説明

シーリング材およびその塗布方法

粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕した粉体物からなるシーリング材、および該粉体物を被塗布面にスプレー塗布することからなるシーリング材の塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、塗布が容易であって、塗り斑が発生し難く、塗布面がきれいに仕上がるシーリング材およびその塗布方法に関する。
【背景技術】
従来、例えば、空気入りタイヤがパンクした場合に、そのパンク穴が自然に閉じるようにするために、空気入りタイヤの内面に予めゴム系シーリング材を塗布するようにしている(セルフシールタイヤ)。
ゴム系シーリング材は、ゴムに種々の配合剤を配合してなるもので(いわゆる生ゴム)、種々のものが提案されている。例えば、特開昭53−55802号公報には、ポリイソブチレンと無機充填剤とパーオキサイドからなるパンク防止用のゴム系シーリング材が記載されている。
しかしながら、ゴム系シーリング材は粘度が高いため(例えば、ブチルゴムからなるシーリング材の場合、その粘度は80Pa・s/100℃程度)、被塗布面(例えば、空気入りタイヤの内面)に対してスプレー塗布を行うことができず、手作業で塗り付けて行かなければならないので、作業性が悪いと共に塗り斑が発生し易く、凹凸のないきれいな均一な塗布面が確保できないという問題があった。
また、スプレー塗布を可能にするために多量の有機溶剤を添加してゴム系シーリング材の粘度を低下させようとすると、その有機溶剤が作業環境に悪影響を及ぼしてしまうという問題があった。
【発明の開示】
本発明の目的は、塗布が容易であって作業性がよく、塗り斑が発生し難く、塗布面がきれいに仕上がるシーリング材およびその塗布方法を提供することにある。
本発明のシーリング材は、粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕した粉体物からなることを特徴とする。
また、本発明のシーリング材の塗布方法は、粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕して粉体物となし、ついで該粉体物を被塗布面にスプレー塗布することを特徴とする。
このように本発明のシーリング材は粘度20〜200Pa・s/100℃という高粘度のゴム系シーリング材を粉体物としたものであり、また、本発明によればこの粉体物を被塗布面にスプレー塗布するため、従来におけるように手作業で塗り付けなくともよいので、塗布が容易であって作業性がよく、塗り斑が発生し難く、塗布面をきれいに仕上げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明で用いるゴム系シーリング材は、一般の公知のものでよい。例えば、特開昭53−55802号公報に記載されるようなポリイソブチレンと無機充填剤とパーオキサイドからなるものである。ただし、本発明で用いるゴム系シーリング材は、粘度20〜200Pa・s/100℃のものである。
ゴム系シーリング材におけるゴムとしては、いずれのゴムでもよく、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン(イソブチレンゴム)、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレンゴム)、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴムなどのゴムの単独又は複数を用いてもよい。これらのゴムのうちでは、ブチルゴムが耐空気透過性に優れるため用いるのが好ましい。なお、ブチルゴムからなるゴム系シーリング材には、必要に応じて、ポリブテンなどのゴム以外の他の重合体を混入してもよい。
ゴムに配合される無機充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛などが挙げられる。また、必要に応じて、ステアリン酸、パラフィン油等の他の配合剤を配合してもよい。
パーオキサイドを用いる場合には、一般に知られるパーオキサイドを用いればよい(パーオキサイドは必ずしも用いなくともよい)。このパーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイドなどのアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類などが挙げられる。
本発明で用いるゴム系シーリング材は、その粘度が20〜200Pa・s/100℃のものであり、好ましくは80〜140Pa・s/100℃のものである。粘度が20Pa・s/100℃未満では粘度が低すぎてゴム系シーリング材を被塗布面に塗布した後にゴム系シーリング材の流れが過度に発生して塗布面が不均一となるからであり、一方、粘度が200Pa・s/100℃超では粘度が高すぎてゴム系シーリング材を被塗布面に塗布した後にゴム系シーリング材の流れが発生しないため、塗布厚が均一にならないので塗布面が平滑にならないからである。ゴム系シーリング材の粘度を20〜200Pa・s/100℃にするには、ゴム系シーリング材の配合成分の配合量を適宜調整することによればよい。
本発明では、粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕して粉体物にする。ゴム系シーリング材は、粘度20〜200Pa・s/100℃という高粘度の粘稠物であるが、その脆化温度以下の温度で脆化(固化)する。そこで、本発明では、このゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕して粉体物にする。粉砕は常法によって行えばよい。例えば、液体窒素雰囲気下においてゴム系シーリング材を低温粉砕機を用いて粉砕すればよい。なお、脆化温度以下の温度は、特定されるものではないが、脆化温度よりも10℃以上低い温度であるのが好ましい。粉体物の大きさはスプレーするのに便利な大きさであればよく、例えば、その粒径が3μm〜8μmであればよい。
また、本発明では、上記のようにして得られた粉体物を、被塗布面、例えば空気入りタイヤの内面にスプレー塗布する。この塗布は、常法によって、例えばエアスプレーガン又はエアレススプレーガンを用いて行えばよい。この塗布に際しては、粉体物を上記脆化温度以下の温度においたままスプレーを行う。脆化温度超に温度が上昇すると、粉体物がその形状を維持できなくなるからである。一方、被塗布面の温度は、常温(20℃程度)でもよいが、20℃以上60℃以下、好ましくは30℃以上50℃以下にするのがよい。このように被塗布面の温度を高めると、スプレー塗布された粉体物が速やかに加温されてすぐに本来の粘性を取り戻し、被塗布面に付着できるからである。
実施例1〜6、比較例1〜2、従来例
表1に示す配合内容(重量部)のゴム系シーリング材を用いてタイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤの内面塗布を行った。
塗布に際しては、まず、低温粉砕機を用いてゴム系シーリング材を脆化温度以下の粉砕温度で粉砕して粒径3〜8μm程度の粉体物とし、この粉体物を粉砕温度に維持しながらエアスプレーガンを用いて空気入りタイヤの内面にスプレー塗布した(実施例1〜6、比較例1〜2)。なお、ゴム系シーリング材には、表1に示した配合成分を混ぜ合わせた後、120℃×1時間加熱して部分的に加硫させる前処理を行った。スプレーする条件としては、エアスプレーガンとして重力落下式噴出装置を用い、粉体物を噴射口付近に落下させ、噴射口から噴出する粉体物の流速を20m/s〜100m/sとし、また、重力落下式噴出装置のオリフィスの径は、上記の流速が得られ、かつ上記粉体物を十分に噴出できる径とした。
空気入りタイヤの内面温度(塗布面温度)は表1に示す通りとした。
従来例としては、ゴム系シーリング材は常温ではその粘度が高いため、シート状に圧延したものを手作業でタイヤ内面に貼り付けることによりタイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤの内面塗布を行った。
このように塗布する際の作業性およびゴム系シーリング材の塗布厚さの均一性を表1に示す。なお、表1中、「○」はよいを、「△」は「○」までには至らないがよいを、「×」は悪いを表わす。

表1において、比較例1では、ゴム系シーリング材の粘度が低いためタイヤ内面に塗布した後にシーリング材の流れが過度に発生してしまい、塗布面の厚さが不均一となる。実施例1では、塗布面温度が低いため塗布したシーリング材が直ちに有効な粘度に変化せず、塗布面の厚さが若干不均一となる。実施例6では、塗布面温度が高すぎるため塗布後のシーリング材の粘度が低くなってしまい、塗布面の平坦性が若干損なわれる。なお、塗布面温度が高すぎるとタイヤ自体に悪影響を与える恐れがある。比較例2では、ゴム系シーリング材の粘度が高いため、塗布後にシーリング材の流れが発生せず、塗布域において部分的に厚さが変化してその変化が解消されないので、塗布面が平坦にならないから塗布面の厚さが不均一となる。
したがって、表1から明らかなように、本発明の場合(実施例1〜6)は比較例1〜2に比し塗り斑が発生し難く、また、従来例に比し作業性がよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように本発明では、粘度の高いゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕して粉体物となし、ついで該粉体物を被塗布面にスプレー塗布するために、塗布が容易であって作業性がよく、塗り斑が発生し難く、塗布面をきれいに仕上げることができ、さらに、自由な厚さで塗布することが可能となる。
本発明は、空気入りタイヤばかりでなく、家屋の屋根や浴室等のシーリング、自動車用としてはランプ類とボディ間のシーリング、又は複層ガラスのシーリングなどに有利に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕した粉体物からなるシーリング材。
【請求項2】
前記ゴム系シーリング材がブチルゴムからなる請求項1記載のシーリング材。
【請求項3】
さらにポリブテンを含有する請求項2記載のシーリング材。
【請求項4】
前記脆化温度以下の温度が脆化温度よりも10℃以上低い温度である請求項1乃至3のいずれかに記載のシーリング材。
【請求項5】
前記粉体物の粒径が3μm〜8μmである請求項1乃至4のいずれかに記載のシーリング材。
【請求項6】
ゴム系シーリング材の粉砕を液体窒素雰囲気下に脆化温度以下の温度で行う請求項1乃至5のいずれかに記載のシーリング材。
【請求項7】
粘度20〜200Pa・s/100℃のゴム系シーリング材をその脆化温度以下の温度で粉砕して粉体物となし、ついで該粉体物を被塗布面にスプレー塗布することからなるシーリング材の塗布方法。
【請求項8】
前記ゴム系シーリング材がブチルゴムからなる請求項7記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項9】
さらにポリブテンを含有する請求項8記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項10】
前記脆化温度以下の温度が脆化温度よりも10℃以上低い温度である請求項7乃至9のいずれかに記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項11】
前記粉体物の粒径が3μm〜8μmである請求項7乃至10のいずれかに記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項12】
ゴム系シーリング材の粉砕を液体窒素雰囲気下に脆化温度以下の温度で行う請求項7乃至11のいずれかに記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項13】
前記被塗布面が空気入りタイヤの内面である請求項7乃至12のいずれかに記載のシーリング材の塗布方法。
【請求項14】
前記被塗布面の温度が20℃以上60℃以下である請求項7乃至13のいずれかに記載のシーリング材の塗布方法。

【国際公開番号】WO2004/092296
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505404(P2005−505404)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005243
【国際出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】