説明

シリコーンゴム成形品とフッ素系エラストマーとが一体化されたゴム物品の製造方法

【課題】含フッ素ゴム組成物の硬化物の耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性に優れた部分と、シリコーンゴムの特性を併せ持つ、パーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム組成物の硬化物とシリコーンゴム成形品を接着させて一体成形したゴム物品の製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化型のシリコーンゴム組成物100質量部に対し表面処理されていないヒュームドシリカが0.5〜50質量部配合された基体成形用組成物を加熱硬化させた成形品(a)の表面に、1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有するプライマー組成物(b)を塗布し、更にこの上に、熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物(c)を積層して硬化させ、一体化させることを特徴とするゴム物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性が良好なパーフルオロポリエーテル系フッ素エラストマー組成物の硬化物をシリコーンゴム成形品と一体化してなるゴム物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフッ化ビニリデン系フッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などに優れたエラストマーであるため、自動車及び機械産業を中心に広い分野で工業的に使用されている。
しかしながら、その耐薬品性は不十分であり、ケトン系、低級アルコール系、カルボニル系、有機酸系などの極性溶剤には容易に膨潤してしまい、アミンを含む薬品には劣化してゴム強度や伸びが極端に低下してしまうという欠点を有している。また、低温特性においても、−20℃以下ではゴム弾性を失ってしまい、シール材として使用できなくなってしまうため、寒冷地での使用には限界があるのが一般的である。
【0003】
そこで、それらの欠点を改善するために、パーフルオロ化合物と含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとを主成分とする液状もしくはミラブルタイプの含フッ素硬化性組成物が提案されている(特許文献1〜3:特許第2990646号公報、特許第3573191号公報、特許第3633836号公報参照)。
しかしながら、これらの含フッ素硬化性組成物は、異種の安価なゴムとのブレンドも困難であるためにその成形品は一般的に高価であり、使用用途は限定されてしまう。
【0004】
更に、ゴム物性や加工性に関しては、他種ゴムが優れた特性を有する場合がある。具体的にシリコーンゴムと比較すると、ゴム強度、伸び、圧縮永久歪、ロール作業性、金型離型性などの点ではシリコーンゴムに及ばない。
従って、前述の含フッ素硬化性組成物は、耐溶剤性、耐薬品性が最大の特徴であり、溶剤や薬品が部分的に接触する場合は、接触部分のみを含フッ素硬化性組成物として、それ以外の部分については異種のゴム材質のほうが好ましい場合がある。
【0005】
【特許文献1】特許第2990646号公報
【特許文献2】特許第3573191号公報
【特許文献3】特許第3633836号公報
【特許文献4】特開2005−248148号公報
【特許文献5】特開2005−246950号公報
【特許文献6】特開2005−248149号公報
【特許文献7】特開2005−248150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、含フッ素ゴム組成物の硬化物の耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性に優れた部分と、シリコーンゴムの特性を併せ持つ、パーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム組成物の硬化物とシリコーンゴム成形品を接着させて一体成形したゴム物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーンゴムとパーフルオロポリエーテル系フッ素ゴムとの接着及び一体成形品を得る方法として、特開2005−248148号公報、特開2005−246950号公報、特開2005−248149号公報、特開2005−248150号公報(特許文献4〜7)を提案している。
【0008】
即ち、特開2005−248148号公報(特許文献4)では、未加硫の加熱硬化型のシリコーンゴムと、未加硫の加熱硬化型パーフルオロポリエーテル系フッ素ゴムとを共加硫することによって一体成形品を得る方法が開示されている。
特開2005−246950号公報(特許文献5)では、シリコーンゴム成形物上に加熱硬化型パーフルオロポリエーテル系フッ素ゴムを積層させる方法について開示されている。
特開2005−248149号公報、特開2005−248150号公報(特許文献6,7)は、シリコーンゴム成形体とパーフルオロポリエーテル系フッ素ゴム成形体とを、縮合架橋型の液状シリコーン接着剤で接着させている。
【0009】
しかしながら、更にシリコーンゴムにフッ素系エラストマーを強固に一体化させる方法、特に薄膜加工品を得る場合に有効で寸法安定性にも優れたゴム物品の製造方法が望まれている。
【0010】
本発明者らは、上記要望に応えるため、更なる検討を行った結果、熱硬化型のシリコーンゴム組成物に対し表面処理されていないヒュームドシリカが配合された基体成形用組成物を加熱硬化させた後、その表面に1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有するプライマー組成物を塗布し、更にその上に熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物を積層して硬化させることによって、シリコーンゴム成形品とフッ素系エラストマーとが良好に接着し、一体化したゴム物品が作製できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記に示すシリコーンゴム成形品とフッ素系エラストマーとを一体化したゴム物品の製造方法を提供する。
請求項1:
熱硬化型のシリコーンゴム組成物100質量部に対し表面処理されていないヒュームドシリカが0.5〜50質量部配合された基体成形用組成物を加熱硬化させた成形品(a)の表面に、1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有するプライマー組成物(b)を塗布し、更にこの上に、熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物(c)を積層して硬化させ、一体化させることを特徴とするゴム物品の製造方法。
請求項2:
上記(a)のシリコーンゴム成形品が、下記平均組成式(I)
(R11aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R11は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.95≦a≦2.05を満たす数である。)
で表され、ケイ素原子に結合する全R11中、0.01〜15モル%が一価の脂肪族不飽和炭化水素基であるジオルガノポリシロキサンを含有してなるシリコーンゴム組成物に対し表面処理されていないヒュームドシリカが配合された基体成形用組成物を成形硬化してなるものである請求項1記載の方法。
請求項3:
上記(b)中の1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物が、下記一般式(1)
【化1】

[式中、Aは−CH=CH2、Bは加水分解性シリル基、X、X’は独立に2価の連結基であって、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化2】

(o,m又はp位)
で示される基、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔但し、Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化3】

(o,m又はp位)
で示される基、R2は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基である。pは独立に0又は1、qは独立に0又は1、Rf’はフルオロアルキレン又はフルオロポリエーテル含有基である。]
で表される化合物である請求項1又は2記載の方法。
請求項4:
上記(c)の熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマーと、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物と、白金族触媒とを含む組成物である請求項1,2又は3記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、未硬化のパーフルオロポリエーテル系フッ素ゴム組成物をシリコーンゴム成形品と一体成形したゴム物品を得ることができるので、両ゴム間の界面を一定にすることができて寸法精度にも優れ、工業的な利用価値が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のゴム物品は、熱硬化型のシリコーンゴム組成物100質量部に対し表面処理されていないヒュームドシリカが0.5〜50質量部配合された基体成形用組成物を加熱硬化させた成形品(a)の表面に、1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有するプライマー組成物(b)を塗布し、更にその上に熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物(c)を積層して硬化させ、一体化させるものである。
以下、(a)〜(c)について詳細に説明する。
【0014】
成形品(a)
本発明に係るシリコーンゴム成形品(a)は、通常のシリコーンゴム未硬化組成物に未処理のヒュームドシリカを配合した後、プレスやHAVにより成形加工された硬化物であればよく、架橋系や加工方法は任意に選択できる。
【0015】
ここでいうシリコーンゴムは、「シリコーンハンドブック」(伊藤邦雄編、日刊工業新聞社、1990年8月31日発行)中に詳しく記載されており、9章のシリコーンゴムをはじめ、10章の液状シリコーンゴム、11章の変性シリコーンゴム、15章のフルオロシリコーンゴムが挙げられ、最も好ましく使用されるものはシリコーンゴム(9章)とフルオロシリコーンゴム(15章)であって、本発明のシリコーンゴムはフルオロシリコーンゴムを含む。
【0016】
まず、未処理のヒュームドシリカを配合する前のシリコーンゴム組成物について以下に説明する。シリコーンゴムを与えるシリコーンゴム組成物は、過酸化物を用いて硬化させるパーオキサイド架橋と、Si−H基含有化合物及び白金族金属系触媒を用いて硬化させる付加架橋が一般的である。
【0017】
かかるシリコーンゴム組成物としては、例えば、
(A)下記平均組成式(I)
(R11aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R11は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.95≦a≦2.05を満たす数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであって、該ジオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合する全R11中、0.01〜15モル%が一価の脂肪族不飽和炭化水素基であるもの、
(B)表面処理が施された補強性充填剤、及び
(C)架橋剤
からなるシリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0018】
ここで、(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、分子中に少なくとも2個の一価の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、好ましくは下記平均組成式(I)
(R11aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R11は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.95≦a≦2.05を満たす数である。)
で表され、該ジオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合する全R11中、0.01〜15モル%が一価の脂肪族不飽和炭化水素基である。脂肪族不飽和炭化水素基の含有割合が0.01モル%未満の場合、十分な引裂強さを有する硬化物が得られない場合があり、また、15モル%を超えると、得られる硬化物が脆くなり、十分な引裂強さが得られない等の不都合がある場合がある。
【0019】
ここで、一価の脂肪族不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8のアルケニル基が挙げられ、その中でも好ましいものは、ビニル基である。また、上記脂肪族不飽和炭化水素基以外のR11としては、好ましくは炭素原子数1〜10、更に好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した、例えば、トリフルオロプロピル基等の基などが例示され、これらの中で好ましいものは、メチル基である。また、(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合する水酸基を有していてもよい。
【0020】
上記平均組成式(I)において、aは1.95≦a≦2.05を満たす数である。aが1.95未満の場合、安定な直鎖状ポリマーが得られない場合があり、ゲル化しやすく、またaが2.05を超えると高分子量のポリマーになり難い場合がある。
【0021】
また、(A)成分のジオルガノポリシロキサンの重合度は、得られる硬化物の機械的強度を十分なものとするために、1,000以上であることが好ましく、更に2,000以上であることが好ましく、特に3,000〜10,000であることが好ましい。
【0022】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記一般式(II):
【化4】

(式中、bは1以上の整数、cは1以上の整数であり、b+cは、好ましくは1,000以上の整数であり、更に好ましくは2,000以上の整数であり、特に好ましくは3,000〜10,000の整数である。但し、b及びcは、ケイ素原子に結合する全有機基中の−CH=CH2基の割合が0.01〜15モル%となるような数値である。複数のR12は同一でも異なってもよく、メチル基、ビニル基又は水酸基である。)
で表される化合物;下記一般式(III):
【0023】
【化5】

(式中、dは1以上の整数、eは1以上の整数、fは1以上の整数であり、d+e+fは、好ましくは1,000以上の整数であり、更に好ましくは2,000以上の整数であり、特に好ましくは3,000〜10,000の整数である。但し、d、e及びfは、ケイ素原子に結合する全有機基中の−CH=CH2基の割合が0.01〜15モル%となるような数値である。複数のR13は同一でも異なってもよく、メチル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基又は水酸基である。)
で表される化合物;下記一般式(IV):
【0024】
【化6】

(式中、dは1以上の整数、eは1以上の整数、fは1以上の整数であり、d+e+fは、好ましくは1,000以上の整数であり、更に好ましくは2,000以上の整数であり、特に好ましくは3,000〜10,000の整数である。但し、d、e及びfは、ケイ素原子に結合する全有機基中の−CH=CH2基の割合が0.01〜15モル%となるような数値である。複数のR14は同一でも異なってもよく、メチル基、ビニル基、フェニル基又は水酸基である。)
で表される化合物等が例示され、これらの中でも上記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0025】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、公知の方法により製造することができ、例えば、オルガノハロシランの1種又は2種以上を(共)加水分解することにより得られた環状ポリシロキサン(シロキサンの3又は4量体)を塩基性触媒又は酸性触媒存在下で開環重合することにより製造される。
【0026】
(B)成分の補強性充填剤は、得られる硬化物に機械的強度を付与するものであり、これは予め表面処理されて疎水化されたものであり、例えば、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、石英粉末、けいそう土、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック等が挙げられる。その中でも、補強性を十分なものとするためにシリカを使用することが好ましく、また、通常、BET法による比表面積が10m2/g以上、好ましくは100m2/g以上のものが使用される。特に好ましくは、比表面積100〜400m2/gのヒュームドシリカ及び沈降シリカが使用される。また、(B)成分の補強性充填剤は、得られる硬化物に機械的強度を付与するのみならず、その種類に応じ、電気伝導性、熱伝導性等をも付与する。
【0027】
(B)成分の補強性充填剤を処理する表面処理剤としては、例えば、(CH33SiCl、(CH32SiCl2、(CH3)SiCl3等のクロロシラン;CH2=CHSi(OCH33、(CH32Si(OCH32、CH3Si(OCH33等のアルコキシシラン;(CH33SiNHSi(CH33等のオルガノシラザン;下記一般式:
【化7】

(式中、g及びhは、g>0、h>1、1<g+h<100を満たす数である。)
で表されるシリコーンオイル等の表面処理剤が挙げられ、これら表面処理剤を用いた表面処理は常法によって行うことができる。この場合、表面処理剤の加水分解性を調整、促進するために少量の水を添加してもよい。
【0028】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常、5〜200質量部の範囲であり、好ましくは10〜100質量部の範囲である。(B)成分の配合量が少なすぎると、加工性が不十分で、十分な補強効果が得られない場合があり、多すぎると作業性、加工時の型流れ性等が低下したり、シリコーンゴムの機械的強度が却って低下する場合がある。
【0029】
(C)成分の架橋剤は、本発明のシリコーンゴム組成物を硬化させ得るものであればよい。(C)成分としては、硬化方法に応じて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒の組み合わせを用いたり、有機過酸化物を用いたりすることができる。
【0030】
(C)成分として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせを使用する場合のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、一分子中に少なくとも2個のSi−H基を有するものを使用し、その構造は、直鎖状、環状又は分岐状のいずれの構造であってもよい。また、Si−H基は、分子鎖の末端でも分子鎖の途中にあってもよい。更に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、重合度300以下のものを使用するのが好ましい。
【0031】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が停止されたジオルガノポリシロキサン;ジメチルシロキシ単位、メチルハイドロジェンシロキシ単位及び末端トリメチルシロキシ単位からなる共重合体;ジメチルハイドロジェンシロキシ単位と、SiO2単位とからなる低粘度流体;1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン;1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン;1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、それに含まれるSi−H基が(A)成分のジオルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和炭化水素基1モル当たり、通常、0.5〜3.0モル、好ましくは1.0〜2.0モルとなる量を使用するのが好ましい。
【0032】
また、白金族金属系触媒は、(A)成分のジオルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和炭化水素基と前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi−H基とのヒドロシリル化反応の触媒として使用するものであり、(A)成分のオルガノポリシロキサンと該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、通常、0.1〜2,000ppm、好ましくは1〜1,000ppm(白金族金属として)の範囲で使用される。かかる白金族金属系触媒としては、例えば、米国特許第2,970,150号明細書に記載されている微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載されている塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号明細書及び米国特許第3,159,662号明細書に記載されている白金−炭化水素錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載されている塩化白金酸−オレフィン錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書、米国特許第3,814,780号明細書に記載されている白金−ビニルシロキサン錯体等の白金系触媒などを使用することができる。
【0033】
(C)成分として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせを使用して、本発明のシリコーンゴム組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合には、室温における保存安定性が良好で、かつ適度なポットライフを保持するために、メチルビニルシクロテトラシロキサンや、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール類などの反応制御剤を添加することも可能である。ヒドロシリル化反応による硬化は、60〜400℃の温度で1分〜5時間程度加熱することにより行われる。
【0034】
(C)成分として有機過酸化物を使用する場合、該有機過酸化物は、(A)成分のジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、通常、0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1質量部を配合する。
有機過酸化物としては、通常、有機過酸化物硬化型シリコーンゴムを硬化させるために使用されているものを特に制約なく使用することができ、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
(C)成分として有機過酸化物を使用して本発明の組成物を硬化する場合、通常、100〜400℃の温度で1分〜5時間程度加熱すればよい。
【0036】
また、(C)成分としては、上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせと、有機過酸化物とを併用することもできる。
【0037】
本発明の成形品(a)を得るための基体成形用組成物は、上記各成分を混合してなるシリコーンゴム組成物に対し未処理のヒュームドシリカが配合されたものである。ここで、未処理のヒュームドシリカは、BET法による比表面積が10m2/g以上のものが好適に使用され、より好ましくは100m2/g以上のものが使用される。特に好ましくは、比表面積100〜400m2/gである。
【0038】
未処理のヒュームドシリカの配合量は、上記(A),(B),(C)成分からなるシリコーンゴム組成物100質量部に対して0.5〜50質量部であり、好ましくは1.0〜20質量部、より好ましくは1.0〜10質量部がよい。配合量が少なすぎると、十分な接着効果が得られない。配合量が多すぎると、硬化後のシリコーンゴム成形品の機械的特性が低下する懸念がある。
【0039】
上記未処理のヒュームドシリカの配合は、上記シリコーンゴム組成物を調製した後、これに未処理のヒュームドシリカを添加、混合するようにしてもよく、或いは上記(A),(B)成分の混合時又は(A),(B),(C)成分の混合時にこの未処理のヒュームドシリカを添加、混合するようにしてもよい。この場合、シリコーンゴム組成物としては市販品が使用できる(例えば、信越化学工業(株)製 KE951、FE271、KE971、KE1950等)が、このような市販品等の予め製造されたシリコーンゴム組成物に対する上記未処理のヒュームドシリカの配合は、ミラブルタイプの組成物であれば、2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機を使用すればよく、液状タイプの組成物であれば、プラネタリーミキサー、品川ミキサーなどの混練機を使用すればよい。
また、この基体成形用組成物の加熱硬化条件は、上述した通りである。
【0040】
(b)成分
(b)成分のプライマー組成物は、1分子内に1個以上、特に1〜3個のアルケニル基と、1個以上、特に1〜3個の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有してなるものである。
【0041】
1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物としては、下記一般式(1)で示されるものが好ましい。
【化8】

[式中、Aは−CH=CH2、Bは加水分解性シリル基、X、X’は独立に2価の連結基であって、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化9】

(o,m又はp位)
で示される基、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔但し、Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化10】

(o,m又はp位)
で示される基、R2は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基である。pは独立に0又は1、qは独立に0又は1、Rf’はフルオロアルキレン又はフルオロポリエーテル含有基である。]
【0042】
上記式中、Bは加水分解性シリル基であり、具体的には、SiR'xR''3-xで示されるものが挙げられる。ここで、R''は加水分解性基であり、塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられ、xは0,1又は2,特に0又は1である。
【0043】
Rf’はフルオロアルキレン又はフルオロポリエーテル含有基であり、フルオロアルキレンの場合の代表例は下記式
−Cr2r
[rは2〜20の整数]
で示されるものが挙げられる。
【0044】
フルオロポリエーテルの場合は下記一般式
−(Rf−O)s
(式中、Rfは炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキレン基であり、sは1〜500、好ましくは2〜400、より好ましくは10〜200の整数である。)
で示されるものが挙げられる。
【0045】
前記−(Rf−O)−で示される繰り返し単位としては、例えば、
−CF2O−、
−CF2CF2O−、
−CF2CF2CF2O−、
−CF(CF3)CF2O−、
−CF2CF2CF2CF2O−、
−CF2CF2CF2CF2CF2CF2O−、
−C(CF32O−
等が挙げられ、中でも好ましいのは、
−CF2O−、
−CF2CF2O−、
−CF2CF2CF2O−、及び
−CF(CF3)CF2O−
である。
前記パーフルオロアルキルエーテル構造は、これらの−(Rf−O)−で示される繰り返し単位の1種を単独で又は2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。
【0046】
Rf’の具体例としては、下記式(1’)
【化11】

[kは2〜6の整数、m及びnはそれぞれ0〜200、好ましくは5〜100の整数である。]
で表される分子量400〜100,000、好ましくは1,000〜50,000のフルオロポリエーテル含有基が挙げられる。
【0047】
上記一般式(1)で表されるフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

(式中、k、m及びnはそれぞれ上記式(1’)で定義したk、m、nと同じ意味を示す。)
これらのフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
(b)成分のプライマー組成物は、1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を必須成分とするが、その他必要に応じて、加水分解反応を促進させる触媒や他の接着添加剤、溶剤、充填材などを配合してもよい。
【0051】
加水分解反応を促進させる触媒としては、有機スズ化合物や有機チタン酸エステル化合物などが挙げられる。
有機スズ化合物としては、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジステアレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジエチルスズジオレエート等を挙げることができる。
【0052】
有機チタン酸エステル類としては、有機チタン酸エステル、チタンのキレート化合物、チタンのケイ酸エステルによるキレート化合物、チタネート系カップリング剤、これらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。有機チタン酸エステル類の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、テトラメチルチタネート、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン及びこれらの加水分解縮合物等を挙げることができる。
【0053】
その他の接着添加剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0054】
希釈溶剤は、主にプライマー塗布作業に適した粘度に調節するために用いることができる。このような溶剤は、前記(b)成分からなるプライマー組成物を溶解あるいは分散するものであればよく、その種類は特に限定されない。かかる溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒等の炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤、トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、HCFC−225等のフッ素系溶剤などが例示される。これらの溶剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
また、必要に応じて各種充填剤を用いてもよい。これら充填剤の具体例としては、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、酸化チタン、酸化セリウム、炭酸マグネシウム、石英粉末、アルミニウム微粉末、酸化鉄、フリント粉末、亜鉛末などが挙げられる。これらの充填剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
以上の他に、プライマー組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、老化防止剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、貯蔵安定性向上剤、接着性付与剤、各種顔料、染料等を挙げることができる。
【0057】
このようなプライマー組成物としては、例えば、特開2004−331704号公報に記載の組成物が挙げられる。
【0058】
(c)成分
(c)成分の熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物としては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマーを主成分とし、これに加え、1分子中に少なくとも2つ、好ましくは3つ以上のSiH基を有する化合物と、白金族触媒とを用いて、ヒドロシリル化反応によって加熱硬化させるエラストマー組成物が挙げられる。かかる組成物は、特許第2990646号公報、特許第3413713号公報、特許第3239717号公報、特許第3077536号公報等により詳しく記載されているものであり、商品名SIFELシリーズ(信越化学工業(株)製)として一般的に入手可能なものである。
【0059】
より具体的に説明すると、熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物は、例えば、
(D)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に二価のパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマー、
(E)補強性フィラー、及び
(F)分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤を前記(D)成分を硬化させるのに十分な量
を含有してなる架橋性フッ素ゴム組成物であることが好ましい。
【0060】
上記(D)成分において、アルケニル基含有パーフルオロ化合物としては、下記一般式(2)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。
【0061】
【化14】

[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR−CO−〔但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化15】

(o,m又はp位)
で示される基、Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR−Y’−〔但し、Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化16】

(o,m又はp位)
で示される基、Rは上記と同じ〕で表される基である。wは独立に0又は1、zは2〜6の整数、x及びyはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、好ましくはx,yはそれぞれ独立に2〜180の整数であり、特に好ましくはx,yはそれぞれ独立に10〜150の整数である。]
【0062】
(E)成分の補強性フィラーは、塵埃が付着した後の再生過程での耐久性に関連する重要な成分である。フィラーとしては、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、粉砕シリカ、炭酸カルシウム、珪藻土、カーボンブラック、各種金属酸化物粉末等を挙げることができ、また、これらを各種表面処理剤で処理したものであってもよい。これらの中で、機械的強度の向上の点から、特にヒュームドシリカが好ましく、更に分散性の向上の点から、ヒュームドシリカをシラン系表面処理剤で処理したものが好ましい。
【0063】
(E)成分の補強性フィラーの添加量としては、(D)成分100質量部に対して1〜200質量部が好ましい。特に、機械的特性の安定の点から5〜100質量部が好ましい。補強性フィラーの添加量が少なすぎると十分な強度が得られない場合があり、多すぎると粘度が増大し、作業性や加工性に支障が出る場合がある。
【0064】
(F)成分は、(D)成分のポリマーを硬化させる架橋剤であり、分子中にヒドロシリル基を有する付加反応可能な架橋剤である。(F)成分としては、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物であることが好ましく、特に(D)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性の観点から、1分子中に1個以上のフッ素含有一価炭化水素基を有するものがより好ましい。
【0065】
更に、本発明においては、(D)成分中のアルケニル基とヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒を配合することができ、このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属の化合物であり、高価格であることから、比較的入手し易い白金又は白金化合物等の白金族金属化合物がよく用いられる。この硬化触媒については、(a)成分の説明の中で記載したものと同様のものが使用できる。
【0066】
(F)成分の添加量は、(D)成分のポリマーを硬化させるのに十分な量であればよく、通常、(F)成分中のヒドロシリル基/(D)成分中のアルケニル基のモル比率が0.5〜2.0の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.8〜1.5となる範囲であり、白金又は白金化合物等の白金族金属化合物が白金族金属(質量換算)として(D)成分に対して0.1〜1,000ppm、特に1〜500ppmであることが好ましい。
【0067】
更に、(c)成分には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分以外の各種添加剤を適宜配合することができる。
(c)成分の熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物は、上記各成分を常法に準じて混合することにより調製することができる。
【0068】
一体化したゴム物品の作製方法
本発明のゴム物品の作製方法としては、まず成形品(a)を得るため、基体成形用組成物を所定の方法で加熱硬化させる。一般には、金型とプレスを用いて100〜200℃、特に120〜180℃で3〜20分間、特に5〜15分間のプレスキュアーを行い、脱型し、その後オーブンなどで150〜200℃で0.5〜4時間のアフターキュアーを行うが、接着性及び接着耐久性の観点から、プレスキュアーのみで留めておき、一体化した後にアフターキュアーを行うことが望ましい。
【0069】
次に、(a)のシリコーンゴム硬化物の表面に(b)成分のプライマー組成物を塗布する。塗布方法は、通常採用されているコーティング法、例えば、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法などを用いて行えばよい。プライマー塗布後、通常常温にて1〜30分、好ましくは2〜15分風乾させる。風乾のみで次工程に進んでもよいが、プライマーとシリコーンゴムの接着性を確実なものとするために、焼付け処理を施してもよい。焼付け処理は、50〜180℃(好ましくは80〜150℃)で1〜60分(好ましくは5〜30分)加熱処理を行う。
ここで、(b)成分のプライマー組成物の塗布量は、プライマー溶液の濃度やシリコーンゴムの表面状態によって異なってくるが、塗布後の状態で0.01〜5.0g/m2、好ましくは0.1〜2.0g/m2がよい。
【0070】
最後に、その上に熱硬化型のフッ素系エラストマー組成物を所定の条件で成形、加熱硬化させることによって、シリコーンゴムと接着し、一体となった成形物が得られる。
ここで、フッ素系エラストマー組成物の成形方法としては、金型とプレスを使用する一般的な方法で成形すればよい。
また、この場合のフッ素系エラストマー組成物の加熱硬化条件としては、100〜180℃、好ましくは120〜150℃のプレスキュアーを行い、その後オーブンなどで150〜200℃で0.5〜4時間のアフターキュアーを行えばよい。
【0071】
上記のようにして得られたゴム物品は、種々の用途に利用することができる。即ち、耐油性が要求される自動車用ゴム部品、具体的にはフューエル・レギュレーター用ダイヤフラム、パルセーションダンパ用ダイヤフラム、オイルプレッシャースイッチ用ダイヤフラム、EGR用ダイヤフラムなどのダイヤフラム類、キャニスタ用バルブ、パワーコントロール用バルブなどのバルブ類、クイックコネクタ用O−リング、インジェクター用O−リングなどのO−リング類、あるいは、オイルシール、シリンダヘッド用ガスケットなどのシール材など、化学プラント用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、O−リング類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケットなどのシール材など、インクジェットプリンタ用ゴム部品、半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、O−リング、パッキン、ガスケットなどのシール材など、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブなど、分析、理化学機器用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(O−リング、パッキンなど)、医療機器用ゴム部品、具体的にはポンプ、バルブ、ジョイントなど、また、テント膜材料、シーラント、成型部品、押し出し部品、被覆材、複写機ロール材料、電気用防湿コーティング材、センサー用ポッティング材、燃料電池用シール材、積層ゴム布などに有用である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0073】
実施例及び比較例で用いられる組成物
シリコーンゴム硬化物(A);KE951(信越化学工業(株)製、パーオキサイド架橋タイプ標準配合組成物)100質量部に、ヒュームドシリカ「アエロジルA−300」(日本アエロジル(株)製、表面未処理品、BET比表面積300m2/g)2質量部を2本ロールで添加配合し、10cm×2.5cm×2mm厚のシート状の型を用いて165℃,10分のプレスキュアーで硬化させたもの。
【0074】
シリコーンゴム硬化物(B);KE951(信越化学工業(株)製、ヒドロシリル化付加架橋タイプ標準配合組成物)100質量部に、ヒュームドシリカ「アエロジルA−300」(日本アエロジル(株)製、表面未処理品、BET比表面積300m2/g)2質量部を2本ロールで添加配合し、10cm×2.5cm×2mm厚のシート状の型を用いて150℃,10分のプレスキュアーで硬化させたもの。
【0075】
フロロシリコーンゴム硬化物(C);FE271(信越化学工業(株)製、パーオキサイド架橋タイプ標準配合組成物)100質量部に、ヒュームドシリカ「アエロジルA−300」(日本アエロジル(株)製、表面未処理品、BET比表面積300m2/g)2質量部を2本ロールで添加配合し、10cm×2.5cm×2mm厚のシート状の型を用いて165℃,10分のプレスキュアーで硬化させたもの。
【0076】
シリコーンゴム硬化物(D);KE951(信越化学工業(株)製、パーオキサイド架橋タイプ標準配合組成物)をそのまま10cm×2.5cm×2mm厚のシート状の型を用いて165℃,10分のプレスキュアーで硬化させたもの。
【0077】
フロロシリコーンゴム硬化物(E);FE271(信越化学工業(株)製、パーオキサイド架橋タイプ標準配合組成物)をそのまま10cm×2.5cm×2mm厚のシート状の型を用いて165℃,10分のプレスキュアーで硬化させたもの。
【0078】
プライマー組成物(F);下記製造例1の組成物
【0079】
パーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物(G);SIFEL3155(信越化学工業(株)製、ヒドロシリル化付加架橋タイプ標準配合組成物)
【0080】
[製造例1](プライマー組成物の製造)
撹拌機付き容器に下記式(3)
【化17】


(但し、m+nの平均は13)
で表されるフルオロポリエーテル化合物10質量部、テトラノルマルブトキシチタネート2.0質量部、テトラエトキシシラン1.0質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.5質量部、ジブチルスズジメトキシド0.1質量部、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン50質量部、メチルイソブチルケトン30質量部を投入し、均一溶解してプライマー組成物を調製した。
【0081】
評価用一体成形品の製造方法
シリコーンゴムシート(A、B、C、D又はE;10cm×2.5cm×2mm厚)にプライマー組成物Fを塗布する。このとき、塗布する部分は、シリコーンゴムシートの半分(5cm×2.5cm)だけにする。
プライマー塗布後、室温で風乾10分、その後120℃で10分加熱処理する。
プライマー塗布したシートを10cm×2.5cm×4mm厚の金型に仕込む。
パーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物Gを金型に仕込み、ゴム用プレスで150℃,10分の条件で架橋硬化させた後、200℃,4時間のオーブンキュアーを行う。これにより、図1に示すような半分だけ接着したテストピースが出来上がる。
なお、図1中、1はパーフルオロポリエーテル系ゴム、2はシリコーンゴム、3はプライマーである。
【0082】
界面接着性(一体成形界面)評価方法
(1)剥離状態:図1に示すテストピースにおいて、右半分の接着していない部分のパーフルオロポリエーテル系ゴムとシリコーンゴムをそれぞれ引っ張りながら引き剥がしたときの界面のゴムはがれ具合を評価した。
○:ゴムが凝集破壊して材料界面は安定
×:界面の凝集破壊が皆無な状態で剥離
【0083】
(2)溶剤膨潤:トルエン(対シリコーン)又はメチルエチルケトン(対フルオロシリコーン)に24時間浸漬させて一方のゴム材質のみを膨潤させたときの状態を評価した。
○:一方のゴムが膨潤しても剥離しない安定なゴム界面状態
×:24時間以内に剥離
【0084】
[実施例1〜3]
表1に示す組み合わせでシリコーンゴムとパーフルオロポリエーテル系ゴムの一体成形品を評価した。結果を表1に示す。
一体成形品の界面は安定であり、良好に接着している。
【0085】
[比較例1,2]
表1に示す組み合わせでシリコーンゴムとパーフルオロポリエーテル系ゴムの一体成形品を評価した。結果を表1に示す。
シリコーンゴム側に未処理のヒュームドシリカを添加していないので、界面の接着性に劣る。
【0086】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施例で作製した評価用一体成形品の概略断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 パーフルオロポリエーテル系ゴム
2 シリコーンゴム
3 プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化型のシリコーンゴム組成物100質量部に対し表面処理されていないヒュームドシリカが0.5〜50質量部配合された基体成形用組成物を加熱硬化させた成形品(a)の表面に、1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物を含有するプライマー組成物(b)を塗布し、更にこの上に、熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物(c)を積層して硬化させ、一体化させることを特徴とするゴム物品の製造方法。
【請求項2】
上記(a)のシリコーンゴム成形品が、下記平均組成式(I)
(R11aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R11は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.95≦a≦2.05を満たす数である。)
で表され、ケイ素原子に結合する全R11中、0.01〜15モル%が一価の脂肪族不飽和炭化水素基であるジオルガノポリシロキサンを含有してなるシリコーンゴム組成物に対し表面処理されていないヒュームドシリカが配合された基体成形用組成物を成形硬化してなるものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記(b)中の1分子内に1個以上のアルケニル基と1個以上の加水分解性シリル基を有するフルオロアルキレン化合物又はフルオロポリエーテル化合物が、下記一般式(1)
【化1】

[式中、Aは−CH=CH2、Bは加水分解性シリル基、X、X’は独立に2価の連結基であって、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔但し、Yは−CH2−又は下記構造式(Z)
【化2】

(o,m又はp位)
で示される基、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔但し、Y’は−CH2−又は下記構造式(Z’)
【化3】

(o,m又はp位)
で示される基、R2は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基〕で表される基である。pは独立に0又は1、qは独立に0又は1、Rf’はフルオロアルキレン又はフルオロポリエーテル含有基である。]
で表される化合物である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
上記(c)の熱硬化型のパーフルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマーと、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物と、白金族触媒とを含む組成物である請求項1,2又は3記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−230084(P2007−230084A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54797(P2006−54797)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】