説明

シリコン単結晶の製造方法、シリコン単結晶引き上げ装置及び石英ガラスルツボ

【課題】シリコン融液の湯漏れ監視及び種結晶の着液検出を行うと共に、長時間の引き上げに耐え得る石英ガラスルツボの強化並びにシリコン単結晶の不純物濃度の低減を図る方法を提供する。
【解決手段】ワイヤーの先端に取り付けられた種結晶を石英ガラスルツボ内のシリコン融液に着液させると共に、ルツボ側をマイナス極、ワイヤー側をプラス極とする電圧V1を印加しながらその電圧の変化を監視することで種結晶の着液状態を検出する工程S13、S14と、その後の温度調整期間S15において、ルツボ側をプラス極、ワイヤー側をマイナス極とする電圧V2を印加することで石英ガラスルツボの内表面を失透させる工程と、温度調整期間S15の終了後、ルツボ側をマイナス極、ワイヤー側をプラス極とする電圧V3を印加しながら種結晶を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶を成長させる工程S16〜S22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶引き上げ装置に関し、特に、シリコン融液の湯漏れや種結晶の着液を検出するための電圧印加方法に関するものである。また、本発明は、そのような電圧印加方法を採用したシリコン単結晶引き上げに用いられる石英ガラスルツボに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用シリコン単結晶の製造方法の一つとしてチョクラルスキー法(CZ法)がよく知られている。CZ法では、石英ガラスルツボ内でシリコン原料を溶融し、得られたシリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボ及び種結晶を相対的に回転させながら種結晶を徐々に引き上げて単結晶を成長させる。半導体デバイス用の高純度なシリコン単結晶を製造するためには、石英ガラスルツボ中に含まれる不純物の溶出等によってシリコン単結晶が汚染されないことが求められ、また石英ガラスルツボには長時間の引き上げに耐え得る十分な耐熱性も必要である。
【0003】
また、シリコン単結晶の製造では長時間の操業において安全性を確保することが重要な課題となっている。例えば、特許文献1には、シリコン単結晶引き上げ装置におけるシリコン融液の湯漏れを検出する方法が開示されている。この技術は、石英ガラスルツボを支持する導電性の支持体と、種結晶を保持する導電性の吊持具を備えた装置において、支持体と吊持具との間に常時電圧を印加し、支持体と吊持具との間に流れる電流又は抵抗の変化を捉えることでシリコン融液の漏出を検出するものである。また、特許文献2には、湯漏れを検知するための電圧を間欠的に印加することにより、ルツボ内の不純物の移動を抑制し、ルツボの変形やルツボ内からの不純物の溶出を防止する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、少なくとも種結晶のシリコン融液への着液から結晶直胴部の形成完了までの期間において種結晶の引き上げ軸側に印加する電圧を−50〜+50V(0Vを除く)とする技術が開示されている。また、特許文献4には、石英ルツボの内表面の劣化を減少又は防止するため、シリコン融液で満たされた石英ルツボに電場を印加すると共に、コンスタントな電場に代えて、周期的なパルス波形を印加する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、石英ルツボにアルカリ金属イオンを含有させ、ルツボの内壁と外壁との間に外壁側がプラス極、内壁側がマイナス極となるように直流電圧を印加することにより、アルカリ金属イオンをルツボの内壁表面の近傍に集積させ、ルツボの内壁表面を効率よく失透させる方法が開示されている。さらに、特許文献6には、単結晶引き上げ中を通じてシリコン単結晶に流れる電流を一定にすることで、シリコン単結晶に取り込まれるアルカリ金属イオンの量を均一にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−275087号公報
【特許文献2】特開平11−180794号公報
【特許文献3】特開2003−12393号公報
【特許文献4】特表2003−505335号公報
【特許文献5】特開2006−36568号公報
【特許文献6】特開2008−254949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ルツボの外壁側をプラス極、内壁側をマイナス極とする電圧を印加した場合には、石英ガラス中のアルカリ金属イオンがルツボの内表面側に引き寄せられるので、アルカリ金属イオンをルツボの内表面の近傍に集積させることができ、ルツボの内表面を効率よく失透させることができる。
【0008】
しかしながら、ルツボの外壁側をプラス極、内壁側をマイナス極とする電圧を印加するために、ルツボの支持軸側をプラス極、引き上げ軸側をマイナス極とする電圧を印加した場合には、シリコン融液中のアルカリ金属イオンがシリコン単結晶側に引き寄せられるので、シリコン単結晶が汚染されやすく、高品質なシリコン単結晶を製造することができないという問題がある。そのため、湯漏れの監視及び種結晶の着液検知のための電圧を印加しながら、シリコン単結晶の汚染の抑制とルツボの内表面の失透化を図る方法が望まれている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、シリコン融液の湯漏れ監視及び種結晶の着液検出を行うことができ、長時間の引き上げに耐え得る石英ガラスルツボの強化並びにシリコン単結晶の不純物濃度の低減を図ることが可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、そのような製造方法を実現するためのシリコン単結晶引き上げ装置を提供することにある。さらに、本発明の目的は、ルツボに電圧を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法において好ましく使用される石英ガラスルツボを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、引き上げ軸の先端に取り付けられた種結晶を石英ガラスルツボ内のシリコン融液に着液させると共に、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とする第1の電圧を印加しながらその電圧の変化を監視することで前記種結晶の着液状態を検出する工程と、前記種結晶の着液後から一定の期間である前記シリコン融液の温度調整期間において、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、前記引き上げ軸側をマイナス極とし前記第1の電圧よりも大きな第2の電圧を印加することで前記石英ガラスルツボの内表面を失透させる工程と、前記温度調整期間の終了後、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とし前記第2の電圧よりも小さな第3の電圧を印加しながら前記種結晶を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶を成長させる工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるシリコン単結晶引き上げ装置は、引き上げ軸と、前記引き上げ軸の昇降機構と、前記引き上げ軸の先端に取り付けられた種結晶と、シリコン融液が充填された石英ガラスルツボと、前記石英ガラスルツボ内の前記シリコン融液を加熱するヒーターと、前記石英ガラスルツボと前記引き上げ軸との間に電圧を印加する電源装置と、前記昇降機構、前記ヒーター、及び前記電源装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記引き上げ軸を降下させて前記種結晶を前記シリコン融液に着液させると共に、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とする第1の電圧を印加しながらその電圧の変化を監視することで前記種結晶の着液状態を検出する着液制御部と、前記種結晶の着液後から一定の期間である前記シリコン融液の温度調整期間において、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、前記引き上げ軸側をマイナス極とし前記第1の電圧よりも大きな第2の電圧を印加することで少なくとも前記石英ガラスルツボの内表面を失透させる失透制御部と、前記温度調整期間の終了後、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とし前記第2の電圧よりも小さな第3の電圧を印加しながら前記種結晶を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶を成長させる単結晶制御部とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、シリコン原料が溶融してから一定時間、石英ガラスルツボ側をプラス極、引き上げ軸側をマイナス極として直流電圧を印加することにより、アルカリ金属イオンをルツボの内表面近傍に移動させることが可能となる。上記「一定時間」は、シリコン融液の温度調整及び種結晶の加熱に要する時間であって、3〜6時間程度である。シリコン単結晶の引き上げは、ルツボ内のシリコン原料が完全に融解してから直ちに実施されるものではなく、上記のような一定の温度調整期間を経過した後に行われることから、この時間を利用してルツボ内表面の失透を行うことにより、ルツボの耐久性を効率良く高めることができる。さらに、温度調整期間の経過後は電圧の極性を反転させることから、シリコン融液中のアルカリ金属イオンはルツボ側に引き寄せられ、引き上げ中のシリコン単結晶から引き離される。そのため、シリコン単結晶の不純物濃度を低減することができる。つまり、失透化によるルツボの耐久性とシリコン単結晶の純度の向上を両立することができ、従来に比べて多くの面で優れたシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明において、前記シリコン単結晶を成長させる工程は、前記石英ガラスルツボの内表面に形成した失透が無くなる前に、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、引き上げ軸側をマイナス極とし第3の電圧よりも大きな第4の電圧を一定期間印加して前記石英ガラスルツボの内表面の失透を再生させる工程をさらに含むことが好ましく、前記第3の電圧を印加する工程と前記第4の電圧を印加する工程とを交互に繰り返すことが特に好ましい。
【0014】
本発明によれば、ルツボ深さ方向への溶損速度が失透速度よりも大きいという現状から、ルツボ内表面の均一失透が無くなる前に、ルツボ側をマイナス極とする電圧印加(マイナス印加)に戻して失透を再促進させるので、長時間の引き上げ工程中において常に失透面を確保することができる。したがって、ルツボの耐久性を飛躍的に向上させることができ、これにより単結晶化率の更なる向上を図ることができる。
【0015】
本発明においては、前記第1乃至第3の電圧の変化を監視することにより前記シリコン融液の湯漏れを検出することが好ましい。本発明によれば、印加する電圧の極性やレベルは変化するものの、電圧は常に印加され続けていることから、電圧の変化を監視することで湯漏れを確実に検出することができる。
【0016】
本発明において、前記石英ガラスルツボは、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属イオンを含み、前記アルカリ金属イオンの濃度の合計が0.05ppm以上5ppm以下であることが好ましい。本発明によれば、石英ガラスルツボに比較的多くのアルカリ金属イオンが含まれていることから、ルツボ内表面を失透させる際に均一な失透面を効率良く形成することができる。
【0017】
また、本発明による石英ガラスルツボは、円筒状の側壁部と、側壁部の下方に設けられた底部と、側壁部と底部との間に設けられた湾曲部とを有し、ルツボの肉厚方向に対して所定の電圧が印加された状態で使用されるシリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボであって、ルツボの内表面側に設けられた透明石英ガラス層と、ルツボの外表面側に設けられた多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層とを備え、不透明石英ガラス層は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、アルカリ金属の濃度の合計が0.05ppm以上であることを特徴とする。この場合において、不透明石英ガラス層に含まれるアルカリ金属の濃度の合計は0.2ppm以上であることが好ましい。さらに、透明石英ガラス層は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、アルカリ金属の濃度の合計が0.05ppm以上5ppm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明によるシリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボは比較的多くのアルカリ金属を含んでいるが、電圧が印加されることでアルカリ金属が失透化促進剤として有効に機能し、石英ガラスルツボの内表面又は外表面を効果的に失透させる。そのため、アルカリ金属不純物のシリコン融液中への溶出を抑制しながらルツボの強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリコン融液の湯漏れ監視及び種結晶の着液検出を行うことができるだけでなく、長時間の引き上げに耐え得る石英ガラスルツボの強化並びにシリコン単結晶の不純物濃度の低減を図ることが可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、そのような製造方法を実現するためのシリコン単結晶引き上げ装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、ルツボに電圧を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法において、単結晶の不純物汚染を抑制しながら、ルツボを強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるシリコン単結晶引上げ装置10の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】制御装置23の機能ブロック図である。
【図3】石英ガラスルツボ14の構造を説明するための側面断面図である。
【図4】シリコン単結晶の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】支持軸12とワイヤー18との間に印加される電圧の変化を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるシリコン単結晶引上げ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、シリコン単結晶引き上げ装置10は、チャンバー11と、チャンバー11の底部中央を貫通して鉛直方向に設けられた導電性の支持軸12と、支持軸12の上端部に固定されたグラファイトサセプタ13と、グラファイトサセプタ13内に収容された石英ガラスルツボ14と、グラファイトサセプタ13の周囲に設けられたヒーター15と、支持軸12を昇降及び回転させるための支持軸駆動機構16と、種結晶を保持するシードチャック17と、シードチャック17を吊設する引き上げワイヤー(引き上げ軸)18と、ワイヤー18を巻き取るためのワイヤー巻き取り機構19と、ヒーター15及び石英ガラスルツボ14からの輻射熱によるシリコン単結晶20の加熱を防止すると共にシリコン融液21の温度変動を抑制するための遮熱部材22と、各部を制御する制御装置23とを備えている。
【0024】
また、シリコン単結晶引き上げ装置10は、支持軸12とワイヤー18との間に直流電圧を印加するための電源装置24を備えている。そのため、電源装置24の一方の端子24aは支持軸12に接続され、他方の端子24bはワイヤー18に接続されている。電源装置24から支持軸12とワイヤー18との間に電圧を印加することによってシリコン融液の湯漏れ監視や種結晶の着液検知等が行われる。電圧の極性及びレベルは、制御装置23からの指示により決定される。支持軸12とワイヤー18との間の電圧は比較器25を介して制御装置23に供給され、制御装置23によってその電圧が監視される。
【0025】
図2は、制御装置23の機能ブロック図である。
【0026】
図2に示すように、制御装置23は、種結晶の着液を制御する着液制御部23aと、ルツボ内表面に形成される失透を制御する失透制御部23bと、シリコン単結晶20の引き上げを制御する単結晶制御部23cと、シリコン融液21の湯漏れを監視するための湯漏れ監視部23dとを備えている。これらの各機能ブロックは、制御装置23を構成するCPU、メモリ等のハードウェアとメモリに記憶された制御プログラムとの協働によって実現されるものである。
【0027】
ここで、着液制御部23aは、ワイヤー18を降下させて種結晶をシリコン融液21に着液させると共に、支持軸12とワイヤー18との間に所定の電圧V1を印加しながらその電圧の変化を監視し、種結晶の着液の有無を検出するようにワイヤー巻き取り機構19及び電源装置24を制御する。失透制御部23bは、種結晶の着液後から一定の期間であるシリコン融液21の温度調整期間において、支持軸12とワイヤー18との間に所定の電圧V2を印加し、石英ガラスルツボ14の内表面を失透させるようにヒーター15及び電源装置24を制御する。単結晶制御部23cは、温度調整期間の終了後、所定の電圧V3を印加しながら種結晶を徐々に引き上げてシリコン単結晶を成長させるようにヒーター15、ワイヤー巻き取り機構19及び電源装置24を制御する。湯漏れ監視部23dは、着液検出時からシリコン単結晶の引き上げ完了までの期間中に印加される電圧V1〜V3を監視し、その電圧の変化から湯漏れを検出するためのものである。
【0028】
石英ガラスルツボ14としては、天然石英のみを原料とするものから内表面に合成シリカガラス層が形成された高純度石英ガラスルツボまで様々なタイプものを用いることができるが、本実施形態においては、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属イオンを含有するものであることが好ましく、天然石英のみを原料とするものであることが特に好ましい。この種のルツボでは、ルツボの内表面側をマイナス極、外表面側をマイナス極とする電圧を印加することによって、石英ガラス中のアルカリ金属イオンがルツボの内表面近傍に集積するので、アルカリ金属を基点にしてルツボの内表面を効率よく失透(結晶化)させることができる。また、ルツボの外表面側をマイナス極、内表面側をプラス極となる電圧を印加することによって、ルツボの外表面を効率よく失透させることも可能である。
【0029】
石英ガラスルツボ14に含まれるNa、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属イオンの濃度の合計は0.05ppm以上5ppm以下であることが好ましく、0.2ppm以上2ppm以下であることが特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有量が少なすぎると、石英ガラスルツボの内表面近傍にアルカリ金属イオンを集積させることができず、内表面や外表面を均一に失透化させることができない。一方、アルカリ金属イオンの含有量が多すぎると、石英ガラス中のアルカリ金属イオンがシリコン溶融液中に多量に溶出し、シリコン単結晶の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。特に、アルカリ金属イオンの濃度の合計が0.2ppm以上2ppm以下の場合には、直流電圧の印加によるアルカリ金属イオンの移動効果を一層向上させることが可能になり、これにより石英ガラスルツボの内外の電位差を小さくできるとともに、石英ガラスルツボ中に含有されるアルカリ金属イオンがシリコン単結晶の品質に与える影響を最小にすることができる。
【0030】
本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法は、直径32インチ(約800mm)以上の大型ルツボを使用する場合に効果的である。そのような大型の石英ガラスルツボでは多量のポリシリコンを溶融することから、溶融に時間がかかり、また長時間の引き上げに耐え得る耐熱性の高いものであることが必要とされ、本発明による効果が顕著となるからである。
【0031】
図3を参照しながら、石英ガラスルツボ14の構造についてより詳細に説明する。
【0032】
本実施形態による石英ガラスルツボ14は、側壁部14A及び底部14Bを有し、シリコン融液を支持する容器としての基本形状を有している。側壁部14Aは、ルツボの中心軸(Z軸)と平行な円筒状の部分であり、ルツボの底部14Bは、ルツボの中心軸との交点を含む比較的平坦な部分である。底部14Bと側壁部14Aとの間には、側壁部14Aの直径が徐々に小さくなる部分である湾曲部10Cが設けられている。ルツボの肉厚は部位によっても異なるが、10mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましい。通常、口径32インチ(約800mm)以上の大型ルツボの肉厚は10mm以上、40インチ(約1000mm)以上の大型ルツボの肉厚は13mm以上であり、このような大型ルツボは長時間の単結晶引き上げに使用され、本発明による効果が顕著だからである。
【0033】
石英ガラスルツボ14は、ルツボの外表面側に設けられた不透明石英ガラス層31と、ルツボの内表面側に設けられた透明石英ガラス層32とを備えている。
【0034】
不透明石英ガラス層31は、多数の微小な気泡を内包する非晶質シリカガラス層である。本明細書において「不透明」とは、石英ガラス中に多数の気泡が内在し、見かけ上白濁した状態を意味する。不透明石英ガラス層31は、ルツボ外周に配置されたヒーターからの熱を石英ガラスルツボ中のシリコン融液に均一に伝達する役割を果たす。不透明石英ガラス層31は透明石英ガラス層32に比べて熱容量が大きいことから、シリコン融液の温度を容易に制御することができる。
【0035】
不透明石英ガラス層31の気泡含有率は透明石英ガラス層32よりも高く、その機能を発揮できる限りにおいて特に限定されないが、0.7%以上であることが好ましい。不透明石英ガラス層31の気泡含有率が0.7%未満では不透明石英ガラス層31の機能を発揮できないからである。なお、不透明石英ガラス層31の気泡含有率は比重から求めることができる。ルツボから単位体積(1cm)の不透明石英ガラス片を切り出し、その質量がAであるとき、気泡を内包しない石英ガラスの比重B=2.21g/cmであるとすると、気泡含有率はP(%)=(A/B)×100となる。
【0036】
透明石英ガラス層32は、実質的に気泡を含まない非晶質シリカガラス層である。透明石英ガラス層32によれば、ルツボ内表面から剥離する石英片の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味し、特に限定されるものではないが、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下であることが好ましい。不透明石英ガラス層31から透明石英ガラス層32への気泡含有率の変化は比較的急峻であり、透明石英ガラス層32の気泡含有率が増加し始めた位置からルツボの外表面側に向かって30μm程度進んだところでほぼ不透明石英ガラス層31の気泡含有率に達する。したがって、不透明石英ガラス層31と透明石英ガラス層32との境界は明確であり、目視にて容易に区別できる。
【0037】
不透明石英ガラス層31は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、アルカリ金属の濃度の合計が0.05ppm以上であることが好ましく、0.2ppm以上であることがさらに好ましい。一方、透明石英ガラス層32は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、アルカリ金属の濃度の合計は0.05ppm以上5ppm以下であることが好ましく、0.2ppm以上2ppm以下であることが特に好ましい。後述するように、本発明による石英ガラスルツボ14は、ルツボの肉厚方向(或いは上下方向)に対して所定の電圧が印加された状態で使用されるが、このような使用状態では多くのアルカリ金属イオンがルツボ表面を均一に結晶化させる結晶化促進剤として有効に作用するので、不透明石英ガラス層31や透明石英ガラス層32のアルカリ金属が従来に比べて高濃度であったとしても、シリコン融液中のアルカリ金属不純物濃度を増加させることがなく、石英ガラスルツボを強化させることができる。また、このような石英ガラスルツボであればその原料の選択範囲が拡がるため、石英ガラスルツボを低コストに製造することができる。
【0038】
次に、シリコン単結晶引き上げ装置10を用いたシリコン単結晶の製造方法について詳細に説明する。
【0039】
図4は、シリコン単結晶の製造工程を示すフローチャートである。また、図5は、引き上げ軸12とワイヤー18との間に印加される電圧の変化を示すシーケンス図である。なお、図5は、最大電圧値を基準として正規化された電圧レベルを示している。
【0040】
図4に示すように、シリコン単結晶の製造では、まずシリコン単結晶の原料となるポリシリコンを用意する(ステップS11)。詳細には、チャンバー11内のグラファイトサセプタ13内に収容された石英ガラスルツボ14内に適量のポリシリコン砕片を充填する。
【0041】
次に、チャンバー11内を減圧下のArガス雰囲気とした後、ヒーター15でチャンバー11内の石英ガラスルツボ14を加熱し、石英ガラスルツボ14内のポリシリコンを溶融する(ステップS12)。このとき、ワイヤー18の先端に装着された種結晶は石英ガラスルツボ14よりも十分に高い位置にあり、溶融中のポリシリコンから引き離されている。また、支持軸12とワイヤー18との間には電圧が印加されていない状態である。
【0042】
次に、種結晶の着液を検出するため、支持軸12−ワイヤー18間への電圧V1の印加を開始する(ステップS13)。このときの電圧V1は、支持軸12側をマイナス極、ワイヤー18側をプラス極とし、電圧レベルを5〜30Vとすることが好ましい。電圧極性がこれとは逆の場合には、種結晶を着液させなくても熱電子放出によって電流が流れるおそれがあり、着液タイミングを正確に検出できないからである。この電圧を監視しながら、シードチャック17を降下させて種結晶をシリコン融液21に着液させることにより、種結晶の着液の有無が正確に検知される(ステップS14)。
【0043】
石英ガラスルツボ14は常温では絶縁体であるが、1000℃以上の高温になると導電性を帯びるようになる。このため、この性質を利用して、石英ガラスルツボ14の支持軸12とワイヤー18との間に電圧を印加すると、種結晶がシリコン融液21に接触していれば石英ガラスルツボ14とワイヤー18との間が導通状態となり、離れていれば非導通状態となる。さらに、種結晶をシリコン融液21に接触させて導電状態になった時点を検出することで現在の湯面位置を求め、現在の湯面位置を初期湯面位置として設定することができる。
【0044】
次に、シリコン融液21が1500℃程度に安定するまで温度調整を行いながら、種結晶をシリコン融液21に馴染ませる(ステップS15)。このときの温度調整期間は3〜6時間程度である。温度調整期間中は、支持軸12側をプラス極、ワイヤー18側をマイナス極とし、着液検出時よりもやや高い電圧V2を印加することによりルツボ内表面の失透を促進させる。ルツボ内のアルカリ金属イオンは内表面側に引き寄せられてルツボの内表面近傍に集積するので、ルツボ内表面の失透を促進させることができ、均一な失透面を形成することができる。このときの電圧レベルは30〜50Vであることが好ましい。電圧レベルが低すぎるとアルカリ金属イオンが移動せず、均一な失透が得られないからであり、電圧レベルが高すぎると移動した金属イオンルツボから飛び出してシリコン融液21中に溶出するおそれがあるからである。
【0045】
こうしてシリコン融液21の温度調整が完了すると、シリコン単結晶20の引き上げを開始する(ステップS16)。CZ法によるシリコン単結晶20の引き上げでは、支持軸12及びワイヤー18を互いに逆方向に回転させながら、種結晶をゆっくりと引き上げることにより、種結晶の下端にシリコン単結晶20を成長させていく。詳細には、まず単結晶を無転位化するためダッシュ法によるシード絞り(ネッキング)を行う(ステップS17)。次に、必要な直径のシリコン単結晶を得るためにショルダー部を育成し(ステップS18)、シリコン単結晶が所望の直径になったところで直径を一定にしてボディ部を育成する(ステップS19)。ボディ部を所定の長さまで育成した後、無転位の状態で単結晶をシリコン融液21から切り離すためにテール絞り(テール部の形成)を行なう(ステップS20)。
【0046】
ネッキングでは、種結晶に元から含まれる転位や、着液時の熱衝撃により種結晶中に生じるスリップ転位を消滅させるため、種結晶を相対的に回転させながら上方にゆっくりと引き上げてその最小直径が3〜5mm程度になるまで細く絞り込む。ネック部の長さが10〜20mmとなりスリップ転位が完全に除去されたら、種結晶の引き上げ速度とシリコン融液21の温度を調整してネック部の直径を拡大し、ショルダー部の育成に移行する。
【0047】
ショルダー部が所定の直径に達すると、今度はボディ部の育成に移行する。ウェハー収率を高めるためボディ部の直径は一定とする必要があり、単結晶育成中は、ボディ部がほぼ一定の直径を維持して育成されるように、ヒーターの出力、引き上げ速度、ルツボの上昇速度等が制御される。特に、シリコン単結晶の成長に伴ってシリコン融液21が減少し、湯面が下がるので、湯面の低下に合わせてルツボを上昇させることにより、シリコン単結晶育成中の湯面レベルを一定に保ち、育成中の単結晶の直径が一定となるように調整される。
【0048】
ボディ部が所定の長さになるまでシリコン単結晶を成長させた後、結晶成長界面に存在したシリコン融液とシリコン単結晶との間の熱均衡が崩れて結晶に急激な熱衝撃が加わり、スリップ転位や異常酸素析出等の品質異常が発生することを防止するため、直径を徐々に縮小して円錐状のテール部を形成し、シリコン融液21からのシリコン単結晶を切り離す。
【0049】
シリコン単結晶の引き上げ中は、上述の温度調整期間(ステップS15)と異なり、支持軸12とワイヤー18との間に印加する電圧の極性を反転させ、支持軸12側をマイナス極、ワイヤー18側をプラス極とする電圧V3を印加する。こうすることにより、シリコン融液21中のアルカリ金属イオンはルツボ側に引き寄せられ、引き上げ中のシリコン単結晶から引き離されるので、シリコン単結晶中にアルカリ金属不純物が取り込まれることを防止することができる。また、石英ガラスルツボ14中のアルカリ金属イオンは外側に引き寄せられてルツボの外表面に集積するので、ルツボ外表面の失透を促進させることができ、ルツボ外表面にも均一な失透面を形成することができる。このときの電圧レベルはやや低いほうがよく、5〜30V程度であることが好ましい。
【0050】
ところで、ルツボ内表面の溶損が進むと失透層が徐々に失われていくことから、ルツボ内表面の失透層が無くなる前に、支持軸12側をプラス極、ワイヤー18側をマイナス極とする電圧V2の印加に戻して失透を再促進させることが好ましい。例えば、ルツボ内表面の溶損速度が5μm/hr、それに対して失透初期厚さ100μm、失透成長速度1μm/hrとすると、24hr程度で失透層がなくなるため、20時間毎にルツボ側をマイナス極とする電圧極性に変更する。こうすることにより、失透面を再生することができ、失透層の厚さを500μmに戻すことができる。したがって、ルツボの耐久性を飛躍的に向上させることができ、単結晶化率の更なる向上を図ることができる。特に、同一のルツボから複数のシリコン単結晶を製造するため、ルツボ内にシリコン原料を追加チャージするマルチプリング(multi-pulling)法や、ルツボ内にシリコン原料を連続的に供給しながらシリコン単結晶を引き上げる連続CZ法(CCZ法)において極めて有利である。
【0051】
その後、電圧の印加を終了し(ステップS21)、シリコン単結晶の引き上げ工程が終了する(ステップS22)。シリコン融液21から切り離したシリコン単結晶インゴットは所定の条件で冷却され、シリコン単結晶インゴットから切り出されたシリコンウェ−ハは種々の半導体デバイスの基板材料として用いられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法によれば、ルツボ側をマイナス極、引き上げ軸側をプラス極とする電圧を印加しながら種結晶を着液させることから、着液の有無を確実に検知することがでる。また、着液後に電圧極性を反転させ、マイナス極、引き上げ軸側をプラス極とする電圧を印加することにより、シリコン融液の温度調整期間中においてルツボ内表面の失透化を実施することができる。さらに、温度調整期間の経過後に電圧極性を反転させ、ルツボ側をマイナス極とし、引き上げ軸側をプラス極とする直流電圧を印加することにより、シリコン融液中のアルカリ金属イオンを引き上げ中のシリコン単結晶から遠ざけることができると共に、石英ガラス中のアルカリ金属イオンをルツボの外表面近傍に集積させることができ、これによりルツボ外表面の失透化を促進することができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、印加する電圧の極性やレベルは工程ごとに変化するものの、電圧は常に印加され続けていることから、この電圧の変化を監視することで湯漏れを確実に検出することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、ルツボ内表面の溶損によってルツボ内表面の失透が完全に無くなる前に、ルツボ側をプラス極、引き上げ軸側をマイナス極とする電圧を再び印加してルツボ内表面の失透面を修復させ、そのような電圧の印加をシリコン単結晶の引き上げ中において定期的に行うので、失透面を維持することができ、ルツボの耐久性を高めることができる。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、電源装置24の一方の端子24aを支持軸12に接続し、他方の端子24bをワイヤー18に接続しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、石英ガラスルツボ14とワイヤー18との間に電圧を印加できる構成であればどのような構成であっても構わない。また、シードチャック17の引き上げ軸はワイヤー18に限定されず、棒状の引き上げ軸を用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、テール部の育成が完了するまで電圧を印加しているが、ボディ部の育成が完了した時点で電圧の印加を終了させてもかまわない。
【符号の説明】
【0058】
10 シリコン単結晶引き上げ装置
11 チャンバー
12 支持軸
13 グラファイトサセプタ
14 石英ガラスルツボ
14A ルツボ側壁部
14B ルツボ底部
14C ルツボ湾曲部
15 ヒーター
16 支持軸駆動機構
17 シードチャック
18 ワイヤー
19 ワイヤー巻き取り機構
20 シリコン単結晶
21 シリコン融液
22 遮熱部材
23 制御装置
23a 着液制御部
23b 失透制御部
23c 単結晶制御部
23d 湯漏れ監視部
24 電源装置
24a 電源装置の一方の端子
24b 電源装置の他方の端子
25 比較器
31 不透明石英ガラス層
32 透明石英ガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き上げ軸の先端に取り付けられた種結晶を石英ガラスルツボ内のシリコン融液に着液させると共に、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とする第1の電圧を印加しながらその電圧の変化を監視することで前記種結晶の着液状態を検出する工程と、
前記種結晶の着液後から一定の期間である前記シリコン融液の温度調整期間において、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、前記引き上げ軸側をマイナス極とし前記第1の電圧よりも絶対値が大きな第2の電圧を印加することで前記石英ガラスルツボの内表面を失透させる工程と、
前記温度調整期間の終了後、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とし前記第2の電圧よりも絶対値が小さな第3の電圧を印加しながら前記種結晶を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶を成長させる工程とを備えることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン単結晶を成長させる工程は、前記石英ガラスルツボの内表面に形成した失透が無くなる前に、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、引き上げ軸側をマイナス極とし前記第3の電圧よりも絶対値が大きな第4の電圧を一定期間印加して前記石英ガラスルツボの内表面の失透を再生させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン単結晶を成長させる工程において、前記第3の電圧を印加する工程と前記第4の電圧を印加する工程とを交互に繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記第1乃至第3の電圧の変化を監視することにより前記シリコン融液の湯漏れを検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記石英ガラスルツボは、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属イオンを含み、前記アルカリ金属イオンの濃度の合計が0.05ppm以上5ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項6】
引き上げ軸と、前記引き上げ軸の昇降機構と、前記引き上げ軸の先端に取り付けられた種結晶と、シリコン融液が充填された石英ガラスルツボと、前記石英ガラスルツボ内の前記シリコン融液を加熱するヒーターと、前記石英ガラスルツボと前記引き上げ軸との間に電圧を印加する電源装置と、前記昇降機構、前記ヒーター、及び前記電源装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記引き上げ軸を降下させて前記種結晶を前記シリコン融液に着液させると共に、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とする第1の電圧を印加しながらその電圧の変化を監視することで前記種結晶の着液状態を検出する着液制御部と、
前記種結晶の着液後から一定の期間である前記シリコン融液の温度調整期間において、前記石英ガラスルツボ側をプラス極、前記引き上げ軸側をマイナス極とし前記第1の電圧よりも大きな第2の電圧を印加することで少なくとも前記石英ガラスルツボの内表面を失透させる失透制御部と、
前記温度調整期間の終了後、前記石英ガラスルツボ側をマイナス極、前記引き上げ軸側をプラス極とし前記第2の電圧よりも小さな第3の電圧を印加しながら前記種結晶を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶を成長させる単結晶制御部とを含むことを特徴とするシリコン単結晶引き上げ装置。
【請求項7】
円筒状の側壁部と、前記側壁部の下方に設けられた底部と、前記側壁部と底部との間に設けられた湾曲部とを有し、ルツボの肉厚方向に対して所定の電圧が印加された状態で使用されるシリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボであって、
前記ルツボの内表面側に設けられた透明石英ガラス層と、前記ルツボの外表面側に設けられた多数の微小な気泡を含む不透明石英ガラス層とを備え、
前記不透明石英ガラス層は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、前記アルカリ金属の濃度の合計が0.05ppm以上であることを特徴とする石英ガラスルツボ。
【請求項8】
前記不透明石英ガラス層に含まれる前記アルカリ金属の濃度の合計が0.2ppm以上であることを特徴とする請求項7に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項9】
前記透明石英ガラス層は、Na、K及びLiのうち1種又は2種以上のアルカリ金属を含み、前記アルカリ金属の濃度の合計が0.05ppm以上5ppm以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の石英ガラスルツボ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275139(P2010−275139A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128291(P2009−128291)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(592176044)ジャパンスーパークォーツ株式会社 (90)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】