粒子と無機微粒子を混合して用いても構わない。
本発明に用いることができる有機微粒子、無機微粒子はマトリックスとして用いられるハードコート材料と化学結合していてもしていなくてもかまわない。
無機微粒子分散系の具体例としては、無機微粒子を分散させたアクリル系ハードコート材料、無機微粒子を分散させた有機高分子系ハードコート材料、無機微粒子を分散させたアクリルシリコーン系ハードコート材料、無機微粒子を分散させたシリコーン系ハードコート材料、無機微粒子を分散させたエポキシ系ハードコート材料等が挙げられる。特にアクリル系ハードコート材料にシリカ微粒子や酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子等を分散させたものが好ましい。また、表面に(メタ)アクリロイル基を修飾した無機微粒子を用いることも好ましい。ハードコート材料には、さらに着色剤(顔料、染料)、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤や改質用樹脂を添加してもよい。
本発明で用いられるハードコート材料は、塗布する際に必要に応じて水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルカノールエーテル類の溶媒等を添加しても良い。これらの中でもトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールを用いて塗布溶液とし、透明熱可塑性樹脂基板上へ塗布成膜・硬化することによって製造するのが好ましい。
上記ハードコート材料は硬化方法に応じて、重合開始剤、添加剤、溶剤、反応性希釈剤等を含んでいてもよい。重合開始剤としては熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、熱アルカリ発生剤、光アルカリ発生剤など公知のものを、上記ハードコート材料に含まれる重合性官能基の反応形態に合わせて選ぶことができる。
ハードコート層の塗布成膜方法は特に制限はなく、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、スライドコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の塗布法を用いて実施することができる。これらのうち、透明熱可塑性樹脂基板がフィルムの場合、連続塗布が可能なナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、スライドコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の方法が好ましく用いられる。
塗布して得られた膜は、80〜150℃で加熱、及び/または光や電子線を用いて硬化させることにより、ハードコート層とすることができる。
ハードコート層の表面における水接触角は特定範囲内であることが好ましい。具体的には、水接触角が85°以下、好ましくは80°以下、より好ましくは75°以下が好適である。水接触角が85°よりも高いと、ハードコート層の上に多孔性シリカ層を積層する際にハジキが生じたり、反射防止膜の強度が不十分となったりする場合がある。従って、ハードコート層の水接触角が85°を超えるような場合には、ハードコート層の表面の水接触角を85°以下に制御するために適宜ハードコート層の組成を調整するか、或いはハードコート層成膜後にその表面の改質処理を行って、接触角を下げることが好ましい。表面改質処理方法としては、200nmより短波長の紫外線を照射できるdeep−UV照射やエキシマランプ照射、又は、プラズマ処理、電子線照射等の方法、又は、シランカップリング剤等を含有するプライマー処理の方法等が好ましい。
ハードコート層の厚さは、1〜15μmであることが好ましい。1μm未満ではハードコート層の効果が十分に発現しない場合があり、また逆に15μmを超えると、クラックが生じたり積層体に反りが発生したりすることがある。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、1H〜8Hであることが好ましく、2H〜8Hであることがより好ましく、3H〜8Hであることがさらに好ましい。
該ハードコートの屈折率は、1.49〜1.67であることが好ましい。1.49未満では積層体の反射率が十分に低下せず、逆に1.67を超えると、可視光内の波長領域によっては反射光をかえって強めてしまい、着色やギラツキを生じることがある。
本発明に用いることができるハードコート材料としては市販されているものを用いることが可能であり、具体的には、日本国信越化学工業株式会社製UV硬化型シリコーンハードコート剤X−12シリーズ、日本国GE東芝シリコーン株式会社製UV硬化型シリコーンハードコート剤UVHCシリーズや熱硬化型シリコーンハードコート剤SHCシリーズ、日本国株式会社日本ダクロシャムロック製熱硬化性シリコーンハードコート剤ソルガードNPシリーズ、日本国日本化薬株式会社製UV硬化型ハードコート剤KAYANOVA FOPシリーズ等を好適に用いることができる。
また、本発明のシリカ含有積層体において、該少なくとも1層の多孔性シリカ層は、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなり、そして該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含む(但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する)。
ここで、シリカ一次粒子とは、数珠状シリカストリングを構成する、独立したシリカ微粒子のことである。
数珠状シリカストリングとは、上記シリカ一次粒子がシロキサン結合等の化学結合により連続して数珠状となったものをいい、直線状に伸びた形状であっても、二次元的、もしくは三次元的に湾曲した形状であっても構わない。また線状でも分岐していても構わない。
上記の数珠状シリカストリングは、1〜30nmの平均粒子径、好ましくは3〜25nmの平均粒子径を有するシリカ一次粒子が2個以上連なり、20〜250nm、好ましくは30〜200nmの平均長さを有するまで連続したものである。
ここで平均粒子径とは、通常窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m/g)から、平均粒子径(単位:nm)=(2720/比表面積)の式によって与えられた値である(特開平1−317115号参照)。平均長さとは、動的光散乱法による測定値であり、例えばJournal of Chemical Physics、第57巻、第11号、4814頁(1972年)に記載されている動的光散乱法により測定することができる。
数珠状シリカストリングを構成するシリカ一次粒子の平均粒子径が1nm未満では、隣接する数珠状シリカストリング間の間隙(孔)の体積が小さくなり、孔の総体積が小さくなって多孔性シリカ層の屈折率の値を小さくすることが困難になる傾向があるので好ましくない。また、平均粒子径が30nmを超えると、多孔性シリカ層表面の算術平均粗さ(Ra)が50nmより大きくなり、ヘーズが発生しやすくなったり、透視像の解像度が低下しやすくなったりして、視認性が低下するので好ましくない。
数珠状シリカストリングの平均長さが20nm未満の場合も、隣接する数珠状シリカストリング間の間隙(孔)の体積が小さくなり、孔の総体積が小さくなって膜としての屈折率の値を小さくすることが困難になる傾向があるので好ましくない。平均長さが250nmを超えると、多孔性シリカ層表面の算術平均粗さ(Ra)が50nmより大きくなり、ヘーズが発生しやすくなったり、透視像の解像度が低下しやすくなったりして、視認性が低下するので好ましくない。
該数珠状シリカストリングの平均長さの範囲としてより好ましいのは30〜200nmである。平均長さが30nm未満である数珠状シリカストリングは、数珠状シリカストリングそのものの強度が十分でなく、また数珠状シリカストリング1個当たりの、数珠状シリカストリング同士が接触し結合しうる点の数が比較的少ない。そのため、十分な強度を有する多孔性シリカ層を形成するためには150℃を超える温度での熱処理が必要となる。しかし、このような高温処理を行うことによって多孔性シリカ層が収縮し、多孔性シリカ層の内部に存在する孔の体積が著しく減少し、結果として十分に低い屈折率を有する層を形成することができない場合があるばかりか、多孔性シリカ層にクラックが発生することもある。また、このような高温処理を透明熱可塑性樹脂基板に適用すると、透明熱可塑性樹脂基板が変形することがあるので実用的ではない。また逆に平均長さが200nmを超える数珠状シリカストリングを用いると、多孔性シリカ層の表面における凹凸が著しくなる場合があり、摩擦によって数珠状シリカストリングが脱落する恐れがある。
上記数珠状シリカストリングの具体例としては、日本国日産化学工業株式会社製の「スノーテックス(登録商標)−OUP」(平均長さ:40〜100nm)、「スノーテックス(登録商標)−UP」(平均長さ:40〜100nm)、「スノーテックス(登録商標)PS−M」(平均長さ:80〜150nm)、「スノーテックス(登録商標)PS−MO」(平均長さ:80〜150nm)、「スノーテックス(登録商標)PS−S」(平均長さ:80〜120nm)、「スノーテックス(登録商標)PS−SO」(平均長さ:80〜120nm)、「IPA−ST−UP」(平均長さ:40〜100nm)、日本国触媒化成工業株式会社製の「ファインカタロイドF−120」等が挙げられる。これらの数珠状シリカストリングは、緻密なシリカ主骨格からなり、三次元的に湾曲した形状を有する。
本発明において多孔性シリカ層は、数珠状シリカストリングを含むことで、隣接するシリカストリング間に間隙(孔)が形成され、低い屈折率を有するものとなる。該多孔性シリカ層の孔は、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含む(但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する)。このため、数珠状シリカストリングを含む多孔性シリカ層は、独立したシリカ一次粒子のみを含む多孔性シリカ層に比べ、含まれる孔の総体積をより大きくせしめることができ、それゆえに、1.22以上1.30未満と非常に低い屈折率を有する多孔性シリカ層とすることができる。特に屈折率が1.49〜1.67の透明熱可塑性樹脂基板を用いた場合、非常に低い反射率を有するシリカ含有積層体とすることが可能となる。
該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する孔(P)の存在は、次のようにして確認することができる。
多孔性シリカ層の表面又は断面に金、白金やそれらとパラジウムとの合金、オスミウム、クロム、炭素などの導電材料を1〜3nmの厚さでコーティングし、走査電子顕微鏡を用いて加速電圧を0.5〜3.0kVに設定して多孔性シリカ層の表面又は断面を観察すると、数珠状シリカストリングと孔とのコントラストが比較的良好な撮像が得られる。この際、輝度が0%や100%である部位が相当量生じるほど輝度分布が広くなったり偏ったりしないように、加速電圧を調節するか、撮像の明るさやコントラストを調節することが必要である。得られた撮像の輝度分布を算出し、該輝度分布におけるピークの輝度をPB、最低輝度をLとしたときに輝度がL+(PB−L)/3以下である部分を孔と定義する。
次に、該撮像において、数珠状シリカストリングを構成するシリカ一次粒子の像のうち、円形に近い像を選び出す。ここで、円形に近い像とは、4π×(面積)/(外周の長さ)で表される値が1に近い像を指す(尚、4π×(面積)/(外周の長さ)=1とは真円を表す)。具体的には、例えば画像解析ソフトウェア「A像君(登録商標)」(日本国旭化成株式会社製)の円形度パラメータが110以上である像のことである。選ばれた像が撮像中に占める面積の分布を算出し、面積の平均値(即ち、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値)をa、標準偏差をσと定義する。
次に、該撮像に対し該孔部分をマッピングし、孔の個数と孔個々の孔開口部面積を算出する。撮像全体に対する孔部分の孔開口部面積率の総和をS、そのうち孔1個がaよりも大きい孔開口部面積を有するような孔(P)の孔開口部面積

σよりも大きい面積を有するような孔部分の面積率の総和を


1.30以上となってしまう場合があり、十分な反射防止効果が得られないことがある。
なお、上記多孔性シリカ層は実質的に均一な多孔構造を有するため、上記の測定を、多孔性シリカ層の表面中の孔開口部に関して行っても、任意の断面中の孔開口部に関して行っても実質的に同一の結果が得られる。
本発明において多孔性シリカ層は、数珠状シリカストリングを含有していることにより、低屈折率となるだけでなく、高い強度を有する。これは、数珠状シリカストリング1個当たりの、数珠状シリカストリング同士が接触し結合する点の数が、独立したシリカ粒子に比べて多いことに起因する。このため、数珠状シリカストリングを含有する多孔性シリカを用いて高い強度を有する反射防止膜を得ることが可能となる。
本発明において、多孔性シリカ層に含まれるシリカは上記の数珠状シリカストリングのみであっても構わないが、屈折率の調節、表面形状の制御などを目的として、数珠状シリカストリング以外のシリカを含んでいてもよい。具体的には球状のシリカおよび/または鱗片状などの形状を有する非球状のシリカを挙げることができる。
本発明の多孔性シリカ層に数珠状シリカストリング以外のシリカが含まれる場合は、数珠状シリカストリングを構成するケイ素原子数が多孔性シリカ層中の全ケイ素原子数に対して15.0%以上、好ましくは15.0%〜99.9%、より好ましくは25.0%〜99.5%、さらに好ましくは30.0%〜99.0%である。15.0%よりも少ない場合は、多孔性シリカ層の屈折率が十分に低下させることが困難になる場合がある。
本発明の多孔性シリカ層の屈折率は1.22以上1.30未満であり、好ましくは1.22以上1.28未満の範囲である。屈折率が1.30以上と大きい場合は反射率の低減が不十分となる。また、1.22よりも小さくても反射率の低減が不十分となる上、密度が低くなりすぎるために膜の機械的強度が不十分となる場合がある。
多孔性シリカ層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば基板上に単層の多孔性シリカ層を形成する場合、50〜1,000nmの範囲内、好ましくは50〜500nmの範囲内、より好ましくは60〜200nmの範囲内である。膜厚が50nm未満であっても、逆に1,000nmを超えても、反射防止効果が低下する場合がある。
多孔性シリカ層に含まれる、上記数珠状シリカストリング及びその他形状を有するシリカはそれら自体で接着・架橋して高い強度を有する膜を構成することができるが、接着・架橋の強度をより高めるために、加水分解基含有シランを用いてシリカの表面を予め修飾してあることが好ましい。加水分解基含有シランの量は、シリカに含まれる全ケイ素原子数に対するモル比で0.005〜1.0であることが好ましい。用いられる加水分解基含有シランについては後述する。
また、該多孔性シリカ層中にアルカリ土類金属塩を含んでいると、シリカ含有積層体の強度をさらに高めることができるので好ましい。アルカリ土類金属塩の量は、シリカに含まれる全ケイ素原子数に対するモル比で0.001〜0.1であることが好ましい。用いられるアルカリ土類金属塩については後述する。
さらに、表面平滑化や防汚性の付与などを目的として、該多孔性シリカ層の上に、本発明の趣旨を損なわない範囲で厚み0.1〜100nmの任意の層を積層することも可能である。この任意の層の例としては防汚層や撥水層などが挙げられる。例えば、フッ素系ポリマーの層は防汚効果及び撥水効果を有する。
次に、本発明のシリカ含有積層体に含まれる多孔性シリカ層を形成するために有利に用いることができる塗布組成物について説明する。
即ち、本発明の他の1つの態様によれば、基板上に、低屈折率多孔性シリカ層を形成するために用いる塗布組成物であって、以下の方法によって得られることを特徴とする塗布組成物が提供される。
複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングの分散液を加水分解基含有シランと混合して混合物を得、
該混合物を加水分解及び脱水縮合に付す
ことを含む方法。
用いられる数珠状シリカストリングの種類は前述の通りである。該塗布組成物に含まれるシリカは数珠状シリカストリングのみでもよいが、数珠状シリカストリング以外のシリカを含んでいてもよい。具体的には球状のシリカ及び/または鱗片状などの形状を有する非球状のシリカを挙げることができる。
本発明の塗布組成物に数珠状シリカストリング以外のシリカが含まれる場合は、数珠状シリカストリングを構成するケイ素原子数が塗布組成物に含まれる全ケイ素原子数に対して15.0%以上、好ましくは15.0%〜99.9%、より好ましくは25.0%〜99.5%、さらに好ましくは30.0%〜99.0%である。15.0%よりも少ない場合は、生成した多孔性シリカ層の屈折率を十分に低下させるとこができない場合がある。
尚、本発明の塗布組成物中のシリカ(数珠状シリカストリング、及び所望により用いるその他のシリカの合計)の濃度は0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%の範囲にあることが、成膜性の点で好適である。濃度が0.01重量%未満の場合、膜厚の制御が困難となる。一方、10重量%を超える場合、塗布液粘度が高くなり、成膜の作業性が低下する傾向がある。
本発明の塗布組成物を基板上に塗布し、乾燥・硬化を行う際、組成物に含まれる数珠状シリカストリング及びその他形状のシリカはそれら同士で接着・架橋し、高い強度を有する膜を構成することができる。しかし、接着・架橋の強度をより高めるために、塗布組成物中に加水分解基含有シランを含んでいることが好ましい。
加水分解基とは加水分解により水酸基が生じる基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、エノキシ基、オキシム基等が挙げられる。
本発明における加水分解基含有シランとして、下記一般式(2)で表される加水分解基含有シラン、下記一般式(3)で表される加水分解基含有シランを用いることが出来る。

(式中、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。またこれらの置換基上にさらにハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基を有していても良い。Xは加水分解基を表し、nは0〜3の整数である。)

(式中、Xは加水分解基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基またはフェニレン基を表す。また、nは0または1である)
加水分解基含有シランとして具体的に用いられるものは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン等が挙げられる。
また、例えば日本国コルコート株式会社製のメチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート48等に代表される、下記一般式(4)にて表される加水分解基含有シランも好適に用いることができる。

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは2〜8の整数である。)
上記加水分解基含有シランは、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
上記加水分解基含有シランの中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好適に用いられる。
これらの加水分解基含有シランは、加水分解反応により加水分解基の一部または全部が塗布組成物中でシラノール基に変換されていても構わないので、上記の加水分解基含有シランの一部または全部の代わりに、シラノール基を含有するシランを用いても良い。このようなシランとしては、ケイ酸、トリメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール等のシラン、あるいは末端や側鎖にヒドロキシル基を有するポリシロキサン等。また、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、オルトケイ酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸リチウム、オルトケイ酸テトラメチルアンモニウム、オルトケイ酸テトラプロピルアンモニウム、メタケイ酸テトラメチルアンモニウム、メタケイ酸テトラプロピルアンモニウムなどのケイ酸塩や、これらを酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカ等のシラン等が挙げられる。
上記加水分解基含有シランは、数珠状シリカストリングに含まれる全ケイ素原子に対してモル比で0.005〜1.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5である。0.005未満の場合は、加水分解基含有シランの効果が十分に発現せず、逆に1.0を超える場合は加水分解基含有シラン由来の縮合物がシリカ微粒子間の孔を埋めてしまい、屈折率が1.30以上になってしまう場合がある。
本発明の塗布組成物においては、数珠状シリカストリング、及び所望によりその他の形状のシリカと、加水分解基含有シランとを分散媒に分散・溶解し低屈折率多孔性シリカ層形成用塗布組成物と成すが、用いる分散媒は、実質的にシリカが安定に分散し、かつ加水分解基含有シランやその他後述の添加物が溶解するものであれば、特に限定されない。
具体的には、水、炭素数1〜6の一価アルコール、炭素数1〜6の二価アルコール、グリセリンなどのアルコール類の他、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム、1、4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどが好適に用いられる。これらの分散媒は、本発明の目的を損なわない限り混合したり、他の任意の分散媒あるいは添加物を混合したりして用いても良い。
より好ましい分散媒は、炭素数1〜6の一価アルコール類またはエチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルカノールエーテル類である。
本発明の塗布組成物は、水を含有していることが好ましい。水の含有量は、数珠状シリカストリング1重量部に対して1.5重量部を超えることが好ましい。1.5重量部以下であると、シリカ鎖間の接着強度が十分にならず、実用的な強度の反射防止膜を得るために300℃以上の熱処理が必須となってしまい、熱可塑性樹脂基板上に反射防止膜を形成することが不可能となる。また、水の量の上限に関しては特に限定はないが、10,000重量部以下であることが好ましく、2,000重量部以下であることが特に好ましい。
本発明の塗布組成物は、加水分解基含有シランの加水分解・脱水縮合反応を促進する目的で、触媒を含有していることが好ましい。触媒としては酸性触媒、アルカリ性触媒、有機スズ化合物などが挙げられる。特に酸性触媒が好ましく、例えば硝酸、塩酸等の鉱酸やシュウ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
触媒としての酸の量は、塗布組成物中に0.0008mol/リットル以上の濃度で含まれることが好ましく、0.0008〜1mol/リットル以上の濃度で含まれることが更に好ましい。0.0008mol/リットルより少ないと、加水分解基含有シランの加水分解・脱水縮合反応が十分に進まず、十分な強度をもつ反射防止膜を得ることができないほか、用いる基板によっては均一に塗布できない場合もある。逆に1mol/リットルを超えると塗布組成物の安定性が低下する場合がある。
本発明の塗布組成物は、アルカリ土類金属塩を含んでいると、種々の基板上における塗布性能を改善することができ、かつ反射防止膜の強度をさらに高めることができるので好ましい。アルカリ土類金属塩は、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩などの無機酸塩および有機酸塩が好ましい。中でもマグネシウム、カルシウムの無機酸塩および有機酸塩が特に好ましい。
また、上記アルカリ土類金属塩は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
上記アルカリ土類金属塩は、数珠状シリカストリングに含まれる珪素原子に対してモル比で0.001〜0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.05である。
その他、必要に応じて着色剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤や改質用樹脂を本発明の趣旨を損なわない範囲で塗布組成物に添加してもよい。また前述の加水分解基含有シランが重合性官能基を有している場合、その重合様式に応じて光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、光アルカリ発生剤、熱アルカリ発生剤、重合禁止剤を添加しても良い。
次に、本発明の塗布組成物の製造方法、及び該塗布組成物を用いて形成された多孔性シリカ層を含む本発明の反射防止膜について説明する。
本発明においては、数珠状シリカストリング、及び所望によりその他の形状のシリカと、加水分解基含有シランとを上記分散媒に分散・溶解し、さらに必要に応じて上述の加水分解基含有シランやその他の添加物と混合して低屈折率多孔性シリカ層形成用塗布組成物と成す。
加水分解基含有シランの混合方法に関しては、予め加水分解基含有シランの加水分解・脱水縮合反応を行った後に上記シリカと混合してもよいが、好ましくは上記シリカと式(2)〜(4)で表される加水分解基含有シランとが共存した状態にて加水分解・脱水縮合反応を行うことが、より機械的強度に優れた反射防止膜を得ることができるので推奨される。具体的には、数珠状シリカストリングを含有するシリカの分散液と、式(2)〜(4)で表される加水分解基含有シランとを混合し、必要に応じて水や触媒などの添加剤を加え、シリカと式(2)〜(4)で表される水分解基含有シランとの共存下にて加水分解基含有シランを加水分解・脱水縮合させる。
加水分解・脱水縮合を行う反応温度は高ければ高いほど反応が早く進むので生産性の面で好ましいが、反応が早すぎると脱水縮合が進み過ぎて塗布組成物の粘度が増加し塗布工程で基板上に塗布できなくなるので、通常加水分解・脱水縮合を行う温度は、塗布組成物の粘度を制御しやすい温度、具体的には20〜100℃、好ましくは20〜60℃、より好ましくは20〜40℃である。上記温度で加水分解・脱水縮合を行う場合、要する時間は20℃の場合には最低1時間あればよく、60℃であれば最低20分あればよい。
上記のように加水分解・脱水縮合反応を行う際には触媒と水がさらに共存していることが好ましい。用いられる触媒の種類、触媒と水の量は上述の通りである。
本発明においては、数珠状シリカストリング、及び所望によりその他の形状のシリカと、加水分解基含有シランとの共存下に加水分解・脱水縮合することにより、シリカ表面が加水分解基含有シランによって表面修飾されシリカの強度が改善されるとともに、塗膜形成の際に加水分解基含有シランに由来するシラノールの結合によって数珠状シリカストリング同士が結合されるため、数珠状シリカストリング同士の接着強度を向上させることができると考えられる。そのため、加水分解基含有シランを予め加水分解・脱水縮合させてポリシロキサンとしたものと数珠状シリカストリングを含むシリカとを混合する場合に比べて、より高強度の多孔性シリカ層を形成することができる。
さらに、必要に応じて上述のようなアルカリ土類金属塩や種々の添加剤を加え、塗布組成物とする。これらのアルカリ土類金属塩や添加剤は該加水分解・脱水縮合反応を行う前に添加しておいてもいいし、後から添加してもよい。
こうして製造した塗布組成物を、上述の透明熱可塑性樹脂基板などの基板上、あるいはハードコート層を形成した基板上に塗布して、塗布膜を形成する。塗布組成物の塗布はディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、スライドコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の塗布法を用いて実施することができる。これらのうち、透明熱可塑性樹脂基板がフィルムの場合、連続塗布が可能なナイフコート、バーコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、スライドコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の方法が好ましく用いられる。
塗布された膜はその後透明熱可塑性樹脂基板などの基板の耐熱温度より低い温度で加熱処理し、シリカ表面に存在する、あるいは加水分解基含有シランが加水分解して生ずる、シラノール基をシロキサン結合に変換することで硬化させる。硬化を行う温度は、上記透明熱可塑性樹脂基板などの基板の耐熱温度に依存して変更することができるが、通常60〜150℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜120℃である。60℃未満では多孔質かつ密着性の良い膜が得られず、また150℃を超えるような高い温度で硬化を行うと、多孔性シリカ層が収縮し、多孔性シリカ層の内部に存在する孔の体積が著しく減少し、結果として十分に低い屈折率を有する層を形成することができない場合があるばかりか、多孔性シリカ層にクラックが発生することもある。また、このような高温処理を透明熱可塑性樹脂基板に適用すると、該透明熱可塑性樹脂基板が変形することがあるので実用的ではない。
なお、加熱の方法としてマイクロ波の照射を行っても良い。
硬化時間は、1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内である。
塗膜中に含まれる加水分解基含有シランや添加剤が重合性官能基を有する場合には、必要に応じて光や電子ビームの照射を行う。
また、離型処理されたキャリアフィルム上に多孔性シリカ層および接着剤層を含む転写用多層膜を形成し、該接着剤層を用いて透明熱可塑性樹脂基板に該転写用多層膜を転写することで、反射防止膜を形成することも可能である。この際、転写用多層膜は、ハードコート層や帯電防止層などの他の機能を有する層を含んでいてもよい。
以上の処理によって多孔性シリカ層を形成することができる。多孔性シリカ層の好ましい膜厚は上述の通り、50〜1,000nmの範囲内、好ましくは50〜500nmの範囲内、より好ましくは60〜200nmの範囲内である。
上記のようにして得られる、低屈折率多孔性シリカ層が基板上に形成されてなる積層体そのものを反射防止膜として有利に用いることもできるが、さらに表面平滑化や防汚性などの付与などを目的として、該積層体の上に、本発明の趣旨を損なわない範囲で厚み0.1〜100nmの任意の層を積層したものを反射防止膜として用いてもよい。任意の層の例としては防汚層や撥水層が挙げられる。例えば、フッ素系ポリマーの層は防汚効果及び撥水効果を有する。また、積層体が片面のみに多孔性シリカ層を有している場合、その反対側の面に接着層を設けてもよい。接着層としては天然物系接着剤、熱可塑樹脂系接着剤、熱硬化樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤など公知のものを用いることができる。接着層の厚みは用途に応じて0.001mm〜30mmの範囲から選ばれる。
本発明の塗布組成物は、数珠状シリカストリングを含むことで、得られる膜の屈折率を十分低くすることができる。その理由は定かではないが、数珠状シリカストリングを用いることにより、膜中において、隣接する数珠状シリカストリング同士の間に間隙(孔)が形成されることによると推定される。この孔は、数珠状シリカストリングではなく独立したシリカ一次粒子のみで膜を形成した場合の孔と比較して、はるかに大きな孔の総体積を有する。その孔の存在により、屈折率を低下させることができると考えられる。
本発明の塗布組成物を用いて形成された多孔性シリカ層は、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する孔(P)を有することが好ましい。このような孔(P)の存在は、本発明のシリカ含有積層体に関連して上記した方法により確認することができる。
本発明の塗布組成物を用いると従来に比較して低温で多孔性シリカ層を形成することが可能であるため、従来不可能であった耐熱性の低い光学フィルム等への形成をも可能にせしめたものである。さらに、本発明の塗布組成物を用いて形成された多孔性シリカ層は機械的強度に優れるので、光学部材として広範な用途に応用することができる。例えば、プラスチック製のメガネレンズ等を上記透明熱可塑性樹脂基板として用いる場合は、上記の多孔性シリカ層が優れた反射防止膜として機能する。また、該多孔性シリカ層の上にさらに防曇層、帯電防止層等を設け、十分な反射防止効果を有するメガネレンズとすることができる。また、本発明のシリカ含有積層体の片面に防曇層、帯電防止層等を設け、反対側の面に粘着層を設けて反射防止膜とし、該反射防止膜を、液晶画面等に接着する等の使用方法もある。具体的には、本発明のシリカ含有積層体は、所望により、上記したような該多孔性シリカ層以外の層を積層して、反射防止膜として、メガネレンズ、ゴーグル、コンタクトレンズ等のメガネ分野;車の窓、インパネメーター、ナビゲーションシステム等の自動車分野;窓ガラス等の住宅・建築分野;ハウスの光透過性フィルムやシート等の農芸分野;太陽電池、光電池、レーザー等のエネルギー分野;TVブラウン管、ノートパソコン、電子手帳、タッチパネル、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電解放出型ディスプレイ、有機/無機ELディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、光ファイバー、光ディスク等の電子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計等の家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器等の業務用分野;液晶ゲーム機器、パチンコ台ガラス、ゲーム機等の娯楽分野などにおいて、映り込みの防止及び/又は光透過性の向上を必要としている用途に用いることができる。
本発明の塗布組成物を用いて形成された反射防止膜は屈折率1.30未満を達成できるため反射率は0.5%以下を達成することが可能となった。
本発明の反射防止膜はヘーズ値においても優れており、2.0%以下、製造条件によっては1.0%以下、あるいは0.8%以下の値を提供できる。
なお、本発明の反射防止膜は、数珠状シリカストリングを使用することが特徴である。該数珠状シリカストリングを構成しているシリカ一次粒子同士のシロキサン結合はアルカリに対して強い。一方、製膜後に生成したシロキサン結合、すなわち数珠状シリカストリング間のシロキサン結合や加水分解基含有シラン由来のシロキサン結合はアルカリに侵される傾向がある。このため、反射防止膜を例えばpH=13程度の強アルカリ溶液にて処理すると多孔性シリカ層はアルカリ溶液中に分散することがあるが、この分散液中において数珠状シリカストリングを観察することができるのも本発明の反射防止膜の特徴である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明を実施例、比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。
(I)実施例及び比較例において、以下のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を透明熱可塑性樹脂基板(以下、屡々「透明基板」と称する)の材料として用いた。
両面に易接着処理を施された厚さ188μmのPETフィルム(日本国東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300(耐熱温度約150℃、屈折率1.55相当、鉛筆硬度HB))を用いた。
(II)実施例及び比較例において、シリカ含有積層体の各種物性を以下の方法で測定した。
(1)絶対反射率の測定
シリカ含有積層体の裏面(多孔性シリカ層が存在しない側の面)に由来する反射光をカットするため、積層体の裏面の一部をサンドペーパーで粗し、黒色インクで塗りつぶした。その後、日本国株式会社島津製作所製分光光度計MPC−2200を用いて、入射角12°での絶対反射率を測定した。
(2)屈折率の計算
多孔性シリカ層の屈折率は、上記の絶対反射率の測定結果から得られた分光反射率曲線の形状より計算で求めた。計算には日本国株式会社情報機構主催のセミナー「光学薄膜の解析と設計の基礎」(2001年8月2〜3日)において配付された多層膜の光学特性解析用VBAプログラムを用いた。
(3)ヘーズの測定
日本国日本電色工業株式会社製濁度計NDH2000を用いて、JIS K7361−1に規定される方法にて測定した。
(4)水接触角の測定
日本国協和界面科学株式会社製CA−VE型自動固体表面エナジー解析装置を用いて測定した。
(5)鉛筆硬度の測定
JIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400に規定される鉛筆硬度の評価方法に従い、1kg荷重における鉛筆硬度を評価した。
【実施例1】
上記PETフィルムの片面に、市販のハードコート剤(日本国GE東芝シリコーン株式会社製、商品名:UVHC1101)をスピンコーターより塗布した後、日本国株式会社東芝製蛍光ランプGL−20(250nm波長の紫外線の照度:4mW/cm)を用いて120秒間照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を形成し、透明基板とした。この透明基板の鉛筆硬度は3Hであった。
平均直径約15nmのシリカ一次粒子から構成された、平均長さが約170nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)4gと、エタノール36gを室温で混合し、シリカ固形分濃度1.5重量%の数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を得た。次いで、テトラエトキシシラン0.2gを攪拌下に室温で滴下、さらに1.64重量%硝酸水溶液0.1gを攪拌下に室温で滴下後、室温で1時間攪拌して、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
次に、この塗布組成物をスピンコート法により、上記の透明基板上に室温にて塗布を行い、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間の乾燥を行って、透明基板、及び該透明基板上に積層された多孔性シリカ層からなる積層体を得た。該積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、多孔性シリカ層のない場合に3.5%であったものが、0.10%に抑制された。その他の物性も併せて結果を表1に示す。多孔性シリカ層の屈折率n=1.27であった。ヘーズは、0.8%と良好であった。鉛筆硬度は2Hと良好であった。
【実施例2】
実施例1において、数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%)をスノーテックス(登録商標)PS−SO(日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%、一次粒子の平均直径:約15nm、数珠状シリカストリングの平均長さ:約120nm)に換えた以外は、同様に実施した。物性を表1に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.27であった。ヘーズは0.9%と良好であった。
【実施例3】
数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を、数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%)2.8gと独立したシリカ粒子の水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OXS、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分10重量%)1.8g、エタノール35.4gとを混合してなる数珠状シリカストリング/独立したシリカ粒子の水/エタノール分散液に換えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.20%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.28であった。ヘーズは0.8%と良好であった。
【実施例4】
ハードコート剤を市販のハードコート剤(日本国GE東芝シリコーン株式会社製、商品名:UVHC1101)を日本国日本化薬株式会社製ハードコート剤(商品名:KAYANOVA FOP−1100)に置き換え、日本国センエンジニアリング株式会社製フォト・サーフェイス・プロセッサーPL16−110(250nm波長の紫外線の照度:13mW/cm)を用いて360秒間照射して硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した以外は実施例1と同様に実施した。該透明基板のハードコート層の水接触角は47°であり、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層塗布組成物は透明基板の上に全面塗布することができ、塗膜形成性は良好であった。結果を表1及び表3に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hと良好であった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.26であった。ヘーズも0.5%と良好であった。
比較例1
数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を、平均直径12nmの単球状シリカの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)O、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度20重量%)3gと、エタノール37gとを混合してなる独立したシリカ粒子の水/エタノール分散液に換えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。得られた積層体の鉛筆硬度は2Hであり、ヘーズは0.8%、最小反射率を与える波長は550nmに位置したが、最小反射率は0.80%と高い値を示し、多孔性シリカ層の屈折率はn=1.35と、本発明の範囲をはずれるものであった。
【実施例5】
上記PETフィルムの片面に、市販のハードコート剤(日本国GE東芝シリコーン株式会社製、商品名:UVHC1101)をスピンコーターより塗布した後、日本国株式会社東芝製蛍光ランプGL−20(250nm波長の紫外線の照度:4mW/cm)を用いて120秒間照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を形成し、透明基板とした。この透明基板の鉛筆硬度は3Hであった。
平均直径が約15nmのシリカ一次粒子から構成される、平均長さが約170nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)4gと、エタノール36gを室温で混合し、シリカ固形分濃度1.5重量%の数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を得た。次いで、テトラエトキシシラン0.2gを攪拌下に室温で滴下、混合し、さらに1.64重量%硝酸水溶液0.1gを攪拌下に室温で滴下後、室温で6時間攪拌して、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
次に、この塗布組成物をスピンコート法により、上記の透明基板上に室温にて塗布を行い、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間の乾燥を行って、透明基板、及びその上に積層された多孔性シリカ層からなる積層体を得た。積層体の反射率は550nmにて最小を示し、多孔性シリカ層のない場合に3.5%であったものが、0.10%に抑制された。その他の物性も併せて結果を表2に示す。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.27であった。ヘーズは、0.8%と良好であった。鉛筆硬度も2Hと良好であった。
【実施例6】
数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%)を、スノーテックス(登録商標)PS−SO(日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%、一次粒子の平均直径:約15nm、数珠状シリカストリングの平均長さ:約120nm)に換えた以外は、実施例5と同様に実施した。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.27であった。ヘーズも0.9%と良好であった。
【実施例7】
市販のハードコート剤(日本国GE東芝シリコーン株式会社製、商品名:UVHC1101)を日本国日本化薬株式会社製ハードコート剤(商品名:KAYANOVA ACH01)に置き換え、成膜後に熱風循環乾燥機にて120℃、1分間加熱処理を行い、日本国センエンジニアリング株式会社製フォト・サーフェイス・プロセッサーPL16−110(250nm波長の紫外線の照度:13mW/cm)を用いて180秒間照射して硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した以外は実施例5と同様に実施した。該透明基板の鉛筆硬度は2Hであった。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.27であった。ヘーズも0.7%と良好であった。
【実施例8】
テトラエトキシシランの量を0.2gから0.6gに、1.64重量%硝酸水溶液の量を0.1gから0.3gに換えた以外は、実施例5と同様に実施した。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.45%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.29であった。ヘーズも0.8%と良好であった。
【実施例9】
市販のハードコート剤(日本国GE東芝シリコーン株式会社製、商品名:UVHC1101)を日本国日本化薬株式会社製ハードコート剤(商品名:KAYANOVA FOP−1100)に換え、成膜後に熱風循環乾燥機にて120℃、1分間加熱処理を行い、日本国センエンジニアリング株式会社製フォト・サーフェイス・プロセッサーPL16−110(250nm波長の紫外線の照度:13mW/cm)を用いて360秒間照射して硬化させて得られた厚さ8μmのハードコート層を有する透明基板を用い、かつテトラエトキシシランの量を0.2gから0.6gに、1.64重量%硝酸水溶液の量を0.1gから0.3gに換えた以外は実施例5と同様に実施した。該透明基板の鉛筆硬度は2Hであった。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.45%、鉛筆硬度は2Hと良好であった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.29であった。ヘーズも0.5%と良好であった。
比較例2
実施例5と同様に、PETフィルム上にハードコート層を形成し、透明基板とした。エタノール36gと、テトラエトキシシラン0.4gを室温で混合、攪拌し、さらに1.64重量%硝酸水溶液0.1gを室温で滴下した。室温で6時間攪拌し、テトラエトキシシランの加水分解・脱水縮合反応を行った。その後、攪拌下に平均直径約15nmのシリカ一次粒子から構成された、平均長さが約170nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)4gを加え、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。次に、実施例5と同様の操作により、透明基板、及びその上に積層された多孔性シリカ層からなる積層体を得た。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.1%、多孔性シリカ層の屈折率は1.27、ヘーズは0.8%と、実施例5〜9とほぼ同様の結果が得られた。ところが、鉛筆硬度はHと、実施例5〜9に比べて低かった。これは、実施例5〜9のように、数珠状シリカストリングと加水分解基含有シランとを混合後に加水分解及び脱水縮合に付した場合に比べ、加水分解基含有シランを加水分解及び脱水縮合に付した後に数珠状シリカストリングと混合する場合のほうが、得られる積層体の硬度が下がるためと考えられる。
比較例3
テトラエトキシシランの量を0.2gから0.6gに、1.64重量%硝酸水溶液の量を0.1gから0.3gに換えた以外は、比較例2と同様に実施した。結果を表2に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.40%、多孔性シリカ層の屈折率はn=1.285、ヘーズは0.8%と、実施例5〜9とほぼ同様の結果が得られた。ところが、鉛筆硬度はHと、実施例5〜9に比べて低かった。
【実施例10】
数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)を、平均直径約15nmのシリカ一次粒子から構成される、平均長さが約120nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)PS−SO、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)に換えた以外は実施例4と同様に実施した。結果を表3に示す。また、得られた多孔性シリカ層形成用塗布組成物は、水接触角47°のハードコート層を含む透明基板上に全面塗布することができ、塗膜形成性は良好であった。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.26であった。ヘーズも0.6%と良好であった。
【実施例11】
市販のハードコート剤(日本国日本化薬株式会社製、商品名:KAYANOVA FOP−1100)を日本国GE東芝シリコーン株式会社製ハードコート剤(商品名:UVHC1101)に置き換え、成膜後の熱風循環乾燥機による120℃、1分間の加熱処理を行わず、紫外線照射時間を180秒に変更した以外は実施例4と同様に実施した。得られた透明基板に含まれるハードコート層の厚さは5μmであった。また該透明基板の表面の水接触角は38°であった。結果を表3に示す。また、得られた多孔性シリカ層形成用塗布組成物はこの透明基板上に全面塗布することができ、塗膜形成性は良好であった。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.10%、鉛筆硬度は2Hであった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.27であった。ヘーズも0.8%と良好であった。
【実施例12】
市販のハードコート剤(日本国日本化薬株式会社製、商品名:KAYANOVA FOP−1100)を日本国GE東芝シリコーン株式会社製ハードコート剤(商品名:UVHC1101)に置き換え、成膜後の熱風循環乾燥機による120℃、1分間の加熱処理を行わず、日本国株式会社東芝製蛍光ランプGL−20(250nm波長の紫外線の照度:4mW/cm)を用いて360秒間照射して硬化させた以外は実施例4と同様に実施した。得られた透明基板のハードコート層の水接触角は73°であった。結果を表3に示す。また、得られた多孔性シリカ層形成用塗布組成物はこの透明基板上に全面塗布することができ、塗膜形成性は良好であった。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.20%、鉛筆硬度は2Hと良好であった。多孔性シリカ層の屈折率はn=1.28であった。ヘーズも0.8%と良好であった。
【実施例13】
市販のハードコート剤(日本国信越化学工業株式会社製UV硬化型シリコーンハードコート剤X−12−2400)100重量部に、重合開始剤(日本国信越化学工業株式会社製光開始剤DX−2400)5重量部を添加して、ハードコート層用塗布組成物を調製した。上記PETフィルムの片面に、上記ハードコート用塗布組成物をバーコーターを用いて塗布し、100℃、1分間の乾燥を行った後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み4μmのハードコート層を形成し、透明基板とした。
続いて、平均直径約12nmのシリカ一次粒子から構成される、平均長さが約100nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)1gと、エタノール9gを室温で混合し、シリカ固形分濃度1.5重量%の数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を得、次いで、これに10重量%塩化カルシウム2水和物の水溶液0.092gを攪拌下に室温で滴下し、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
得られた上記の多孔性シリカ層用塗布組成物をスピンコート法により、上記透明基板上に室温にて塗布して塗布膜を形成し、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間加熱処理を行い厚み108nmの多孔性シリカ層とした。以上の製造方法によって、透明基板、及びその上に積層された多孔性シリカ層からなる積層体を得た。
上記の積層体の絶対反射率を測定したところ550nmにて最小反射率を示し、多孔性シリカ層のない場合に3.4%であったものが、0.15%に抑制された。その他の物性も併せて結果を表4に示す。得られた積層体のヘーズは、0.15%と良好であった。鉛筆硬度は、2Hと良好であった。尚、塩化カルシウムの珪素原子に対する割合はモル比で0.025であった。
【実施例14】
10重量%塩化カルシウム2水和物の水溶液0.092gに替えて10重量%塩化マグネシウム6水和物の水溶液0.127gを用いた以外は実施例13と同様に実施した。結果を表4に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.15%、ヘーズは0.20%、鉛筆硬度は2Hと良好であった。尚、塩化マグネシウムの珪素原子に対する割合はモル比で0.025であった。
【実施例15】
10重量%塩化カルシウム2水和物の水溶液0.092gに換えて、10重量%塩化カルシウム4水和物の水溶液0.20gを用いた以外は実施例13と同様に実施した。結果を表4に示す。550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.20%、ヘーズは0.20%、鉛筆硬度はHであった。尚、塩化カルシウムの珪素原子に対する割合はモル比で0.054であった。
【実施例16】
数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を、数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分15重量%)0.5gと独立したシリカ粒子の水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OXS、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分10重量%)0.75g、エタノール8.75gとを混合してなる数珠状シリカストリング/独立したシリカ粒子の水/エタノール分散液に換えた以外は実施例13と同様に実施した。結果を表4に示す。得られた積層体は波長550nmにて最小反射率を示し、最小反射率は0.20%、ヘーズは0.20%、鉛筆硬度は2Hであった。尚、数珠状シリカストリングに含まれる珪素原子に対する塩化カルシウムの割合はモル比で0.025であった。
比較例4
数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を、平均直径12nmの独立したシリカ粒子の水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)O、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度20重量%)0.75gと、エタノール9.25gとを混合してなる独立したシリカ粒子の水/エタノール分散液に換え、塩化カルシウム水溶液を加えない以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表4に示す。スピンコート法にて成膜したが、塗布組成物をはじかれる部分が見られ、成膜性がよくなかった。部分的に成膜されたところの鉛筆硬度は、HBでも傷が入った。
比較例5
数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を、平均直径12nmの独立したシリカ粒子の水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)O、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度20重量%)0.75gと、エタノール9.25gとを混合してなる独立したシリカ粒子の水/エタノール分散液に換えた以外は、実施例13と同様に実施した。鉛筆硬度は2Hと、比較例4に比べ向上したが、550nmにて示した最小反射率の値は0.8%と、実施例4及び実施例10〜12に比べ高かった。尚、塩化カルシウムの珪素原子に対する割合はモル比で0.025であった。
【実施例17】
平均直径約12nmのシリカ一次粒子から構成される平均長さが約100nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)1gと、エタノール9gを室温で混合し、シリカ固形分濃度1.5重量%の数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を得、次いで、これに0.1規定の硝酸を液中0.0010mol/リットルとなるように攪拌下に室温で滴下し、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
得られた上記の塗布組成物をスピンコート法により、ハードコート層付きPETフィルムの上に室温にて塗布して塗布膜を形成し、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間加熱処理を行った。以上の製造方法によって、透明基板上に多孔性シリカ層が積層された積層体を得た。
上記の積層体の裏面(多孔性シリカ層が形成されていない面)を黒色スプレー塗料(日本国株式会社アサヒペン製、商品名スーパーラッカースプレー・つや消し黒)で塗りつぶし、低屈折率膜の塗布後の外観を検査した。結果を表5、及び図1に示す。塗膜に若干の欠陥が見られるものの、概ね良好な製膜製を示した。
【実施例18〜20】
塗布組成物中における硝酸の濃度がそれぞれ0.0020mol/リットル、0.0035mol/リットル、0.0050mol/リットルとなるように硝酸の添加量を調整した以外は実施例17と同じ操作を行い、積層体を得た。表5および図2〜4に示されるとおり、塗膜形成性は良好であった。
【実施例21】
冷却管、モーター付き攪拌羽根、恒温循環水槽を備えた50リットルの反応槽に、平均直径が約15nmで平均長さが約170nmの数珠状シリカストリングの水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)OUP、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度15重量%)6.67kgと、エタノール13.33kgを入れ室温で混合し、シリカ固形分濃度5重量%の数珠状シリカストリングの水/エタノール分散液を得た。次いで、テトラエトキシシラン347g、ついで塩化カルシウム2水和物の10%水溶液368g、さらに1.64重量%硝酸水溶液192gを攪拌下に室温で順次滴下後、4時間かけて75℃に昇温し、さらに75℃にて3.5時間攪拌して、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
次に、上記PETフィルムの片面に、上記塗布組成物をスピンコート法により塗布し、熱風循環乾燥機にて120℃、2分間の乾燥を行って、多孔性シリカ層とPETフィルムから成るシリカ含有積層体を得た。積層体の絶対反射率を測定したところ570nmにて最小反射率を示し、0.05%であった。ヘーズは0.5%であった。
得られた積層体に導電処理としてオスミウムを1.5〜2nmの厚さにプラズマコーティングし、表面の形態を日本国株式会社日立製作所製のS−900型走査電子顕微鏡にて観察した。加速電圧は1.0kVに設定した。約10万倍の倍率の撮像を図5に示す。
さらに、該撮像に対して画像解析ソフトウェア「A像君(登録商標)」(日本国旭化成株式会社製)を用いて次のように孔の大きさの分析を行った。まず撮像に2階微分を行い、シリカ微粒子の像のエッジを強調した。こうして得られた画像から、数珠状シリカストリングを構成するシリカ一次粒子の像のうち、画像解析ソフトウェアの円形度パラメータが110以上であるものが自動的に73個選び出された。それらの一次粒子の像が画像中に占める面積の分布を調べた。該面積の分布の平均をa、標準偏差をσとすると、a=344.4nm、σ=138.7nm、a+3σ=760.4nmであった。
次に、撮像の輝度分布を算出し該輝度分布におけるピークの輝度をPB、最低輝度をLとしたときに輝度がL+(PB−L)/3以下である部分を孔と定義した。該撮像に対して該孔部分をマッピングし、孔の個数と孔1個ずつの孔開口部面積を算出した。撮像全体に対する面積率の分布を図6に示す。撮像全体に対する孔開口部面積率の総和Sは20.08%であり、そのうちa+3σ以上の面積を有する孔開口部の

S=0.68であった。
比較例6
実施例21で用いた塗布組成物をガラス基板上へスピンコート法により塗布し、熱風循環乾燥機にて120℃、2分間の乾燥を行い、さらにマッフル炉を用いて250℃にて30分、ついで500℃にて1時間加熱し、ガラス基板、及びその上に積層された多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体を得た。積層体の絶対反射率を測定したところ560nmにて最小反射率を示し、0.45%であった。ヘーズは0.4%であった。得られた積層体に実施例21と同様の操作で電子顕微鏡による観察を行った。加速電圧は1.0kVに設定した。約10万倍の倍率の撮像を図7に示す。
さらに実施例21と同様の方法で孔の大きさの分析を行った。まず撮像に2階微分を行い、シリカ微粒子の像のエッジを強調した。こうして得られた画像から、シリカ一次粒子の像のうち、画像解析ソフトウェアの円形度パラメータが110以上のものが自動的に28個選び出された。それら一次粒子の像が画像中に占める面積の分布を調べたところ、a=401.3nm、σ=180.2nm、a+3σ=941.9nmであった。
次に、実施例21と同じ方法で孔部分に対する解析を行った結果、撮像全体に対する孔開口部面積率の総和Sは11.93%であり、そのうちa+3σ以上の面積を有する孔開


比較例7
平均直径約10nmの独立したシリカ粒子の水性分散液(商品名:スノーテックス(登録商標)O、日本国日産化学工業株式会社製、シリカ固形分濃度20重量%)15gとテトラエトキシシラン(TEOS)1.0gを室温で混合し、25℃にて20時間攪拌した後、エタノール45gを加え、室温で10分間攪拌した。こうして得られた反応液1gに、2−プロパノール4gを加え、室温で10分間攪拌し、多孔性シリカ層形成用塗布組成物を得た。
次に、この塗布組成物をスピンコート法により、離型処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ約50μm)上に塗布を行い、続いて熱風循環乾燥機にて、120℃、2分間の乾燥を行い、多孔性シリカ層を形成した。さらに酸化ジルコニウム/酸化インジウム系導電層、続いてウレタンアクリレート系ハードコート層、続いて熱可塑性樹脂系接着層をそれぞれスピンコート法で形成した。該熱可塑性樹脂系接着層と厚さ約2mmのポリメチルメタクリレート板とが接触するように重ね合わせ、温度145℃にてラミネートを行い接着させた。離型処理済みPETフィルムを剥離することによって、ポリメチルメタクリレート板の上に熱可塑性樹脂系接着層、ウレタンアクリレート系ハードコート層、酸化ジルコニウム/酸化インジウム系導電層、多孔性シリカ層が順次積層された構造を有する反射防止膜を得た。該反射防止膜に実施例21と同様の操作で電子顕微鏡による観察を行った。加速電圧は1.2kVに設定した。約10万倍の倍率の撮像を図9に示す。
さらに実施例21と同様の方法で孔の大きさの分析を行った。まず撮像に2階微分を行い、シリカ微粒子の像のエッジを強調した。こうして得られた画像から、シリカ一次粒子の像のうち、解析画像ソフトウェアの円形度パラメータが110以上のものが自動的に608個選び出された。選ばれた一次粒子の像が画像中に占める面積の分布を調べたところ、a=119.5nm、σ=35.05nm、a+3σ=224.7nmであった。
次に、実施例21と同じ方法で孔部分に対する解析を行った結果、撮像全体に対する孔開口部の面積率の総和Sは1.93%であり、そのうちa+3σ以上の面積を有する孔開






【産業上の利用可能性】
本発明のシリカ含有積層体、及びこれを含む反射防止膜においては、基板上に形成された多孔性シリカ層の屈折率が1.22以上1.30未満と低く、高光透過性であり、且つ機械的強度に優れるので、上記シリカ含有積層体及び反射防止膜は、光学部材として、メガネ分野;自動車分野;住宅・建築分野;農芸分野;エネルギー分野;電子情報機器分野;家庭用品分野;業務用分野;娯楽分野等、広範な用途に応用することができる。
また、本発明の塗布組成物を用いると、従来に比較して低温で上記の優れた多孔性シリカ層を形成することが可能になるため、従来不可能であった耐熱性の低い光学フィルム等を基板として用いることが可能になる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなるシリカ含有積層体であって、
該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングからなり、そして
該少なくとも1層の多孔性シリカ層の孔が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値より大きい孔開口部面積を有する複数の孔(P)を含み、但し該複数の孔(P)の孔開口部面積は、該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定する、
ことを特徴とするシリカ含有積層体。
【請求項2】
該複数の数珠状シリカストリングの、動的光散乱法により測定した平均値として表される、平均長さが30〜200nmであることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有積層体。
【請求項3】
該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子数が、該少なくとも1層の多孔性シリカ層中に存在する全珪素原子数に対して15.0%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリカ含有積層体。
【請求項4】
該複数の孔(P)の一部又は全ての孔開口部面積(a)が、該複数のシリカ一次粒子のそれぞれの最大断面積測定値の平均値(a)より少なくとも3σ大きく、但し該孔開口部面積(a)は該多孔性シリカ層の表面又は断面中の孔開口部に関して測定され、σは該複数のシリカ一次粒子の最大断面積測定値の標準偏差であり、

孔性シリカ層の表面又は断面中の全ての孔開口部に関して測定した孔開口部面積の総和Sとが、下記式(1)を満足することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ含有積層体。

【請求項5】
該透明熱可塑性樹脂基板の鉛筆硬度が1H〜8Hであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシリカ含有積層体。
【請求項6】
該透明熱可塑性樹脂基板と該多孔性シリカ層との間に、水接触角が85°以下であるハードコート層をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ含有積層体。
【請求項7】
基板上に、低屈折率多孔性シリカ層を形成するために用いる塗布組成物であって、以下の方法によって得られることを特徴とする塗布組成物:
複数のシリカ一次粒子が数珠状に連結されてなる複数の数珠状シリカストリングの分散液を加水分解基含有シランと混合して混合物を得、
該混合物を加水分解及び脱水縮合に付す
ことを含む方法。
【請求項8】
該複数の数珠状シリカストリングの、動的光散乱法により測定した平均値として表される、平均長さが30〜200nmの範囲であることを特徴とする、請求項7に記載の塗布組成物。
【請求項9】
該加水分解基含有シランの、該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子に対するモル比が0.005〜1.0の範囲であることを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の塗布組成物。
【請求項10】
少なくとも1種のアルカリ土類金属塩をさらに含むことを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の塗布組成物。
【請求項11】
該少なくとも1種のアルカリ土類金属塩の、該複数の数珠状シリカストリング中に存在する珪素原子に対するモル比が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載の塗布組成物。
【請求項12】
さらに酸を0.0008mol/リットル以上の濃度で含有し、且つ水含有率が、該複数の数珠状シリカストリング1重量部に対して1.5重量部を超えることを特徴とする、請求項7〜11のいずれかに記載の塗布組成物。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれかに記載の塗布組成物を用いて形成された、少なくとも1層の低屈折率多孔性シリカ層を含むことを特徴とする反射防止膜。
【請求項14】
透明熱可塑性樹脂基板、及びその上に積層された少なくとも1層の屈折率が1.22以上1.30未満の多孔性シリカ層からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のシリカ含有積層体を含む反射防止膜であって、
該シリカ含有積層体に含まれる該少なくとも1層の多孔性シリカ層が、請求項7〜12のいずれかに記載の塗布組成物を用いて形成されることを特徴とする反射防止膜。

【国際公開番号】WO2004/073972
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502797(P2005−502797)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002012
【国際出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】