説明

シリコンウェーハ及びその製造方法、並びに、半導体デバイスの製造方法

【課題】デバイス後工程で薄型化され、且つ、裏面研磨される半導体デバイス用として好適なシリコンウェーハを提供する。
【解決手段】ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板11を用意する工程S11aと、シリコン基板11の内部に酸素を析出させる工程S12aと、シリコン基板11に膜厚が10μm以下のエピタキシャル膜12を形成する工程S14aとを備える。これにより、デバイス後工程でシリコン基板11の裏面を研削することによってチップを薄型化し、さらに裏面研磨を施したとしても、デバイス後工程で導入されうる重金属汚染に対して十分なゲッタリング能力を発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンウェーハ及びその製造方法に関し、特に、マルチチップパッケージ(MCP)に搭載される半導体デバイス用として好適なシリコンウェーハ及びその製造方法に関する。また、本発明は、MCPへの搭載が好適な半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおける問題点の一つとして、シリコンウェーハ中への不純物である重金属の混入が挙げられる。シリコンウェーハの表面側に形成されるデバイス領域へ重金属が拡散した場合、ポーズタイム不良、リテンション不良、接合リーク不良、及び酸化膜の絶縁破壊といったデバイス特性に著しい悪影響をもたらす。このため、シリコンウェーハに混入した重金属がデバイス領域に拡散するのを抑制するため、ゲッタリング法を採用するのが一般的である。ゲッタリングは、シリコン基板の表面にデバイス形成を行うデバイス前工程での重金属汚染防止を目的としている。
【0003】
一方、デバイス前工程の後に行われるシリコン基板の薄厚化、ワイヤーボンディングあるいは樹脂封入などのデバイス後工程での重金属汚染は、これまで特に重視されていなかった。これは、デバイス後工程の初期においてシリコンウェーハの裏面を研削除去する工程があり、この裏面研削時に導入されるスクラッチやダメージ等が強力なエクストリンシック・ゲッタリング(EG)によるゲッタリング源として作用するからである。
【0004】
しかしながら、最終的なチップ厚みは年々薄型化しており、特に、MCP搭載されるチップは100μm以下に薄型化されることが多く、製品によっては現在25μm以下まで薄型化され、将来的には10μm以下とも予測されている。チップの厚みが100μm以下まで薄型化されると、裏面研削時のダメージによってシリコンウェーハが割れやすくなるという問題が生じる。このような問題を解決するためには、裏面研削後にダメージ除去する工程、すなわちCMP法による裏面研磨工程を新たに追加する必要が生じる。
【0005】
ところが、裏面研磨によってシリコンウェーハ裏面のダメージを除去すると、裏面のゲッタリング源も消失することから、EG効果が失われてしまう。しかも、薄型化されたシリコンウェーハはイントリンシック・ゲッタリング(IG)層の厚みも薄いことから、酸素析出物による通常のIG層では十分なIG効果も期待できない。より詳細には、IG法を用いたエピタキシャルウェーハやシリコンウェーハであっても、熱処理によってエピタキシャル膜の厚みを含め、酸素析出核が存在しないDZ層がウェーハ表面から10μm以上形成される。チップの最終膜厚が薄くなってくるとIG層は殆ど存在しない状態になり、デバイス後工程で発生した不純物金属を全くゲッタリングできなくなる。
【0006】
このように、シリコンウェーハ裏面が研磨される薄型の半導体デバイスにおいては、デバイス後工程における重金属汚染の問題が顕在化し始めている。
【0007】
これに関し、特許文献1には、シリコン基板上に高濃度のボロンを含有するシリコンエピタキシャル膜(1層目)を100μm程度成長させ、さらに、デバイス領域となる高抵抗のシリコンエピタキシャル膜(2層目)を数十μm程度成長させる方法が記載されている。そして、このようなシリコンウェーハを用いてデバイス前工程を行った後、シリコン基板を裏面から研削することにより合計厚みを100μm程度に薄型化し、さらに裏面を鏡面研磨することが記載されている。
【0008】
特許文献1に記載された方法によれば、デバイス領域となる2層目のシリコンエピタキシャル膜の下部に、高濃度のボロンを含有する1層目のシリコンエピタキシャル膜が存在することから、鏡面研磨によってEG層が消失しても、高濃度ボロンの効果により重金属、特にCuやFeを効率よくゲッタリングすることができる。しかしながら、ボロンはNi汚染に対しては全く効果がない事を発明者らは実験により確認している。
【0009】
特許文献1には、高濃度ボロンを含有するエピタキシャル膜内に酸素や窒素などをイオン注入することによってダメージ層を形成させる方法や、シリコン基板に予め1000℃以上、例えば1200℃以下の温度で第1の熱処理を施し、更に1000℃以下、例えば800℃で第2の熱処理を行う方法も記載されている。これらの方法によれば、Ni汚染に対してもある程度の効果が得られるものと考えられる。しかしながら、エピタキシャル膜を数十μmも成長させる事は、生産性の大幅な低下さらに膜精度自体の劣化を引き起こすため、最先端デバイスで用いられる微細化構造には耐えられない。
【0010】
しかも、上記第1の熱処理は、DZ層を形成するための酸素外方拡散処理であることから、1200℃で1時間程度の熱処理が必要となる。この場合、スリップ転位の発生を防止するためには、昇降温速度を十分に遅くする必要があり、1回の処理で10時間程度を要することからコスト増加を引き起こす。特に、シリコンウェーハが大口径化されるほど処理時間は増加するので量産適用は益々困難になる。
【0011】
一方、特許文献2には、薄厚化されたウェーハ裏面に種々の方法によりゲッタリング能力を付与する技術が開示されている。例えば、薄厚化されたシリコンウェーハの裏面に多結晶シリコン膜や窒化膜を堆積させる方法、シリカ粒子を用いて裏面にダメージを与える方法、イオン注入により裏面にダメージ層を与える方法などが挙げられている。確かにこれらの方法は、チップ厚みがある程度厚ければ効果があるものと考えられるが、既に説明したとおり、最終的なチップ厚みが100μm以下、将来的には10μm程度まで薄型化されると、シリカ粒子などによる物理的ダメージ導入によって抗折強度が低下し、チップ割れの問題が生じてしまうため、歩留まりが大幅に低下することが予想される。また、デバイス後工程で多結晶シリコン膜や窒化膜を堆積させることは、量産品においては現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−317735号公報
【特許文献2】特開2006−41258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような問題を解決すべく本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、シリコン基板自体に高濃度のボロンを含有させるとともに、初期酸素濃度を高く設定して所定の熱処理を行えば、シリコン基板の表面に非常に薄いエピタキシャル膜を形成するだけで、薄型化される半導体デバイス用のシリコンウェーハとして量産適用が可能であることを見いだした。本発明は、このような技術的知見に基づきなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるシリコンウェーハは、ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板と、前記シリコン基板の表面に形成され、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜と、を備えるシリコンウェーハであって、前記シリコン基板は、酸素析出熱処理が施されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によるシリコンウェーハの製造方法は、ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板の表面に、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜を形成するエピタキシャル工程と、前記エピタキシャル工程の前又は後に、前記シリコン基板の内部に酸素を析出させる酸素析出熱処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明による半導体デバイスの製造方法は、ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板の表面に、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜を形成するエピタキシャル工程と、前記エピタキシャル工程の前又は後に、前記シリコン基板の内部に酸素を析出させる酸素析出熱処理工程と、前記エピタキシャル膜に半導体素子を形成するデバイス前工程と、前記デバイス前工程を行った後、前記シリコン基板の一部を裏面側から除去することにより、前記シリコン基板及び前記エピタキシャル膜の合計厚みを100μm以下とする薄型化工程と、薄型化された前記シリコン基板の裏面を研磨する裏面研磨工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、シリコン基板上に10μm以下のエピタキシャル膜を形成し、これをデバイス領域として用いていることから、エピタキシャル膜の形成を短時間で行うことができ、量産品への適用が可能となる。しかも、シリコン基板に高濃度のボロンが含有されていることから、最終的なチップ厚みが100μm程度まで薄型化されても、ボロンによってCuやFeなどの重金属を効果的にゲッタリングすることが可能となる。また、シリコン基板の初期酸素濃度が所定値に設定されていることから、熱処理によって高密度な酸素析出物を形成することが可能となり、これによってデバイス初期プロセスからNiなどの重金属についても効果的にゲッタリングすることが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、前記酸素析出熱処理工程を600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下行う。これによれば、シリコン基板に含まれる酸素を高濃度に析出させることができるとともに、熱処理時にスリップ転位などが発生しにくいことから、歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
【0019】
本発明の好ましい他の実施形態においては、前記酸素析出熱処理が、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を含んでおり、前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板又はエピタキシャル膜の表面を研磨する表面研磨工程をさらに備えている。これによれば、シリコン基板に空孔が導入されることから、その後のデバイス前工程における熱処理によって、酸素を表層近傍に高濃度に析出させることができる。さらに、酸素析出熱処理後に表面研磨を行っていることから、表面に形成された窒化物も除去される。
【0020】
この場合、前記酸素析出熱処理は、前記第1の熱処理を行った後、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を含んでおり、前記表面研磨工程は、前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板の表面を0.5μm以上5μm以下研磨し、前記エピタキシャル工程は、前記表面研磨工程の後に行うことが好ましい。これによれば、第1の熱処理で形成された空孔を起点として第2の熱処理によって酸素析出物が成長することから、エピタキシャル膜の形成時に空孔が消滅するという問題がなくなる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明によるシリコンウェーハ及びその製造方法によれば、最終的なチップ厚みが100μm程度に薄型化される半導体デバイスを安価に量産することが可能となる。
【0022】
また、本発明による半導体デバイスの製造方法によれば、薄型化された半導体デバイスを安価に量産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるシリコンウェーハ10の構造を示す略断面図である。
【図2】薄型化された半導体デバイス20の構造を示す略断面図である。
【図3】薄型化された半導体デバイス20を用いたMCP30の構造を示す略断面図である。
【図4】半導体デバイス20の製造方法を大まかに説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の好ましい第1の実施形態によるシリコンウェーハの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の好ましい第2の実施形態によるシリコンウェーハの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】デバイス後工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施例の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるシリコンウェーハ10の構造を示す略断面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態によるシリコンウェーハ10は、シリコン基板11とその表面に形成されたエピタキシャル膜12によって構成されている。シリコン基板11は、シリコンウェーハ10の機械的強度を確保するとともに、重金属のゲッタリング源としての役割を果たす。重金属のうち、CuやFeのように陽イオンの状態でシリコン中を拡散するものについては、シリコン基板11に含まれるボロンの陰イオンによって主に捕捉する。また、重金属のうち、Niのように電気的に中性状態でシリコン中を拡散するものについては、シリコン基板11に形成された酸素析出物によって捕捉する。酸素析出物は、CuやFeの捕捉にも寄与する。シリコン基板11の厚さについては、機械的強度が確保される限り特に限定されないが、例えば725μm程度である。
【0027】
シリコン基板11は、高濃度のボロンがドーピングされたいわゆるP+基板である。ボロンのドーズ量は、1×1017atoms/cm以上5.5×1019atoms/cm以下であり、これにより、ボロン濃度に基づくシリコン基板11の比抵抗は2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下となる。シリコン基板11の比抵抗が2mΩ・cm以上である必要があるのは、ボロン濃度が高すぎるとエピタキシャル膜12へのボロン拡散によってデバイス領域が影響を受ける可能性があるからであり、また、格子不整合による欠陥のないエピタキシャル膜12を形成することが困難となるからである。一方、シリコン基板11の比抵抗が200mΩ・cm以下である必要があるのは、ボロン濃度が低すぎるとCuやFeなどの重金属を十分にゲッタリングすることができないからである。
【0028】
特に、ボロン濃度に基づくシリコン基板11の比抵抗は、40mΩ・cm以上100mΩ・cm以下であることが好ましい。これは、ボロンのドーズ量に換算すると、2×1017atoms/cm以上1×1018atoms/cm未満に相当する。シリコン基板11の比抵抗をこの範囲に設定すれば、CuやFeなどのゲッタリング能力を確保しつつ、高濃度ボロンによる上記の問題を生じることはほとんどなくなる。尚、特許文献1には、不純物濃度が1×1018atoms/cm以上でなければ重金属の拡散速度に変化が生じず、1×1020atoms/cm以上でなければ重金属の拡散速度が顕著に変化しないと報告されているが、本発明者らのより詳細な研究によれば、ボロン濃度が1×1018atoms/cm未満であっても、明らかなゲッタリング効果が確認されている。具体的な実験結果については、後述する実施例に記載する。
【0029】
シリコン基板11に過剰なボロンを含有させる必要がないことは、次の意義を有する。すなわち、シリコン基板11に過剰なボロンが含有されていると、エピタキシャル膜成長時に基板のボロンが気相拡散するためにエピタキシャル膜の比抵抗がコントロールできない。また、デバイスプロセス中でのシリコン基板11からデバイス領域へのボロン固層拡散も無視できなくなる。このため、本発明のように、エピタキシャル膜12の膜厚が薄い場合(10μm以下)、過剰なボロンは却って歩留まりを低下させるおそれがある。この点を考慮すれば、ボロンのドーズ量は、1×1017atoms/cm以上5.5×1019atoms/cm以下(比抵抗に換算して2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下)とすることが好ましく、2×1017atoms/cm以上1×1018atoms/cm未満(比抵抗に換算して40mΩ・cm以上100mΩ・cm以下)とすることが特に好ましい。
【0030】
また、シリコン基板11は、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下である。これは、酸素濃度が7×1017atoms/cm未満であるとNiなどの重金属のゲッタリングに必要な酸素析出物が十分に形成されないからであり、酸素濃度が2.4×1018atoms/cm超であると欠陥のないエピタキシャル膜12を形成することが困難となるからである。尚、本明細書で記載する酸素濃度は全てASTM F−121(1979)に規格されたフーリエ変換赤外分光光度法による測定値である。
【0031】
シリコン基板11の初期酸素濃度は、2.4×1018atoms/cmを超えない範囲でより高濃度であることが好ましく、酸素析出促進のためシリコン基板11内に炭素や窒素を含有させることがより好ましい。炭素の含有量としては、1×1016atoms/cm以上1.2×1017atoms/cm以下であることが好ましく、窒素の含有量としては、1×1013atoms/cm以上1×1014atoms/cm以下であることが好ましい。
【0032】
シリコン基板11に酸素析出物を形成するための酸素析出熱処理としては、2通りの方法が挙げられる。
【0033】
第1の方法は、600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下熱処理するものである。かかる熱処理は、エピタキシャル膜12を形成する前に行っても構わないし、エピタキシャル膜12を形成した後に行っても構わない。特に、エピタキシャル膜12を形成する前に上記の熱処理を施した場合には、エピタキシャル膜12を成長させる前に、水素ガス雰囲気でのベーク温度を1100℃以上に設定し10秒以上保持させる事により表面に存在する酸素析出物が還元作用により消滅する。これにより、エピタキシャル膜12の欠陥誘発を防止できる。
【0034】
第2の方法は、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を行うものである。窒素原子含有雰囲気としては、アンモニア雰囲気が挙げられる。かかる熱処理についても、エピタキシャル膜12を形成する前に行っても構わないし、エピタキシャル膜12を形成した後に行っても構わない。エピタキシャル膜12を形成する前に上記の熱処理を施した場合には、エピタキシャル膜12を成長させる前に、シリコン基板11の表面を研磨することにより、シリコン基板11の表面に形成された窒化物を除去する必要がある。また、エピタキシャル膜12を形成した後に上記の熱処理を施した場合には、エピタキシャル膜12の表面を研磨することにより、エピタキシャル膜12の表面に形成された窒化物を除去する必要がある。研磨量としては、0.5μm以上5μm以下とすることが好ましい。上記の熱処理を行うことにより、空孔がシリコン表層部に凍結されるため、その後のデバイス熱処理で酸素析出物成長が促進される。
【0035】
但し、現状のエピタキシャル装置はランプ炉が大半を占め、その昇降温速度も速いため、エピタキシャル膜12を形成する前に上記の熱処理を行うと、凍結された空孔が析出物を形成する前に消滅することが考えられる。これを防止するためには、上記第1の熱処理を行った後、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を行うことが特に好ましい。このような2段階の熱処理を行えば、空孔と酸素がクラスター化するため、その後のエピタキシャル成長時においても安定した核を維持することが可能となる。
【0036】
尚、第1の熱処理をエピタキシャル膜12の形成後に行った場合には、第2の熱処理を行う必要性はやや薄れるが、十分な酸素析出核を形成しておくことにより、デバイス前工程での初期段階からゲッタリング効果が発揮される。
【0037】
エピタキシャル膜12は、図1に示すように、シリコン基板11の表面に形成されている。エピタキシャル膜12はデバイス領域となる部分であり、このため、エピタキシャル膜12の比抵抗は、シリコン基板11の比抵抗よりも高く設定される。エピタキシャル膜12の膜厚は、10μm以下である。これは、エピタキシャル膜12の膜厚が10μm超に厚くすると、その分シリコン基板11の厚さが薄くなるため、酸素析出層の残厚が薄くなる事によりゲッタリング能力が低下するとともに、エピタキシャル成長に時間がかかり、かつ膜厚増加は平坦度劣化に繋がり最先端デバイスでは対応できないからである。
【0038】
以上が本実施形態によるシリコンウェーハ10の構成である。このようなシリコンウェーハ10は、デバイス前工程によってエピタキシャル膜12にデバイス形成を行った後、シリコン基板11の一部を裏面側から除去することにより、シリコン基板11及びエピタキシャル膜12の合計厚みを100μm以下とすることができる。
【0039】
図2は、薄型化された半導体デバイス(シリコンチップ)20の構造を示す略断面図である。図2に示す半導体デバイス20は、研削やエッチングによってシリコン基板11の一部が裏面側から除去されているとともに、新たに露出した裏面11aが鏡面研磨されている。これにより、合計厚みが100μm程度まで薄型化されている場合であっても、抗折強度が確保されることから、チップの割れを防止することが可能となる。
【0040】
図3は、薄型化された半導体デバイス20を用いたMCP30の構造を示す略断面図である。図3に示すMCP30は、パッケージ基板31上に4つの半導体デバイス20が積層された構成を有している。上下に隣接する半導体デバイス20及びパッケージ基板31は、接着剤32によって固定されている。また、半導体デバイス20とパッケージ基板31はボンディングワイヤ33によって接続されており、これにより、各半導体デバイス20は、パッケージ基板31に設けられた内部配線(図示せず)を介して外部電極34に電気的に接続される。また、パッケージ基板31上には、半導体デバイス20及びボンディングワイヤ33を保護するための封止樹脂35が設けられている。
【0041】
このような構成を有するMCP30においては、1つの半導体デバイス20の厚みが例えば100μm程度まで薄型化されていることから、MCP全体の厚みを例えば1mm程度まで薄くすること可能となる。このため、モバイル機器など低背化が要求される用途への適用が好適である。
【0042】
次に、半導体デバイス20の製造方法についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0043】
図4は、半導体デバイス20の製造方法を大まかに説明するためのフローチャートである。図4に示すように、半導体デバイス20の製造工程は、大きく分けてシリコンウェーハの製造工程(ステップS10)、デバイス前工程(ステップS20)、デバイス後工程(ステップS30)の3つに分類される。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0044】
図5は、本発明の好ましい第1の実施形態によるシリコンウェーハの製造工程(ステップS10)を説明するためのフローチャートである。
【0045】
本実施形態においては、まず、シリコン基板11を用意する(ステップS11a)。シリコン基板11は、チョクラルスキー(CZ)法によって引き上げられたシリコンインゴットから切り出されたCZウェーハであり、上述の通り、ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下に設定されている。比抵抗については、シリコン融液に添加するボロン量によって調整することができ、初期酸素濃度については、シリコン融液の対流制御などによって調整することができる。
【0046】
次に、シリコン基板11に対して、600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下の酸素析出熱処理を行う(ステップS12a)。これにより、シリコン基板11に含まれる酸素が析出物を形成し、これがゲッタリングサイトとして機能する。また、このような温度条件での熱処理ではスリップ転位などが発生しにくいことから、歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
【0047】
次に、水素ガス雰囲気でのベークを行う(ステップS13a)。ベーク条件は、上述の通り、1100℃以上で10秒以上である。これにより、シリコン基板11の表面に存在する酸素析出物が還元作用により消滅する。
【0048】
そして、シリコン基板11の表面にエピタキシャル膜12を形成する(ステップS14a)。この時、シリコン基板11の表面は、ベーク処理によって酸素析出物のない状態とされていることから、結晶欠陥の少ないエピタキシャル膜12を形成することができる。エピタキシャル膜12の膜厚は10μm以下とし、比抵抗はシリコン基板11よりも高くなるよう設定する。以上により、シリコンウェーハ10が完成する。
【0049】
尚、図5に示したシリコンウェーハの製造工程では、酸素析出熱処理(ステップ12a)の後にエピタキシャル膜12の形成(ステップS14a)を行っているが、この順序は逆であっても構わない。この場合、水素ガス雰囲気でのベーク(ステップS13a)は省略することができる。
【0050】
図6は、本発明の好ましい第2の実施形態によるシリコンウェーハの製造工程(ステップS10)を説明するためのフローチャートである。
【0051】
本実施形態においても、まずシリコン基板11を用意する(ステップS11b)。本ステップの詳細は、図5に示したステップS11aと同じであることから、重複する説明は省略する。
【0052】
次に、シリコン基板11に対して、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を行う(ステップS12b)。これにより、空孔がシリコン表層部に凍結される。
【0053】
次に、ステップS12bに連続して、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を行う(ステップS13b)。これにより、ステップS12bで形成された空孔を起点として酸素析出物が成長する。
【0054】
次に、シリコン基板11の表面を研磨することにより、シリコン基板11の表面に形成された窒化物を除去する(ステップS14b)。研磨量としては、0.5μm以上5μm以下とすることが好ましい。
【0055】
そして、シリコン基板11の表面にエピタキシャル膜12を形成する(ステップS15b)。本ステップの詳細は、図5に示したステップS14aと同じであることから、重複する説明は省略する。以上により、シリコンウェーハ10が完成する。
【0056】
尚、図6に示したシリコンウェーハの製造工程では、第1の熱処理(ステップS12b)に続いて第2の熱処理(ステップS13b)を行っているが、これを省略することも可能である。また、エピタキシャル膜12の形成(ステップS15b)を最後に行っているが、第1の熱処理(ステップS12b)の前にエピタキシャル膜12の形成(ステップS15b)を行っても構わない。
【0057】
以上がシリコンウェーハの製造工程(ステップS10)である。図4に示すように、シリコンウェーハの製造工程(ステップS10)が終わると、次にデバイス前工程(ステップS20)が行われる。デバイス前工程(ステップS20)は、エピタキシャル膜12に半導体素子などを形成する工程であるが、製造される半導体デバイスの種類によって異なることから、その詳細については省略する。半導体デバイスの種類としては、MPUやDSPなどロジック系の半導体デバイス、DRAMやフラッシュメモリなどメモリ系の半導体デバイスが挙げられる。
【0058】
図7は、デバイス後工程(ステップS30)を説明するためのフローチャートである。
【0059】
図7に示すように、デバイス後工程においては、まずシリコンウェーハ10の裏面研削が行われる(ステップS31)。裏面研削は、シリコン基板11の一部を裏面側から粗研削することにより行い、これにより、シリコン基板11及びエピタキシャル膜12の合計厚みを100μm以下に薄型化する。尚、本工程は、研削に限らず、エッチングなどによって行うことも可能である。
【0060】
次に、研削されたシリコン基板11の裏面を鏡面研磨する(ステップS32)これにより、裏面研削(ステップS31)によって導入されたダメージが除去され、機械的強度が高められる。
【0061】
次に、シリコンウェーハ10をダイシングすることにより、チップごとに個片化する(ステップS33)。これにより、個片化されたチップ(半導体デバイス20)が完成する。
【0062】
その後は、個片化された半導体デバイス20をパッケージ基板などに搭載し、ワイヤーボンディングや樹脂封止などを行えば、MCPが完成する(ステップS34)。
【0063】
このようなデバイス後工程(ステップS30)では、特に裏面研削工程(ステップS31)や裏面研磨工程(ステップS32)などにおいて、シリコン基板11にCuやNiなどの重金属が混入することがあるが、本実施形態によるシリコンウェーハ10は、シリコン基板11に高濃度のボロンが含まれているとともに、熱処理によって酸素析出物が形成されていることから、CuやNiなどの重金属がデバイス領域に到達することがなくなる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、高濃度のボロン及び酸素を含有するシリコン基板11上に、薄いエピタキシャル膜12を形成していることから、最終的なチップ厚みが100μm以下に薄型化され、且つ、裏面が鏡面研磨された場合であっても、ゲッタリング能力と機械的強度を確保することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例】
【0066】
[実施例1]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が10〜20mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを3枚用意し、それぞれ600℃、750℃、900℃の温度にて30分間熱処理を施した後、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。600℃の熱処理を施したサンプルは実施例1A、750℃の熱処理を施したサンプルは実施例1B、900℃の熱処理を施したサンプルは実施例1Cとした。
【0067】
[実施例2]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が50〜100mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを3枚用意し、それぞれ600℃、750℃、900℃の温度にて30分間熱処理を施した後、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。600℃の熱処理を施したサンプルは実施例2A、750℃の熱処理を施したサンプルは実施例2B、900℃の熱処理を施したサンプルは実施例2Cとした。
【0068】
[実施例3]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が50〜100mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを4枚用意し、それぞれ900℃の温度にて15分間、30分間、1時間、4時間の熱処理を施した後、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。15分間の熱処理を施したサンプルは実施例3A、30分間の熱処理を施したサンプルは実施例3B、1時間の熱処理を施したサンプルは実施例3C、4時間の熱処理を施したサンプルは実施例3Dとした。
【0069】
[実施例4]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が50〜100mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、1150℃の温度にて10秒間、アンモニア雰囲気で熱処理を施し、50℃/秒で降温させた後、表面を5μm研磨した。さらに、研磨されたウェーハ表面に、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。これにより得られたサンプルは実施例4とした。
【0070】
[実施例5]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が50〜100mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを4枚用意し、1150℃の温度にて10秒間、アンモニア雰囲気で熱処理を施し、50℃/秒で降温させた。次に、それぞれ700℃、800℃、900℃、1000℃の温度で1時間の熱処理を施した後、表面を5μm研磨した。さらに、研磨されたウェーハ表面に、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。700℃の熱処理を施したサンプルは実施例5A、800℃の熱処理を施したサンプルは実施例5B、900℃の熱処理を施したサンプルは実施例5C、1000℃の熱処理を施したサンプルは実施例5Dとした。
【0071】
[実施例6]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm、比抵抗が10〜20mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、その表面に比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。次に、1150℃の温度にて10秒間、アンモニア雰囲気で熱処理を施し、50℃/秒で降温させた後、エピタキシャル膜の表面を5μm研磨した。これにより得られたサンプルは実施例6とした。
【0072】
[比較例1]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が1×1017atoms/cm、比抵抗が15〜20Ω・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、その表面に、比抵抗12Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。これにより得られたサンプルは比較例1とした。
【0073】
[比較例2]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が1×1017atoms/cm、比抵抗が10〜20mΩ・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、その表面に、比抵抗12Ω・cm、膜厚3.5μmのエピタキシャル膜を成長させた。これにより得られたサンプルは比較例2とした。
【0074】
[比較例3]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が1×1017atoms/cm、比抵抗が15〜20Ω・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、その表面に、比抵抗50〜100mΩ・cm、膜厚50μmの1層目のエピタキシャル膜を成長させ、さらに、1層目のエピタキシャル膜の表面に、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmの2層目のエピタキシャル膜を成長させた。これにより得られたサンプルは比較例3とした。
【0075】
[比較例4]
直径200mm、厚み725μm、初期酸素濃度が1×1017atoms/cm、比抵抗が15〜20Ω・cmに調整されたボロンドープのCZウェーハを1枚用意し、アルゴンガス雰囲気下で1200℃、1時間の熱処理を施した後、更に800℃にて2時間の熱処理を施した。次に、ウェーハの表面に、比抵抗50〜100mΩ・cm、膜厚50μmの1層目のエピタキシャル膜を成長させ、さらに、1層目のエピタキシャル膜の表面に、比抵抗10Ω・cm、膜厚3.5μmの2層目のエピタキシャル膜を成長させた。これにより得られたサンプルは比較例4とした。
【0076】
[評価1]
全てのサンプルに対して、Ni表面濃度換算で1×1012/cmのスピンコート汚染を施した後、1000℃、1時間の熱処理を施し、フッ酸水溶液液にて表面酸化膜を除去した。その後、選択エッチング(Wright Etching)を行った後にエピタキシャル表面の欠陥を光学顕微鏡にて観察した。
結果を図8に示す。図8に示すように、比較例1〜3のサンプルでは、エピタキシャル膜の表面に多数の欠陥が観察された。また、実施例4と6のサンプルでは、ごく僅かではあるが欠陥が観察された。他のサンプルでは欠陥は観察されなかった。
【0077】
[評価2]
全てのサンプルに対して、Cu表面濃度換算で5×1011/cmのスピンコート汚染を施した後、900℃、1時間の熱処理を施した。その後、表面を洗浄し、ホットプレート上で400℃、1時間の加熱を行った。加熱後のサンプルは、エピタキシャル膜表面のCu濃度を評価するため全反射蛍光X線にて評価を行った。
結果を図8に示す。図8に示すように、比較例1のサンプルでは、エピタキシャル膜の表面において約1×1012/cmのCuが検出されたが、他のサンプルでは1×1010/cm以下であった。
【0078】
[評価3]
全てのサンプルについて、量産を想定して生産性を評価した。
結果を図8に示す。図8に示すように、比較例3,4のサンプルでは、エピタキシャル成長を2回行っており、且つ、成長膜厚が大きいことから、量産品に適用することは現実的でないと考えられる。他のサンプルについては、量産に適していると考えられる。
【0079】
[考察]
以上の評価1〜3を考慮すれば、実施例1〜6のサンプルは、重金属のゲッタリング能力に優れ、且つ、量産性に優れていると考えられる。特に、実施例1〜3,5のサンプルはゲッタリング能力が特に優れているため、最も優秀である。このため、デバイス後工程でシリコン基板の裏面を研削することによってチップを薄型化し、さらに裏面研磨を施したとしても、デバイス後工程で導入されうる重金属汚染に対して十分なゲッタリング能力を発揮することができるものと考えられる。
これに対し、比較例1〜4のサンプルは、重金属のゲッタリング能力が不十分であるか、或いは、量産性が不十分であると考えられる。
【符号の説明】
【0080】
10 シリコンウェーハ
11 シリコン基板
11a シリコン基板の裏面
12 エピタキシャル膜
20 半導体デバイス
30 MCP
31 パッケージ基板
32 接着剤
33 ボンディングワイヤ
34 外部電極
35 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板と、
前記シリコン基板の表面に形成され、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜と、を備えるシリコンウェーハであって、
前記シリコン基板は、酸素析出熱処理が施されていることを特徴とするシリコンウェーハ。
【請求項2】
前記酸素析出熱処理は、600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下行われたものであることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハ。
【請求項3】
前記酸素析出熱処理は、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を含んでおり、
前記酸素析出熱処理後の前記シリコン基板又はエピタキシャル膜の表面が研磨されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハ。
【請求項4】
前記酸素析出熱処理は、前記第1の熱処理を行った後、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を含んでおり、
前記酸素析出熱処理を行った後の前記シリコン基板の表面が0.5μm以上5μm以下研磨されており、
研磨された前記シリコン基板の表面に前記エピタキシャル膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシリコンウェーハ。
【請求項5】
ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板の表面に、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜を形成するエピタキシャル工程と、
前記エピタキシャル工程の前又は後に、前記シリコン基板の内部に酸素を析出させる酸素析出熱処理工程と、を備えることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記酸素析出熱処理工程は、600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下行うことを特徴とする請求項5に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板又はエピタキシャル膜の表面を研磨する表面研磨工程をさらに備え、
前記酸素析出熱処理工程は、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を含んでいることを特徴とする請求項5に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記酸素析出熱処理工程は、前記第1の熱処理を行った後、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を含んでおり、
前記表面研磨工程は、前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板の表面を0.5μm以上5μm以下研磨し、
前記エピタキシャル工程は、前記表面研磨工程の後に行うことを特徴とする請求項7に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
ボロン濃度に基づく比抵抗が2mΩ・cm以上200mΩ・cm以下であり、初期酸素濃度が7×1017atoms/cm以上2.4×1018atoms/cm以下であるシリコン基板の表面に、膜厚が10μm以下であり、前記シリコン基板よりも比抵抗が高いエピタキシャル膜を形成するエピタキシャル工程と、
前記エピタキシャル工程の前又は後に、前記シリコン基板の内部に酸素を析出させる酸素析出熱処理工程と、
前記エピタキシャル膜に半導体素子を形成するデバイス前工程と、
前記デバイス前工程を行った後、前記シリコン基板の一部を裏面側から除去することにより、前記シリコン基板及び前記エピタキシャル膜の合計厚みを100μm以下とする薄型化工程と、
薄型化された前記シリコン基板の裏面を研磨する裏面研磨工程と、を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記酸素析出熱処理工程は、600℃以上900℃以下の温度で15分間以上4時間以下行うことを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板又はエピタキシャル膜の表面を研磨する表面研磨工程をさらに備え、
前記酸素析出熱処理工程は、窒素原子含有雰囲気中にて1100℃以上1350℃以下の温度で1秒以上300秒以下に加熱した後、10℃/秒以上で降温させる第1の熱処理を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記酸素析出熱処理工程は、前記第1の熱処理を行った後、700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上4時間加熱する第2の熱処理を含んでおり、
前記表面研磨工程は、前記酸素析出熱処理工程を行った後の前記シリコン基板の表面を0.5μm以上5μm以下研磨し、
前記エピタキシャル工程は、前記表面研磨工程の後に行うことを特徴とする請求項11に記載の半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−283144(P2010−283144A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135224(P2009−135224)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】