説明

シールドプリント配線板

【課題】電子部品が接続されたプリント配線板において、電子部品に対向する位置に補強部材を設けた場合でも、設計自由度を確保しつつ、電子部品の実装部位に対するシールド効果を保つことができるシールドプリント配線板を提供する。
【解決手段】シールドプリント配線板1は、グランド用配線パターン14が形成されたベース部材12と、グランド用配線パターンを覆ってベース部材上に設けられた絶縁フィルム11と、を有すると共に、電子部品50がベース部材の下面に設けられた実装部位に接続され、かつグランド電位であってベース部材下面の実装部位に対向する領域まで配置された導電層22上に設けられた絶縁層21とを備えたシールドフィルム20を有しており、補強部材35は、球状の導電性粒子32を含んだ導電性接着剤30により絶縁層上に接着され、その後、前記導電性粒子が前記導電層と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、コンピュータなどに使用されるシールドプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やコンピュータなどの電子機器は、小型化や高速処理化などにより、メイン基板や外部から受ける電磁波などのノイズの影響を受けやすくなっている。そのため、電磁波などのノイズを遮蔽するシールドフィルムを備えたプリント配線板の要求が高くなっている。また、このようなプリント配線板は、携帯電話やコンピュータなどに使用される電子部品が接続されて用いられ、使用時の曲げなどによって、電子部品が実装される実装部位には歪みなどが生じる場合がある。そのため、電子部品が実装される実装部位に対向する位置には、補強部材が設けられる。
【0003】
例えば、図5は、従来のシールドプリント配線板100を示した図である。図5に示すように、シールドプリント配線板100は、グランド用配線パターン114、115が形成されたベース部材112と、グランド用配線パターン114、115を覆うようにして接着剤層113を介してベース部材112上に設けられた絶縁フィルム111と、を備えたプリント配線板110を有している。また、シールドプリント配線板100の絶縁フィルム111上には、導電材123、導電層122、および絶縁層121を順に備えたシールドフィルム120が設けられている。ここで、プリント配線板110の絶縁フィルム111および接着剤層113にはグランド用配線パターン114を露出させるための穴部140が形成されている。この穴部140にシールドフィルム120の導電材123が充填されることによって、導電層122とグランド用配線パターン114とが導通し、双方を同電位に保っている。これにより、シールドフィルム120によって、プリント配線板110に対する電磁波90aを遮蔽することができるようになっている。さらに、プリント配線板110の下面に設けられた実装部位には、電子部品150が接続されるようになっている。そして、プリント配線板110上における電子部品150の実装部位に対向する位置には、補強部材135が設けられる。
【0004】
ここで、プリント配線板110やそれに接続される電子部品150には、外部から電磁波90bなどのノイズの影響を受ける場合があり、この電子部品150が実装される部位にもシールド効果をもたせる必要がある。そこで、補強部材135に導電性を有する材料を用いて、補強部材135にシールド効果をもたせ、補強部材135に補強効果とシールド効果の2つの機能を享受させていた。
【0005】
ここで、補強部材135に十分なシールド効果をもたせるためには、補強部材135をグランド用配線パターン114、115と同電位に保つ必要がある。そのため、従来では、シールドプリント配線板100の外部に図示しないグランド用部材を別途設け、そのグランド用部材を介して、補強部材135とグランド用配線パターン114、115とを同電位に保っていた。しかしながら、シールドプリント配線板100の外部にグランド用部材を設けた場合、補強部材135とグランド用部材とを接続させるための配線などが必要になり、その分だけシールドプリント配線板の面積が大きくなり、設計自由度が狭くなってしまうなどの問題があった。
【0006】
そこで、従来のシールドプリント配線板100では、補強部材135の直下にグランド用配線パターン115を配置し、そのグランド用配線パターン115が露出するように絶縁フィルム111および接着剤層113に穴部160を形成し、樹枝状の導電性接着剤130をその穴部160に充填することによって、補強部材135とグランド用配線パターン115とを同電位に保っていた。
【0007】
上記のような方法を用いて補強部材とグランド用配線パターンとを同電位に保つものとして、例えば特許文献1に開示されたフレキシブルプリント配線板がある。このフレキシブルプリント配線板は、グランド回路を露出させる開口に導電性接着剤を充填して、金属補強板とグランド回路とを同電位に保ち、金属補強板にシールド効果をもたせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−218443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように、穴部160に導電性接着剤130を充填すると、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部に空隙160a、160bが生じてしまう場合があった。これは、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部が、補強部材135やベース部材112といった硬い材料で上下に挟まれているため、補強部材135を貼り付ける際に、穴部160の段差に導電性接着剤130が十分に追従しない事に起因する。このような場合、シールドプリント配線板100を携帯電話やコンピュータなどのメイン基板に装着するリフロー工程において、空隙160a、160bが熱で膨らみ、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との電気的接続が不十分となる。その結果、外観不良になったり、補強部材135をグランド電位に保つことができなくなり、十分なシールド効果を確保することが難しくなる問題があった。
【0010】
また、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部に空隙160a、160bを生じさせないようにするためには、導電性接着剤130の厚みを極力厚くする必要があるが、この場合、導電性を保つためには導電性接着剤130に内在する導電性粒子の割合を多くする必要があり、その分コストも高くなり、効率が悪かった。さらに、上記のような方法であると、補強部材135が配置された直下にグランド用配線パターン115を配置させる必要があり、設計自由度が狭くなってしまう問題もあった。
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、電子部品が接続されたプリント配線板において、電子部品に対向する位置に補強部材を設けた場合でも、設計自由度を確保しつつ、電子部品の実装部位に対するシールド効果を保つことができるシールドプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のシールドプリント配線板は、グランド用配線パターンが形成されたベース部材と、当該グランド用配線パターンを覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有すると共に、電子部品が当該ベース部材の下面に設けられた実装部位に接続されたプリント配線板と、前記グランド用配線パターンと同電位であると共に前記実装部位に対向する領域まで配置された導電層と、当該導電層上に設けられた絶縁層と、を備え、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、前記実装部位に対向する領域に配置され、前記シールドフィルム上に設けられた導電性を有する補強部材と、を有するシールドプリント配線板であって、前記補強部材は、球状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤により前記絶縁層上に接着され、前記絶縁層は、前記導電性接着剤が接着された後において、当該導電性接着剤から突出した前記導電性粒子の突出長よりも薄い層厚みで形成され、前記導電性接着剤が前記絶縁層に接着された後において、前記導電性粒子が前記導電層と接触する。
【0013】
上記の構成によれば、プリント配線板上において、電子部品の実装部位に対向する領域までグランド用配線パターンと同電位の導電層が配置されている。これにより、導電層を有するシールドフィルムによって、電子部品の実装部位に対する外部からの電磁波を遮蔽することができる。また、電子部品の実装部位に対向する領域が、シールドフィルム上に設けられた補強部材によって補強されている。これにより、補強部材によって、曲げなどに起因して実装部位に生じる歪みなどを防ぐことができる。さらに、シールドフィルムの絶縁層上に補強部材を接着する導電性接着剤に含まれる導電性粒子が、導電性接着剤が接着された後において、シールドフィルムの導電層と接触するため、導電性を有する補強部材の電位と導電層の電位とを、同電位にすることができ、補強部材にもシールド効果をもたすことができる。これにより、電子部品の実装部位に対して、シールドフィルムによるシールド効果と補強部材によるシールド効果の2重の効果によって、より確実にシールド効果をもたらすことができる。従って、補強部材をグランド電位にするために、従来のようにグランド用配線パターンを露出して、導電性接着剤を介して補強部材とグランド用配線パターンとを接続させる必要がないため、補強部材の配置場所に合わせてグランド用配線パターンを形成する必要がなく、設計自由度が向上する。さらに、導電性接着剤を介して補強部材とグランド用配線パターンとを接続させる必要がないため、その接続部分にできる空隙が原因で起こるリフロー時の不具合も生じない。以上のように、設計自由度を確保しつつ、シールド効果を保つことができる。さらに、導電性粒子は球状であるため、導電性接着剤の中で導電性粒子がどの方向に傾いても、導電性接着剤から突出する長さは、層厚方向においてほぼ一定になる。これにより、例えば、導電性粒子がフレーク状や樹枝状に比べて、より絶縁層を突き破り易くなり、導電層と接触しやすくなる。その結果、より確実に補強部材と導電層とを同電位に保つことができる。
【0014】
また、本発明のシールドプリント配線板において、前記補強部材は、さらに前記グランド用配線パターンと同電位に保たれた外部のグランド用部材に接続されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、補強部材は、導電性接着剤に含まれる導電性粒子を介して内部でグランド用配線パターンと同電位に保たれると共に、外部のグランド用部材を介してもグランド用配線パターンと同電位に保たれるため、よりシールド効果を向上させることができる。
【0016】
また、本発明のシールドプリント配線板において、前記シールドフィルムの前記絶縁層は、前記導電層上にコーティングされていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、シールドフィルムの絶縁層が導電層上にコーティングされているため、例えばフィルム状の絶縁層よりも薄くすることができ、導電性接着剤から突出した導電性粒子が絶縁層を突き破って導電層と接触しやすくなる。
【0018】
また、本発明のシールドプリント配線板において、前記補強部材は、ステンレス材によって形成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、ステンレス材は補強に適した硬さで耐食性に優れるため、より効果的に、電子部品の実装部位を補強しつつ、実装部位に対してシールド効果をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシールドプリント配線板によると、導電層を有するシールドフィルムによって、電子部品の実装部位に対する外部からの電磁波を遮蔽することができる。また、補強部材によって、曲げなどに起因して実装部位に生じる歪みなどを防ぐことができる。さらに、導電性を有する補強部材の電位と導電層の電位とを、同電位にすることができ、補強部材にもシールド効果をもたすことができる。これにより、電子部品の実装部位に対して、シールドフィルムによるシールド効果と補強部材によるシールド効果の2重の効果によって、より確実にシールド効果をもたらすことができる。従って、補強部材をグランド電位にするために、従来のようにグランド用配線パターンを露出して、導電性接着剤を介して補強部材とグランド用配線パターンとを接続させる必要がないため、補強部材の配置場所に合わせてグランド用配線パターンを形成する必要がなく、設計自由度が向上する。さらに、導電性接着剤を介して補強部材とグランド用配線パターンとを接続させる必要がないため、その接続部分にできる空隙が原因で起こるリフロー時の不具合も生じない。以上のように、設計自由度を確保しつつ、シールド効果を保つことができる。さらに、例えば、導電性粒子がフレーク状や樹枝状に比べて、より絶縁層を突き破り易くなり、導電層と接触しやすくなる。その結果、より確実に補強部材と導電層とを同電位に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るシールドプリント配線板の一部断面図である。
【図2】(a)本実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法における穴部形成工程を示す図である。(b)本実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法におけるシールドフィルム接着工程を示す図である。(c)本実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法におけるシールドフィルムの剥離層剥離工程を示す図である。
【図3】(d)本実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法における導電性接着剤接着工程を示す図である。(e)本実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法における補強部材接着工程を示す図である。(f)本実施形態に係るシールドプリント配線板に電子部品を接続する電子部品接続工程を示す図である。
【図4】本実施形態に係るシールドプリント配線板の実施例および比較例を用いた実験結果を示す図である。
【図5】従来のシールドプリント配線板の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(シールドプリント配線板1の全体構成)
先ず、図1を用いて、本実施形態のシールドプリント配線板1について説明する。図1に示すように、シールドプリント配線板1は、プリント配線板10と、シールドフィルム20と、補強部材35と、を有している。そして、プリント配線板10の下面に設けられた実装部位には電子部品50が接続されるようになっている。また、シールドフィルム20は、プリント配線板10上に設けられており、電子部品50が接続される実装部位に対向する領域まで配置されている。これにより、シールドフィルム20を利用して電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bなどのノイズを遮蔽している。
【0024】
さらに、補強部材35は、シールドフィルム20上に設けられており、電子部品50が接続される実装部位に対向配置されている。補強部材35は、導電性接着剤30に接触状態に接着されており、その導電性接着剤30によって、シールドフィルム20の絶縁層21上に貼り付けられている。ここで、図1の拡大部aは、補強部材35に接触状態に接着された導電性接着剤30が、シールドフィルム20の絶縁層21に接着されている様子を拡大した図である。拡大部aに示すように、導電性接着剤30に含まれる導電性粒子32は、導電性接着剤30に含まれる接着剤31から突出している。そして、導電性接着剤30の上面に接触状態に接着された補強部材35は、導電性粒子32と接触している。一方、導電性接着剤30の下面から突出した導電性粒子32は、シールドフィルム20の絶縁層21を突き破り、その下の導電層22に接触している。これにより、導電性接着剤30の導電性粒子32を介して補強部材35とシールドフィルム20の導電層22とが導通状態になり、導電性を有する補強部材35と導電層22とを同電位にすることができる。従って、導電性を有する補強部材35にシールド効果をもたせることができるようになっている。
【0025】
これにより、シールドプリント配線板1の補強部材35は、電子部品50の実装部位を補強する役割と、電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bなどのノイズを遮蔽する役割の2重の機能を少なくとも有することができるようになっている。
【0026】
以下、各構成を具体的に説明する。
【0027】
(プリント配線板10)
プリント配線板10は、図示しない信号用配線パターンやグランド用配線パターン14などの複数の配線パターンが形成されたベース部材12と、ベース部材12上に設けられた接着剤層13と、接着剤層13に接着された絶縁フィルム11と、を有している。
【0028】
図示しない信号用配線パターンやグランド用配線パターン14は、ベース部材12の上面に形成されている。これらの配線パターンは、導電性材料をエッチング処理することにより形成される。また、そのうち、グランド用配線パターン14は、グランド電位を保ったパターンのことを指す。
【0029】
接着剤層13は、信号用配線パターンやグランド用配線パターン14と絶縁フィルム11との間に介在する接着剤であり、絶縁性を保つと共に、絶縁フィルム11をベース部材12に接着させる役割を有する。なお、接着剤層13の厚みは、10μm〜40μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0030】
ベース部材12と絶縁フィルム11は、いずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。なお、ベース部材12の厚みは、10μm〜40μmであり、絶縁フィルム11の厚みは、10μm〜30μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0031】
また、上記の絶縁フィルム11および接着剤層13には、レーザー加工などによって、穴部40が形成されている。穴部40は、複数の信号用配線パターンやグランド用配線パターンの中から選択された配線パターンの一部領域を露出させるものである。本実施形態の場合、グランド用配線パターン14の一部領域が、外部に露出するように、絶縁フィルム11および接着剤層13における積層方向に穴部40が形成されている。なお、穴部40は、隣接する他の配線パターンを露出させないように適宜穴径が設定されている。
【0032】
(補強部材35)
補強部材35は、導電性を有する材料、例えばステンレス材によって形成されている。また、補強部材35は、シールドフィルム20上において、電子部品50の実装部位に対向配置されており、電子部品50の実装部位を補強することによって、曲げなどに起因して実装部位に生じる歪みなどを防いでいる。なお、補強部材35は、ステンレス材に限らず、実装部位を補強でき、且つ導電性を有する材料であれば何れのものを用いても良いが、補強に適した硬さで耐食性に優れるため、ステンレス材を用いた方がより効果的に、電子部品50の実装部位を補強しつつ、実装部位に対してシールド効果をもたらすことができる。さらに、補強部材35の電気的接続を向上させるため、ステンレス材の表面にニッケルメッキを施している方が好ましい。なお、補強部材35の厚みは、0.05mm〜1mmであり、構成により適宜決定される。
【0033】
(導電性接着剤30)
導電性接着剤30は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成されている。等方導電性接着剤は、従来のはんだと同様の電気的性質を有している。従って、等方導電性接着剤で導電性接着剤30が形成されている場合には、厚み方向および幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態を確保することができる。一方、異方導電性接着剤で導電性接着剤30が形成されている場合には、厚み方向からなる二次元の方向にだけ電気的な導電状態を確保することができる。
【0034】
なお、導電性接着剤30は、軟磁性材料を主成分とする導電性粒子32と接着剤31とを混合した導電性接着剤により形成されていてもよい。この場合には、導電性粒子32が高い磁化を発揮することにより周波数の高い電磁波に対しても透磁率の低下を抑制することから、電波を吸収することが可能になる。これにより、補強部材35との組合せで、シールド効果の機能に加えて、電波吸収の機能を有することになる。
【0035】
具体的に、導電性接着剤30は、導電性粒子32と接着剤31との混合体として形成されている。即ち、導電性接着剤30は、接着剤31に導電性粒子32を分散させたものである。導電性接着剤30の電気的な接続は、接着剤31内の導電性粒子32が1個または複数個、導電性接着剤30の厚み方向に連続的に接触することにより実現され、接着剤31の接着力により保持される。
【0036】
導電性接着剤30に含まれる接着剤31は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、
ウレタン系樹脂などが挙げられる。なお、接着剤31は、上記樹脂の単体でも混合体でもよい。また、接着剤31は、粘着性付与剤をさらに含んでいてもよい。粘着性付与剤としては、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂などのタッキファイヤーが挙げられる。
【0037】
導電性接着剤30に含まれる導電性粒子32は、金属材料により一部または全部が形成されている。例えば、導電性粒子32は、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。なお、導電性粒子32は、AgコートCu粉、またはAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性粒子32を得ることができるからである。なお、導電性粒子32の形状は、球状に限定される必要はなく、例えば、球状をベースとして、球面に突起が形成されていてもよい。この場合、導電性粒子32が、絶縁層21をより突き破りやすくなる。なお、導電性粒子32の形状が球状である場合、導電性接着剤30の中で導電性粒子がどの方向に傾いても、導電性接着剤30から突出する長さは、層厚方向においてほぼ一定になる。これにより、例えば、フレーク状や樹枝状に比べて、導電性粒子32がより絶縁層21を突き破り易くなり、導電層22と接触しやすくなる。
【0038】
上記のような構成を有する導電性接着剤30において、接着剤31の厚みは5μm〜40μmであり、導電性粒子32の平均粒子径は10μm〜100μmである。また、接着剤31の厚みに対する導電性粒子32の平均粒子径は、1.5〜3倍となる。そのため、導電性接着剤30の接着剤31から、導電性粒子32の一部が突出している。なお、導電性粒子32の平均粒子径の偏差は、±5μm以下であることが好ましい。この場合、導電性接着剤30から突出する導電性粒子32の突出長に大きな偏りが無いため、導電層22との接続抵抗が安定する。これにより、安定して、補強部材35と導電層22とを同電位に保つことができる。さらに、接着剤31に対する導電性粒子32の配合量は、30重量%〜70重量%であり、接着力および導電性の観点から、50重量%が好ましい。
【0039】
(シールドフィルム20)
シールドフィルム20は、導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している。
【0040】
導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成されている。等方導電性接着剤は、従来のはんだと同様の電気的性質を有している。従って、等方導電性接着剤で導電材23が形成されている場合には、厚み方向および幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態を確保することができる。一方、異方導電性接着剤で導電材23が形成されている場合には、厚み方向からなる二次元の方向にだけ電気的な導電状態を確保することができる。なお、導電材23が等方導電性の接着剤により形成される場合、導電材23が導電層22の機能を有することができるため、導電層22を設けなくてもよい場合がある。
【0041】
また、導電材23は、絶縁性接着剤と、絶縁性接着剤中に分散された導電性粒子と、から構成されている。具体的に、絶縁性接着剤は、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。また、これら接着性樹脂に金属、カーボンなどの導電性粒子を混合し、導電性を持たせた導電性接着剤としている。耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件などに制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはより優れた可撓性が要求される場合においては、信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、そのいずれにおいても熱プレス時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましい。なお、導電材23の厚みは3μm〜30μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0042】
また、導電材23に含まれる導電性粒子は、上述の穴部40内に入り込むように、穴部40の穴径よりも小さな平均粒径を有している。そして、導電性粒子は、金属材料により一部または全部が形成されている。例えば、導電性粒子は、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。なお、導電性粒子は、AgコートCu粉、またはAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性粒子を得ることができるからである。なお、導電材23の導電性粒子の形状は、球状に限定される必要はなく、例えばフレーク状や樹枝状であってもよい。
【0043】
導電層22は、メイン基板から送出される電気信号からの不要輻射や外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を有する。導電層22は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、および、これらの材料の何れか、または2つ以上を含む合金により形成された金属層である。なお、金属材料としては、求められるシールド効果に応じて適宜選択すればよいが、銅は大気に触れると酸化しやすいという問題があり、金は高価であることから、安価なアルミまたは信頼性の高い銀が好ましい。また、膜厚は、求められるシールド効果および繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、0.01μm〜10μmの厚さが好ましい。厚さが0.01μm未満では、十分なシールド効果が得られず、10μmを超えると屈曲性が問題となる。さらに、導電層22の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキ、箔などがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定した導電層22を得ることができる。なお、前述したように、導電材23が等方導電性の接着剤により形成される場合、導電層22は設けなくてもよい場合がある。
【0044】
絶縁層21は、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、フェノール系、およびウレタン系などの樹脂、またはこれらの混合物によって形成されており、絶縁性を保つと共に、導電層22が直接外部に露出しないようにカバーする役割を果たしている。なお、絶縁層21の厚みは1μm〜10μmであり、導電層22に直接コーティングされて形成された方が、例えばフィルム状よりも薄くすることができ、導電性粒子32が絶縁層21を突き破りやすくなる。
【0045】
また、補強部材35がシールドフィルム20上に導電性接着剤30によって設けられる際、導電性接着剤30がシールドフィルム20内の絶縁層21上に接着される。この接着時において、絶縁層21は、補強部材35側から加熱され、軟化されるようになっている。このように、加熱によって絶縁層21が軟化されることによって、導電性接着剤30の導電性粒子32が絶縁層21を突き破りやすくなる。そのため、絶縁層21を形成するエポキシ系などの樹脂は、補強部材35を絶縁層21上に設ける際の加熱温度で軟化される樹脂により形成されている。
【0046】
ここで、図1の拡大部aに示すように、導電性接着剤30と絶縁層21との接着において、導電性接着剤30に含まれる導電性粒子32の一部が接着剤31の下面から突出し、その導電性粒子32の突出部が絶縁層21を突き破って導電層22に接触するようになっている。そのため、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出長L2よりも絶縁層21の層厚みL1は薄くなるように設定されている。具体的に、導電性接着剤30の接着剤31の厚みが5μm〜15μmで、導電性粒子32の平均粒子径が10μm〜20μmとした場合、導電性粒子32の突出長L2は5μm〜15μmとなるため、絶縁層21の厚みは2μm〜12μmの範囲となる。なお、図1の場合は、導電性接着剤30の層厚方向において導電性粒子32が1個ずつ一列に並んだ状態であるが、例えば導電性接着剤30の層厚方向において複数個の導電性粒子32が2列や3列に重なっていてもよい。つまり、本実施形態の場合、導電性接着剤30の層厚方向において、1個の導電性粒子32を介して補強部材35と導電層22が電気的に接続されているが、これに限らず、導電性接着剤30の層厚方向において、複数個の導電性粒子32が重なって存在し、この複数個の導電性粒子32を介して補強部材35と導電層22が電気的に接続されていてもよい。絶縁層21の層厚みが、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出長よりも薄くなるように設定されていればよい。
【0047】
上記のような構成を有するシールドフィルム20において、導電材23は穴部40内に流れ込み、外部に露出したグランド用配線パターン14と接触する。これにより、導電層22は、接触状態に接着された導電材23を介して、グランド用配線パターン14と導通し、同電位に保たれる。こうして、シールドフィルム20はシールド効果を有するようになり、外部からの電磁波90aなどのノイズを遮蔽することができるようになっている。
【0048】
さらに、シールドフィルム20は、プリント配線板10に接続された電子部品の実装部位に対向する領域にまで延びた状態で配置されている。これにより、シールドフィルム20を利用して、電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bなどのノイズを遮蔽することができる。
【0049】
また、導電性接着剤30の下面から突出した導電性粒子32が、シールドフィルム20の絶縁層21を突き破り、その下の導電層22に接触することができる。これにより、導電性接着剤30の導電性粒子32を介して補強部材35とシールドフィルム20の導電層22とが導通状態になり、導電性を有する補強部材35と導電層22とを同電位にすることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るシールドプリント配線板1は、グランド用配線パターン14が形成されたベース部材12と、グランド用配線パターン14を覆ってベース部材12上に設けられた絶縁フィルム11と、を有すると共に、電子部品50がベース部材12の下面に設けられた実装部位に接続されたプリント配線板10と、グランド用配線パターン14と同電位であると共に実装部位に対向する領域まで配置された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を備え、プリント配線板10上に設けられたシールドフィルム20と、実装部位に対向する領域に配置され、シールドフィルム20上に設けられた導電性を有する補強部材35と、を有するシールドプリント配線板1であって、補強部材35は、球状の導電性粒子32を含んだ導電性接着剤30により絶縁層21上に接着され、絶縁層21は、導電性接着剤30が接着された後において、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出長よりも薄い層厚みで形成され、導電性接着剤30が絶縁層21に接着された後において、導電性粒子32が導電層22と接触する。
【0051】
上記の構成によれば、プリント配線板10上において、電子部品50の実装部位に対向する領域までグランド用配線パターン14と同電位の導電層22が配置されている。これにより、導電層22を有するシールドフィルム20によって、電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90aを遮蔽することができる。また、電子部品50の実装部位に対向する領域が、シールドフィルム20上に設けられた補強部材35によって補強されている。これにより、補強部材35によって、曲げなどに起因して実装部位に生じる歪みなどを防ぐことができる。さらに、シールドフィルム20の絶縁層21上に補強部材35を接着する導電性接着剤30に含まれる導電性粒子32が、導電性接着剤30が接着された後において、シールドフィルム20の導電層22と接触するため、導電性を有する補強部材35の電位と導電層22の電位とを、同電位にすることができ、補強部材35にもシールド効果をもたすことができる。これにより、電子部品50の実装部位に対して、シールドフィルム20によるシールド効果と補強部材35によるシールド効果の2重の効果によって、より確実にシールド効果をもたらすことができる。従って、補強部材35をグランド電位にするために、従来のようにグランド用配線パターン14を露出して、導電性接着剤を介して補強部材35とグランド用配線パターン14とを接続させる必要がないため、補強部材35の配置場所に合わせてグランド用配線パターン14を形成する必要がなく、設計自由度が向上する。さらに、導電性接着剤を介して補強部材35とグランド用配線パターン14とを接続させる必要がないため、その接続部分にできる空隙が原因で起こるリフロー時の不具合も生じない。以上のように、設計自由度を確保しつつ、シールド効果を保つことができる。さらに、導電性粒子32は球状であるため、導電性接着剤30の中で導電性粒子32がどの方向に傾いても、導電性接着剤30から突出する長さは、層厚方向においてほぼ一定になる。これにより、例えば、導電性粒子32がフレーク状や樹枝状に比べて、より絶縁層21を突き破り易くなり、導電層22と接触しやすくなる。その結果、より確実に補強部材35と導電層22とを同電位に保つことができる。
【0052】
また、本実施形態に係るシールドプリント配線板1において、プリント配線板10は、グランド用配線パターン14が形成されたベース部材12と、グランド用配線パターン14を覆ってベース部材12に設けられた絶縁フィルム11をさらに備え、絶縁フィルム11には、グランド用配線パターン14の一部を露出させる穴部40が形成されており、シールドフィルム20の導電層22は、絶縁フィルム11上に設けられると共に穴部40に充填される導電材23に、接触状態に設けられている。
【0053】
上記の構成によれば、シールドフィルム20の導電層22の電位とグランド用配線パターン14の電位とを、絶縁フィルム11に形成された穴部40に充填される導電材23を介して同電位にすることができる。これにより、導電層22の電位をグランド電位にするために、外部のグランド用部材にわざわざ接続させる必要がない。
【0054】
また、本実施形態に係るシールドプリント配線板1において、シールドフィルム20の絶縁層21は、導電層22上にコーティングされている。
【0055】
上記の構成によれば、シールドフィルム20の絶縁層21が導電層上にコーティングされているため、例えばフィルム状の絶縁層21よりも薄くすることができ、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32が絶縁層21を突き破って導電層22と接触しやすくなる。
【0056】
また、本実施形態に係るシールドプリント配線板1において、補強部材35は、ステンレス材によって形成されている。
【0057】
上記の構成によれば、ステンレス材は補強に適した硬さで耐食性に優れるため、より効果的に、電子部品50の実装部位を補強しつつ、実装部位に対してシールド効果をもたらすことができる。
【0058】
なお、本実施形態において、補強部材35は、さらにグランド用配線パターン14と同電位に保たれた外部のグランド用部材に接続されていてもよい。つまり、グランド用配線パターン14と同電位のグランド用部材を外部に別途用意し、配線などを用いて補強部材35とグランド用部材とをさらに接続するようにしてもよい。これによれば、補強部材35が導電性接着剤30に含まれる導電性粒子32を介して内部でグランド用配線パターン14と同電位に保たれると共に、外部のグランド用部材を介してもグランド用配線パターン14と同電位に保たれるため、よりシールド効果を向上させることができる。
【0059】
(シールドプリント配線板1の製造方法)
次に、図2および図3を用いて、本実施形態に係るシールドプリント配線板1の製造方法を説明する。図2および図3に示すように、本実施形態に係るシールドプリント配線板1の製造方法は、プリント配線板10の絶縁フィルム11に穴部40を形成する穴部形成工程と、プリント配線板10の上面にシールドフィルム20を設けるシールドフィルム接着工程と、シールドフィルム20の最上面に位置する剥離層28を剥離する剥離層剥離工程と、シールドフィルム20の絶縁層21の上面に導電性接着剤30を接着する導電性接着剤接着工程と、導電性接着剤30に補強部材35を接着する補強部材接着工程と、補強部材35に対向する位置のプリント配線板10の下面に電子部品50を接続する電子部品接続工程と、を有している。
【0060】
以下、各工程を具体的に説明する。図2(a)に示すように、穴部形成工程においては、先ず、プリント配線板10を用意する。そして、プリント配線板10の絶縁フィルム11および接着剤層13をレーザー加工などによって穴部40を形成する。この工程により、複数の信号用配線パターンやグランド用配線パターンの中から選択されたグランド用配線パターン14の一部の領域が穴部40によって外部に露出される。
【0061】
次に、図2(b)に示すように、シールドフィルム接着工程においては、プリント配線板10の絶縁フィルム11上に、シールドフィルム20が接着される。この接着時においては、ヒーターhによってシールドフィルム20の導電材23を加熱しながら、プレス機Pによって上下方向からプリント配線板10とシールドフィルム20とを圧着する。これにより、シールドフィルム20の導電材23がヒーターhの熱によって軟らかくなり、プレス機Pの加圧によって絶縁フィルム11上に接着されると共に、穴部40に充填される。そして、穴部40に充填された導電材23は、やがてグランド用配線パターン14と接触する。この工程により、プリント配線板10の絶縁フィルム11上にシールドフィルム20が設けられると共に、シールドフィルム20の導電層22とグランド用配線パターン14とが、導電材23を介して導通される。これにより、シールドフィルム20の導電層22とグランド用配線パターン14とが同電位に保たれ、シールドフィルム20によって、外部からの電磁波90aなどのノイズを遮蔽することができる。
【0062】
次に、図2(c)に示すように、剥離層剥離工程においては、シールドフィルム20の最上面に予め設けられていた剥離層28が剥離される。
【0063】
次に、図3(d)に示すように、導電性接着剤接着工程においては、シールドフィルム20の絶縁層21上に、導電性接着剤30が接着される。なお、この工程においては、導電性接着剤30は絶縁層21上に仮接着された状態である。
【0064】
次に、図3(e)に示すように、補強部材接着工程においては、導電性接着剤30上に、補強部材35が接着される。この接着時においては、ヒーターhによって導電性接着剤30を加熱しながら、緩衝材60を介してプレス機Pによって上下方向からプリント配線板10に設けられたシールドフィルム20と補強部材35とを圧着する。これにより、導電性接着剤30の接着剤31がヒーターhの熱によって軟らかくなり、プレス機Pの加圧によって導電性粒子32が接着剤31から突出する。そして、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32は、ヒーターhの熱によって軟らかくなった絶縁層21をプレス機Pの加圧によって突き破り、やがて導電層22と接触する。なお、ヒーターhの加熱温度は150℃〜190℃であり、プレス機Pの圧力は2MPa〜5MPaである。また、プレス機Pによる加圧時間は5分〜60分である。この工程により、シールドフィルム20上に補強部材35が設けられると共に、補強部材35とシールドフィルム20の導電層22とが、導電性粒子32を介して導通される。これにより、補強部材35と導電層22、およびグランド用配線パターン14とが、同電位に保たれ、補強部材35にもシールド効果をもたせることができる。
【0065】
最後に、図3(f)に示すように、電子部品接続工程においては、プリント配線板10の下面(図における下側の面)の実装部位に電子部品50が接続される。この時、プリント配線板10の上面(図における上側の面)には、シールドフィルム20の導電層22が電子部品50の実装部位に対向する領域まで配置されている。これにより、シールドフィルム20を利用することによって、電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bを遮蔽することができる。さらに、シールドフィルム20の上面(図における上側の面)には、補強部材35が電子部品50の実装部位に対向配置されている。これにより、補強部材35のシールド効果によって、より確実に電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bを遮蔽することができる。
【0066】
なお、図3(d)に示す導電性接着剤接着工程および図3(e)に示す補強部材接着工程において、先に導電性接着剤30を絶縁層21上に貼り付け、その後、補強部材35を導電性接着剤30に接着させているが、先に補強部材35と導電性接着剤30とを接着させたものを、絶縁層21上に貼り付けてもよい。しかしながら、導電性接着剤30を補強部材35に接着させるよりも、導電性接着剤30を絶縁層21に接着させる方が密着性がよいため、本実施形態に係る製造方法の方が作業性がよく、製造しやすい。
【0067】
(実施例と比較例)
次に、本実施形態に係るシールドプリント配線板1の実施例と比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。実施例および比較例の詳細および実験結果を図4に示す。
【0068】
図4に示すように、実施例1〜5および比較例1、2は、図1に示した本実施形態に係るシールドプリント配線板1と同様の構成を有するものを用いており、比較例3は、図5に示した従来のシールドプリント配線板100と同様の構成を有するものを用いている。より具体的には、補強部材とグランド用配線パターンとの接続形態において、実施例1〜5および比較例1、2は、本実施形態に係るシールドプリント配線板1と同様の接続形態を有しており、比較例3のみが、従来のシールドプリント配線板100と同様の接続形態を有している。ここで、実施例および比較例に用いられたプリント配線板10、110において、ベース部材12、112の厚さは25μm、グランド用配線パターン14、114、115の厚みは18μm、接着剤層13、113の厚さは25μm、絶縁フィルム11、111の厚さは12μmとなる。また、実施例および比較例に用いられたシールドフィルム20、120において、導電材23、123の厚みは10μm、導電層22、122の厚みは0.1μm、絶縁層21、121の厚みは5μmである。また、補強部材35、135には導電性を有するニッケルメッキされたステンレス材を用い、その厚みは0.2mmである。
【0069】
さらに、実施例1〜5および比較例1、2において、補強部材35を絶縁層21に接着させる導電性接着剤30の厚みは10μmであり、導電性粒子32の平均粒子径は、図4に示すように夫々設定されている。なお、実施例の導電性粒子32の平均粒子径の偏差は±5μm以下である。例えば、実施例1の場合、導電性粒子32の平均粒子径が5μmであり、補強部材35を絶縁層21に接着させた後の導電性接着剤30および導電性粒子32の厚みは10μmとなる。この実施例1の場合、導電性接着剤30の厚み(10μm)より導電性粒子32の平均粒子径(5μm)の方が小さいため、導電性粒子32は導電性接着剤30に埋もれた形で存在し、接着後の厚み(10μm)も導電性接着剤30の厚みと同じになる。なお、実施例1の場合、偏差を考慮しても導電性粒子32の粒子径は最大で10μmとなるため、導電性粒子32は導電性接着剤30に埋もれた形で存在する。また、例えば、実施例2の場合、導電性粒子32の平均粒子径が10μmであり、補強部材35を絶縁層21に接着させた後の導電性接着剤30および導電性粒子32の厚みは10μmとなる。この実施例2の場合、導電性接着剤30の厚み(10μm)より導電性粒子32の平均粒子径(偏差を考慮すると15μm)の方が大きく、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出長(5μm)は絶縁層21の厚み(5μm)と同じとなる。そのため、導電性粒子32の平均粒子径の偏差を考慮すると、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32は絶縁層21を丁度突き破り、その下の導電層22に接触している。
【0070】
また、図4に示すように、実施例1〜5における導電性接着剤30の導電性粒子32の形状は球状である。そして、比較例1における導電性接着剤30の導電性粒子32の形状はフレーク状であり、比較例2における導電性接着剤30の導電性粒子32の形状は樹枝状である。さらに、比較例3における導電性接着剤130の導電性粒子の形状は、樹枝状に設定されている。なお、全ての実施例および比較例において、導電性粒子の配合量は50重量%に統一されている。
【0071】
上記のように設定された実施例および比較例を用いて、補強部材とグランド用配線パターンとの接続抵抗を測定した。また、測定した接続抵抗の測定値と、約260℃の熱を用いて実施されるリフロー工程における耐リフロー性を判断した結果と、を合わせて総合評価を出した。ここで、補強部材とグランド用配線パターンとの接続抵抗の測定値は、0.5Ω未満を『○』とし、0.5Ω以上10.0Ω未満を『△』、10.0Ω以上を『×』とする判定基準を設けた。また、耐リフロー性については、実装後の外観検査やシールド検査などの電気検査によって合否の『○』、『△』、『×』を判定した。
【0072】
その結果、耐リフロー性については、比較例3について、空隙が混入することによって膨張し、外観検査などで不合格の『×』となった。この理由として、比較例3は、補強部材とグランド用配線パターンとの接続形態において、図5に示した従来のシールドプリント配線板100と同様の接続形態を有しているため、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部に空隙が入ってしまったと考えられる。つまり、従来のシールドプリント配線板100の場合、補強部材135とグランド用配線パターン115との接続部は、上下が硬い材料で挟まれるため、補強部材135を貼り付ける際に、穴部160の段差に導電性接着剤130が追従しなくなる。その結果、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部に空隙160a、160bが入り込んでしまい、リフロー工程による熱でその空隙が膨張して、外観不良やシールド効果を保てないなどの不具合が発生したと考えられる。また、実施例5については、多少の空隙が混入することによって、外観検査などで『△』となった。この理由として、実施例5の場合は、導電性粒子32の平均粒子径が30μmであり、導電性粒子32の平均粒子径が導電性接着剤30および絶縁層21の厚みに対して大きすぎるため、導電性接着剤30と絶縁層21との間に大きく隙間ができてしまい、その隙間に多少の空隙が混入する場合があると考えられる。
【0073】
一方、実施例1〜4および比較例1、2は、補強部材とグランド用配線パターンとの接続形態において、本実施形態のシールドプリント配線板1と同様の接続形態を有し、さらに、導電性粒子32の平均粒子径も大きすぎることがないため、比較例3や実施例5のような不具合はなく、耐リフロー性は『○』の合格基準を満たしていた。
【0074】
また、補強部材とグランド用配線パターンとの接続抵抗は、実施例2〜5、および比較例3が『○』の基準を満たしており、実施例1が『△』、比較例1、2が『×』であった。この理由として、比較例1、2は導電性粒子がフレーク状または樹枝状であるため、導電性粒子の傾き状態によっては、絶縁層21を突き破ることができず、補強部材35をグランド電位に保つことができなかったと考えられる。また、実施例1は、導電性粒子32の平均粒子径が偏差を考慮しても導電性接着剤30の厚さと同じ、あるいは小さいため、導電性接着剤30から導電性粒子32の突出が少なく、導電層22と接触しにくかったと考えられる。
【0075】
一方、実施例2〜5は、導電性接着剤30の厚みと絶縁層21の厚みに対して、導電性粒子32の平均粒子径が適切であるため、補強部材35と導電層22との導通状態が安定している。その結果、補強部材35とグランド用配線パターン114との接続抵抗を0.5Ω以下に維持することができた。また、比較例3の場合、補強部材135とグランド用配線パターン115との接続抵抗は、導電性接着剤130とグランド用配線パターン115との接続部に空隙160a、160bが入り込んでしまうが、樹枝状の導電性接着剤130によって補強部材135とグランド用配線パターン115との導通状態が保たれ、0.5Ω以下におさめることができていた。
【0076】
以上の実験結果から、補強部材とグランド用配線パターンとの接続抵抗による判定と、耐リフロー性による判定と、を『○』、『△』、『×』で総合評価すると、実施例2〜4が『○』であり、実施例1、5は『△』、比較例1〜3は『×』となる結果になった。この結果より、本実施形態のシールドプリント配線板1における補強部材35とグランド用配線パターン14との接続形態を用いれば、耐リフロー性において『△』以上の合格基準を満たすことが分かる。そして、補強部材とグランド用配線パターンとの接続抵抗は、本実施形態のシールドプリント配線板1において、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32が導電層22に接触していれば『△』以上の合格基準を満たすことが分かる。さらに、導電性粒子32の平均粒子径が導電性接着剤30および絶縁層21の厚みに比べて適切であり、その結果、導電性接着剤30と絶縁層21との間にできる隙間が偏差を考慮して10μmまでとなる程度(実施例4の場合)なら、接続抵抗も耐リフロー性も良好な結果となり、総合評価で『○』の合格基準を満たすことが分かる。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0078】
例えば、本実施形態に係るシールドプリント配線板1において、補強部材35は、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出部によって絶縁層21を突き破り、グランド用配線パターン14と同電位の導電層22と接触しているが、その他の手段を用いて補強部材35と導電層22とを同電位に保っていてもよい。例えば、レーザーなどを用いて、導電層22を外部に露出させる複数の穴部を絶縁層21の表面に形成し、その上から樹枝状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤を貼り付けることによって、その穴部に導電性粒子を流し込み、導電性粒子と導電層22とを接触させていてもよい。これによれば、穴部に充填された樹枝状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤を介して、補強部材35と導電層22とを同電位に保つことができる。
【0079】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、携帯電話、コンピュータなどの電子機器に使用されるシールドプリント配線板に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 シールドプリント配線板
10 プリント配線板
11 絶縁フィルム
12 ベース部材
13 接着剤層
14 グランド用配線パターン
20 シールドフィルム
21 絶縁層
22 導電層
23 導電材
30 導電性接着剤
31 接着剤
32 導電性粒子
35 補強部材
40 穴部
50 電子部品
90a 電磁波
90b 電磁波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド用配線パターンが形成されたベース部材と、当該グランド用配線パターンを覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有すると共に、電子部品が当該ベース部材の下面に設けられた実装部位に接続されたプリント配線板と、
前記グランド用配線パターンと同電位であると共に前記実装部位に対向する領域まで配置された導電層と、当該導電層上に設けられた絶縁層と、を備え、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、
前記実装部位に対向する領域に配置され、前記シールドフィルム上に設けられた導電性を有する補強部材と、
を有するシールドプリント配線板であって、
前記補強部材は、球状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤により前記絶縁層上に接着され、
前記絶縁層は、前記導電性接着剤が接着された後において、当該導電性接着剤から突出した前記導電性粒子の突出長よりも薄い層厚みで形成され、
前記導電性接着剤が前記絶縁層に接着された後において、前記導電性粒子が前記導電層と接触することを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項2】
前記補強部材は、さらに前記グランド用配線パターンと同電位に保たれた外部のグランド用部材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドプリント配線板。
【請求項3】
前記シールドフィルムの前記絶縁層は、前記導電層上にコーティングされていることを特徴とする請求項1または2に記載のシールドプリント配線板。
【請求項4】
前記補強部材は、ステンレス材によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のシールドプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156457(P2012−156457A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16554(P2011−16554)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】