説明

シート状成形体およびその製造方法

【課題】成形精度が良い、微細な凹凸形状を有したシート状成形体を提供する。
【解決手段】支持体11と、支持体の一方の主面側に配置され、支持体側の面の反対面が凹凸形状を有した樹脂層12とを備えたシート状成形体の製造方法であって、放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて成形型の凹凸面の凹凸形状を塗料層に転写した後、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂を硬化させる。未硬化状態の放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、25℃における放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方の主面に微細な凹凸を有したシート状物成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一方の主面に微細な凹凸を有した成形体は、反射防止フィルム、拡散シート、輝度向上シート等の光学フィルム、導光板、回折格子、パターンドメディア、光記録媒体、光学素子、ホログラム、マイクロ流路、建材、装飾品及び研磨テープ等の分野で幅広く用いられている。反射防止フィルム、拡散シート等に代表されるような光学フィルムの分野では、凹凸形状のさらなる微細化への要請があり、成形精度等に関する信頼性の要求が厳しくなっている。
【0003】
光が入射する側の主面に微細な凹凸を有した反射防止膜(Anti-glare film)では、凹凸表面での光の散乱を利用して、光の映り込みをより抑制している。なお、反射防止膜は、例えば、液晶表示板やCRT等の表示部に貼り付けられて用いられることにより、表示部への外光や周辺物の写り込みを抑制している。反射防止膜は、通常、相対的に屈折率が低い材料からなる低屈折率層と、低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層と、透光性基材とを含み、これらが光の入射側からこの順に積層された構造をしている。高屈折率層は、ハードコート層と呼ばれる場合もある。
【0004】
光が入射する側の主面に微細な凹凸を有した反射防止膜は、光の映り込みをより抑制できる反面、その全体がすりガラスのように白く見えるため、表示部に表示される画像の鮮やかさを低下させる欠点を有する。しかし、凹凸形状のピッチを可視光波長以下のサブミクロンオーダーにすることにより、優れた反射防止機能が得られるという報告があり(非特許文献1等参照)、凹凸形状のさらなる微細化により、反射防止能をさらに向上させる取り組みが行われている。
【0005】
微細な凹凸形状を有する表面を形成する方法は種々あるが、表面に凹凸形状を有する金型を用いる方法が簡便で経済的である。この方法として、下記のようなエンボスロールを用い、連続的に凹凸表面を有したシート状成形体を製造する方法が提案されている。
【0006】
シート状成形体の製造方法の一例では、シート状の透明基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む塗料を供給する。次いで、これらを凹凸表面を有するエンボスロールと支持ロールとの間に搬送し、上記基材上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をエンボスロールに押し当てる。この状態の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる(例えば、特許文献1)。
【0007】
シート状成形体の製造方法の他の一例では、凹凸表面を有するエンボスロールの上記凹凸表面上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む塗料を塗布する。次いで、シート状の基材をエンボスロールに塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に重ねた状態で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1および2には、塗布作業性の観点から比較的低粘度の塗料を用いることが好ましいと記載されており、粘度の調整方法として、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を例えば、エチルアルコールなどの溶剤を用いることが開示されている。
【0009】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂には、ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなる比較的高粘度の樹脂が用いられることもある(例えば、特許文献3参照)。また、上記活性エネルギー線硬化型樹脂には、粘度400mPa・sのアクリル樹脂や、粘度100〜5000mPa・sのエポキシ樹脂等の紫外線硬化樹脂が用いられることもある(例えば、特許文献4)。また、凹凸表面を有する艶消し化粧版の製造過程では、エネルギー線硬化型樹脂の一例である電子線硬化型樹脂として、粘度300mPa・sのアクリル樹脂が用いられることがある(例えば、特許文献5)。
【0010】
特許文献3には、塗料の粘度が低いと、塗膜の厚みの制御が困難であるうえ支持フィルム上で流動するため好ましくないと記載されている。特許文献4、5には、具体的に、好ましい樹脂の粘度範囲が開示されているが、いずれも高粘度である。
【0011】
微細な凹凸形状は光ディスクにも利用されている。光ディスクは、サブミクロンオーダーの凹凸形状のトラック溝を有している。光ディスクでは、このトラック溝に微小な光スポットからなるピット列を形成することにより情報が記録される。記録密度の向上のために、光スポットのさらなる微小化と共にトラック溝のさらなる微細化が望まれている。なお、上記トラック溝を有する基板は、金型を用いた射出成形法等により作製される。
【非特許文献1】P.B.Clapham and M .C.Hutley著、ネイチャー(ロンドン)244,282-282(1973)
【特許文献1】特許3016638号公報
【特許文献2】特許3490099号公報
【特許文献3】特許2610463号公報
【特許文献4】特開2002−225133号公報
【特許文献5】特開平11−115140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1〜5に記載の製造方法では、微細な凹凸形状の成形精度が不十分であった。
【0013】
本発明では、成形精度が良い、微細な凹凸形状を有したシート状成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のシート状成形体の製造方法は、支持体と、前記支持体の一方の主面側に配置され、前記支持体側の面の反対面が凹凸形状を有した樹脂層とを備えたシート状成形体の製造方法であって、放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、前記塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて前記成形型の前記凹凸面の凹凸形状を前記塗料層に転写した後、前記塗料層に含まれる前記放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、前記塗料層を前記樹脂層とする樹脂層形成工程を含み、未硬化状態の前記放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、25℃における前記放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであることを特徴とする。
【0015】
本発明のシート状成形体は、支持体と、前記支持体の一方の主面側に配置され、前記支持体側の面の反対面が凹凸形状を有した樹脂層とを備えたシート状成形体であって、前記樹脂層は、放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、前記塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて前記成形型の前記凹凸面の凹凸形状を前記塗料層に転写した後、前記塗料層に含まれる前記放射線硬化性樹脂を硬化することにより得られ、未硬化状態の前記放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、25℃における前記放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形精度が良い、微細な凹凸形状を有したシート状成形体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
微細な凹凸形状を有するシート状成形体を得るためには、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂組成物が成形型の隅々にまで入り込む必要がある。また、微細な凹凸形状を形成するためには、薄い塗料層を形成することが好ましい。しかし、特許文献3〜5に記載されているように、高粘度の塗料では、薄い塗料層を形成することは難しい。また、特許文献1〜2に記載のとおり、溶媒を用いて放射線硬化性樹脂組成物を希釈して塗料の粘度を下げれば塗布適性は改善される。しかし、溶媒が乾燥除去された塗料の粘度、すなわち、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂組成物の粘度については、考慮が払われていないので、成形加工時の気泡のかみ込みの問題や、成形型の隅々にまで放射線硬化性樹脂組成物が行渡らない等の問題については、改善できない。
【0018】
本発明者らは、成形精度のよい、微細な凹凸を有するシート状成形体を製造するべく鋭意検討した結果、放射線硬化性樹脂組成物中の放射線硬化性樹脂の種類を選択し、かつ、成形直前の塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂組成物の粘度を所定の値にすることにより、上記問題を解決した。
【0019】
以下に、本発明のシート状成形体の一例およびその製造方法の一例を図1〜4を用いて説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、本実施形態のシート状成形体10は、支持体11と、支持体11上に配置された樹脂層12とを備える。樹脂層12の支持体11側の主面の反対面は凹凸を有している。
【0021】
このシート状成形体10の製造方法は樹脂層形成工程を含む。樹脂層形成工程では、放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、この塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて成形型の凹凸面の凹凸形状を塗料層に転写する。次いで、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、塗料層を樹脂層とする。成形型としては、例えば、帯状のシート状成形体を連続製造可能であり、シート状成形体を効率よく製造可能な、エンボスローラが好ましい。上記樹脂層形成工程は、例えば、図2〜図4に示した例のように行える。
【0022】
図2に示した例では、帯状の支持体2が送り出しロール1により順次送り出され、次いで、支持体2上に放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料がコータ3から供給され、支持体2の一方の主面に上記塗料が塗布される。塗料に希釈溶媒が含まれている場合は、塗料が塗布された支持体2を乾燥機(図示せず)内に搬送して、塗料から希釈溶媒を除去する。
【0023】
このようにして、未硬化状態の放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、塗料層にエンボスロール4の凹凸面が押し当てられて、エンボスロール4の凹凸面の凹凸形状が転写される。この状態で、支持体2越しに塗料層へ紫外線等の放射線が放射線照射装置5により照射され、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂が硬化されて、塗料層が樹脂層となる。
【0024】
塗料層へのエンボスロール4の押し当ては、エンボスロール4を挟むように配置された1対の支持ロール6によって行なわれる。放射線照射装置5の近傍には遮蔽版7が配置されているので、放射線が照射されるべきでない箇所に照射されることが抑制されている。
【0025】
なお、支持ロール6を用いずに支持体2の張力を利用して、塗料層へエンボスロール4に押し当ててもよいが、支持ロール6を用いる方が、形状が安定するので好ましい。放射線の照射によって発生する熱が支持体2に対してダメージを及ぼす場合には、必要に応じてエンボスロール4および/または支持ロール6に冷却機能を持たせてもよい。
【0026】
図3に示した例では、エンボスロール4の凹凸面上に塗料がコータ3から供給され、当該凹凸面上に塗料層が形成される。この塗料層と、送り出しロール1により順次送り出された帯状の支持体2とが重なった状態で、支持ロール6によってエンボスロール4の凹凸面を塗料層に押し当て、塗料層にエンボスロール4の凹凸形状を転写する。この状態で、支持体2越しに塗料層へ放射線照射装置5により紫外線等の放射線を照射し、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂を硬化して、塗料層を樹脂層とする。
【0027】
図4に示した例では、エンボスロールが放射線を透過する材料から形成されており、その内部に放射線照射装置5が配置されている。本例では、エンボスロール4を介して塗料層等に放射線が照射されるので、支持体2が放射線を透過しない材料からなる場合でも、塗料層を硬化できる。
【0028】
次ぎに、本実施形態のシート状成形体の製造方法で用いられる、塗料の詳細について説明する。
【0029】
塗料層は、放射線硬化樹脂組成物と、必要に応じて希釈溶媒とを含む塗料を塗布した後、乾燥により塗膜から希釈溶媒を除去させることによって得られる。なお、放射線硬化性樹脂組成物を希釈する希釈溶剤は、塗料の塗布適性をより良好にするために添加される場合があるが、必ずしも必要ではない。
【0030】
上記放射線硬化樹脂組成物は、放射線硬化性樹脂以外に、必要に応じて、光開始剤、増感剤、促進剤、重合禁止剤、レべリング剤、離型剤、色材、またはフィラー等を含んでいてもよい。また、塗布適性をより良好にするために、塗料は、必要に応じて放射線硬化性樹脂組成物を希釈する希釈溶剤を含んでいてもよい。
【0031】
放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む。そして、25℃における放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、3〜100mPa・sである。
【0032】
一般的な放射線硬化性樹脂は単官能モノマーと、多官能モノマーまたは多官能オリゴマーとからなる。そして、一般的に、放射線硬化性樹脂の硬化物の特性を主として支配しているのは、多官能モノマーまたは多官能オリゴマーである。単官能モノマーについては、粘度調整用の希釈剤として用いられている。よって、放射線硬化性樹脂の粘度を低くすればするほど、樹脂層について所望の強度、具体的には、JIS K 5600−5−4に基づいて測定される鉛筆硬度等を確保することが難しくなる。
【0033】
本実施形態のシート状成形体の製造方法では、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む放射線硬化性樹脂を用いている。また、塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、3〜100mPa・sである。
【0034】
このように、放射線硬化性樹脂の選択をし、放射線硬化性樹脂組成物の粘度を所定の値にすれば、成形型の隅々にまで放射線硬化性樹脂組成物が入り込むことができ、かつ、成形型への貼付きがなく、スムーズに離型できる。そして、後述する実施例において示されるように、硬化物(樹脂層)の強度と放射線硬化性樹脂の低粘度化とを両立でき、成形精度が良好な、微細な凹凸形状を有する成形体を得ることができる。
【0035】
放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料の25℃における粘度は、3〜100mPa・sであることが好ましい。塗料の粘度がこの範囲内にあれば、例えば、厚さが10μm以下の塗料層を形成する場合であっても、塗料の塗布が良好に行え、かつ、レべリング不良等に起因する塗布スジ、未塗布部(ボイド)等の発生を抑制できる。同様の理由から、塗料の25℃における粘度は、5〜50mPa・sであるとより好ましい。また、塗料の25℃における粘度が、100mPa・s以下であると、転写速度が速くても塗料中の気泡の抜けがよく、塗料層へのエンボスロールの凹凸面の転写性も良いので、成形不良を引き起こし難い。
【0036】
樹脂層厚さとしては、微細な凹凸形状を有する成形体を得るためには、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
塗料層に含まれる放射線硬化性樹脂組成物の粘度を制御する方法としては、モノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種との混合割合を制御する方法が挙げられる。
【0038】
次に、放射線硬化性樹脂組成物に含まれる単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーA、多官能(メタ)アクリルモノマー、および多官能(メタ)アクリルオリゴマーの具体例について説明する。
【0039】
単官能ビニルモノマーとしては、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド等が挙げられる。単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリロイルモルフォロリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーAは、複素環、アミド基、水酸基、またはメトキシ基等の官能基を有しているので、これらのモノマーを含む塗料層が硬化して得られる樹脂層の支持体への接着性は良い。なかでも、放射線硬化性樹脂組成物の粘度、硬化性、樹脂層の硬度および支持体への接着性等を考慮すると、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォロリン、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートがより好ましい。粘度、硬化性、硬化物の硬度および支持体への接着性の全てに関しバランスよく優れた、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォロリンが特に好ましい。
【0040】
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトーツテトラ(メタ)アクリレートあるいはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
多官能(メタ)アクリルオリゴマーとしては、例えば、共栄社化学製のAH−600、UA306H、新中村化学製U−4HA、U−6HA、U−6LPA等の(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。
【0042】
樹脂層を形成するための放射線硬化性樹脂組成物に含まれていると硬化が良好に行なわれる。また、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種は、樹脂層の硬度の向上に寄与する。これらの中でも、硬化性、樹脂層の硬度および支持体への樹脂層の接着性等を考慮すると、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびアクリルオリゴマーが特に好ましい。多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種は、反応性の官能基を3個以上有しているので硬化性がより優れ、硬化により高い架橋密度が得られるので、硬化物の硬度をより高くすることが可能である。
【0043】
モノマーAと多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種との混合割合は、放射線硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が3〜100mPa・sとなるように、例えば、重量比で10:90〜80:20であると好ましい。この場合、エンボスロールの凹凸面の、塗料層への転写性が良好であり、樹脂層の機械的強度も十分に確保されるので好ましい。
【0044】
放射線硬化性樹脂組成物中に含まれる放射線硬化性樹脂の含有量は、放射線硬化性樹脂の種類によって異なるが、通常、放射線硬化性樹脂組成物を100重量部とした場合に80〜99重量部程度であると好ましい。
【0045】
放射線硬化性樹脂の選択にあたっては、生産性の観点から、300mJ/cm2以下の紫外線光量で硬化するものが好ましく、150mJ/cm2以下で硬化するものがより好ましく、50mJ/cm2以下で硬化するものがよりいっそう好ましい。
【0046】
放射線硬化性樹脂の引火点は70℃以上であることが好ましい。引火点が70℃よりも低いと、引火の危険性が高くなるからである。
【0047】
光開始剤の必要性の程度は塗料層に照射される放射線の種類によって異なる。特に、紫外線、または可視光が硬化反応のエネルギー源として使用される場合、放射線硬化性樹脂組成物は光開始剤を含んでいると好ましい。
【0048】
光開始剤には、特に制限はなく一般的なものを用いることができる。光開始剤としては光ラジカル重合剤が好ましく、光ラジカル重合剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
塗料層への紫外線の照射は、支持体越しに行われることもあるため、支持体を透過する光の波長に応じて適切な開始剤を選ぶことが好ましい。具体的には、支持体の吸収波長と重複しない波長領域で光を吸収する光開始剤を選択すると好ましい。例えば、支持体の材料が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートである場合、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の光開始剤を選択することが好ましい。市販品としては、イルガキュア369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、イルガキュア907(2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)(いずれも、チバガイキー社製)が挙げられる。特に、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンと、2,4−ジエチルチオキサントンまたは2−クロロチオキサントンとを併用すると効果的である。
【0050】
塗料が放射線硬化性樹脂組成物を希釈する希釈溶媒を含む場合、希釈溶媒は、塗料の25℃における粘度が3〜100mPa・sとなるように添加されていると好ましい。希釈溶媒の種類については特に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、ジメチルホルムアミド等の従来から公知の希釈溶媒を用いればよい。
【0051】
塗料層の形成方法としては、ロールコート法、カーテンコート法、スイライドオート法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、フローコート法、スプレーコート法等が挙げられる。なかでも、塗料層の形成方法は、塗料を薄くかつ高速塗布可能とする、ロールコート法、カーテンコート法、スイライドオート法、ダイコート法が好ましい。
【0052】
塗布速度に関しては、10m/min以上、好ましくは20m/min、より好ましくは50m/min以上であると好ましい。塗布速度の上限は特に限定されないが、硬化速度との兼ね合いという理由から、通常200m/min以下が適当である。
【0053】
放射線硬化樹脂の硬化に用いられる放射線は、放射線硬化樹脂の硬化を可能とする放射線であれば特に限定されないが、例えば、電子線、紫外線、可視光等が挙げられる。なかでも、エネルギー値が高い紫外線、電子線が好ましい。
【0054】
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、またはLED等が用いられる。LEDはエネルギー効率が高く、支持体等に与える熱ダメージが小さいので好ましい。紫外線の照射は、放射線硬化樹脂の硬化性を高めるために、必要に応じて、窒素でパージされて酸素濃度が300ppm以下に調整された雰囲気下で行うと好ましい。
【0055】
樹脂層の凹凸面の好ましい形状は、シート状成形体の用途によって異なるが、本実施形態は、凹凸の平均一周期長(D)が0.01μm〜50μmであり、凸部の平均高さ(H)が0.01μm〜50μmであり、凹凸の平均一周期長(D)と平均高さ(H)との比(D/H)が、0.01〜100である樹脂層を備えたシート状成形体の製造に有用である。このような凹凸形状を有するものとしては、例えば、拡散シート、輝度向上シート等の光学シート、パターンドメディア、光記録媒体等が挙げられる。特には、凹凸の平均一周期長(D)が0.01μm〜30μmであり、平均高さ(H)が0.01μm〜30μmであり、比(D/H)が0.01〜100である樹脂層を備えたシート状成形体の製造に有用である。
【0056】
樹脂層の凹凸面の平均一周期長(D)および平均高さ(H)は、シート状成形体の表面および断面の電子線顕微鏡(日立製SEM EDX−4500H)撮影像から求めた値である(撮影倍率:2000倍、撮影視野:45μm×45μm)。凹凸形状が規則的なパターンである場合には、図1(a)および(b)で示すように、dを一周期長、hを凹凸の高さとして、各々20点を測定し、その平均を平均一周期長(D)、平均高さ(H)として求める。凹凸形状が不規則である場合には、図1(c)で示すように、凹凸形状の各頂部にA1、A2、A3、…An、各底部にB1、B2、B3、…Bnと名前を付け、各ポイントの(x,y)座標を求める。A1の座標を(xa1,ya1)、B1の座標を(xb1,yb1)とすると、A1とB1との間隔D1はD1=xb1−xa1で求められる。この場合の、凹凸形状の平均一周期長Dは、D=(d1+d2+d3+…+dn)/n求められる。同様に、A1とB1との高さの差H1はH1=yb1−ya1で求められ、凹凸形状の平均高さHは、H=(h1+h2+h3+…+hn)/nで求められる。
【0057】
樹脂層12の平均厚み(P)と凹凸の平均高さ(H)の比(P/H)は、特に限定されるものではないが、経済的には1〜1000であることが好ましく、1〜200であることがより好ましい。(P/H)が1000を超えると、樹脂層の中で微細な凹凸形状を構成しない支持体側の部分の厚みが厚くなり、不必要な樹脂を用いることとなる。ここで、樹脂層12の平均厚み(P)は、下記のようにして測定した値である。
【0058】
シート状成形体を10枚重ねその積層体Xの平均厚みを測定する。一方で、支持体のみを10枚重ねその積層体Yの平均厚みを測定する。これらの測定値を用いて下記式によりシート状成形体の平均厚み(P)を算出した。だたし、積層体Xおよび積層体Yの平均厚みは、マイクロメータ(最少目盛り: 0.1μm)を用いて、積層体X、積層体Yの厚みをそれぞれ10点測定し、その値を平均して求めた。
(式1)
シート状成形体の平均厚み(P)=(積層体Xの平均厚み−積層体Yの平均厚み)/10
【0059】
塗布厚さは、樹脂層の厚さが、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、最も好ましくは10μm以下となるように制御されると好ましい。
【0060】
支持体11には、例えば、従来公知の、可撓性を有する透光性フィルム等が用いられる。支持体11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、三酢酸セルロース、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。中でも、支持体11は、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートを含んでいると好ましい。
【0061】
支持体11の厚さは、特に制限はなく用途に応じて異なるが、通常1〜200μmであると好ましい。特に、支持体11の厚さが3〜20μmである場合に本実施形態のシート状成形体の製造方法は有用である。
【0062】
樹脂層12の隣接する層への接着性を高めるために、例えば、支持体11の樹脂層12と接する表面には、コロナ、プラズマ処理等の表面処理が行なわれていてもよいし、支持体11は、ポリウレタン、ポリエステル等からなる易接着層を備えていてもよい。
【0063】
樹脂層12の、JIS K 5600−5−4に基づいて測定される鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。F以上であれば、転写速度が、例えば50〜200m/min程度と速くても、樹脂層12の表面に容易に傷がつかないからである。
【0064】
樹脂層の隣接する層に対する接着性は、JIS5600−5−6に基づいて、クロスカット法にて評価した場合に、分類0もしくは1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
<実施例1〜10、比較例1〜3>
表1に示す組成の塗料A〜Jを作製した。塗料A〜Jの組成に関する数値は重量部を意味する。図2を用いて説明したシート状成形体の製造方法の一例にて、実施例1〜10、比較例1〜3のシート状成形体を製造した。
【0067】
各組成の詳細は下記のとおりである。
ビニルピロリドン(1官能アクリルモノマー)
ジメチルアクリルアミド(1官能アクリルモノマー)
メチルメタクリレート(1官能メタクリルモノマー)
アクリロイルモルフォリン(1官能メタクリルモノマー)
ペンタエリストールトリアクリレート(3官能アクリルモノマー)
ジペンタエリストールヘキサアクリレート(6官能アクリルモノマー)
ウレタンアクリレートUA−306(共栄社化学製、ペンタエリストールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー 6官能オリゴマー)
イルガキュア184(光開始剤、チバガイキー社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)
イルガキュア907(光開始剤、チバガイキー社製、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン))
2,4−ジエチルチオキサントン(光開始剤)
【0068】
まず、厚さ10μmのPETフィルムの一方の主面に、ロールコート法により塗料を塗布して塗料層を形成した。塗布速度については、実施例1〜8および比較例1、2では20m/min、実施例9では40m/min、実施例10では80m/min、比較例3では10m/minとした。塗料は、塗料層の厚さが約1〜5μmとなるように塗布した。その後、塗料層に、エンボスロールを押し当て、エンボスロールの凹凸面の凹凸形状を転写し、次いで、紫外線照射機により紫外線を塗料層に照射して、塗料層に含まれる放射線硬化樹脂を硬化した。紫外線の照射量は、300mJ/cm2とした。
【0069】
なお、塗料の塗布には、廉井精機製のφ20mm、斜線型、セル角度45°、250ライン/inchのマイクログラビアロールを用いた。また、エンボスロールには、平均一周期長(D)が0.8μm、平均凹凸高さ(H)が0.05μmであり、図1(a)に示した形態の凹凸に対応する凸凹表面を有した金属ロールを用いた。
【0070】
放射線硬化性樹脂組成物の粘度、樹脂層の厚み、シート状成形体の凹凸面の鉛筆硬度、樹脂層と支持体との接着性、硬化性および成形性を下記のようにして評価し、その結果を表1に示した。
【0071】
<放射線硬化性樹脂組成物の粘度>
放射線硬化性樹脂組成物の粘度の25℃における粘度は、東機産業製のE型粘度計(回転数10rpm)で測定した。
【0072】
<樹脂層の厚み>
樹脂層の厚みは、上記(式1)より算出した。
【0073】
<鉛筆硬度>
シート状成形体の鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4に基づいて測定した。
【0074】
<接着性>
樹脂層の支持体に対する接着性は、JIS5600−5−6に基づいて、クロスカット法にて測定した。剥離の程度は0〜5の6段階で評価した。「0」は剥離は観察されないことを意味し、数が大きくなるほど剥離の程度が大きくなることを意味している。
【0075】
<硬化性>
支持体上に東洋精器製のバーコーター(バーにワイヤーを巻いたもの)を用いて塗料層を形成した後、この塗料層に188μm厚のPETフィルムを貼り付け、このPETフィルムを介して紫外線照射を行った。粘着性がなくなるまでに要する紫外線光量を照度計(EIT社製UV Power Puck)にて測定した。なお、紫外線光量が少ないほど硬化性が高いことを意味する。粘着性の有無は指触により確認した。
【0076】
<欠陥および成形性>
シート状成形体の塗布欠陥の有無を目視で20視野観察し(測定視野:10cm×10cm)、さらに、電子顕微鏡により微細な成形上の欠陥(レべリング不良等に起因する塗布スジ、未塗布部(ボイド)等)の有無を20視野観察し(測定倍率:2000倍、測定視野:45μm×45μm)、下記基準で評価した。
○:欠陥のないもの(各20視野で欠陥を観察せず)
△:極わずかに欠陥があるもの(各20視野中、1〜2視野で欠陥を観察)
×:欠陥があるもの(各20視野中、3〜20視野で欠陥を観察)
【0077】
【表1】

【0078】
単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、25℃における粘度が、3〜100mPa・sの範囲内にある放射線硬化性樹脂組成物を用いた実施例1〜10では、いずれも40〜150mJ/cm2の紫外線光量で硬化しており、硬化性は良好であった。また、鉛筆硬度およびクロスカット法による付着性試験の結果も良好であった。また、成形性を電子顕微鏡で観察した結果、実施例1〜10のシート状成形体では、凹凸形状が精度よく形成されていた。また、塗布速度が40m/minの実施例9、および、塗布速度が80m/minの実施例10のシート状形成体においても、凹凸形状が精度よく成形されていた。
【0079】
これに対し、放射線硬化性樹脂の粘度が100mPa・sよりも高い比較例1のシート状成形体では、塗布時のスジが原因と思われる塗布欠陥や気泡のかみ込などの成形欠陥が見られた。また、比較例3についての結果が示すように、放射線硬化性樹脂の粘度が100mPa・sよりも高い場合は、塗布速度を例えば10m/minと遅くしても、塗布欠陥や成形欠陥がみられた。また、放射線硬化性樹脂の粘度が3mPa・sよりも低い比較例2のート状成形体では、鉛筆硬度が2B以下であり、クロスカット法による付着性試験の結果、剥離が観察され、硬度および付着性がともに不十分であった。また、硬化性も不良で、成形体の成形性を観察すると、塗布欠陥は見られないものの、硬化不良が原因と考えられる成形不良がみられた。
【0080】
以上のように、本発明のシート状成形体の製造方法では、放射線硬化性樹脂が、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、25℃における放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであるので、塗料の塗布性、成形性、および硬化性が全てに優れており、これにより、微細な凹凸を有する成形体を高速で精度よく製造できる。
【0081】
本発明によれば、成形精度のよい、微細な凹凸形状を有したシート状成形体を提供できるので、本発明のシート状成形体およびその製造方法は、反射防止フィルム、拡散シート、輝度向上シート等の光学フィルム、導光板、回折格子、パターンドメディア、光記録媒体、光学素子、ホログラム、マイクロ流路、建材、装飾品及び研磨テープ等の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(a)〜(c)は、本発明のシート状成形体の一例を示した概念図
【図2】本発明のシート状成形体の製造方法の一例を説明する概念図
【図3】本発明のシート状成形体の製造方法の他の例を説明する概念図
【図4】本発明のシート状成形体の製造方法のさらに別の例を説明する概念図
【符号の説明】
【0083】
1 送り出しロール
2、11 支持体
3 コータ
4 エンボスロール
5 放射線照射装置
6 支持ロール
7 遮蔽版
10 シート状成形体
11 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の一方の主面側に配置され、前記支持体側の面の反対面が凹凸形状を有した樹脂層とを備えたシート状成形体の製造方法であって、
放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、前記塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて前記成形型の前記凹凸面の凹凸形状を前記塗料層に転写した後、前記塗料層に含まれる前記放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、前記塗料層を前記樹脂層とする樹脂層形成工程を含み、
未硬化状態の前記放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、
25℃における前記放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであることを特徴とするシート状成形体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層が有する、凹凸の平均一周期長(D)は0.01μm〜50μmであり、
前記凸部の平均高さ(H)は0.01μm〜50μmであり、
前記平均一周期長(D)と前記平均高さ(H)との比(D/H)は、0.01〜100である請求項1に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項3】
前記成形型は、エンボスロールである請求項1に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項4】
支持体と、前記支持体の一方の主面側に配置され、前記支持体側の面の反対面が凹凸形状を有した樹脂層とを備えたシート状成形体であって、
前記樹脂層は、放射線硬化性樹脂を含んだ放射線硬化性樹脂組成物を含む塗料層と支持体とが重なった状態で、前記塗料層を凹凸表面を有する成形型に当接させて前記成形型の前記凹凸面の凹凸形状を前記塗料層に転写した後、前記塗料層に含まれる前記放射線硬化性樹脂を硬化することにより得られ、
未硬化状態の前記放射線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーAと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、
25℃における前記放射線硬化性樹脂組成物の粘度が、3〜100mPa・sであることを特徴とするシート状成形体。
【請求項5】
前記モノマーAは、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォロリン、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む請求項4に記載のシート状成形体。
【請求項6】
前記多官能(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルオリゴマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種として、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびアクリルオリゴマーから選ばれる少なくとも1種を含む請求項4に記載のシート状成形体。
【請求項7】
前記樹脂層が有する、凹凸の平均一周期長(D)は0.01μm〜50μmであり、
前記凸部の平均高さ(H)は0.01μm〜50μmであり、
前記平均一周期長(D)と前記平均高さ(H)との比(D/H)は、0.01〜100である請求項4〜6のいずれかの項に記載のシート状成形体。
【請求項8】
前記成形型は、エンボスロールである請求項4〜7のいずれかの項に記載のシート状成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−230057(P2008−230057A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73124(P2007−73124)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】