説明

シート給送装置

【課題】複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を1枚ずつ確実に取り出すことができるシート給送装置を提供する。
【解決手段】積載トレイ22に積載されたシート束Sの最上位のシート材S1を給送方向Kに搬送するように回転する第1ローラ3と、積載トレイ22を付勢することにより積載トレイ22に積載されたシート束Sを第1ローラ3に圧接させる弾性体24と、積載トレイ22よりも給送方向下流側に配置され、第1ローラ3により搬送されたシート材を案内する案内部材4と、第1ローラ3よりも給送方向下流側に配置され、案内部材4との間でシート材を挟圧して回転する第2ローラ6と、第2ローラ6の回転力を第1ローラ3に伝達する回転力伝達手段と、第1ローラ3よりも給送方向下流側に配置され、第1ローラ3により搬送されたシート材の厚みを検知する厚み検知手段8とを備えるシート給送装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置に関し、さらに詳しくは、複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を1枚ずつ分離して給送するシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイレクトメールは有力な広告媒体として注目されており、その需要が拡大している。ダイレクトメールは、お知らせや案内、消費者の住所氏名、消費者の商品購入履歴等の各種情報が記載された書面を封筒に封入して消費者に送付されるが、書面の封入作業の効率化を図るために、書面の束から一枚ずつ書面を取り出すシート給送装置が使用される。このようなシート給送装置としては、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。この装置は、図8に示すように、シート束を積載する給紙トレイ101と、この給紙トレイ101に積載された用紙等のシート材の上面に載置される加圧板102と、この加圧板102と給紙トレイ後端部とを接続する腕板103とを備えている。加圧板102の両側には、無端ベルト104で連結された前方ローラ105及び後方ローラ106がそれぞれ配置されている。無端ベルト104で連結された各ローラ105,106は、シート材の取り出し方向に沿って所定間隔をあけて配置されている。
【0003】
このような構成のシート給送装置100の作動について説明すると、まず、給紙トレイ101に積載されたシート束の最上位のシート材の端部を給紙トレイ101の外部に出しておく。必要時にこのシート材の端部を指先でつまんで引き出す。このシート材は、前方ローラ105及び後方ローラ106を介して、腕板103及び加圧板102からの加圧を受けながら引き出されるが、引き出されるシート材は一つ下位のシート材との間に摩擦を起こすため、この下位の用紙も引き出し方向に移動することになる。引き出される最上位のシート材の後方端部が前方ローラ105から外れて加圧力から開放されると、この最上位のシート材のみが給紙トレイ101から引き出され、一つ下位のシート材は、その一部が給紙トレイ101の外に露出した状態で、給紙トレイ101内に保持されることになる。再度、給紙トレイ101からシート材を引き出す際には、給紙トレイ101の外に露出しているシート材をつまんで引き出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−64478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のシート給送装置は、引き出されるシート束の最上位のシート材とその一つ下位のシート材との間で発生する摩擦力を利用して、最上位のシート材を抜き出した後、一つ下位のシート材の一部を給紙トレイの外部に露出させ、順次、給紙トレイからシート材を抜き出そうとする装置であるため、最上位のシート材を例えば素早く抜き出すような場合には、一つ下位のシート材の一部が給紙トレイの外部に確実に露出せず、シート材の取り出し作業を効率よく行うことができないという問題があった。
【0006】
また、最上位のシート材を例えばゆっくり抜き出すような場合には、一つ下位のシート材に加えてその下方に積載されるシート材も一緒に移動して、給紙トレイの外部に露出してしまう重送状態になるという問題もあった。消費者の住所氏名、消費者の商品購入履歴等の各種情報が記載された書面束(シート束)が積載された給紙トレイから書面(シート材)を一枚ずつ取り出して、封筒に封入して消費者に送付するような場合に、上述のような書面の重送状態が発生してしまうと、書面封入作業者がこのことに気づかないで複数の書面を一つの封筒に封入してしまう場合もあり、個人情報保護の観点から問題となる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を1枚ずつ確実に取り出すことができるシート給送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を給送するシート給送装置であって、前記積載トレイに積載された前記シート束の最上位のシート材を給送方向に搬送するように回転する第1ローラと、前記積載トレイを付勢することにより前記積載トレイに積載された前記シート束を前記第1ローラに圧接させる弾性体と、前記積載トレイよりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラにより搬送されたシート材を案内する案内部材と、前記第1ローラよりも給送方向下流側に配置され、前記案内部材との間でシート材を挟圧して回転する第2ローラと、前記第2ローラの回転力を前記第1ローラに伝達する回転力伝達手段と、前記第1ローラよりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラにより搬送されたシート材の厚みを検知する厚み検知手段とを備えるシート給送装置により達成される。
【0009】
このような構成によれば、厚み検知手段が、第1ローラにより搬送されたシート材の厚みを検知し、その厚みにより、搬送されるシート材が一枚であるのか、重送状態であるのかを容易に判別することができるため、シート材を1枚ずつ確実に取り出すことが可能になる。
【0010】
また、上記シート給送装置において、前記第1ローラ及び前記第2ローラの少なくともいずれか一方の外周面には、弾性部材シートが巻回されて貼着されていることが好ましい。
【0011】
このように第1ローラ及び第2ローラの少なくともいずれか一方の外周面に、弾性部材シートが巻回される構成を備えることにより、搬送されるべきシート材と、第1ローラ(または第2ローラ)との摩擦力を高めることができるため、シート材を確実に給送方向に搬送することが可能になる。また、弾性部材シートが第1ローラ(または第2ローラ)の外周面に貼着される構成であるため、第1ローラ(または第2ローラ)に巻回される弾性部材シートが使用により磨耗して、搬送されるべきシート材と第1ローラ(または第2ローラ)と間の必要な摩擦力を維持できなくなった場合であっても、容易に弾性部材シートを貼り変えることが可能となり、或いは、既に貼着されている弾性部材シートの上に新しい弾性部材シートを貼着することが可能となり、積載トレイからシート材を1枚ずつ確実に取り出すシート給送装置の給送機能を極めて容易に維持することできる。
【0012】
また、前記厚み検知手段は、シート材の厚みを電気信号として検出するセンサーと、前記センサーに電力を供給するための電力源とを備えていることが好ましい。
【0013】
このように電力源(例えば、太陽電池装置やバッテリー装置等)を備える構成を採用した場合、例えば、建物に備え付けてある電源にコンセントを差し込むことによりセンサーを駆動する電力を得る必要がなく、如何なる場所にでもシート給送装置を持ち運んでシート束からシート材を取り出す作業を行うことができる。特に電力源として太陽電池装置を採用した場合、蛍光灯などの光があるところであれば、何処でもセンサーを駆動させることが可能となり、バッテリー交換作業やバッテリー充電作業等が不要になり、シート給送装置の利便性をより一層向上させることができる。
【0014】
また、前記厚み検知手段は、検知したシート材の厚みに基づいて警告を発する警告部を備えていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、厚み検知手段の警告部が、重送状態であることをシート材の取り出し作業を行っている利用者に知らせることができるため、シート給送装置の利用者が、誤って2枚以上のシート材を取り出してしまうことを防止して、シート材を1枚ずつ確実に取り出すことが可能となる。
【0016】
また、前記第1ローラに圧接したシート材の圧接点よりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラとの間でシート材を挟圧することにより、給送されるべき最上位のシート材と次位以降のシート材とを分離する摩擦分離手段を備えることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、給送されるべき最上位のシート材とこの最上位のシート材の一つ次位のシート材との間の摩擦力よりも、一つ次位のシート材と摩擦分離手段との間の摩擦力の方を大きくできる為、最上位のシート材の次位以降のシート材が、最上位のシート材と共に、給送方向に搬送されることを確実に防止することが可能になる。
【0018】
また、前記摩擦分離手段は、前記第1ローラの外周面に対向配置される摩擦分離材と、前記摩擦分離材を前記第1ローラの外周面に向けて付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力を調節する調節機構とを備えることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、給送されるべき最上位のシート材の次位のシート材と摩擦分離材との間の摩擦力を調整することが可能になるため、最上位のシート材だけが給送される適切な摩擦力を次位のシート材に付与することが可能となり、重送状態でシート材が給送されることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を1枚ずつ確実に取り出すことができるシート給送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート給送装置の概略構成平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1に示す矢視B方向から見たシート給送装置の側面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】図1に示すシート給送装置の変形例を示す概略構成平面図である。
【図6】図1に示すシート給送装置の他の変形例を示す概略構成断面図である。
【図7】図1に示すシート給送装置の更に他の変形例を示す概略構成断面図である。
【図8】従来のシート給送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るシート給送装置1について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシート給送装置1の概略構成平面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1の矢視B方向から見た側面図であり、図4は、図2の要部拡大図である。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0023】
本実施形態に係るシート給送装置1は、複数枚のシート材からなるシート束からシート材を一枚ずつ給送する装置であって、図1から図4に示すように、積載手段2と、第1ローラ3と、案内部材4と、摩擦分離手段5と、第2ローラ6と、回転力伝達手段7と、厚み検知手段8とを備えている。なお、図1においては、厚み検知手段8を省略して記載している。
【0024】
積載手段2は、底板21と、積載トレイ22と、保持部23と、弾性体24とを備えている。底板21は、シート給送装置1の底部を構成する板状体であり、平面視矩形状となるように形成されている。積載トレイ22は、複数枚のシート材からなるシート束Sを積載する板状体であり、その後端部には、平面視矩形状の切欠き部25が形成されている。保持部23は、積載トレイ22の側縁後端部に連結し、積載トレイ22を回動自在に保持する部材であり、底板21の両側縁から立設して形成されている。弾性体24は、積載トレイ22を付勢することにより積載トレイ22に積載されたシート束Sを第1ローラ3に圧接させる部材であり、底板21と積載トレイ22との間に配置されている。
【0025】
また、底板21上には、側面視L字状のストッパ部材26が載置されている。このストッパ部材26の上部は、積載トレイ22に形成される切欠き部25を介して積載トレイ22上に露出しており、当該露出部分が、積載トレイ22に積載されるシート束Sの側縁に当接し、シート束Sが崩れることを防止している。また、ストッパ部材26は、積載トレイ22に積載されるシート束Sの大きさにあわせて、その設置位置を変更できるように構成されている。なお、本実施形態においては、マグネットシートを介してストッパ部材26を底板21上に設置することにより、ストッパ部材26の設置位置を変更できるようにしつつ固定できるように構成している。
【0026】
第1ローラ3は、積載トレイ22に積載されたシート束Sの最上位のシート材を給送方向(図1において、矢印Kで示す方向)に搬送するように回転する部材であり、積載トレイ22の上方に配置されている。また、この第1ローラ3は、底部から立設する両側壁部27,27間に設けられる第1ローラ回転軸31に設置されており、第1ローラ3の外周面には、シート材との間で摩擦力を発揮する平面視矩形状の弾性部材シート32が巻回されて貼着されている。弾性部材シート32としては、一方面に粘着材が塗布されたシリコンテープやゴムテープ等を例示することができる。
【0027】
案内部材4は、第1ローラ3により搬送されたシート材を案内する板状体であり、積載トレイ22よりも給送方向下流側に配置されている。この案内部材4の前端部の中央には、平面視矩形状に切り欠かれたシート材取出部41が形成されている。また、案内部材4は、水平方向に対して約20°〜35°傾斜して配置されており、第1ローラ3により搬送されたシート材がスムーズに案内部材4上に送り込まれるように、積載トレイ22の前方端と、案内部材4の後方端とは近接している。また、案内部材4の後端部の中央には、平面視矩形状に切り抜かれた摩擦分離材設置部42が形成されている。
【0028】
摩擦分離手段5は、第1ローラ3に圧接したシート材の圧接点よりも給送方向下流側に配置され、第1ローラ3との間でシート材を挟圧することにより、給送されるべき最上位のシート材と次位以降のシート材とを分離する装置である。この摩擦分離手段5は、摩擦分離材51と、付勢部材52とを備えている。摩擦分離材51は、第1ローラ3の外周面に対向配置されて、第1ローラ3の外周面との間でシート材を直接挟圧する部材であり、金属板やプラスチック板等の上に、シート状の分離パッドを設置することにより構成されている。シート状の分離パッドは第1ローラ3の外周面との挟圧面を構成するため、当該分離パッドの表面が摩擦分離材設置部42を介して案内部材4の上面に露出するように、摩擦分離材51は設置されている。分離パッドには、シート材に対する摩擦係数が、第1ローラ3の外周面のシート材に対する摩擦係数よりも低く、且つ、積層されるシート材同士の摩擦係数よりも高い材料、例えば、シリコンやゴム、ウレタン系樹脂、コルクなどの材料からなるシート状部材を用いることができる。付勢部材52は、摩擦分離材51を第1ローラ3の外周面に向けて付勢する部材であり、コイルスプリング等の弾性部材により形成されている。なお、付勢部材52の付勢力(加圧力)を調節して、第1ローラ3と摩擦分離材51との間でシート材を挟む圧力を調節する調節機構を備えるように構成してもよい。付勢部材52の付勢力(加圧力)を調節するには、例えば、コイルスプリング等の付勢部材52の変形量を変えることにより行う。
【0029】
第2ローラ6は、第1ローラ3よりも給送方向下流側であって、案内部材4の上方に配置されており、案内部材4との間でシート材を挟圧して回転する部材である。この第2ローラ6は、底部から立設する両側壁部27,27間に設けられるに設置されている。第2ローラ回転軸61は、その中央部が、図1の平面図に示すように、平面視において、案内部材4に形成されるシート材取出部41と重なるように設置されており、第2ローラ6は、シート材取出部41を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。第2ローラ6の外周面には、第1ローラ3と同様に、シート材との間で摩擦力を発揮する弾性部材シート62が巻回されて貼着されている。弾性部材シート62としては、一方面に粘着材が塗布されたシリコンテープやゴムテープ、ポリウレタンテープ等を例示することができる。
【0030】
回転力伝達手段7は、第2ローラ6の回転力を第1ローラ3に伝達する装置であり、第1ローラ回転軸31に設置される第1プーリ71と、第2ローラ回転軸61に設置される第2プーリ72と、第1プーリ71及び第2プーリ72に巻き掛けられる無端状ベルト73と、無端状ベルト73のたるみをとるテンションプーリ74とを備えている。このような構成により、第1ローラ3と第2ローラ6とは、互いに一体的に同期して回転することになる。なお、回転力伝達手段7は、第1ローラ3の外周速度と第2ローラ6の外周速度とが等しくなるように構成されている。
【0031】
厚み検知手段8は、第1ローラ3により搬送されたシート材の厚みを検知する装置であり、厚みセンサー81と、判定部(図示せず)と、警告部(図示せず)とを備えている。厚みセンサー81は、シート材の厚みを電気信号として検出するセンサーであり、第1ローラ3と第2ローラ6との間を通過するシート材の厚みを検知できるように配置されている。厚みセンサー81としては、差動トランス型変位計等の接触式変位計やレーザ変位計等の非接触式変位計等を好適に用いることができる。本実施形態においては、図4の要部拡大図に示すように、シート材との接触部(センサー先端部)にローラ81aを備える差動トランス型変位計を厚みセンサー81として使用している。給送されるシート材は、差動トランス型変位計のローラ81aと案内部材4との間を通過する。また、判定部は、厚みセンサー81の出力に基づいて、給送されるシート材が1枚であるのか、或いは2枚以上であるのかを判定する装置である。警告部は、判定部の判定結果に基づいて(検知したシート材の厚みに基づいて)警告を発する手段であり、給送されるシート材が2枚以上である場合に発光するランプや、警告音を発生するスピーカー、警告表示を行うモニター等の装置である。なお、厚みセンサー81として、発光素子と受光素子を上下に対向配置した構成のものを採用し、判定部が、透過光量の程度によって1枚か複数枚かを判定するようにしてもよい。また、厚み検知手段8は、太陽電池装置やバッテリー装置等の電力源82を備えており、この電力源82により、厚みセンサー81、判定部(図示せず)及び警告部(図示せず)が駆動できるように構成されている。電力源82として太陽電池装置やバッテリー装置等を採用する場合、太陽電池装置により発生する電力やバッテリー装置からの電力を安定的に厚みセンサー81や判定部、警告部に供給するため、電力源82(太陽電池装置やバッテリー装置)を安定化電源に接続し、太陽電池装置により発生する電力やバッテリー装置からの電力を安定化電源を介して、厚みセンサー81や判定部、警告部に供給するように構成することが好ましい。なお、建物等に備え付けてある電源にコンセントを差し込むことにより厚みセンサー81や判定部、警告部の駆動電力(交流100V或いは交流200V等の電力)を得る場合であっても、供給される電力を安定化電源を介して厚みセンサー81等に供給することが好ましい。ここで、安定化電源とは、出力電圧が常に一定の値になるように制御された、直流電源回路のことをいう。
【0032】
また、シート給送装置1は、上記構成の他に、第1ローラ回転軸31の一端に接続され、この第1ローラ回転軸31を回転させる回転レバー装置9を備えている。この回転レバー装置9は、レバー91を例えば90度回転させることにより、第1ローラ回転軸31及び第1ローラ3を回転させて、シート材の給送方向端部SEが、第2ローラ6を越える位置まで送り出すことができるように構成されている。また、回転レバー装置9には、シート材が給送方向とは反対側に送り出されることを防止するためのワンウェイクラッチ機構が設けられている。
【0033】
このように構成されたシート給送装置1の作動について以下説明する。まず、積載トレイ22を下方に押し下げて、この積載トレイ22上に複数枚の紙等のシート材からなるシート束Sを載置すると共に、厚み検知手段8を作動させる。積載トレイ22は、弾性体24により付勢されているため、積載されたシート束Sは、第1ローラ3に圧接させた状態となる。
【0034】
その後、回転レバー装置のレバーを90度回転させることにより、第1ローラ3を回転させて、シート束Sの最上位にあるシート材S1を給送方向に送り出す。シート材S1は、その給送方向端部SEが、第2ローラ6を越えて、案内部材4における矩形状に切り欠かれたシート材取出部41に配置されるように送り出される(図4に示す状態)。
【0035】
次に、案内部材4におけるシート材取出部41にあるシート材S1の給送方向端部SEを指で把持してシート材S1を給送方向に引き出す。このとき、シート材S1は、第2ローラ6と案内部材4との間で挟圧されているため、シート材の引き出しに伴って、第2ローラ6が回転する。第2ローラ6の回転力は、第2ローラ回転軸61及び回転力伝達手段7を介して第1ローラ回転軸31に伝達され、第1ローラ3が回転する。
【0036】
ここで、第1ローラ3及び第2ローラ6の回転により、シート束Sの最上位にあるシート材S1は、給送方向に搬送されることになるが、積層されるシート材同士の摩擦力により、最上位のシート材S1よりも一つ下位のシート材S2が、最上位のシート材S1に従動して重なった状態で給送されることがある。その際には、図4の要部拡大図に示すように、最上位のシート材S1は第1ローラ3に接触し、一つ下位のシート材S2は摩擦分離手段5の摩擦分離材51に接触する。摩擦分離材51のシート状の分離パッドは、積層されるシート材同士の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有しているため、シート材同士の摩擦力に逆らって、下位のシート材S2が摩擦分離手段5で制止された状態となり、シート材の重送を防止することができる。
【0037】
なお、摩擦分離手段5が、付勢部材52の付勢力を調節する調節機構を備える場合には、付勢部材52の付勢力を適宜調節することにより、摩擦分離材51と第1ローラ3との接触圧力を所望の圧力に調節できるので、第1ローラ3によるシート材給送力と、摩擦分離手段5によるシート材分離力とのバランスを精度よく設定することが可能となる。
【0038】
最上位のシート材S1の引き出しを進めていき、最上位のシート材S1の後方端部(給紙方向端部SEとは反対側の端部)が、第1ローラ3を通過すると、積載手段2の弾性体24の作用により、最上位にあるシート材S1の一つ下位のシート材S2が第1ローラ3に圧接される。この状態においては、最上位のシート材S1がまだ第2ローラ6と案内部材4との間で狭圧されているため、最上位のシート材S1の引き出しに伴う第2ローラ6の回転力が第1ローラ3に伝達されることになり、最上位のシート材S1に続いて、一つ下位のシート材S2が第1ローラ3の回転により給送方向Kに搬送される。このように、第2ローラ6の回転に伴う第1ローラ3の回転により一つ下位のシート材S2を給送方向Kに搬送する構造を有しているため、最上位のシート材S1を素早く抜き出すような場合であっても、第1ローラ3との摩擦により、最上位の一つ下位のシート材S2を給送方向に確実に送り出すことができる。
【0039】
また、第1ローラ3と第2ローラ6との間には、厚みセンサー81が設けられているため、一つ下位のシート材S2が重送状態で給送された場合であっても、その重送状態を感知することができ、厚み検知手段8の警告部が、重送状態であることをシート材の取り出し作業を行っている利用者に知らせる。これにより、シート給送装置1の利用者が、誤って2枚以上のシート材を取り出してしまうことを防止して、シート材を1枚ずつ確実に取り出すことが可能となる。
【0040】
最上位のシート材S1が第2ローラ6を通過してシート給送装置1から引き出された場合、第2ローラ6の回転は停止する。第2ローラ6の停止に伴い、一つ下位のシート材S2の給送も停止する。一つ下位のシート材S2は、その給送方向端部SEが案内部材4における矩形状に切り欠かれたシート材取出部41の位置に配置されて停止する。
【0041】
続けてシート材の取り出しを行う場合には、上述と同様に、案内部材4のシート材取出部41にあるシート材の給送方向端部を指で把持して引き出せばよい。
【0042】
本実施形態に係るシート給送装置1は、厚み検知手段8が、第1ローラ3により搬送されたシート材の厚みを検知し、その厚みにより、搬送されるシート材が一枚であるのか、重送状態であるのかを容易に判別することができるため、シート材を1枚ずつ確実に取り出すことが可能になる。
【0043】
また、第1ローラ3及び第2ローラ6の外周面に弾性部材シート32,62が巻回される構成を備えているため、搬送されるべきシート材と、第1ローラ3及び第2ローラ6との摩擦力を高めることができるため、シート材を確実に給送方向Kに搬送することが可能になる。また、弾性部材シート32,62が第1ローラ3及び第2ローラ6の外周面に貼着される構成であるため、第1ローラ3及び第2ローラ6に巻回される弾性部材シート32,62が使用により磨耗して、搬送されるべきシート材と第1ローラ3及び第2ローラ6と間の必要な摩擦力を維持できなくなった場合であっても、容易に弾性部材シート32,62を貼り変えることが可能となり、或いは、既に貼着されている弾性部材シート32,62の上に新しい弾性部材シート32,62を貼着することが可能となり、積載トレイ22からシート材を1枚ずつ確実に取り出すというシート給送装置1の給送機能を極めて容易に維持することできる。
【0044】
本実施形態に係るシート給送装置1は、第1ローラ3に圧接したシート材の圧接点よりも給送方向下流側に配置され、第1ローラ3との間でシート材を挟圧することにより給送されるべき最上位のシート材と次位以降のシート材とを分離する摩擦分離手段5を備えている。これにより、給送されるべき最上位のシート材S1とこの最上位のシート材S1の一つ次位のシート材S2との間の摩擦力よりも、一つ次位のシート材S2と摩擦分離手段5との間の摩擦力の方を大きくできる為、最上位のシート材S1の次位以降のシート材S2が、最上位のシート材S1と共に、給送方向Kに搬送されることを確実に防止することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態にかかるシート給送装置1は、最上位のシート材S1を引き出す力を利用して、一つ下位のシート材S2の給送方向端部SEをシート材取出部41の位置に配置させ、順次、積載トレイ22からシート材を抜き出す装置であるため、第1ローラ3や第2ローラ6を回転させてシート材を送り出すためのモータ等が不要であり、極めてコンパクトな構造とすることができる。また、厚み検知手段8を構成する厚みセンサー81、判定部(図示せず)及び警告部(図示せず)を駆動させるための電力源82(太陽電池装置やバッテリー装置等)を備えているため、例えば、建物に備え付けてある電源にコンセントを差し込むことにより駆動電力を得る必要がなく、如何なる場所にでもシート給送装置1を持ち運んでシート束からシート材を取り出す作業を行うことができる。つまり、シート給送装置1の設置場所を選ばず、シート材を取り出す作業を行うことができる。また、特に電力源82として太陽電池装置を採用した場合、蛍光灯などの光があるところであれば、何処でも厚みセンサー81、判定部(図示せず)及び警告部(図示せず)を駆動させることが可能となり、バッテリー交換作業やバッテリー充電作業等が不要になり、シート給送装置1の利便性をより一層向上させることができる。
【0046】
以上、本発明に係るシート給送装置1の実施形態について説明したが、シート給送装置1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、回転力伝達手段7が、第1ローラ回転軸31に設置される第1プーリ71と、第2ローラ回転軸61に設置される第2プーリ72と、第1プーリ71及び第2プーリ72に巻き掛けられる無端状ベルト73とを備えるように構成しているが、このような構成に特に限定されず、第1ローラ回転軸31から第2ローラ回転軸61に至る間に設けられるギア列からなる機構により回転力伝達手段7を構成してもよい。このようにギア列からなる機構により回転力伝達手段7を構成する場合、各ギアのギア比は、第1ローラ3の外周速度と第2ローラ6の外周速度とが等しくなるように構成する。
【0047】
また、上記実施形態においては、単一のストッパ部材26を備える構成を採用しているが、例えば、図5に示すように、積載トレイ22の後端部に形成される切欠き部25に加えて、側縁部に切欠き部25を形成し、これら切欠き部25のそれぞれを介して積載トレイ22上に露出するストッパ部材26を複数備えるような構成を採用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、第1ローラ3及び第2ローラ6の両方の外周面に弾性部材シート32,62をそれぞれ巻回して貼着される構造を採用しているが、第1ローラ3及び第2ローラ6の少なくともいずれか一方の外周面に弾性部材シート32(62)を巻回して貼着するように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、案内部材4を板状体により形成しているが、第1ローラ3により搬送されたシート材を案内しつつ、第2ローラ6との間でシート材を挟圧する構成であれば、このような構成に特に限定されない。例えば、図6に示すように案内部材4を複数の回転ローラ43a,43b,43cで構成し、一部の回転ローラ43aと第2ローラ6との間でシート材S1を挟圧するように構成してもよい。なお、複数の回転ローラにより案内部材4を形成する場合、厚み検知手段8がシート材Sの厚みを正確に検知できるようにするため、図6に示すように、厚み検知手段8が有する厚みセンサー81の先端部(ローラ81a)との間でシート材S1を挟み込めるように一部の回転ローラ43bを配置する。また、図7に示すように板状体44と回転ローラ43a,43bとを組み合わせることにより案内部材4を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 シート給送装置
2 積載手段
22 積載トレイ
3 第1ローラ
4 案内部材
5 摩擦分離手段
6 第2ローラ
7 回転力伝達手段
8 厚み検知手段
S シート束
S1 最上位のシート材
S2 最上位のシート材の次位のシート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート材からなるシート束を積載する積載トレイからシート材を給送するシート給送装置であって、
前記積載トレイに積載された前記シート束の最上位のシート材を給送方向に搬送するように回転する第1ローラと、
前記積載トレイを付勢することにより前記積載トレイに積載された前記シート束を前記第1ローラに圧接させる弾性体と、
前記積載トレイよりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラにより搬送されたシート材を案内する案内部材と、
前記第1ローラよりも給送方向下流側に配置され、前記案内部材との間でシート材を挟圧して回転する第2ローラと、
前記第2ローラの回転力を前記第1ローラに伝達する回転力伝達手段と、
前記第1ローラよりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラにより搬送されたシート材の厚みを検知する厚み検知手段とを備えるシート給送装置。
【請求項2】
前記第1ローラ及び前記第2ローラの少なくともいずれか一方の外周面には、弾性部材シートが巻回されて貼着されているシート給送装置。
【請求項3】
前記厚み検知手段は、シート材の厚みを電気信号として検出するセンサーと、前記センサーに電力を供給するための電力源とを備えている1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記厚み検知手段は、検知したシート材の厚みに基づいて警告を発する警告部を備えている請求項1から3のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1ローラに圧接したシート材の圧接点よりも給送方向下流側に配置され、前記第1ローラとの間でシート材を挟圧することにより、給送されるべき最上位のシート材と次位以降のシート材とを分離する摩擦分離手段を備える請求項1から4のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記摩擦分離手段は、前記第1ローラの外周面に対向配置される摩擦分離材と、前記摩擦分離材を前記第1ローラの外周面に向けて付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力を調節する調節機構とを備えている請求項5に記載のシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−1298(P2012−1298A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136179(P2010−136179)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】