説明

シリコーンゴムエラストマーの製造

マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物であって、(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、(ii)親水性表面を有する無機フィラー、(iii)少なくとも2つのヒドロキシ基、又はそれ以外の加水分解性基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤、(iv)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、(v)ヒドロシリル化触媒、及び/又は、上記の(ii)と(iii)との反応によって得られる処理されたフィラーを含み、フィラー処理剤(iii)及び/又は処理されたフィラーが、硬化前にオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされることを特徴とする、マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパート液体シリコーンゴムエラストマー組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムエラストマー組成物は典型的に3つの基本成分から成る。これらの成分は実質的に、直鎖状シリコーンポリマー、1つ又は複数の補強フィラー(複数可)、及び硬化系である。液体シリコーンゴム組成物の場合、硬化系は一般的に、少なくとも2つのケイ素結合水素(Si−H)基を含有するシロキサンポリマーの形態の架橋剤と、ヒドロシリル化触媒とを含み、またこの組成物は、ヒドロシリル化触媒によって触媒される、実質的に直鎖状のシリコーンポリマーと架橋剤との架橋反応によって硬化される。組成物の特性及び加工(processing)は、シリコーンポリマーの分子量(及び粘度)、補強フィラー(複数可)とシリコーンポリマーとの相互作用、及び選択される硬化剤の性質を含む、いくつかの側面に応じて決まる。シリコーンゴム組成物は、室温(例えば約25℃)で硬化することができるように配合され得るが、典型的には(室温加硫(RTV)組成物の場合であっても)或る程度の加熱が要求されるか又は好ましい。熱硬化に先立って、組成物が、通常、触媒阻害剤の形態で貯蔵中に早期硬化又は部分硬化を防止する手段をさらに含む単一パート組成物として維持されていてもよい。代替的には、使用前に、組成物が、硬化直前に共に混合されて最終組成物を形成する2つ以上のパートに貯蔵されていてもよい。2パート組成物は典型的に、ポリマーと、フィラーと、架橋剤又はヒドロシリル化触媒のいずれか一方とを含有するポリマーベース組成物の形態の第1のパートと、架橋剤又はヒドロシリル化触媒の他方と、使用目的前の貯蔵中の硬化を防止するために必要とされる他の構成成分(例えばさらなるポリマー)とを含む第2のパート、とを含む。
【0003】
補強フィラーは、有用な工学特性を得るために、得られるエラストマーに好適な強度を付与するのに組成物中に必要とされる。典型的には、フィラーをポリマーに組み込むために、かかるポリマーと化学的に適合性があることが要求される。シリコーンゴム用の補強フィラーは当該技術分野で既知であり、これらの多くは市販されている。利用され得る補強フィラーとしては、ヒュームドシリカ又は沈降シリカ等のシリカが挙げられる。ヒュームドシリカは製造するのに費用がかかり、シリコーンエラストマー中におけるヒュームドシリカの得られる補強特性は常に十分であるというわけではない。このため、とりわけコスト及び信頼性の理由から、シリコーンエラストマー組成物中における補強フィラーとしての沈降シリカの使用が増えつつある。
【0004】
シリコーンエラストマー組成物中における補強フィラー及び/又は非補強フィラーとしての鉱物フィラーの使用に関する1つの主な欠点は、それらを疎水化処理剤で処理して鉱物フィラー(例えば沈降シリカ)の外表面を疎水性にしなければ、それらが硬化時にシリコーンポリマーと強力に相互作用する傾向にある点である。主に、成形プロセス用途でシリコーンエラストマー組成物を補強するために使用されるものであるが、未処理の鉱物フィラーを使用することができる。補強フィラーとしての、沈降シリカ等の未処理の親水性鉱物フィラーの使用は、エラストマー組成物の硬化時にスポンジング作用(sponging effects)をもたらすことがある。フィラーの外表面が未処理(即ち、親水性)のままであれば、水素結合が生じ、フィラー表面上の側鎖ヒドロキシル(OH)基が徐々に、シリコーンエラストマー骨格中の酸素(O)と二次結合を形成し、この反応は時間に応じて増大する。貯蔵中のこれらの二次結合の形成は未硬化シリコーンエラストマー組成物の段階的な硬化をもたらし、その結果、組成物の加工性に悪影響を及ぼす「クレープ硬化(crepe hardening)」として当業界で既知の作用がもたらされ、これは、滑らかで連続的な帯域を形成する代わりに、押出されるか又は粉砕されるときに例えば崩壊及び亀裂をもたらす。未処理のシリカをフィラーとして使用することができるが、シリコーンエラストマー組成物を補強するのに要求されるレベルではない。補強フィラーとしての未処理の親水性シリカの使用もまた、エラストマー組成物の硬化時にスポンジング作用をもたらすことがある。
【0005】
したがって、補強フィラーとして使用される場合、一般的に沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカ等のシリカフィラーを疎水性にして、シロキサンポリマー中への取り込みを高める。疎水化は好適な処理剤の添加を用いて行われる。シリカは、ポリマーへの投入前に前処理されていてもよく、又は一般的に、現行の工業プロセスの場合と同様にシリコーンポリマー及び親水性鉱物フィラー(典型的には、沈降シリカ及び/若しくはヒュームドシリカ等のシリカフィラー、並びに/又は任意の他のシリカベースのフィラー)と共に好適な疎水化剤を混合機に投入することによって、沈降シリカをその場で疎水性にしてもよい。この処理剤は、ポリマーに組み込まれる際に補強フィラーと相互作用する。
【0006】
使用される疎水化処理剤とは、親水性フィラー材料の表面上の−OH基と化学的に相互作用して親水性フィラー材料を疎水性にする液体(又は配合時に加水分解してかかる液体を生成する化学物質)である。シリコーンエラストマー組成物用の好ましい処理剤としては、ヒドロキシ、又はそれ以外のアルコキシシラン等の加水分解性シラン、2〜20の平均重合度を有する低分子量ヒドロキシル若しくはアルコキシ末端封鎖ポリジオルガノシロキサン、及び/又はヘキサオルガノジシラザン等のシラザン、又はこれらの基の混合が挙げられる。
【0007】
沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカ等の補強フィラー、並びに性質上親水性である典型的に任意の非補強フィラーを疎水化する多種多様な方法が報告されている。米国特許第4500659号明細書に記載されているように、フィラーは、シロキサンポリマーと混合する前に前処理されるか、又はポリマーとフィラーとが混合される配合段階時にその場で混合され得る。前処理方法の例は、欧州特許第1559744号明細書、欧州特許第0340129号明細書、米国特許第5008305号明細書、米国特許第3122516号明細書、米国特許第334062号明細書、米国特許第3635743号明細書、及び米国特許第3624023号明細書に記載されている。欧州特許第1559744号明細書に記述されている親水性フィラーを前処理することの認知されている1つの利点は、前処理により、加熱混合を行うことなく、即ち、配合(混合)段階時に熱を導入する必要がなく、フィラーを容易且つ比較的迅速にポリマー中に混合可能にする点であるが、多くの場合、望ましくない副生成物を除去するために前処理プロセスの最終工程として「加熱」混合工程を使用している。
【0008】
親水性フィラーをin−situ処理する有利な手段は、ポリマーとフィラーとの混合時にヘキサオルガノジシラザンの投入を伴う。典型的に、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)等のヘキサオルガノジシラザンが、水の存在下でフィラー/シロキサン混合物中に投入される。ジシラザン及び水は相互作用して、フィラーの親水性表面上の−OH基と容易に反応する−OH基を有する中間体を生成する。かかるin−situ混合プロセスは、フィラー粒子上に優れた疎水性コーティングをもたらすが、アンモニア等の望ましくない副生成物が疎水化反応時に生成される。残念ながら、これらのアンモニア副生成物はヒドロシリル化硬化触媒を被毒する(poison)ことが知られており、このため、除去する必要がある。アンモニア副生成物の除去は、加熱ストリッピング(heat stripping)工程を行って望ましくない副生成物を除去することによって達成される。ストリッピング工程は130℃〜200℃の温度で数時間行われるため、資本集約型設備において大量のエネルギー及び時間を消費する「加熱混合(hot mixing)」プロセスを伴うことから極めて費用がかかる。
【0009】
アルコキシ基及び/又はOH基を含有する、短鎖シロキサン及びシランをフィラーのin−situ処理に使用してもよい。現行の理論に制限されることを望むものではないが、得られる充填シロキサンベースの組成物は一般的に、調製に続いて水及び/又はアルコール副生成物を混合物からストリッピングしなければ、貯蔵中に劣化することが知られていることが留意される。したがって、利用されるin−situプロセスは、混合後に得られるベース組成物を昇温で基本的なストリッピング工程に付して、硬化及び貯蔵による問題を回避するために、処理剤とフィラー表面との反応によって生成される水及び/又はアルコール副生成物を除去するという点で、ヘキサオルガノジシラザンによるフィラーのin−situ処理について上記したプロセスと類似のものである。典型的には、ストリッピング工程は、ポリマー/処理剤/フィラーベース混合物の最大1時間〜5時間の140℃〜190℃への加熱を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4500659号明細書
【特許文献2】欧州特許第1559744号明細書
【特許文献3】欧州特許第0340129号明細書
【特許文献4】米国特許第5008305号明細書
【特許文献5】米国特許第3122516号明細書
【特許文献6】米国特許第334062号明細書
【特許文献7】米国特許第3635743号明細書
【特許文献8】米国特許第3624023号明細書
【特許文献9】欧州特許第1559744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、副生成物をストリッピングする必要のない、シロキサンベースの組成物中で親水性フィラーを疎水性にするin−situ処理の方法を予期せず特定した。これにより、費用のかかる高温「加熱」混合工程を伴う、フィラーと処理剤との反応からの望ましくない副生成物の除去のためにこれまで不可欠であったストリッピング工程の必要性が排除された。したがって、親水性フィラーのin−situ処理に要する電力消費量及び所要時間が著しく削減された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)親水性表面を有する無機フィラー、
(iii)少なくとも2つのヒドロキシ基、又はそれ以外の加水分解性基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤、
(iv)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
(v)ヒドロシリル化触媒、
及び/又は、上記の(ii)と(iii)との反応によって得られる処理されたフィラーを含み、フィラー処理剤(iii)及び/又は処理されたフィラーが、硬化前にオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされることを特徴とする、マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
これまで、フィラー処理剤及び/又は処理されたフィラーと、架橋剤、特にオルガノハイドロジェンシロキサンとの関係は、マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物に伴う硬化問題及び貯蔵問題、又は当該組成物における触媒被毒に対する作用の観点では認識されてこなかった。オルガノハイドロジェンシロキサンとは別に、フィラー処理剤及び/又は処理されたフィラーをパッケージングすることによって、本発明者らは、硬化問題及び貯蔵問題、並びに触媒被毒問題が、得られる組成物において低減されることを見出した。さらに、硬化問題及び貯蔵問題、並びに触媒被毒問題は、同様の組成物における硬化問題及び貯蔵問題を低減させるのに必要不可欠な工程であると当業者が考えるストリッピング工程が無い場合であっても低減される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
構成成分(i)オルガノポリシロキサンポリマーは、
aSiO(4-a)/2
(式中、Rは、置換及び非置換の一価炭化水素基から選択され、メチル、エチル及びプロピル等のアルキル基(好ましくは各アルキル基が1個〜10個の炭素原子を含有しており、より好ましくは各アルキル基がメチル基又はエチル基であり、最も好ましくは各アルキル基がメチル基である);ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニル等のアルケニル基;フェニル等のアリール基;及び2−フェニルエチル等のアラルキルで例示される)の平均組成を有する。アルキル基は、特にフルオロ基で置換されていてもよく、このため1つ又は複数のアルキル基が、トリフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロプロピル基又はペルフルオロアルキル基であってもよい。下付文字aの平均値は1.95〜2.05である。
【0015】
オルガノシロキサンポリマーは、各分子中に少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を有する。アルケニル基は、側鎖位置、末端位置、又は両方の位置に結合され得る。かかるポリマーの重合度(dp)は200〜20,000の範囲である。シリコーンゴムは、液体シリコーンゴムとして当業界で既知の、粘性のある流動性液体であるポリマーを用いて生成してもよい。これらの材料は典型的に、スクリュー式押出機を用いることなく成形型等にポンプで注入することができる。かかるポリマーは粘性のある流動性液体であり、約1500未満の重合度(dp)を有し、且つ25℃で約200mPa・s〜100,000mPa・sの粘度を有する。
【0016】
また上記のdp範囲は、硬いガム状の粘稠度を有するポリマーを含み、約1500を超えるdpを有し、約30〜250、好ましくは95〜125の範囲のウィリアムス可塑度(Williams plasticity number)(ASTM D926)(本明細書中で使用される場合、可塑度とは、体積2cm3及び高さおよそ10mmである円柱試験片に49ニュートンの圧縮荷重を25℃で3分間かけた後の、試験片の厚さ(ミリメートル単位)×100として定義される)を有する。かかるガム状ポリマーは一般的に、圧縮成形又はトランスファー成形、カレンダ加工、スクリュー式押出機等において用いられる。
【0017】
オルガノシロキサンポリマーは、ホモポリマー若しくはコポリマー、又はかかるポリマーの混合物であり得る。オルガノシロキサンポリマーを構成するシロキシ単位は、ジアルキルシロキシ基(ここで、各アルキル基は同じであっても異なっていてもよい)、アルケニルメチルシロキシ基(ここで、アルケニル基は、2個〜10個の炭素原子を含有し、好ましくはビニル又はヘキセニルである)、及びアルキルフェニルシロキシ(ここで、アルキル基は上記の通りである)で例示される。オルガノシロキサンポリマー中の任意の好適な末端基を利用することができ、例としては、トリアルキルシロキシ、及びアルケニルジアルキルシロキシ基(ここで、アルケニル基及びアルキル基は上記の通りである)が挙げられる。使用され得るポリマーの例としては、ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサンコポリマー、ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ビニルメチルヒドロキシシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサンコポリマー、及びビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン−ビニルメチルシロキサンコポリマー、ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−トリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、及びビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−トリフルオロプロピルメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0018】
構成成分(ii)は、任意の好適な無機フィラーであっても、又は少なくとも1つが親水性外表面を有する無機フィラーの組合せであってもよい。例えば、組成物は通常、1つ又は複数の微細補強フィラー、例えば、高表面積ヒュームドシリカ及び/又は沈降シリカ等(もみ殻灰及び或る程度の炭酸カルシウムを含む)を含有する。用語「沈降シリカ」は、本願の目的では、硫酸等の酸によるアルカリ金属ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム)等のケイ酸塩の沈降反応によって得られるいずれかのシリカを意味するように意図されるものである。ここでは、任意の好適なシリカ沈降プロセスを用いることができ、好ましい方法としては、ケイ酸塩媒体中への好適な酸の添加、又は水若しくはケイ酸塩媒体中への酸及びケイ酸塩の全ての又は部分的な同時添加が挙げられる。粉砕石英、珪藻土類、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、タルク、ウォラストナイト等のさらなる非補強フィラー、並びにシリカ及び/又は炭酸カルシウムフィラーを使用してもよい。単独で又は上記フィラーの他に用いられ得る他のフィラーとしては、アルミナイト;硫酸カルシウム(無水セッコウ);セッコウ;硫酸カルシウム;炭酸マグネシウム;カオリン等のクレー;三水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム(ブルーサイト);グラファイト;炭酸銅、例えばクジャク石;炭酸ニッケル、例えばザラカイト;炭酸バリウム、例えば毒重石;及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアナイトが挙げられる。
【0019】
酸化アルミニウム;カンラン石類、ガーネット類、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩及びシートケイ酸塩(sheet silicates)から成る群からのケイ酸塩が挙げられる。カンラン石類には、限定するものではないが苦土カンラン石及びMg2SiO4等のケイ酸塩鉱物が含まれる。ガーネット類には、限定するものではないが紅柘榴石、Mg3Al2Si312、灰バンザクロ石及びCa2Al2Si312等の粉砕ケイ酸塩鉱物が含まれる。アルミノケイ酸塩には、限定するものではないが珪線石、Al2SiO5、ムライト石、3Al23・2SiO2、カヤナイト及びAl2SiO5等の粉砕ケイ酸塩鉱物が含まれる。環状ケイ酸塩類には、限定するものではないがコージライト及びAl3(Mg,Fe)2[Si4AlO18]等のケイ酸塩鉱物が含まれる。鎖状ケイ酸塩類は、限定するものではないがウォラストナイト及びCa[SiO3]等の粉砕ケイ酸塩鉱物が含まれる。
【0020】
シートケイ酸塩類には、限定するものではないが雲母;K2Al14[Si6Al220](OH)4、葉蝋石;Al4[Si820](OH)4;タルク;Mg6[Si820](OH)4;蛇絞石、例えば石綿;カオリナイト;Al4[Si410](OH)8;及びバーミキュライト等のケイ酸塩鉱物が含まれる。
【0021】
利用されるフィラー、特定のシリカフィラー、例えば沈降シリカフィラーが、50m2/g〜450m2/g、好ましくは60m2/g〜250m2/gの範囲のBET比表面積を有することが好ましい。BET比表面積は、Journal of the American Chemical Society, Vol. 60, page 309(1938年2月)に記載されているBRUNAUER−EMMET−TELLER法によって求められ、これはNF T 45007基準(1987年11月)に従うものである。
【0022】
かかるフィラーを使用する場合、その割合は、エラストマー形成組成物及び硬化されたエラストマーにおいて望まれる特性に応じて決まる。通常、組成物の全フィラー含有量は、ポリマー100重量部当たり、約5重量部〜約800重量部、好ましくは25重量部〜400重量部の範囲内である。
【0023】
構成成分(iii)は、少なくとも2つのヒドロキシ基、又はそれ以外の加水分解性、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤(又は処理剤の混合物)である。好ましくは構成成分(iii)はまた、式:
aSiO(4-a)/2
(式中、Rは、置換及び非置換の一価炭化水素基から選択され、フェニル基等のアリール基、メチル、エチル及びイソプロピル、第三級ブチル及びプロピル等のアルキル基(好ましくは各アルキル基が1個〜10個の炭素原子を含有しており、より好ましくは各アルキル基がメチル基又はエチル基であり、最も好ましくは各アルキル基がメチル基である)によって例示される)の単位を含む。アルキル基は、特にフルオロ基で置換されていてもよく、このため1つ又は複数のアルキル基が、トリフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロプロピル基又はペルフルオロアルキル基であってもよい。Rはまた、ビニル基、アリル基及び/又はヘキセニル基等のアルケニル基から選択されてもよい。下付文字aの平均値は1.95〜2.05である。少なくとも2つのヒドロキシ基は、鎖上の末端ヒドロキシ基若しくは側鎖基、又は両方であってもよい。各加水分解性基は、「常温」混合を用いた場合にのみ親水性フィラー表面上の−OH基と相互作用する任意の好適な加水分解性基であってもよい。好ましくは各加水分解性基は、1個〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、最も好ましくは、存在する場合、各アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基である。構成成分(iii)の粘度は、好ましくは10mPa・s〜1,000mPa・sであるが、必要に応じてそれよりも大きくともよい。フィラー処理剤は典型的にフィラー(構成成分(ii))の重量の0.5重量%〜12重量%の量で供給される。
【0024】
フィラーを処理することにより、未硬化組成物の室温機械特性が改良される。さらに、表面処理されたフィラーは、未処理の材料又は原材料よりも低い伝導性をもたらす。通常、フィラー(構成成分(ii))は、上記の適切な処理剤又はその混合物を用いてin−situ処理される。しかしながら、必要に応じてフィラー(複数可)を前処理してもよい。前処理工程は混合プロセスにさらなる工程を導入することになるため、一般的に避けられるが、調製されるときに、前処理された表面改質フィラーは凝集することなく、シリコーンポリマー中に均質に組み込まれ得る。
【0025】
構成成分(iv)は、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子及び25℃で最大約10Pa・sの粘度を有するオルガノハイドロジェンシロキサンである。架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンシロキサンは、少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有し、このケイ素原子の残りの原子価は、二価の酸素原子によって又は1個〜7個の炭素原子を含む一価炭化水素ラジカルによって満たされる。一価炭化水素ラジカルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、第三級ブチル及びヘキシル等のアルキル;シクロヘキシル等のシクロアルキル;並びに、フェニル及びトリル及び/又はトリフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロプロピル基又はペルフルオロアルキル基)等のアリールであり得る。かかる材料は当該技術分野において既知である。オルガノハイドロジェンシロキサンの分子構造は、直鎖状、分枝を含む直鎖状、環状若しくは網目形態、又はそれらの混合であってもよい。オルガノハイドロジェンシロキサンの分子量に対して特別な限定はないが、粘度が25℃で3mPa・s〜10,000mPa・sであることが好ましい。さらに、組成物に添加される構成成分(iv)の量は、ケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数との比率が、0.5:1〜20:1の範囲、好ましくは1:1〜5:1の範囲となるような量である。このモル比が0.5未満であれば、本発明の組成物の硬化は不十分となるのに対し、このモル比が20を超えれば、水素ガスが発生して発泡が起こる。
【0026】
オルガノハイドロジェンシロキサン中に存在するケイ素結合有機基には、1個〜4個の炭素原子を有し、他の点ではエチレン系不飽和又はアセチレン系不飽和を含まない置換及び非置換のアルキル基が含まれ得る。本願の目的で、「置換」とは、炭化水素基中の1つ又は複数の水素原子が別の置換基で置き換えられていることを意味する。かかる置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;クロロメチル、ペルフルオロブチル、トリフルオロエチル及びノナフルオロヘキシル等のハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル及びカルボキシル等の酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能性基、アミド官能性基及びシアノ官能性基等の窒素原子含有基;イオウ原子;並びにメルカプト基等のイオウ原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
構成成分(v)はヒドロシリル化触媒である。好ましくは、選択されるヒドロシリル化触媒には、白金触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒、パラジウム触媒又はルテニウム触媒から選択される白金族金属系触媒等の任意の好適なヒドロシリル化触媒が含まれ得る。本発明の組成物を硬化させるのに有用な白金族金属含有触媒は、ケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニル基との反応を触媒することが知られている任意のものであり得る。ヒドロシリル化によって本発明の組成物を硬化させる触媒として用いられる好ましい白金族金属は、白金系触媒である。本発明の組成物を硬化させる幾つかの好ましい白金系ヒドロシリル化触媒は、白金金属、白金化合物、及び白金錯体である。代表的な白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水化物、二塩化白金、及び低分子量ビニル含有オルガノシロキサンを含有するような化合物の錯体が挙げられる。本発明に用いられるのに好適な他のヒドロシリル化触媒としては、例えば、[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX43[(R32S]3、(R23P)2Rh(CO)X4、(R23P)2Rh(CO)H、Rh24224、HaRhbオレフィンcCld、Rh(O(CO)R33-n(OH)n(式中、X4は、水素、塩素、臭素又はヨウ素であり、Y2は、メチル若しくはエチル等のアルキル基、CO、C814、又は0.5C812であり、R3はアルキルラジカル、シクロアルキルラジカル又はアリールラジカルであり、R2はアルキルラジカル、アリールラジカル又は酸素置換ラジカルであり、aは0又は1であり、bは1又は2であり、cは1〜4(両端の値も含む)の整数であり、dは2、3又は4であり、nは0又は1である)等のロジウム触媒が挙げられる。また、Ir(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z4)(En)22、又は(Ir(Z4)(Dien)]2(式中、Z4は塩素、臭素、ヨウ素又はアルコキシであり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである)等の任意の好適なイリジウム触媒を使用してもよい。
【0028】
本発明の組成物の白金族金属元素わずか0.001重量部(百万分率(ppm))に対する当量で、ヒドロシリル化触媒を本発明の組成物に添加してもよい。組成物中のヒドロシリル化触媒の濃度は、少なくとも1百万分率の白金族金属元素当量を提供することができることが好ましい。約3百万分率〜50百万分率の白金族金属元素当量を提供する触媒濃度は、一般的に好ましい量である。
【0029】
本発明によるシリコーンゴム組成物用の任意の添加剤は、以下のヒドロシリル化触媒阻害剤、レオロジー調整剤、顔料、着色料、粘着防止剤、定着剤、熱安定化剤、発泡剤、難燃剤、導電性フィラー及び/又は熱伝導性フィラー、並びに乾燥剤の1つ又は複数を含み得る。
【0030】
任意の好適な白金族タイプの阻害剤を使用してもよい。白金触媒阻害剤の1つの有用なタイプは、米国特許第3,445,420号明細書に記載されており、これは、或る特定のアセチレン系阻害剤及びそれらの使用を示すために参照により本明細書に援用される。アセチレン系阻害剤の好ましい種類は、25℃で白金系触媒の活性を抑制するアセチレンアルコール、特に2−メチル−3−ブチン−2−オール及び/又は1−エチニル−2−シクロヘキサノールである。白金触媒阻害剤の第2のタイプは、米国特許第3,989,667号明細書に記載されており、これは、或る特定のオレフィン系シロキサン、それらの調製、及び白金触媒阻害剤としてのそれらの使用を示すために参照により本明細書に援用される。白金触媒阻害剤の第3のタイプとしては、1分子当たり3つ〜6つのメチルビニルシロキサン単位を有するポリメチルビニルシクロシロキサンが挙げられる。
【0031】
これらの触媒を含有する組成物は典型的に、実用的な速度で硬化させるために70℃以上の温度で加熱することを要する。室温硬化は典型的に、架橋剤及び阻害剤が2つのパートのうちの一方に存在し、白金がもう一方のパートに存在する2パート系を用いているような系で達成される。白金の量が増大すると、室温での硬化が可能になる。白金触媒阻害剤の最適な濃度は、昇温で本発明の組成物を硬化させるのに要する時間間隔を過剰に延長させることなく、周囲温度において所望の貯蔵安定性又はポットライフをもたらす濃度である。この量は広く様々であり、使用される特定の阻害剤、白金含有触媒(v)の性質及び濃度、並びに架橋剤(iv)の性質に応じて決まる。白金1モル当たり1モルの阻害剤といった低い阻害剤濃度では、約70℃を超える温度において、望ましいレベルの貯蔵安定性及び十分に短い硬化時間が得られる場合もある。別の場合では、白金1モル当たり最大10モル、50モル、100モル、500モル以上の阻害剤濃度を要することもある。所与の組成物中の特定の阻害剤の最適な濃度は日常実験によって求めることができる。
【0032】
レオロジー調整剤としては、ポリエーテル又はポリエステルのポリオールに基づく、欧州特許第0802233号明細書に記載されているもの等のシリコーン有機コポリマー;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、コポリマー又は酸化エチレン(EO)及び酸化プロピレン(PO)、及びシリコーンポリエーテルコポリマーから成る群から選択される非イオン性界面活性剤;並びに、シリコーングリコールが挙げられる。
【0033】
任意の好適な定着剤(複数可)が、本発明による組成物中に組み込まれていてもよい。これらはとしては、例えば、アミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン(例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、並びにメルカプト−アルキルアルコキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、エチレンジアミンとシリルアクリレートとの反応生成物が挙げられ得る。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等のケイ素基を含有するイソシアヌレートを付加的に使用してもよい。さらに好適な定着剤は、エポキシアルキルアルコキシシラン(例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とアミノ置換アルコキシシラン(例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン)との反応生成物、並びに任意のアルキルアルコキシシラン(例えば、メチル−トリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン)、及びそれらの誘導体である。
【0034】
熱安定化剤としては、酸化鉄及びカーボンブラック、鉄カルボン酸塩、セシウム水和物、チタニア、ジルコン酸バリウム、オクタン酸セリウム及びオクタン酸ジルコニウム、並びにポルフィリンが挙げられ得る。
【0035】
難燃剤としては、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、及びウォラストナイト等のケイ酸塩、白金及び白金化合物が挙げられ得る。
【0036】
導電性フィラーとしては、カーボンブラック、銀粒子等の金属粒子、任意の好適な導電性金属酸化物フィラー、例えば、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理されている酸化チタン粉末、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理されているチタン酸カリウム粉末、表面がアンチモンで処理されている酸化スズ、及び表面がアルミニウムで処理されている酸化亜鉛が挙げられ得る。
【0037】
熱伝導性フィラーとしては、粉末、フレーク及びコロイド状の銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウム及びチタン、金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al23)及び酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属粒子;タングステンモノカーバイド、炭化ケイ素、及び窒化アルミニウム、窒化ホウ素及びダイアモンド等のセラミックフィラーが挙げられ得る。
【0038】
他の任意の成分としては、ハンドリング剤(handling agents)、酸受容体、及びUV安定化剤が挙げられる。
【0039】
ハンドリング剤は、グリーン強度又は加工性等のシリコーンゴムの未硬化特性を改良するのに用いられ、Dow Corning CorporationからSILASTIC(登録商標)HA−1、HA−2及びHA−3として様々な商品名で販売されている。
【0040】
酸受容体としては、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛等が挙げられ得る。
【0041】
セラミック化剤(ceramifying agents)は灰安定化剤とも呼ばれており、ウォラストナイト等のケイ酸塩が挙げられ得る。
【0042】
使用する前に、得られる組成物を硬化させてエラストマー固体を形成する直前に、最終混合工程において容易に混合することができる少なくとも2つのパートに、上記の最終組成物が維持されていなければならない。組成物は使用前に2つ又は3つのパートに貯蔵されていることが好ましい。
【0043】
好ましい2パート組成物中、これ以降パートAと称される第1のパートは好ましくは、ポリマーと、処理されたフィラーと、触媒と、場合によっては残りの処理剤とを含み、これ以降パートBと称される第2のパートは、架橋剤又は架橋剤とポリマーとを含む。2パート組成物中のパートA及びパートBは、任意の好適な比率で混合され得る。ケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数との比率が、0.5:1〜20:1の範囲、好ましくは1:1〜5:1の範囲で混合されてもよい。典型的に、架橋剤は、パートA及びパートBが好ましくは1:10〜100:1、より好ましくは20:1〜1:5、最も好ましくは10:1〜1:2の比率で混合されるようなレベルでパートB中のポリマーに存在する。
【0044】
任意の添加剤は、得られるエラストマーの特性に悪影響を及ぼさなければ、パートA又はパートB中のいずれに存在していてもよい。
【0045】
好ましい3パート組成物中、パートAは、ポリマーと、触媒と、処理されたフィラーと、場合によっては残りの処理剤とを含み、パートBは、ポリマーと、処理されたフィラーと、場合によっては残りの処理剤とを含み、パートCは、架橋剤と任意のポリマーとを含む。また、任意の添加剤は、パートA、パートB又はパートCの任意の中に存在し得るが、好ましくは阻害剤でなければ、添加剤はパートA及びパートB中に存在するのが最も好ましい。3パート組成物中のパートA及びパートBは、任意の好適な比率、典型的に好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは5:1〜1:5、最も好ましくは2:1〜1:2の範囲の比率で混合され得る。上記の3パート組成物中のパートCは、典型的にパートA及びパートBよりもかなり少なく、A:B:Cの比率は例えば49:49:2の範囲となるような値であるが、典型的に、ケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数との比率を0.5:1〜20:1の範囲、好ましくは1:1〜5:1の範囲とするようなパートC中に存在する架橋剤の量によって決まる。
【0046】
疎水化フィラー(ii)の手段としての処理剤(iii)の使用に関する1つの想定外の問題は、これらの処理されたフィラーを含む組成物の比較的乏しいエージング結果であった。使用直前まで、処理されたフィラー(及び場合によっては処理剤)と別の組成物中に架橋剤(iv)を維持することによってこの問題は本発明において解決されたと本発明者らは考える。
【0047】
本発明者らは、分離することによって、フィラー処理剤(iii)及び架橋剤(iv)が互いに別々に保持されれば、得られる組成物が貯蔵中にかなり安定になることを見出した。処理剤(iii)を使用して親水性フィラー(ii)を前処理し、得られる前処理されたフィラーをその後、架橋剤(iv)を含有しないポリマー(i)組成物中に投入してもよい。次に、架橋剤又はより好ましくはポリマー(i)及び架橋剤(iv)を含む架橋剤組成物と混合する使用直前まで、架橋剤を含まない組成物を貯蔵しておく。「使用直前」とは、架橋剤を含まない組成物及び架橋剤が典型的に、硬化の約24時間前まで、より典型的には硬化の約6時間前まで別々に貯蔵されることを意味する。架橋剤及び処理されたフィラーを別々に貯蔵することは、水及び/又はメタノール及び/又はエタノール等の望ましくない副生成物を留去(drive off)するために、熱を加えることを必要とする加熱混合工程を必要とないことを意味すると理解されたい。
【0048】
代替的には、処理剤(iii)を利用してフィラー(ii)をin−situ処理し、少なくともポリマー(i)と処理されたフィラーとを含むポリマー組成物を生成してもよい。この場合の1つの利点は、親水性フィラーのin−situ処理中に生成される水性又はアルコール系の副生成物、及び処理されたフィラー自体と、架橋剤(iv)との接触を避けることによって、これまで考えられていた、副生成物をストリッピングする必要性が回避されると本発明者らが判断した点である。これは、in−situプロセス中の必要不可欠且つ典型的にコストを決める工程が、触媒被毒(ヘキサアルキルジシラザン)問題、又は貯蔵問題及び硬化問題(少なくとも2つのアルコキシ基及び/又はOH基を含有する、短鎖シロキサン及びシラン)を防止するための副生成物の除去である、当該技術分野においてこれまで述べられたプロセスの教示と異なる。これにより、要される混合時間は、HMDZ処理による5時間〜7時間に比べて典型的に1時間未満にかなり低減され、ストリッピング工程として、アンモニア、水及び/又はアルコール系の副生成物)を除去するストリッピング段階に起因する、短鎖シロキサン及びシラン(どちらもアルコキシ基及び/又はOH基を含有する)のために要される3時間程度のプロセスが省かれる。剪断することに起因して混合プロセス中に発熱するが、混合された反応物の温度は100℃未満に維持されるべきであり、外部熱源は必要ではない。
【0049】
本発明のプロセスに従って、構成成分は典型的に「常温混合」されていること、即ち、混合中の唯一の加熱手段が、混合中の剪断/摩擦に起因することを理解されたい。摩擦熱に起因して達する温度は、使用される混合機に応じて決まり、高剪断混合機では200℃に達する可能性があるが、典型的には、本発明では、プロセスにおいてストリッピング段階が省かれるため、好ましくは本発明の組成物の各構成成分の混合温度が100℃未満、より好ましくは75℃未満である。
【0050】
任意の好適な混合機は、個々の構成成分、及び硬化前に構成成分が共に混合される場合最終混合物を混合するのに使用し得る。選択される混合機は典型的に、別個の構成成分を混合する温度を決定するものである。一般的に、低剪断混合機が、混合中の温度の上昇を最小限にするのに好ましい。
【0051】
ポリマー、処理剤及びフィラーのin−situ混合は、任意の好適な順序で実行され得る。例えば、一部のポリマー及び全ての処理剤をフィラーの添加前に最初に共に混合してもよく、好ましくはこれを混合機に徐々に投入することが好ましい。実質的に均質な混合物が調製されたら、残りのポリマーを投入し得る。代替的には、充填したベース組成物中の全てのポリマー及び処理剤を、親水性フィラーの投入前に事前混合してもよい。
【0052】
所望であれば上記の任意の成分を、マルチパート組成物の任意の構成成分(単数又は複数)に添加してもよい。
【0053】
任意に、本発明の一実施の形態において、ポリマー、処理剤及びフィラーをin−situ「常温混合」してポリマーベース構成成分を形成することによって主成分を調製してもよく、この架橋剤は、単独で、又はフィラーが存在する場合、前処理したフィラー、若しくは残留する副生成物のストリッピングを伴う従来方法を用いてin−situ処理されるフィラーを含有する組成物中に存在する。
【0054】
本発明のさらなる実施の形態によれば、
(a)親水性表面を有する無機フィラーを、少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤で処理する工程と、
(b)工程(a)の生成物を、
少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン(i)、
25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)、及び
ヒドロシリル化触媒(v)、
を含むマルチパート組成物中に混合する工程と、
を含み、工程(a)の反応生成物を含有する各パートが、硬化前に如何なるオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)も含有しない、上記の組成物を製造するプロセスが提供される。
【0055】
本発明のさらなる実施の形態によれば、以下の構成成分:
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)親水性表面を有する無機フィラー、
(iii)少なくとも2つのヒドロキシ基を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤、
(iv)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(v)ヒドロシリル化触媒、
をマルチパート組成物中に混合する工程を含み、フィラー処理剤(iii)、及びこれと構成成分(ii)との反応生成物が貯蔵中オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされること、及びマルチパート組成物中の構成成分が使用直前に共に混合されることを特徴とする、上記の組成物を製造するプロセスが提供される。
【0056】
本発明のさらなる実施の形態によれば、
(a)親水性表面を有する無機フィラーを、少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤で処理する工程と、
(b)工程(a)の生成物を、
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(iii)ヒドロシリル化触媒、
を含むマルチパート組成物中に混合する工程と、
を含み、フィラー処理剤(iii)、及びこれと構成成分(ii)との反応生成物が貯蔵中オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされること、及びマルチパート組成物中の構成成分が使用直前に共に混合されることを特徴とする、上記の組成物を製造するプロセスが提供される。
【0057】
本発明のさらなる実施の形態によれば、以下の構成要素をマルチパート組成物中に混合する工程を含む、上記の組成物を製造するプロセスが提供される。
【0058】
少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンを、親水性表面を有する無機フィラー、及び少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤とを混合して、ポリマーベース組成物を形成すること、
ヒドロシリル化触媒を、ポリマーベース組成物のいくらか又は全てに投入すること、
オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)を、単独で、又は少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンをさらに含有する組成物の形態で準備すること、
使用が求められるまで別々に構成成分を貯蔵すること、及び
構成成分を共に混合して、硬化性エラストマー組成物を形成すること。
【0059】
ここで実施例を用いて本発明を説明する。実施例中、触媒の百分率重量は、25℃で400mPa・sの粘度を有する、2重量%の1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体と98重量%のジメチルビニル末端化ジメチルシロキサンとを含む触媒マスターバッチの量を指す。付与される阻害剤の量は、25℃で350mPa・sの粘度を有する97重量%のジメチルビニルシロキシ末端化ジメチルメチルビニルシロキサン中に、3重量%の1−エチニル−2−シクロヘキサノールを含む阻害剤マスターバッチの量を指す。用いた沈降シリカフィラーは、約11μmの平均粒径及び約220m2/gの比表面積を有するものとした。
【実施例】
【0060】
〔実施例1〕
本実施例において、本発明に従って3パート組成物を準備する。3パート組成物中、パートAは触媒を含有し、パートBは阻害剤を含有し、パートCは架橋剤を含有する。パートA及びパートBはin−situ処理された沈降フィラーを含有し、パートCはフィラーを含んでいない。
【0061】
【表1】

【0062】
ポリマーと処理剤とを5分間最初に混合した後、フィラー及び触媒マスターバッチを添加し、さらに30分間共に混合することによってパートAを準備した。
【0063】
ポリマーと処理剤とを5分間最初に混合した後、フィラー及び阻害剤マスターバッチを添加し、さらに30分間共に混合することによってパートBを準備した。
【0064】
ポリマー及び架橋剤を単に量り分け、それらを均質になるまで共に混合することによってパートCを調製した。
【0065】
パートA:パートB:パートCの比が48:48:2の3つの別個のパートを別々に貯蔵し、Speed Mixer DAC 150 FV(デンタルミキサ)を用いて3秒〜20秒のサイクルで共に混合し、硬化する少し前のサイクルの合間にカップを破壊した。
【0066】
組成物の硬化特性が経時的に貯蔵中に著しく低下しないことを示すために、パートA、パートB及びパートCのサンプルを、以下の表2に示される、調製から所定時間後に共に混合し、トルク、スコーチ、全硬化の50%までの時間(TC−50)、及び全硬化の90%までの時間(TC−90)の値を、ASTM D5289−95(2001年)「ゴム特性の標準試験法−ローターレスタイプ加硫試験機を用いた加硫(Standard Test Method for Rubber Property - vulcanization Using Rotorless Cure Meters)」において規定されるプロセスに従って求めた。Monsanto Rheometer MDR−2000(6分、240F(115.5℃)、弧度(arc:振幅角)1°)を用いて最終組成物を硬化した。
【0067】
【表2】

【0068】
最終組成物を5分間350F(166℃)で硬化し、得られた硬化エラストマーの物理特性を試験し、結果を表3に示した。
【0069】
【表3】

〔比較例〕
【0070】
以下の比較例は、パートBが架橋剤の存在下で処理されたフィラーを含有する2パート組成物を示している。使用された2パート組成物を以下の表4に詳述する。特に指定のない限り、組成物の構成成分は上記の実施例1で用いたものと同じものとした。
【0071】
【表4】

【0072】
フィラーを処理剤で前処理した後、ポリマー、前処理されたフィラー、及び触媒マスターバッチを共に30分間混合することによってパートAを調製した。
【0073】
前処理されたフィラー、阻害剤マスターバッチ、及び架橋剤を共に30分間混合することによってパートBを準備した。
【0074】
パートA:パートBの比が1:1の2つの別個のパートを別々に貯蔵し、Speed Mixer DAC 150 FV(デンタルミキサ)を用いて3秒〜20秒のサイクルで共に混合し、硬化する少し前のサイクルの合間にカップを破壊した。
【0075】
組成物の硬化特性が経時的に貯蔵中に著しく低下することを示すために、パートA及びパートBのサンプルを、調製から所定時間後に共に混合し、以下の表5に示されるトルク、スコーチ、全硬化の50%までの時間(TC−50)、及び全硬化の90%までの時間(TC−90)の値を、ASTM D5289−95(2001年)「ゴム特性の標準試験法−ローターレスタイプ加硫試験機を用いた加硫(Standard Test Method for Rubber Property - vulcanization Using Rotorless Cure Meters)」において規定されるプロセスに従って求めた。Monsanto Rheometer MDR−2000(6分、240F(115.5℃)、弧度1°)を用いて最終組成物を硬化した。
【0076】
【表5】

【0077】
言うまでもなく、上記の教示を鑑みて本発明の多くの変更形態及び変形形態が実行可能であり、添付の特許請求の範囲内に詳細に記載される以外の他の方法で本発明を実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物であって、
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)親水性表面を有する無機フィラー、
(iii)少なくとも2つのヒドロキシ基、又はそれ以外の加水分解性基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤、
(iv)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
(v)ヒドロシリル化触媒、
及び/又は、上記の(ii)と(iii)との反応によって得られる処理されたフィラーを含み、該フィラー処理剤(iii)及び/又は該処理されたフィラーが、硬化前にオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされることを特徴とする、マルチパートヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(i)が、下記式:
aSiO(4-a)/2
(式中、Rは、1個〜10個の炭素原子を有する任意に置換されたアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選択される、置換及び非置換の一価炭化水素基から選択され、且つaの平均値は1.95〜2.05である)の単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フィラー(ii)が、高表面積ヒュームドシリカ;沈降シリカ;炭酸カルシウム;粉砕石英;珪藻土類;硫酸バリウム;酸化鉄;二酸化チタン及びカーボンブラック;タルク;ウォラストナイト;アルミナイト;硫酸カルシウム(無水セッコウ);セッコウ;硫酸カルシウム;炭酸マグネシウム;カオリン;カオリナイト;三水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム(ブルーサイト);グラファイト;炭酸銅、例えばクジャク石;炭酸ニッケル;炭酸バリウム;炭酸ストロンチウム;酸化アルミニウム;カンラン石類、ガーネット類、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩及び層状ケイ酸塩から成る群からのケイ酸塩;の群の1つ又は複数から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記フィラーが沈降シリカを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記処理剤(iii)が、式:
aSiO(4-a)/2
(式中、Rは、1個〜10個の炭素原子を有する任意に置換されたアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選択される、置換及び非置換の一価炭化水素基から選択され、且つaの平均値は1.95〜2.05である)の単位を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化触媒が、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウムをベースとした触媒から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
以下の、ヒドロシリル化触媒阻害剤、レオロジー調整剤、顔料、着色料、粘着防止剤、定着剤、熱安定化剤、発泡剤、難燃剤、導電性フィラー及び/又は熱伝導性フィラー、並びに乾燥剤の1つ又は複数をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
2つのパートにおいて、
パートAが、ポリマー(i)と、処理されたフィラーと、触媒(v)と、場合によっては残りの処理剤とを含み、
パートBが、ポリマーと架橋剤とを含み、この2パート組成物が1:10〜10:1の比率で混合可能である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
3つのパートにおいて、
パートAが、ポリマーと、触媒と、処理されたフィラーと、場合によっては残りの処理剤とを含み、
パートBが、ポリマーと、処理されたフィラーと、場合によっては残りの処理剤とを含み、
且つ、パートCが、架橋剤と任意にポリマーとを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記フィラー処理剤(iii)及び/又は前記処理されたフィラーが、硬化の約24時間前まで、前記オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(a)親水性表面を有する無機フィラーを、少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤で処理する工程と、
(b)工程(a)の生成物を、
少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン(i)、
25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)、及び
ヒドロシリル化触媒(v)、
を含むマルチパート組成物中に混合する工程と、
を含み、工程(a)の反応生成物を含有する各パートが、硬化前に如何なるオルガノハイドロジェンシロキサン(iv)も含有しない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項12】
以下の構成成分:
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)親水性表面を有する無機フィラー、
(iii)少なくとも2つのヒドロキシ基を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤、
(iv)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(v)ヒドロシリル化触媒、
を、マルチパート組成物中に混合する工程を含み、前記フィラー処理剤(iii)及び該フィラー処理剤(iii)と構成成分(ii)との反応生成物が、貯蔵中オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされること、及び前記マルチパート組成物中の構成成分が使用直前に共に混合されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項13】
(a)親水性表面を有する無機フィラーを、少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基、又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤で処理する工程と、
(b)工程(a)の生成物を、
(i)少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)25℃で最大約10Pa・sの粘度を有する、1分子当たり平均して2つより多くのケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(iii)ヒドロシリル化触媒、
を含むマルチパート組成物中に混合する工程と、
を含み、前記フィラー処理剤(iii)及び該フィラー処理剤(iii)と構成成分(ii)との反応生成物が、貯蔵中オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)と別々にパッケージングされること、及び前記マルチパート組成物中の構成成分が使用直前に共に混合されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項14】
以下の構成成分:少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンと;親水性表面を有する無機フィラーと;少なくとも2つのヒドロキシ基、2つのアルコキシ基又はこれらの基の混合を含み且つ2〜50の平均重合度を有するオルガノポリシロキサンを含むフィラー処理剤とを、マルチパート組成物中に混合して、ポリマーベース組成物を形成する工程と、
ヒドロシリル化触媒を、前記ポリマーベース組成物のいずれか又は全てに投入する工程と、
オルガノハイドロジェンシロキサン(iv)を、単独で、又は少なくとも2つの不飽和基を含み且つ25℃で少なくとも1,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンをさらに含有する組成物の形態で準備する工程と、
使用が求められるまで別々に構成成分を貯蔵する工程と、
前記構成成分を共に混合して、硬化性エラストマー組成物を形成する工程と、
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を硬化させることによって得られるシリコーンエラストマー。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化された組成物によって形成される最終物品。

【公表番号】特表2009−541577(P2009−541577A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518204(P2009−518204)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/014738
【国際公開番号】WO2008/002532
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】