説明

シームレスマイクロカプセルを含む固形経口剤形

【課題】薬剤として許容される溶媒又は液相中に可溶化され又は懸濁され、かつシームレス放出制御マイクロカプセル内にカプセル化された1つ又は複数の薬理活性成分を含む固形経口剤形の方法の提供。
【解決手段】薬剤として許容される溶媒又は液相は、水相、有機溶媒、グリコール、油、及び短鎖、中鎖並びに長鎖脂肪酸のモノ−、ジ−、並びにトリ−グリセリドを含めて、それらの誘導体までの範囲とすることができる。マイクロカプセルは、1mm未満から8mmまでの直径を有し、かつその薬剤充填率は最大90%である。更に、マイクロカプセルは、特定の部位でかつ所定の速度で薬理活性成分を放出するように被覆することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤として許容される溶媒又は液相内に可溶化され又は分散される薬理活性成分を含む多数のシームレスマイクロカプセルから成る固形経口剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な医学的状態の治療及び予防に使用する薬剤は、不溶性から脂溶性及び水溶性までの様々な溶解度特性を有し、pH感応性も様々である。この溶解度の変化が薬剤の治療効果に影響を与える場合がある。薬剤の溶解は、薬剤の吸収に不可欠である。非常に特別な場合を除いて、薬剤は、可溶化するまで吸収することができない。薬剤が投与の時点で既に溶けている場合には、その胃腸管を通した吸収及び従ってその生体利用可能性は急速であり、高速の治療効果が得られる。急速即ち即時的な生体利用可能性は、薬剤の投与後約10〜60分内の有効血中濃度により特徴付けられる。
【0003】
水溶性及び/又はpHへの感応性に乏しい薬剤は、その溶解度及び従ってその生体利用可能性を改善する方法で製剤しなければならない。一般に経口で投与した時に溶解し又は懸濁している薬剤は、急速に、かつ多くの場合に即座に、胃腸管から吸収され、高速治療作用を生じる。しかしながら、多くの場合、薬剤の所望の血漿プロファイル又は作用の延長を実現するために、経口投与後に薬剤の吸収速度を制御することが望ましい。
【0004】
溶解しにくい医薬化合物の溶解度を増強する多くのプロセス及び製剤が存在する。このような薬品の溶媒、油、エマルジョン及びミクロエマルジョンへの可溶化は当業者によく知られており、かつこのような薬剤を経口で運搬するのに使用されている。このような製剤は、次に経口投与のためにソフトゼラチンカプセル内にカプセル化する。ソフトゼラチンカプセル化は、最終産物、即ちソフトゼラチンカプセルが放出遅延性又は徐放性コーティングの付加のような更なる処理に適しない特別のプロセスである。
【0005】
また、ミリング、微粒化及び噴霧乾燥のような小粒径化が、水溶性に乏しい薬剤の表面力及び従って可溶加化速度を増すことがよく知られている。米国特許第5,510,118号及び米国特許第5,145,684号明細書は、そのような薬剤の製薬上許容される溶媒でのミリングが薬剤のナノサスペンションを生成し、その結果として薬剤の溶解度が増すことを教示している。溶解性に乏しい薬剤のナノサスペンション/ナノディスパージョンの生成は、二重ノズル噴霧乾燥プロセスを用いることによって実行することができる。これらのナノサスペンション又はナノディスパージョンは、活性成分の溶解速度を増し、かつ吸収及び生体利用可能性を増強することになる。しかしながら、放出制御及び/又は徐放特性を有する固形経口剤形としての投与のために、前記ナノサスペンション又はナノディスパージョンは次に乾燥されて、錠剤又はミニタブレットのような固形経口剤形にする更なる処理のために自由流動性粉末に生成され、これを次に放出制御又は徐放性高分子で被覆して、前記活性成分の運搬速度を制御することができる。しかしながら、これら剤形の溶解時のナノ粒子サイズ分布の回復は制限され、多くの場合に活性成分の溶解速度が低下する結果となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、薬剤の最適な吸収及び生体利用可能性又は血漿プロファイルに一致する所定の運搬速度で及び/又は所定の吸収部位に活性成分を運搬するように、その後に製剤を被覆できるような方法で、可溶化された及び/又は活性成分のナノサスペンションを含む分散液を投与するのに使用することができる経口製剤又はプロセスが必要である。
【0007】
更に、活性成分の放出部位において吸収を最大にするように胃腸管内の目的の部位に所定の方法で放出される様々な溶解度の1つ又は複数の活性成分を投与するのに使用することができる経口製剤が必要である。
【0008】
また、固形活性成分の高い局所濃度を最小にする方法で胃腸管内での活性成分の放出を可能にする経口製剤が必要である。多顆粒薬剤運搬システムは、その性質上胃腸管のより広い表面積に亘って活性成分の放出を可能にし、それにより、胃腸管への刺激である薬剤の高い局所薬剤濃度を最小にする。
【0009】
透過性に乏しい薬剤は、1つ又は複数の透過性エンハンサと共に投与して、その透過性及び吸収を促進する場合が多い。多くの潜在的な吸収エンハンサが確認されている。中鎖脂肪酸及びトリグリセリドは、胃腸粘膜を通した親水性薬剤の吸収を増進する能力が証明されている(Pharm. Res.,1994,11,1148-54), (Pharm. Res.1993,10,857-864)。米国特許第4,656,161号明細書(BASF AG)は、非イオン表面活性剤を脂肪酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール又はソルビタン若しくはグリセロール脂肪酸エステルと共に加えることによってヘパリン及びヘパリン類似物質の生体利用可能性を増すためのプロセスが開示されている。また、薬剤と組み合わせたアミノ酸誘導体を含めて、中鎖脂肪酸及びその誘導体の投与が薬剤の透過性を増強し得ることが知られている。
【0010】
最大に増強するために、エンハンサ及び薬剤双方が同じ割合で溶解していることが望ましい。エンハンサ及び薬剤の溶解度は異なる場合が多く、その結果、薬剤及びエンハンサの溶液からの生体利用可能性と比較して、エンハンサ及び薬剤の可溶化の速度が異なることになり、従って薬剤の生体利用可能性が失われることになる。更に、ペプチド、蛋白質、ワクチン、オリゴ糖、TRHを含む多糖、カルシトニン、酢酸ロイプロリド、アレンドロン酸、バソプレシン、デスモプレシン及びアンチセンス・オリゴヌクレオチドのような高分子薬剤及び生物工学薬剤を含む透過性に乏しい薬剤は酸に不安定であり、溶液として胃に運搬することができない。
【0011】
また、チトクロムP450の代謝及び/又は消化管に戻る血流からの活性成分のP糖蛋白質調節輸送を低下させることによって生体利用可能性を増強する精油の利用が知られている(AvMax Inc.他の米国特許第5,66,386号明細書)。
【0012】
そこで、溶解した薬剤及びエンハンサの胃腸管での吸収/作用の最適部位への運搬を可能にする放出制御技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、多数のシームレスマイクロカプセルからなり、各マイクロカプセルが1つ又は複数の液相の活性成分を有し、かつ投与後に胃腸管内で所定の活性成分放出速度を有する固形単位剤形をなす放出制御製剤が提供される。前記マイクロカプセルは集合的に、各マイクロカプセルの所定の透過性に依存する1つ又は複数の活性成分放出速度を有する。前記マイクロカプセルは、食物へのスプリンクル即ち振りかけとして投与し、又は硬ゼラチンカプセル内に充填し、又はマトリックス、二層若しくは多層タブレットとして錠剤化することができる。最終的な剤形は、更に被覆して、前記マイクロカプセルを所定の速度で及び/又は胃腸管の所定の部位で放出させることができる。
【0014】
本発明による製剤のマイクロカプセルは、多顆粒固形経口剤形であっても、活性成分の溶液又は懸濁液を有効に投与できるようにする。前記マイクロカプセルはその内容物を胃腸管に、さもなければ刺激又は他の好ましくない副作用を生じることになる活性成分の高局所濃度を最小にするが、更に吸収を助ける、既に可溶化された形態で薬剤が放出される方法で放出させる。
【0015】
個々の前記マイクロカプセルの平均径が100〜10000μmの範囲、より好ましくは250〜8000μmの範囲、及び特に500〜5000μmの範囲にあることが好ましい。
【0016】
前記マイクロカプセルの膜壁の厚さが30〜1000μm、特に100〜500μmの範囲にあることが好ましい。前記マイクロカプセルの膜壁は、それから活性成分が望むように胃腸管内で放出されるように、溶解し又は胃腸液への自然の透過性を有するという意味で、所定の透過性を有する。
【0017】
元々透過性を有する膜壁のマイクロカプセルは可溶性、多孔性であり、又は別の実施例では、溶解度若しくは多孔性を、製剤が胃腸管を通過する際における環境条件の変化の結果として発展させることができる。
【0018】
従って、各マイクロカプセルの膜壁は、胃腸管内で溶解する、薬剤として許容されるフィルム形成ポリマー又はポリマーの混合物で形成することができる。
【0019】
好ましい実施態様では、前記マイクロカプセルの膜壁が、(ウシ又はブタのゼラチン材料のような)ソフト若しくはハードゼラチン、又は適当なポリマーで作られた他のソフトゲル材料で形成される。他のソフトゲル材料の実施例には、ソフトゲルを形成する澱粉又は高分子量ポリエチレングリコール又は寒天が含まれる。しかしながら、実際には、胃腸液内で溶解し得るあらゆる材料を用いることができる。このような材料には、膜壁に組み込まれかつ胃腸液に溶解する材料、即ち造孔剤(porosigen)がある。
【0020】
前記マイクロカプセルの膜壁は、一旦その膜壁が部分的に又は全体として透過性を持つと高速放出及び従って活性成分の高速吸収を可能にする高分子組成及び/又は構造を有する。
【0021】
前記マイクロカプセルの膜壁が必要な透過性を一旦有すると、その液体担体内の活性成分は、即時吸収のために胃腸管内に通過する。前記液体担体は、生体利用可能性及び/又は細胞保護的、特に胃粘膜保護の強化特性を有する1つ又は複数の補助剤を含むことができる。
【0022】
本発明による製剤は、胃腸管内で所定の時間に亘って活性成分の即時放出、中間的な放出又は持続放出を達成するように、所定の様々な透過性の膜壁を有するマイクロカプセルの混合物で構成することができる。
【0023】
従って、本発明による製剤は、活性成分の放出が胃腸管内で進行する可溶化に依存する従来の固形微粒子に対して有利であることが分かる。
【0024】
前記マイクロカプセルの膜壁の透過性は、胃腸管内におけるpH、温度及び他の物理的条件に依存させることができる。
【0025】
本発明によるマイクロカプセルの放出制御特性は、主にマイクロカプセルの膜壁の厚さの関数であり、又はポリマー若しくはセラックのようなpH依存物質を含む。
【0026】
前記マイクロカプセルは、胃腸管の水環境内で異なる溶解度を有するが、マイクロカプセルの液体媒体中で適合する溶解度又は懸濁能力を有する1つ又は複数の活性成分を含むことができる。別の実施例では、前記マイクロカプセルが、異なる媒質中で可溶化するが、異なる材料の膜壁を有しかつ類似の又は異なる透過特性を有するマイクロカプセルから同時吸収のために放出され得る単一の活性成分を含むことができる。
【0027】
また、前記マイクロカプセルは、胃腸管からの吸収後に異なる半減期を有する2つ又はそれ以上の活性成分を含むことができる。
【0028】
前記活性成分の溶解度は、胃腸管の特定の領域のpHに依存させることができる。
【0029】
前記マイクロカプセルは、その内容物を胃腸管内で、薬剤が最も溶解し得る位置で放出するように製造することができる。この特徴により、前記マイクロカプセルは、その内容物をpH条件が最適の時に放出するので、吸収を最大にすることができる。
【0030】
前記マイクロカプセルの内部のpHは、pH感応性を有する活性成分の吸収を最大にすることが要求される場合に、酸又はアルカリ溶液の使用により最適化することができる。
【0031】
胃腸管内で所定の時間に亘って活性成分の即時放出、中間的な放出及び持続放出を行うことができるマイクロカプセルを有する製剤の例には、通常の風邪及びインフルエンザの処置で使用するための製剤とすることできる。このような製剤は、従来の多活性成分製剤である。通常の風邪及びインフルエンザは、単一の活性成分により一般的には軽減することができない様々な兆候に特徴がある。例えば、抗ヒスタミン、充血除去剤及び1つ又は複数の鎮咳剤を投与することが望ましい場合がある。
【0032】
また、ハイドロクロロサイヤザイドのような利尿剤及び/又はロサルタンのような抗高血圧薬を加えることが望ましい場合がある。
【0033】
本発明による製剤は、多活性成分製剤として使用するのに適していることが理想的である。
【0034】
前記マイクロカプセルは、様々な材料の膜壁を有するが、類似又は異なる透過特性を有するマイクロカプセルから同時吸収のために放出することができる、エンハンサ対薬剤の割合が薬剤0:エンハンサ100から薬剤100:エンハンサ0の範囲内の透過性エンハンサの溶液中に懸濁され又は可溶化された活性成分を含むことができる。
【0035】
更に、薬剤無しでエンハンサ溶液を含むマイクロカプセルは、薬剤及びエンハンサ溶液を含むマイクロカプセルよりも遅い速度で放出し、胃腸管における未吸収の薬剤の透過性の増強を最大にすることができる。
【0036】
前記マイクロカプセルの膜壁は、固有の粘膜付着特性を有し、従ってそこから活性成分を放出させる際に胃腸管の壁に結合させることができる。
【0037】
また、前記マイクロカプセルの膜壁は、固有の腸溶性コーティング特性を有することができる。
【0038】
前記製剤の一部又は全部のマイクロカプセルが腸溶性コーティング、例えばセラックの外層膜又は他の腸溶性コーティングを有することができる。
【0039】
本発明による製剤を用いて、活性成分の選択的な吸収を実現し得ることが分かる。
【0040】
本質的に、薬剤が溶解している又は懸濁している溶液は、それがマイクロカプセルの膜壁を溶解させないことを条件に、薬剤として許容されるあらゆる溶媒又は液相とすることができる。
【0041】
前記液相は、油とすることが好ましい。前記油が大豆油又は鉱物油である場合、前記活性剤は一般にそのような油の懸濁液を形成する。また、前記液相は水相とすることができる。前記油相は、栄養上の利益を有し、又はオメガ3脂肪酸及びオメガ4脂肪酸のような薬理活性を有する油とすることができる。
【0042】
このような水相には、例えば、高分子量の液体ポリエチレングリコール、及び短鎖又は中鎖モノ−、ジ−、並びに/若しくはトリ−グリセリドを含む。
【0043】
前記活性成分は、前記マイクロカプセルのコア内のポリオールに溶解することが好ましい。ポリオールの例には、ポリエチレングリコール及びセルロース誘導体がある。
【0044】
また、前記コアは、pH制御剤、抗酸化剤、湿潤剤、表面活性剤及び血管拡張剤から選択される1つ又は複数の補助剤を含むことができる。
【0045】
適当なpH調整剤には、例えばクエン酸、フマル酸、クエン酸ナトリウム及びその類似物が含まれる。
【0046】
抗酸化剤の例には、二亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、及びブチルヒドロキシトルエン又はそれらの混合物がある。
【0047】
適当な湿潤剤の例には、グリセロール及びソルビトールがある。
【0048】
適当な表面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸ジエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート及びポリビニルアルコール又はそれらの混合物が含まれる。
【0049】
前記マイクロカプセルは、90重量%までの活性成分を含むことができる。しかしながら、一般には、前記マイクロカプセルは25〜75重量%の活性成分を含む。
【0050】
各製剤は、10〜300のマイクロカプセル、好ましくは100〜250のマイクロカプセルを含むことが好ましい。
【0051】
前記マイクロカプセルは、通常の方法で飲み込まれる抗ゼラチンカプセル内に充填することにより、又はその内容物を飲み込み若しくは食物に振りかけて飲み込むことができるサシェ(包)のような別の容器内に充填することにより、投与されることが好ましい。ある特別な状況では、前記マイクロカプセルは、その完全性を維持する方法で錠剤内に一体化することができる。
【0052】
本発明による製剤は、1つ又は複数の活性成分の高速、中速及び低速放出を実現するように構成することができる。従って、本発明による製剤を用いて、1つ又は複数の活性成分の胃腸管からの吸収を最大にすると、その結果、最大の生体利用可能性を実現し得ることがわかる。
【0053】
本発明による製剤は、広範囲の活性成分の投与に適している。
例えば、前記製剤は、ニフェジピンのような不溶性活性成分、ゲムフィブロジルのような脂溶性活性成分、及びカプロプリルのようなpH感応性活性成分の場合に使用することができる。
また、本発明による製剤は、オメプラゾール及び抗潰瘍処置において使用される他のプロトンポンプ阻害剤のような、胃内のpH環境に応答性を有する活性成分の投与に適している。
【0054】
また、本発明による製剤は、低経口生体利用可能性を有するテルフェナジンのような活性成分の生体利用可能性を向上させるために使用することができる。
【0055】
また、本発明による製剤を用いて、カプトプリル、サイクロスポリン、カルシトニン、ヘパリン及びヘパリン類似物質のような、腸管内での吸収が弱く又は破壊されるような活性成分の吸収を著しく増加させることができる。
【0056】
本発明を用いて運搬することができる適当な分類の治療薬には、心臓血管剤、脂質低下薬、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗感染性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗精神病剤、免疫抑制剤、プロテアーゼ阻害剤、環状ペプチドのような水溶性に乏しい薬剤が含まれるが、これらに制限されるものではない。
【0057】
本発明を用いて運搬することができる適当な分類の治療薬には、ペプチド、蛋白質、ワクチン及びオリゴヌクレオチド、並びにその非共有又は共有修飾形が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明に従って即時放出及び持続放出双方を提供する不溶性薬剤の製剤の一例は、例えば、1〜8mmの様々なサイズを有する即時放出及び持続放出シームレスカプセルの混合物を含むカプセルからなる。活性成分、例えばニフェジピン又はサイクロスポリンは、好ましくは、例えばポリエチレングリコール、オイルベース、ポリエチレングリコール及び鉱物油の懸濁液、又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又は油と表面活性剤若しくはエマルジョン若しくはミクロエマルジョンのプレコンセントレイトとの適当な組合せに溶解し又は懸濁される。外側の膜液、例えばゼラチン及び内側の活性成分液は、小滴即ちマイクロカプセルを形成するように組み合わされる。前記マイクロカプセルは、冷却システム例えば油の中を通す。前記活性成分を含むシームレスカプセルを前記冷却システムから取り出し、別個の設備で正常化しかつ乾燥させる。
【0059】
前記マイクロカプセルの持続作用は、様々な徐放性高分子を内側の液体又は外側の膜液、例えばポリメタクリレート、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンに加えることによって、又は外膜の厚さによって決定される。上述したように、前記マイクロカプセルは、例えばpH依存性ポリメタクリレートを用いることにより、特定の吸収部位で液体活性成分を放出するように製造することができる。
【0060】
本発明によれば、胃酸及び腸プロテアーゼ及び他の分解性プロセスのような厳しい環境から活性成分を保護することができる経口製剤が提供される。腸溶性コーティングが薬剤を酸性環境への放出から保護し、プロテアーゼ及びヌクレアーゼ阻害剤が蛋白質分解及び核酸分解を低下させつつ、粘膜付着性コーティングが分解酵素への曝露を最小にする。
【0061】
分解プロセスからの保護を最大にするために、保護すべき薬剤は、ヌクレアーゼ又はプロテアーゼ阻害剤のような適当な分解阻害剤を含む溶液又はエマルジョンとして製造することが望ましい。さもなければ、別個のミニカプセルのように薬剤及び分解性プロセス阻害剤を製造する必要がある。更に、マイクロカプセルを外側の腸溶性被膜及び内側の粘膜付着性コーティングで被覆して、分解酵素への曝露時間を減少させ、それにより分解を緩和することが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下の実施例を用いて本発明をさらに説明する。
シームレスマイクロカプセル形成の概要
シームレスマイクロカプセル製剤の本質は、2つの異なる溶液(互いに溶解しない又はほとんど溶解しない)が互いに接触したとき、異なる両溶液の接触面積を減らすことにより作用する「表面張力」の利用である。
【0063】
ある口径を有するオリフィスから射出したコア溶液を、外側オリフィスを介して射出したシェル溶液と共にカプセル化した後、カプセル化した球体を冷却又は硬化溶液内に射出して、外側のシェル溶液をゲル化又は固化させる。このようにして、シームレスカプセルが形成される。
【0064】
前記コア溶液は主に疎水性溶液又は懸濁液である。前記シェル溶液は通常ゼラチンを主成分とする。しかしながら、親水性溶液も、中間溶液の存在によってカプセル化することができ、それによって親水性コア溶液の外側シェルとの直接接触を回避することができる。
【0065】
単一のオリフィスを有するノズルの場合、シェル/コア混合懸濁液からなるビーズ又はカプセルを加工することができる。2つのオリフィス(中央及び外側)を有するノズルの場合、疎水性溶液をカプセル化することができる。3つ又はそれ以上のオリフィスを有するノズルの場合、様々な用途のシームレスマイクロカプセルを加工することができる。
(実施例)
【0066】
実施例1
ニフェジピンを大豆油に溶解させ、かつ米国特許第5,478,508号及び同第5,882,680号明細書に記載されている方法に従って、本明細書に記載されている外側ゼラチンコーティングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、1〜3mmのサイズ分布を有する。
次に、前記ニフェジピンマイクロカプセルを従来の方法によりセルロース高分子コーティングで被覆して、放出制御した溶解速度を得る。
最後に、被覆した前記マイクロカプセルを硬ゼラチンカプセルシェル内にカプセル化する。
【0067】
この実施例の詳細は次の通りである。
コア溶液 重量%
−ニフェジピンUSP 9.1
−ポリエチレングリコール(グレード 200;300;400;600) 90.9
中間溶液
−植物油 100.0
フィルム溶液
−ゼラチン 12.0-22.5
−ソルビトール 1.5-2.5
−精製水 75-85
マイクロカプセル形成
成分 重量%
−コア溶液 30-70
−中間溶液 5-25
−フィルム溶液 15-65
【0068】
コア溶液を、中間溶液層及び外側硬ゼラチンフィルム層と共にシームレスマイクロカプセルに形成する。前記中間層は、前記コア溶液が外側ゼラチン層へ移ることを防止する障壁として作用する。
製造された前記マイクロカプセルの粒径は、1.00〜3.00mmの範囲である。
【0069】
ニフェジピン平均溶解速度(1.25%ラウリル硫酸ナトリウム)
時間 Mg/放出 %放出
5分 93.2 28.6
10分 190.3 58.4
15分 230.5 70.8
30分 279.1 85.7
45分 324.8 99.8
【0070】
実施例2
ニフェジピンシームレスマイクロカプセルを実施例1に記載するように製造するが、ペレットの固有放出特性を実施例1から変化させる。
これらのマイクロカプセルにより、より長い放出制御作用が得られる。
【0071】
この実施例の詳細は次の通りである。
成分
−ニフェジピンマイクロカプセル(1.50−1.80mm) 500グラム
−アミノメタクリレート共重合体(Copolomer)(Eudragit(登録商標)RL) 5-50w/w
−アミノメタクリレート共重合体(Copolomer)(Eudragit(登録商標)RS) 50-95w/w
−イソプロピルアルコール* ---
−アセトン* ---
*最終生成物中、微量で起こる処理で使用する。
【0072】
実施例1と同じ方法で調整した500グラムのニフェジピンマイクロカプセルを適当な流動層システム(例えば、Glatt GPCG1又はVector FL−M−1 Unit)内に配置する。前記マイクロカプセルを、イソプロピルアルコール/アセトンに溶解させたEudragit(登録商標)RL(10%w/w)及びEudragitRS(90%w/w)からなる6.25溶液でスプレーコーティングする。タルクを同時にオーガフィーダを介して加えて、凝集を防止する。
【0073】
得られた生成物は、胃腸管内において12時間又は24時間の持続時間に亘ってニフェジピンを持続放出する速度制御ポリマーで被覆したマイクロカプセルで構成されていた。被覆した前記マイクロカプセルは、次に硬ゼラチンカプセル内に充填する。
【0074】
実施例2A
ニフェジピンシームレスマイクロカプセルを実施例1のマイクロカプセルに関して説明したのと同じ方法で調整したが、該マイクロカプセルの固有放出特性は、マイクロカプセルの外側ゼラチン層の膜厚を大きくすることにより、実施例1から変化させる。
マイクロカプセルを適当な流動層コーティング装置に配置し、実施例2と同じ高分子コーティング製剤でスプレーコーティングし、それにより一般に24時間のより長い持続放出作用を得た。
【0075】
実施例3
ゲムフィブロジル(液溶性薬剤)を、様々な厚さのシームレスマイクロカプセル内に様々な表面活性剤及びゼラチンと一緒に製剤する。
これらペレットの一部分をメタクリレート高分子系で被覆し、かつ被覆していないマイクロカプセルを4対1の割合で組み合わせ、次に硬ゼラチンカプセルシェル内に充填する
ことにより、即時放出溶解特性と持続放出溶解特性の両方を有する薬剤を得る。
【0076】
実施例4
カプトプリルを大豆油に溶解させ、かつ外側ゼラチンコーティングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、1〜3mmのサイズ分布を有する。
このマイクロカプセルを次に従来の方法でセルロースポリマーコーティングで被覆し、放出制御された溶解速度を得る。
被覆したマイクロカプセルを最後に硬ゼラチンカプセルシェル内にカプセル化する。
【0077】
実施例4A
コア溶液
−カプトプリル 60グラム
−ポリエチレングリコール(グレード 200;300;400;600) 100グラム
−無水クエン酸 pH Aduster
−精製水 100グラム
中間溶液
実施例1のとおり
フィルム溶液
実施例1のとおり
【0078】
100グラムのポリエチレングリコール(グレード200;300;400;600)と100グラムの精製水とを適当な容器に入れ、機械的なミキサを用いて混合する。適量のクエン酸を前記グリコール/水混合物に加え、所定のpH値にする。この溶液にカプトプリルを加える。所定のpH値が得られていない場合は、追加のクエン酸を加えることができる。
前記コア溶液の理論的標的効力(Target Potency)は、200〜300mg/gの範囲内とすべきである。
前記シームレスマイクロカプセルを実施例1及び2に記載されるように製造する。
【0079】
実施例5
カプトプリルシームレスマイクロカプセルを実施例4に記載されるように製造するが、マイクロカプセルの固有放出特性は、マイクロカプセルの膜厚を大きくすることにより、実施例4から変化させる。
これらのマイクロカプセルは、実施例4の場合と同じポリマーコーティングで被覆したとき、より長い放出制御作用が得られる。
【0080】
実施例6
サイクロスポリンを適当な中鎖トリグリセリドに可溶化し、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
このサイクロスポリンマイクロカプセルを次に硬ゼラチンカプセルシェル内にカプセル化する。
【0081】
実施例7
サイクロスポリン分散液を調整し、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
このサイクロスポリンマイクロカプセルを次に硬ゼラチンカプセルシェル内にカプセル化する。
【0082】
実施例8
サイクロスポリンを適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0083】
オメガ3−脂肪酸を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。前記サイクロスポリンマイクロカプセル及びオメガ3−脂肪酸マイクロカプセルを100対300の割合で混合し、硬ゼラチンカプセルに充填して、25mg/カプセルのサイクロスポリン含量を得る。
このサイクロスポリンマイクロカプセルを次に硬ゼラチンカプセルシェルにカプセル化する。
【0084】
実施例8A
サイクロスポリンを適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ実施例1及び基本技術の説明にのみ記載したように外側ゼラチン層を有するシームレスマイクロカプセルに形成する。製造されたマイクロカプセルは、1.00〜3.00mmの範囲内の粒子サイズ分布を有する。
オメガ3脂肪酸を、実施例1及び基本技術の説明に記載したようにシームレスマイクロカプセルに製造する。製造したマイクロカプセルは、1.00〜3.00mmの範囲の粒子分布を有する。
【0085】
前記サイクロスポリンマイクロカプセルとオメガ3脂肪酸マイクロカプセルとを、100対300の割合でMacofar社のマルチドージングペレットカプセル化装置を用いて硬ゼラチンカプセルにカプセル化し、25mg/カプセルのサイクロスポリン有効含量を得る。
【0086】
実施例9
ニモジピンをPEG400のような適当な溶媒に可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
前記ニモジピンマイクロカプセルを次に硬ゼラチンカプセルシェルにカプセル化する。
【0087】
実施例10
ニモジピンシームレスマイクロカプセルを、実施例9に記載したように製造するが、ペレットの固有放出特性は、マイクロカプセルの膜厚を大きくすることにより、実施例9よりも変化させる。これらのマイクロカプセルは、実施例1の場合と同じポリマーコーティングで被覆したとき、より長い放出制御作用が得られる。
【0088】
実施例11
サイクロスポリンを、胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩を加えた適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0089】
前記サイクロスポリン及び胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩マイクロカプセルを、次に硬ゼラチンカプセルシェルにカプセル化して、25〜50mg/カプセルのサイクロスポリン含量を得る。
【0090】
実施例12
サイクロスポリンを適当な中鎖トリグリセリド内に可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0091】
胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。前記サイクロスポリンマイクロカプセルと胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩マイクロカプセルとを混合して硬ゼラチンカプセルに充填し、25〜50mg/カプセルのサイクロスポリン含量を得る。
このサイクロスポリン及び胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩マイクロカプセルを次に、硬ゼラチンカプセルシェル内にカプセル化する。
【0092】
実施例13
別個のサイクロスポリン及び胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩溶液を実施例12のように調整する。
各サイクロスポリン及び胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩マイクロカプセルを実施例1のように被覆して、異なる放出制御プロファイルを得る。胆汁酸塩エンハンサ又は胆汁酸塩は、サイクロスポリンの放出以前に放出される。
【0093】
実施例14
サイクロスポリンのようなP−糖蛋白質阻害剤を適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0094】
ビオフラボノイド類のようなP−糖蛋白質感受性薬剤又はパクリタキセルのような抗新生物分子を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。前記サイクロスポリンマイクロカプセルとP−糖蛋白質感受性薬剤マイクロカプセルとを混合し、硬ゼラチンカプセルに充填する。
参考文献:-Inhibition of P-glycoprotein by flavonoid derivatives in adriamycin- resistant human myelogenour leukaemia (K562/ADM) cells, Cancer Lett.2002 Mar 8;177(1):89-93
【0095】
実施例15
サイクロスポリンのような血液脳障壁透過性モジュレータを適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
ニモジピンのような制限された血液脳障壁透過性を有する薬剤を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。
【0096】
前記血液脳障壁透過性モジュレータマイクロカプセルと血液脳障壁透過性制限化合物マイクロカプセルとを混合し、かつ硬ゼラチンカプセルに充填する。
参考文献:P-glycoprotein restricted transport of Nimodipine across blood brain barrier, Acta Phannacol Sin. 2003 Sep, 24 (9) ; 903-6
【0097】
実施例16
ニフェジピン(nifidipine)のような腸透過性モジュレータを実施例1のように製造し、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
サイクロスポリンのような制限された腸透過性を有する薬剤を適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0098】
前記腸透過性モジュレータマイクロカプセルと制限された腸透過性を有する化合物のマイクロカプセルとを混合し、かつ硬ゼラチンカプセルに充填する。
参考文献:Nifidipine improves immediate, 6 and 12 month graft function in cyclosporine (CyA)treated renal allograft recipients, Transpl Int. 1992 ; 5 Suppl 1 ; S69-72
【0099】
実施例17
サイクロスポリンのようなP−糖蛋白質阻害剤を適当な中鎖トリグリセリドに可溶化させ、クエン酸ナトリウムのような適当なpHモジュレータと混合し、かつ上述した外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
【0100】
ベルベリンのようなP−糖蛋白質及びpH感応性薬剤を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。サイクロスポリンマイクロカプセルとP−糖蛋白質/pH感応性薬剤マイクロカプセルとを混合し、硬ゼラチンカプセルに充填する。
参考文献:Transport and uptake characteristics of a new derivative of berberine (CPU-86017 in human intestinal epithelial cell line : Caco-2, Acta Pharmacol Sin.2003 Dec, 24 (12):1185-91
【0101】
実施例18
シムバスタチンのようなヒドロキシメチル−グルタリル−コエンザイム(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤を、実施例1に記載したようにシームレスマイクロカプセルにカプセル化する。
複合炭水化物のようなRES刺激薬を可溶化させ、かつ上述したように外側ゼラチンコーディングを有するシームレスマイクロカプセルに形成する。これらのマイクロカプセルは、3〜6mmのサイズ分布を有する。
ヒドロキシメチル−グルタリル−コエンザイム(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤マイクロカプセルとRES刺激薬マイクロカプセルとを混合し、硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0102】
実施例19
サイクロスポリンUSP 100
Labrifil M1944 50-300
クレモフォアRH40 50-400
ツイーン 80 0-200
ポリエチレングリコール(グレード 200;300;400;600) 50-200
エタノール --
【0103】
ラブリフィル(labrifil)、クレモフォア及びツイーン(必要な場合)を適当な容器に入れ、かつ機械的なミキサを用いて、均一に分散され又は溶解するまで混合する。(Mix1と表示する)
ポリエチレングリコールとエタノール(必要に応じて)とを適当な容器に入れる。サイクロスポリンを加え、かつ適当な機械的なミキサを用いて、サイクロスポリンが完全に可溶化するまで混合する。(MIX2と表示する)
【0104】
Mix1をMix2に加え、かつ全成分が均一に分散するまで混合し続ける。これを活性コア溶液とする。前記活性コア溶液を実施例1に記載したと同じ方法で加工して、1.50〜2.00mmの粒径範囲を有するシームレスマイクロカプセルを形成する。
前記サイクロスポリンマイクロカプセルを次に硬ゼラチンカプセルにカプセル化する。
【0105】
実施例20
実施例19のマイクロカプセルを8人の健康な男性被験者に投与し、その生体利用可能性を、Novartis社から商標Sandimmuneで市販されているサイクロスポリンの従来のソフトゲル製剤と比較した。得られた生体利用可能性のデータは、従来の製剤と比較したとき、Tmaxが3.25時間から1.75時間に減少し(取込み速度が100%増加)、かつCmaxが580ng/mlから750ng/mlに増加した(薬剤の取込みが40%以上増加)。全体として、AUC(曲線より下側の領域)が、標準の製剤と比較したとき20%以上増加した。このデータを以下の表に示す。生体利用可能性のデータを図示すると、実施例19の製品の生体利用可能性が実線で示すように、かつ従来の標準製品の生体利用可能性が破線で示すようになる。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
本発明は、活性薬理成分を液相に維持しかつ次にマイクロカプセルにカプセル化できるようにする。また、本発明は、活性成分をその液相に維持し、それにより不溶性であるが部分的に可溶性の薬理成分の溶解度を増大させることができる。
【0109】
本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、その詳細において様々に変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の疎水性溶液又は懸濁液であるコア溶液およびシェル溶液である互いに溶解しない又はほとんど溶解しない2つの異なる溶液を互いに接触させ、シェル/コア混合懸濁液を、単一のオリフィスを有するノズルを通して加工して、シェル/コア混合懸濁液のカプセル又はビーズを形成し、次いで、冷却又は硬化溶液内に射出して、シェル溶液をゲル化又は固化させる、シームレスマイクロカプセルの成形方法。
【請求項2】
マイクロカプセルの平均径が0.5〜5mmの範囲内である前記1に記載の方法。
【請求項3】
セルロースポリマー被膜および腸溶性被膜から選ばれる材料でマイクロカプセルを被覆することをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
表面活性剤をさらに含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
コア溶液が、薬剤が溶解される疎水性溶液である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
シェル溶液が、ゼラチンベースである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
シェル溶液が、持続放出性ポリマーを含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
多数のシームレスマイクロカプセルを、固形単位剤形をなす放出制御製剤に成形することをさらに含む前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
固形単位剤形が、硬ゼラチンカプセルである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られるシームレスマイクロカプセルまたは請求項8または9に記載の方法によって得られる単位剤形。
【請求項11】
固形単位剤形をなす放出制御製剤であって、該製剤が多数のシームレスマイクロカプセルを有し、各マイクロカプセルが、液相に1つ以上の活性成分を含み、かつ、薬剤の疎水性溶液又は懸濁液であるコア溶液およびシェル溶液である互いに溶解しない又はほとんど溶解しない2つの異なる溶液を互いに接触させ、シェル/コア混合懸濁液を、単一のオリフィスを有するノズルを通して加工して、シェル/コア混合懸濁液のカプセル又はビーズを形成し、次いで、冷却又は硬化溶液内に射出して、シェル溶液をゲル化又は固化させる方法によって得られ、
かつ各マイクロカプセルが、投与後に胃腸管内で各活性成分が所定の放出速度を有し、該マイクロカプセルが集合的に、各マイクロカプセルの所定の透過率に基づいて各活性成分について1つ以上の放出速度を有する製剤。
【請求項12】
1つ以上の活性成分が、薬剤として許容される液相に溶解される請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
マイクロカプセルのシェルが、持続放出性ポリマーをさらに包含する請求項11または12に記載の製剤。
【請求項14】
製剤中のマイクロカプセルの一部または全部が腸溶性被膜を有する請求項11〜13のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
マイクロカプセルの平均径が0.5〜5mmの範囲内である請求項11〜14のいずれかに記載の製剤。
【請求項16】
表面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸ジエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート及びポリビニルアルコールまたはそれらの混合物である請求項11〜15のいずれかに記載の製剤。
【請求項17】
マイクロカプセルが、セルロースポリマー被膜をさらに含む請求項12に記載の製剤。
【請求項18】
活性成分が、ニフェジピン、ゲムフィブロジル、テルフェナジン、カプトプリル、サイクロスポリン、カルシトニン、ヘパリン及びヘパリン類似物質から選ばれる請求項11〜17のいずれかに記載の製剤。
【請求項19】
活性成分が、サイクロスポリンである請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
活性成分が、ペプチド、タンパク質、ワクチンおよびオリゴヌクレオチドから選ばれる請求項11〜17のいずれかに記載の製剤。
【請求項21】
多活性成分製剤である請求項11〜17のいずれかに記載の製剤。
【請求項22】
マイクロカプセルが、胃腸管の水環境内において異なる溶解度を有する2つ以上の活性成分を含む請求項11〜17のいずれかに記載の製剤。
【請求項23】
マイクロカプセルが、胃腸管からの吸収後に異なる半減期を有する活性成分を含む請求項11〜17のいずれかに記載の製剤。
【請求項24】
固形単位剤形をなす放出制御製剤であり、かつ多活性成分製剤である製剤であって、該製剤が多数のシームレスマイクロカプセルを有し、各マイクロカプセルが、
胃腸管内で溶解する、薬剤として許容されるフィルム形成ポリマー又はポリマーの混合物から形成されるシェル;および
該シェルに接触し、補助剤として表面活性剤を含む薬剤として許容される液相に溶解または懸濁した1つ以上の活性成分の疎水性溶液または懸濁液であるコア;
を含み、かつ投与後に胃腸管内で各活性成分が所定の放出速度を有し、
該マイクロカプセルが集合的に、各マイクロカプセルの所定の透過率に基づいて各活性成分について1つ以上の放出速度を有する製剤。
【請求項25】
マイクロカプセルが、胃腸管からの吸収後に異なる半減期を有する2つ以上の活性成分を含む請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
マイクロカプセルが、異なる媒体中に可溶化された単一の活性成分を含む請求項24に記載の製剤。

【公開番号】特開2011−121974(P2011−121974A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21367(P2011−21367)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2006−507572(P2006−507572)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(509276490)シグモイド・ファーマ・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Sigmoid Pharma Limited
【Fターム(参考)】