説明

シンクとカウンターの接合方法

【課題】シンクとカウンターの接合時間を短縮でき、生産サイクルを高めることが可能なシンクとカウンターの接合方法を提供する。
【解決手段】シアノアクリレート系接着剤9を用いて、シンク4の周壁部6上端縁に形成されたフランジ部7をカウンター1の開口部2周縁に接着接合する。その接着接合にあたっては、まず、シンク4のフランジ部7またはカウンター1の開口部2周縁にシアノアクリレート系接着剤9、他方に硬化促進剤10を塗布する。次いでシンク4のフランジ部7をカウンター1の開口部2周縁に当接させ、シアノアクリレート系接着剤9と硬化促進剤10の塗布面を接触させてシンク4とカウンター1を接着接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクとカウンターの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厨房装置の天板を形成するカウンターは人造大理石等の樹脂で形成されているものが用いられており、カウンターに取り付けられるシンクはステンレス製や樹脂製のものが用いられている。カウンターにはシンクを取り付ける部位に開口部が形成されており、シンクの周壁部上端縁には外側に突出して形成されたフランジ部が周方向に形成されている。シンクとカウンターの接合には接着剤が用いられることが知られており(特許文献1、2)、カウンターの開口部周縁にシンクのフランジ部を接着剤で固着させている。
【0003】
シンクとカンターの接合方法は、具体的には、図5に示すような方法で行われる。すなわち、カウンター1の裏面が上になるように配置し、カウンター1の開口部周縁の裏面にシアノアクリレート系接着剤9を塗布する。次いでシンク4のフランジ部7をカウンター1の開口部周縁に接触させ、シアノアクリレート系接着剤9を硬化させてシンク4とカウンター1を接合する。その際、カウンター1の開口部とシンク4とを一致させるためにカウンター1とシンク4を貼り合わせた状態で両者を左右前後にずらして位置決めを行う場合がある。このため、シアノアクリレート系接着剤9は、貼り合わせた直後にすぐに硬化するタイプでなく、硬化完了まで時間的に余裕のあるタイプが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−79382号公報
【特許文献2】特開2008−110013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のシアノアクリレート系接着剤を用いた場合、シンクとカウンターの位置決め後、硬化完了までシンクとカウンターが動かないように保持しなければならず、生産性がよいとはいえない。
【0006】
本発明は以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、シンクとカウンターの接合時間を短縮でき、生産サイクルを高めることが可能なシンクとカウンターの接合方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シアノアクリレート系接着剤を用いて、シンクの周壁部上端縁に形成されたフランジ部をカウンターの開口部周縁に接着接合するシンクとカウンターの接合方法である。シンクとカウンターの接合にあたっては、まず、シンクのフランジ部またはカウンターの開口部周縁にシアノアクリレート系接着剤、他方にシアノアクリレート系接着剤の硬化を促進させる硬化促進剤を塗布する。次いでシンクのフランジ部をカウンターの開口部周縁に当接させ、シアノアクリレート系接着剤とその硬化促進剤の塗布面を接触させてシンクとカウンターを接着接合する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シアノアクリレート系接着剤とその硬化促進剤の塗布面を接触させるため、シンクをカウンターに当接させ保持した後は、接触面全領域において接着剤の硬化反応が効率よく進行して早期に硬化が完了する。このため、シンクとカウンターの接合時間を短縮でき、生産サイクルを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシンクとカウンターの接合方法の一例を示す概略説明図である。
【図2】(a)はカウンターにシンクを取り付けた状態を模式的に示した要部平面図であり、(b)は要部底面図である。
【図3】図2のA−A線矢視部分拡大断面図である。
【図4】位置決め後に硬化促進剤をスプレー塗布するシンクとカウンターの接合方法を示す概略説明図である。
【図5】従来のシンクとカウンターの接合方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明のシンクとカウンターの接合方法の一例を示す概略説明図である。図2(a)は、カウンターにシンクを取り付けた状態を模式的に示した要部平面図であり、図2(b)は要部底面図である。図3は、図2のA−A線矢視部分拡大断面図である。
【0011】
本実施形態では、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂を主成分とする人造大理石からなる樹脂製のカウンター1が用いられる。カウンター1は、平面視で略矩形状で平板状に形成されており、内側部分には開口部2が形成され、カウンター1の裏面側に開口部2と一致させてシンク4が接合される。カウンター1の裏面には、開口部2の周縁のやや外方に前後、左右に開口部2を囲むように桟材3が配置されている。桟材3は、角柱状の木質材であり、接着剤等でカウンター1の裏面に取り付けられている。
【0012】
シンク4は、耐熱性、機械的特性等に優れたポリアミド系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の樹脂製のものが用いられるが、ステンレス製であってもよい。シンク4は、底面部5と周壁部6とから構成され、上方に開口しており、その開口の形状はカウンター1の開口部2と略一致するように略同形状とされている。周壁部6の上端縁には、外方に向けて略水平に延びるフランジ部7が周方向に形成されている。シンク4のフランジ部7は、上面が平坦に形成されており、桟材3で囲まれた区画の内側、カウンター1の開口部2周縁の裏面に配置される。
【0013】
シンク4がカウンター1の裏面に取り付けられた状態においては、シンク4のフランジ部7とカウンター1裏面との間に接着剤の硬化層8が形成され、この接着剤の硬化層8を介してシンク4とカウンター1が面接触して一体に接合されている。
【0014】
接着剤は、シアノアクリレートを主成分とするシアノアクリレート系接着剤が用いられる。シアノアクリレート系接着剤は、空気中の微量水分により速やかにアニオン重合して硬化反応を開始するが、カウンター1やシンク4のように水分を透過しない材料の場合、接着剤のみでは硬化に時間がかかる。そこで、シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進させる硬化促進剤が用いられる。硬化促進剤の具体例としては、例えば、水、アルカリ土類金属化合物、アミン系化合物が挙げられる。安全性や硬化促進性を考慮すると、水やアミン系化合物が好適である。アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等が挙げられる。以上のシアノアクリレート系接着剤や硬化促進剤は、市販品を使用することができる。
【0015】
以下、図1を参照してシンクとカウンターの接合方法の一例を説明する。
【0016】
まず、開口部2が形成されたカウンター1の裏面を上にして配置し、開口部2周縁のやや外方に開口部2を囲むように前後、左右に桟材3を配置し、接着剤等で固着させる。次いで、桟材3の内側で、カウンター1の開口部2周縁の裏面にシアノアクリレート系接着剤9を塗布する。一方、シンク4のフランジ部7の上面に硬化促進剤10を塗布する。シアノアクリレート系接着剤や硬化促進剤の塗布は、例えば、各薬剤が充填されたシリンジと、シリンジ内を加圧することによって各薬剤を吐出するノズルとを備えた接着剤塗布装置が使用される。なお、接着剤塗布装置はこれに限定されるものではなく、シンクやカウンターに塗布できれば接着剤塗布装置の形態、塗布方式等、特に問わない。例えば、接着面にロールコーターやスプレー塗布によって塗布する方法であってもよい。
【0017】
次いで、シンク4のフランジ部7をカウンター1の開口部2周縁に当接させ、シアノアクリレート系接着剤9の塗布面と硬化促進剤10の塗布面とを接触させる。そして両者を接触させたまま、カウンター1の開口部2とシンク4の開口が一致するようにシンク4またはカウンター1を左右前後にずらして位置決めを行う。シアノアクリレート系接着剤9の塗布面と硬化促進剤10の塗布面が接触するとシアノアクリレート系接着剤9の硬化反応が促進するが、その硬化反応が十分に進行する前に位置決めを行う。位置決め後はシンク4及びカウンター1が動かないように保持、固定して、シアノアクリレート系接着剤9を硬化させてシンク4とカウンター1とを接着接合する。
【0018】
ところで、位置決めが終了するまでシアノアクリレート系接着剤9の硬化反応を進行させないようにするために、硬化促進剤10の塗布を位置決め後に行うことが考えられる。例えば、図4に示すように、カウンター1の開口部周縁の裏面にシアノアクリレート系接着剤9を塗布してシンク4とカウンター1を貼り合わせ、位置決め後、貼り合わせ部位に硬化促進剤10を外方からスプレー塗布するというものである。この場合、貼り合わせ面の周縁から硬化促進剤10が浸透する。シアノアクリレート系接着剤9は浸透した硬化促進剤10と接触して硬化が促進する。しかしながら、貼り合わせ面の内側部分には硬化促進剤10が十分に浸透しないため、硬化時間が長くなり、シンク4とカウンター1の接合に時間がかかる。
【0019】
そこで本実施形態では、シアノアクリレート系接着剤9と硬化促進剤10をそれぞれ、あらかじめカウンター1またはシンク4に塗布するようにしている。これによって、カウンター1のシアノアクリレート系接着剤9の塗布面とシンク4の硬化促進剤10の塗布面とが面接触してその接触面全領域において硬化反応が進行し、位置決め後、効率よく硬化が完了するので、シンク4とカウンター1の接合時間が短縮される。なお、シアノアクリレート系接着剤9の塗布面と硬化促進剤10の塗布面とを面接触させる方法のため、硬化促進剤10がシアノアクリレート系接着剤9全体に効力を発揮するのには、多少の時間がかかる。そのため、カウンター1とシンク4を貼り合わせた状態で両者を左右前後にずらして位置決めを行う程度の時間は確保することは可能である。したがって、シアノアクリレート系接着剤9または硬化促進剤10の塗布、その後のシンク4のカウンター1への当接、位置決め、接着剤硬化によるシンク4とカウンター1の接合の一連の生産工程において、従来の方法よりも時間の短縮化が可能となる。また、生産サイクルを高めることができる。さらに、接触面全領域において硬化反応が等しく進行するため接触面の硬化時間が一定となり、硬化層8の硬化状態が安定化し、品質面での向上が図られるという利点も有する。
【0020】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態ではカウンターにシアノアクリレート系接着剤、シンクに硬化促進剤を塗布しているが、これを逆にしてカウンターに硬化促進剤、シンクにシアノアクリレート系接着剤を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 カウンター
2 開口部
4 シンク
6 周壁部
7 フランジ部
9 シアノアクリレート系接着剤
10 硬化促進剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアノアクリレート系接着剤を用いて、シンクの周壁部上端縁に形成されたフランジ部をカウンターの開口部周縁に接着接合するシンクとカウンターの接合方法において、シンクのフランジ部またはカウンターの開口部周縁にシアノアクリレート系接着剤、他方にシアノアクリレート系接着剤の硬化を促進させる硬化促進剤を塗布し、次いでシンクのフランジ部をカウンターの開口部周縁に当接させ、シアノアクリレート系接着剤とその硬化促進剤の塗布面を接触させてシンクとカウンターを接着接合することを特徴とするシンクとカウンターの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174238(P2011−174238A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37232(P2010−37232)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】