説明

シールド導電体

【課題】本発明は、電線からシールドパイプへの熱伝導性を向上させたシールド導電体10を提供する。
【解決手段】シールドパイプ20の第1開口部24には第1封止部材22が取り付けられている。第1封止部材22には、シールドパイプ20内への水の流入を可能にする入水管33が設けられている。入水管33は、燃料電池11に設けられて燃料電池11が発電した時に副生成される水を燃料電池11から排出するための排水管15と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド導電体としては特許文献1のものが知られている。このシールド導電体は、例えば燃料電池などの電池を搭載した車両に使用される。このものは、金属製のシールドパイプの中に電線を挿通してなる。これにより電線がシールドされ、また、電線が異物の衝突などにより損傷することを抑制できる。
【特許文献1】特開2004−171952公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電線に通電すると、電線から熱が発生する。その熱は、電線からシールドパイプへと伝達され、シールドパイプから外部に放散される。
【0004】
しかしながら上記の構成によると、電線とシールドパイプの内壁との間には空気層が形成される。この空気層は熱伝導率が比較的小さいので、通電時に電線から発した熱はシールドパイプの内部にこもりやすくなる。すると、例えば電線の温度上昇値の上限が設定されている場合には、電線の温度が高くなって、前述の上限を超えてしまうことが懸念される。
【0005】
電線の温度を下げるためには、例えば電線からの発熱量を小さくすることが考えられる。電線に所定の電流を流したときの発熱量は、電線の断面積が大きいほど小さくなるので、電線の断面積を大きくすれば、電線からの発熱量を小さくすることが期待される。
【0006】
しかし、電線の断面積を大きくすれば、電線が大型化し、ひいてはシールド導電体が大型化、重量化する。車両に対しては軽量化が望まれるため、上記の手法はとりえない。
【0007】
そこで、電線からシールドパイプへの伝熱経路の熱伝導性を向上させることが望まれる。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線からシールドパイプへの熱伝導性を向上させたシールド導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料電池を搭載する車両に使用されるシールド導電体であって、一方の端部に第1開口部が設けられ、且つ他方の端部に第2開口部が設けられた金属製のシールドパイプと、前記シールドパイプを貫通して前記第1及び第2開口部から導出される導体と、前記シールドパイプの前記第1開口部を塞ぐように配され、前記導体を貫通させる第1貫通孔及び前記シールドパイプ内への水の流入を可能にする入水口が設けられた第1封止部材と、前記シールドパイプの前記第2開口部を塞ぐように配され、前記導体を貫通させる第2貫通孔が設けられた第2封止部材とを備え、前記入水口は、前記燃料電池に設けられて前記燃料電池が発電した時に副生成される水を前記燃料電池から排出するための排水口と接続される。
【0010】
これにより、発電時に燃料電池から排出された水は、排水口から入水口を経て、導体とシールドパイプとの間に充填される。この結果、導体に通電した時に導体から発生する熱は水に伝達され、水からシールドパイプに伝達され、シールドパイプから外部に放散される。水は空気よりも熱伝導率が高いので、導体からシールドパイプへの熱伝導性を向上させることができる。
【0011】
本発明の実施態様として、以下の構成が好ましい。
第1及び第2封止部材は弾性材料からなり、第1封止部材をシールドパイプの第1開口部の内周に嵌合させた状態でシールドパイプの一方の端部を縮径変形させることで、シールドパイプの第1開口部の内周と第1封止部材の外周とが液密状に密着されており、第2封止部材をシールドパイプの第2開口部の内周に嵌合させた状態でシールドパイプの他方の端部を縮径変形させることで、シールドパイプの第2開口部の内周と第2封止部材の外周とが液密状に密着されている。これにより、シールドパイプと第1及び第2封止部材との間から水が漏れることを防止できる。
【0012】
シールドパイプは、車両のうち燃料電池よりも下方の位置に配されている。これにより、シールドパイプ内に充填された水がシールド導電体側から燃料電池側に逆流することを抑制できる。
【0013】
入水口は第1封止部材を貫通する入水管であり、排水口は排水管であり、入水管と排水管とは、水がシールド導電体側から燃料電池側に流れるのを防止する逆止弁を介して接続されている。これにより、シールドパイプ内に充填された水がシールド導電体側から燃料電池側に逆流することを確実に抑制できる。
【0014】
第1及び第2封止部材の少なくとも一方には、シールドパイプ内からの水の流出を可能とする出水口が設けられている。これにより、導体とシールドパイプとの間の空間内に水が充満した場合に、水をシールドパイプから排出できる。また、導体に通電した時に導体から発生する熱は水に伝達される。この水は出水口からシールドパイプの外部に排出される。これにより、導体に生じた熱を水によって強制的にシールドパイプの外部に放出させることができる。この結果、シールドパイプの放熱性を向上させることができる。
【0015】
出水口は第1及び第2封止部材の少なくとも一方を貫通する出水管であり、出水管のシールド導電体と反対側に位置する端部には第3開口部が設けられており、第3開口部は、シールドパイプのうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも、高い位置に配されている。
【0016】
導体とシールドパイプとの間の空間に充満した水は出水管の第3開口部から排出される。このとき、例えば第3開口部が、シールドパイプのうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも低い位置に設けれられていた場合、シールドパイプ内の水面の高さは第3開口部が形成された高さ位置を越えないため、第1電線とシールドパイプの内面との間に形成された隙間には空気が残存してしまう。この空気により、導体からシールドパイプへの熱伝達性が低下することが懸念される。そこで、第3開口部は、シールドパイプの上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも高い位置に設ける構成とした。これにより、第3開口部からシールドパイプ内の水が排出されても、シールドパイプ内には水が充満した状態になる。この結果、導体からシールドパイプへの熱伝達性が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シールド導電体において、導体からシールドパイプへの熱伝導性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図1ないし図6によって説明する。図1に示すように、本実施形態のシールド導電体10は、燃料電池11を搭載した車両12に使用される。車両12には、燃料電池11を作動させるための図示しない燃料(例えばエタノール、または水素等)を貯留する燃料タンク13が搭載されている。燃料タンク13には配管14を介して燃料電池11が接続されている。この配管14を通って、燃料が燃料電池11に送られる。このとき、例えばエタノールを燃料とする場合には、燃料タンク13と燃料電池11との間に図示しない改質装置を配設し、この改質装置により、エタノールを例えば水素に化学変化させてもよい。
【0019】
燃料電池11は公知の構成からなり、燃料を化学反応させることで発電する。この化学反応により水(図示せず)が副生成する。燃料電池11には、副生成した水を燃料電池11の外部に排出するための排水管15(排水口の一例)が、燃料電池11の内部と外部とを連通して設けられている(図2参照)。排水管15は、燃料電池11の下部から下方に延出されている。
【0020】
燃料電池11とインバータ16とはシールド導電体10を介して接続されている。このインバータ16は、コネクタ17Cを介して第2電線18(本実施形態では3本)の一方の端部と接続されている。そして、第2電線18の他方の端部は、コネクタDを介してモータ19と接続されている。
【0021】
図2に示すように、シールド導電体10は、シールドパイプ20と、このシールドパイプ20に挿通されて一括してシールドされる2本の第1電線21(導体の一例)と、シールドパイプ20の両端部に配される第1封止部材22及び第2封止部材23とを備える。
【0022】
シールドパイプ20は、車両12のうち、燃料電池11よりも下方の位置に配されている。シールドパイプ20は、金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、銅、銅合金等)からなる。図3に示すように、シールドパイプ20の横断面形状は略円形をなしている。
【0023】
シールドパイプ20には、図2における右側の端部(一方の端部の一例)に、第1開口部24が設けられている。また、シールドパイプ20の図2における左側の端部(他方の端部の一例)には、第2開口部25が設けられている。
【0024】
第1開口部24には、第1開口部24を塞ぐようにして第1封止部材22が嵌合されている。また、第2開口部25には、第2開口部25を塞ぐようにして第2封止部材23が嵌合されている。第1及び第2封止部材22,23は弾性材料(例えば、合成ゴム等)からなる。第1及び第2封止部材22,23は、断面形状が略円形の肉厚板状をなす。第1及び第2封止部材22,23の外径は、シールドパイプ20の内径とほぼ同じ寸法となっている。
【0025】
シールドパイプ20のうち第1及び第2封止部材22,23が嵌合している領域は、シールドパイプ20の長さ方向(図2に左右方向)に間隔を空けて、複数箇所が局所的に縮径変形されてかしめ付けられている。このかしめ付けにより、シールドパイプ20の第1開口部24の内周面と、第1封止部材22の外周面とが液密状に密着されており、且つ、シールドパイプ20の第2開口部25の内周面と、第2封止部材23の外周面とが液密状に密着されている。シールドパイプ20の両端部の端縁は、シールドパイプ20の径方向内方に屈曲するように曲げ加工されている。この曲げ加工により、シールドパイプ20の両端部の端縁には、係止部26が形成されている。係止部26は、第1及び第2封止部材22,23におけるシールドパイプ20の外部に露出した面の周縁部に係止している。これにより、第1及び第2封止部材22,23がシールドパイプ20から外方に抜け落ちるのが規制される。
【0026】
図2に示すように、第1封止部材22には、第1電線21をシールドパイプ20の内部から外部へと導出するための第1貫通孔27が形成されている。同様に、第2封止部材23には、第1電線21をシールドパイプ20の内部から外部へと導出するための第2貫通孔28が形成されている。第1及び第2貫通孔27,28により、シールドパイプ20の内部と外部とは連通している。
【0027】
第1及び第2開口部24,25からはそれぞれ、第1及び第2封止部材22,23に形成された第1及び第2貫通孔27,28を貫通して、第1電線21が導出されている。図3に示すように、第1電線21は、可撓性を有する芯線29の外周を絶縁被覆30で包囲したノンシールドタイプの電線である。第1電線21の横断面形状は略円形をなしている。
【0028】
シールドパイプ20の第1開口部24から導出された第1電線21の燃料電池11側(図1における右側)の端部は、コネクタ17Aを介して燃料電池11と接続されている。また、シールドパイプ20の第2開口部25から導出された第1電線21のインバータ16側(図1における左側)の端部は、コネクタ17Bを介してインバータ16と接続されている。
【0029】
なお、詳細には図示しないが、燃料電池11とシールド導電体10の一方の端部との間に配された第1電線21は、図示しない編組で一括して包囲されている。同様に、シールド導電体10の他方の端部とインバータ16との間に配された第1電線21も、図示しない編組で一括して包囲されている。さらに、インバータ16とモータ19との間に配された第2電線18も、図示しない編組で一括して包囲されている。
【0030】
図2に示すように、第1封止部材22には、下端寄りの位置に、シールドパイプ20の内部と外部とを連通する第1取付孔32が形成されている。この第1取付孔32には、入水管33(入水口の一例)が液密状に貫通されている。この入水管33のうちシールドパイプ20と反対側(図2における右側)の端部は、上方に曲げ形成されている。曲げ形成された入水管33の上端と、燃料電池11の排水管15の下端とは、逆止弁34を介して接続されている。この逆止弁34は公知の構成からなり、燃料電池11で発電したときに副生成する水が、シールド導電体10側から燃料電池11側に流れるのを防止するようになっている。
【0031】
図2に示すように、第2封止部材23には、上端寄りの位置に、シールドパイプ20の内部と外部とを連通する第2取付孔35が形成されている。この第2取付孔35には、出水管36(出水口の一例)が液密状に貫通されている。この出水管36のうちシールドパイプ20と反対側(図2における左側)の端部は、上方に曲げ形成されている。曲げ形成された出水管36の端部には、第3開口部37が形成されている。
【0032】
第3開口部37は、シールドパイプ20の上下方向(図2における上下方向)の高さ位置が最も高い部分よりも、高い位置に配されている。
【0033】
図2に示すように、第1電線21の外周面と、シールドパイプ20の内面との間の隙間には、入水管33からシールドパイプ20内に流入した水が、出水管36側へ流通する流通路31が形成されている。この流通路31はシールドパイプ20の全長にわたって形成されている。
【0034】
続いて、本実施形態の作用、効果を説明する。
まず、シールド導電体10の製造工程について説明する。図4に示すように、シールドパイプ20に2本の第1電線21を挿通する。次に、第1電線21の図5における右端側から第1封止部材22を外嵌し、左端側から第2封止部材23を外嵌する。そして、シールドパイプ20の第1開口部24に第1封止部材22を嵌合させ、シールドパイプ20の第2開口部25に第2封止部材23を嵌合させる。
【0035】
このとき、入水管33及び出水管36は、第1電線21と第1及び第2封止部材22,23を第1及び第2開口部24,25に組み付ける前に、それぞれ第1及び第2封止部材22,23に組みつけてもよい。また、シールドパイプ20の第1及び第2開口部24,25に第1及び第2封止部材22,23を嵌合した後に、入水管33及び出水管36を組みつけてもよい。
【0036】
図2に示すように、その後、シールドパイプ20の両端部をかしめ付けると共に、シールドパイプ20の両端部にそれぞれ係止部26を形成する。
【0037】
図1に示すように、シールドパイプ20の第1及び第2開口部24,25から導出した第1電線21の両端部にそれぞれコネクタ17を取り付ける。そして、シールドパイプ20の第1開口部24から導出した第1電線21に取り付けたコネクタ17は、燃料電池11に接続する。一方、シールドパイプ20の第2開口部25から導出した第1電線21に取り付けたコネクタ17は、インバータ16に接続する。
【0038】
図2に示すように、シールドパイプ20の第1開口部24から導出した入水管33は、燃料電池11の排水管15と、逆止弁34を介して接続する。
【0039】
燃料電池11を作動させて、発電を開始すると、公知の化学反応により、燃料電池11からは水が副生成する。この水は排水管15から燃料電池11の外部に排出される。水は、排水管15から逆止弁34を経て、入水管33へと流れる。さらに、水は入水管33からシールドパイプ20の内部に流入する。
【0040】
入水管33は、第1封止部材22の下端寄りの位置に形成されているから、シールドパイプ20の内部に流入した水は、第1電線21とシールドパイプ20の内面との間に形成された流通路31内に下方から充填される。水が流通路31内に溜まって、水面が出水管36にまで達すると、出水管36の中に水が流入する。さらに水が流入すると、シールドパイプ20内及び出水管36内の水位が上昇し、シールドパイプ20内の流通路31が水で充満される。
【0041】
さらに水が流入し、その水位が、出水管36の第3開口部37にまで達すると、水は第3開口部37から流れ出す。この第3開口部37は、シールドパイプ20のうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも高い位置に配されているから、第3開口部37から水が流出しても、シールドパイプ20内の流通路31は水で充満されている。
【0042】
そして、シールドパイプ20の流通路31内には、入水管33から流入した水が出水管36に向かって流れるようになっている。
【0043】
本実施形態では、シールドパイプ20内の流通路31は水で充満される構成とした。これにより、通電時に第1電線21の芯線29から発生した熱は、芯線29から絶縁被覆30に伝達され、絶縁被覆30の外面から水に伝達される。熱は、さらに、水からシールドパイプ20の内面に伝達されてシールドパイプ20の外面から外部に放散される。水は、空気に比べて熱伝導率が高いので、第1電線21からシールドパイプ20への熱伝導性を向上させることができる。
【0044】
さらに、シールドパイプ20内の流通路31内には、入水管33から流入した水が出水管36に向かって流れるようになっている。これにより、第1電線21の芯線29から発生した熱は、水に伝達された後、出水管36からシールドパイプ20の外部に放出される。このように、第1電線21から発生した熱を水により強制的に冷却できるから、シールドパイプ20の放熱性を向上させることができる。
【0045】
そして、燃料電池11で発電すると、副生成物として水が生成する。本実施形態では、この水をシールドパイプ20内に充填するので、第1電線21を冷却するための冷却水を別途用意する必要がない。
【0046】
また、第1封止部材22をシールドパイプ20の第1開口部24の内周に嵌合させた状態でシールドパイプ20の一方の端部を縮径変形させることで、シールドパイプ20の第1開口部24の内周と第1封止部材22の外周とが液密状に密着されており、第2封止部材23をシールドパイプ20の第2開口部25の内周に嵌合させた状態でシールドパイプ20の他方の端部を縮径変形させることで、シールドパイプ20の第2開口部25の内周と第2封止部材23の外周とが液密状に密着されている。これにより、シールドパイプ20と第1及び第2封止部材22,23との間から水が漏れることを防止できる。
【0047】
また、シールドパイプ20は、車両12のうち燃料電池11よりも下方の位置に配されている。これにより、シールドパイプ20内に充填された水がシールド導電体10側から燃料電池11側に逆流することを抑制できる。
【0048】
その上、入水管33と排水管15とは、水がシールド導電体10側から燃料電池11側に流れるのを防止する逆止弁34を介して接続されている。これにより、シールドパイプ20内に充填された水がシールド導電体10側から燃料電池11側に逆流することを確実に抑制できる。
【0049】
また、出水管36のシールド導電体10と反対側に位置する端部には第3開口部37が設けられており、第3開口部37は、シールドパイプ20のうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも、高い位置に配されている。
【0050】
導体とシールドパイプ20との間の空間に充満した水は出水管36の第3開口部37から排出される。このとき、例えば第3開口部37が、シールドパイプ20のうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも低い位置に設けれられていた場合、シールドパイプ20内の水面の高さは第3開口部37が形成された高さ位置を越えないため、第1電線21とシールドパイプ20の内面との間に形成された流通路31には空気が残存してしまう。この空気により、導体からシールドパイプ20への熱伝達性が低下することが懸念される。そこで、第3開口部37は、シールドパイプ20の上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも高い位置に設ける構成とした。これにより、第3開口部37からシールドパイプ20内の水が排出されても、シールドパイプ20内には水が充満した状態になる。この結果、導体からシールドパイプ20への熱伝達性が低下することを抑制できる。
【0051】
なお、図6に、シールドパイプ内に水を充填した実施例と、シールドパイプ内に水を充填させない比較例との温度上昇の違いを表すグラフを示す。実施例は、厚さ1.0mm、外径15mmのステンレス製のシールドパイプ内に、直径3.2mmの3本の導体が挿通されてなる。この導体に、60Aの電流を流した。シールドパイプには空気を吹き付けて空冷した。一方、比較例は、シールドパイプ内に水を充填しない以外は、実施例と同様にして実験を行った。
【0052】
実験の結果、実施例では、温度上昇値が37℃であったのに対し、比較例では、温度上昇値は97℃まで大きく上昇した。これにより、シールドパイプ内に水を充填することで、導体からシールドパイプまでの伝熱性が向上したことが示された。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(1)シールド導電体10は、インバータ16とモータ19との間を接続する第2電線18等、任意の配線に適用することができる。
(2)1つのシールドパイプ20に挿通される第1電線21は、1本、または3本以上でもよい。
(3)本実施形態では入水口は入水管33であったが、これに限られず、第1封止部材22を貫通する貫通孔であってもよい。また、本実施形態では出水口は出水管36であったが、これに限られず、第2封止部材23を貫通する貫通孔であってもよい。
(4)本実施形態では、シールドパイプ20の横断面形状を円形としたが、これに限られず、非円形(例えば、楕円形、長円形、略方形、略多角形、略台形等)であってもよい。
(5)本実施形態では、出水管36は第2封止部材23にのみ設ける構成としたが、これに限られず、第1封止部材22のみに設けてもよく、また、第1及び第2封止部材22,23の双方に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係るシールド導電体を車両に搭載した状態を示す模式図
【図2】シールド導電体の断面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】シールド導電体の製造工程において、シールドパイプに第1電線を挿通した状態を示す断面図
【図5】シールドパイプ及び第1電線に、入水管を組み付けた第1封止部材と、出水管を組み付けた第2封止部材とを組み付けた状態を示す断面図
【図6】冷却効果の実験結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0056】
10…シールド導電体
11…燃料電池
12…車両
15…排水管(排水口)
20…シールドパイプ
21…第1電線(導体)
22…第1封止部材
23…第2封止部材
24…第1開口部
25…第2開口部
27…第1貫通孔
28…第2貫通孔
33…入水管(入水口)
34…逆止弁
36…出水管(出水口)
37…第3開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を搭載する車両に使用されるシールド導電体であって、一方の端部に第1開口部が設けられ、且つ他方の端部に第2開口部が設けられた金属製のシールドパイプと、前記シールドパイプを貫通して前記第1及び第2開口部から導出される導体と、前記シールドパイプの前記第1開口部を塞ぐように配され、前記導体を貫通させる第1貫通孔及び前記シールドパイプ内への水の流入を可能にする入水口が設けられた第1封止部材と、前記シールドパイプの前記第2開口部を塞ぐように配され、前記導体を貫通させる第2貫通孔が設けられた第2封止部材とを備え、前記入水口は、前記燃料電池に設けられて前記燃料電池が発電した時に副生成される水を前記燃料電池から排出するための排水口と接続されるシールド導電体。
【請求項2】
前記第1及び第2封止部材は弾性材料からなり、前記第1封止部材を前記シールドパイプの前記第1開口部の内周に嵌合させた状態で前記シールドパイプの前記一方の端部を縮径変形させることで、前記シールドパイプの前記第1開口部の内周と前記第1封止部材の外周とが液密状に密着されており、前記第2封止部材を前記シールドパイプの前記第2開口部の内周に嵌合させた状態で前記シールドパイプの前記他方の端部を縮径変形させることで、前記シールドパイプの前記第2開口部の内周と前記第2封止部材の外周とが液密状に密着された請求項1に記載のシールド導電体。
【請求項3】
前記シールドパイプは、前記車両のうち前記燃料電池よりも下方の位置に配されている請求項1または請求項2に記載のシールド導電体。
【請求項4】
前記入水口は前記第1封止部材を貫通する入水管であり、前記排水口は排水管であり、前記入水管と前記排水管とは、前記水が前記シールド導電体側から前記燃料電池側に流れるのを防止する逆止弁を介して接続されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項5】
前記第1及び第2封止部材の少なくとも一方には、前記シールドパイプ内からの水の流出を可能とする出水口が設けられた請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシールド導電体。
【請求項6】
前記出水口は前記第1及び第2封止部材の少なくとも一方を貫通する出水管であり、前記出水管の前記シールド導電体と反対側に位置する端部には第3開口部が設けられており、前記第3開口部は、前記シールドパイプのうち上下方向の高さ位置が最も高い部分よりも、高い位置に配されている請求項4に記載のシールド導電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−300200(P2008−300200A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145124(P2007−145124)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】