説明

シート状身体洗浄材

【課題】 肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材を提供する。
【解決手段】 界面活性剤を含有し、水で20倍に希釈した液のpHが3〜6.5である水性洗浄液を、極細合成繊維とセルロース系繊維との混合繊維からなる不織布に含浸させたシート状身体洗浄材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布等に界面活性剤を含浸させ、水を加えて泡立てて使用される洗浄用シートが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。シートは、皮膚をマッサージして洗浄するために使用されることから、適度な強度と柔らかな感触を有することが必要であり、界面活性剤を含有する洗浄剤は、低刺激で泡立ちが良いことも必要である。しかしながら、従来の洗浄用シートでは、洗浄のために皮膚をこすりすぎると肌を傷める場合があるなど、十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開2003−27094号公報
【特許文献2】特開2002−363063号公報
【特許文献3】特開2003−95861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、界面活性剤を含有する弱酸性の水性洗浄液を、特定の不織布に含浸させることにより、肌への感触が優しく、使用感も良好なシート状身体洗浄材が得られることを見出した。
【0005】
本発明は、界面活性剤を含有し、水で20倍に希釈した液のpHが3〜6.5である水性洗浄液を、極細合成繊維とセルロース系繊維との混合繊維からなる不織布に含浸させたシート状身体洗浄材を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシート状身体洗浄材は、肌への感触が優しく、使用感も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のシート状身体洗浄材は、特定の混合繊維不織布に、界面活性剤を含有する弱酸性の水性洗浄液を含浸させてなる。本発明で用いる界面活性剤としては、身体洗浄剤としての使用に適した起泡性を有するアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤であればいずれでも良い。
【0008】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩、アルキル(又はアルケニル)硫酸塩、エーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化イセチオン酸塩、アシル化タウレート、N−アルキルアミドアルカノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミドエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらのうち、アルキルリン酸エステル塩が好ましく、特に一般式(1)、(2):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは平均炭素数9〜15で、分岐率10%以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、X1、X2及びX3はそれぞれ水素原子又はアルカリ金属を示し、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す0〜5の数である)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が好ましい。
【0011】
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド、アルキルサッカライド、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0012】
両性界面活性剤としては、例えばカルボベタイン、スルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミドベタイン等が挙げられる。
【0013】
これらのうち、起泡性の点から、特にアニオン界面活性剤が好ましい。
【0014】
界面活性剤は、1種以上を用いることができ、水性洗浄液の全組成中に10〜30質量%、特に15〜25質量%含有させるのが、十分な泡立ちと良好な使用感が得られるため好ましい。
【0015】
本発明で用いる水性洗浄液は、前記の界面活性剤を含有し、20倍水希釈液のpHが3〜6.5、好ましくは5〜6のものである。この範囲内であれば、肌に適用する際の刺激が低く好ましい。
pHの調整は、酸又はアルカリ水溶液を用いて行えば良い。
なお、pHは、水性洗浄液をイオン交換水で20倍に希釈した希釈液について、25℃において、pHメーターを用いて測定されるものである。
【0016】
本発明で用いる水性洗浄液は、更に増泡剤を含有することができる。増泡剤としては、脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル等を用いることができる。
脂肪酸としては、炭素数10〜18のものが好ましく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、炭素数10〜18のものが好ましく、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するものが挙げられる。例えば、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の、炭素数4〜12のアルキル基を有するものが好ましい。
【0017】
増泡剤は、1種以上を用いることができ、水性洗浄液の全組成中に1〜10質量%、特に2〜5質量%含有するのが、使用時の泡立ちと長期保存時の品質維持の観点から好ましい。
【0018】
本発明で用いる水性洗浄液は、更にスキンケア剤を含有することができる。スキンケア剤としては、多価アルコール、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤;流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素類、コレステロール、フィトステロール等のステロール類、動植物油、エステル油などの油性成分が挙げられる。
これらのスキンケア剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜20質量%、特に5〜17質量%含有するのが、使用感向上のため好ましい。
【0019】
水性洗浄液には、前記成分以外に、更に、トリクロサン、トリクロロカルバニリド等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール等の防腐剤;エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩等のキレート剤;その他、香料、l−メントール等の冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキス、エタノールなどを含有させることができる。
このように、界面活性剤を主体とし、各種成分を含んでもよい水性洗浄液に含まれる水は、30〜70質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明において、前記の水性洗浄液を含浸させるシート状基材は、極細合成繊維とセルロース系繊維との混合繊維からなる不織布である。
極細合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、アセテート等の疎水性繊維からなる極細繊維又は分割繊維が好ましい。極細合成繊維の繊度は、0.1〜3.3dtex、特に0.1〜1.1dtexであるのが好ましい。ここに、dtexは繊維の単位長さ(10000m)あたりの重量である。この数字が低いほど細い繊維となる。繊維径で表すと、10μm以下であることが、感触が良好で、使用時に空気を好適に巻き込むことで洗浄剤の泡立ちが増すことから好ましい。
分割繊維の場合、分割前の繊度が1.1〜4.4dtex、分割数は4〜22であることが繊維間距離が狭くなり泡立ちの点で好ましい。
【0021】
繊維の繊維長は、5〜60mmであるのが、密度が高く、使用時の泡立ちの点で好ましい。また、繊維の形状は、三角形、星形など、感触の影響ない範囲で変更できる。
【0022】
また、セルロース系繊維としては、コットン、レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル等が挙げられ、特にレーヨンが好ましい。
【0023】
極細合成繊維とセルロース系繊維の混合割合は、極細合成繊維:セルロース系繊維=20:80(wt/wt)〜80:20(wt/wt)、特に40:60(wt/wt)〜60:40(wt/wt)であることが、シートの耐久性と肌への感触を両立できるため好ましい。
不織布の目付け(坪量)は、30〜100g/m2、特に40〜60g/m2であるのが好ましい。
【0024】
また、シート状基材の形状、大きさ等は特に制限されず、円形、正方形、長方形等の形状のものを、目的に応じて選択することができる。
厚みは0.1〜4mm、特に0.2〜3mmであることが、使い勝手及び携帯性の点で好ましい。厚みは3.7g/cm2荷重下で測定された値である。
密度(見かけ比重)は、0.01〜0.3g/cm3、特に0.1〜0.25g/cm3であることが、水性洗浄液の含浸性と使用時の泡立ちの点から好ましい。
【0025】
本発明の身体洗浄材は、泡立ちを向上させ洗浄性を上げるために、水を加えて使用する時に空気を巻き込むことが好ましい。このためには、不織布が、次式で表される空隙率が70〜99%、特に85〜99%であるのが好ましい。
【0026】
空隙率(%)=(1−(ρ’/ρ))×100
(式中、ρ:シートの比重、ρ’:シートの見かけ比重)
【0027】
本発明の身体洗浄材においては、不織布の平均繊維間距離を1〜100μm、特に1〜50μmにすることが、液の含浸性に優れ、より細かい泡を形成する上で好ましい。
平均繊維間距離は以下の方法で算出される。不織布の厚みをL(cm)、坪量をw(g/m2)、構成繊維iの繊度をDi(dtex)、構成繊維iの重量割合をαi(%)、構成繊維の平均直径をFd(μm)とすると、平均繊維間距離Dpは以下の式で表される。
【0028】
【数1】

【0029】
繊度Diは、示差走査熱量計を用いて個々の繊維の種類を特定し、特定された繊維の密度di(g/cm3)と、構成繊維iの直径Fdi(μm)とから、次式により算出される。
Di=1000000(cm)×断面積(cm2)×比重(g/cm3
=1000000×π(Fdi/2)2 ×di
【0030】
また、不織布は単層に限らず多層でも良い。多層、例えば3層の場合、中間層に潜在捲縮繊維などを用いてクッション層を設け、空気を押し出す設計にすれば、泡立ちが更に増し好ましい。
【0031】
不織布の製法としては特に制限されないが、スパンレース法のほか、湿式スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、レジンボンド法などが、感触の点で好ましい。
不織布に繊維の粗密密度勾配を設けたり、エンボス加工等でパターニングを行って、密度の高い部分と低い部分を設けても良い。
【0032】
本発明においては、このような不織布に前記水性洗浄液を含浸させる。含浸率は、シート1gに対して1〜3g/g、特に2〜2.5g/gであるのが好ましい。
【0033】
本発明のシート状身体洗浄材は、上記のように特定の不織布に水性洗浄液を含浸させたウェットタイプ洗浄材であり、身体洗浄用、特に洗顔料として好適である。ウェットタイプのシート状洗浄材においては、液剤の揮散を防ぐために、密封包装して保存されるのが好ましい。
【0034】
本発明のシート状身体洗浄材は、使用時に水を加えて泡立て、シートを用いて身体をマッサージするようにして洗浄することができる。
【実施例】
【0035】
実施例及び比較例
表1に示す組成のシート状身体洗浄材(水性洗浄液の含浸量2.3g/g(シート))を製造し、起泡性、肌への感触、使用性、肌への刺激を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0036】
(評価方法)
(1)起泡性、肌への感触、使用性:
専門パネルにより、各シート状身体洗浄材に適量の水を加えて泡立て、これを用いて顔を洗浄し、水道水ですすぎを行なった。そのときの起泡性、肌への感触及び使用性を官能評価し、以下の基準で判定した。なお、使用性とは、洗浄用シートとしての使いやすさを言い、水を加えて泡立て、皮膚に適用する際に、破れたり丸まってしまうことがなく、スムーズに使用できるのが好ましい。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0037】
(2)肌への刺激:
カップシェイク法により評価した。すなわち、各水性洗浄液をイオン交換水で5倍に希釈した液を調製し、この水溶液10mLを専門パネル10名の前腕に設置した直径3.5cmのガラス製カップにとり、1日30分間皮膚と接触させた。これを3日間連続して行った後、皮膚の状態を以下の基準で評価した。
○:落せつが認められたのは5名以下。
△:6名以上に落せつが認められたが、紅斑は認められなかった。
×:6名以上に落せつ及び紅斑が認められた。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有し、水で20倍に希釈した液のpHが3〜6.5である水性洗浄液を、極細合成繊維とセルロース系繊維との混合繊維からなる不織布に含浸させたシート状身体洗浄材。
【請求項2】
界面活性剤が、アニオン界面活性剤である請求項1記載のシート状身体洗浄材。
【請求項3】
界面活性剤が、アルキルリン酸エステル塩である請求項1又は2記載のシート状身体洗浄材。
【請求項4】
水性洗浄液中に増泡剤を1〜10質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシート状身体洗浄材。

【公開番号】特開2006−45096(P2006−45096A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226661(P2004−226661)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】