シート状部材及び電子機器
【課題】発熱体から放熱体への熱の伝導を高効率で行うことができるシート状部材及び電子機器を提供する。
【解決手段】シート状部材の一態様には、充填層4と、充填層4の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブ2と、が設けられている。更に、複数の第1のカーボンナノチューブ2の充填層4の第2の主面側の端部と第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブ3が設けられている。
【解決手段】シート状部材の一態様には、充填層4と、充填層4の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブ2と、が設けられている。更に、複数の第1のカーボンナノチューブ2の充填層4の第2の主面側の端部と第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブ3が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ及びパーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等の電子部品の内部では、大量の熱が発生するため、電子部品には熱伝導性シート等のサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)を介してヒートスプレッダが放熱体として設けられている。従来、熱伝導性シートの材料としてはインジウム等が用いられ、ヒートスプレッダの材料としては銅等が用いられている。
【0003】
近年、電子部品に含まれる半導体素子の集積度が高まるに連れて、熱の発生量が増加しており、熱伝導性シートにより高い熱伝導度が要求されている。また、インジウムの価格が上昇しており、より安価な材料への移行も要求されている。
【0004】
そこで、カーボンナノチューブを用いた熱伝導性シートが注目されている。インジウムの熱伝導度が80W/m・K程度であるのに対し、カーボンナノチューブの熱伝導度は1500W/m・K〜3000W/m・Kと非常に高い。また、カーボンナノチューブは柔軟性及び耐熱性を備えている。
【0005】
しかしながら、これまでのところ、カーボンナノチューブを用いた熱伝導性シートを電磁部品とヒートスプレッダとの間に介在させても十分に放熱させることが困難である。このような問題点は、電子部品の放熱だけでなく自動車のエンジン等の発熱体を用いた構造物にも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−150362号公報
【特許文献2】特開2006−147801号公報
【特許文献3】特開2006−303240号公報
【特許文献4】特開2006−290736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発熱体から放熱体への熱の伝導を高効率で行うことができるシート状部材及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
シート状部材の一態様には、充填層と、前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、が設けられている。更に、前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
上記のシート状部材等によれば、第2のカーボンナノチューブが発熱体又は放熱体と接することが可能であるため、発熱体から放熱体への熱の伝導を高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図2】シート状部材の使用方法の一例を示す図である。
【図3】図2に引き続き、シート状部材の使用方法の一例を示す図である。
【図4】電子機器の構造の一例を示す図である。
【図5A】第1の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図5B】図5Aに引き続き、第1の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図7A】第2の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図7B】図7Aに引き続き、第2の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図8】第3の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係るシート状部材の製造方法を示す図である。
【図10】第4の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図11A】第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図11B】図11Aに引き続き、第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図11C】図11Bに引き続き、第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図12】発熱体及び放熱体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るシート状部材(熱伝導性シート)を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係るシート状部材1には、フィルム状の充填層4が設けられており、この充填層4の底部に複数のカーボンナノチューブ3が分散している。カーボンナノチューブ3の長さは、例えば数μmである。また、シート状部材1には、充填層4の内部から外部まで上方に伸びる複数のカーボンナノチューブ2も設けられている。カーボンナノチューブ2の長さは、例えば5μm〜500μm程度である。また、カーボンナノチューブ2の面密度は、例えば1×1010本/cm2以上である。
【0014】
充填層4の材料は、例えば熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂は、温度に応じて液体と固体との間で可逆的に状態変化し、室温では固体であり、加熱すると液状に変化し、冷却すると接着性を発現しつつ固体に戻るものであれば、特に限定されるものではない。
【0015】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下に示すホットメルト樹脂が挙げられる。ポリアミド系ホットメルト樹脂としては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」(軟化点温度:140℃)が挙げられる。また、ポリエステル系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社の「DH598B」(軟化点温度:133℃)が挙げられる。また、ポリウレタン系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DH722B」が挙げられる。また、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、例えば、松村石油株式会社製の「EP−90」(軟化点温度:148℃)が挙げられる。また、エチレン共重合体ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DA574B」(軟化点温度:105℃)が挙げられる。また、SBR系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6250」(軟化点温度:125℃)が挙げられる。また、EVA系ホットメルト樹脂としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の「3747」(軟化点温度:104℃)が挙げられる。また、ブチルゴム系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6158」が挙げられる。
【0016】
このように構成されたシート状部材1は、例えば次のように熱伝導性シートとして使用される。図2は、シート状部材1の使用方法の一例を工程順に示す図である。
【0017】
先ず、図2(a)に示すように、シート状部材1を発熱体11と放熱体12との間に介在させる。発熱体11としては、例えばCPU等の電子部品、及び自動車のエンジンのエキゾーストシステム等を用いることができる。放熱体12としては、例えばヒートスプレッダ等を用いることができる。このとき、例えば充填層4の底面を発熱体11に接触させ、カーボンナノチューブ2の上端を放熱体12に接触させる。なお、充填層4の底面を放熱体12に接触させ、カーボンナノチューブ2の上端を発熱体11に接触させてもよい。
【0018】
次いで、放熱体12及び発熱体11を互いに加熱圧着する。この結果、熱可塑性樹脂からなる充填層4が液化し(リフロー)、放熱体12と発熱体11との間で濡れ広がり、カーボンナノチューブ2の隙間に浸透する。更に、充填層4がカーボンナノチューブ2の隙間に浸透するに連れてカーボンナノチューブ3の周囲の充填層4が減少するため、カーボンナノチューブ3の密度が上昇し、互いに接する複数のカーボンナノチューブ3からなるCNT(カーボンナノチューブ)密集層3aが形成される。CNT密集層3aの一方の面は発熱体11に接し、他方の面は複数のカーボンナノチューブ2の下端に接する。そして、シート状部材1等の温度を室温に戻すと、図2(b)に示すように、シート状部材1を介して発熱体11と放熱体12とが熱的に連結された構造体が得られる。この構造体の断面図を図3に示す。
【0019】
図3に示すように、シート状部材1のCNT密集層3aの一方の面は発熱体11に接し、他方の面は複数のカーボンナノチューブ2の下端に接する。また、複数のカーボンナノチューブ2の上端は放熱体12に接する。従って、発熱体11として発熱すると、発熱体11から発せられた熱はCNT密集層3aに効率的に伝達され、更にカーボンナノチューブ2を介して放熱体12まで効率的に伝達される。そして、放熱体12から外部に放熱される。
【0020】
このように、第1の実施形態によれば、複数のカーボンナノチューブ2を充填する充填層4の底部に複数のカーボンナノチューブ3が分散しているため、加熱圧着後にカーボンナノチューブ3の密度が高いCNT密集層3aが形成される。CNT密集層3aの隙間には充填層4の熱可塑性樹脂も存在するが、その量は僅かである。このため、カーボンナノチューブ2と発熱体11との間の熱抵抗を極めて低くすることができ、発熱体11で発生した熱を効率的に放熱体12まで伝導することができる。
【0021】
なお、発熱体11として電子部品が用いられ、放熱体12としてヒートスプレッダが用いられた電子機器の構造は、例えば、図4に示すようなものになる。この電子機器では、プリント配線基板14上に複数のバンプ16、例えばはんだバンプを介してビルドアップ基板13が設けられている。また、ビルドアップ基板13上に複数のバンプ15、例えばはんだバンプを介して発熱体である電子部品51が設けられている。そして、電子部品51上にシート状部材1を介して放熱体であるヒートスプレッダ52が設けられている。
【0022】
なお、必ずしもカーボンナノチューブ2の上端が充填層4から露出している必要はない。放熱体12及び発熱体11を互いに加熱圧着する際に、充填層4のカーボンナノチューブ2の上端を覆っている部分が周囲に広がってカーボンナノチューブ2の上端が放熱体12に接触すれば効率的に熱を伝導することは可能である。
【0023】
また、カーボンナノチューブ2及び3は、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。また、カーボンナノチューブ2の面密度は、放熱性の観点から、1×1010本/cm2以上であることが望ましい。更に、カーボンナノチューブ2の長さは特に限定されず、シート状部材1の用途に応じて決定すればよい。
【0024】
次に、第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図5A乃至図5Bは、第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0025】
先ず、図5A(a)に示すように、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に触媒膜22を形成する。
【0026】
基板21としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、及びガラス基板等を用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものを用いてもよい。例えば、シリコン基板上に厚さが300nm程度のシリコン酸化膜が形成されたものを用いてもよい。後述のように、触媒膜22からカーボンナノチューブ2を成長させるが、その後に基板21は触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2から取り外される。従って、基板21は、カーボンナノチューブ2の形成温度において変質しない材料から構成されていることが望ましい。更に、基板21のカーボンナノチューブ2に接する面に、カーボンナノチューブ2から容易に剥離できる材料が存在しているか、又はカーボンナノチューブ2に対して選択的にエッチングできる材料が存在していることが望ましい。
【0027】
触媒膜22としては、例えば、Fe(鉄)膜、Co(コバルト)膜、Ni(ニッケル)膜、Au(金)膜、Ag(銀)膜、及びPt(白金)膜等を用いることができる。また、これらの材料の少なくとも一種を含む合金膜を用いてもよい。触媒膜22の厚さは、例えば2.5nm程度である。また、触媒膜22を形成する前に、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に下地膜を形成しておき、その上に触媒膜22を形成してもよい。下地膜の材料としては、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSix(チタンシリサイド)、Al(アルミニウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、及びTiN(チタンナイトライド)等が挙げられる。また、これらの材料の少なくとも一種を含む合金を用いてもよい。例えば、Alからなる厚さが10nm程度の下地膜上にFeからなる厚さが2.5nm程度の触媒膜22が形成されていてもよく、TiNからなる厚さが5nm程度の下地膜上にCoからなる厚さが2.6nm程度の触媒膜22が形成されていてもよい。
【0028】
また、触媒部として、触媒膜22に代えて、例えば微分型静電分級器(DMA:differential mobility analyzer)等を用いて粒径を所定範囲内に収めた複数の触媒粒子を用いてもよい。触媒粒子の材料としては、上述の触媒膜22の材料と同様のものを用いることができる。また、触媒粒子を分散する前に、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に下地膜を形成しておき、その上に触媒粒子を分散してもよい。例えば、TiNからなる厚さが5nm程度の下地膜上にCoからなる平均粒径が3.8nm程度の触媒粒子が分散していてもよい。
【0029】
次いで、同じく図5A(a)に示すように、基板21上に、例えばホットフィラメント化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法により、触媒膜22を触媒として、カーボンナノチューブ2を成長させる。カーボンナノチューブ2の成長条件に関し、例えば、原料ガスとして、アセチレンガス及びアルゴンガスの混合ガスを用い、成膜室内の総ガス圧を1kPaとし、ホットフィラメント温度を1000℃とし、成長時間を20分とする。混合ガスにおける分圧比は、アセチレンガス:アルゴンガスを1:9とする。このような条件下では、層数が3層〜6層(平均4層程度)、直径が4nm〜8nm(平均6nm程度)、長さが80μm程度の多層カーボンナノチューブが4μm/min程度の速度で成長する。なお、カーボンナノチューブ2を、熱CVD法及びリモートプラズマCVD法等の他の方法により形成してもよい。また、カーボンナノチューブ2として、単層カーボンナノチューブを形成してもよい。また、炭素原料として、アセチレンに代えて、メタン及びエチレン等の炭化水素類、並びにエタノール及びメタノール等のアルコール類等を用いてもよい。
【0030】
なお、上記の条件で本願発明者らが実際にカーボンナノチューブ2を形成したところ、触媒膜22上での面密度は1×1011本/cm2程度であった。
【0031】
このような触媒膜22及びカーボンナノチューブ2の形成の一方で、図5A(b)に示すように、充填層4の内部にカーボンナノチューブ3が分散した合成樹脂シート9を形成する。このような合成樹脂シート9の形成に当たっては、先ず、例えば超音波槽を用いて、有機溶剤に数質量%の合成樹脂(例えばポリアミド)を、温度を上げた状態で溶かし込む。合成樹脂としては充填層4の材料(熱可塑性樹脂)を用いる。次いで、例えば超音波槽を用いて、合成樹脂が溶け込んだ有機溶剤にカーボンナノチューブ3を0.1質量%〜数質量%程度で数時間かけ分散させる。その後、有機溶剤、合成樹脂及びカーボンナノチューブ3からなる混合物を剥離紙上に塗布し、例えばホットプレート上で溶剤を揮発させる。この結果、充填層4の内部にカーボンナノチューブ3が分散した合成樹脂シート9が得られる。必要に応じて、合成樹脂シート9の厚さを調整してもよい。例えば、合成樹脂シート9を2枚の剥離紙の間に挟み込み、合成樹脂の軟化温度付近で圧着すれば、合成樹脂シート9の厚さを制御することができる。
【0032】
その後、図5B(c)に示すように、合成樹脂シート9をカーボンナノチューブ2の上端に熱圧着する。
【0033】
続いて、図5B(d)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部をカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0034】
次いで、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。この取り外しの結果、図1に示すシート状部材1が得られる。なお、取り外しの方法は特に限定されず、例えば基板21の物理的な剥離によって行ってもよく、また、基板21及び触媒膜22のエッチングにより行ってもよい。
【0035】
なお、上記のカーボンナノチューブ2の成長条件では、触媒膜22が基板21上に残留するが、カーボンナノチューブ2の成長の結果、触媒膜22又は触媒粒子の全部又は一部がカーボンナノチューブ2の上端に位置してもよい。
【0036】
また、充填層4の材料である熱可塑性樹脂は、シート状部材1の用途に応じて選択すればよい。熱可塑性樹脂としては、その融解温度が発熱体11の発熱温度の上限値よりも高いものを選択することが望ましい。融解温度が発熱体11の発熱温度の上限値以下である場合、発熱体11の稼働時に熱可塑性樹脂が融解し、シート状部材1が変形して、発熱体11と放熱体12との間の熱抵抗が上昇する虞があるからである。また、熱可塑性樹脂としては、その融解温度が発熱体11及び放熱体12の耐熱温度よりも低いものを選択することが望ましい。上述のように、シート状部材1の設置の際には、発熱体11及び放熱体12の間でシート状部材1のリフローを行うことがあり、融解温度が発熱体11及び放熱体12の耐熱温度以上である場合、リフローの際に発熱体11及び/又は放熱体12に損傷が生じる虞があるからである。
【0037】
例えば、CPUの発熱温度の上限値は125℃程度であり、耐熱温度は150℃程度である。従って、発熱体11としてCPUを用いる場合、熱可塑性樹脂としては、融解温度が125℃〜150℃程度のものを選択することが望ましい。また、自動車のエンジンのエキゾーストシステムの発熱温度は500℃〜800℃程度である。従って、発熱体11としてエキゾーストシステムを用いる場合、熱可塑性樹脂としては、融解温度が600℃〜900℃程度のものを選択することが望ましい。
【0038】
また、充填層4に添加物が分散混合していてもよい。添加物としては、例えば熱伝導性の高い物質を用いることができる。このような物質としては、カーボンナノチューブ、金属、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、グラファイト、及びフラーレン等が挙げられる。このような添加物が充填層4に含まれている場合、シート状部材1全体の熱伝導率がより向上する。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0040】
図6に示すように、第2の実施形態では、各カーボンナノチューブ2の下端、つまりカーボンナノチューブ3側の端部に被膜5が形成されている。被膜5は、例えば厚さが数百nmの金(Au)膜である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0041】
このような第2の実施形態によれば、被膜5とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計が、第1の実施形態におけるカーボンナノチューブ2とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第1の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。
【0042】
被膜5の材料は特に限定されないが、熱伝導率が高いものを用いることが望ましい。例えば、銅(Cu)又はニッケル(Ni)を用いてもよい。また、被膜5が、複数の膜を含む積層体となっていてもよい。例えば、Ti膜及びAu膜の積層体が被膜5として用いられてもよい。被膜5の厚さも特に限定されないが、シート状部材1の製造過程で充填層4の浸透を阻害しない程度であることが望ましい。
【0043】
次に、第2の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図7A乃至図7Bは、第2の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0044】
先ず、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、例えば蒸着法により被膜5を各カーボンナノチューブ2の上端に形成する。なお、カーボンナノチューブ2の損傷を抑制することが可能であれば、スパッタリング法等により被膜5を形成してもよい。
【0045】
その後、図7B(b)に示すように、合成樹脂シート9を被膜5に熱圧着する。
【0046】
続いて、図7B(c)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部を被膜5及びカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0047】
次いで、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。この取り外しの結果、図6に示すシート状部材1が得られる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0049】
図8に示すように、第3の実施形態では、一部のカーボンナノチューブ2の下端に被膜5が形成され、他のカーボンナノチューブ2の下端に被膜6が形成されている。被膜5が1本のカーボンナノチューブ2の端部を被っているのに対し、被膜6は2本以上のカーボンナノチューブ2の端部を被っている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0050】
このような第3の実施形態によれば、被膜6とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計が、第2の実施形態における被膜5とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第2の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。更に、被膜6が複数のカーボンナノチューブ2を束ねているため、合成樹脂シート9の熱圧着時及び充填層4のリフロー時にカーボンナノチューブ2が散けにくくなる。
【0051】
被膜6の材料としては、被膜5の材料と同様のものを用いることができる。被膜6の厚さも特に限定されないが、シート状部材1の製造過程で充填層4の浸透を阻害しない程度であることが望ましい。例えば、カーボンナノチューブ2の直径が10nm、面密度が1×1011cm-2の場合、隣り合うカーボンナノチューブ2の間隙はおよそ50nmである。この場合、隣り合うカーボンナノチューブ2が被膜6に束ねられるためには、被膜6の厚さは、少なくとも間隙の半分以上の厚さ、すなわち膜厚25nm程度以上とすることが望ましい。その一方で、被膜6が厚すぎると、充填層4の浸透が阻害されてしまう。これらを考慮すると、カーボンナノチューブ2の直径が10nm、面密度が1×1011cm-2の場合、被膜6の膜厚は、25nm〜1000nm程度とすることが望ましい。
【0052】
次に、第3の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図9は、第3の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を示す図である。
【0053】
先ず、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、例えば蒸着法により被膜5を各カーボンナノチューブ2の上端に形成し、更に原料の供給を継続する。この結果、図9に示すように、一部の被膜5同士が結合し、被膜6が形成される。
【0054】
その後、第2の実施形態と同様の処理を行い、シート状部材1を完成させる。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図10は、第4の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0056】
図10に示すように、第4の実施形態では、カーボンナノチューブ2の上端に、被膜5と同様の被膜7及び被膜6と同様の被膜8が形成されている。被膜7が1本のカーボンナノチューブ2の端部を被っているのに対し、被膜8は2本以上のカーボンナノチューブ2の端部を被っている。他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0057】
このような第4の実施形態によれば、被膜7及び8と発熱体又は放熱体との接触面積の総計が、第3の実施形態におけるカーボンナノチューブ2の上端と発熱体又は放熱体との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第3の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。更に、被膜8が複数のカーボンナノチューブ2を束ねているため、充填層4のリフロー時にカーボンナノチューブ2がより一層散けにくくなる。
【0058】
被膜7及び8の材料としては、被膜5の材料と同様のものを用いることができる。被膜7及び8の厚さも特に限定されない。
【0059】
次に、第4の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図11A乃至図11Cは、第4の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0060】
先ず、一時的にカーボンナノチューブ2を支持する基板の準備を行う。即ち、図11A(a)に示すように、基板41上に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜42を形成する。フォトレジスト膜42の厚さは、例えば6μm程度とする。基板41としては、例えばサファイア基板等を用いることができ、基板41の材料は特に限定されない。
【0061】
その一方で、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、図11A(b)に示すように、第3の実施形態における被膜5及び被膜6の形成と同様にして、カーボンナノチューブ2の上端に被膜7及び被膜8を形成する。その後、被膜7及び被膜8とフォトレジスト膜42とを対向させ、加圧することにより、被膜7及び被膜8をフォトレジスト膜42の内部まで進入させる。その後、フォトレジスト膜42を硬化させる。
【0062】
続いて、図11B(c)に示すように、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。そして、カーボンナノチューブ2の上下を反転させる。この結果、少なくとも一部のカーボンナノチューブ2の自重により若干湾曲する。
【0063】
次いで、図11B(d)に示すように、第3の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の上端に被膜5及び6を形成する。
【0064】
その後、図11C(e)に示すように、合成樹脂シート9を被膜5及び被膜6に熱圧着する。
【0065】
続いて、図11C(f)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部を被膜5、被膜6及びカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0066】
次いで、基板41をフォトレジスト膜42と共に取り外す。この取り外しの結果、図10に示すシート状部材1が得られる。
【0067】
なお、第2、第3及び第4の実施形態のシート状部材1も、図2、図3及び図4に示すように、第1の実施形態と同様に使用することができる。また、いずれの実施形態のシート状部材1を用いる場合であっても、図12に示すように、発熱体11にカーボンナノチューブ2の横方向への移動を拘束する凹部11aが形成され、放熱体12にカーボンナノチューブ2の横方向への移動を拘束する凹部12aが形成されていることが好ましい。カーボンナノチューブ2の散らけ等を抑制して高い熱伝導率を確保するためである。なお、凹部11a及び凹部12aの一方のみが形成されていてもよい。この場合には、カーボンナノチューブ3を介さずにカーボンナノチューブ2が直接接する発熱体11又は放熱体12に凹部11a又は凹部12aが形成されていることが好ましい。図12に示す例では、放熱体12に凹部12aが形成されていることが好ましい。カーボンナノチューブ3が存在する端部よりも存在しない端部の方が、カーボンナノチューブ2の散らけが生じやすいからである。
【0068】
また、凹部11a及び凹部12aの有無に拘わらず、カーボンナノチューブ2のカーボンナノチューブ3が存在しない端部と発熱体11又は放熱体12との間に、合成樹脂シート9と同様の合成樹脂シートを介在させて加熱圧着を行ってもよい。この場合には、カーボンナノチューブ2の両端にCNT密集層3aが存在することになる。
【0069】
また、これらのシート状部材1は熱伝導性シートの他に導電性シートとして使用することもできる。例えば、2つの電子部品の間を電気的に接続する導電部材として使用することができる。この場合、充填層4には、導電率が高い物質が含まれていることが好ましい。このような物質としては、カーボンナノチューブ、及び金属等が挙げられる。
【0070】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0071】
(付記1)
充填層と、
前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とするシート状部材。
【0072】
(付記2)
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第2の主面側の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする付記1に記載のシート状部材。
【0073】
(付記3)
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第1の主面側の端部を束ねる第2の被膜を有することを特徴とする付記1又は2に記載のシート状部材。
【0074】
(付記4)
前記充填層は、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0075】
(付記5)
前記第1のカーボンナノチューブは前記第1の主面を貫通して前記充填層の外部まで延びていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0076】
(付記6)
前記複数の第1のカーボンナノチューブは湾曲部を有し、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの少なくとも一部は、他の第1のカーボンナノチューブに接触していることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0077】
(付記7)
前記第1のカーボンナノチューブの面密度は、1×1010本/cm2以上であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0078】
(付記8)
電子部品と、
前記電子部品に第1の主面が接する熱伝導性シートと、
前記熱伝導性シートの第2の主面に接する放熱体と、
を有し、
前記熱伝導性シートは、
充填層と、
前記充填層の内部に設けられ、一方の端部が前記電子部品及び前記放熱体の一方に接し、前記電子部品及び前記放熱体の他方に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記充填層の内部に設けられ、前記複数の第1のカーボンナノチューブの他方の端部並びに前記電子部品及び前記放熱体の他方に接する複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする電子機器。
【0079】
(付記9)
前記熱伝導性シートは、前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記他方の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする付記8に記載の電子機器。
【0080】
(付記10)
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
を有することを特徴とするシート状部材の製造方法。
【0081】
(付記11)
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
前記基板を前記第1のカーボンナノチューブから取り外す工程と、
前記合成樹脂シート及び前記第1のカーボンナノチューブの一方を電子部品に接触させ、他方を放熱体に接触させながら、前記電子部品及び前記放熱体を加熱圧着する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【符号の説明】
【0082】
1:シート状部材
2、3:カーボンナノチューブ
3a:CNT密集層
4:充填層
5、6、7、8:被膜
9:合成樹脂シート
11:発熱体
12:放熱体
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ及びパーソナルコンピュータの中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等の電子部品の内部では、大量の熱が発生するため、電子部品には熱伝導性シート等のサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)を介してヒートスプレッダが放熱体として設けられている。従来、熱伝導性シートの材料としてはインジウム等が用いられ、ヒートスプレッダの材料としては銅等が用いられている。
【0003】
近年、電子部品に含まれる半導体素子の集積度が高まるに連れて、熱の発生量が増加しており、熱伝導性シートにより高い熱伝導度が要求されている。また、インジウムの価格が上昇しており、より安価な材料への移行も要求されている。
【0004】
そこで、カーボンナノチューブを用いた熱伝導性シートが注目されている。インジウムの熱伝導度が80W/m・K程度であるのに対し、カーボンナノチューブの熱伝導度は1500W/m・K〜3000W/m・Kと非常に高い。また、カーボンナノチューブは柔軟性及び耐熱性を備えている。
【0005】
しかしながら、これまでのところ、カーボンナノチューブを用いた熱伝導性シートを電磁部品とヒートスプレッダとの間に介在させても十分に放熱させることが困難である。このような問題点は、電子部品の放熱だけでなく自動車のエンジン等の発熱体を用いた構造物にも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−150362号公報
【特許文献2】特開2006−147801号公報
【特許文献3】特開2006−303240号公報
【特許文献4】特開2006−290736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発熱体から放熱体への熱の伝導を高効率で行うことができるシート状部材及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
シート状部材の一態様には、充填層と、前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、が設けられている。更に、前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
上記のシート状部材等によれば、第2のカーボンナノチューブが発熱体又は放熱体と接することが可能であるため、発熱体から放熱体への熱の伝導を高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図2】シート状部材の使用方法の一例を示す図である。
【図3】図2に引き続き、シート状部材の使用方法の一例を示す図である。
【図4】電子機器の構造の一例を示す図である。
【図5A】第1の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図5B】図5Aに引き続き、第1の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図7A】第2の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図7B】図7Aに引き続き、第2の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図8】第3の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係るシート状部材の製造方法を示す図である。
【図10】第4の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【図11A】第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図11B】図11Aに引き続き、第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図11C】図11Bに引き続き、第4の実施形態に係るシート状部材の製造方法を工程順に示す図である。
【図12】発熱体及び放熱体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るシート状部材(熱伝導性シート)を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係るシート状部材1には、フィルム状の充填層4が設けられており、この充填層4の底部に複数のカーボンナノチューブ3が分散している。カーボンナノチューブ3の長さは、例えば数μmである。また、シート状部材1には、充填層4の内部から外部まで上方に伸びる複数のカーボンナノチューブ2も設けられている。カーボンナノチューブ2の長さは、例えば5μm〜500μm程度である。また、カーボンナノチューブ2の面密度は、例えば1×1010本/cm2以上である。
【0014】
充填層4の材料は、例えば熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂は、温度に応じて液体と固体との間で可逆的に状態変化し、室温では固体であり、加熱すると液状に変化し、冷却すると接着性を発現しつつ固体に戻るものであれば、特に限定されるものではない。
【0015】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下に示すホットメルト樹脂が挙げられる。ポリアミド系ホットメルト樹脂としては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製の「Micromelt6239」(軟化点温度:140℃)が挙げられる。また、ポリエステル系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社の「DH598B」(軟化点温度:133℃)が挙げられる。また、ポリウレタン系ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DH722B」が挙げられる。また、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、例えば、松村石油株式会社製の「EP−90」(軟化点温度:148℃)が挙げられる。また、エチレン共重合体ホットメルト樹脂としては、例えば、ノガワケミカル株式会社製の「DA574B」(軟化点温度:105℃)が挙げられる。また、SBR系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6250」(軟化点温度:125℃)が挙げられる。また、EVA系ホットメルト樹脂としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の「3747」(軟化点温度:104℃)が挙げられる。また、ブチルゴム系ホットメルト樹脂としては、例えば、横浜ゴム株式会社製の「M−6158」が挙げられる。
【0016】
このように構成されたシート状部材1は、例えば次のように熱伝導性シートとして使用される。図2は、シート状部材1の使用方法の一例を工程順に示す図である。
【0017】
先ず、図2(a)に示すように、シート状部材1を発熱体11と放熱体12との間に介在させる。発熱体11としては、例えばCPU等の電子部品、及び自動車のエンジンのエキゾーストシステム等を用いることができる。放熱体12としては、例えばヒートスプレッダ等を用いることができる。このとき、例えば充填層4の底面を発熱体11に接触させ、カーボンナノチューブ2の上端を放熱体12に接触させる。なお、充填層4の底面を放熱体12に接触させ、カーボンナノチューブ2の上端を発熱体11に接触させてもよい。
【0018】
次いで、放熱体12及び発熱体11を互いに加熱圧着する。この結果、熱可塑性樹脂からなる充填層4が液化し(リフロー)、放熱体12と発熱体11との間で濡れ広がり、カーボンナノチューブ2の隙間に浸透する。更に、充填層4がカーボンナノチューブ2の隙間に浸透するに連れてカーボンナノチューブ3の周囲の充填層4が減少するため、カーボンナノチューブ3の密度が上昇し、互いに接する複数のカーボンナノチューブ3からなるCNT(カーボンナノチューブ)密集層3aが形成される。CNT密集層3aの一方の面は発熱体11に接し、他方の面は複数のカーボンナノチューブ2の下端に接する。そして、シート状部材1等の温度を室温に戻すと、図2(b)に示すように、シート状部材1を介して発熱体11と放熱体12とが熱的に連結された構造体が得られる。この構造体の断面図を図3に示す。
【0019】
図3に示すように、シート状部材1のCNT密集層3aの一方の面は発熱体11に接し、他方の面は複数のカーボンナノチューブ2の下端に接する。また、複数のカーボンナノチューブ2の上端は放熱体12に接する。従って、発熱体11として発熱すると、発熱体11から発せられた熱はCNT密集層3aに効率的に伝達され、更にカーボンナノチューブ2を介して放熱体12まで効率的に伝達される。そして、放熱体12から外部に放熱される。
【0020】
このように、第1の実施形態によれば、複数のカーボンナノチューブ2を充填する充填層4の底部に複数のカーボンナノチューブ3が分散しているため、加熱圧着後にカーボンナノチューブ3の密度が高いCNT密集層3aが形成される。CNT密集層3aの隙間には充填層4の熱可塑性樹脂も存在するが、その量は僅かである。このため、カーボンナノチューブ2と発熱体11との間の熱抵抗を極めて低くすることができ、発熱体11で発生した熱を効率的に放熱体12まで伝導することができる。
【0021】
なお、発熱体11として電子部品が用いられ、放熱体12としてヒートスプレッダが用いられた電子機器の構造は、例えば、図4に示すようなものになる。この電子機器では、プリント配線基板14上に複数のバンプ16、例えばはんだバンプを介してビルドアップ基板13が設けられている。また、ビルドアップ基板13上に複数のバンプ15、例えばはんだバンプを介して発熱体である電子部品51が設けられている。そして、電子部品51上にシート状部材1を介して放熱体であるヒートスプレッダ52が設けられている。
【0022】
なお、必ずしもカーボンナノチューブ2の上端が充填層4から露出している必要はない。放熱体12及び発熱体11を互いに加熱圧着する際に、充填層4のカーボンナノチューブ2の上端を覆っている部分が周囲に広がってカーボンナノチューブ2の上端が放熱体12に接触すれば効率的に熱を伝導することは可能である。
【0023】
また、カーボンナノチューブ2及び3は、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。また、カーボンナノチューブ2の面密度は、放熱性の観点から、1×1010本/cm2以上であることが望ましい。更に、カーボンナノチューブ2の長さは特に限定されず、シート状部材1の用途に応じて決定すればよい。
【0024】
次に、第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図5A乃至図5Bは、第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0025】
先ず、図5A(a)に示すように、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に触媒膜22を形成する。
【0026】
基板21としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、及びガラス基板等を用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものを用いてもよい。例えば、シリコン基板上に厚さが300nm程度のシリコン酸化膜が形成されたものを用いてもよい。後述のように、触媒膜22からカーボンナノチューブ2を成長させるが、その後に基板21は触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2から取り外される。従って、基板21は、カーボンナノチューブ2の形成温度において変質しない材料から構成されていることが望ましい。更に、基板21のカーボンナノチューブ2に接する面に、カーボンナノチューブ2から容易に剥離できる材料が存在しているか、又はカーボンナノチューブ2に対して選択的にエッチングできる材料が存在していることが望ましい。
【0027】
触媒膜22としては、例えば、Fe(鉄)膜、Co(コバルト)膜、Ni(ニッケル)膜、Au(金)膜、Ag(銀)膜、及びPt(白金)膜等を用いることができる。また、これらの材料の少なくとも一種を含む合金膜を用いてもよい。触媒膜22の厚さは、例えば2.5nm程度である。また、触媒膜22を形成する前に、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に下地膜を形成しておき、その上に触媒膜22を形成してもよい。下地膜の材料としては、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、TaN(窒化タンタル)、TiSix(チタンシリサイド)、Al(アルミニウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiOx(酸化チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、及びTiN(チタンナイトライド)等が挙げられる。また、これらの材料の少なくとも一種を含む合金を用いてもよい。例えば、Alからなる厚さが10nm程度の下地膜上にFeからなる厚さが2.5nm程度の触媒膜22が形成されていてもよく、TiNからなる厚さが5nm程度の下地膜上にCoからなる厚さが2.6nm程度の触媒膜22が形成されていてもよい。
【0028】
また、触媒部として、触媒膜22に代えて、例えば微分型静電分級器(DMA:differential mobility analyzer)等を用いて粒径を所定範囲内に収めた複数の触媒粒子を用いてもよい。触媒粒子の材料としては、上述の触媒膜22の材料と同様のものを用いることができる。また、触媒粒子を分散する前に、基板21のカーボンナノチューブ2を形成する予定の領域上に下地膜を形成しておき、その上に触媒粒子を分散してもよい。例えば、TiNからなる厚さが5nm程度の下地膜上にCoからなる平均粒径が3.8nm程度の触媒粒子が分散していてもよい。
【0029】
次いで、同じく図5A(a)に示すように、基板21上に、例えばホットフィラメント化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法により、触媒膜22を触媒として、カーボンナノチューブ2を成長させる。カーボンナノチューブ2の成長条件に関し、例えば、原料ガスとして、アセチレンガス及びアルゴンガスの混合ガスを用い、成膜室内の総ガス圧を1kPaとし、ホットフィラメント温度を1000℃とし、成長時間を20分とする。混合ガスにおける分圧比は、アセチレンガス:アルゴンガスを1:9とする。このような条件下では、層数が3層〜6層(平均4層程度)、直径が4nm〜8nm(平均6nm程度)、長さが80μm程度の多層カーボンナノチューブが4μm/min程度の速度で成長する。なお、カーボンナノチューブ2を、熱CVD法及びリモートプラズマCVD法等の他の方法により形成してもよい。また、カーボンナノチューブ2として、単層カーボンナノチューブを形成してもよい。また、炭素原料として、アセチレンに代えて、メタン及びエチレン等の炭化水素類、並びにエタノール及びメタノール等のアルコール類等を用いてもよい。
【0030】
なお、上記の条件で本願発明者らが実際にカーボンナノチューブ2を形成したところ、触媒膜22上での面密度は1×1011本/cm2程度であった。
【0031】
このような触媒膜22及びカーボンナノチューブ2の形成の一方で、図5A(b)に示すように、充填層4の内部にカーボンナノチューブ3が分散した合成樹脂シート9を形成する。このような合成樹脂シート9の形成に当たっては、先ず、例えば超音波槽を用いて、有機溶剤に数質量%の合成樹脂(例えばポリアミド)を、温度を上げた状態で溶かし込む。合成樹脂としては充填層4の材料(熱可塑性樹脂)を用いる。次いで、例えば超音波槽を用いて、合成樹脂が溶け込んだ有機溶剤にカーボンナノチューブ3を0.1質量%〜数質量%程度で数時間かけ分散させる。その後、有機溶剤、合成樹脂及びカーボンナノチューブ3からなる混合物を剥離紙上に塗布し、例えばホットプレート上で溶剤を揮発させる。この結果、充填層4の内部にカーボンナノチューブ3が分散した合成樹脂シート9が得られる。必要に応じて、合成樹脂シート9の厚さを調整してもよい。例えば、合成樹脂シート9を2枚の剥離紙の間に挟み込み、合成樹脂の軟化温度付近で圧着すれば、合成樹脂シート9の厚さを制御することができる。
【0032】
その後、図5B(c)に示すように、合成樹脂シート9をカーボンナノチューブ2の上端に熱圧着する。
【0033】
続いて、図5B(d)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部をカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0034】
次いで、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。この取り外しの結果、図1に示すシート状部材1が得られる。なお、取り外しの方法は特に限定されず、例えば基板21の物理的な剥離によって行ってもよく、また、基板21及び触媒膜22のエッチングにより行ってもよい。
【0035】
なお、上記のカーボンナノチューブ2の成長条件では、触媒膜22が基板21上に残留するが、カーボンナノチューブ2の成長の結果、触媒膜22又は触媒粒子の全部又は一部がカーボンナノチューブ2の上端に位置してもよい。
【0036】
また、充填層4の材料である熱可塑性樹脂は、シート状部材1の用途に応じて選択すればよい。熱可塑性樹脂としては、その融解温度が発熱体11の発熱温度の上限値よりも高いものを選択することが望ましい。融解温度が発熱体11の発熱温度の上限値以下である場合、発熱体11の稼働時に熱可塑性樹脂が融解し、シート状部材1が変形して、発熱体11と放熱体12との間の熱抵抗が上昇する虞があるからである。また、熱可塑性樹脂としては、その融解温度が発熱体11及び放熱体12の耐熱温度よりも低いものを選択することが望ましい。上述のように、シート状部材1の設置の際には、発熱体11及び放熱体12の間でシート状部材1のリフローを行うことがあり、融解温度が発熱体11及び放熱体12の耐熱温度以上である場合、リフローの際に発熱体11及び/又は放熱体12に損傷が生じる虞があるからである。
【0037】
例えば、CPUの発熱温度の上限値は125℃程度であり、耐熱温度は150℃程度である。従って、発熱体11としてCPUを用いる場合、熱可塑性樹脂としては、融解温度が125℃〜150℃程度のものを選択することが望ましい。また、自動車のエンジンのエキゾーストシステムの発熱温度は500℃〜800℃程度である。従って、発熱体11としてエキゾーストシステムを用いる場合、熱可塑性樹脂としては、融解温度が600℃〜900℃程度のものを選択することが望ましい。
【0038】
また、充填層4に添加物が分散混合していてもよい。添加物としては、例えば熱伝導性の高い物質を用いることができる。このような物質としては、カーボンナノチューブ、金属、窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、グラファイト、及びフラーレン等が挙げられる。このような添加物が充填層4に含まれている場合、シート状部材1全体の熱伝導率がより向上する。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0040】
図6に示すように、第2の実施形態では、各カーボンナノチューブ2の下端、つまりカーボンナノチューブ3側の端部に被膜5が形成されている。被膜5は、例えば厚さが数百nmの金(Au)膜である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0041】
このような第2の実施形態によれば、被膜5とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計が、第1の実施形態におけるカーボンナノチューブ2とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第1の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。
【0042】
被膜5の材料は特に限定されないが、熱伝導率が高いものを用いることが望ましい。例えば、銅(Cu)又はニッケル(Ni)を用いてもよい。また、被膜5が、複数の膜を含む積層体となっていてもよい。例えば、Ti膜及びAu膜の積層体が被膜5として用いられてもよい。被膜5の厚さも特に限定されないが、シート状部材1の製造過程で充填層4の浸透を阻害しない程度であることが望ましい。
【0043】
次に、第2の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図7A乃至図7Bは、第2の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0044】
先ず、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、例えば蒸着法により被膜5を各カーボンナノチューブ2の上端に形成する。なお、カーボンナノチューブ2の損傷を抑制することが可能であれば、スパッタリング法等により被膜5を形成してもよい。
【0045】
その後、図7B(b)に示すように、合成樹脂シート9を被膜5に熱圧着する。
【0046】
続いて、図7B(c)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部を被膜5及びカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0047】
次いで、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。この取り外しの結果、図6に示すシート状部材1が得られる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0049】
図8に示すように、第3の実施形態では、一部のカーボンナノチューブ2の下端に被膜5が形成され、他のカーボンナノチューブ2の下端に被膜6が形成されている。被膜5が1本のカーボンナノチューブ2の端部を被っているのに対し、被膜6は2本以上のカーボンナノチューブ2の端部を被っている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0050】
このような第3の実施形態によれば、被膜6とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計が、第2の実施形態における被膜5とカーボンナノチューブ3との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第2の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。更に、被膜6が複数のカーボンナノチューブ2を束ねているため、合成樹脂シート9の熱圧着時及び充填層4のリフロー時にカーボンナノチューブ2が散けにくくなる。
【0051】
被膜6の材料としては、被膜5の材料と同様のものを用いることができる。被膜6の厚さも特に限定されないが、シート状部材1の製造過程で充填層4の浸透を阻害しない程度であることが望ましい。例えば、カーボンナノチューブ2の直径が10nm、面密度が1×1011cm-2の場合、隣り合うカーボンナノチューブ2の間隙はおよそ50nmである。この場合、隣り合うカーボンナノチューブ2が被膜6に束ねられるためには、被膜6の厚さは、少なくとも間隙の半分以上の厚さ、すなわち膜厚25nm程度以上とすることが望ましい。その一方で、被膜6が厚すぎると、充填層4の浸透が阻害されてしまう。これらを考慮すると、カーボンナノチューブ2の直径が10nm、面密度が1×1011cm-2の場合、被膜6の膜厚は、25nm〜1000nm程度とすることが望ましい。
【0052】
次に、第3の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図9は、第3の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を示す図である。
【0053】
先ず、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、例えば蒸着法により被膜5を各カーボンナノチューブ2の上端に形成し、更に原料の供給を継続する。この結果、図9に示すように、一部の被膜5同士が結合し、被膜6が形成される。
【0054】
その後、第2の実施形態と同様の処理を行い、シート状部材1を完成させる。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図10は、第4の実施形態に係るシート状部材を示す断面図である。
【0056】
図10に示すように、第4の実施形態では、カーボンナノチューブ2の上端に、被膜5と同様の被膜7及び被膜6と同様の被膜8が形成されている。被膜7が1本のカーボンナノチューブ2の端部を被っているのに対し、被膜8は2本以上のカーボンナノチューブ2の端部を被っている。他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0057】
このような第4の実施形態によれば、被膜7及び8と発熱体又は放熱体との接触面積の総計が、第3の実施形態におけるカーボンナノチューブ2の上端と発熱体又は放熱体との接触面積の総計よりも大きくなる。このため、第3の実施形態と比較して、より高い熱伝導性を得ることができる。更に、被膜8が複数のカーボンナノチューブ2を束ねているため、充填層4のリフロー時にカーボンナノチューブ2がより一層散けにくくなる。
【0058】
被膜7及び8の材料としては、被膜5の材料と同様のものを用いることができる。被膜7及び8の厚さも特に限定されない。
【0059】
次に、第4の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。図11A乃至図11Cは、第4の実施形態に係るシート状部材1の製造方法を工程順に示す図である。
【0060】
先ず、一時的にカーボンナノチューブ2を支持する基板の準備を行う。即ち、図11A(a)に示すように、基板41上に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜42を形成する。フォトレジスト膜42の厚さは、例えば6μm程度とする。基板41としては、例えばサファイア基板等を用いることができ、基板41の材料は特に限定されない。
【0061】
その一方で、第1の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の成長までの処理を行う(図5A(a))。次いで、図11A(b)に示すように、第3の実施形態における被膜5及び被膜6の形成と同様にして、カーボンナノチューブ2の上端に被膜7及び被膜8を形成する。その後、被膜7及び被膜8とフォトレジスト膜42とを対向させ、加圧することにより、被膜7及び被膜8をフォトレジスト膜42の内部まで進入させる。その後、フォトレジスト膜42を硬化させる。
【0062】
続いて、図11B(c)に示すように、基板21を触媒膜22と共にカーボンナノチューブ2の下端から取り外す。そして、カーボンナノチューブ2の上下を反転させる。この結果、少なくとも一部のカーボンナノチューブ2の自重により若干湾曲する。
【0063】
次いで、図11B(d)に示すように、第3の実施形態と同様にして、カーボンナノチューブ2の上端に被膜5及び6を形成する。
【0064】
その後、図11C(e)に示すように、合成樹脂シート9を被膜5及び被膜6に熱圧着する。
【0065】
続いて、図11C(f)に示すように、温度及び時間の制御により、充填層4の一部を被膜5、被膜6及びカーボンナノチューブ2の隙間に浸透させる。
【0066】
次いで、基板41をフォトレジスト膜42と共に取り外す。この取り外しの結果、図10に示すシート状部材1が得られる。
【0067】
なお、第2、第3及び第4の実施形態のシート状部材1も、図2、図3及び図4に示すように、第1の実施形態と同様に使用することができる。また、いずれの実施形態のシート状部材1を用いる場合であっても、図12に示すように、発熱体11にカーボンナノチューブ2の横方向への移動を拘束する凹部11aが形成され、放熱体12にカーボンナノチューブ2の横方向への移動を拘束する凹部12aが形成されていることが好ましい。カーボンナノチューブ2の散らけ等を抑制して高い熱伝導率を確保するためである。なお、凹部11a及び凹部12aの一方のみが形成されていてもよい。この場合には、カーボンナノチューブ3を介さずにカーボンナノチューブ2が直接接する発熱体11又は放熱体12に凹部11a又は凹部12aが形成されていることが好ましい。図12に示す例では、放熱体12に凹部12aが形成されていることが好ましい。カーボンナノチューブ3が存在する端部よりも存在しない端部の方が、カーボンナノチューブ2の散らけが生じやすいからである。
【0068】
また、凹部11a及び凹部12aの有無に拘わらず、カーボンナノチューブ2のカーボンナノチューブ3が存在しない端部と発熱体11又は放熱体12との間に、合成樹脂シート9と同様の合成樹脂シートを介在させて加熱圧着を行ってもよい。この場合には、カーボンナノチューブ2の両端にCNT密集層3aが存在することになる。
【0069】
また、これらのシート状部材1は熱伝導性シートの他に導電性シートとして使用することもできる。例えば、2つの電子部品の間を電気的に接続する導電部材として使用することができる。この場合、充填層4には、導電率が高い物質が含まれていることが好ましい。このような物質としては、カーボンナノチューブ、及び金属等が挙げられる。
【0070】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0071】
(付記1)
充填層と、
前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とするシート状部材。
【0072】
(付記2)
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第2の主面側の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする付記1に記載のシート状部材。
【0073】
(付記3)
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第1の主面側の端部を束ねる第2の被膜を有することを特徴とする付記1又は2に記載のシート状部材。
【0074】
(付記4)
前記充填層は、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0075】
(付記5)
前記第1のカーボンナノチューブは前記第1の主面を貫通して前記充填層の外部まで延びていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0076】
(付記6)
前記複数の第1のカーボンナノチューブは湾曲部を有し、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの少なくとも一部は、他の第1のカーボンナノチューブに接触していることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0077】
(付記7)
前記第1のカーボンナノチューブの面密度は、1×1010本/cm2以上であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載のシート状部材。
【0078】
(付記8)
電子部品と、
前記電子部品に第1の主面が接する熱伝導性シートと、
前記熱伝導性シートの第2の主面に接する放熱体と、
を有し、
前記熱伝導性シートは、
充填層と、
前記充填層の内部に設けられ、一方の端部が前記電子部品及び前記放熱体の一方に接し、前記電子部品及び前記放熱体の他方に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記充填層の内部に設けられ、前記複数の第1のカーボンナノチューブの他方の端部並びに前記電子部品及び前記放熱体の他方に接する複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする電子機器。
【0079】
(付記9)
前記熱伝導性シートは、前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記他方の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする付記8に記載の電子機器。
【0080】
(付記10)
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
を有することを特徴とするシート状部材の製造方法。
【0081】
(付記11)
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
前記基板を前記第1のカーボンナノチューブから取り外す工程と、
前記合成樹脂シート及び前記第1のカーボンナノチューブの一方を電子部品に接触させ、他方を放熱体に接触させながら、前記電子部品及び前記放熱体を加熱圧着する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【符号の説明】
【0082】
1:シート状部材
2、3:カーボンナノチューブ
3a:CNT密集層
4:充填層
5、6、7、8:被膜
9:合成樹脂シート
11:発熱体
12:放熱体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填層と、
前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とするシート状部材。
【請求項2】
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第2の主面側の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする請求項1に記載のシート状部材。
【請求項3】
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第1の主面側の端部を束ねる第2の被膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状部材。
【請求項4】
前記充填層は、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート状部材。
【請求項5】
前記第1のカーボンナノチューブは前記第1の主面を貫通して前記充填層の外部まで延びていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート状部材。
【請求項6】
電子部品と、
前記電子部品に第1の主面が接する熱伝導性シートと、
前記熱伝導性シートの第2の主面に接する放熱体と、
を有し、
前記熱伝導性シートは、
充填層と、
前記充填層の内部に設けられ、一方の端部が前記電子部品及び前記放熱体の一方に接し、前記電子部品及び前記放熱体の他方に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記充填層の内部に設けられ、前記複数の第1のカーボンナノチューブの他方の端部並びに前記電子部品及び前記放熱体の他方に接する複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
を有することを特徴とするシート状部材の製造方法。
【請求項8】
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
前記基板を前記第1のカーボンナノチューブから取り外す工程と、
前記合成樹脂シート及び前記第1のカーボンナノチューブの一方を電子部品に接触させ、他方を放熱体に接触させながら、前記電子部品及び前記放熱体を加熱圧着する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項1】
充填層と、
前記充填層の内部から第1の主面に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記複数の第1のカーボンナノチューブの前記充填層の第2の主面側の端部と前記第2の主面との間に分散した複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とするシート状部材。
【請求項2】
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第2の主面側の端部を束ねる被膜を有することを特徴とする請求項1に記載のシート状部材。
【請求項3】
前記複数の第1のカーボンナノチューブのうちの少なくとも一部の前記第1の主面側の端部を束ねる第2の被膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状部材。
【請求項4】
前記充填層は、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート状部材。
【請求項5】
前記第1のカーボンナノチューブは前記第1の主面を貫通して前記充填層の外部まで延びていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート状部材。
【請求項6】
電子部品と、
前記電子部品に第1の主面が接する熱伝導性シートと、
前記熱伝導性シートの第2の主面に接する放熱体と、
を有し、
前記熱伝導性シートは、
充填層と、
前記充填層の内部に設けられ、一方の端部が前記電子部品及び前記放熱体の一方に接し、前記電子部品及び前記放熱体の他方に向かって延びる複数の第1のカーボンナノチューブと、
前記充填層の内部に設けられ、前記複数の第1のカーボンナノチューブの他方の端部並びに前記電子部品及び前記放熱体の他方に接する複数の第2のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
を有することを特徴とするシート状部材の製造方法。
【請求項8】
基板上に触媒部を設ける工程と、
前記触媒部から複数の第1のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
熱可塑性樹脂の内部に複数の第2のカーボンナノチューブが分散した合成樹脂シートを作製する工程と、
前記合成樹脂シートを前記複数の第1のカーボンナノチューブの端部に熱圧着して前記熱可塑性樹脂の一部を前記複数の第1のカーボンナノチューブの隙間に浸透させる工程と、
前記基板を前記第1のカーボンナノチューブから取り外す工程と、
前記合成樹脂シート及び前記第1のカーボンナノチューブの一方を電子部品に接触させ、他方を放熱体に接触させながら、前記電子部品及び前記放熱体を加熱圧着する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公開番号】特開2011−96832(P2011−96832A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248985(P2009−248985)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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