説明

シート状物の洗浄方法およびこれに用いるシート状物の洗浄装置、板状重合物の製造方法

【課題】効率よく洗浄を行ない簡便な装置により洗浄を行なうことができ、省スペース化を図ることができるシート状物の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】走行するシート状物の一定領域を仕切る1対のガス流を形成し、この一定領域のシート状物上面にその幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルから洗浄液をシート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minで供給し、洗浄液を1対のガス流間のシート状物の上面に堆積、滞留させると共に、1対のガス流間のシート状物上に滞留する洗浄液の上流と下流間での混合を抑制することにより、シート状物上面を上流側から下流側へ向かってより清浄度の高い洗浄液へ移行して洗浄を行ない、下流側のガス流によりシート状物上面の洗浄液の除去を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続走行するシート状物の洗浄方法やこれに用いるシート状物の洗浄装置、板状重合物の製造方法に関し、特に、簡易な装置により簡便に行なうことができるシート状物の洗浄方法やこれに用いるシート状物の洗浄装置、板状重合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性化合物を連続的に重合して板状の重合物を製造する方法として、同方向へ同一速度で走行する対向して配設された1対のエンドレスベルトの対向面間と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた空間に、その一端より重合性原料を供給し、加熱ゾーン内でベルトの走行と共に重合性原料を固化させ、その他端より板状重合物を得る連続製板方法が知られている。かかるエンドレスベルトは、板状重合物の製造に伴って、重合物からの析出物あるいは剥離剤等の添加物等が付着堆積することで、ベルト表面が経時的に汚染されてくる。このようなエンドレスベルトの汚染が酷くなると製造される板状重合物表面外観や表面機能性を損ねるため、該汚染物の除去が必要となる。しかし、エンドレスベルト表面は高い表面平滑性が必要とされているため、ベルト表面に傷等を発生させることや、汚染物を除去する際の除去斑や残留物が残ると製品外観を損ねる原因となる。
【0003】
シート状物に付着した堆積物の除去方法として、シート状物上に洗浄液を供給し、その後エアナイフ等で洗浄液を除去乾燥する洗浄方法が用いられている。このような洗浄方法を実施する装置としては、その一例として、シート状物を搬送する搬送装置、板状物へスプレー等で洗浄液を散布供給する洗浄液供給部、エアを供給しシート状物上の洗浄液を除去乾燥させる乾燥部などからなるものが知られている。
【0004】
上記洗浄装置は液晶表示用ガラス基板に代表される枚葉洗浄に広く用いられており、このような洗浄装置による基板の洗浄においては、洗浄液が供給された基板が、上面に洗浄液を乗せながらエアナイフ等の洗浄液除去乾燥部へ搬送され、基板上の洗浄液はエアナイフ等を通過する際にエア圧力によりその大部分が搬送上流側へと集められ、基板の搬送上流端から吹き飛ばされることで除去されている(特許文献1)。
【0005】
ところがエンドレスベルトのような連続シート状物では枚葉式のような搬送方向での端部がないため、洗浄液の大部分はエアナイフ等を通過する際のエア圧により搬送方向上流側へ移動させられ洗浄液範囲は広範囲となる。洗浄液が必要以上に広範囲にベルト上に滞在すると周囲環境からの異物の混入等の影響により、洗浄液自体が汚染されてしまい洗浄効果を十分に得ることができない。
【0006】
上記問題点を解決する手段として、基板上の異物等が一度濡れてから基板表面を移動した際に基板表面に固着し、基板表面が濡れ始めた時期に洗浄斑が生じることを防ぐため、洗浄液を基板の搬送方向と反対の方向に流れて基板を覆うように基板表面に供給するステップと、基板表面の洗浄液の基板表面との接触面積を拡大する流れに対して、その流れを押し留めるように洗浄液の斜め上方からカーテン状のエアを吹き付けるステップを含み、基板上を流れてきた洗浄液をエアによって押しとどめ、還流させながら排出することが提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、シート状物の汚染物質が洗浄液に溶解するものであるときには、シート状物上に堆積している洗浄液が汚染され、汚染された洗浄液をエアノズルにて水切りすると、水切り跡を発生させる原因となる。また、順次清浄度の高い洗浄液でシート状物を洗浄するためには、図7に示すように、エアノズル2、3と洗浄液供給ノズル22との組み合わせを2組以上繰り返して設置しなければならないため、膨大なエア噴射量と、設置スペースが必要となる。
【特許文献1】特開2000−246191号公報
【特許文献2】特開2002−346485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、連続走行するシート状物の走行方向に対して1対のガス流で区切られる一定領域に供給ノズルから供給する洗浄液を、シート状物上の一定領域に滞留させ、上流と下流間での洗浄液の混合を抑制することにより、上流側から下流側へより清浄度の高い洗浄液へ移行して効率よく洗浄を行なうことができ、汚染された洗浄液が残留して生じる洗浄液斑等の発生を抑制することができ、また、ガスの使用量を増やすことなく、簡便な装置により安定して効率よく洗浄を行なうことができ、省スペース化を図ることができるシート状物の洗浄方法やこれに用いる洗浄装置、板状重合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究の結果、洗浄液をシート状物の幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルから、洗浄液の供給量、すなわち、洗浄液の供給速度を特定の範囲として供給することにより、シート状物上の1対のガス流間に洗浄液を堆積させて滞留させ、その一定領域内の上流側と下流側との洗浄液の混合を抑制することにより、シート状物上面を上流側から下流側へ、より清浄度の高い洗浄液へ移行して行うことができることの知見を得た。更に、洗浄液供給ノズルの本数を増やすことにより、洗浄効果が飛躍的に高まり、従来、複数組のガス流を形成しその間に洗浄液を供給することにより、多段で洗浄を行なっていた装置を省略できることを見出した。さらに、適切な位置に洗浄剤飛散防止用仕切り板を設けることにより、ガス流による洗浄液せき止め部分と、洗浄液供給部分から飛散した洗浄液がシート状物の一定領域外に堆積することを抑制することができることの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、連続走行するシート状物の上面を洗浄液を用いて洗浄する際、シート状物上に設けられたガスノズルからガスを供給してシート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成し、この1対のガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面にその幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルから洗浄液をシート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minで供給し、洗浄液供給ノズルから供給された洗浄液を1対のガス流間に位置するシート状物の上面に堆積、滞留させると共に、1対のガス流間のシート状物上に滞留する洗浄液の上流と下流間での混合を抑制することにより、シート状物上面を上流側から下流側へ向かってより清浄度の高い洗浄液へ移行して洗浄を行ない、下流側のガス流によりシート状物上面の洗浄液の除去を行なうことを特徴とするシート状物の洗浄方法に関する。
【0011】
また、本発明は、実質的に水平に連続走行するシート状物上に設けられ、該シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る鉛直下向きの上流側ガス流と下流側ガス流とをそれぞれ形成する上流側ガスノズルおよび下流側ガスノズルと、上流側ガス流および下流側ガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面に、その幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルとを有する洗浄装置であって、洗浄液供給ノズルが、シート状物の走行方向に添って順次2以上が設けられたものであることを特徴とするシート状物の洗浄装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート状物の洗浄方法やシート状物の洗浄装置は、連続走行するシート状物の走行方向に対して1対のガス流で区切られる一定領域に供給ノズルから供給する洗浄液を、シート状物上の一定領域に堆積、滞留させ、上流と下流間での洗浄液の混合を抑制することにより、上流側から下流側へより清浄度の高い洗浄液へ移行して効率よく洗浄を行なうことができる。このため、汚染された洗浄液の残留に起因する洗浄斑等の発生を抑制することができる。また、複数の洗浄液で洗浄する際にも、多段でガス流を形成する必要がなく、洗浄液の供給、液せき止め時の液飛散・堆積を起こさない、簡便な装置により効率よく洗浄を行なうことができ、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のシート状物の洗浄方法を、図面を参照して説明する。図1は本発明のシート状物の洗浄方法を適用した洗浄装置の要部の模式的側面図、図2はその模式的上面図を示す。
【0014】
本発明のシート状物の洗浄方法は、連続走行するシート状物1の上面を洗浄液を用いて洗浄する際、シート状物上に設けられたガスノズル2、3からガスを供給してシート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成し、この1対のガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面にその幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズル4、5から洗浄液をそれぞれシート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minで供給し、洗浄液供給ノズルから供給された洗浄液を1対のガス流間のシート状物の上面に堆積、滞留させると共に、1対のガス流間のシート状物上に滞留する洗浄液6、7、8の上流と下流間での混合を抑制することにより、シート状物上面を上流側から下流側へ向かってより清浄度の高い洗浄液へ移行して洗浄を行ない、下流側のガス流によりシート状物上面の洗浄液の除去を行なうものであれば、特に制限されるものではない。
【0015】
本発明のシート状物の洗浄方法において、被洗浄物である連続走行するシート状物としては、一方向へ連続的に走行するシート状物であればよいが、モーターによって回転する1対の主プーリに懸架されたエンドレスベルトなどを挙げることができる。このシート状物は、水平方向のフラット性を保持されることが好ましく、シート状物の走行方向に沿って張力をかけることもできる。また、シート状物は水平であることが好ましいが、洗浄液によりシート状物の洗浄領域である一定領域に洗浄液を行き亘らせ堆積できる状態にすることができれば、傾斜状態であってもよい。
【0016】
上記シート状物の走行方向は、シート状物の長手方向である。また、シート状物の走行速度としては、使用する洗浄液の種類、濃度、供給量などによりシート状物の汚染物の除去に要する時間や、シート状物上面の洗浄が行なわれる一定領域の走行方向の長さなどとの関係から定めることができる。シート状物上に堆積する洗浄液の安定性の観点、下流側ガスノズル3による洗浄液の除去・乾燥斑防止の観点から、例えば、20m/min以下とすることができ、好ましくは10m/min以下である。
【0017】
シート状物の材質としては、例えば、樹脂、金属等いずれのものも使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などを挙げることができ、これらの洗浄側の表面を研磨処理したものであってもよい。シート状物は高い剛性を有すると、水平状態での走行を維持することができるため好ましく、金属製の場合は、一般に、薄くても比較的高い剛性を有するので好ましい。シート状物の厚さとしては、0.1mm以上であることが好ましい。
【0018】
また、このシート状物の長さは制限されるものではないが、連続的に走行するためには、エンドレスベルト状であると最も安定して、効率よく洗浄処理を行なうことができるため、好ましい。
【0019】
被洗浄物であるシート状物の上面において、洗浄の対象となる一定領域としては、必要とされる洗浄時間や、後述する洗浄液供給ノズルの設けられる数などから、シート状物の走行速度を勘案して適宜選択することができる。シート状物の洗浄時間は、使用している洗浄液の種類、濃度、供給量からシート状物に堆積している汚染物を溶解する溶解速度によって選定することができる。必要洗浄時間にシート状物の走行速度を乗じて、シート状物長さ方向の洗浄距離を定めることができる。しかし洗浄距離を長く設定すると、雰囲気中に存在する塵・埃などの異物が洗浄液に混入するため、一定長に設定することが好ましい。例えば、シート状物の走行速度が1.5m/min、洗浄液供給ノズルが一つの場合、500〜1500mmなどとすることができ、洗浄液供給ノズルが二つの場合、700〜3000mmなどとすることができ、洗浄液供給ノズルが三つの場合、1000〜4500mmなどとすることができる。
【0020】
本発明のシート状物の洗浄方法に用いられるガス流は、シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対からなり、この1対のガス流間に、シート状物上面に供給された洗浄液を滞留させると共に、シート状物上の走行方向に対して一定領域の長さを定め、すなわち洗浄区間を画する。この洗浄区間長とシート状物の走行速度により洗浄時間が決められることになる。更に、下流側のガス流は、洗浄後の洗浄液をシート状物上面から除去する作用を有する。1対のガス流は上流のガスノズルと下流のガスノズルそれぞれから流出するガスにより形成される。ノズルの開口の形状としては、シート状物の幅方向に対応したスリット状が好ましく、スリット状の開口を有するスリットタイプガスノズルが、洗浄液をシート状物の一定領域に滞留させる効果が高いため好ましく、特に下流側のガスノズルとしては、洗浄液の除去乾燥性がよいため好ましい。ガスノズルとシート状物とのクリアランスは、ノズルの形式等により適宜選択できるが、クリアランスが狭すぎるとシート状物と接触してシート状物に傷が入る危険があり、反対に広すぎると圧縮ガス圧を高く設定する必要があり、コスト的に不利になるため、好ましくは1〜50mmである。
【0021】
このガス流としては、洗浄液を滞留させる効果を高めるため、ガスノズルから圧縮ガスとして噴出するように加圧ガスが好ましい。圧縮ガスの圧力としてはガスノズルより噴出するガス圧による洗浄液飛沫が生じにくい範囲とすることが好ましい。ガスの供給量としては、洗浄液除去乾燥性や、ガスノズル形式やガスノズルとベルトとのクリアランスにより適宜選択することができ、例えば、ガスノズル長1mに対し、0.5〜5Nm3/minなどとすることができる。使用するガス種としては、空気や不活性ガスを挙げることができ、被洗浄物が酸素を嫌うものであれば、窒素に代表される不活性ガス等が好ましい。
【0022】
本発明のシート状物の洗浄方法に用いる洗浄液は、1対のガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面にその幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルから供給される。洗浄液供給ノズルの開口形状として、シート状物の幅方向に対応したスリット状の開口を有することが、被洗浄物のシート状物の幅全域に亘って洗浄液を供給することができ、好ましい。シート状物の幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルは、後述する洗浄液供給ノズルからの洗浄液の供給量を特定のものとすることと相俟って、シート状物上面に供給された洗浄液が飛沫などを生じにくく、そのまま堆積、滞留し、シート状物上面においてその上流側に堆積した洗浄液と下流側に堆積した洗浄液間の混合を抑制することができる。
【0023】
更に、上記洗浄液供給ノズルとしては、シート状物の走行方向に添って順次2以上が設けられた洗浄液供給ノズル4、5(図1)であることが好ましい。複数の各洗浄液供給ノズルから、飛沫などの発生を抑制し、そのままシート状物上面に堆積、滞留するように洗浄液を供給し、シート状物上面においてその上流側と下流側間の混合を抑制する。このため、下流に設けられる洗浄液供給ノズルから供給される洗浄液がその上流の洗浄液供給ノズルから供給される洗浄液と混合されることが抑制され、シート状物がその走行に伴い順次洗浄されて汚染物の濃度が低くなり、従って、清浄度の高い洗浄を行なうことができる。
【0024】
このような洗浄液供給ノズルからの洗浄液の供給量は、シート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minとする。洗浄液供給ノズルからの洗浄液の供給量がこの範囲であると、図2に示すように、洗浄液供給ノズルから供給された洗浄液を1対のガス流間に位置するシート状物の上面に堆積、滞留させると共に、シート状物上面に堆積可能な液量より過剰量がシート状物の側辺から流れ落ち、シート状物上の洗浄液は更新されるが、1対のガス流間のシート状物上に滞留する洗浄液の上流と下流間での混合を抑制することができ、シート状物上面を上流側から下流側へ向かってより清浄度の高い洗浄液へ移行して洗浄を行なうことができる。シート状物の側辺から流れ落ちた洗浄液は、図示しない水受けにより集められ、排出される。
【0025】
また、洗浄液は、その粘度やシート状物との濡れ性等を考慮して適宜選択できる。
【0026】
洗浄液の種類としては、シート状物に堆積する汚染物質により、その溶解性などから有機溶剤、アルコール類、純水等を適宜選択することができ、例えば、有機溶剤としてトルエン、アセトン、アルコール類としてエタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。水に溶解する汚染物質の洗浄には、洗浄液のコスト面と、廃液処理の容易さの面から純水が好ましく、洗浄後の洗浄斑を防止する観点からは、さらに導電率2μS/cm以下の純水であることが好ましい。ここで、導電率とは、単位長さ、単位面積の導体に電荷を印加したときに流れる電流の大きさを表し、S/cmは断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離して置いたときの抵抗の逆数を示している。
【0027】
また、本発明のシート状物の洗浄方法において、シート状物の幅全体に亘る洗浄液飛散防止用仕切り板を設け、洗浄液が1対のガス流で仕切られる一定領域外に飛散することを抑制し、また、洗浄液供給ノズルから吐出された洗浄液の飛散を抑制することが好ましい。図3、4に示すように、洗浄液が1対のガス流で仕切られる一定領域外に飛散することを抑制するためのガスノズル上部に設置する洗浄液飛散防止用仕切り板9、10としては、ガス流により跳ねた洗浄液が洗浄液飛散防止用仕切り板を越えない高さを有する限り、重量を小さくする点から薄いことが好ましい。例えば0.3〜3mm厚の範囲で設定することができる。
【0028】
また、洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液の飛散を抑制するために設けられる洗浄液飛散防止用仕切り板11、11′は、ガスノズルと洗浄液供給ノズルとの間に、シート状物の幅全体に亘って、より好ましくはシート状物の幅以上の幅を有して設けられたものが好ましい。
【0029】
これらの洗浄液飛散防止用仕切り板9、10、11、11′は少なくとも何れか一つが設けられていればよいが、洗浄液の飛散抑制を確実にするため、多い方が好ましい。
【0030】
本発明のシート状物の洗浄装置は、本発明のシート状物の洗浄方法を適用するのに適した洗浄装置であって、実質的に水平に連続走行するシート状物上に設けられ、該シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る鉛直下向きの上流側ガス流と下流側ガス流とをそれぞれ形成する上流側ガスノズルおよび下流側ガスノズルと、上流側ガス流および下流側ガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面に、その幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルとを有する洗浄装置であって、洗浄液供給ノズルが、シート状物の走行方向に添って順次2以上が設けられたものである。本発明のシート状物の洗浄装置の一例としては、図1、図2に示すように、駆動方法(図示せず)により実質的に水平に、矢印の方向に走行するシート状物1上面に、洗浄液が搬送方向に対して上流側へ流れないようにするための上流側ガス流を噴出する上流側ガスノズル2、洗浄液を供給するスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズル4、5、洗浄液をシート状物上の一定領域に堆積、滞留させると共に、洗浄液をシート状物上から除去乾燥を行う下流側ガス流を噴出する下流側ガスノズル3を備えたものを例示することができる。洗浄液供給ノズルの本数は、1本でもまた複数本でもよく、必要清浄度により選定すればよい。
【0031】
洗浄液供給ノズル4からは洗浄液がシート状物1へと、シート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minで供給され、供給された洗浄液はシート状物上で上流側と下流側に別れて洗浄液6と洗浄液7となって堆積する。このとき、ガスノズル2、3からガス流が噴出され、洗浄液はガス流より上流側へは流出しない。シート状物に供給された洗浄液のうち、シート状物上に堆積できる量を超えた余剰の洗浄液はシート状物の側辺から落下する。洗浄液供給ノズル5から供給された洗浄液は、同様に洗浄液7と洗浄液8となって堆積する。即ち洗浄液7は洗浄液供給ノズル4から供給された洗浄液の内、洗浄液供給ノズル4より下流側に堆積した洗浄液の上に、供給ノズル5から供給された洗浄液の内、洗浄液供給ノズル5より上流側に吐出された洗浄液が堆積したものである。洗浄液7は洗浄液6より汚染物濃度が低くなり、同様に、洗浄液8中の汚染物の濃度は洗浄液7中の汚染物の濃度より低くなり、シート状物は下流に進行するに伴い、汚染物の濃度が低く清浄度が高い洗浄液で順次洗浄される。
【0032】
本発明のシート状物の洗浄装置には、図3に示すように、上流側ガス流および下流側ガス流で仕切られる一定領域外に洗浄液が飛散することを抑制し、また、洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液の飛散を抑制する洗浄液飛散防止用仕切り板が設けられることが好ましい。洗浄液飛散防止用仕切り板としては、ガス流で仕切られる一定領域外に洗浄液が飛散することを抑制するため、シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成する上流側のガスノズル上部、下流側のガスノズル上部、および、これらのガスノズルと洗浄液供給ノズルとの間から選ばれる少なくとも1箇所に、シート状物の幅全体に亘って設けることが好ましい。例えば上流側ガスノズル上部、下流側ガスノズル上部に設けられる洗浄液飛散防止用仕切り板9、10を挙げることができる。洗浄液飛散防止用仕切り板9、10としては、シート状物表面から跳ねた洗浄液が洗浄液飛散防止用仕切り板を越えない高さを有し、この高さを有する限り、重量を小さくする点から薄いことが好ましい。例えば0.3〜3mm厚の範囲で設定することができる。
【0033】
また、洗浄液飛散防止用仕切り板として、洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液にガスノズルから噴出するガス流が直接接触したり、洗浄液供給ノズルから供給された洗浄液がシート状物において反射することによる洗浄液の飛散を抑制するため、上流側ガスノズル2と最上流側の洗浄液供給ノズルとの間、最下流側の洗浄液供給ノズルと下流側ガスノズル3との間に設けられる洗浄液飛散防止用仕切り板11、11′を挙げることができる。洗浄液飛散防止用仕切り板11、11′は、シート状物の幅全体に亘って設けられ、シート状物の幅以上の幅を有するものを選定することもできる。
【0034】
これらの洗浄液飛散防止用仕切り板9、10、11、11′の材質としては、例えば、樹脂、金属等いずれのものも使用することができるが、洗浄液が付着するため、洗浄液に対する耐性を有するものが好ましく、重量、剛性などの観点から適宜選定することが好ましい。
【0035】
また、本発明の板状重合物の製造方法は、上記本発明のシート状物の洗浄方法を使用したものであれば、特に限定されるものではないが、相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部のベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた空間に、その一端から重合性原料を供給し、加熱ゾーン内でベルトの走行と共に重合性原料を固化させ、その他端より板状重合物を取り出す板状重合物の製造方法であることが好ましく、重合性原料としてメタクリル酸メチルを含むものを好適に挙げることができる。この板状重合物の製造方法を適用した連続製板装置において、例えば厚さ1.0mm以上のステンレス鋼板からなる鏡面研磨された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面のうちの少なくとも一方の面を、本発明のシート状物の洗浄方法により洗浄することにより、汚れの少ない外観上優れた板状重合物を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0037】
以下の記載において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を示す。
[実施例1]
重合率20%のメタクリル酸メチルシラップ(粘度1Pa・s、20℃)100部に、重合開始剤としてtert-ヘキシルパーオキシピバレート(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキシルPV)0.1部、離型剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.005部を加えて均一に混合し、液状の重合性原料を得た。この重合性原料を真空容器内で脱泡し、以下の板状製品製造装置を用いて、厚さ2mm、幅1300mmの板状製品を製造した。
【0038】
板状製品製造装置には、図4に示すように、全長100m、厚さ1.5mm、幅1.5mの2個のステンレス製エンドレスベルト13、13′が、主プーリ14、15間、14′、15′間に懸架されて設けられている。エンドレスベルト13、13′はそれぞれ主プーリ14、14′によって油圧で上下共3kg/mm2の張力が与えられ、かつ主プーリ15、15′で搬送されるようになっている。また、ポリ塩化ビニル製のガスケット16が設置されている。
【0039】
図4に示すようにエンドレスベルト13、13′の相対する両面は左から右方向へと一定速度で走行し、左側のエンドレスベルト13、13′が重なる直前の位置に、ノズル18を通って上記液状の重合性原料をエンドレスベルト13′上に供給するポンプ17、80℃の温水スプレーによる48mの加熱ゾーン19、19′、遠赤外線ヒータによる15mの加熱処理部20、20′が設けられている。
【0040】
図4のエンドレスベルト13の左側上部に洗浄装置12を以下のように設置した。上流側ガスノズル2は、幅方向に1500mmのスリットを有し、スリットクリアランス0.1mmを有するものを用い、エンドレスベルト13の表面から15mm離れた位置に、ガスノズル角度がエンドレスベルト13に対し鉛直下向きになるように設置し、このガスノズルから流量1.2Nm3/minでエアを噴出した。
【0041】
下流側ガスノズル3は、上流側ガスノズル2と同じものを使用し、上流側ガスノズル2から700mm下流で、エンドレスベルト13の表面から10mm離れた位置に、ガスノズル角度がエンドレスベルト13に対し鉛直下向きになるように設置し、このガスノズルから流量1.8Nm3/minでエアを噴出した。
【0042】
洗浄液供給ノズル4は、上流側ガスノズル2と同じものを使用し、洗浄液供給ノズル取り付け位置は上流側ガスノズル2と下流側ガスノズル3の中間位置に、エンドレスベルト13の表面から20mm離し、洗浄液供給ノズル角度がエンドレスベルト13に対して鉛直下向きになるように設置した。洗浄液供給ノズルは1本のみ使用した。
【0043】
洗浄液として通常の水道水を用い、流量30L/minで供給し、エンドレスベルト13の走行速度は1.4m/minとした。
【0044】
洗浄液供給ノズル4からはカーテン状に洗浄液が安定供給され、ガスノズル2、3の外側に洗浄液の漏れは見られず、エンドレスベルト13上に堆積した洗浄液は、洗浄液供給ノズル4の上流側で薄く白色の濁りを確認したが、下流側での濁りは確認できなかった。ガスノズル3による洗浄液の除去・乾燥部分、ガスノズル2による洗浄液せき止め部分、またガスノズル2、3から噴出するエアが洗浄液供給ノズル4へあたる洗浄液供給部分で、突発的に微小水滴の飛沫等が発生した。しかし、これらの水滴は微小であることから、ガスノズル3による洗浄液の除去・乾燥は良好であった。ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑等は認められなかった。
[実施例2]
洗浄水として導電率2μS/cmの純水を使用した他は、実施例1と同じ条件にてエンドレスベルト13の洗浄を実施し、板状製品の製造を行った。
【0045】
実施例1同様、洗浄液供給ノズル4からはカーテン状に洗浄液が供給され、ガスノズル2、3の外側に洗浄液の漏れは見られず、エンドレスベルト13上に堆積した洗浄液は、洗浄液供給ノズル4の上流側で薄く白色の濁りが確認できたが、下流側での濁りは確認できなかった。洗浄液の飛沫についても実施例1と同様で、ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑、水滴跡等は認められなかった。
[実施例3]
実施例1で用いたものと同じ洗浄液供給ノズルを2本使用し、上流側ガスノズルと下流側ガスノズル間距離を1300mmとし、洗浄液供給ノズル取り付け位置をガスノズル2から400mm下流と、ガスノズル3から400mm上流とし、上流側洗浄液供給ノズル4からは洗浄液として通常の水道水を、流量30L/minで供給し、下流側洗浄液供給ノズル5からは洗浄液として導電率2μS/cmの純水を、流量30L/minで供給した他は、実施例1と同様の条件でエンドレスベルト13の洗浄を実施し、板状製品の製造を行った。
【0046】
洗浄液供給ノズル4、5からはカーテン状に洗浄液が安定供給され、ガスノズル2、3の外側に洗浄液の漏れは見られず、エンドレスベルト13上に堆積した洗浄液は、洗浄液供給ノズル4の上流側で薄く白色の濁りが確認できたが、洗浄液供給ノズル4の下流側での濁りは確認できなかった。ガスノズル3による洗浄液の除去・乾燥部分、ガスノズル2による洗浄液せき止め部分、またガスノズル2、3から噴出すエアが洗浄液供給ノズル4、5へあたる洗浄液供給部分で、突発的に微小水滴の飛沫等が発生した。しかし、これらの水滴は微小であることから、ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑、水滴跡等は認められなかった。
[実施例4]
図5に示す仕切り板9(ステンレス製;幅1500mm、高さ1000mm、厚さ2mm)を設置した以外は実施例3と同じ条件にてエンドレスベルト13の洗浄を実施し、板状製品の製造を行った。
【0047】
洗浄液供給ノズル4、5からはカーテン状に洗浄液が供給され、ガスノズル2、3の外側に洗浄液の漏れは見られず、エンドレスベルト13上に堆積した洗浄液は、洗浄液供給ノズル4の上流側で薄く白色の濁りが確認できたが、洗浄液供給ノズル4の下流側での濁りは確認できなかった。ガスノズル2による洗浄液せき止め部分において飛散した水滴は仕切り板9にあたり、ガスノズル3の下流側のエンドレスベルト13上に水滴が堆積することはなくなったが、ガスノズル3による洗浄液除去・乾燥部分、洗浄液供給部分で、突発的に発生する微小水滴の飛沫等は1対のガス流で仕切られた一定領域の上流側のエンドレスベルト13上に堆積する結果となった。しかし、これらの水滴は微小であることから、ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑、水滴跡等は認められなかった。
[実施例5]
図5に示す仕切り板10(ステンレス製;幅1500mm、高さ1000mm、厚さ2mm)を設置した以外は実施例4と同じ条件にてエンドレスベルト13の洗浄を実施し、板状製品の製造を行った。
【0048】
洗浄液供給などに関しては実施例4と同様の結果となった。ガスノズル2による洗浄液せき止め部分、ガスノズル3による洗浄液除去・乾燥部分、洗浄液供給部分で突発的に飛散した微小水滴も仕切り板9、10に当たるため、ガスノズル2、3で仕切られる一定領域外のエンドレスベルト上に水滴が堆積することはなかった。ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑、水滴跡等は認められなかった。
[実施例6]
図5に示す仕切り板11、11′(各々ステンレス製;幅1500mm、高さ1000mm、厚さ2mm)を設置した以外は実施例5と同じ条件にてエンドレスベルト13の洗浄を実施し、板状製品の製造を行った。
【0049】
仕切り板11、11′の設置により、ガスノズル2、3から噴き出すエアが洗浄液供給ノズル4、5へあたることを防ぐため、洗浄液供給ノズル4、5より供給される洗浄液は実施例1〜5に比較してさらに安定してカーテン状に供給され、洗浄液供給時に発生する水滴の飛沫が抑制された。飛沫した水滴も仕切り板11、11′にあたるため、大きく飛散することはなかった。ガスノズル2、3の外側に洗浄液の漏れは見られず、エンドレスベルト13上に堆積した洗浄液は、洗浄液供給ノズル4の上流側で薄く白色の濁りが確認できたが、洗浄液供給ノズル4の下流側での濁りは確認できなかった。ガスノズル2による洗浄液せき止め部分、ガスノズル3による洗浄液除去・乾燥部分から飛散した微小水滴も仕切り板9、10に当たるため、ガスノズル2、3で仕切られる一定領域外のエンドレスベルト上に水滴が堆積することはなかった。ガスノズル3を通過したエンドレスベルト13上には、目視にて確認できる洗浄斑、水滴跡等は認められなかった。
[比較例1]
洗浄液供給ノズルとしてスリット形状のノズルの代わりに、図6に示すように円形ノズル4本を使用した。洗浄液供給ノズル21は、エンドレスベルト1の幅方向、ベルト端辺から300mm間隔で配置し、洗浄液として通常の水道水を各ノズルから7.5L/minで供給した。
【0050】
洗浄液供給ノズル21から供給された洗浄液は、ガスノズル2,3からのエアの影響により乱れが発生し、乱れて供給された洗浄液はエンドレスベルト1上に堆積する洗浄液と衝突することで水はねが大量に発生した。また、エンドレスベルト1上に堆積している洗浄液については、洗浄液供給ノズル21の上流側で確認できる薄い白色濁りが、洗浄液供給ノズル21のノズル間から抜け出し、洗浄液供給ノズル21の下流側に移動するのが確認された。ガスノズル3を通過し洗浄液の除去・乾燥されたエンドレスベルト1上には、エンドレスベルト1の走行方向に白いスジが目視にて確認できた。それとともに、ガスノズル3、ガスノズル2による洗浄液の飛散および、洗浄液供給部分での大量の洗浄液飛散によりエンドレスベルト1上に多くの水滴が堆積し、ガスノズル3を通過し洗浄液の除去・乾燥されたエンドレスベル13上には、円形の水滴跡も目視にて確認された。
[評価]
洗浄前後の製品について1m角の板状製品3枚採取し、目視判定、冷却結露判定、濡れ張力試験を実施し、合わせて運転時の安定性、製品としての可否を判断した。各条件における評価結果は、板状製品3枚の平均をとった。なお、評価に使用した板状製品はそれぞれ、製品板0(各洗浄前)、製品板1〜6(実施例1〜6)、製品板11(比較例1)とした。結果を表1に示す。
(1)目視判定は、JIS規格JIS−Z0305鉄鋼の化学的清浄方法内の目視法に基づいて実施した。すなわち、白色光源による一定の間接照明が得られる場所において、清浄にした面を目から約30cm離して観察し、目視によって表面に残存している汚れのまたは清浄状態を、以下のように評価した。
A:汚れがなく清浄
C:汚れが明確
(2)冷却結露判定は、あらかじめ評価対象物の製品板を冷却させた後、常温の部屋に戻すことによって、製品板表面に結露を発生させ、評価対象物の濡れ性の違いを以下のように判定することにより、表面清浄状態を評価した。
【0051】
AA:洗浄斑が見られない
A:洗浄斑が僅かに認められる
B:洗浄斑が少し認められる
C:洗浄斑が明確に認められる
D:製品板全面が白濁して洗浄斑が認められない
(3)濡れ張力試験は、JIS−K6768プラスチック―フィルム及びシート―濡れ張力試験方法に基づいて実施したもので、製品板の試験表面の濡れ張力に対し、これと近似する濡れ張力試験標準液の表面張力を測定して評価した。単位はmN/mで表し、数値が大きいほど濡れ性が高いと判断できる。
(4)洗浄液飛散状況は洗浄運転時におけるガスノズル2、3のエアによる洗浄液の飛散、洗浄液供給ノズルからの供給時の洗浄液飛散、また飛散した洗浄液がガスノズル2、3の領域外に堆積した量から総合的に判断した。飛散する洗浄液の清浄度の違いなどあるため、この判定が直接製品評価へ結びつくものではないが、洗浄装置の運転安定性に関する指標とすることができる。
【0052】
◎:洗浄液の飛散がほとんどなく、ベルト13上への液滴堆積もない
○:洗浄液の飛散はあるが、ベルト13上への液滴堆積はない
□:洗浄液の飛散があり、ベルト13上への液滴堆積は僅かにある
△:洗浄液の飛散があり、ベルト13上への液滴堆積は少しある
×:洗浄液の飛散が多量あり、ベルト13上への液滴堆積も大量にある
―:洗浄操作を実施していない
(5)製品として使用できるかを前記(1)、(2)、(3)の結果から以下のように総合評価した。
◎:製品として非常に優れたものである
○:製品として優れたものである
□:製品として平均的なものである
△:製品として劣る
×:製品として使用できない
【0053】
【表1】

結果から、実施例1〜6において、洗浄前よりも洗浄後の製品評価が向上したことが明らかになった。製品板0においては、全面に斑なく目視において白色の汚染が見受けられ洗浄斑は認められなかった。製品板1においては、汚染物質が除去され目視判定において良好な結果を得ているが、冷却結露判定を実施した際には、ガスノズル3によって洗浄液を除去・乾燥する際の洗浄斑が板状製品の濡れ性の違いとして少し確認された。製品板2においては、洗浄液の清浄度も高くなっているため、製品評価では良好な結果が得られているが、洗浄時の液飛散による乾燥したベルト上への洗浄液滴堆積により、冷却結露判定においてわずかに水滴跡が確認された。製品板3においては、実施例3において実施例2と比較して洗浄領域が増加していることにより、さらに汚染物質の除去がなされたと考えられる。その結果として濡れ張力試験においては、製品板2と比較して張力が低く、そして差が小さくなっている。製品板4においては、実施例3に加えて仕切り板9を設置したことにより、ガスノズル3の下流側への洗浄液堆積がなくなることで、冷却結露判定での結果が改善された。上流側への洗浄液堆積は依然確認されているが、冷却結露判定において洗浄斑が確認されない理由としては、上流側へ飛散する洗浄液は、洗浄液の除去・乾燥を行うガスノズル3からの飛散がほとんどであり、飛散した洗浄液が清浄になっていること、さらに洗浄液滴跡が発生していたとしてもその後に洗浄領域を通過することから洗浄斑として確認されなかったと考える。また、濡れ張力試験において製品板3との違いが認められなかったのは、ある程度の範囲をまとめて測定する試験方法であるため、微小液滴が堆積した程度の大きさに関しては、違いを検知できないものと考える。製品板5においては、仕切り板9、10を設置することで、洗浄の上流、下流への洗浄液の飛散・堆積は確認されず、全てにおいて良好な結果を得た。製品板6に関しても、製品としての評価は製品板5と変わらず、洗浄操作の安定性の面で、洗浄液供給時の液飛散がないため優れている。
【0054】
製品11については、エンドレスベルト上に堆積していた汚れが一度溶解されるものの、汚れを含んだ洗浄液がそのままガスノズル3によって除去・乾燥されることとなった。そのため、洗浄前の製品板0では均一に広がっていた汚染物質が局所的に再堆積することで、余計に製品として問題を引き起こす結果となった。洗浄液供給時の液飛散も多いことから、汚染物質がさらにベルト上に堆積する結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のシート状物の洗浄方法を適用した洗浄装置の一例の模式的側面図を示す図である。
【図2】本発明のシート状物の洗浄方法を適用した洗浄装置の一例の模式的上面図を示す図である。
【図3】本発明のシート状物の洗浄方法を適用した洗浄装置の他の例の模式的側面図を示す図である。
【図4】本発明のシート状物の洗浄方法を適用したベルト式連続製板装置の模式的側断面図を示す図である。
【図5】本発明のシート状物の洗浄方法を適用した他のベルト式連続製板装置の模式的側断面図を示す図である。
【図6】比較例1の円形洗浄液供給ノズルを設けた洗浄装置の上面図を示す図である。
【図7】従来例の洗浄装置の模式図を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 シート状物
2 ガスノズル(上流側)
3 ガスノズル(下流側)
4、5 洗浄液供給ノズル
6、7、8 洗浄液
9 、10、11、11′ 洗浄液飛散防止仕切り板
12、12′ 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行するシート状物の上面を洗浄液を用いて洗浄する際、
シート状物上に設けられたガスノズルからガスを供給してシート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成し、
この1対のガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面にその幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液供給ノズルから洗浄液をシート状物の幅1mあたり5L/min〜50L/minで供給し、
洗浄液供給ノズルから供給された洗浄液を1対のガス流間に位置するシート状物の上面に堆積、滞留させると共に、1対のガス流間のシート状物上に滞留する洗浄液の上流と下流間での混合を抑制することにより、シート状物上面を上流側から下流側へ向かってより清浄度の高い洗浄液へ移行して洗浄を行ない、
下流側のガス流によりシート状物上面の洗浄液の除去を行なうシート状物の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄液供給ノズルが、シート状物の走行方向に添って順次2以上が設けられたものである請求項1記載のシート状物の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄液が導電率2μS/cm以下の純水である請求項1又は請求項2記載のシート状物の洗浄方法。
【請求項4】
シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成する上流側のガスノズル上部、下流側のガスノズル上部、およびガスノズルと洗浄液供給ノズルとの間から選ばれる少なくとも1箇所に、シート状物の幅全体に亘って洗浄液飛散防止用仕切り板を設けた請求項1〜3のいずれか記載のシート状物の洗浄方法。
【請求項5】
シート状物がエンドレスベルトである請求項1〜4のいずれか記載のシート状物の洗浄方法。
【請求項6】
実質的に水平に連続走行するシート状物上に設けられ、該シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る鉛直下向きの上流側ガス流と下流側ガス流とをそれぞれ形成する上流側ガスノズルおよび下流側ガスノズルと、上流側ガス流および下流側ガス流で仕切られた一定領域のシート状物上面に、その幅方向に対応したスリット状の開口を有する洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルとを有する洗浄装置であって、洗浄液供給ノズルが、シート状物の走行方向に添って順次2以上が設けられたものであるシート状物の洗浄装置。
【請求項7】
シート状物の走行方向に対して一定領域を仕切る1対のガス流を形成するガスノズル上部、および/または、ガスノズルと洗浄液供給ノズルとの間に、シート状物の幅全体に亘って洗浄液飛散防止用仕切り板を少なくとも一つ以上設けた請求項6記載のシート状物の洗浄装置。
【請求項8】
シート状物がエンドレスベルトである請求項6又は7記載のシート状物の洗浄装置。
【請求項9】
相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた空間に、その一端より重合性原料を供給し、加熱ゾーン内でベルトの走行と共に重合性原料を固化させ、その他端より板状重合物を取り出して板状重合物を製造する際、
前記2個のエンドレスベルトの相対するベルト面のうちの少なくとも一方の面を、請求項1〜5のいずれかのシート状物の洗浄方法により洗浄する板状重合物の製造方法。
【請求項10】
重合性原料が、メタクリル酸メチルを含む請求項9記載の板状重合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−290620(P2006−290620A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45443(P2006−45443)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】