説明

シーラント材、カバーテープ、及び電子部品搬送用包装体

【課題】剥離時に生じるジッピング現象及びベタツキの発生が抑制されたシーラント材を提供する。
【解決手段】スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられるシーラント材であって、(A)ビニルエステルの共重合比が3〜20質量%であって、エチレン由来の構造単位及び酢酸ビニル由来の構造単位を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体と、(B)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーと、(C)粘着付与剤とを少なくとも含み、前記(A)、(B)及び(C)の比率が、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、それぞれ41〜80質量部、19〜50質量部、及び1〜9質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの保管、運搬などに好適なスチレン系樹脂を用いたキャリアテープに密着されるシーラント材、並びにこれを用いたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や電子部品などのマイクロチップを輸送や保管するために用いられるキャリアテープが広く知られている。このキャリアテープは、あまりに小サイズなために取り扱いが困難なマイクロチップ等を、キャリアテープに設けられた凹部に1個ずつ埋め込んで保管、運搬することができる。キャリアテープには、マイクロチップ等が埋め込まれた凹部を閉塞するためのカバーテープがヒートシール等により密着され、パッケージ化される。この状態で運搬等した後、キャリアテープをマウンターという部品組立用の機械(実装機)にセットし、埋め込まれたマイクロチップ等を取り出せるようになっている。
【0003】
マイクロチップ等のほか、従来からカップ麺やゼリー、ヨーグルト等の飲食品、医薬品などの容器として、易開封性の蓋材を備えたプラスチックス容器が知られている。このような易開封性の蓋材に設けられるヒートシール材料として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体と粘着付与樹脂の組成物、これにポリエチレンや低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体などを配合したヒートシール材料などが知られている。
【0004】
ところが、キャリアテープ本体に用いられるプラスチックス材料も多様化し、従来のヒートシール材料では所望とされるヒートシール性を保てない場合がある。また、用途によっては、求められるヒートシール性が異なり、他の特性が必要とされる。
【0005】
上記に関連する技術として、エチレン・不飽和エステル共重合体とエラストマーと結晶性ポリオレフィンと粘着付与剤とをそれぞれ所望の範囲で含むエチレン共重合体組成物が開示されており(例えば、特許文献1参照)、ポリプロピレンやポリスチレン等の飲食品容器に対して密封性、低温ヒートシール性、及び易開封性に優れるとされている。
【0006】
また、ビニルエステル含量が所定範囲のエチレン・ビニルエステル、エチレンとプロピレンまたはブテン−1との共重合体、及び粘着付与剤が溶融混合してなるヒートシール性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2〜3参照)。これは、プリンやゼリーなどの食品包装に用いられる易開封性ヒートシール材用として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/090722
【特許文献2】特開昭58−47038号公報
【特許文献3】特公昭63−29894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、0.5mm程度の極微小なICチップなどを封入するキャリアテープ用のシーラント材としては、キャリアテープに対して易剥離性を有し、開封時にはシーラント材とICチップ等との間のジッピング現象、すなわちキャリアテープからシーラント材(カバーテープ)を剥離する際に微細な振動を発生させる現象が生じることがある。このような振動は、ICチップが飛び跳ねて位置ずれしたり、キャリアテープから飛び出して零れ落ちてしまう原因となり、実装率が低下する課題がある。
【0009】
また、長期保存後でも、ベタツキの発生がないことが望ましい。ベタツキが発生すると、実装時の工程でカバーテープとキャリアテープの間でブロッキングを生じ、剥離強度や剥離感(ジッピング)の変化に伴うトラブルを生じる恐れがある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、剥離時に生じるジッピング現象及びベタツキの発生が抑制されたシーラント材、並びにこれを用いたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、(A)ビニルエステルの共重合比が3〜20質量%であって、エチレン由来の構造単位及び酢酸ビニル由来の構造単位を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体と、(B)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーと、(C)粘着付与剤とを少なくとも含み、前記(A)、(B)及び(C)の比率が、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、それぞれ41〜80質量部、19〜50質量部、及び1〜9質量部であるシーラント材である。
【0012】
<2> 前記エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーが、密度860〜900kg/mのエチレン・ブテン共重合体であることを特徴とする前記<1>に記載のシーラント材である。
【0013】
<3> 更に、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜10質量部の(D)アンチブロッキング剤を含むことを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載のシーラント材である。
【0014】
<4> 更に、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜5質量部の(E)スリップ剤を含むことを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のシーラント材である。
【0015】
<5> 更に、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)とビニルエステルの共重合比が異なる少なくとも1種のエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のシーラント材である。
【0016】
<6> 基材上に、前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のシーラント材を含む層を有し、スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープに熱接着して用いられるカバーテープである。
【0017】
<7> スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープと、を備えた電子部品搬送用包装体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、剥離時に生じるジッピング現象及びベタツキの発生が抑制されたシーラント材を提供することができる。また、
本発明によれば、剥離時のジッピング現象及びベタツキの発生が抑制されたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のシーラント材、カバーテープ、及び電子部品搬送用包装体について詳細に説明する。
【0020】
本発明のシーラント材は、スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられるシーラント材であり、少なくとも、(A)ビニルエステルの共重合比が3〜20質量%であって、エチレン由来の構造単位及び酢酸ビニル由来の構造単位を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体と、(B)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーと、
(C)粘着付与剤とを含み、前記成分(A)、(B)及び(C)の含有比率が、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、それぞれ41〜80質量部、19〜50質量部、及び1〜9質量部となるように構成されたものである。
【0021】
本発明においては、エチレン・酢酸ビニル共重合体に所定範囲のビニルエステルを含ませるとともに、エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーと粘着付与剤との割合を所定範囲にすることで、開封時に生じるジッピング現象の発生を抑制しつつも、ベタツキの発生をも抑制することができる。
【0022】
(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体
本発明のシーラント材は、ビニルエステルの共重合比が3〜20質量%であって、エチレン由来の構造単位及び酢酸ビニル由来の構造単位を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体の少なくとも一種(以下、「本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体」ともいう。)を含有する。この共重合体を含むことで、良好なヒートシール性が付与される。
【0023】
本発明においては、シーラント材中におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体の含有割合を、下記成分(B)〜(C)及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の合計量100質量部に対して、41〜80質量部の範囲とする。エチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量は、41質量部未満であると、加工性が悪化し、80質量%を超えると、ヒートシール強度及び剥離感(ジッピング防止)のバランスが悪化する。
中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量は、加工性、ヒートシール性を付与しつつ、ベタツキの発生を抑える観点から、成分(B)〜(C)及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の合計量100質量部に対して、50〜70質量部の範囲が好ましく、更には50〜65質量部、特に好ましくは55〜60質量部の範囲が好ましい。
【0024】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、少なくともエチレンと酢酸ビニルとが共重合した共重合体であり、場合により他のモノマーが更に共重合されてもよい。このエチレン・酢酸ビニル共重合体におけるビニルエステルの共重合比は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の全質量に対して、3〜20質量%である。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが含まれ、共重合体の共重合単位として複数種のビニルエステル由来の構造単位を含んでもよく、本発明においては少なくとも酢酸ビニル由来の構造単位を共重合単位として含む場合が好ましい。ビニルエステルの共重合比は、3質量%未満であると、ヒートシール強度が不足し、20質量%を超えると、ベタツキが大きくなる。中でも、ビニルエステルの共重合比は、同様の理由から、エチレン・酢酸ビニル共重合体の全質量に対して、3〜10質量%が好ましい。
【0025】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと共重合体全質量に対して3〜20質量%(好ましくは3〜10質量%)の割合の酢酸ビニルとの2元共重合体が好ましい。
【0026】
(B)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマー
本発明のシーラント材は、エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの少なくとも一種を含有する。このエラストマーを含むことで、スチレン系樹脂を含ませたキャリアテープにヒートシールした後に剥離する際のジッピングの発生が抑制される。
【0027】
本発明においては、シーラント材中におけるエチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの含有割合を、前記成分(A)及び下記成分(C)とエチレン・α−オレフィン共重合エラストマーとの合計量100質量部に対して、19〜50質量部の範囲とする。エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの含有量は、19質量部未満であると、ジッピングの発生抑制効果が小さく、50質量%を超えると、ベタツキが大きくなったり加工性が悪化する。
中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量は、ジッピングの発生を抑制するとともに、ベタツキの発生を抑える観点から、成分(A)及び成分(C)とエチレン・α−オレフィン共重合エラストマーとの合計量100質量部に対して、25〜45質量部の範囲が好ましく、更には30〜45質量部、特に好ましくは30〜40質量部の範囲が好ましい。
【0028】
α−オレフィンとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン等が挙げられる。
【0029】
エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などが挙げられる。
【0030】
エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの密度は、ヒートシール性とジッピングの発生抑制の観点から、860〜900kg/mの範囲が好ましく、880〜890kg/mの範囲がより好ましい。
【0031】
(C)粘着付与剤
本発明のシーラント材は、粘着付与剤の少なくとも一種を含有する。粘着付与剤を含有することで、ヒートシール強度が高められ、成形時に求められる加工性が与えられる。
【0032】
本発明においては、シーラント材中における粘着付与剤を、前記成分(A)〜(B)及び粘着付与剤の合計量100質量部に対して、1〜9質量部の範囲で含有する。粘着付与剤の含有量が1質量部以上であるのはヒートシール強度及び加工性付与のために実質的に含むことを示し、1質量部未満である場合、ヒートシール強度が不充分であったり、フィルム成形した際の加工性が悪化する。粘着付与剤の含有量が9質量%を超えると、強度過多になりやすく、ジッピングが発生する。
中でも、加工性を与えた上でジッピングの発生を抑える観点から、前記成分(A)〜(B)及び粘着付与剤の合計量100質量部に対して、2〜8質量部の範囲が好ましく、更には3〜7質量部の範囲が好ましい。
【0033】
前記粘着付与剤は、粘着付与性のある樹脂を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。
【0034】
前記脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどの炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0035】
前記脂環族系炭化水素樹脂としては、例えば、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後、重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などが挙げられる。
【0036】
前記芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどの炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と前記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
【0037】
前記ポリテルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
【0038】
前記ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示できる。
【0039】
前記スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0040】
粘着付与剤は、軟化点が85〜130℃の樹脂が好ましい傾向がある。軟化点は、一般的に85℃以上であると耐熱性に優れた効果を発揮する傾向があり、130℃以下であると粘着性に優れた効果を発揮する傾向がある。
【0041】
(D)アンチブロッキング剤
本発明のシーラント材は、アンチブロッキング剤を含有することが好ましい。アンチブロッキング剤を含有することで、フィルムのブロッキングが緩和される。
【0042】
アンチブロッキング剤の例としては、シリカ、アルミノ珪酸塩(ゼオライト等)などを挙げることができる。
【0043】
本発明においては、シーラント材中におけるアンチブロッキング剤を、前記成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含有することができる。アンチブロッキング剤の含有量が0.1質量部以上であるのはブロッキング性付与のために実質的に含むことを示し、0.1質量部以上である場合、ベタツキが抑えられ、ブロッキングの発生防止効果が高い。アンチブロッキング剤の含有量が10質量%以下であると、透明性を高く保持することができる点で有利である。
中でも、ベタツキ防止及び透明性の観点から、前記成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、1〜3質量部の範囲が好ましい。
【0044】
(E)スリップ剤
本発明のシーラント材は、スリップ剤を含有することが好ましい。スリップ剤を含有することで、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上される。
【0045】
スリップ剤の例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などが挙げられる。
【0046】
本発明においては、シーラント材中におけるスリップ剤を、前記成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で含有することができる。スリップ剤の含有量が0.1質量部以上であるのはブロッキング性付与のために実質的に含むことを示し、0.1質量部以上である場合、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上する。スリップ剤の含有量が5質量%以下であると、逆に滑り過ぎが生じることがない点と、シーラント材の汚染がない点とで有利である。
中でも、加工性、離ロール性、フィルム滑り性の観点から、前記成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、0.2〜1質量部の範囲が好ましい。
【0047】
本発明のシーラント材は、上記成分のほか、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、顔料、染料などの添加剤を例示することができる。
【0048】
本発明のシーラント材は、前記成分(A)〜(C)及び前記成分(D)〜(E)と必要に応じて配合されるその他添加剤を、それぞれ同時に又は逐次的に混合することにより調製することができる。本発明のシーラント材の調製にあたっては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いることができる。
【0049】
本発明のシーラント材は、押出加工等の加工性、ヒートシール強度を考慮すると、JIS K7210−1999に準拠した190℃、2160g荷重でのメルトフローレート(MFR;以下同じ)が1〜100g/10分であるものが好ましく、特には3〜50g/10分のものが好ましい。
【0050】
本発明のシーラント材は、スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープ(特にスチレン系樹脂製のキャリアテープ)に用いられ、該キャリアテープの上に重ねてヒートシール等により接着することで、例えばICチップを収納した収納部を閉塞して保管、運搬が可能である。
【0051】
本発明のシーラント材は、あらかじめキャスト法やインフレーション法によりフィルム化し、ドライラミネーション法によりスチレン系樹脂を含ませたキャリアテープと貼り合わせる方法などにより用いることができる。
【0052】
次に、本発明のカバーテープ及びこれを用いた電子部品搬送用包装体について詳述する。
【0053】
本発明のカバーテープは、スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープにヒートシールして用いられるものであり、基材と、該基材上に有する前記本発明のシーラント材を含む層(以下、「シーラント層」ともいう。)とを設けて構成されている。本発明のカバーテープは、本発明のシーラント材を用いて構成されるので、スチレン系樹脂を用いたキャリアテープとの間のヒートシール性、ヒートシール後に剥離する際のジッピングの発生防止効果を向上させることができる。
【0054】
また、本発明のカバーテープが適用できる電子部品搬送用キャリアテープには、前述のスチレン系樹脂を含ませて作製されたもの以外に、ポリカーボネートを含ませたものや紙で作製されたものにも適用可能である。
【0055】
シーラント層の厚みとしては、3〜50μmとすることが好ましい。厚みが前記範囲内であると、良好なヒートシール性が得られる。
【0056】
基材としては、特に制限はなく、紙、アルミニウム、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどが挙げられる。これらの基材は、単層構造のみならず、2層以上の積層構造であってもよい。
【0057】
本発明の電子部品搬送用包装体は、スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に既述の本発明のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープとを備えている。本発明の電子部品搬送用包装体は、本発明のシーラント材を用いて構成されるので、スチレン系樹脂を用いたキャリアテープとの間のヒートシール性、ヒートシール後に剥離する際のジッピングの発生防止効果に優れる。この他に、ポリカーボネートを用いたキャリアテープや紙を用いたキャリアテープに対しても好適なヒートシール性及び剥離感(ジッピング防止)を示す。
【0058】
電子部品搬送用キャリアテープは、部品組立用の機械(実装機)にセットされて、マイクロチップ等の電子部品を埋め込んで保管、運搬等し、その後は所望に応じて取り出すことができる長尺に形成されたものである。本発明においては、スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープとして、特にスチレン系樹脂製のキャリアテープが好ましい。
【0059】
電子部品搬送用包装体は、電子部品搬送用キャリアテープとカバーテープを用い、電子部品搬送用キャリアテープの電子部品(例:ICチップ)が収容される収容部が開口する開口面の上に、カバーテープをそのシーラント層が開口面に向くように重ね、カバーテープの上からヒートシールすることにより作製される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0061】
(実施例1、比較例1〜4)
−シーラント組成物の調製−
下記表1に示す組成になるように、各成分を単軸押出機(ナカタニ機械(株)製)に投入し、140℃にて溶融混練してシーラント組成物を調製した。
【0062】
−評価フィルムの作製及び評価−
次に、厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)と厚み20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)とを押出成形により重ねて押し出し、重層ラミネートされた2層構造の延伸PET/LDPE積層フィルムを用意した。この延伸PET/LDPE積層フィルムのLDPE面に、40mmφTダイ成形機(ナカタニ機械(株)製)を用いて上記で調製したシーラント組成物を押出ラミネートにより厚み30μmにて押し出して積層し、シーラント層/LDPE/延伸PETの積層構造を有する評価フィルムを作製した。押出ラミネートは、樹脂温度を190℃、加工速度を30m/minの条件下で行なった。このときのフィルム加工性について、膜割れ等の発生の有無を観察して加工の可否を評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0063】
−積層サンプルの作製−
上記とは別に、被着体としてポリスチレンシート(クリアレンCST−2401、電気化学工業(株)製)を準備した。このポリスチレンシートの上に、上記で作製した評価フィルムをそのシーラント層がポリスチレンシートと向き合うように重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて下記条件にてヒートシールし、積層サンプルとした。
<条件>
・ヒートシーラー:テスター産業(株)製
・ヒートシール温度:100〜150℃
・ヒートシール圧力:0.2MPa
・ヒートシール時間:0.5秒
・ヒートシールバー:1mm幅×300mm長×2本
【0064】
−評価−
作製した積層サンプルを下記(a)及び(b)の条件にてエージング処理し、エージング処理後のサンプルについて、下記のように測定、評価を行なった。測定及び評価の結果は下記表2に示す。
<エージング条件>
(a)23℃、50%RHの室内に1日間静置
(b)60℃、90%RHの恒温恒湿槽内に5日間静置
【0065】
[ヒートシール強度]
前記条件(a)、(b)の両方でエージング処理した後の各サンプルについて、剥離強度テスターVG−35(Vanguard社製)を用いて、下記の剥離条件にて被着体であるポリスチレンシートから評価フィルムを剥離し、剥離時における強度を測定した。
<剥離条件>
・剥離速度:300mm/min
・剥離角度:165℃〜180℃(引き剥がすときの評価フィルムと引き出す方向との角度)
・剥離方向:長手方向に剥離
【0066】
[ジッピング]
前記条件(b)でエージング処理した後の各サンプルを用い、被着体であるポリスチレンシートから評価フィルムを手動で剥離し、剥離時に生じるピリピリ音の有無を評価した。
【0067】
[ベタツキ]
前記条件(b)でエージング処理した後の各サンプルについて、被着体であるポリスチレンシートから評価フィルムを剥離し、剥離後の評価フィルムのシーラント層同士を触れ合わせたときの感触でベタツキの有無を評価した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
前記表2に示すように、実施例では、フィルム加工が可能でジッピング及びベトツキの発生が抑えられた。また、ヒートシール強度は、強度過多にならない程度の良好な性能を示した。
これに対し、比較例1では、粘着付与剤の量が多いために、ジッピング、ベトツキが発生してしまい、シール強度も過多であった。逆に、粘着付与剤を加えなかった比較例2では、膜割れを生じ、フィルム加工性に劣っていた。エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーを加えなかった比較例3では、ジッピングが悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂を含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、
(A)ビニルエステルの共重合比が3〜20質量%であって、エチレン由来の構造単位及び酢酸ビニル由来の構造単位を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体と、
(B)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーと、
(C)粘着付与剤と、
を少なくとも含み、前記(A)、(B)及び(C)の比率が、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対して、それぞれ41〜80質量部、19〜50質量部、及び1〜9質量部であるシーラント材。
【請求項2】
前記エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーが、密度860〜900kg/mのエチレン・ブテン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のシーラント材。
【請求項3】
更に、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜10質量部の(D)アンチブロッキング剤を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーラント材。
【請求項4】
更に、前記(A)〜(C)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜5質量部の(E)スリップ剤を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシーラント材。
【請求項5】
更に、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)とビニルエステルの共重合比が異なる少なくとも1種のエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシーラント材。
【請求項6】
基材上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープに熱接着して用いられるカバーテープ。
【請求項7】
スチレン系樹脂を含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープと、を備えた電子部品搬送用包装体。

【公開番号】特開2011−63662(P2011−63662A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213756(P2009−213756)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】