説明

シート及びその製造方法

【課題】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂製のシートの、透明性、ガラスとの接着性、合わせガラスとしたときの耐貫通性を損なわず、断熱性を向上させることを課題とする。
【解決手段】
ポリビニルアセタール樹脂100質量部、可塑剤1〜50質量部からなり、平均径が0.01〜100μmの気泡を、1cmあたり0.1〜0.9cm含有するシートである。本発明のシートは、シート内に含有させた気泡により、シート自体の断熱性を向上させることができ、さらに、気泡の平均径を特定することで、透明性、ガラスとの接着性、合わせガラスとしたときの耐貫通性を維持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール製のシートを中間膜として用いた合わせガラスは、合わせガラスを通して見る像の歪みが少なく衝撃に対する耐貫通性が高い。このため、防災および防犯効果を求められる自動車用窓ガラスや建築物の窓ガラスとして広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような合わせガラスは、近年の省エネ志向の高まりから、さらにガラスを介して出入りする熱を少なく抑えること、いわゆる断熱性を向上させることが求められている。
【0004】
ガラスの断熱性を向上させる手段としては、ガラスの複層化(複層ガラス)がある。これは2枚のガラスの間に厚み6mm〜12mm程度の不活性ガス層または真空層を設けたもので、これら不活性ガス層や真空層によって高い断熱性を発揮するものである。しかし、複層ガラスには合わせガラスのような防災、防犯効果は無く、かつ、窓枠が厚くなってしまう場合があった。複層ガラスに防災、防犯効果を持たせる手段として、複層ガラスを構成する2枚のガラスのうち1枚を合わせガラスとすることも考えられる。しかしながら、この場合でも、コストが高く、窓枠の厚みは更に厚く、サッシが重くなる場合があった(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−4841号公報
【特許文献2】特開平5−32502号公報
【特許文献3】特開平6−229506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂製のシートの、透明性、ガラスとの接着性、合わせガラスとしたときの耐貫通性を損なわず、断熱性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を1〜50質量部配合した樹脂組成物からなり、平均径が0.01〜100μmの気泡を、1cmあたり0.1〜0.9cm含有するシートである。本発明のシートは、シート内に含有させた気泡により、シート自体の断熱性を向上させることができ、さらに、気泡の平均径を特定することで、透明性、ガラスとの接着性、合わせガラスとしたときの耐貫通性を維持するものである。
【0007】
シートに含有させる気泡の形状は、球状または隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状のうちの少なくとも一種であることが望ましい。このような形状とすることによって、シート自体の引張強度が向上する。シートに外部からかけられた応力は、シート内に含有させた気泡に伝達する。その際に、気泡の形状が球状または隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状の場合には、応力が分散するため、気泡部分からシートが裂けてしまうことがない。また、シートに含有させる気泡は、二酸化炭素、窒素、アルゴン、酸素、空気、フロンのうちの1種のガスまたは2種以上の混合ガスで充填されていることが望ましい。これらのガスは、熱伝導率が小さく、化学的に安定で、シートのポリビニルアセタール樹脂や可塑剤を劣化させないためである。
【0008】
シートの材料であるポリビニルアセタール樹脂は、その重合度が200〜5000であることが望ましい。このような構成にすることによって、シート自体の引張強度を維持できるとともに、含有させる気泡の分散が均一になる。さらに、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は70〜90%であることが望ましい。このような構成にすることによって、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との親和性が良くなるため、可塑剤のブリードや、シート状に成形する際に、樹脂の未溶物や熱分物等が発生しない。
【0009】
シートの厚みは、0.1〜5mmであることが望ましい。シートの厚みをこの範囲に限定することによって、シート自体の強度やハンドリング性、透明性を維持しつつ、シートの断熱効果が効率的に発揮される。
【0010】
本発明のシートは、合わせガラス用の中間膜として好適に使用されるものである。
【0011】
シートを製造するには、以下のようにすればよい。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を、押出機にて溶融、混練して可塑化させた樹脂組成物を、その先端に取り付けられたダイに供給してシート状に成形する際に、押出機先端とダイとの間に設けられた加圧ガス供給手段から、可塑化させた樹脂組成物内に加圧ガスを供給してシート内部に気泡を含有させればよい。
【発明の効果】
【0012】
透明性、ガラスとの接着性、合わせガラスとしたときの耐貫通性を損なわず、断熱性を向上させたシートが得られる。シートは、高断熱性合わせガラス用中間膜として有用に用いられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドを、酸性触媒の存在下でアセタール化反応させて得られるものである。
【0014】
ポリビニルアルコールは、公知のものを用いればよく、特に限定するものではないが、そのけん化度が70モル%以上、好ましくは90モル%以上のものを用いると、ポリビニルアルコールをアセタール化反応させる際に、析出するポリビニルアセタール樹脂の粒子同士が粘着することないため好ましい。また、けん化度がこの範囲のポリビニルアルコールを用いると、可塑剤との相溶性が良いポリビニルアセタール樹脂が得られる。これを用いたシートは、強度や柔軟性が均一なものになる。なお、けん化度が80モル%以下の場合、得られるシートは柔軟性が高くなる傾向がある。また、ポリビニルアルコールは、3〜15重量%の水溶液として使用するとハンドリング性がよいため好ましい。
【0015】
アルデヒドは、公知のものを用いればよく、特に限定するものではない。その種類としては、例えば、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ソクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒドなどがある。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
これらの中でも、ブチルアルデヒドは、ポリビニルアルコールとの反応もよく、ハンドリング性もよいため好ましい。さらに、得られるシートが合わせガラス中間膜に必要な強度と柔軟性のバランスが良くなるため好ましい。
【0016】
アルデヒドの添加量は、目的とするポリビニルアセタールのアセタール化度にあわせて適宜設定すればよい。例えば、ポリビニルアセタールのアセタール化度を増加させたい場合は添加量を増やし、アセタール化度を低減させたい場合は、添加量を減らせばよい。なお、ポリビニルアルコール100質量部に対して、40〜75質量部、好ましくは、43〜65質量部とすると、アセタール化反応が効率よく行われるため好ましい。
【0017】
酸触媒は、公知のものを用いればよく、特に限定するものではない。その種類としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸が使用される。一般にこれらの酸触媒で反応液のpHが0.3〜2.0となるように適量添加すればよい。
【0018】
ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、特に限定するものではないが、200〜5000、好ましくは1000〜3300、さらに好ましくは1500〜2400の範囲がよい。重合度をこの範囲にすることにより、シートの引張強度と柔軟性を維持しつつ、シートに気泡を含有させやすくなる。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、特に限定するものではないが、70〜90%、好ましくは75〜84%、さらに好ましくは78〜83%の範囲がよい。アセタール化度をこの範囲にすることにより、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との親和性が良くなり、可塑剤のブリードがなく、溶融成形の際の樹脂未溶物や樹脂の熱分物等の異物がないシートが得られる。
【0020】
シートは、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を、溶融、混練して可塑化させた樹脂組成物に気泡を含有させた後、シート状に成形して得られるものである。
【0021】
可塑剤は、シートの柔軟性や、応力に対する強度と伸びを調整するために添加するものであり、プラスチック用可塑剤として通常使用されるものが使用できる。特に、分子内にエーテル結合を有するエステル系可塑剤が好適に使用される。可塑剤としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコール−2−エチルブチレート、1,4−プロピレングリコール−2−エチルブチレート、1,2−プロピレングリコール−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−2−エチルヘキソエート、トリエチレングリコール−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−2−エチルブチレートなどがある。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらの中でも、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを用いると、得られるシートのガラスとの接着力を向上させることができるため好ましい。
【0022】
可塑剤の添加量は、目的とするシートの要求特性にあわせて適宜設定すればよい。例えば、シートの柔軟性を向上させたい場合は添加量を増やし、応力に対する強度や伸びを向上させたい場合は、添加量を減らせばよい。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは10〜45質量部、さらに好ましくは20〜40質量部とすると、シート自体の柔軟性や強度、合わせガラス用中間膜とした際のガラスとの接着性や合わせガラスとしたときの耐貫通性がバランスよく向上するため好ましい。
【0023】
気泡は、シートの透明性を維持しつつ、その断熱性を向上させるためにシート中に含有させたものである。つまり、シート中に含有させた気泡によって、複層ガラスでは防ぐことができない対流伝熱による熱の出入りを低減させ、シートの断熱性を向上させるものである。また、気泡の平均径を特定することでシートの透明性の確保が可能となる。
【0024】
気泡の平均径は0.01〜100μmである。平均径が0.01μm以下の気泡を含有させたシートは、本発明者らが実施した限りでは製造できなかった。また、平均径が100μmを超えてしまうと、シートの対流伝熱の低減効果が少なくなるばかりか、その透明性も著しく悪いものとなった。気泡の平均径は好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜1μmである。特に平均径1μm以下の気泡では対流伝熱はほぼ無視できるくらい小さいものとなり、断熱性の高いシートとなる。
【0025】
気泡の形状は、特に限定するものではないが、球状または隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状のうちの少なくとも一種とすると、シート自体の引張強度が向上するため好ましい。連続球状とした場合は、シートの透明性が若干劣るものとなる場合があるが、他の効果としてシートの吸音効果が発現する。このため、連続球状の気泡を含有したシートを用いて得られた合わせガラスは、本発明の効果に加えて、防音効果が向上したものになる。シートの吸音効果を発現させる場合、気泡は、10〜1000個、好ましくは100〜500個の気泡が連なったものが良い。このような構成とすることによって吸音効果があり、透明性、可視光透過性が確保されたシートとなる。
【0026】
気泡の平均径は、次の手順により測定できる。すなわち、シートの断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、撮影された全ての気泡の直径を写真上で測定し、写真上の直径と撮影倍率から気泡の直径を算出する。平均径は、撮影した全ての気泡の直径の平均の値である。なお、連続球状の気泡の場合でも、それぞれ独立した球状とみなして気泡の直径を測定し、同様に平均径を算出した。
【0027】
気泡の含有率は、体積分率で1〜90容量%、すなわち、シート1cmあたり0.1〜0.9cmである。含有率が1容量%に満たないと、シートの断熱性が不足し、含有率が90容量%を超えると、シートの引張強度などの機械的特性が不足する。気泡の含有率は、好ましくは10〜85容量%、さらに好ましくは30〜70容量%である。
【0028】
気泡内部のガスは、特に限定するものではないが、熱伝導率が小さく、安定で、シート中の樹脂や可塑剤を劣化させないものが好ましい。その種類は、特に限定するものではないが、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、酸素、フロンのうちの1種のガスまたは2種以上の混合ガスがある。
【0029】
気泡の含有率は、次の手順により測定できる。すなわち、気泡を含有したシートと、気泡を含有しない同一組成のシートの嵩密度を、アルキメデス法で測定し、その差より気泡の含有率を算出する。
【0030】
シートの厚みは、特に限定するものではないが、0.1〜5mm、好ましくは0.3〜0.9mmの範囲がよい。シートの厚みをこの範囲にすることにより、シートの引張強度と断熱性、透明性、柔軟性をバランスよく向上させることができる。
【0031】
シートは、合わせガラス用中間膜として好適に使用することができる。
【0032】
シートを製造するには、その先端にダイを取り付けた押出機にてポリビニルアセタール樹脂と可塑剤をシート状に成形する際に、押出機とダイとの間に備えられた加圧ガス供給手段から加圧ガスを供給し、シートに気泡を含有させればよい。
【0033】
押出機は、通常の熱可塑性樹脂の押出成形に用いられる単軸押出機や二軸押出機を使用できる。特に限定するものではないが、ポリビニルアセタール樹脂の混練を向上させるためには、二軸押出機を用いるとよい。二軸押出機としては、例えば、スクリュー同方向回転の深溝型、スクリュー同方向回転の浅溝型、スクリュー異方向回転の斜軸型、スクリュー異方向回転の平行軸型等のものがある。
【0034】
押出機へのポリビニルアセタール樹脂の供給は、通常の定量フィーダー等で行うことができ、特に限定するものではないが、例えば、ロータリーフィーダー、テーブルフィーダー、ペーレフィーダー、ベルトフィーダー、チェーンフィーダー、振動フィーダー、シェーキングフィーダー、スクリューフィーダーなどを用いればよい。
【0035】
押出機への可塑剤の供給は、通常の各種型式のポンプを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、往復ポンプ、回転ポンプ、軸流ポンプ、遠心ポンプ等がある。
【0036】
押出機には、ベント孔を設けてもよい。ベント孔は、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤に含まれる水分等の不要な揮発分を押出機内から脱揮し、得られる中間膜の品質を維持するためのものである。ベント孔には、各種真空ポンプで吸引し脱揮を行ってもよい。この際に用いられる真空ポンプとしては、通常用いられるものが使用でき、例えば、水封式真空ポンプ、油回転ポンプ、メカニカルブースター等がある。真空ポンプで吸引する際の真空度は、30〜500torrの範囲とすると、可塑剤自体が吸引されることなく、水分等の不要な揮発分を脱揮することができる。
【0037】
押出機には、その出口とダイとの間にギヤポンプを配置してもよい。ギヤポンプとは一般にケーシングの内部でケーシングとの間隙がほとんど無いようにつくられた歯車を回転し、回転で生じた空隙に液体を閉じこめて押し動かし輸送するものである。これによって、可塑化されたポリビニルアセタール樹脂の押出量の変動を抑え、厚みが均一なシートが得られる。ギヤポンプの能力は押出機の吐出量に合わせて適宜選択すれば良い。
【0038】
ダイは、各種のシート成形用ダイを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、マニホールドダイ(Tダイ、ロングダイ)、フィッシュテイルダイ、コートハンガーダイ、スクリューダイ等のフラットダイ、サーキュラダイ等を用いることができる。また、ダイの樹脂出口の開口幅は、所望する中間膜の設定厚みの1〜1.6倍にすると、厚みが均一なシートが得られるため好ましい。
【0039】
加圧ガス供給手段は、押出機出口からダイの間に設けられたものであり、特に限定するものではないが、一本または複数本のパイプを挿入し、これに押出機外部から加圧ガスを供給すればよい。パイプを挿入する方向は、可塑化させた樹脂組成物の流動軸に対して垂直、平行(並流、向流)のいずれでも良い。このとき加圧ガス導入部の温度、樹脂の押出圧力、ダイス温度で気泡の含有率と平均径を調整する。ガス導入部の温度およびダイス温度を高くすると気泡含有率は高くなり平均径は大きくなる。また、樹脂の押出圧力を高くすると気泡含有率が高くなる。それぞれの好ましい範囲はガス導入部の温度80〜220℃、更に好ましくは150〜200℃、樹脂の押出圧力0.5〜20MPa、更に好ましくは1〜5MPa、ダイス温度20〜220℃、更に好ましくは30〜170℃である。それぞれをこの範囲にすることにより、シートへの気泡の含有率と気泡の平均径を本願の範囲に調整することができる。
【0040】
加圧ガスの圧力は、1〜40MPa、好ましくは3〜20MPaである。圧力をこの範囲にすることにより、シートへの気泡の含有率と気泡の平均径を本願の範囲に調整することができる。なお、加圧ガスの圧力を下げると気泡含有率を下げることができ、圧力を上げると、隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状気泡をつくることができる。
【0041】
シートは、強度向上、遮音性、遮熱性、装飾等の目的に合わせて、複数枚を積層させて使用することもできる。シートを積層させる場合には、組成の同じシートだけでなく組成の異なるシートを積層させても良い。
【0042】
シートは、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着力調整剤、カップリング剤、界面活性剤、熱安定剤、赤外線吸収剤、蛍光剤、着色剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤などの各種添加剤を1種類もしくは2種類以上添加してもかまわない。添加は原料樹脂に混合して添加する方法および/または可塑剤液に混合して添加する方法等で行うことができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
ポリビニルアセタールの合成
けん化度98mol%、平均重合度1700のポリビニルアルコール100gを蒸留水に溶解し、濃度10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。この水溶液を40℃にした状態でアンカー型攪拌翼を用いて攪拌しながら35重量%塩酸を32g添加後、ブチルアルデヒド60gを滴下した。水溶液中にポリビニルアセタールが析出したことを確認した後、更に35重量%塩酸を64g添加しながら50℃まで昇温して4時間攪拌して反応を完結させ、ポリビニルアセタールの分散液を得た。得られた分散液を冷却し、30重量%水酸化ナトリウム水溶液により分散液のpHを7.5まで中和し、ろ過後、対ポリマー20倍量の蒸留水で水洗/乾燥して平均重合度1700、アセタール化度79.8wt%のポリビニルアセタールを得た。
【0045】
ポリビニルアセタールシートの作製
以下の作製条件によりポリビニルアセタールシートを得た。
(製膜設備)
実施例では以下の製膜試験設備でシートを作製した。
(1)押出機:東芝機械社製二軸押出機、スクリューφ48mm、原料供給口、可塑剤供給口、ベント付き
(2)ギヤポンプ:押出機出口にギヤポンプ(能力120L/h)設置
(3)Tダイ:幅1100mm
(4)ギヤポンプとTダイの間に加圧二酸化炭素含有口φ5mmを設置。含有口は樹脂の流動軸に対して平行に向流となるようにした。
(製膜条件)
(1)原料のポリビニルアセタール樹脂:ポリビニルブチラール(平均重合度1700、アセタール化度79.8%)、
(2)原料の可塑剤:トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート
(3)押出機への樹脂の供給速度50kg/h
(4)可塑剤の供給速度17kg/h
(5)押出機からの脱揮の真空度を300torr
(6)バレル設定温度:原料樹脂供給部140℃、可塑剤供給部180℃、混練部から押出機出口200℃
(7)押出機スクリューの回転数150r.p.m.
(8)Q/Ns=(50+17)/150=0.45
(9)押出機からの樹脂の押出圧力=3MPa
(10)Tダイリップのクリアランス0.95mm
(11)Tダイ設定温度:150℃
(12)加圧二酸化炭素の温度25℃、二酸化炭素含有圧力を2MPa
(14)加圧ガス導入部の温度170℃
(15)引取機の引取速度1.4m/min
以上の条件で樹脂100質量部に対して可塑剤を34質量部配合したシートを作製した。シートは厚み0.76mmの気泡を含有したものであった。
【0046】
(気泡径の測定、気泡形状の測定)
シート断面を走査型電子顕微鏡で写真撮影した。撮影は1枚の写真の中に約50個の気泡が確認できる倍率に調整しサンプル内の各所で10枚撮影した。その後、撮影した全ての気泡の直径を写真上で測定し、写真上の直径と撮影倍率から気泡径を算出した。平均気泡径は撮影した全ての気泡の平均であり、約50個×10枚=約500個の平均とした。また、撮影画像で一つごとに独立した球状の気泡であるか隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状の気泡であるか判定した。
【0047】
(シートの気泡含有率の測定)
気泡を含有したシートとこれと同一の樹脂、可塑剤を配合であるシートの嵩密度をアルキメデス法で測定した。嵩密度の差より気泡含有率を算出した。
【0048】
(シートの全光線透過率の測定)
シートの全光線透過率をJIS K 7105に準拠し測定した。
【0049】
以下の方法で合わせガラスを作製し、物性を測定した。
(合わせガラスの作製)
無機物との接着性評価として、シートとガラスを接着し、合わせガラスを作製して、その接着性をJIS R 3205に準拠し、落球剥離試験で評価した。合わせガラスの作製条件としては、シートを厚さ3mmのフロートガラス2枚の間に挟み、加圧1kg/cm2、加温80℃、30分間保持で予備圧着を行った。次いで、オートクレーブで加圧12kg/cm2、加温140℃で30分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0050】
(シートとガラスの接着性の測定)
作製した合わせガラスのシートとガラスの接着性評価としてJIS K 3205に準拠し落球剥離試験を行った。
(合わせガラスの断熱性の測定)
シートの断熱性評価として、JIS A 1420の校正熱箱法に準拠し、熱貫流率を測定した。
【0051】
(合わせガラスの耐貫通性の測定)
JIS R 3205に準拠し、ショットバッグ耐久試験で合わせガラスの耐貫通性を測定した。
【0052】
シートと合わせガラスの物性測定結果をを表1に示す。
【0053】
実施例2
ポリビニルアセタールの重合度を5000としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0054】
実施例3
ポリビニルアセタールの重合度を200としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0055】
実施例4
ポリビニルアセタールのアセタール化度を70.2質量%としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0056】
実施例5
ポリビニルアセタールのアセタール化度を89.0質量%としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0057】
実施例6
ポリビニルアセタール100質量部に対して可塑剤量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0058】
実施例7
ポリビニルアセタール100質量部に対して可塑剤量を50質量部としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0059】
実施例8
シートの厚みを0.1mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0060】
実施例9
シートの厚みを5.0mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0061】
実施例10
シートに含有するガスを窒素としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表1に示す。
【0062】
実施例11
シートに含有するガスをアルゴンとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0063】
実施例12
シートに含有するガスを酸素としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0064】
実施例13
シートに含有するガスを空気としたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0065】
実施例14
シート作製の際の加圧ガスの圧力を1MPa、加圧ガス導入部の温度を100℃、ダイス温度80℃とし、シート中の気泡の平均径を0.01μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0066】
実施例15
シート作製の際の加圧ガスの圧力を10MPa、加圧ガス導入部の温度を220℃、樹脂の押出圧力を2MPa、ダイス温度220℃とし、シート中の気泡の平均径を98μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0067】
実施例16
シート作製の際の加圧ガスの圧力を20MPaとすることで、シート中の全気泡のうち50%が隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状の気泡であり、この連続球状の気泡は、平均で400個の気泡が連なったものとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0068】
実施例16
シート作製の際の加圧ガスの圧力を40MPaとすることで、シート中の全気泡のうち90%が隣接する気泡の一部同士が結合した連泡を形成しており、連泡は平均で400個の気泡が連なったものとしたこと以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0069】
実施例17
シート作製の際の樹脂の押出圧力を0.5MPaとし、シートに含まれる気泡の含有率が1容量%であること以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0070】
実施例18
シート作製の際の樹脂の押出圧力を10MPaとし、シートに含まれる気泡の含有率が90容量%であること以外は実施例1と同様の方法でシートを作製した。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表2に示す。
【0071】
比較例1
気泡を含ませずにシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0072】
比較例2
可塑剤量をポリビニルアセタール100質量部に対して0.5質量部としてシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0073】
比較例3
可塑剤量をポリビニルアセタール100質量部に対して55質量部としてシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0074】
比較例4
押出機バレルの温度、Tダイの温度、含有するガスの温度、圧力を調整し気泡径を小さくしようとしたが、平均気泡径0.01μm以下の気泡を含有するシートは得られなかった。
【0075】
比較例5
シート中の気泡の平均気泡径が120μmのシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0076】
比較例6
シート作製の際の樹脂の押出圧力を0.2MPaとし、気泡の含有率が0.6容量%のシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0077】
比較例7
シート作製の際の樹脂の押出圧力を25MPaとし、気泡の含有率が93容量%のシートを作製した。その他のシート作製の条件は実施例1と同様の方法である。シートとこのシートを用い作製した合わせガラスの物性測定結果を表3に示す。
【0078】
実施例1〜18に示した通り、本発明の範囲内にあるものはシートの全光線透過率が高いことから透明性が良好である。またこのシートを用いて作製した合わせガラスは落球剥離試験に合格したとこからシートとガラスの接着が良好であり、熱貫流率が低いことから断熱性が高く、耐貫通性が良好なものとなり、本発明の目標を達成するものであった。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のシートを用いて作製した合わせガラスは断熱性が高く、光線透過性が高く、耐貫通性が高い合わせガラスとなる。更に連続球状の気泡の割合を大きくした場合は、さらに遮音効果が高い合わせガラスとなる。
また、本発明のシートは断熱性、透明性、強度が高いので断熱材、接着テープ、粘着テープの基材等の建築、工業用資材に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂100質量部、可塑剤1〜50質量部からなり、平均径が0.01〜100μmの気泡を、1cmあたり0.1〜0.9cm含有するシート。
【請求項2】
気泡の形状が、球状または隣接する気泡の一部同士が結合した連続球状のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
気泡が、二酸化炭素、窒素、アルゴン、酸素、空気、フロンのうちの1種のガスまたは2種以上の混合ガスで充填されていることを特徴とする請求項1または2記載のシート。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂の重合度が、200〜5000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、70〜90%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
シートの厚みが、0.1〜5mmであることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項に記載のシートからなる合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を、押出機にて溶融、混練して可塑化させた樹脂組成物を、その先端に取り付けられたダイに供給してシート状に成形する際に、押出機先端とダイとの間に設けられた加圧ガス供給手段から、可塑化させた樹脂組成物内に加圧ガスを供給してシート内部に気泡を含有させることを特徴とするシートの製造方法。

【公開番号】特開2010−100778(P2010−100778A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275622(P2008−275622)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】