説明

シリコン薄膜の処理方法およびフラッシュランプ照射装置

【課題】基板とアモルファスシリコン薄膜との間に部分的に金属層が配置されていても、結晶粒径が均一でクラックのないポリシリコン薄膜を得ることができるシリコン薄膜の処理方法およびこの方法に用いられるフラッシュランプ照射装置を提供する。
【解決手段】点灯時のパルス幅が50〜200μsecのフラッシュランプからの光を、基板上に部分的に配置された金属層を介して形成された厚みが30〜100nmのアモルファスシリコン薄膜に照射して、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法において、長波長側の光をカットする波長カットフィルタを介して、フラッシュランプからの光をアモルファスシリコン薄膜に照射する工程を有し、波長カットフィルタによってカットされる光の波長領域の短波長側端の波長が650nm以下、アモルファスシリコン薄膜に照射される光の照射エネルギーが2.00〜3.10J/cm2 である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコンよりなる薄膜にフラッシュランプから放射される光を照射するシリコン薄膜の処理方法、およびこの処理方法に用いられるフラッシュランプ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子、有機EL発光素子や、半導体素子などの製造においては、ガラス基板、シリコンウエハなどの基板上に、アモルファスシリコン薄膜を形成し、このアモルファスシリコン薄膜を急速に加熱することによって、ポリシリコン薄膜を形成する技術が知られている。
而して、最近においては、素子の高集積化、ディスプレイの大型化に伴い、厚みが小さく、均一に結晶化されたポリシリコン薄膜を形成することが要求されており、このような要求を実現するため、フラッシュランプからの光を、赤外線カットフィルタを介して、アモルファスシリコン薄膜に照射することにより、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
図5は、従来のシリコン薄膜の処理方法に用いられるフラッシュランプ照射装置の構成を示す説明用断面図である。このフラッシュランプ照射装置においては、発光光線遮断用の外側筐体90内の上部側位置に、下面に開口92を有する内側筐体91が設けられ、この内側筐体91内には、発光管内にキセノンガス等が封入された複数のフラッシュランプ93が配置され、これらのフラッシュランプ93と内側筐体91の上壁との間に、反射部材94が配置されている。また、内側筐体91には、その下面の開口92を塞ぐよう、赤外線カットフィルタ95が配置されている。また、外側筐体90内の下部側位置には、被処理物Wが載置される、ヒータ97を有するサセプタ96が配置されている。98は、水冷パイプである。
このようなフラッシュランプ照射装置においては、ガラス基板などの基板上にアモルファスシリコン薄膜が形成されてなる被処理物Wが、サセプタ96上に載置され、当該サセプタ96によって予備加熱された後、当該被処理物Wに、フラッシュランプ93から放射される光Lが赤外線カットフィルタ95を介して照射されることによって、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜が急速に加熱されて多結晶化され、以て、ポリシリコン薄膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4092541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のシリコン薄膜の処理方法においては、以下のような問題があることが判明した。
ガラス基板などの基板上には、通常、モリブデンやタングステン等よりなる配線を形成する金属層が部分的に配置されており、この金属層を介してアモルファスシリコン薄膜が形成される。そして、このアモルファスシリコン薄膜の厚みが小さい、例えば厚みが100nm以下のものである場合には、フラッシュランプ93から赤外線カットフィルタ95を介してアモルファスシリコン薄膜に照射される光のうち長波長側の光がアモルファスシリコン薄膜を透過し、この透過した光が金属層に照射されることによって金属層が加熱されると共に、当該金属層によって反射された光が再度アモルファスシリコン薄膜に照射される。
このため、アモルファスシリコン薄膜においては、金属層の直上に位置する部分とそれ以外の部分との間に、加えられるエネルギー量に差が生じるので、結晶粒径が均一なポリシリコン薄膜を得ることが困難である、という問題がある。
また、得られるポリシリコン薄膜においては、金属層の直上に位置する部分とそれ以外の部分との間で結晶化状態が異なるため、金属層の直上に位置する部分の周縁箇所においてクラックが発生する、という問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、基板とアモルファスシリコン薄膜との間に部分的に金属層が配置されていても、結晶粒径が均一でクラックのないポリシリコン薄膜を得ることができるシリコン薄膜の処理方法およびこの方法に用いられるフラッシュランプ照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリコン薄膜の処理方法は、点灯時のパルス幅が50〜200μsecであるフラッシュランプから放射される光を、基板上に部分的に配置された金属層を介して形成された厚みが30〜100nmのアモルファスシリコン薄膜に照射することによって、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法において、
フラッシュランプとアモルファスシリコン薄膜との間に配置された長波長側の光をカットする波長カットフィルタを介して、当該フラッシュランプからの光を当該アモルファスシリコン薄膜に照射する工程を有し、
前記波長カットフィルタによってカットされる光の波長領域の短波長側端の波長が650nm以下であり、
前記アモルファスシリコン薄膜に照射される光の照射エネルギーが2.00〜3.10J/cm2 であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のシリコン薄膜の処理方法は、点灯時のパルス幅が50〜100μsecであるフラッシュランプから放射される光を、基板上に部分的に配置された金属層を介して形成された厚みが30〜70nmのアモルファスシリコン薄膜に照射することによって、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法において、
フラッシュランプとアモルファスシリコン薄膜との間に配置された長波長側の光をカットする波長カットフィルタを介して、当該フラッシュランプからの光を当該アモルファスシリコン薄膜に照射する工程を有し、
前記波長カットフィルタによってカットされる光の波長領域の短波長側端の波長が600nm以下であり、
前記アモルファスシリコン薄膜に照射される光の照射エネルギーが2.00〜2.90J/cm2 であることを特徴とする。
【0009】
本発明のシリコン薄膜の処理方法においては、前記波長カットフィルタは、カットされる光の波長領域の短波長側端の波長をλ(nm)とし、前記アモルファスシリコン薄膜の厚みをt(nm)としたとき、下記式(1)を満足するものであることが好ましい。
式(1) λ≦110×ln(t)+145
【0010】
本発明のフラッシュランプ照射装置は、フラッシュランプと、水フィルタ要素および多層膜フィルタ要素を有する、長波長側の光をカットする波長カットフィルタとを備えてなるフラッシュランプ照射装置であって、
上記のシリコン薄膜の処理方法に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理対象であるアモルファスシリコン薄膜の厚みとの関係で、特定の波長以上の光をカットする波長カットフィルタを介して、フラッシュランプからの光がアモルファスシリコン薄膜に照射されると共に、当該アモルファスシリコン薄膜に照射される照射エネルギーが特定の範囲にあるため、基板とアモルファスシリコン薄膜との間に部分的に金属層が配置されていても、結晶粒径が均一でクラックのないポリシリコン薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のシリコン薄膜の処理方法を実施するためのフラッシュランプ照射装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図2】本発明のシリコン薄膜の処理方法における被処理物の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図3】図1に示すフラッシュランプ照射装置におけるフィルタの構成を示す説明用断面図である。
【図4】多層膜フィルタ要素および水フィルタ要素の分光特性の代表的な例を示す曲線図である。
【図5】従来のシリコン薄膜の処理方法に用いられるフラッシュランプ照射装置の構成を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のシリコン薄膜の処理方法を実施するためのフラッシュランプ照射装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
このフラッシュランプ照射装置においては、直流電源およびコンデンサを有するランプ点灯機構12に電気的に接続された、複数の棒状のフラッシュランプ10が水平方向に並ぶよう配置され、これらのフラッシュランプ10の上方には、フラッシュランプ10の各々からの光を下方に反射するリフレクタ11が配置されている。
複数のフラッシュランプ10の下方には、被処理物Wが収容される処理室Rを形成する箱型のチャンバー20が設けられている。このチャンバー20の上面には、フラッシュランプ10からの光を処理室R内に導入するための開口21が形成され、チャンバー20の一側面(図において右面)には、処理室R内に雰囲気ガスを導入するガス導入口22が形成され、チャンバー20の他側面(図において左面)には、処理室R内に被処理物Wを搬入・搬出するための被処理物入出口23が形成されている。
チャンバー20内には、被処理物Wが載置される、予備加熱手段(図示省略)が設けられた載置台25が設けられ、この載置台25の上面における周縁部には、被処理物Wを支持する支持部材26が設けられている。また、載置台25には、当該載置台25の温度を調整する温度調整機27が接続されている。
そして、複数のフラッシュランプ10とチャンバー20との間には、長波長側の光をカットする波長カットフィルタ30が、当該チャンバー20の上面の開口21を塞ぐよう設けられている。
【0014】
被処理物Wの具体的な一例における構成を図2に示す。この被処理物Wにおいては、ガラス基板等の基板5上に、窒化珪素膜4を介して、モリブデンやタングステン等よりなる配線を形成する金属層3が部分的に配置されており、この金属層3を含む窒化珪素膜4上には、SiO2 よりなる絶縁膜2を介して、アモルファスシリコン薄膜1が形成されている。
この被処理物Wにおいて、基板5の厚みは例えば600μm、窒化珪素膜4の厚みは例えば280nm、金属層3の厚みは例えば70nm、絶縁膜2の厚みは例えば250nmである。
そして、本発明においては、厚みが30〜100nmのアモルファスシリコン薄膜1が形成されてなるものが処理対象である。
【0015】
このような被処理物Wにおいて、アモルファスシリコン薄膜1は、プラズマCVD法、減圧CVD法、触媒CVD法、スパッタリング法などによって形成することができるが、高周波による放電を利用した高周波プラズマCVD法が好ましい。
【0016】
フラッシュランプ10としては、キセノンフラッシュランプ、キセノン−水銀フラッシュランプ、キセノン−クリプトンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプ、クリプトン−水銀フラッシュランプ、キセノン−クリプトン−水銀フラッシュランプ、メタルハライドフラッシュランプなどを用いることができる。
【0017】
この例における波長カットフィルタ30は、水フィルタ要素および多層膜フィルタ要素を有してなるものである。具体的に説明すると、この波長カットフィルタ30においては、図3にも示すように、例えば石英ガラスよりなる板状の第1のフィルタ基体31と、例えば石英ガラスよりなる第2のフィルタ基体33が、例えばスペーサ(図示省略)によって形成された水充填用空間Sを介して、互いに対向するよう水平に配置され、第1のフィルタ基体31および第2のフィルタ基体33は、O−リング36を有する保持部材35に保持されて固定されている。第1のフィルタ基体31の外面(図において上面)には誘電体多層膜32が形成され、第2のフィルタ基体33の外面(図において下面)には無反射コート層34が形成されている。37は、例えばスペーサに設けられた、水充填用空間S内に水を導入するための水導入口であり、38は、例えばスペーサに設けられた、水充填用空間Sから水を排出するための水排出口である。
そして、誘電体多層膜32によって多層膜フィルタ要素が構成され、水充填用空間S内に水が導入されて充填されることによって水フィルタ要素が構成されている。
【0018】
このような波長カットフィルタ30において、多層膜フィルタ要素を構成する誘電体多層膜32としては、HfO2 およびSiO2 よりなるもの、またはZrO2 およびSiO2 よりなるものなどを用いることができる。
また、第1のフィルタ基体31の厚みは、例えば1〜5mmである。
また、第2のフィルタ基体33の厚みは、例えば1〜5mmである。
また、水充填用空間Sの厚みは、例えば5〜30mmである。
【0019】
本発明においては、波長カットフィルタ30は、カットされる光の波長領域(以下、「カット波長領域」という。)の短波長側端の波長が650nm以下のものであり、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜の厚みが30〜70nmである場合には、カット波長領域の短波長側端の波長が600nm以下のものであることが好ましい。
ここで、カット波長領域は、波長カットフィルタによって、50%以上カットされる光の波長領域である。
カット波長領域の短波長側端の波長が上記の値を超える波長カットフィルタを用いる場合には、アモルファスシリコン薄膜1に照射される光のうち長波長側の光が当該アモルファスシリコン薄膜1を透過するため、結晶粒径が均一なポリシリコン薄膜が得られず、また、得られるポリシリコン薄膜にクラックが発生しやすくなる。
また、カット波長領域の短波長側端の波長は、アモルファスシリコンの光吸収特性の点で、450nm以上であることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、波長カットフィルタ30は、カット波長領域の短波長側端の波長をλ(nm)とし、前記アモルファスシリコン薄膜の厚みをt(nm)としたとき、下記式(1)を満足することが好ましい。
式(1) λ≦110×ln(t)+145
【0021】
波長カットフィルタ30における多層膜フィルタ要素および水フィルタ要素の分光特性の代表的な例を図4に示す。この図において、aは多層膜フィルタ要素の分光特性曲線、bは水フィルタ要素の分光特性曲線である。この図に示すように、多層膜フィルタ要素は、波長カットフィルタ30のカット波長領域のうち短波長側の領域の光をカットする機能を有するものであり、一方、水フィルタ要素は、波長カットフィルタ30のカット波長領域のうち長波長側の領域の光をカットする機能を有するものである。従って,これらのフィルタ要素を組み合わせることにより、所要のカット波長領域を有する波長カットフィルタ30が得られる。
【0022】
本発明においては、上記のフラッシュランプ照射装置を用い、以下のようにしてアモルファスシリコン薄膜を有する被処理物Wが処理される。
先ず、被処理物Wが、チャンバー20の被処理物入出口23から処理室R内に搬入されて載置台25上に載置される。その後、チャンバー20の処理室R内にガス導入口22から雰囲気ガスが導入されると共に、載置台25に設けられた予備加熱手段によって被処理物Wが予備加熱される。
以上において、処理室R内に導入される雰囲気ガスとしては、大気ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
また、被処理物Wの予備加熱温度は、例えば室温〜500℃の範囲で適宜選択することができるが、生産性の観点から、室温が好ましい。
【0023】
そして、フラッシュランプ10の各々が点灯され、当該フラッシュランプ10から放射される光が、波長カットフィルタ30を介して、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜1に照射されることによって、アモルファスシリコン薄膜1が急速に加熱されて多結晶化され、以て、ポリシリコン薄膜が形成される。
以上において、フラッシュランプ10における点灯時のパルス幅は、50〜200μsecであり、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜の厚みが30〜70nmである場合には、点灯時のパルス幅は、50〜100μsecであることが好ましい。
このパルス幅が上記の値未満である場合には、加熱時間が短いため、良質な結晶を得ることが困難となる。一方、このパルス幅が上記の値を超える場合には、加熱時間が長いため、金属層が溶融する、或いは、アモルファスシリコン薄膜の結晶化が困難となる、という問題が生じる。
【0024】
また、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜1に照射される光の照射エネルギーは、2.00〜3.10J/cm2 、好ましくは2.20〜2.90J/cm2 であり、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜の厚みが30〜70nmである場合には、アモルファスシリコン薄膜1に照射される光の照射エネルギーは、2.00〜2.90J/cm2 であることが好ましく、より好ましくは2.20〜2.80J/cm2 、さらに好ましくは2.30〜2.60J/cm2 である。
この照射エネルギーが過小である場合には、アモルファスシリコン薄膜の結晶化が困難となる。一方、この照射エネルギーが過大である場合には、アモルファスシリコン薄膜が溶融した後、再結晶化するため、得られるポリシリコン薄膜の結晶粒が大きくなりすぎる、という問題が生じる。
【0025】
このような処理方法によれば、被処理物Wにおけるアモルファスシリコン薄膜1の厚みとの関係で、特定の波長以上の光をカットする波長カットフィルタ30を介して、フラッシュランプ10からの光がアモルファスシリコン薄膜に照射されると共に、当該アモルファスシリコン薄膜1に照射される照射エネルギーが特定の範囲にあるため、基板5とアモルファスシリコン薄膜1との間に部分的に金属層3が配置されていても、結晶粒径が均一でクラックのないポリシリコン薄膜を得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
〈実施例1〜4および比較例1〜4〉
下記の仕様のキセノンフラッシュランプを10本用い、図1に示す構成に従って、フラッシュランプ照射装置を作製した。また、下記表1に、キセノンフラッシュランプにおける点灯時のパルス幅(表1において「パルス幅」で記す。)、波長カットフィルタにおけるカット波長領域の短波長側端(表1において「波長λ」で記す。)を示す。
キセノンフラッシュランプの仕様:
このキセノンランプは、発光長が250mmで、内径が10mmの石英ガラス製の発光管を有し、この発光管内には、60kPaの封入圧でキセノンガスが封入されている。
【0028】
上記のフラッシュランプ照射装置を用い、下記表1に示す厚みのアモルファスシリコン薄膜(表1において「α−Si薄膜」で記す。)を有する図3に示す構成の被処理物に対し、大気ガス雰囲気下において、250℃に予備加熱した状態で、照射エネルギーが下記表1に示す値となる条件で光照射処理を行った。下記表1に、上記式(1)の右辺により算出される波長(表1において「波長λ0 」で記す。)を示す。
以上において、被処理物における基板の厚みは600μm、窒化珪素膜の厚みは280nm、金属層の厚みは70nm、絶縁膜の厚みは250nmである。
また、被処理物におけるアモルファスシリコン薄膜は、下記の条件の高周波プラズマCVD法によって形成した。
基板温度:250℃
雰囲気圧力:5kPa
RF周波数:40MHz
RF出力:120W
ガス流量:モノシランガス(SiH4 );80sccm
水素ガス(H2 );80sccm
【0029】
得られたポリシリコン薄膜を電子顕微鏡で観察し、クラックの発生の有無を調べると共に、結晶粒径の均一性を調べ、結晶粒径が均一なものを○、結晶粒径が不均一なものを×として評価した。結果を下記表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4によれば、結晶粒径が均一でクラックのないポリシリコン薄膜が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0032】
1 アモルファスシリコン薄膜
2 絶縁膜
3 金属層
4 窒化珪素膜
5 基板
10 フラッシュランプ
11 リフレクタ
12 ランプ点灯機構
20 チャンバー
21 開口
22 ガス導入口
23 被処理物入出口
25 載置台
26 支持部材
27 温度調整機
30 波長カットフィルタ
31 第1のフィルタ基体
32 誘電体多層膜
33 第2のフィルタ基体
34 無反射コート層
35 保持部材
36 O−リング
37 水導入口
38 水排出口
90 外側筐体
91 内側筐体
92 開口
93 フラッシュランプ
94 反射部材
95 赤外線カットフィルタ
96 サセプタ
97 ヒータ
98 水冷パイプ
L 光
R 処理室
S 水充填用空間
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯時のパルス幅が50〜200μsecであるフラッシュランプから放射される光を、基板上に部分的に配置された金属層を介して形成された厚みが30〜100nmのアモルファスシリコン薄膜に照射することによって、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法において、
フラッシュランプとアモルファスシリコン薄膜との間に配置された長波長側の光をカットする波長カットフィルタを介して、当該フラッシュランプからの光を当該アモルファスシリコン薄膜に照射する工程を有し、
前記波長カットフィルタによってカットされる光の波長領域の短波長側端の波長が650nm以下であり、
前記アモルファスシリコン薄膜に照射される光の照射エネルギーが2.00〜3.10J/cm2 であることを特徴とするシリコン薄膜の処理方法。
【請求項2】
点灯時のパルス幅が50〜100μsecであるフラッシュランプから放射される光を、基板上に部分的に配置された金属層を介して形成された厚みが30〜70nmのアモルファスシリコン薄膜に照射することによって、ポリシリコン薄膜を形成するシリコン薄膜の処理方法において、
フラッシュランプとアモルファスシリコン薄膜との間に配置された長波長側の光をカットする波長カットフィルタを介して、当該フラッシュランプからの光を当該アモルファスシリコン薄膜に照射する工程を有し、
前記波長カットフィルタによってカットされる光の波長領域の短波長側端の波長が600nm以下であり、
前記アモルファスシリコン薄膜に照射される光の照射エネルギーが2.00〜2.90J/cm2 であることを特徴とするシリコン薄膜の処理方法。
【請求項3】
前記波長カットフィルタは、カットされる光の波長領域の短波長側端の波長をλ(nm)とし、前記アモルファスシリコン薄膜の厚みをt(nm)としたとき、下記式(1)を満足するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコン薄膜の処理方法。
式(1) λ≦110×ln(t)+145
【請求項4】
フラッシュランプと、水フィルタ要素および多層膜フィルタ要素を有する、長波長側の光をカットする波長カットフィルタとを備えてなるフラッシュランプ照射装置であって、 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシリコン薄膜の処理方法に用いられることを特徴とするフラッシュランプ照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100849(P2011−100849A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254534(P2009−254534)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】